JP2004161761A - 微生物由来の不凍タンパク質 - Google Patents
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Abstract
【効果】本発明により0.5℃以上の熱ヒステリシス活性を有する低温微生物由来の不凍タンパク質を提供することができる。これまでに知られている植物、魚および微生物由来の不凍タンパク質に比べ、高い熱ヒステリシス活性を有しているため、様々な産業分野において利用可能である。
【選択図】 なし
Description
また、本発明は熱ヒステリシス活性を有する不凍タンパク質を含有もしくは生産する微生物および該不凍タンパク質の製造方法に関する。
さらに、本発明は、微生物由来の不凍タンパク質を用いた氷結晶の成長抑制効果、水溶液の凝固点低下効果を利用する組成物および方法に関する。
本発明の発明者らは、安全にしかも安価に、生産効率が高く製造可能な不凍タンパク質を取得するために、高い熱ヒステリシス活性を有する新規な不凍タンパク質と、その製造方法、および新規な不凍タンパク質の利用方法を提供することを目的としている。
本発明は、該微生物を用いた熱ヒステリシス活性が極めて高い微生物由来の不凍タンパク質の製造方法に関する。先ず該微生物を20℃以下で培養することで熱ヒステリシス活性が極めて高い不凍タンパク質を製造し、例えば、微生物を20℃以下の温度環境下にて、不凍タンパク質を誘導もしくは蓄積せしめた後に0.5℃以上の熱ヒステリシス活性を有する微生物由来の不凍タンパク質を取得する製造方法に関する。
本発明の熱ヒステリシス活性の高い微生物由来の不凍タンパク質の理化学的性質は、該不凍タンパク質濃度が1.0mg/ml以上のタンパク質溶液の熱ヒステリシス活性が0.5℃以上である。熱ヒステリシス活性は、アンモニウムイオンの共存下により増加する。さらに、pH8.0の水溶液の存在下、50℃で30分の熱処理後も、80%以上の残存活性率として耐熱性を有している。pHが7〜9の範囲で安定である。分子量は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により約19kDaである。
本発明は、熱ヒステリシス活性を有し、かつ配列番号1および/または配列番号2で表されるアミノ酸からなるポリペプチドを提供する。すなわち、本発明の熱ヒステリシス活性の高い微生物由来の不凍タンパク質は、ペプチド配列の一部または全部に、配列番号1および/または配列番号2で表されるアミノ酸からなるポリペプチド配列を有する。また、本発明の微生物由来の不凍タンパク質は、配列番号1および/または配列番号2で表されるアミノ酸からなるポリペプチド配列と80%以上の相同性を有するポリペプチド配列を有しかつ熱ヒステリシス活性を有するポリペプチドを含む。さらに、本発明は該ポリペプチドの製造方法を提供する。
本発明は、熱ヒステリシス活性を有し、かつ配列番号1および/または配列番号2で表されるアミノ酸からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を提供する。すなわち、本発明は、微生物由来の不凍タンパク質のペプチド配列の一部または全部に、配列番号1および/または配列番号2で表されるアミノ酸からなるポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドに関する。また、本発明の微生物由来の不凍タンパク質のペプチド配列の一部または全部に、配列番号1および/または配列番号2で表されるアミノ酸からなるポリペプチド配列と80%以上の相同性を有するポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドに関し、かつ熱ヒステリシス活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。さらに、本発明は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いた微生物由来の不凍タンパク質の製造方法を提供する。
porus)などのバチルス(Bacillus)属、カンジダ・エスピー(Candida sp.)、カンジダ・スコッチイ(Candida scottii)などのカンジダ(Candida)属、クラドスポリウム・ヘルバレム(Cladosporium herbarum)などのクラドスポリウム(Cladosporium)属などが好ましい。サイトファーガ(Cytophaga)属も好ましいが、遺伝子レベルなどの解析に基づいて、サイトファーガ(Cytophaga)属はフラボバクテリウム(Flavobacterium)属にも再分類されている(Int.J.Syst.Evol.Microbiol. 50:1055-1063(2000))。
本発明の熱ヒステリシス活性の高い微生物由来の不凍タンパク質は、そのペプチド配列の一部または全部に、配列番号1および/または配列番号2で表されるアミノ酸からなるポリペプチド配列を有する。本発明のポリペプチドとしては、配列番号1および/または配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、配列番号1および/または配列番号2で表されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加され、かつ配列番号1または2で表されるアミノ酸配列とBLAST(Basic local alignment search tool)やFASTA(Fast all)などを用いて計算したときに、少なくとも80%以上、特には95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ熱ヒステリシス活性を有するポリペプチドをあげることができる。欠失、置換もしくは付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、例えば部位特異的変異法などの周知の方法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数であり、1個から数十個、好ましくは1〜5個である。
本発明の熱ヒステリシス活性の高い微生物由来の不凍タンパク質は、そのペプチド配列の一部または全部に、配列番号1および/または配列番号2で表されるアミノ酸からなるポリペプチド配列を含む限り、特に限定されるものではない。なお、本発明のポリヌクレオチドとは、DNAおよびRNAの両方が含まれる。本発明の該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列からなるDNAは、一般に1つのアミノ酸に対して複数種の遺伝暗号が存在するが、本発明のポリペプチドをコードしていれば本発明のDNAに含まれる。さらに本発明のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列と80%以上の相同性を有する塩基配列を有し、かつ熱ヒステリシス活性を有するポリペプチドをコードするDNAも含まれる。ハイブリダイズ可能なDNAとして具体的には、BLAST(Basic local alignment search tool)やFASTA(Fast all)などを用いて計算したときに、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列と少なくとも80%以上の相同性を有するDNA、好ましくは95%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。本発明によるポリヌクレオチドは、例えば、天然由来であっても、全合成してもよい。更には、天然由来の一部を利用して合成を行なってもよい。本発明によるポリヌクレオチドの典型的な取得方法としては、例えば、遺伝子工学の分野で慣用されている方法、例えば、部分アミノ酸配列の情報を基にして作成した適当なDNAプローブを用いてスクリーニングを行なう方法などを挙げることができる。
さらに、本発明は、本発明のポリペプチドを有する熱ヒステリシス活性を有する不凍タンパク質の製造方法に関する。
TSB培地(DIFCO社製)(3.0%)をそれぞれ200ml容三角フラスコに30ml分注し、121℃、20分間殺菌して冷却したのち、フラボバクテリウム・キサンタム(Flavobacterium xanthum)IFO 14972を一白金耳ずつ接種し、5℃で1週間振盪培養して、種培養液を調製した。5L容量の培養ジャーに、上記TSB培地3Lを入れ、これを121℃で20分間殺菌して冷却したのち、上記の種培養液27mlを接種し、5℃で6日間、培養液に通気しながら撹拌培養を行った。培養終了後、遠心分離により菌体を回収した。
以下のステップにより熱ヒステリシス活性を有する微生物由来の不凍タンパク質の抽出液を取得した。
1)無細胞抽出液の調製:
上記培養で取得した菌体をトリス・塩酸緩衝液(20mM、pH8)に懸濁したのち、氷浴中で冷却しつつ超音波破砕装置「INSONATOR 201M」(久保田商事株式会社製)で40分間破砕した。破砕液を遠心分離して菌体残渣を除き、無細胞抽出液を取得した。
前記無細胞抽出液に20%(w/v)飽和量となるように硫酸アンモニウムを加え、4℃で15時間緩やかに撹拌した。4℃、10,000g、20分間遠心分離することにより上澄液を回収した。上澄液に60%(w/v)飽和量となるよう硫酸アンモニウムを加え、4℃で7時間緩やかに撹拌した。4℃、10,000g、20分間遠心分離により沈殿を回収し、これをトリス-塩酸緩衝液(20mM、pH8)に溶解させて、抽出液として回収した。この抽出液をSpectrum社製の透析チューブ(分画分子量:3,500)に入れ、透析外液として使用した5Lのトリス・塩酸緩衝液(20mM、pH8)を3回交換することにより、66時間透析を行って抽出液を取得した。
前記の抽出液を予めトリス塩酸緩衝液(20mM、pH8)で平衡化したDEAE-Cellulofineを充填したガラスカラム(直径1.0cm×高さ5.8cm)に通液して、同緩衝液で洗浄して、活性画分を集めた。この活性画分は、凍結乾燥機「EYELA FREEZE DRYER FD-1」(東京理化器械製)で濃縮を行い、蒸留水に溶解した。ここで取得した抽出液は、蛋白濃度1mg/mlで熱ヒステリシス活性が2.5〜4.7℃であった。上記熱ヒステリシス活性の測定については後記実施例3の方法で測定した。
前記の抽出液に20%濃度となるよう硫安を加え、予め20%硫安を含むトリス塩酸緩衝液(20mM、pH7.5)で平衡化したButyl-Toyopearlを充填したガラスカラム(直径0.8cm×高さ5.4cm)に通液して、同緩衝液で洗浄後、硫安を含まないトリス塩酸緩衝液(20mM、pH7.5)への直線濃度勾配にて活性画分を集めた。さらに本活性画分をトリス塩酸緩衝液(5mM、pH8)で透析後、20%濃度となるよう硫安を加え、予め20%硫安を含むトリス塩酸緩衝液(20mM、pH7.5)で平衡化したButyl-Toyopearlを充填したガラスカラム(直0.8cm×高さ5.4cm)に通液して、同緩衝液で洗浄後、硫安を含まないトリス塩酸緩衝液(20mM、pH7.5)への直線濃度勾配にて活性画分を集めた。本活性画分をトリス塩酸緩衝液(5mM、pH8)で透析後、濃縮した。
前記の濃縮液を0.2MのNaClを含むトリス塩酸緩衝液(50mM、pH7.5)に溶解し、予め同緩衝液で平衡化したゲル濾過クロマトグラフィー TSKgel G3000SW(カラムサイズ:直径0.75cm×長さ60cm)にかけ、同緩衝液にて溶出した。得られた活性画分を濃縮後、トリス塩酸緩衝液(5mM、pH8)で透析後、濃縮して不凍タンパク質溶液を得た。
本発明の微生物由来の不凍タンパク質を含有する水溶液の熱ヒステリシスの測定は、該微生物由来の不凍タンパク質を含有する水溶液を徐々に冷却し、該水溶液の凝固点をモニターすることにより行われる。凍結点は、制御できない結晶成長か、あるいは結晶成長がおこる際のごくわずかの温度である。融解点は、一つの氷結晶が溶けずに安定な状態で留まっている最高温度である。本実施例においては、Devriesら(Methods Enzymol. 127, 293-303(1986))の方法に準じて行った。詳しくは、以下の方法によって熱ヒステリシスを測定した。直径16mm、厚さ0.12mmの円形ガラスに1μlのサンプルをのせた。温度制御顕微鏡ステージ(リンカム社製LK-600PM)にスライドをのせ、微細な氷をたくさん作るためにステージを50℃/分の速度で−40℃まで急速凍結した。氷結晶を顕微鏡でモニターしながら、ステージの温度を0.02℃/分の速度で緩やかに上昇させ、最後の結晶が消失した温度を融点とした。再び、ステージを50℃/分の速度で−40℃まで急速凍結し、微細な氷をたくさん作った。ステージの温度を0.02℃/分の速度で緩やかに上昇させて氷を融解し、一つの直径10μm程度の氷結晶核種ができる平衡温度に到達させた。その後、1℃/分の速度で温度を低下させ、氷結晶の大きさをモニターした。不凍タンパク質を含まないサンプルにおいては氷結晶が急激に成長し始め、それゆえ融解温度と凍結温度は同一となる。一方、不凍タンパク質が存在すると、温度低下時、氷結晶の大きさはしばらく一定を保ち、ヒステリシス凍結点において劇的に氷結晶は成長する。すなわち、融解温度と凍結温度との間に差が生じる。この熱ヒステリシスの温度差は不凍タンパク質の濃度と比活性に依存している。本発明においては3回測定した値の平均値を熱ヒステリシス値として採用した。
蛋白質濃度の測定は、BIO RAD株式会社製の蛋白質濃度測定用キットを使用して行った。測定においては0.2mg/mlのBSA溶液を標準液として用い、いずれも3回の測定値の平均値を用いた。
実施例2の5)で得られた精製不凍タンパク質溶液について、温度安定性、pH安定性、分子量、内部アミノ酸配列を調べた。また、有機酸、糖および塩の添加による熱ヒステリシス活性への影響を調べると共に、氷の再結晶化を阻害する効果を調べた。なお、微生物由来の不凍タンパク質の熱ヒステリシス活性の測定についても実施例3に示した方法に従って行った。
実施例2の5)で取得した精製不凍タンパク質溶液について、温度安定性を測定した。
微生物由来の不凍タンパク質を含む精製液(蛋白濃度:10mg/ml)50μlを1.5ml容エッペンドルフチューブに入れた後、40、50、60、70℃の各温度で30分間保持する。各々の温度に保持した後、直ぐに氷冷し、微生物由来の不凍タンパク質の熱ヒステリシス活性を測定した。なお、熱処理をせず0℃で30分間保持した微生物由来の不凍タンパク質の熱ヒステリシス活性を100%とした場合の各温度の活性値から比率を算出し残存活性率として示し、本実施例の温度安定性として評価した。
その結果、該微生物由来の不凍タンパク質の温度安定性は、0〜50℃までの残存活性が約90%以上であり、60℃での残存活性はほとんどなかった。よって、本発明の微生物由来の不凍タンパク質は0℃〜50℃の温度まで安定であり、熱ヒステリシス活性を有効に維持すること可能な微生物由来の不凍タンパク質であることが示唆された。
実施例2の5)で取得した精製不凍タンパク質溶液について、pH安定性を測定した。
微生物由来の不凍タンパク質を含む抽出液(蛋白濃度:10mg/ml)に、酢酸緩衝液(pH4.1、あるいはpH5.0)、リン酸カリウム緩衝液(pH7.2)、またはグリシン-NaOH緩衝液(pH8.9、あるいは9.9)の5種類の緩衝液を用い、各々の緩衝液が最終濃度20mMとなるように添加した。各々のpH環境下の微生物由来の不凍タンパク質を含む溶液を4℃で11日間保存し、0時間、1日後、3日後、7日後、11日後と経時的に熱ヒステリシス活性を測定した。
その結果、該微生物由来の不凍タンパク質はpH7〜9で安定であることが示唆された。よって、このpH範囲の微生物由来の不凍タンパク質は、中性付近が安定であり熱ヒステリシス活性を有効に維持することが可能な微生物由来の不凍タンパク質であることが示唆された。
実施例2の5)で取得したゲル濾過後の精製された不凍タンパク質溶液について、分子量をゲル濾過クロマトグラフィーにより測定した。ここで、充填剤としてはTSKgel G3000SW(カラムサイズ:直径0.75cm×長さ60cm)を用い、0.2MのNaClを含むトリス塩酸緩衝液(50mM、pH7.5)を溶出液とした。標準蛋白として、ビタミンB12[ 分子量1,350]、馬ミオグロビン[ 分子量17,000]、鶏卵白アルブミン [ 分子量44,000]、ウシガンマグロブリン[ 分子量158,000]、チオグロブリン[ 分子量670,000]の蛋白を用いて検量線を作成した。その結果、実施例2の5)で取得した不凍タンパク質溶液は単一にまで精製されたことが分かった。この方法によりこの発明に係る不凍タンパク質の分子量は約38kDa と決定した。
実施例2の5)で取得したゲル濾過後の精製された不凍タンパク質溶液について、分子量をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて測定した。分離ゲル「パジェルSPG-520L」(ATTO社製)を用いて電気泳動を行なった。ゲル中の緩衝液として、0.1%のSDSを含む25mMトリスヒドロキシメチルアミノメタン、192mMグリシン(pH8.6)を用いた。20mAで1.2時間電気泳動した後に、蛋白をCBB R-250にて染色した。約19kDaの位置に単一のバンドが確認された。前記の結果と併せて、この発明に係る不凍タンパク質は同一サブユニットの2量体であると分かった。
実施例2の5)で取得したゲル濾過後の精製された不凍タンパク質溶液について、臭化シアン分解して断片化し、SDSポリアクリルアミド電気泳動にて各ペプチド断片を分画した。うち2つのペプチド断片をプロテインシークエンサーに供し、配列決定を行なった。決定された部分アミノ酸配列を以下に記す。なお、(N)はN端末、(C)はC端末を示す。
(N)−Leu Glu Ala Gln Lys Gln Leu Asp Lys Leu Ser Thr Thr Tyr Asp Ala Asp −(C)
(N)−Glu Glu Tyr Gln Gly Lys Lys Tyr Glu Ala Glu Ala Ala Thr Val Thr Glu Ala Val Asn Gly Glu −(C)
実施例2の5)で取得したゲル濾過後の精製された不凍タンパク質溶液について、熱ヒステリシス活性の増強作用について測定した。
微生物由来の不凍タンパク質を含む精製液(蛋白濃度:10mg/ml)に、クエン酸三ナトリウム二水和物、コハク酸一ナトリウム、酢酸ナトリウム一水和物、乳酸、硫酸アンモニウム、ソルビトール、シュークロース、L-グルタミン酸ナトリウム一水和物、L-アスパラギン酸ナトリウムを、それぞれの添加物を各々最終濃度が100mM、500mMまたは1Mとなるように調整し添加した。各々の条件下の熱ヒステリシス活性を測定した。なお、微生物由来の不凍タンパク質に蒸留水を添加しコントロールとして使用した。
その結果、添加物による該微生物由来の不凍タンパク質の熱ヒステリシス活性の増強効果が認められた。該増強効果は、各添加物により異なり、本実施例の微生物由来の不凍タンパク質の熱ヒステリシス活性に増強効果として、より高い影響を与えた添加物は、500mM クエン酸三ナトリウム二水和物、500mM コハク酸一ナトリウム、500mM L-グルタミン酸ナトリウム一水和物、1M ソルビトールであった。
実施例2の5)で取得したゲル濾過後の精製された不凍タンパク質溶液について、氷の再結晶化を阻害する効果について評価した。
水を含む不凍タンパク質サンプルをシュクロース濃度30%に調製し、直径16mmの円形ガラススライドに1μlのサンプルをのせた。その上に同形状のガラススライドをのせ、スライドの厚さを均一にするため200g重をサンプルにかけた。リンカムL-600A温度制御顕微鏡ステージにサンプルをのせ、小さい氷をたくさん作るためにステージを50℃/minの速度でマイナス40℃まで急速凍結した。ステージの温度をマイナス9℃まで急速に昇温し、温度を一定に保ち、顕微鏡で氷サイズを観察した。氷結晶を顕微鏡カメラで0分と10分、30分後に記録した。氷結晶の直径は0分後には全て5μm以下からスタートしたが、コントロールとして不凍タンパク質サンプルの代わりに水を用いた場合は、10ないし30分後には氷結晶が再結晶化し、平均直径が5μmを超え10μmに達するほどにまで成長した。一方、不凍タンパク質サンプルが1mg/ml含まれるシュクロース溶液を用いた場合は、氷結晶の平均直径は30分後でも5μm以下であった。
Claims (12)
- 0.5℃以上の熱ヒステリシス活性を有する微生物由来の不凍タンパク質。
- 請求項1記載の微生物がフラボバクテリウム(Flavobacterium)属である微生物由来の不凍タンパク質。
- 以下の理化学的性質を有してなる微生物由来の不凍タンパク質。
(1)熱ヒステリシス活性:0.5℃以上であり、
(2)pH8.0の水溶液の存在下、50℃で30分の熱処理後も、80%以上の残存活性率を有し、
(3)安定pH範囲:pHが7〜9の範囲で安定であり、
(4)分子量:ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により約19kDaである。 - 配列番号1および/または配列番号2で表されるアミノ酸からなるポリペプチド配列を有し、かつ請求項1〜3記載の熱ヒステリシス活性を有するポリペプチド。
- 請求項4記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
- 微生物由来の不凍タンパク質の製造方法であって、微生物を20℃以下の環境下にさらす工程を用いてなる請求項1〜4記載の微生物由来の不凍タンパク質の製造方法。
- フラボバクテリウム(Flavobacterium)属の微生物を0℃〜20℃で培養する工程を用いてなる請求項1〜4記載の微生物由来の不凍タンパク質の製造方法。
- 請求項1〜4記載の微生物由来の不凍タンパク質を含有する氷結晶成長抑制剤。
- 請求項1〜4記載の微生物由来の不凍タンパク質を用いてなる氷結晶成長抑制方法。
- 請求項1〜4記載の微生物由来の不凍タンパク質を用いてなる水溶液の凝固点低下方法。
- 請求項1〜4記載の微生物由来の不凍タンパク質を用いてなる生物の保存方法。
- 請求項1〜4記載の微生物由来の不凍タンパク質を用いてなる食品の改質方法。
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JP4235083B2 (ja) | 2009-03-04 |
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