JP2004160419A - 接着剤塗布装置及びインクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents

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弓子 大橋
Akihiro Oshima
章寛 大嶋
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Abstract

【課題】雰囲気温度によらず所望の厚みで接着剤を引き伸ばす。
【解決手段】接着剤塗布装置は、フィルムに対し一定の間隔を空けて固定されたスキージを備えており、フィルム上に接着剤を供給すると共にそのフィルムを引出モータによりスキージ側へ引き出すことで、フィルム上の接着剤をスキージによって引き伸ばす。ここで、フィルムの引出し速度は、次のように決定される。即ち、引出モータを駆動していない状態にて(S110:N)、雰囲気温度が18℃未満であれば引出し速度を60mm/sとし(S120:Y,S130)、18℃以上23℃未満であれば70mm/sとし(S140:Y,S150)、23℃以上28℃未満であれば80mm/sとし(S160:Y,S170)、28℃以上であれば90mm/sとする(S180)。この結果、雰囲気温度の影響で接着剤の粘度が変化しても、所望の厚みで接着剤を引き伸ばすことができる。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スキージを用いてシート材に接着剤を塗布する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えばインクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドは、複数の部材を接着剤で貼り合わせることによって製造される。
そして、部材に接着剤を塗布する方法としては、まずフィルムの一面上に接着剤を適量滴下し、これをブレードを用いて引き伸ばしてフィルムの一面上に均一の厚みで塗布し、このフィルムの他面側を所定のローラの外周面上に接触させてローラを流路板(部材)の面上で転がすことにより、フィルムの一面上の接着剤を流路板の面上に転写するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−127414号公報(第3−4頁、第3図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に接着剤は温度によって粘度が変化するため、フィルム上に引き伸ばされる接着剤の厚みが雰囲気温度によって変わってしまうという問題があった。こうしてフィルム上に引き伸ばされる接着剤の厚みが変化すると、フィルムから部材に転写される接着剤の厚みにばらつきが生じることとなり、接着剤の量の不足によるリークや、接着剤の量が多すぎることによるはみ出し等が発生しやすくなってしまう。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、雰囲気温度によらず所望の厚みで接着剤を引き伸ばすことを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の接着剤塗布装置では、接着剤供給手段が、シート材(例えばフィルム)の上に接着剤を供給し、引伸ばし手段が、接着剤供給手段により接着剤が供給されたシート材とスキージ(ブレード)とを相対移動させることにより、シート材上の接着剤をスキージによって引き伸ばす。そして更に、本装置では、温度検出手段が、雰囲気温度(例えば室温)を検出し、速度変更手段が、温度検出手段により検出される雰囲気温度に応じて、引伸ばし手段がシート材とスキージとを相対移動させる速度を変更する。
【0007】
このような請求項1の接着剤塗布装置によれば、雰囲気温度の影響によって接着剤の粘度が変化しても、シート材上に引き伸ばされる接着剤の厚みを所望の厚みに調整することができる。即ち、シート材上に引き伸ばされる接着剤の厚みは、接着剤の粘度に応じて変化するだけでなく、シート材とスキージとを相対移動させる速度に応じても変化することから、雰囲気温度に応じてシート材とスキージとの相対速度を変更することにより、接着剤の厚みを調整することができるのである。
【0008】
なお、雰囲気温度の影響を緩和するために、ヒータを用いて温度制御する構成も考えられるが、ヒータによって余分なエネルギーが必要になる点や、接着剤の反応を過剰に進行させてしまう点等が問題となる。これに対し、請求項1の接着剤塗布装置では、こうした問題が生じない。
【0009】
ところで、速度変更手段がシート材とスキージとを相対移動させる速度は、請求項2に記載のように、温度検出手段により検出される雰囲気温度が高いほど速くするとよい。一般に、接着剤の粘度はその温度が高いほど低くなりシート材上に引き伸ばされる接着剤の厚みが薄くなる一方、シート材とスキージとを相対移動させる速度を速くするほどシート材上に引き伸ばされる接着剤の厚みが厚くなるため、雰囲気温度の変化による影響を緩和することができる。
【0010】
また更に、請求項3に記載のように、速度変更手段が、スキージによりシート材上の接着剤が引き伸ばされている間は、シート材とスキージとを相対移動させる速度を一定に保つようにすれば、接着剤が引き伸ばされている際にその厚みが変化してしまうことを防ぐことができる。
【0011】
次に、請求項4に記載の製造方法は、インクジェットヘッドを複数の部材を接着剤で貼り合わせて製造するものであり、上記請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の接着剤塗布装置を用いてシート材に接着剤を塗布する工程と、このシート材の接着剤が塗布された面を、上記インクジェットヘッドを構成する部材における接着剤を塗布すべき面に押し当てることによりその部材に接着剤を転写する工程とを含むことを特徴としている。このインクジェットヘッドの製造方法によれば、部材に転写される接着剤の厚みを雰囲気温度に関係なくほぼ一定に保つことができるため、安定した性能のインクジェットヘッドを製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
まず図1は、本実施形態の接着剤塗布装置の概略構成図であり、図2は、接着剤塗布装置の電気的構成を表わすブロック図である。
【0013】
図1に示すように、接着剤塗布装置100は、フィルム102上に接着剤104を供給するシリンダ106と、フィルム102に対し一定の間隔を空けて固定された板状のスキージ108とを備えている。
また更に、図2に示すように、本接着剤塗布装置100は、スキージ108の先端付近で雰囲気温度を検出する温度センサ110と、シリンダ106から吐出される接着剤104の量を調節する接着剤調節器112と、フィルム102をシリンダ106からスキージ108へ向かう方向に引き出す引出モータ114と、周知のCPU116、ROM118及びRAM120を有した制御装置122とを備えている。なお、フィルム102は、ロール状に巻かれた長尺のものであり、引出モータ114の駆動量に応じた長さだけ引き出される。
【0014】
そして、本接着剤塗布装置100は、フィルム102上に接着剤104を一定の厚みで引き伸ばす引き伸ばし動作を行う。
具体的には、制御装置122が、接着剤調節器112を制御してシリンダ106から接着剤104を吐出させると共に、引出モータ114にフィルム102を一定の長さだけ引き出させる。これにより、シリンダ106からフィルム102上に吐出された接着剤104がスキージ108側へ搬送され、スキージ108の先端とフィルム102との間を通過する際に一定の厚みに引き伸ばされる。
【0015】
また、制御装置122は、引出モータ114にフィルム102を引き出させる際に、RAM120に記憶される引出速度値に従ってフィルム102の引き出し速度を決定するようになっている。
ここで、上記引出速度値を設定するために制御装置122のCPU116が行う引出速度値設定処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。なお、本引出速度値設定処理は、本接着剤塗布装置100の電源がオンされることにより開始される。
【0016】
この引出速度値設定処理が開始されると、まずS110にて、引出モータ114を駆動中であるか否か(即ち、接着剤104の引き伸ばし動作を行っている状態か否か)を判定し、引出モータ114を駆動中でないと判定した場合にのみ、S120へ移行する。つまり、接着剤104の引き伸ばし動作を行っている最中には、後述するS120以降の処理を行わないようになっている。
【0017】
そして、S120では、温度センサ110による検出温度が18℃未満であるか否かを判定する。
このS120で、検出温度が18℃未満であると判定した場合には、S130へ移行し、引出速度値を60mm/secとしてRAM120に記憶させた後、S110へ戻る。
【0018】
一方、S120で、検出温度が18℃未満でないと判定した場合には、S140へ移行し、検出温度が18℃以上23℃未満であるか否かを判定する。
そして、S140で、検出温度が18℃以上23℃未満であると判定した場合には、S150へ移行し、引出速度値を70mm/secとしてRAM120に記憶させた後、S110へ戻る。
【0019】
一方、S140で、検出温度が18℃以上23℃未満でないと判定した場合には、S160へ移行し、検出温度が23℃以上28℃未満であるか否かを判定する。
このS160で、検出温度が23℃以上28℃未満であると判定した場合には、S170へ移行し、引出速度値を80mm/secとしてRAM120に記憶させた後、S110へ戻る。
【0020】
一方、S160で、検出温度が23℃以上28℃未満でないと判定した場合(即ち、検出温度が28℃以上である場合)には、S180へ移行し、引出速度値を90mm/secとしてRAM120に記憶させた後、S110へ戻る。
以上のような引出速度設定値処理が実行されることにより、接着剤104の引き伸ばし動作は、雰囲気温度に応じた引き出し速度でフィルム102が引き出されることにより行われる。また、上記S110の処理により、引き伸ばし動作中はフィルム102の引き出し速度が一定に保たれる。
【0021】
次に、フィルム102上に引き伸ばした接着剤104の転写方法について説明する。
図4は、接着剤塗布対象の部材(ワーク)Wに対し、フィルム102上に引き伸ばされた接着剤104を転写する工程を説明する説明図である。
【0022】
図4(a)〜図4(c)に示すように、まず部材Wにおける接着剤104を転写しようとする面に、フィルム102の接着剤104が引き伸ばされた面を、ローラ124を用いて端から順に押し当てていく。そして、図4(d)に示すように、部材Wをフィルム102から引き離すと、部材Wに接着剤104が転写された状態となる。
【0023】
ところで、上記引出速度設定値処理(図3)では、温度センサ110による検出温度が高いほど引出速度値を高い値にする(即ち、スキージ108による接着剤104の引き伸ばし速度を速くする)ようにしているが、これは雰囲気温度の変化に対して部材Wに転写される接着剤104の厚さを一定に保つためである。
【0024】
ここで、本発明者が行った試験について説明する。本発明者は、フィルム102上の接着剤104をスキージ108によって引き伸ばし、そのフィルム102上の接着剤104をチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる部材Wに転写した後、その部材Wの重量を測定する試験を行った。
【0025】
図5は、この試験の結果を表わすグラフである。なお、グラフにおいて、縦軸の接着剤転写重量とは、接着剤104を転写後のPZTの部材Wの重量を8枚まとめて測定した値である。また、横軸のスキージ速度とは、フィルム102を基準としたスキージ108の移動速度(即ち、スキージ108によって接着剤104を引き伸ばす速度)である。
【0026】
図5から明らかなように、雰囲気温度が一定の状態では、スキージ速度の増加に伴い、接着剤転写重量がほぼ一定の割合で増加する。これは、スキージ速度が速いほどフィルム102上に接着剤104が厚く引き伸ばされるためであると考えられる。また、雰囲気温度が低い場合と高い場合とでは、雰囲気温度が低い方が接着剤転写重量が増加する。これは、雰囲気温度が低いほど接着剤104の粘度が高くなるため、フィルム102上に接着剤104が厚く引き伸ばされると共に、部材Wに転写されやすくなるためであると考えられる。
【0027】
この結果から、雰囲気温度が高い場合には、スキージ速度を速くし、雰囲気温度が低い場合には、スキージ速度を遅くすることで、雰囲気温度の違いによる部材Wに転写される接着剤104の量のばらつきを低減することができることが分かる。
【0028】
次に、本接着剤塗布装置100を用いて製造されるインクジェットヘッドについて説明する。
図6は、インクジェットヘッドの平面図である。図7は、図6内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。図8は、図7内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。図9は、図6に示すインクジェットヘッドの要部断面図である。図10は、図6に示すインクジェットヘッドの要部分解斜視図である。
【0029】
図6に示すように、インクジェットヘッド1は、一方向(主走査方向)に延在した矩形平面形状をしている。インクジェットヘッド1は、後述する多数の圧力室10やインク排出口(ノズル)8(共に図7〜図9参照)が形成された流路ユニット4を有しており、その上面には、千鳥状になって2列に配列された複数の台形のアクチュエータユニット21が接着されている。より詳細には、各アクチュエータユニット21は、その平行対向辺(上辺及び下辺)が流路ユニット4の長手方向に沿うように配置されている。また、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士が、流路ユニット4の幅方向にオーバーラップしている。なお、図6〜図10では図示省略しているが、アクチュエータユニット21上には、後述する個別電極35及び共有電極34の電位を制御する信号を供給するためのフレキシブルプリント回路(FPC:flexible printed circuit)50(図12参照)がそれぞれ貼り付けられている。
【0030】
アクチュエータユニット21の接着領域と対応した流路ユニット4の下面は、インク吐出領域となっている。インク吐出領域の表面には、後述するように、多数のインク排出口8がマトリクス状に多数配列されている。また、流路ユニット4の上方には、その長手方向に沿ってインク溜まり3が配置されている。インク溜まり3は、その一端に設けられた開口3aを介してインクタンク(図示せず)に連通しており、常にインクで満たされている。インク溜まり3には、その延在方向に沿って開口3bが2つずつ対になって、アクチュエータユニット21が設けられていない領域に千鳥状に設けられている。
【0031】
図6及び図7に示すように、インク溜まり3は、開口3bを介してその下層にある流路ユニット4内のマニホールド5と連通している。開口3bには、インク内に含有される塵埃などを捕獲するためのフィルタ(図示せず)が設けられていてよい。マニホールド5は、その先端部が2つに分岐して副マニホールド5aとなっている。1つのアクチュエータユニット21の下部には、当該アクチュエータユニット21に対してインクジェットヘッド1の長手方向両隣にある2つの開口3bからそれぞれ2つの副マニホールド5aが進入してきている。つまり、1つのアクチュエータユニット21の下部には、合計で4つの副マニホールド5aがインクジェットヘッド1の長手方向に沿って延在している。各副マニホールド5aには、インク溜まり3から供給されたインクが満たされている。
【0032】
図7及び図8に示すように、アクチュエータユニット21に対応したインク吐出領域の表面には、多数のインク排出口8が配列されている。各インク吐出口8は、図9からも分かるように、先細形状のノズルとなっており、平面形状がほぼ菱形の圧力室(キャビティ)10(長さ900μm、幅350μm)及びアパーチャ12を介して副マニホールド5aと連通している。このようにして、インクジェットヘッド1には、インクタンクからインク溜まり3、マニホールド5、副マニホールド5a、アパーチャ12及び圧力室10を経てインク吐出口8に至るインク流路32が形成されている。なお、図7及び図8において、図面を分かりやすくするために、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室10及びアパーチャ12を実線で描いている。更に、図7及び図8において、後述する溝部53及び導電膜38の図示を省略している。
【0033】
また、図8からも明らかなように、アクチュエータユニット21の下方にあるインク吐出領域に対応した流路ユニット4内では、1つの圧力室10と連通したアパーチャ12が当該圧力室に隣接する圧力室10と重複するように、圧力室10同士が密着して配列されている。このようなことが可能なことの一因は、図9にも示すように、圧力室10とアパーチャ12とを異なる高さに設けるようにしたからである。このようにすることで、圧力室10を高密度に配列することが可能であり、比較的小さな占有面積のインクジェットヘッド1により高解像度の画像形成を実現している。
【0034】
圧力室10は、図7及び図8に描かれた平面内において、インクジェットヘッド1の長手方向(第1配列方向)と、インクジェットヘッド1の幅方向からやや傾いた方向(第2配列方向)との2方向にインク吐出領域内で配列されている。インク吐出口8は、第1配列方向には50dpiで配列されている。一方で、圧力室10は、第2配列方向には1つのインク吐出領域内に最大で12個が含まれるように配列されており、そして、第2配列方向に12個の圧力室10が配列されたことによる第1配列方向への変位は圧力室10の1つ分に相当している。これにより、インクジェットヘッド1の全幅内で、第1配列方向に隣接する2つのインク吐出口8間の距離だけ離隔した範囲には、12個のインク吐出口8が存在するようになっている。なお、各インク吐出領域の第1配列方向についての両端部(アクチュエータユニット21の斜辺に相当する)では、インクジェットヘッド1の幅方向に対向するインク吐出領域と相補関係となることで上記条件を満たしている。そのため、本インクジェットヘッド1では、第1及び第2配列方向に配列された多数のインク吐出口8から、インクジェットヘッド1の幅方向への用紙に対する相対的な移動に伴って順次インク滴を吐出させることで、主走査方向に600dpiで印刷を行うことが可能になっている。
【0035】
次に、インクジェットヘッド1の断面構造について説明する。
図9及び図10に示すように、インクジェットヘッド1の底部側の要部は、上から、アクチュエータユニット21、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャプレート24、サプライプレート25、マニホールドプレート26,27,28、カバープレート29、ノズルプレート30の合計10枚のシート材が積層された積層構造を有している。これらのうち、アクチュエータユニット21を除いた9枚のプレートから流路ユニット4が構成されている。
【0036】
アクチュエータユニット21は、後で詳述するように、4枚の圧電シートが積層され且つ電極が配されることによってそのうちの最上層だけが活性層とされ残り3層が非活性層とされたものである。キャビティプレート22は、圧力室10に対応するほぼ菱形の開口が多数設けられた金属プレートである。ベースプレート23は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10とアパーチャ12との連絡孔及び圧力室10からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。アパーチャプレート24は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、アパーチャ12のほかに圧力室10からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。サプライプレート25は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、アパーチャ12と副マニホールド5aとの連絡孔及び圧力室10からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。マニホールドプレート26,27,28は、副マニホールド5aに加えて、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。カバープレート29は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。ノズルプレート30は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、ノズルとして機能する先細のインク吐出口8がそれぞれ設けられた金属プレートである。
【0037】
これら10枚のシート21〜30は、図9に示すようなインク流路32が形成されるように、互いに位置合わせして積層される。このインク流路32は、副マニホールド5aからまず上方へ向かい、アパーチャ12において水平に延在し、それから更に上方に向かい、圧力室10において再び水平に延在し、それからしばらくアパーチャ12から離れる方向に斜め下方に向かってから垂直下方にインク吐出口8へと向かう。
【0038】
次に、アクチュエータユニット21の詳細な構造について説明する。
図11は、図8に示す領域におけるアクチュエータユニット21の拡大平面図である。図12は、図11のA−A線に沿ったインクジェットヘッド1の部分断面図である。
【0039】
図11に示すように、アクチュエータユニット21の上面であって平面視で各圧力室10と実質的に重なり合う位置には、厚さ1.1μm程度の個別電極35がそれぞれ設けられている。個別電極35は、ほぼ菱形の電極部35aと、電極部35aの一方の鋭角部から連続して形成された矢印形状の電極部35bとからなる。電極部35aは、圧力室10よりも一回り小さくほぼこれと相似形状を有しており、平面視において圧力室10に収まるように配置されている。また、電極部35bは、平面視においてそのほとんどの領域が圧力室10からはみ出している。
【0040】
アクチュエータユニット21の上面の個別電極35以外の領域は、そのほとんどが個別電極35と同じ厚みで同じ材料からなる導電膜38で被覆されている。個別電極35と導電膜38との間は、個別電極35の外縁に沿ってアクチュエータユニット21の表面に形成された幅30μm程度、深さ5〜10μm程度の溝部53によって絶縁されている。後述するように、溝部53によって隣接する個別電極35同士の相互干渉が軽減されるので、クロストークの発生を抑制することが可能となっている。
【0041】
図12に示すように、アクチュエータユニット21は、それぞれ厚みが15μm程度で同じになるように形成された4枚の圧電シート41,42,43,44を含んでいる。そして、アクチュエータユニット21には、個別電極35及び共通電極34の電位を制御する信号を供給するためのFPC50が貼り付けられている。圧電シート41〜44は連続平板層であり、アクチュエータユニット21は、インクジェットヘッド1内の1つのインク吐出領域内に形成された多数の圧力室10に跨って配置されている。圧電シート41〜44が連続平板層として多数の圧力室10に跨って配置されることで、圧電素子の機械的剛性を高く保つことができるので、インクジェットヘッド1におけるインク吐出性能の応答性を高めることができるようになっている。本実施形態において、圧電シート41〜44は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなるものである。
【0042】
最上層にある圧電シート41とその下方に隣接した圧電シート42との間には、シート全面に形成された厚み2μm程度の共通電極34が介在している。また、上述したように、アクチュエータユニット21の上面つまり圧電シート41の上面には、平面形状が圧力室10と相似形状(長さ850μm、幅250μm)を有し且つ積層方向への射影領域が圧力室領域に含まれる電極部35aと矢印形状の電極部35bとからなる個別電極35が、圧力室10毎に形成されている。更に、圧電シート43と圧電シート44との間、及び、圧電シート42と圧電シート43との間には、アクチュエータユニット21を補強するための補強用金属膜36a,36bがそれぞれ介在している。補強用金属膜36a,36bは、共通電極34とほぼ同じ厚さを有している。本実施形態において、個別電極35、導電膜38は下地にNi(膜厚1μm程度)、表層にAu(膜厚0.1μm程度)が形成された積層金属材料からなるものであり、共通電極34及び補強用金属膜36a,36bは、Ag−Pd系の金属材料からなるものである。補強用金属膜36a,36bは電極として作用するものではなく必ずしも設ける必要はないが、補強用金属膜36a,36bがあることで焼結後の圧電シート41〜44の脆さを補うことができ、圧電シート41〜44がハンドリングし易くなるという利点がある。
【0043】
共通電極34は、図示しない領域においてFPC50を介して接地されている。これにより、共通電極34は、全ての圧力室10に対応する領域において等しくグランド電位に保たれている。また、個別電極35は、各圧力室10に対応するもの毎に電位を制御することができるように、矢印形状の電極部35bにおいて、個別電極35毎に独立してFPC50内に配線されたリード線(図示せず)と接触しており、このリード線を介して図示しないドライバに接続されている。このように、本実施形態では、平面視において圧力室10の外側にある電極部35bにおいて個別電極35とFPC50とが接続されていることにより、アクチュエータユニット21の積層方向への伸縮が阻害されることが少なく、圧力室10の容積変化量を大きくすることができるようになっている。なお、共通電極34は、積層方向への射影領域が圧力室領域を含むように或いは射影領域が圧力室領域に含まれるように圧力室10毎に多数形成されたものであってもよく、必ずしもシート全面に形成された1枚の導電シートである必要はない。ただし、このとき、圧力室10に対応する部分が全て同一電位となるように共通電極同士が電気的に接続されていることが必要である。
【0044】
本実施形態のインクジェットヘッド1において、圧電シート41〜44の分極方向はその厚み方向となっている。つまり、アクチュエータユニット21は、最上側(つまり、圧力室10から最も離れた)の圧力シート41を活性層とし且つ下側(つまり、圧力室10に近い)3枚の圧電シート42〜44を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。従って、個別電極35を正又は負の所定電位とすると、例えば電界と分極とが同方向であれば活性層である圧電シート41の電極に挟まれた部分が分極方向と直角方向に縮む。一方、圧電シート42〜44は、電界の影響を受けないため自発的には縮まないので、最上層の圧電シート41と下層の圧電シート42〜44との間で、シート間で分極方向への歪みに差を生じることとなり、圧電シート41〜44全体が非活性側に凸となる変形を生じる(ユニモルフ変形)。このとき、図12で示したように、圧電シート41〜44の下面は圧力室を区画する隔壁(キャビティプレート)22の上面に固着されているので、結果的に圧電シート41〜44は圧力室側へ凸になるように変形する。このため、圧力室10の容積が低下して、インクの圧力が上昇し、インク吐出口8からインクが吐出される。その後、個別電極35への駆動電圧の印加が停止されれば、圧電シート41〜44は元の形状に戻って、圧力室10の容積が元の容積に戻るので、インクをマニホールド5側から吸い込む。
【0045】
なお、他の駆動方法として、予め個別電極35に電圧を印加しておき、吐出要求がある毎に一旦電圧の印加を停止し、その後所定のタイミングにて再び電圧を印加する方法を用いることもできる。この場合は、電圧の印加が停止されたタイミングで、圧電シート41〜44が元の形状に戻ることにより、圧力室10の容積は、初期状態(予め電圧が印加された状態)と比較して増加し、インクがマニホールド5側から吸い込まれ、その後再び電圧が印加されたタイミングで、圧電シート41〜44が圧力室側へ凸となるように変形し、圧力室の容積低下によりインクへの圧力が上昇し、インクが吐出される。
【0046】
また、例えば電界と分極とが逆方向であれば電極に挟まれた活性層である圧電シート41の一部が分極方向と直角方向に伸びる。従って、圧電シート41〜44の電極34,35に挟まれた部分は、圧電横効果により、圧力室側に凹となるように湾曲する。このため、圧力室10の容積が増加して、インクをマニホールド5側から吸い込む。その後、個別電極35への駆動電圧の印加が停止されれば、圧電シート41〜44は元の形状に戻って、圧力室10の容積が元の容積に戻るので、インクをノズルから吐出する。
【0047】
このように、本実施形態のインクジェットヘッド1では、アクチュエータユニット21の圧力室から最も離れた圧電シート41が活性層であって、その圧力室側にある面とは反対側の面(上面)に個別電極35が形成されていると共に、圧電シート41の上面に個別電極35同士の離隔を保つような導電膜38が形成されている。そのため、接着力の強化のために個別電極35だけでなく圧電シート41上の全面にFPC50を接着により貼り合わせた場合に、個別電極35以外の領域に個別電極35とほぼ同じ厚さを有する導電膜38が存在するために、個別電極35が形成された領域とそれ以外の領域とに高低差がほとんど生じない。従って、FPC50を引き剥がそうとする外力がこれに加えられた場合であっても、FPC50とアクチュエータユニット21とが剥がれにくくなって、インクジェットヘッド1の信頼性が向上する。
【0048】
また、本実施形態のインクジェットヘッド1は、アクチュエータユニット21の圧力室から最も離れた圧電シート41だけが活性層であって、その圧力室側にある面とは反対側の面(上面)上だけに個別電極35が形成されたものである。そのため、アクチュエータユニット21を作製する際に、平面視で重なるように設けられた個別電極同士を互いに接続するためのスルーホールを形成する必要がなく、容易に製造可能である。
【0049】
更に、本実施形態のインクジェットヘッド1は、圧力室10から最も離れた活性層としての圧電シート41と流路ユニット4との間に、3枚の非活性層としての圧電シートが配置されたものである。このように、1層の活性層に対して非活性層を3層とすることで、圧力室10の容積変化量を比較的大きくすることができ、従って、個別電極35の駆動電圧の低電圧化と共に圧力室10の小型化及び高集積化を図ることが可能となる。
【0050】
本実施形態のインクジェットヘッド1は、活性層である圧電シート41と非活性層である圧電シート42〜44とが同じ材料で形成されているために、材料を交換する手間が不要となり、比較的簡略な製造工程により製造可能である。そのため、製造コストを低減できることが期待される。更に、活性層である圧電シート41と非活性層である圧電シート42〜44とが全て実質的に同じ厚みを有していることからも、製造工程の簡略化によるコスト削減を図ることができる。なぜなら、圧電シートとなるセラミックス材料を塗布積層していくときの厚さ調整工程を簡単に行うことができるようになるからである。
【0051】
また、上述のように構成された本実施形態のインクジェットヘッド1によれば、圧電シート41を共通電極34と個別電極35とで挟み込むことにより、圧電効果によって容易に圧力室10の容積を変化させることができる。また、活性層である圧電シート41が連続平板層であるため、容易に製造することが可能である。
【0052】
また、本実施形態のインクジェットヘッド1は、圧力室10に近い圧電シート42〜44を非活性層とし、圧力室10から離れた圧電シート41を活性層としたユニモルフ構造のアクチュエータユニット21を有している。そのため、圧電横効果により圧力室10の容積変化量を大きくすることができて、圧力室10側が活性層でその反対側が非活性層のインクジェットヘッドと比較して、個別電極35に印加される電圧の低電圧化や圧力室10の高集積化を図ることが可能となる。印加電圧の低電圧化を図ることにより、個別電極35を駆動するドライバを小型化できてコストを抑えることができ、圧力室10を小さくできてその高集積化を図ったときであっても十分な量のインクを吐出することが可能となって、ヘッド1の小型化と印刷ドットの高密度配置が実現される。
【0053】
次に、本実施形態のインクジェットヘッド1の製造方法について、更に図13〜図17を参照しつつ説明する。
インクジェットヘッド1を製造するには、まず流路ユニット4及びアクチュエータユニット21をそれぞれ並行して別個に作製し、その後両者を接着する。流路ユニット4を作製するには、これを構成する各プレート22〜30に、パターニングされたフォトレジストをマスクとした異方性エッチングを施して、図9及び図10に示すような開孔及び凹部を各プレート22〜30のそれぞれに形成する。また、図13に示すように、キャビティプレート22に圧力室10を形成する際、これと同時のエッチング工程により、円形のマーク(キャビティ位置認識マーク)55を形成する。つまり、圧力室10及びマーク55に相当する部分に開孔を有するフォトレジストをマスクとしてキャビティプレート22にエッチングを施す。マーク55は、後述するレーザ加工のトレース位置決定・修正のために設けられるものであり、例えば、インク吐出領域外において、キャビティプレート22の長手方向の所定間隔毎に、キャビティプレート22の幅方向に離れた2個所に形成される。マーク55は開孔であってもよいし、凹部であってもよい。なお、図13においては、多数の圧力室10のうち一部の圧力室10だけを図示している。
【0054】
変形例として、マーク55は、圧力室10を形成するためのエッチングと別工程で、つまり別のフォトレジストをマスクとして行うようにしてもよい。しかしながら、マーク55を形成するためのエッチングを圧力室10を形成するためのエッチングと同時の工程とすることで、圧力室10に対するマーク55の位置精度を高めることができ、後述するように個別電極35と圧力室10との位置精度が向上するという利益が得られる。
【0055】
また、キャビティプレート22以外の8枚のプレート23〜30についても、エッチングにより開孔を形成する。その後、インク流路32が形成されるように9枚のプレート22〜30を接着剤104を介在させつつ重ね合わせ、接着することで流路ユニット4を作製する。
【0056】
ここで、各プレート22〜30間に接着剤104を介在させる際には、前述した接着剤塗布装置100を用いている。具体的には、接着剤塗布装置100を用いてフィルム102に接着剤104を塗布する工程を行った後、フィルム102に塗布された接着剤104を接着剤転写対象のプレートに転写する工程を行う。
【0057】
即ち、接着剤塗布装置100では、図1に示すように、フィルム102上に接着剤104が供給されると共にフィルム102が引き出されることにより、フィルム102上に接着剤104が一定の厚みで引き伸ばされる。ここで、フィルム102は、接着剤転写対象のプレートの大きさに見合った長さだけ引き出されるようになっている。また、フィルム102は、前述した引出速度値設定処理(図3)により、温度センサ110による検出温度に応じた速度で引き出される。
【0058】
そして、接着剤塗布装置100を用いて接着剤104が引き伸ばされたフィルム102を、図4に示すように、プレート(部材W)の接着剤104を塗布すべき面にローラ124を用いて押し当てることにより、フィルム102上の接着剤104をプレートに転写する。
【0059】
こうして接着剤104が転写されたプレートを、貼り合わせ対象のプレートと貼り合わせることにより、プレート同士を接着する。
このような工程を繰り返し行うことにより、流路ユニット4を作製するのである。
【0060】
一方、アクチュエータユニット21を作製するには、まず、圧電シート44となるセラミックス材料上に、補強用金属膜36aとなる導電性のペーストをパターン印刷する。それと並行して、圧電シート43となるセラミックス材料上に補強用金属膜36bとなる導電性のペーストをパターン印刷すると共に、圧電シート42となるセラミックス材料上に共通電極34となる導電性のペーストをパターン印刷する。その後、4枚の圧電シート41〜44を冶具を用いて位置合わせしつつ重ね合わせることによって得られた積層物を所定の温度で焼成する。これにより、最上層にある圧電シート41の下面に共通電極34が形成された、個別電極を有しない積層物が形成される。この時点でのアクチュエータユニット21の部分拡大断面図を図14に示す。
【0061】
次に、上述のようにして作製されたアクチュエータユニット21となる積層物は、圧電シート44とキャビティプレート22とが接触するように、接着剤104により流路ユニット4と接着される。この際、流路ユニット4のキャビティプレート22の表面及び圧電シート41の表面にそれぞれ形成された位置合わせのための目印に基づいて両者が接着される。なお、この位置合わせは、アクチュエータユニット21となる積層物に未だ個別電極が形成されていないことから、高い精度を要求されない。また、アクチュエータユニット21と流路ユニット4との接着にも、前述した接着剤塗布装置100を用いている。
【0062】
しかる後、圧電シート41上の全面に導電膜38がPVD(PhysicalVapor Deposition:物理的蒸着)、印刷又はメッキにより形成される。この時点でのインクジェットヘッド1の図12に相当する断面図を図15(a)に、その一点鎖線で囲った領域の部分拡大図を図16(a)にそれぞれ示す。
【0063】
次に、図15(b)及び図17に示すように、キャビティプレート22上に形成されたマーク55を基準にして、平面視で圧力室10の外縁やや内側にレーザが照射されるよう出射方向を制御しつつ例えばYAGレーザを用いてレーザ加工を行い、圧電シート41上の導電膜38の図11に示す溝部53に対応する領域57(図17において太線で示す)だけを除去する。こうして導電膜38を部分的に除去することにより、導電膜38とは絶縁した個別電極35のパターンが形成される。このときの図15(b)の一点鎖線で囲った領域の部分拡大図を図16(b)に示す。
【0064】
このように、本実施形態では、圧力室10のある流路ユニット4側に形成されたマーク55に基づいてレーザ加工により個別電極35のパターンを形成するので、予め個別電極などが形成されたアクチュエータユニットを流路ユニットに接着する場合と比較して、圧電シート41上に形成される個別電極35の圧力室10に対する位置精度が向上する。これにより、インク吐出性能の均一性が優れたものとなり、インクジェットヘッド1の長尺化を図ることが容易になる。つまり、本実施形態のようにアクチュエータユニット21を複数設け、それらを流路ユニット4の長手方向に配列するのではなく、アクチュエータユニット21として流路ユニット4と同じ程度に長いものを1つだけ用いるようにすることができる。
【0065】
また、PVDなどで導電膜38を形成する場合はペーストを印刷する場合とは異なり高温処理を行う必要が無くなるので、上述したように、圧電シート41〜44と流路ユニット4とを接着してから導電膜38の形成及びそのパターニングを行うことができるようになる。従って、アクチュエータユニット21のハンドリングが非常に容易になる。
【0066】
その後、個別電極35に電気信号を供給するためのFPC50をアクチュエータユニット21上に貼り付け、更に所定の工程を経ることによってインクジェットヘッド1の製造が完了する。
以上説明した本実施形態のインクジェットヘッド1の製造方法では、圧電シート41〜44を積層する際に隣接する圧電シート間に個別電極を形成しない、つまり、圧力室10から最も離れた圧電シート41だけが活性層となるようにしているので、平面視で重なるように設けられた個別電極同士を互いに接続するためのスルーホールを圧電シート41〜44に形成する必要が無い。そのため、上述したように、本実施形態のインクジェットヘッド1は、比較的簡易な工程により低コストで製造可能である。
【0067】
更に、本実施形態では、4枚の圧電シート41〜44を積層し、そのうち最上層の圧電シート41だけが活性層となり残りの3枚の圧電シート42〜44が非活性層となるようにしている。このようにして製造されたインクジェットヘッド1によれば、上述したように、圧力室10の容積変化量を比較的大きくすることができ、従って、個別電極35の駆動電圧の低電圧化と共に圧力室10の小型化及び高集積化を図ることが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、導電膜38が除去された後もレーザ加工を引き続いて行うことにより、圧電シート41の厚さの1/3〜2/3程度の深さを有する溝部53を圧電シート41に形成する。このように、個別電極35と導電膜38との間に個別電極35の外縁に沿って溝部53を形成することによって、ある圧力室10に対応した圧電シートの変形による影響が隣接する圧力室10上の圧電シートに伝わりにくくなり、隣接した圧力室10間のクロストークの発生を低減させることが可能となっている。
【0069】
また、本実施形態では、溝部53に対応する部分以外の導電膜38は除去しない。そのため、上述したように、接着力の強化のために個別電極35だけでなく圧電シート41上の全面にFPC50を接着により貼り合わせた場合に、個別電極35以外の領域に個別電極35とほぼ同じ厚さを有する導電膜38が存在することで、個別電極35が形成された領域とそれ以外の領域とに高低差がほとんど生じない。従って、FPC50を引き剥がそうとする外力がこれに加えられた場合であっても、FPC50とアクチュエータユニット21とが剥がれにくくなって、インクジェットヘッド1の信頼性が向上するという利益が得られる。
【0070】
なお、本実施形態では、個別電極35のみ、共通電極34及び補強用金属膜36a,36bとは異なり圧電シート41〜44となるセラミックス材料と一緒に焼成しない。これは、個別電極35が露出しているために、焼成時の高温加熱により蒸発しやすく、セラミックス材料に被覆された共通電極34などに比べて厚みの制御が困難だからである。しかしながら、共通電極34なども焼成時に多少なりとも厚みが減少するので、焼成後の連続性を維持することを考慮するとその厚みを薄くすることが難しい。一方、個別電極35は、焼成後に上述したような手法で形成するために、共通電極34などよりも薄く形成することが可能である。このように、本実施形態のインクジェットヘッド1では、最も上層にある個別電極35を共通電極34よりも薄くすることで、活性層である圧電シート41の変位が個別電極35によって規制されづらくなって、インクジェットヘッド1における圧力室10の容積変形量を向上させている。
【0071】
また、本実施形態の接着剤塗布装置100では、シリンダ106及び接着剤調節器112が、接着剤供給手段に相当し、引出モータ114が、引伸ばし手段に相当し、温度センサ110が、温度検出手段に相当し、引出速度値設定処理(図3)が、速度変更手段に相当している。
【0072】
以上のように、本実施形態の接着剤塗布装置100によれば、雰囲気温度の影響によって接着剤104の粘度が変化しても、インクジェットヘッド1の構成部材に転写される接着剤104の厚みをほぼ一定に保つことができるため、製造されるインクジェットヘッド1の性能を安定させることができる。また、接着剤104の引き伸ばし動作を行っている最中はフィルム102の引き出し速度を変化させないため、同一の部材に転写される接着剤104の厚みを均一にすることができる。
【0073】
そして特に、アクチュエータユニット21と流路ユニット4との接着においては接着剤104の転写量を厳密に管理する必要があることから、本接着剤塗布装置100を用いる効果が高い。即ち、アクチュエータユニット21と流路ユニット4との間に介在する接着剤104は、その量が少ないと隣り合う圧力室10間でインクのリークが生じやすくなり、逆に、その量が多いと圧力室10にはみ出しやすくなると共にアクチュエータユニット21の変形が接着剤104によって吸収されやすくなる、というようにインク吐出口8からのインクの吐出性能に影響しやすいからである。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態の接着剤塗布装置100のようにフィルム102の引き出し速度を温度センサ110の検出温度に応じて段階的に変更するのではなく、検出温度に応じてリニアに変更するようにしてもよい。このようにすれば、雰囲気温度の違いによる接着剤転写量のばらつきを一層低減することができる。
【0075】
また更に、上記実施形態の接着剤塗布装置100では、フィルム102を引き出すことによりフィルム102上の接着剤104を固定位置のスキージ108によって引き伸ばすようにしているが、これに限ったものではなく、フィルム102とスキージ108とを相対移動させる構成であればよい。例えば、フィルム102に沿ってスキージ108自体を移動させる構成であってもよい。
【0076】
一方、上記実施形態のインクジェットヘッド1を構成する圧電シート41〜44や電極34,35の材料は、上述したものに限らず、その他の公知の材料に変更してもよい。また、圧力室10の平面形状や断面形状、配置形態、活性層の数、非活性層の数などは、適宜変更してよい。また、活性層と非活性層とで層厚を異なる厚みにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態のインクジェットヘッド1では、エッチングにより流路ユニット4を構成する各プレート22〜30に開孔やマーク55を形成しているが、エッチング以外の方法で各プレート22〜30に開孔やマーク55を形成してもよい。また、上記実施形態では、レーザ加工を行う際に個別電極35となる以外の導電膜38を残存させているが、個別電極35となる領域以外の導電膜38は完全に除去してもよい。ただし、上述した利益が得られなくなることに加え加工時間が増加してコストアップにつながるので個別電極35となる領域以外の導電膜38の除去は特に行う必要は無い。
【0078】
また更に、上記実施形態のインクジェットヘッド1では、最上層にある圧力室10から最も離れた圧電シート41だけを活性層としているが、それ以外の圧電シート42〜44を活性層としてもよい。このようなインクジェットヘッド1を製造するには、圧電シート41〜44を積層する際に、活性層とする圧電シートの一方の面(例えば圧電シート42の下面)に接触するような個別電極をパターン印刷すればよい。この場合は、平面視で上下に重なり合う個別電極同士を接続するためのスルーホールを形成する必要があり、製造工程がやや煩雑となる。また、最上層の圧電シート41以外と接触する個別電極の圧力室10に対する位置精度は低下するものの、最上層の圧電シート41が圧力室10の容積変化に最も寄与すると考えられるため、本実施形態は有効である。
【0079】
一方、上記実施形態のインクジェットヘッド1では、導電膜38の除去に引き続いて最上層の圧電シート41を一部除去して溝部53を形成しているが、溝部53は必ずしも形成しなくてもよい。また、溝部53は共通電極34を孤立させない限りは上から2層目の圧電シート42以下まで達していてもよく、溝部53を深く形成するほどクロストーク抑制効果は大きくなる。
【0080】
一方また、上記実施形態のインクジェットヘッド1では、アクチュエータユニット21と流路ユニット4とを接着してから導電膜38を形成しているが、アクチュエータユニット21上に導電膜38をPVDなどで形成してから流路ユニット4を接着するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の接着剤塗布装置の概略構成図である。
【図2】接着剤塗布装置の電気的構成を表わすブロック図である。
【図3】引出速度値設定処理のフローチャートである。
【図4】部材に接着剤を転写する工程を説明する説明図である。
【図5】スキージ速度と接着剤転写重量との関係を示すグラフである。
【図6】インクジェットヘッドの平面図である。
【図7】図6内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図8】図7内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図9】図6に示すインクジェットヘッドの要部断面図である。
【図10】図6に示すインクジェットヘッドの要部分解斜視図である。
【図11】図8に示す領域におけるアクチュエータユニットの拡大平面図である。
【図12】図11のA−A線に沿ったインクジェットヘッドの部分断面図である。
【図13】図6に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における、マークが形成されたキャビティプレートを示す平面図である。
【図14】図6に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における、アクチュエータユニットの部分拡大断面図である。
【図15】図6に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における部分断面図である。
【図16】図15に対応した部分拡大断面図である。
【図17】図6に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における、レーザ照射される領域を説明するための平面図である。
【符号の説明】
1…インクジェットヘッド、3…インク溜まり、3a,3b…開口、4…流路ユニット、5…マニホールド、5a…副マニホールド、8…インク排出口、10…圧力室、12…アパーチャ、21…アクチュエータユニット、22…キャビティプレート、30…ノズルプレート、32…インク流路、34…共通電極、35…個別電極、35a,35b…電極部、36a,36b…補強用金属膜、41…圧電シート(活性層)、42〜44…圧電シート(非活性層)、50…FPC、53…溝部、55…マーク、57…領域、100…接着剤塗布装置、102…フィルム、104…接着剤、106…シリンダ、108…スキージ、110…温度センサ、112…接着剤調節器、114…引出モータ、122…制御装置、124…ローラ

Claims (4)

  1. シート材の上に接着剤を供給する接着剤供給手段と、
    前記接着剤供給手段により接着剤が供給されたシート材とスキージとを相対移動させることにより、前記シート材上の接着剤を前記スキージによって引き伸ばす引伸ばし手段と、
    を備えた接着剤塗布装置において、
    雰囲気温度を検出する温度検出手段と、
    前記温度検出手段により検出される雰囲気温度に応じて、前記引伸ばし手段が前記シート材と前記スキージとを相対移動させる速度を変更する速度変更手段と、
    を備えたことを特徴とする接着剤塗布装置。
  2. 請求項1に記載の接着剤塗布装置において、
    前記速度変更手段は、前記温度検出手段により検出される雰囲気温度が高いほど、前記シート材と前記スキージとを相対移動させる速度を速くすること、
    を特徴とする接着剤塗布装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の接着剤塗布装置において、
    前記速度変更手段は、前記スキージにより前記シート材上の接着剤が引き伸ばされている間は、前記シート材と前記スキージとを相対移動させる速度を一定に保つこと、
    を特徴とする接着剤塗布装置。
  4. 複数の部材を接着剤で貼り合わせて製造するインクジェットヘッドの製造方法であって、
    請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の接着剤塗布装置を用いて前記シート材に接着剤を塗布する工程と、
    該シート材の接着剤が塗布された面を、前記部材における接着剤を塗布すべき面に押し当てることにより該部材に接着剤を転写する工程と、
    を含むことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
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