JP2004160574A - 溝加工用ブローチおよびブローチ加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ワークの穴内部の内径部と溝部とを同心にし、さらには、内径基準での同心外周加工を行い、溝部と外周部も同心にする溝加工用ブローチ及びブローチ加工方法を提供。
【解決手段】穴内部に軸方向に延びる溝部と内径部を有する中空部品の穴形状を加工する溝加工用ブローチ1において、少なくとも仕上げ部3aにおいて、溝部を加工するための溝部加工用切れ刃23,24,25と内径部を加工するための内径部加工用切れ刃26,27,28を同列に配置し、溝部加工用切れ刃と内径部加工用切れ刃間に切れ刃がなくかつ被加工物に接触しない逃げ部29,30,31を設ける。切れ刃の材質を超硬合金とし、熱処理前に、ワークの溝部と内径部に取り代を残してブローチ加工し、熱処理した後、溝部と内径部とを溝加工用ブローチ1で同時に仕上げ加工する。さらに、内径部を基準として、外周加工を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】穴内部に軸方向に延びる溝部と内径部を有する中空部品の穴形状を加工する溝加工用ブローチ1において、少なくとも仕上げ部3aにおいて、溝部を加工するための溝部加工用切れ刃23,24,25と内径部を加工するための内径部加工用切れ刃26,27,28を同列に配置し、溝部加工用切れ刃と内径部加工用切れ刃間に切れ刃がなくかつ被加工物に接触しない逃げ部29,30,31を設ける。切れ刃の材質を超硬合金とし、熱処理前に、ワークの溝部と内径部に取り代を残してブローチ加工し、熱処理した後、溝部と内径部とを溝加工用ブローチ1で同時に仕上げ加工する。さらに、内径部を基準として、外周加工を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は中空部品の溝加工用ブローチ及び溝加工用ブローチを用いたブローチ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トロイダル型無段変速機のバリエータ用ディスクの加工において、インボリュート歯面と内周面にとりしろを残し、熱処理後にブローチ加工し、加工した内周面を加工基準として、NC旋盤、または研削盤により、軌道面を仕上げ、該軌道面と、前記インボリュート歯面の同心度、傾きを改善した例が示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−28818号康応(第3頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、通常のインボリュートスプラインの歯面と内周面とをブローチ加工する場合、インボリュートスプライン歯面用切れ刃と内周面用切れ刃を同列に配置したブローチとすると製造面で問題があった。すなわち、インボリュートスプライン歯面に隣接して内周面があるため、研削加工において、スプライン歯面と内周面の境界部周辺の形状を正確に加工することは困難であった。また、一般的なブローチのようにスプライン歯面切れ刃と内周面切れ刃を別の列に交互に配置すれば、1パスのブローチ加工でスプライン歯面と内周面を加工することが可能であるが、この場合は、スプライン歯面と内周面の同心度は同列に配置した場合ほどの精度は得られず、また、仕上げ部が長くなり、ブローチ全長が長くなるという問題があった。前述した特許文献1にはこうしたブローチ及びブローチ加工方法の問題に対する示唆も開示もされていない。
【0005】
本発明の課題は、インボリュートスプラインの内径のような基準穴となるような内径部と、インボリュートスプラインの歯面のような溝部との同心精度を上げ、さらには、基準穴となる内径を基準軸として、外周加工等の同心加工を行い、溝部と外周部とが同心になるようにした溝加工用ブローチ及びブローチ加工方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明においては、穴内部に、軸方向に延びる、少なくとも2カ所の溝部と、内径部を有する中空部品の穴形状を加工する溝加工用ブローチにおいて、少なくとも仕上げ部において、前記溝部を加工するための溝部加工用切れ刃と前記内径部を加工するための内径部加工用切れ刃を同列に配置し、前記溝部加工用切れ刃と前記内径部加工用切れ刃の間に、切れ刃がなく、かつ被加工物に接触しない逃げ部を設けた溝加工用ブローチとした。
【0007】
(作用)
前記構成の溝加工用ブローチとしたので、ブローチの切れ刃は、溝部用と内径用の間に、切れ刃がなく被加工物に接触しない逃げ部があるため、同列に配置した場合でも製造が容易である。すなわち、本ブローチの刃部を研削加工する際に、溝部と内径部を連続的に加工する必要が無いため、製造が容易である。こうしたブローチで加工された被加工物は、溝部と内径部を同列に配置された切れ刃で同時に加工されるので、転写性が良く、溝部と内径部の同心度が良好なものとなる。また、長さも長くなることがない。なお、溝部の形状は、前述したようにインボリュートスプライン歯面、さらには歯溝、ボールスプラインなどで用いられるボール溝、その他の異形溝でも良い。
【0008】
特に、焼き入れ後に本溝加工用ブローチを用いて溝部と内径部の同時加工を行うことで、熱処理歪みを除去でき、完成品の溝部と内径部との同心度が保証される。そこで、本溝加工用ブローチはより好ましくは、切れ刃を超硬合金とし、焼き入れ後のロックウエル硬さHRc60程度の部品の加工ができるようにするのがよい(請求項2)。
【0009】
かかる溝加工用ブローチにより、焼き入れ後の被加工物をブローチ加工するときに、溝加工用ブローチの溝部と内径部との間の逃げ部と干渉しないようにしておく必要がある。そこで、請求項3に記載の発明においては、穴内部に、軸方向に延びる、少なくとも2カ所の溝部と、逃げ部と、内径部とを有する中空部品を、熱処理前に、前記溝部と前記内径部に取り代を残してブローチ加工で形成し、さらに、前記中空部品を熱処理した後、本発明の溝加工用ブローチを用いて、前記溝部と前記内径部とを同時に仕上げ加工するブローチ加工方法とした。即ち、熱処理後のブローチ加工で切れ刃のない逃げ部に相当する範囲を、熱処理前の加工で被加工物を逃がしておけばよい。
【0010】
さらに、請求項4に記載の発明においては、前述した請求項3記載のブローチ加工方法で加工された前記中空部品の前記内径部を加工基準として、前記中空部品の外周の一部を旋削または研削加工する中空部品の加工方法とした。これによれば、本溝加工用ブローチで仕上げられた内径部を加工基準として、後工程で外周部を旋削または研削加工すれば、内径部と外周部の同心度が保証され、内径部と溝部の同心度はブローチ加工で予め保証されているので、溝部と外周部の同心度が保証されることになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について無断変速機の可動シーブのボール溝、内径加工に適用した場合について図面を参照して説明する。図4は無断変速機の可動シーブの(a)は縦断面図、(b)はボール溝及び内径形状を示す正面図である。図4において、可動シーブ70には3カ所のボール溝71,72,73が軸方向に延びるように設けられ、このボール溝は可動シーブをボールを介して軸方向に移動させるためのものである。ボール溝71,72,73は可動シーブ回転中心軸76から一定の距離で、円周上に等間隔で配置されている。回転トルクを伝達するベルトがかけられるシーブ面75は通常、内径74を加工基準として研削加工され、ボール溝71,72,73の位置で決まる回転中心軸76との同心度が要求される。したがって、ボール溝71,72,73の加工をシーブ面75の加工の前に加工する場合は、回転中心軸76と内径74との同心度が必要となる。ボール溝の加工は、従来研削加工されていたが、内径74と同時にボール溝71,72,73をブローチ加工できれば、同心度の確保は容易である。
【0012】
図1は前述の可動シーブ70を加工するための本発明の実施の形態を示す溝加工用ブローチの概略図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のX−X線拡大断面図、図2は本発明の実施の形態を示す可動シーブのボール溝及び内径形状を示す正面図、図3は焼き入れ後のワークの切削状況を示す切削状況図である。図1に示すように、本発明の溝加工用ブローチ1は、本体2、歯部3,ナット7から構成され、本体2は高速度工具製であって、前つかみ部4、大径の前部ガイド部5、点線で表された棒状部6、図示しない棒状部後端のねじ部、後つかみ部8が順次設けられている。歯部3は円筒状であって外周に多数の切れ刃9が設けられ、棒状部6に嵌合されねじ部に螺着されたナット7で前部ガイド部5とナット間に挟持固定されている。歯部は下から順次大きくなるように切れ刃が設けられ、ブローチ刃が形成されている。歯部3には切れ刃の逃げ部29乃至34が設けられ、特に、仕上げ部3aにおいて、ボール溝部(溝部)加工用切れ刃23,24,25と内径部加工用切れ刃26,27,28を同列に配置している。切れ刃の材質は超硬合金製であり、熱処理後のロックウェル硬度60HRc程度の材料の切削に耐えうるものである。ボール溝部加工用切れ刃23,24,25と内径部加工用切れ刃26,27,28は高精度に研削仕上げされている。
【0013】
一方、図2に示すように、可動シーブ(ワーク)70に明けられる内径部及び溝部はボール溝部11,12,13を可動シーブ回転中心となるワーク中心軸10から一定の距離で、円周上に等間隔で配置し、内径14,15,16との間に、逃げ部17乃至22が設けられている。このものは、熱処理前の生加工において、ボール溝11,12,13及び、内径14,15,16に仕上げしろを残した形状にブローチ加工し、熱処理後、前述した図1に示す溝加工用ブローチでボール溝と内径を同時に仕上げ加工される。
【0014】
即ち、熱処理前に図3に示すように、仕上げ代が残るように、内径38,31と逃げ部40,41と溝部42からなる形状に加工する。次に熱処理により焼き入れを行い、熱処理後に43乃至48、11乃至13、14乃至16で示す加工面(取りしろ)を加工する。このとき、内径部43,45と溝部44を同列の刃で加工する。同様に内径部46,47、溝部48を次の同列の刃で加工し、これを繰り返して最終形状の内径部14,15,16、溝部(ボール溝)11,12,13に仕上げる。
【0015】
かかる本発明の溝加工用ブローチ1は、ボール溝加工用切れ刃23,24,25と内径加工用切れ刃26,27,28は同列に配置され高精度に研削仕上げされているので、図2に示すボール溝11,12,13と内径14,15,16の同心度が良好なものとなった。このとき、溝加工用ブローチ1の逃げ部29乃至34の位置は、被加工物の前加工形状で図3で示す逃げ部40,41あるいは図2で示す符号17乃至22の逃げ部が形成されているので、この部分に切れ刃が無くても被加工物の内径に削り残し部が発生することはない。このように加工された図2に示す内径14乃至16を基準として、後工程において図4に示すシーブ面75の研削加工をするようにした。この工程により内径14乃至16とシーブ面75の同心度が良好なものとなり、3カ所のボール溝11乃至13位置で決まる回転中心10(76)と、シーブ面75の同心度が良好なものとなる。
【0016】
本発明の実施の形態においては、無断変速機の可動シーブのボール溝、内径加工の例について説明したが、他にも、通常のボールスプライン溝と内径、図5に示すインボリュートスプライン溝の歯面と内径の同時加工にも容易に応用できる。すなわち、図5に示すように、スプライン溝の歯面35と内径部36の間に逃げ部37を設けたワーク70形状とし、スプライン加工用切れ刃と内径加工用切れ刃を同列に配置したブローチで加工するようにすればよい。なお、スプライン溝の外径35aは従来と同様、同列での同時加工はしない。同列での同時加工をする場合は、本発明の実施の形態の一つであり、外径35aと歯面35との間に逃げ部を設ける。
【0017】
また、本発明の実施の形態では、熱処理前の穴形状は、溝部と、逃げ部と、内径部とを有するものとしたが前述した本発明の実施の形態である図1で示したブローチで、図3に示すように逃げ部を大きくとらず、ブローチ側の逃げ部と干渉しない程度として前加工形状のワークを加工するようにしても良い。この場合、完成品形状は図6のような形状となり、ワーク70の内径部に削り残し部50乃至55が発生するが、仕上げ加工部57、58,59は溝部60、61,62との同心度が確保できるので、後工程で加工基準として57,58,59を使用するようにすればよい。
【0018】
【発明の効果】
本発明においては、少なくとも仕上げ部において、溝部加工用切れ刃と内径部加工用切れ刃を同列に配置し、前記溝部加工用切れ刃と前記内径部加工用切れ刃の間に、切れ刃がなく被加工物に接触しない逃げ部を設けたブローチとしたので、溝部加工用切れ刃と内径部加工用切れ刃を同列に配置したブローチを容易に製作できるものとなった。また、本発明の溝加工用ブローチで加工されたワークは、溝部と内径部との同心度が良好なものとなる。特に、超硬合金の切れ刃を有するブローチで、熱処理後の部品を同様に加工するようにすることで、熱処理歪みの影響を除去し、溝部と内径部との同軸度がさらに良好となり、前記内径部を加工基準として、外周部など他の部位を加工することにより、同加工部位と溝部との同心度が容易に確保できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】可動シーブを加工するための本発明の実施の形態を示す溝加工用ブローチの概略図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のX−X線拡大断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す可動シーブのボール溝及び内径形状を示す正面図
【図3】焼き入れ後のワークの切削状況を示す説明図であり、図2の上部の部分拡大図である。
【図4】無断変速機の可動シーブの(a)は縦断面図、(b)はボール溝及び内径形状の部分を示す正面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示すインボリュートスプライン加工穴の正面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態を示すブローチ加工穴の正面図である。
【符号の説明】
1 溝部加工用ブローチ
3a 仕上げ部
11、12、13、60、61、62 溝部
14、15、16、57、58、59 内径部
23、24、25 溝部加工用切れ刃
26、27、28 内径部加工用切れ刃
29乃至34 逃げ部
38乃至48 取り代
70 中空部品(ワーク、可動シーブ)
75 中空部品(ワーク)の外周
【発明の属する技術分野】
本発明は中空部品の溝加工用ブローチ及び溝加工用ブローチを用いたブローチ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トロイダル型無段変速機のバリエータ用ディスクの加工において、インボリュート歯面と内周面にとりしろを残し、熱処理後にブローチ加工し、加工した内周面を加工基準として、NC旋盤、または研削盤により、軌道面を仕上げ、該軌道面と、前記インボリュート歯面の同心度、傾きを改善した例が示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−28818号康応(第3頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、通常のインボリュートスプラインの歯面と内周面とをブローチ加工する場合、インボリュートスプライン歯面用切れ刃と内周面用切れ刃を同列に配置したブローチとすると製造面で問題があった。すなわち、インボリュートスプライン歯面に隣接して内周面があるため、研削加工において、スプライン歯面と内周面の境界部周辺の形状を正確に加工することは困難であった。また、一般的なブローチのようにスプライン歯面切れ刃と内周面切れ刃を別の列に交互に配置すれば、1パスのブローチ加工でスプライン歯面と内周面を加工することが可能であるが、この場合は、スプライン歯面と内周面の同心度は同列に配置した場合ほどの精度は得られず、また、仕上げ部が長くなり、ブローチ全長が長くなるという問題があった。前述した特許文献1にはこうしたブローチ及びブローチ加工方法の問題に対する示唆も開示もされていない。
【0005】
本発明の課題は、インボリュートスプラインの内径のような基準穴となるような内径部と、インボリュートスプラインの歯面のような溝部との同心精度を上げ、さらには、基準穴となる内径を基準軸として、外周加工等の同心加工を行い、溝部と外周部とが同心になるようにした溝加工用ブローチ及びブローチ加工方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明においては、穴内部に、軸方向に延びる、少なくとも2カ所の溝部と、内径部を有する中空部品の穴形状を加工する溝加工用ブローチにおいて、少なくとも仕上げ部において、前記溝部を加工するための溝部加工用切れ刃と前記内径部を加工するための内径部加工用切れ刃を同列に配置し、前記溝部加工用切れ刃と前記内径部加工用切れ刃の間に、切れ刃がなく、かつ被加工物に接触しない逃げ部を設けた溝加工用ブローチとした。
【0007】
(作用)
前記構成の溝加工用ブローチとしたので、ブローチの切れ刃は、溝部用と内径用の間に、切れ刃がなく被加工物に接触しない逃げ部があるため、同列に配置した場合でも製造が容易である。すなわち、本ブローチの刃部を研削加工する際に、溝部と内径部を連続的に加工する必要が無いため、製造が容易である。こうしたブローチで加工された被加工物は、溝部と内径部を同列に配置された切れ刃で同時に加工されるので、転写性が良く、溝部と内径部の同心度が良好なものとなる。また、長さも長くなることがない。なお、溝部の形状は、前述したようにインボリュートスプライン歯面、さらには歯溝、ボールスプラインなどで用いられるボール溝、その他の異形溝でも良い。
【0008】
特に、焼き入れ後に本溝加工用ブローチを用いて溝部と内径部の同時加工を行うことで、熱処理歪みを除去でき、完成品の溝部と内径部との同心度が保証される。そこで、本溝加工用ブローチはより好ましくは、切れ刃を超硬合金とし、焼き入れ後のロックウエル硬さHRc60程度の部品の加工ができるようにするのがよい(請求項2)。
【0009】
かかる溝加工用ブローチにより、焼き入れ後の被加工物をブローチ加工するときに、溝加工用ブローチの溝部と内径部との間の逃げ部と干渉しないようにしておく必要がある。そこで、請求項3に記載の発明においては、穴内部に、軸方向に延びる、少なくとも2カ所の溝部と、逃げ部と、内径部とを有する中空部品を、熱処理前に、前記溝部と前記内径部に取り代を残してブローチ加工で形成し、さらに、前記中空部品を熱処理した後、本発明の溝加工用ブローチを用いて、前記溝部と前記内径部とを同時に仕上げ加工するブローチ加工方法とした。即ち、熱処理後のブローチ加工で切れ刃のない逃げ部に相当する範囲を、熱処理前の加工で被加工物を逃がしておけばよい。
【0010】
さらに、請求項4に記載の発明においては、前述した請求項3記載のブローチ加工方法で加工された前記中空部品の前記内径部を加工基準として、前記中空部品の外周の一部を旋削または研削加工する中空部品の加工方法とした。これによれば、本溝加工用ブローチで仕上げられた内径部を加工基準として、後工程で外周部を旋削または研削加工すれば、内径部と外周部の同心度が保証され、内径部と溝部の同心度はブローチ加工で予め保証されているので、溝部と外周部の同心度が保証されることになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について無断変速機の可動シーブのボール溝、内径加工に適用した場合について図面を参照して説明する。図4は無断変速機の可動シーブの(a)は縦断面図、(b)はボール溝及び内径形状を示す正面図である。図4において、可動シーブ70には3カ所のボール溝71,72,73が軸方向に延びるように設けられ、このボール溝は可動シーブをボールを介して軸方向に移動させるためのものである。ボール溝71,72,73は可動シーブ回転中心軸76から一定の距離で、円周上に等間隔で配置されている。回転トルクを伝達するベルトがかけられるシーブ面75は通常、内径74を加工基準として研削加工され、ボール溝71,72,73の位置で決まる回転中心軸76との同心度が要求される。したがって、ボール溝71,72,73の加工をシーブ面75の加工の前に加工する場合は、回転中心軸76と内径74との同心度が必要となる。ボール溝の加工は、従来研削加工されていたが、内径74と同時にボール溝71,72,73をブローチ加工できれば、同心度の確保は容易である。
【0012】
図1は前述の可動シーブ70を加工するための本発明の実施の形態を示す溝加工用ブローチの概略図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のX−X線拡大断面図、図2は本発明の実施の形態を示す可動シーブのボール溝及び内径形状を示す正面図、図3は焼き入れ後のワークの切削状況を示す切削状況図である。図1に示すように、本発明の溝加工用ブローチ1は、本体2、歯部3,ナット7から構成され、本体2は高速度工具製であって、前つかみ部4、大径の前部ガイド部5、点線で表された棒状部6、図示しない棒状部後端のねじ部、後つかみ部8が順次設けられている。歯部3は円筒状であって外周に多数の切れ刃9が設けられ、棒状部6に嵌合されねじ部に螺着されたナット7で前部ガイド部5とナット間に挟持固定されている。歯部は下から順次大きくなるように切れ刃が設けられ、ブローチ刃が形成されている。歯部3には切れ刃の逃げ部29乃至34が設けられ、特に、仕上げ部3aにおいて、ボール溝部(溝部)加工用切れ刃23,24,25と内径部加工用切れ刃26,27,28を同列に配置している。切れ刃の材質は超硬合金製であり、熱処理後のロックウェル硬度60HRc程度の材料の切削に耐えうるものである。ボール溝部加工用切れ刃23,24,25と内径部加工用切れ刃26,27,28は高精度に研削仕上げされている。
【0013】
一方、図2に示すように、可動シーブ(ワーク)70に明けられる内径部及び溝部はボール溝部11,12,13を可動シーブ回転中心となるワーク中心軸10から一定の距離で、円周上に等間隔で配置し、内径14,15,16との間に、逃げ部17乃至22が設けられている。このものは、熱処理前の生加工において、ボール溝11,12,13及び、内径14,15,16に仕上げしろを残した形状にブローチ加工し、熱処理後、前述した図1に示す溝加工用ブローチでボール溝と内径を同時に仕上げ加工される。
【0014】
即ち、熱処理前に図3に示すように、仕上げ代が残るように、内径38,31と逃げ部40,41と溝部42からなる形状に加工する。次に熱処理により焼き入れを行い、熱処理後に43乃至48、11乃至13、14乃至16で示す加工面(取りしろ)を加工する。このとき、内径部43,45と溝部44を同列の刃で加工する。同様に内径部46,47、溝部48を次の同列の刃で加工し、これを繰り返して最終形状の内径部14,15,16、溝部(ボール溝)11,12,13に仕上げる。
【0015】
かかる本発明の溝加工用ブローチ1は、ボール溝加工用切れ刃23,24,25と内径加工用切れ刃26,27,28は同列に配置され高精度に研削仕上げされているので、図2に示すボール溝11,12,13と内径14,15,16の同心度が良好なものとなった。このとき、溝加工用ブローチ1の逃げ部29乃至34の位置は、被加工物の前加工形状で図3で示す逃げ部40,41あるいは図2で示す符号17乃至22の逃げ部が形成されているので、この部分に切れ刃が無くても被加工物の内径に削り残し部が発生することはない。このように加工された図2に示す内径14乃至16を基準として、後工程において図4に示すシーブ面75の研削加工をするようにした。この工程により内径14乃至16とシーブ面75の同心度が良好なものとなり、3カ所のボール溝11乃至13位置で決まる回転中心10(76)と、シーブ面75の同心度が良好なものとなる。
【0016】
本発明の実施の形態においては、無断変速機の可動シーブのボール溝、内径加工の例について説明したが、他にも、通常のボールスプライン溝と内径、図5に示すインボリュートスプライン溝の歯面と内径の同時加工にも容易に応用できる。すなわち、図5に示すように、スプライン溝の歯面35と内径部36の間に逃げ部37を設けたワーク70形状とし、スプライン加工用切れ刃と内径加工用切れ刃を同列に配置したブローチで加工するようにすればよい。なお、スプライン溝の外径35aは従来と同様、同列での同時加工はしない。同列での同時加工をする場合は、本発明の実施の形態の一つであり、外径35aと歯面35との間に逃げ部を設ける。
【0017】
また、本発明の実施の形態では、熱処理前の穴形状は、溝部と、逃げ部と、内径部とを有するものとしたが前述した本発明の実施の形態である図1で示したブローチで、図3に示すように逃げ部を大きくとらず、ブローチ側の逃げ部と干渉しない程度として前加工形状のワークを加工するようにしても良い。この場合、完成品形状は図6のような形状となり、ワーク70の内径部に削り残し部50乃至55が発生するが、仕上げ加工部57、58,59は溝部60、61,62との同心度が確保できるので、後工程で加工基準として57,58,59を使用するようにすればよい。
【0018】
【発明の効果】
本発明においては、少なくとも仕上げ部において、溝部加工用切れ刃と内径部加工用切れ刃を同列に配置し、前記溝部加工用切れ刃と前記内径部加工用切れ刃の間に、切れ刃がなく被加工物に接触しない逃げ部を設けたブローチとしたので、溝部加工用切れ刃と内径部加工用切れ刃を同列に配置したブローチを容易に製作できるものとなった。また、本発明の溝加工用ブローチで加工されたワークは、溝部と内径部との同心度が良好なものとなる。特に、超硬合金の切れ刃を有するブローチで、熱処理後の部品を同様に加工するようにすることで、熱処理歪みの影響を除去し、溝部と内径部との同軸度がさらに良好となり、前記内径部を加工基準として、外周部など他の部位を加工することにより、同加工部位と溝部との同心度が容易に確保できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】可動シーブを加工するための本発明の実施の形態を示す溝加工用ブローチの概略図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のX−X線拡大断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す可動シーブのボール溝及び内径形状を示す正面図
【図3】焼き入れ後のワークの切削状況を示す説明図であり、図2の上部の部分拡大図である。
【図4】無断変速機の可動シーブの(a)は縦断面図、(b)はボール溝及び内径形状の部分を示す正面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示すインボリュートスプライン加工穴の正面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態を示すブローチ加工穴の正面図である。
【符号の説明】
1 溝部加工用ブローチ
3a 仕上げ部
11、12、13、60、61、62 溝部
14、15、16、57、58、59 内径部
23、24、25 溝部加工用切れ刃
26、27、28 内径部加工用切れ刃
29乃至34 逃げ部
38乃至48 取り代
70 中空部品(ワーク、可動シーブ)
75 中空部品(ワーク)の外周
Claims (4)
- 穴内部に、軸方向に延びる、少なくとも2カ所の溝部と、内径部を有する中空部品の穴形状を加工する溝加工用ブローチにおいて、少なくとも仕上げ部において、前記溝部を加工するための溝部加工用切れ刃と前記内径部を加工するための内径部加工用切れ刃を同列に配置し、前記溝部加工用切れ刃と前記内径部加工用切れ刃の間に、切れ刃がなく、かつ被加工物に接触しない逃げ部が設けられていることを特徴とする溝加工用ブローチ。
- 前記溝部加工用切れ刃及び前記内径部加工用切れ刃の材質が超硬合金であることを特徴とする請求項1に記載の溝加工用ブローチ。
- 穴内部に、軸方向に延びる、少なくとも2カ所の溝部と、逃げ部と、内径部とを有する中空部品を、熱処理前に、前記溝部と前記内径部に取り代を残してブローチ加工で形成し、さらに、前記中空部品を熱処理した後、請求項1または2に記載の溝加工用ブローチを用いて、前記溝部と前記内径部とを同時に仕上げ加工することを特徴とするブローチ加工方法。
- 請求項3のブローチ加工方法で加工された前記中空部品の前記内径部を加工基準として、前記中空部品の外周の一部を旋削または研削加工することを特徴とする、中空部品の加工方法。
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- 2002-11-12 JP JP2002327702A patent/JP2004160574A/ja active Pending
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