JP3922188B2 - インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷媒体にインクを吐出して印刷を行うインクジェットヘッド及びこれを含むインクジェットプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドは、インクタンクから供給されたインクを複数の圧力室に分配し、各圧力室に選択的にパルス状の圧力を付与することによりノズルからインクを吐出する。圧力室に選択的に圧力を付与するための一つの手段として、セラミックからなる複数の圧電シートが積層されたアクチュエータユニットが用いられることがある。
【0003】
かかるインクジェットヘッドの一例として、複数の圧力室に跨る複数枚の連続平板状の圧電シートが積層され、その少なくとも1枚の圧電シートを、多数の圧力室に共通であってグランド電位に保持された共通電極と、各圧力室に対応する位置に配置された多数の個別電極すなわち駆動電極とで挟み込んだ1つのアクチュエータユニットを有するものが知られている(特許文献1参照)。駆動電極及び共通電極に挟まれ且つ積層方向に分極された圧電シートの部分は、外部電界が印加されると圧電効果により変形する活性層として働く。そのため、その両側にある駆動電極が共通電極と異なる電位にされると、活性層は、いわゆる圧電縦効果により圧電シートの積層方向に伸縮する。これにより圧力室内の容積が変動し、圧力室に連通したノズルから印刷媒体に向けてインクを吐出することが可能となっている。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−341852号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に記載のインクジェットヘッドにおいては、複数の積層された圧電シート上に個別電極が形成されている。従って、このインクジェットヘッドを製造するには、平面視で重なる位置にある個別電極同士を接続するためのスルーホールを形成し、さらにその内部に導電材料を埋め込むなど、非常に煩雑な工程を行う必要がある。
【0006】
そこで、本発明の主な目的は、個別電極に駆動信号を与えるためのスルーホールを圧電シートに形成する必要がなく比較的簡易に製造することが可能なインクジェットヘッドを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェットヘッドは、一端をノズルに他端を共通インク室にそれぞれ接続された複数の圧力室が相互に隣接配置されていると共に、前記複数の圧力室が凹部として形成された一表面を有する流路ユニットと、前記圧力室の容積を変化させるために前記一表面の前記凹部以外の桁部に固定されて前記凹部を塞ぐアクチュエータユニットと、
前記圧力室の容積を変化させるための駆動信号を前記アクチュエータユニットに供給するフレキシブルプリント配線板とを備えている。そして、前記圧力室が、平面視において、菱形形状を有している。前記共通インク室が、平面視において、前記圧力室と重なり合っている。前記流路ユニットは、どの前記圧力室についても対角線が同じ方向を向くように前記複数の圧力室がマトリクス状に互いに隣接して形成された第1のプレートと、前記ノズルが形成された第2のプレートとを含む複数のプレートが積層された積層体である。前記第1のプレートが前記一表面を有している。前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に残りの前記プレートが挟まれている。前記ノズルが、前記積層体の積層方向に開口している。前記アクチュエータユニットが、一定電位に保たれた共通電極と、各圧力室に対応する位置に配置された個別電極であって、前記アクチュエータユニットの前記流路ユニットとの固定面とは反対側の面上にだけ形成された個別電極と、前記共通電極と前記個別電極とによって挟まれ、且つ、前記複数の圧力室に跨って配置された圧電シートと、前記共通電極と前記流路ユニットとによって挟まれた圧電シートからなる非活性層とを含んでいる。さらに、前記一表面の前記桁部には、平面形状が台形である複数の前記アクチュエータユニットが、互いに隣接するものの斜辺同士が前記流路ユニットの幅方向にオーバーラップするように固定されている。また、各個別電極が、平面視において前記圧力室内に収まる主電極部と、前記主電極部の一端部から前記桁部上にまで引き出された補助電極部とから構成されていると共に、複数の前記個別電極が、前記圧力室に対応してマトリクス状に規則的に配列されている。前記個別電極は、前記共通電極よりも薄い。そして、前記フレキシブルプリント配線板が、前記桁部に対向した補助電極部とのみ接続されている。(請求項1)。また、本発明は、別の観点では、このようなインクジェットヘッドを含むインクジェットプリンタである。(請求項9)
【0008】
これによると、アクチュエータユニットの内部に個別電極が存在しなくなるため、平面視で互いに重なる複数の個別電極同士を互いに接続するためのスルーホールを形成するという複雑な工程を経ることなくインクジェットヘッドを容易に製造可能となる。
非活性層が圧電シートからなるため、非活性層と、活性層を含む層とを同じ材料とすることができるので、製造工程が簡略化される。
アクチュエータユニットが複数の圧力室に跨って配置されているので、アクチュエータユニットを圧力室ごとに設ける場合と比較して、インクジェットヘッドの構造及び製造工程が簡略化される。
平面視において圧力室の外側にある補助電極部において個別電極とフレキシブルプリント配線板とが接続されていることにより、アクチュエータユニットの積層方向への変形が阻害されることが少なく、圧力室の容積変化量を大きくすることができる。
【0009】
本発明において、前記アクチュエータユニットは、前記アクチュエータユニットの最外層となり且つ前記共通電極が形成された前記圧電シートと、前記圧電シートよりも大きい膜厚を有する前記非活性層とを含んでいることが好ましい(請求項2)。
【0010】
これによると、活性層を含む圧電シートとこの圧電シートより厚い非活性層とを積層した構成となり、圧電シートの脆さを補うことができ、アクチュエータユニットのハンドリング性が向上する。そのため、高精度な取り扱いをしなくても、インクジェットヘッドを容易に製造可能となる。
【0011】
また、このとき、前記非活性層が、複数枚の絶縁性シート状部材を積層したものであってよい(請求項3)。これにより、圧電シートにまでインクが侵入することで個別電極と共通電極とにより挟まれた活性層の耐電圧が低下したり短絡が生じることを防止することができるので、アクチュエータユニットの場所により圧電特性の分布が生じることが抑制されることになる。そのため、場所によらず吐出特性が均一なインクジェットヘッドが得られる。
【0012】
また、このとき、前記複数枚の絶縁性シート状部材が同じ膜厚を有していてよい(請求項4)。これにより、絶縁性シート状部材ごとに膜厚を変更する作業が不要となり、前記非活性層の膜厚調整を容易に行うことができるので、非活性層の製造が簡略化される。
【0013】
例えば、前記非活性層が、3枚の絶縁性シート状部材を積層したものであってもよい(請求項5)。このとき、活性層を含む圧電シートと非活性層とがその積層方向に非常に変形しやすいため、圧力室の容積変化量が極めて大きくなる。
【0014】
【0015】
また、本発明において、前記アクチュエータユニットは、前記共通電極と前記個別電極のうち、前記共通電極だけを内部に保持していてよい(請求項6)。これによると、アクチュエータユニットの製造工程が簡略化される。
【0016】
【0017】
さらに、本発明において、前記共通電極はグランド電位に保たれていてよい(請求項7)。これにより、共通電極への給電構造を簡略化することができる。
【0018】
また、本発明において、前記共通電極が前記圧電シートの全面を覆うように配置されていてよい(請求項8)。これにより、圧電シートの強度を高くすることができ、取り扱い時における損傷などを防止するとともに、アクチュエータユニットのハンドリング性が向上する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるインクジェットヘッドを含むインクジェットプリンタの概略図である。図1に示すインクジェットプリンタ101は、4つのインクジェットヘッド1を有するカラーインクジェットプリンタである。このプリンタ101には、図中左方に給紙部111が、図中右方に排紙部112が、それぞれ構成されている。
【0021】
プリンタ101内部には、給紙部111から排紙部112に向かって流れる用紙搬送経路が形成されている。給紙部111のすぐ下流側には、画像記録媒体たる用紙を挟持搬送する一対の送りローラ105a、105bが配置されている。一対の送りローラ105a、105bによって用紙は図中左方から右方へ送られる。用紙搬送経路の中間部には、二つのベルトローラ106、107と、両ローラ106、107間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト108とが配置されている。搬送ベルト108の外周面すなわち搬送面にはシリコーン処理が施されており、一対の送りローラ105a、105bによって搬送されてくる用紙を、搬送ベルト108の搬送面にその粘着力により保持させながら、一方のベルトローラ106の図中時計回り(矢印104の方向)への回転駆動によって下流側(右方)に向けて搬送できるようになっている。
【0022】
用紙のベルトローラ106に対する挿入及び排出位置には、押さえ部材109a、109bがそれぞれ配置されている。押さえ部材109a、109bは、搬送ベルト108上の用紙が搬送面から浮かないように、搬送ベルト108の搬送面に用紙を押し付けて搬送面上に確実に粘着させるためのものである。
【0023】
用紙搬送経路に沿って搬送ベルト108のすぐ下流側には、剥離機構110が設けられている。剥離機構110は、搬送ベルト108の搬送面に粘着されている用紙を搬送面から剥離して、右方の排紙部112へ向けて送るように構成されている。
【0024】
4つのインクジェットヘッド1は、その下端にヘッド本体1aを有している。ヘッド本体1aは、それぞれが矩形断面を有しており、その長手方向が用紙搬送方向に垂直な方向(図1の紙面垂直方向)となるように互いに近接配置されている。つまり、このプリンタ101は、ライン式プリンタである。4つのヘッド本体1aの各底面は用紙搬送経路に対向しており、これら底面には微小径を有する多数のインク吐出口が形成されたノズルが設けられている。4つのヘッド本体1aのそれぞれからは、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックのインクが吐出される。
【0025】
ヘッド本体1aは、その下面と搬送ベルト108の搬送面との間に少量の隙間が形成されるように配置されており、この隙間部分に用紙搬送経路が形成されている。この構成で、搬送ベルト108上を搬送される用紙が4つのヘッド本体1aのすぐ下方側を順に通過する際、この用紙の上面すなわち印刷面に向けてノズルから各色のインクが噴射されることで、用紙上に所望のカラー画像を形成できるようになっている。
【0026】
インクジェットプリンタ101は、インクジェットヘッド1に対するメンテナンスを自動的に行うためのメンテナンスユニット117を有している。このメンテナンスユニット117には、4つのヘッド本体1aの下面を覆うための4つのキャップ116や、図示せぬパージ機構などが設けられている。
【0027】
メンテナンスユニット117は、インクジェットプリンタ101で印刷が行われているときには、給紙部111の直下方の位置(退避位置)に位置している。そして、印刷終了後に所定の条件が満たされたとき(例えば、印刷動作が行われない状態が所定の時間だけ継続したときや、プリンタ101の電源OFF操作がされたとき)は、4つのヘッド本体1aの直ぐ下方の位置に移動して、この位置(キャップ位置)にて、キャップ116によってヘッド本体1aの下面をそれぞれ覆い、ヘッド本体1aのノズル部分のインクの乾燥を防止するようになっている。
【0028】
ベルトローラ106、107や搬送ベルト108は、シャーシ113によって支持されている。シャーシ113は、その下方に配置された円筒部材115上に載置されている。円筒部材115は、その中心から外れた位置に取り付けられた軸114を中心として回転可能となっている。そのため、軸114の回転に伴って円筒部材115の上端高さが変化すると、それに合わせてシャーシ113が昇降する。メンテナンスユニット117を退避位置からキャップ位置に移動させる際には、予め円筒部材115を適宜の角度回転させてシャーシ113、搬送ベルト108及びベルトローラ106、107を図1に示す位置から適宜の距離だけ下降させ、メンテナンスユニット117の移動のためのスペースを確保しておく必要がある。
【0029】
搬送ベルト108によって囲まれた領域内には、インクジェットヘッド1と対向する位置、つまり上側にある搬送ベルト108の下面と接触することによって内周側からこれを支持するほぼ直方体形状(搬送ベルト108と同程度の幅を有している)のガイド121が配置されている。
【0030】
次に、本実施の形態によるインクジェットヘッド1の構造について、より詳細に説明する。図2は、インクジェットヘッド1の斜視図である。図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。図2及び図3に示すように、本実施の形態によるインクジェットヘッド1は、一方向(主走査方向)に延在した矩形平面形状を有するヘッド本体1aと、ヘッド本体1aを支持するための基部131とを有している。基部131は、ヘッド本体1aのほかに、個別電極35(図6参照)などに駆動信号を供給するドライバIC132及び基板133を支持している。
【0031】
基部131は、図2に示すように、ヘッド本体1aの上面と部分的に接着されることでヘッド本体1aを支持するベースブロック138と、ベースブロック138の上面と接着されることでベースブロック138を保持するホルダ139とから構成されている。ベースブロック138は、ヘッド本体1aの長尺方向長さとほぼ同じ長さを有する略直方体形状の部材である。ステンレスなどの金属材料からなるベースブロック138は、ホルダ139を補強する軽量の構造体としての機能を有している。ホルダ139は、ヘッド本体1a側に配置されるホルダ本体141と、ホルダ本体141からヘッド本体1aとは反対側に延在した一対のホルダ支持部142とから構成されている。一対のホルダ支持部142は、いずれも平板状の部材であって、ホルダ本体141の長尺方向に沿って所定の間隔を隔てて互いに平行に設けられている。
【0032】
ホルダ本体141の副走査方向(主走査方向と直交する方向)両端部には、下方に突出した一対のスカート部141aが設けられている。ここで、一対のスカート部141aは、いずれもホルダ本体141の長尺方向全幅にわたって形成されているため、ホルダ本体141の下面には、一対のスカート部141aによって略直方体形状の溝部141bが形成されている。この溝部141b内に、ベースブロック138が収納されている。ベースブロック138の上面と、ホルダ本体141の溝部141bの底面とは、接着剤によって接着されている。ベースブロック138の厚さは、ホルダ本体141の溝部141bの深さよりも若干大きいため、ベースブロック138の下端部は、スカート部141aよりも下方に飛び出している。
【0033】
ベースブロック138の内部には、ヘッド本体1aに供給されるインクの流路として、その長尺方向に延在する略直方体形状の空隙(中空領域)であるインク溜まり3が形成されている。ベースブロック138の下面145には、インク溜まり3に連通した開口3b(図4参照)が形成されている。なお、インク溜まり3は、プリンタ本体内の図示しないメインインクタンク(インク供給源)に、図示しない供給チューブにより接続されている。そのため、インク溜まり3には、メインインクタンクから適宜インクが補充されるようになっている。
【0034】
ベースブロック138の下面145は、開口3bの近傍において周囲よりも下方に飛び出している。そして、ベースブロック138は、下面145の開口3b近傍部分145aにおいてのみヘッド本体1aの流路ユニット4(図3参照)と接触している。そのため、ベースブロック138の下面145の開口3b近傍部分145a以外の領域は、ヘッド本体1aから離隔しており、この離隔部分にアクチュエータユニット21が配されている。
【0035】
ホルダ139のホルダ支持部142の外側面には、スポンジなどの弾性部材137を介してドライバIC132が固定されている。ドライバIC132の外側面には、ヒートシンク134が密着配置されている。ヒートシンク134は、略直方体形状の部材であって、ドライバIC132で発生する熱を効率的に散逸させる。ドライバIC132には、給電部材であるフレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)136が接続されている。ドライバIC132に接続されたFPC136は、基板133及びヘッド本体1aとハンダ付けによって電気的に接合されている。ドライバIC132およびヒートシンク134の上方であって、FPC136の外側には、基板133が配置されている。ヒートシンク134の上面と基板133との間、および、ヒートシンク134の下面とFPC136との間は、それぞれシール部材149で接着されている。
【0036】
ホルダ本体141のスカート部141aの下面と流路ユニット4の上面との間には、FPC136を挟むようにシール部材150が配置されている。つまりFPC136は、流路ユニット4およびホルダ本体141に対してシール部材150によって固定されている。これにより、ヘッド本体1aが長尺化した場合の撓みの防止、アクチュエータユニット21とFPC136との接続部への応力印可の防止およびFPC136の確実な保持が可能となる。
【0037】
図2に示すように、インクジェットヘッド1の主走査方向に沿った下方角部近傍には、インクジェットヘッド1の側壁に沿って6つの凸設部30aが均等に離隔配置されている。これら凸設部30aは、ヘッド本体1aの最下層にあるノズルプレート30(図7参照)の副走査方向両端部に設けられた部分である。つまり、ノズルプレート30は、凸設部30aとそれ以外の部分との境界線に沿って約90度折り曲げられている。凸設部30aは、プリンタ101において印刷に用いられる各種サイズの用紙の両端部付近に対応する位置に設けられている。ノズルプレート30の折り曲げ部分は直角ではなく丸みを帯びた形状となっているため、ヘッド1と近接する方向に搬送されてきた用紙の先端部がヘッド1の側面と接触することで生じる用紙の詰まりすなわちジャミングが起こりにくくなっている。
【0038】
図4は、ヘッド本体1aの模式的な平面図である。図4において、ベースブロック138内に形成されたインク溜まり3が仮想的に破線で描かれている。図4に示すように、ヘッド本体1aは、一方向(主走査方向)に延在した矩形平面形状をしている。ヘッド本体1aは、後述する多数の圧力室10やノズル先端のインク吐出口8(共に図5、図6、図7参照)が形成された流路ユニット4を有しており、その上面には、千鳥状になって2列に配列された複数の台形のアクチュエータユニット21が接着されている。各アクチュエータユニット21は、その平行対向辺(上辺及び下辺)が流路ユニット4の長手方向に沿うように配置されている。そして、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士が、流路ユニット4の幅方向にオーバーラップしている。
【0039】
アクチュエータユニット21の接着領域と対応した流路ユニット4の下面は、インク吐出領域となっている。インク吐出領域の表面には、後述するように、多数のインク吐出口8がマトリクス状に多数配列されている。また、流路ユニット4の上方に配置されたベースブロック138内には、その長手方向に沿ってインク溜まり3が形成されている。インク溜まり3は、その一端に設けられた開口3aを介してインクタンク(図示せず)に連通しており、常にインクで満たされている。インク溜まり3には、その延在方向に沿って開口3bが2つずつ対になって、アクチュエータユニット21が設けられていない領域に千鳥状に設けられている。
【0040】
図5は、図4内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。図4及び図5に示すように、インク溜まり3は、開口3bを介してその下層にある流路ユニット4内のマニホールド5と連通している。開口3bには、インク内に含有される塵埃などを捕獲するためのフィルタ(図示せず)が設けられている。マニホールド5は、その先端部が2つに分岐して副マニホールド5aとなっている。1つのアクチュエータユニット21の下部には、当該アクチュエータユニット21に対してインクジェットヘッド1の長手方向両隣にある2つの開口3bからそれぞれ2つの副マニホールド5aが進入してきている。つまり、1つのアクチュエータユニット21の下部には、合計で4つの副マニホールド5aがインクジェットヘッド1の長手方向に沿って延在している。各副マニホールド5aは、インク溜まり3から供給されたインクで満たされている。
【0041】
図6は、図5内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。図5及び図6に示すように、アクチュエータユニット21の上面には、平面形状がほぼひし形の個別電極35がマトリクス状に規則的に配列されている。また、流路ユニット4のアクチュエータユニット21に対応したインク吐出領域の表面には、多数のインク吐出口8がマトリクス状に規則的に配列されている。流路ユニット4内には、共に各インク吐出口8と連通した、平面形状が個別電極35よりも一回り大きいほぼひし形の圧力室(キャビティ)10と、アパーチャ12とがそれぞれマトリクス状に規則的に配列されている。圧力室10は、個別電極35と対応する位置に形成されており、平面視において個別電極35aは圧力室10の領域に含まれている。なお、図5及び図6において、図面を分かりやすくするために、アクチュエータユニット21内又は流路ユニット4内にあって破線で描くべき圧力室10及びアパーチャ12等を実線で描いている。
【0042】
図7は、図4に描かれたヘッド本体1aの圧力室長手方向に沿った部分断面図である。各インク吐出口8は、図7からも分かるように、先細形状のノズルの先端に形成されている。各インク吐出口8は、圧力室10(長さ900μm、幅350μm)及びアパーチャ12を介して副マニホールド5aと連通している。このようにして、インクジェットヘッド1には、インクタンクからインク溜まり3、マニホールド5、副マニホールド5a、アパーチャ12及び圧力室10を経てインク吐出口8に至るインク流路32が形成されている。
【0043】
また、図7から明らかなように、圧力室10とアパーチャ12とは異なる高さに設けられている。これにより、図6に示すように、アクチュエータユニット21の下方にあるインク吐出領域に対応した流路ユニット4内において、1つの圧力室10と連通したアパーチャ12を、当該圧力室に隣接する圧力室10と平面視で同じ位置に配置することが可能となっている。この結果、圧力室10同士が密着して高密度に配列されるため、比較的小さな占有面積のインクジェットヘッド1により高解像度の画像印刷が実現される。
【0044】
圧力室10は、図5及び図6に描かれた平面内において、インクジェットヘッド1の長手方向(第1配列方向)と、インクジェットヘッド1の幅方向からやや傾いた方向(第2配列方向)との2方向にインク吐出領域内で配列されている。第1配列方向と第2配列方向は、直角よりもやや小さい角度θをなしている。インク吐出口8は、第1配列方向には50dpiで配列されている。一方で、圧力室10は、第2配列方向には1つのアクチュエータユニット21に対応するインク吐出領域内に12個が含まれるように配列されている。これにより、インクジェットヘッド1の全幅内で、第1配列方向に隣接する2つのインク吐出口8間の距離だけ離隔した範囲には、12個のインク吐出口8が存在するようになっている。なお、各インク吐出領域の第1配列方向についての両端部(アクチュエータユニット21の斜辺に相当する)では、インクジェットヘッド1の幅方向に対向する別のアクチュエータユニット21に対応するインク吐出領域と相補関係となることで上記条件を満たしている。そのため、本実施の形態によるインクジェットヘッド1では、第1及び第2配列方向に配列された多数のインク吐出口8から、インクジェットヘッド1の幅方向への用紙に対する相対的な移動に伴って順次インク滴を吐出させることで、主走査方向に600dpiで印刷を行うことが可能になっている。
【0045】
次に、図8を参照して、流路ユニット4の構造をより詳細に説明する。図8は、圧力室10、インク吐出口8及びアパーチャ(制限流路)12の三者の位置関係を示す模式的な図である。図8に示すように、圧力室10は、第1配列方向に所定の間隔である50dpiで列状に配列されている。このような圧力室10の列は、第2配列方向には12列配列されて、全体として圧力室10は1つのアクチュエータユニット21に対応したインク吐出領域内において2次元配列をしている。
【0046】
圧力室10には、ノズルが図8中上側の鋭角部に接続されている圧力室10aと、下側の鋭角部に接続されている圧力室10bとの2種類がある。複数の圧力室10a及び複数の圧力室10bは、共に第1配列方向に配列されて圧力室列11a、11bをそれぞれ形成している。図8に示すように、1つのアクチュエータユニット21に対応したインク吐出領域内においては、図8中下側から順に2列の圧力室列11aが配列され、その上側に隣接して2列の圧力室列11bが配列されている。このような2列の圧力室列11aと2列の圧力室列11bとの合わせて4列の圧力室列を1組とした圧力室列の組が、1つのアクチュエータユニット21に対応したインク吐出領域内において、下側から3回繰り返して配列されている。各圧力室列11a、11b中の各圧力室の上側鋭角部を結ぶ直線は、この圧力室列に上側から隣接する圧力室列中の各圧力室の下側斜辺と交差している。
【0047】
上述のように、図8の紙面に対して垂直な方向から見て、圧力室10に接続されたノズルの配置位置が異なる第1の圧力室列11aと第2の圧力室列11bとを2列ずつ隣接して配列することにより、全体として圧力室10は規則正しく整列している。一方、ノズルは、これら4列の圧力室列を1組とした圧力室列の組の中において中央領域に集まって配列されることになる。これにより、上述のように、4列の圧力室列を1組として、下側から3回繰り返して圧力室列の組を配置した場合、圧力室列の組と組との境界近傍領域、すなわち、このような4列の圧力室列からなる組の両側には、ノズルが存在しない領域が形成される。そして、そこに各圧力室10にインクを供給するための幅の広い副マニホールド5aが延設されている。本実施の形態では、1つのアクチュエータユニット21に対応したインク吐出領域内において、図中下側に1本、一番下側の圧力室列の組と二番目の圧力室列の組との間に1本、一番上側の圧力室列の組の両側に2本、合わせて4本の幅の広い副マニホールド5aが第1配列方向に延設されている。
【0048】
図8に示すように、インクを吐出するインク吐出口8に連通するノズルは、第1配列方向には、この方向に規則正しく並ぶ圧力室10に対応して、50dpiの等間隔で配列されている。また、第1配列方向と角度θで交差している第2配列方向にも12個の圧力室10が規則正しく配列されているのとは異なり、これら12個の圧力室10に対応した12個のノズルは、上述したように圧力室10の上側の鋭角部に連通したものと下側の鋭角部に連通したものとがあって、第2配列方向に規則的に一定の間隔で配列されていない。
【0049】
他方、ノズルが圧力室10の同じ側の鋭角部に常に連通している場合には、ノズルも第2配列方向の方向に規則的に一定の間隔で配列されることになる。すなわち、この場合、ノズルは、図中下側から上側に1圧力室列上がるごとに第1配列方向に印字時の解像度である600dpiに相当する間隔ずつ変位するように配列される。これに対して、本実施の形態では、2列の圧力室列11aと2列の圧力室列11bとの合わせて4列の圧力室列を1組として、これが下側から3回繰り返して配列されているので、図中下側から上側に1圧力室列上がるごとのノズル位置の第1配列方向への変位は常に同じではない。
【0050】
本実施の形態によるインクジェットヘッド1において、第1配列方向に50dpiに相当する幅(約508.0μm)を有し、この第1配列方向と直交する方向に延在する帯状領域Rについて考える。この帯状領域Rの中には、12列の圧力室列の内の何れの列についても、ノズルが1つしか存在していない。すなわち、1つのアクチュエータユニット21に対応したインク吐出領域内の任意の位置に、このような帯状領域Rを区画した場合、この帯状領域R内には、常に12個のノズルが分布している。そして、これら12個の各ノズルを第1配列方向に延びる直線上に射影した点の位置は、印字時の解像度である600dpiに相当する間隔ずつ離隔している。
【0051】
1つの帯状領域Rに属する12個のノズルを第1配列方向に延びる直線上に射影した位置が左にあるものから順に、これら12個のノズルを(1)〜(12)と記することにしたとき、これら12個のノズルは、下から、(1)、(7)、(2)、(8)、(5)、(11)、(6)、(12)、(9)、(3)、(10)、(4)の順番に並んでいる。
【0052】
このように構成された本実施の形態によるインクジェットヘッド1において、アクチュエータユニット21内の活性層を適宜駆動させると、600dpiの解像度を有する文字や図形等を描画することができる。つまり、12列の圧力室列に対応した活性層を印字媒体の搬送に合わせて順次選択的に駆動することで、特定の文字や図形を印字媒体に印刷することができる。
【0053】
例えば、600dpiの解像度で第1配列方向に延びる直線を印字する場合について説明する。まず、ノズルが圧力室10の同じ側の鋭角部に連通している場合について簡単に説明する。この場合には、印字蝶体が搬送されるのに対応して、図8中一番下に位置する圧力室列中のノズルからインクの吐出を始め、順次上側に隣接する圧力室列に属するノズルを選択してインクを吐出する。これにより、インクのドットが第1配列方向に向かって600dpiの間隔で隣接しながら形成されていく。最終的には、全体で600dpiの解像度で第1配列方向に延びる直線が描かれることになる。
【0054】
一方、本実施の形態では、図8中一番下に位置する圧力室列11a中のノズルからインクの吐出を始め、印字媒体が搬送されるのに伴って順次上側に隣接する圧力室に連通するノズルを選択してインクを吐出していく。このとき、下側から上側に1圧力室列上がるごとのノズル位置の第1配列方向への変位が常に同じでないので、印字媒体が搬送されるのに伴って第1配列方向に沿って順次形成されるインクのドットは、600dpiの間隔で等間隔にはならない。
【0055】
すなわち、図8に示したように、印字媒体が搬送されるのに対応して、まず図中一番下の圧力室列11aに連通するノズル(1)からインクが吐出され、印字媒体上に50dpiに相当する間隔(約508.0μm)でドット列が形成される。この後、印字媒体の搬送に伴って、直線の形成位置が下から2番目の圧力室列11aに連通するノズル(7)の位置に達すると、このノズル(7)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドット位置から600dpiに相当する間隔分(約42.3μm)の6倍だけ第1配列方向に変位した位置(約42.3μm×6=約254.0μm)に2番目のインクドットが形成される。
【0056】
次に、印字媒体の搬送に伴って、直線の形成位置が下から3番目の圧力室列11bに連通するノズル(2)の位置に達すると、ノズル(2)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドット位置から600dpiに相当する間隔分(約42.3μm)だけ第1配列方向に変位した位置に3番目のインクドットが形成される。さらに、印字媒体の搬送に伴って、直線の形成位置が下から4番目の圧力室列11bに連通するノズル(8)の位置に達すると、ノズル(8)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドットの位置から600dpiに相当する間隔分(約42.3μm)の7倍だけ第1配列方向に変位した位置(約42.3μm×7=約296.3μm)に4番目のインクドットが形成される。さらに、印字媒体の搬送に伴って、直線の形成位置が下から5番目の圧力室列11aに連通するノズル(5)の位置に達すると、ノズル(5)からインクが吐出される。これにより、始めに形成されたドット位置から600dpiに相当する間隔分(約42.3μm)の4倍だけ第1配列方向に変位した位置(約42.3μm×4=約169.3μm)に5番目のインクドットが形成される。
【0057】
以下同様にして、順次図中下側から上側に位置する圧力室10に連通するノズルを選択しながらインクドットが形成されていく。このとき、図8中に示したノズルの番号をNとすると、(倍率n=N−1)×(600dpiに相当する間隔)に相当する分だけ、始めに形成されたドット位置から第1配列方向に変位した位置にインクドットが形成される。最終的に12個のノズルを選択し終わったときには、図中一番下の圧力室列11a中のノズル(1)により50dpiに相当する間隔(約508.0μm)で形成されたインクドットの間が600dpiに相当する間隔(約42.3μm)毎に離れて形成された12個のドットで繋げられ、全体で600dpiの解像度で第1配列方向に延びる直線を描くことが可能になっている。
【0058】
次に、本実施の形態によるインクジェットヘッド1の断面構造について説明する。図9は、図4に描かれたヘッド本体1aの部分分解斜視図である。図7及び図9に示すように、インクジェットヘッド1の底部側の要部は、上から、アクチュエータユニット21、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャプレート24、サプライプレート25、マニホールドプレート26,27,28、カバープレート29及びノズルプレート30の合計10枚のシート材が積層された積層構造を有している。これらのうち、アクチュエータユニット21を除いた9枚のプレートから流路ユニット4が構成されている。
【0059】
アクチュエータユニット21は、後で詳述するように、4枚の圧電シート41〜44(図11参照)が積層され且つ電極が配されることによってそのうちの最上層だけが電界印加時に活性層となる部分を有する層(以下、単に「活性層を有する層」というように記する)とされ、残り3層が非活性層とされたものである。キャビティプレート22は、圧力室10に対応するほぼ菱形の開口が多数設けられた金属プレートである。ベースプレート23は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10とアパーチャ12との連絡孔及び圧力室10からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。アパーチャプレート24は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、アパーチャ12のほかに圧力室10からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。サプライプレート25は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、アパーチャ12と副マニホールド5aとの連絡孔及び圧力室10からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。マニホールドプレート26、27、28は、副マニホールド5aに加えて、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。カバープレート29は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、圧力室10からインク吐出口8への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。ノズルプレート30は、キャビティプレート22の1つの圧力室10について、ノズルとして機能する先細のインク吐出口8がそれぞれ設けられた金属プレートである。
【0060】
これら10枚のシート21〜30は、図7に示すようなインク流路32が形成されるように、互いに位置合わせして積層される。このインク流路32は、副マニホールド5aからまず上方へ向かい、アパーチャ12において水平に延在し、それからさらに上方に向かい、圧力室10において再び水平に延在し、それからしばらくアパーチャ12から離れる方向に斜め下方に向かってから垂直下方にインク吐出口8へと向かう。
【0061】
次に、アクチュエータユニット21の詳細な構造について説明する。図10は、アクチュエータユニット21の拡大平面図である。図11は、図10のXI−XI線に沿ったインクジェットヘッド1の部分断面図である。
【0062】
図10に示すように、アクチュエータユニット21の上面であって平面視で各圧力室10と実質的に重なり合う位置には、厚さ1.1μm程度の個別電極35がそれぞれ設けられている。個別電極35は、ほぼひし形の主電極部35aと、主電極部35aの一方の鋭角部から連続して形成された、主電極部35aよりも小さいほぼひし形の補助電極部35bとからなる。主電極部35aは、圧力室10よりも一回り小さくほぼこれと相似形状を有しており、平面視において圧力室10に収まるように配置されている。また、補助電極部35bは、平面視においてそのほとんどの領域が圧力室10からはみ出している。アクチュエータユニット21の上面の個別電極35以外の領域には、後述する圧電シート41が露出している。
【0063】
図11に示すように、アクチュエータユニット21は、それぞれ厚みが15μm程度で同じになるように形成された4枚の圧電シート41、42、43、44を含んでいる。そして、アクチュエータユニット21には、個別電極35及び共通電極34の電位を制御する信号を供給するためのFPC136が貼り付けられている。圧電シート41〜44は、インクジェットヘッド1内の1つのインク吐出領域内に形成された多数の圧力室10に跨って配置されるように連続した層状の平板(連続平板層)となっている。圧電シート41〜44が連続平板層として多数の圧力室10に跨って配置されることで、例えばスクリーン印刷技術を用いることにより個別電極35を高密度に配置することが可能となっている。そのため、個別電極35に対応する位置に形成される圧力室10をも高密度に配置することが可能となって、高解像度画像の印刷ができるようになる。本実施の形態において、圧電シート41〜44は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなるものである。なお、図11では、FPC136と圧電シート41とが互いの全面において接着されているように描かれているが、実際には、両者は各個別電極35の補助電極部35bにおいてのみ接着されている。これは、図22及び図32においても同様である。
【0064】
最上層にある圧電シート41とその下方に隣接した圧電シート42との間には、シート全面に形成された厚み2μm程度の共通電極34が介在している。これにより、圧電シートの強度を高くすることができ、取り扱い時における損傷などを防止するとともに、アクチュエータユニット21のハンドリング性が向上する。また、上述したように、アクチュエータユニット21の上面つまり圧電シート41の上面には、平面形状が圧力室10と相似形状(長さ850μm、幅250μm)を有し且つ積層方向への射影領域が圧力室領域に含まれる主電極部35aと、主電極部35aよりも小さいほぼひし形の補助電極部35bとからなる個別電極35が、圧力室10ごとに形成されている。さらに、圧電シート43と圧電シート44との間、及び、圧電シート42と圧電シート43との間には、アクチュエータユニット21を補強するための補強用金属膜36a、36bがそれぞれ介在している。補強用金属膜36a、36bは、共通電極34と同様にシート全面に形成され且つこれとほぼ同じ厚さを有している。本実施の形態において、個別電極35は下地にNi(膜厚1μm程度)、表層にAu(膜厚0.1μm程度)が形成された積層金属材料からなるものであり、共通電極34及び補強用金属膜36a、36bは、Ag−Pd系の金属材料からなるものである。補強用金属膜36a、36bは電極として作用するものではなく必ずしも設ける必要もないが、補強用金属膜36a、36bがあることで焼結後の圧電シート41〜44の脆さを補うことができ、圧電シート41〜44がハンドリングし易くなるという利点がある。
【0065】
共通電極34は、図示しない領域においてFPC136を介して接地されている。これにより、共通電極34は、すべての圧力室10に対応する領域において等しくグランド電位に保たれている。また、個別電極35は、各圧力室10に対応して選択的に電位を制御することができるように、ほぼひし形の補助電極部35bにおいて、個別電極35ごとに独立してFPC136内に配線されたリード線(図示せず)と電気的に接合しており、このリード線を介してドライバIC132に接続されている。このように、本実施の形態では、平面視において圧力室10の外側にある補助電極部35bにおいて個別電極35とFPC136とが接続されていることにより、アクチュエータユニット21の積層方向への変形が阻害されることが少なく、圧力室10の容積変化量を大きくすることができるようになっている。なお、共通電極34は、積層方向への射影領域が圧力室領域を含むように圧力室10よりも大きいものが圧力室10ごとに多数形成されてもよいし、或いは、射影領域が圧力室領域に含まれるように圧力室10よりもやや小さいものが圧力室10ごとに多数形成されてもよく、必ずしもシート全面に形成された1枚の導電層である必要はない。ただし、このとき、圧力室10に対応する部分がすべて同一電位となるように共通電極どうしが電気的に接続されていることが必要である。
【0066】
本実施の形態によるインクジェットヘッド1において、圧電シート41〜44の分極方向はその厚み方向となっている。つまり、アクチュエータユニット21は、最上側(つまり、圧力室10から最も離れた側)の圧電シート41を活性層が存在する層とし且つ下側(つまり、圧力室10に近い側)3枚の圧電シート42〜44を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。従って、個別電極35を正又は負の所定電位とすると、例えば電界と分極とが同方向であれば圧電シート41〜43中の電極に挟まれた部分が活性層として働き、圧電横効果により分極方向と直角方向に縮む。一方、圧電シート42〜44は、電界の影響を受けないため自発的には縮まないので、最上層の圧電シート41と下層の圧電シート42〜44との間で、分極方向と垂直な方向への歪みに差を生じることとなり、圧電シート41〜44全体が非活性側に凸となるように変形しようとする(ユニモルフ変形)。このとき、図11で示したように、圧電シート41〜44の下面は圧力室を区画する隔壁(キャビティプレート)22の上面に固着されているので、結果的に圧電シート41〜44は圧力室側へ凸になるように変形する。このため、圧力室10の容積が低下して、インクの圧力が上昇し、インク吐出口8からインクが吐出される。その後、個別電極35を共通電極34と同じ電位に戻すと、圧電シート41〜44は元の形状になって圧力室10の容積が元の容積に戻るので、インクをマニホールド5側から吸い込む。
【0067】
なお、他の駆動方法として、予め個別電極35を共通電極34と異なる電位にしておき、吐出要求があるごとに個別電極35を共通電極34と一旦同じ電位とし、その後所定のタイミングにて再び個別電極35を共通電極34と異なる電位にすることもできる。この場合は、個別電極35と共通電極34とが同じ電位になるタイミングで、圧電シート41〜44が元の形状に戻ることにより、圧力室10の容積は初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加し、インクがマニホールド5側から圧力室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極35を共通電極34と異なる電位にしたタイミングで、圧電シート41〜44が圧力室10側へ凸となるように変形し、圧力室10の容積低下によりインクへの圧力が上昇し、インクが吐出される。
【0068】
また、圧電シート41〜44に印加される電界方向とその分極方向とが逆であれば、圧電横効果により、個別電極35と共通電極34とで挟まれた圧電シート41内の活性層が分極方向と直角方向に伸長しようとする。従って、圧電シート41〜44は、圧力室10側に凹となるように変形する。このため、圧力室10の容積が増加して、インクをマニホールド5側から吸い込む。その後、個別電極35の電位が元に戻れば、圧電シート41〜44は元の平板形状となり、圧力室10の容積が元の容積に戻るので、インク吐出口8からインクを吐出する。
【0069】
このように、本実施の形態によるインクジェットヘッド1は、アクチュエータユニット21の最外層であって圧力室から最も離れた圧電シート41だけに活性層が含まれていて、その外側面(上面)上だけに個別電極35が形成されたものである。そのため、アクチュエータユニット21を作製する際に、平面視で重なるように設けられた個別電極同士を互いに接続するためのスルーホールを形成する必要がなく、容易に製造可能である。
【0070】
さらに、本実施の形態によるインクジェットヘッド1は、圧力室10から最も離れた活性層を含む圧電シート41と流路ユニット4との間に、3枚の非活性層としての圧電シート42、43、44が配置されたものである。このように、1層の活性層を含む圧電シートに対して非活性層を3層とすることで、圧力室10の容積変化量を比較的大きくすることができ、従って、個別電極35の駆動電圧の低電圧化と共に圧力室10の小型化及び高集積化を図ることが可能となることが本発明者によって確認された。また、アクチュエータユニット21は、活性層を含む圧電シート41より厚い非活性層とを積層した構成となり、圧電シート41の脆さを補うことができ、アクチュエータユニット21のハンドリング性が向上する。そのため、高精度な取り扱いをしなくても、インクジェットヘッド1を容易に製造可能となる。
【0071】
インクジェットヘッド1は、活性層が存在する圧電シート41と非活性層である圧電シート42〜44とが同じ材料で形成されているために、材料を交換する手間が不要となり、比較的簡略な製造工程により製造可能である。そのため、製造コストを低減できることが期待される。さらに、活性層を含む圧電シート41と非活性層である圧電シート42〜44とがすべて実質的に同じ厚みを有していることからも、製造工程の簡略化によるコスト削減を図ることができる。なぜなら、圧電シートとなるセラミックス材料を積層していくときの厚さ調整工程を簡単に行うことができるようになるからである。また、非活性層が3枚の圧電シート42〜44を積層したものであるため、圧電シート41にまでインクが侵入することで個別電極35と共通電極34とにより挟まれた活性層の耐電圧が低下したり短絡が生じるのを防止することができるので、アクチュエータユニット21の場所により圧電特性の分布が生じることが抑制されることになる。そのため、場所によらず吐出特性が均一なインクジェットヘッド1が得られる。
【0072】
また、インクジェットヘッド1によると、圧電シート41を共通電極34と個別電極35とで挟み込むことにより、圧電効果によって容易に圧力室10の容積を変化させることができる。また、活性層を含む圧電シート41が連続平板層であるため、容易に製造することが可能である。
【0073】
また、本実施の形態によるインクジェットヘッド1は、圧力室10に近い圧電シート42〜44を非活性層とし、圧力室10から離れた圧電シート41を活性層を含む層としたユニモルフ構造のアクチュエータユニット21を有している。そのため、圧電横効果により圧力室10の容積変化量を大きくすることができて、圧力室10側が活性層を含む層でその反対側が非活性層のインクジェットヘッドと比較して、個別電極35に印加される電圧の低電圧化及び/又は圧力室10の高集積化を図ることが可能となる。印加電圧の低電圧化を図ることにより、個別電極35を駆動するドライバICを小型化できてコストを抑えることができ、圧力室10を小さくできてその高集積化を図ったときであっても十分な量のインクを吐出することが可能となって、ヘッド1の小型化と印刷ドットの高密度配置が実現される。
【0074】
次に、図4に示したインクジェットヘッド1の第1の製造方法について、さらに図12〜図15を参照しつつ説明する。
【0075】
インクジェットヘッド1を製造するには、まず流路ユニット4及びアクチュエータユニット21をそれぞれ並行して別個に作製し、その後両者を接着する。流路ユニット4を作製するには、これを構成する各プレート22〜30に、パターニングされたフォトレジストをマスクとしたエッチングを施して、図7及び図9に示すような開孔及び凹部を各プレート22〜30のそれぞれに形成する。特に、本製造方法では、図12に示すように、キャビティプレート22に圧力室10を形成する際、これと同時のエッチング工程により、円形のマーク(キャビティ位置認識マーク)55を形成する。つまり、圧力室10及びマーク55に相当する部分に開孔を有するフォトレジストをマスクとしてキャビティプレート22にエッチングを施す。マーク55は、後述する個別電極35の印刷位置決めのために設けられるものであり、例えば、インク吐出領域外において、キャビティプレート22の長手方向の所定間隔ごとに、キャビティプレート22の幅方向に離れた2個所に形成される。マーク55は開孔であってもよいし、凹部であってもよい。なお、図12においては、多数の圧力室10のうち一部の圧力室10だけを図示している。
【0076】
変形例として、マーク55は、圧力室10を形成するためのエッチングと別工程で、つまり別のフォトレジストをマスクとして行うようにしてもよい。しかしながら、マーク55を形成するためのエッチングを圧力室10を形成するためのエッチングと同時の工程とすることで、圧力室10に対するマーク55の位置精度を高めることができ、後述するように個別電極35と圧力室10との位置精度が向上するという利益が得られる。
【0077】
また、キャビティプレート22以外の8枚のプレート23〜30についても、エッチングにより開孔を形成する。その後、インク流路32が形成されるように9枚のプレート22〜30を接着剤を介在させつつ重ね合わせ、接着することで流路ユニット4を作製する。
【0078】
一方、アクチュエータユニット21を作製するには、まず、圧電シート44となるセラミックス材料のグリーンシート上に、補強用金属膜36aとなる導電性のペーストをパターン印刷する。それと並行して、圧電シート43となるセラミックス材料のグリーンシート上に補強用金属膜36bとなる導電性のペーストをパターン印刷すると共に、圧電シート42となるセラミックス材料のグリーンシート上に共通電極34となる導電性のペーストをパターン印刷する。その後、4枚の圧電シート41〜44を治具を用いて位置合わせしつつ重ね合わせることによって得られた積層物を所定の温度で焼成する。これにより、最上層にある圧電シート41の下面に共通電極34が形成された、個別電極を有しない積層物(圧電シート含有体)が形成される。
【0079】
次に、上述のようにして作製されたアクチュエータユニット21となる積層物は、圧電シート44とキャビティプレート22とが接触するように、接着剤により流路ユニット4と接着される。この際、流路ユニット4のキャビティプレート22の表面及び圧電シート41の表面にそれぞれ形成された位置合わせのための目印55,55a(図15参照)に基づいて両者が接着される。なお、この位置合わせは、アクチュエータユニット21となる積層物に未だ個別電極が形成されていないことから、高い精度を要求されない。この時点でのインクジェットヘッドの図11に相当する要部断面図を図13(A)に、その一点鎖線で囲った領域の部分拡大図を図14(A)にそれぞれ示す。なお、圧電シート41上の目印55aの形成は、圧電シート41〜44の焼成の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。
【0080】
しかる後、図13(B)及び図15に示すように、キャビティプレート22上に形成されたマーク55を光学的に認識し、認識されたマーク55の位置を基準にして、圧電シート41上の上述したような位置に、個別電極35となる導電性のペースト39をそれぞれパターン印刷する。このとき、図13(B)の一点鎖線で囲った領域の部分拡大図を図14(B)に示す。
【0081】
次に、焼成工程を行ってペースト39を焼結させる。これにより、圧電シート41上に個別電極35が形成され、アクチュエータユニット21が作製される。なお、このとき行う焼成工程において、流路ユニット4とアクチュエータユニット21となる積層物とを接着する接着剤として、その耐熱温度が個別電極35のパターンで印刷されたペースト39を焼成する際の焼成温度以上であるものを用いるか、或いは、ペースト39の材料として、その焼成温度が流路ユニット4とアクチュエータユニット21とを接着する接着剤の耐熱温度以下であるものを用いる必要がある。
【0082】
その後、個別電極35に電気信号を供給するためのFPC136をアクチュエータユニット21上にハンダ付けにより電気的に接合し、さらに所定の工程を経ることによってインクジェットヘッド1の製造が完了する。なお、ここでは詳述しないが、FPC136内の配線が共通電極34と接続されることで共通電極34がグランド電位に維持される。
【0083】
以上説明したインクジェットヘッドの製造法では、圧力室10のある流路ユニット4側に形成されたマーク55に基づいてパターン印刷されたペースト39を焼成することで個別電極35のパターンを形成するので、予め個別電極が形成されたアクチュエータユニットを流路ユニットに接着する場合と比較して、圧電シート41上に形成される個別電極35の圧力室10に対する位置精度が向上する。これにより、インク吐出性能の均一性が優れたものとなり、インクジェットヘッド1の長尺化を図ることが容易になる。つまり、本実施の形態のインクジェットヘッド1のようにアクチュエータユニット21を複数設け、それらを流路ユニット4の長手方向に配列するのではなく、アクチュエータユニット21として流路ユニット4と同じ程度に長いものを1つだけ用いるようにでき得る。
【0084】
また、本製造方法では、上述したように、圧電シート41〜44と流路ユニット4とを接着してからペースト39の印刷及び焼成を行っているので、アクチュエータユニット21のハンドリングが非常に容易である。しかも、共通電極34を形成する際に用いる印刷機を用いて個別電極35を印刷することができるので、製造コストを削減することができる。
【0085】
また、本製造方法では、圧電シート41〜44を積層する際に隣接する圧電シート間に個別電極を形成しない、つまり、圧力室10から最も離れた圧電シート41だけが活性層を含む層となるようにしているので、平面視で重なるように設けられた個別電極同士を互いに接続するためのスルーホールを圧電シート41〜44に形成する必要がない。そのため、上述したように、本製造方法によると、比較的簡易な工程により低コストでインクジェットヘッド1を製造可能である。
【0086】
さらに、本製造方法では、4枚の圧電シート41〜44を積層し、そのうち最上層の圧電シート41だけが活性層を含む層となり残りの3枚の圧電シート42〜44が非活性層となるようにしている。このようにして製造されたインクジェットヘッド1によると、上述したように、圧力室10の容積変化量を比較的大きくすることができ、従って、個別電極35の駆動電圧の低電圧化と共に圧力室10の小型化及び高集積化を図ることが可能となる。
【0087】
変形例として、圧電シート41〜44を含む積層物を焼成した後に、圧電シート41上に目印55a及び個別電極35を形成し、その後にアクチュエータユニット21と流路ユニット4とを貼り合わせてもよい。この目印55a及び個別電極35は、導電性ペーストのパターン印刷後に焼成工程を行うことで形成される。なお、目印55aが予め圧電シート41上に形成されているのであれば、この目印55aに基づいて個別電極35を形成してもよい。いずれにしても、焼成された積層物(圧電シート41〜44)の寸法は、個別電極35となるペーストの焼成時にほとんど変化しない。そのため、流路ユニット4上の目印55と圧電シート41上の目印55aとが所定の位置関係となるように両者を位置合わせしてしまえば、アクチュエータユニット21全体にわたって個別電極35と流路ユニット4に形成された圧力室10とを精度よく位置合わせすることができる。また、この変形例によると、アクチュエータユニット21と流路ユニット4とを貼り合わせた後において個別電極35を焼成するための加熱処理を行う必要がなくなるので、アクチュエータユニット21と流路ユニット4とを貼り合わせるために用いられる接着剤の選択の自由度が増すという利点が生じる。
【0088】
また、先に述べたように、補強用金属膜36a、36bを設けることで圧電シート41〜44の脆さを補い、圧電シート41〜44のハンドリング性を向上させることができるが、必ずしも補強用金属膜36a、36bを設ける必要はない。例えば、アクチュエータユニット21のサイズが1インチ程度であれば、補強用金属膜36a、36bを設けなくても、脆さにより圧電シート41〜44のハンドリング性が損なわれることはない。
【0089】
さらに、本実施の形態では、上述のように、圧電シート41上にのみ個別電極35が形成される。一方、圧電シート41以外の圧電シート42〜44上にも個別電極を形成する場合には、かかる個別電極を圧電シート41〜44の積層及び焼成前に所望の圧電シート41〜44上に印刷しなければならなくなる。したがって、焼成時に生じる圧電シート41〜44の収縮のために、圧電シート42〜44上の個別電極の位置精度と、圧電シート41上の個別電極35の位置精度とに差が生じてしまう。しかし、本実施の形態では圧電シート41上にのみ個別電極35を形成するようにしているので、かかる位置精度の差が生じることがなく、個別電極35は、対応する圧力室10と精度よく位置合わせされることになる。
【0090】
次に、インクジェットヘッド1の第2の製造方法について、図16〜図18をさらに参照して説明する。なお、図13(A)に示す接着工程までは同じ工程であるのでここでは説明を省略する。
【0091】
まず、接着工程が行われた図13(A)に示す状態から、キャビティプレート22上に形成されたマーク55を光学的に認識し、認識されたマーク55の位置を基準にして、圧電シート41の上方にメタルマスク61を配置する。このメタルマスク61は、図18にも示すように、個別電極35と同形状の開孔61aが個別電極35と同じマトリクス配列で多数形成されたものである。メタルマスク61は、開孔61aの位置が個別電極35を形成すべき位置と一致するようにマーク55に基づき治具を用いて位置合わせされる。メタルマスク61の開孔61aは、予めフォトレジストをマスクとして用いたエッチングにより形成されたものであってよい。この時点でのインクジェットヘッドの図11に相当する要部断面図を図16(A)に、その一点鎖線で囲った領域の部分拡大図を図17(A)にそれぞれ示す。
【0092】
しかる後、図16(B)及びその一点鎖線で囲った領域の部分拡大図である図17(B)に示すように、PVD(Physical Vapor Deposition:物理的蒸着)プロセスにより、メタルマスク61の開孔61aから露出した圧電シート41上に個別電極35としての導電膜をパターン形成する。なお、PVDの代わりにCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的蒸着)を行って個別電極35をパターン形成してもよい。また、個別電極35となる導電膜の下地のNi及び表層のAuを共にPVDで形成してもよいし、下地NiをPVDで、表層Auをメッキで形成してもよい。
【0093】
その後、流路ユニット4上からメタルマスク61を移動させた後、個別電極35に電気信号を供給するためのFPC136をアクチュエータユニット21上に貼り付け、さらに所定の工程を経ることによってインクジェットヘッド1の製造が完了する。
【0094】
このように、本製造方法では、圧力室10のある流路ユニット4側に形成されたマーク55に基づいて配置されたメタルマスク61を用いてPVDプロセスで個別電極35のパターンを形成するので、予め個別電極が形成されたアクチュエータユニットを流路ユニットに接着する場合と比較して、圧電シート41上に形成される個別電極35の圧力室10に対する位置精度が向上する。これにより、インク吐出性能の均一性が優れたものとなり、インクジェットヘッド1の長尺化を図ることが容易になる。
【0095】
また、PVDプロセスで個別電極35を形成しているためにペーストを印刷する場合とは異なり高温処理を行う必要がなくなるので、上述したように、圧電シート41〜44と流路ユニット4とを接着してから個別電極35の形成及びそのパターニングを行うことができるようになる。従って、アクチュエータユニット21のハンドリングが非常に容易になる。
【0096】
また、本製造方法によると、第1の製造方法で行ったような印刷の場合とは異なり、接着剤の耐熱温度又は導電性ペーストの焼成温度を考慮する必要がないので、接着剤や導電性ペーストの材料選択の範囲が広がる。
【0097】
なお、本製造方法では、個別電極35のみPVDで形成している。つまり、個別電極35は、共通電極34及び補強用金属膜36a、36bとは異なり圧電シート41〜44となるセラミックス材料と一緒に焼成しない。従って、外部に露出した個別電極35が、焼成時の高温加熱により蒸発するというおそれがない。また、個別電極35をPVDで形成することにより、その膜厚を比較的薄く形成することが可能である。このように、インクジェットヘッド1では、最も上層にある個別電極35を薄くすることで、活性層を含む圧電シート41の変位が個別電極35によって規制されづらくなって、インクジェットヘッド1における圧力室10の容積変形量を向上させている。
【0098】
本製造方法において、例えばPVDの代わりにメッキによって個別電極35を形成することができる。その場合には、メタルマスク61に代えて、フォトレジストを圧電シート41上に塗布した後、キャビティプレート22上に形成されたマーク55を光学的に認識し、認識されたマーク55の位置を基準にして、圧力室10の内壁のやや内側に対応する領域内にあるフォトレジストに光を照射する。その後、現像液を用いて光の照射された領域内のフォトレジストを除去する。これにより、フォトレジストがメタルマスク61と同等のパターンで開孔を有するようになる。なお、上述のように開孔が設けられたフォトレジストをマスクとして、PVDにより個別電極35をパターン形成してもよい。ただし、メタルマスクを用いる方が、再利用が可能で工程も簡略化できるなどフォトレジストを用いる場合よりも利益が大きい。また、個別電極を形成する際のマスクとしてメタルマスクやフォトレジスト以外のものを用いることも可能であり、フォトレジストとしてポジ型のほかネガ型を用いることも可能である。
【0099】
次に、インクジェットヘッド1の第3の製造方法について、図19〜図20をさらに参照して説明する。なお、図13(A)に示す接着工程までは同じ工程であるのでここでは説明を省略する。
【0100】
まず、接着工程が行われた図13(A)に示す状態から、流路ユニット4と接着されたアクチュエータユニット21上の全面にPVDプロセスによって導電膜64を形成する。なお、PVDの代わりにCVD、メッキを行うか或いはペーストの印刷及び焼成を行って導電膜64を形成してもよい。なお、ペーストの印刷及び焼成を行う場合には、上述したように接着剤の耐熱温度などに留意する必要がある。この時点でのインクジェットヘッドの図11に相当する要部断面図を図19(A)に示す。
【0101】
次に、導電膜64上の全面にポジ型のフォトレジスト65を塗布する。しかる後、キャビティプレート22上に形成されたマーク55を光学的に認識し、認識されたマーク55の位置を基準にして、圧力室10の内壁のやや内側位置に対応する領域外にあるフォトレジスト65に光を照射する。その後、現像液を用いて光の照射された領域内のフォトレジスト65を除去する。これにより、図20にも示すように、フォトレジスト65は各圧力室10に対応した位置だけに個別電極35のパターンで残存する。
【0102】
しかる後、残存したフォトレジスト65をエッチングマスクとして、フォトレジスト65で覆われていない領域の導電膜64をエッチングにより除去する。これにより、圧電シート41上には、個別電極35がパターン形成される。この時点でのインクジェットヘッドの要部断面図を図19(B)に示す。
【0103】
その後、残存しているフォトレジスト65を除去してから、個別電極35に電気信号を供給するためのFPC136をアクチュエータユニット21上に貼り付け、さらに所定の工程を経ることによってインクジェットヘッド1の製造が完了する。
【0104】
この第3の製造方法によっても、第1及び第2の製造方法と同様の利益を得ることが可能である。
【0105】
次に、第3の製造方法の変形例について説明する。本変形例では、アクチュエータユニット21を作製する際の圧電シート41〜44の積層工程において、圧電シート44となるセラミックス材料のグリーンシート上に、補強用金属膜36aとなる導電性のペーストをパターン印刷する。それと並行して、圧電シート43となるセラミックス材料のグリーンシート上に補強用金属膜36bとなる導電性のペーストをパターン印刷すると共に、圧電シート42となるセラミックス材料のグリーンシート上に共通電極34となる導電性のペーストをパターン印刷し、さらに、圧電シート41となるセラミックス材料のグリーンシート上の全面に個別電極35となる導電膜64をPVDやメッキにより形成する。なお、導電膜をPVDやメッキにより形成する代わりに、導電性のペーストを全面に印刷した後焼成してもよい。
【0106】
その後、4枚の圧電シート41〜44を治具を用いて位置合わせしつつ重ね合わせることによって得られた積層物を所定の温度で焼成する。これにより、最上層にある圧電シート41の下面に共通電極34が形成され且つ圧電シート41の上面に導電膜64が形成された積層物が形成される。しかる後、この積層物を流路ユニット4と接着する。この時点でのインクジェットヘッドの図11に相当する要部断面図は図19(A)と同じである。その後、第3の製造方法と同様の工程を経ることによりインクジェットヘッド1が完成する。
【0107】
この変形例によっても、上述した第1及び第2の製造方法と同様の利益を得ることが可能である。
【0108】
続いて、本発明の第2の実施の形態について、図21に基づいて以下に説明する。図21は、第2の実施の形態に係るヘッド本体の部分断面図である。なお、図21に示すヘッド本体のアクチュエータユニット以外は、上述した第1の実施の形態と同様なため、説明を省略する。つまり、第2の実施の形態では、インクジェットヘッドのヘッド本体のアクチュエータユニット301が第1の実施の形態と異なるだけでそれ以外は、同様な構成を有している。なお、図21において、上述したものと同様なものについては同符号を示し説明を省略する。
【0109】
図21に示すように、第2の実施の形態におけるヘッド本体のアクチュエータユニット301は、厚みがそれぞれ同一の4枚の圧電シート311〜314がキャビティプレート22の上面に積層され且つ電極が配置されることによってそのうちの最上層だけが電界印加時に活性層となる部分を有する層とされ、残りの3層が非活性層とされたものである。つまり、上述したアクチュエータユニット21と同様に最上層の圧電シート311の上面には、積層方向への射影領域が圧力室領域に含まれる主電極部35aと、主電極部35aよりも小さいほぼひし形の補助電極部35bとからなる個別電極35が圧力室10ごとに形成されており、圧電シート311とその下方に隣接した圧電シート312との間には、シート全面に形成された共通電極34が介在している。そして、個別電極35が正又は負の所定電位となると、個別電極35と共通電極34との間に挟まれた部分が活性層として上述した活性層と同様に働く。
【0110】
また、アクチュエータユニット301は上述したアクチュエータユニット21の圧電シート43と圧電シート44との間、及び、圧電シート42と圧電シート43との間に介在された補強用金属膜36a、36bがそれぞれ設けられていないものである。つまり、補強用金属膜となる導電性のペーストを圧電シート313、314となるセラッミック材料のグリーンシート上にパターン印刷せずに作製された圧電シート313、314に上述したアクチュエータユニット21の圧電シート41、42と同様に作製された圧電シート311、312が積層してアクチュエータユニット301が作製されている。
【0111】
このようにアクチュエータユニット301の圧電シート313と圧電シート314との間、及び、圧電シート312と圧電シート313との間に補強用金属膜が介在されていないことで、アクチュエータユニット301の内部には共通電極だけとなり、アクチュエータユニット301の作製時における製造工程が簡略化され、インクジェットヘッドが容易に製造可能となる。また、ヘッド本体にアクチュエータユニット301を適用したインクジェットヘッド及びそのインクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタにおいても上述したものと同様の効果が得られる。
【0112】
続いて、本発明の第3の実施の形態について、図22に基づいて以下に説明する。図22は、第3の実施の形態に係るヘッド本体の部分断面図である。なお、本実施形態においても図22に示すヘッド本体のアクチュエータユニット以外は、上述した第1の実施の形態と同様なため、説明を省略する。つまり、第3の実施の形態では、インクジェットヘッドのヘッド本体のアクチュエータユニット321が第1の実施の形態と異なるだけでそれ以外は、同様な構成を有している。なお、図22において、上述したものと同様なものについては同符号を示し説明を省略する。
【0113】
図22に示すように、第3の実施の形態におけるヘッド本体のアクチュエータユニット321は、厚みがそれぞれ同一の3枚の圧電シート331〜333がキャビティプレート22の上面に積層され且つ電極が配置されることによってそのうちの最上層だけが電界印加時に活性層となる部分を有する層とされ、残りの2層が非活性層とされたものである。つまり、上述したアクチュエータユニット21と同様に最上層の圧電シート331の上面には、積層方向への射影領域が圧力室領域に含まれる主電極部35aと、主電極部35aよりも小さいほぼひし形の補助電極部35bとからなる個別電極35が圧力室10ごとに形成されており、圧電シート331とその下方に隣接した圧電シート332との間には、シート全面に形成された共通電極34が介在している。そして、個別電極35が正又は負の所定電位となると、個別電極35と共通電極34との間に挟まれた部分が活性層として上述した活性層と同様に働く。
【0114】
また、アクチュエータユニット321は上述したアクチュエータユニット21の圧電シート44がないものと同様なものであるために、圧電シート43と圧電シート44との間に介在された補強用金属膜36aが介在されていない。そのため、アクチュエータユニット321の作成時における製造工程が簡略化され、インクジェットヘッドが容易に製造可能となる。また、ヘッド本体にアクチュエータユニット301を適用したインクジェットヘッド及びそのインクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタにおいても上述したものと同様の効果が得られる。
【0115】
続いて、本発明の第4の実施の形態について、図23に基づいて以下に説明する。図23は、第4の実施の形態に係るヘッド本体の部分断面図である。なお、本実施形態においても図23に示すヘッド本体のアクチュエータユニット以外は、上述した第1の実施の形態と同様なため、説明を省略する。つまり、第4の実施の形態では、インクジェットヘッドのヘッド本体のアクチュエータユニット341が第1の実施の形態と異なるだけでそれ以外は、同様な構成を有している。なお、図23において、上述したものと同様なものについては同符号を示し説明を省略する。
【0116】
図23に示すように、第4の実施の形態におけるヘッド本体のアクチュエータユニット341は、厚みがそれぞれ同一の5枚の圧電シート351〜355がキャビティプレート22の上面に積層され且つ電極が配置されることによってそのうちの最上層だけが電界印加時に活性層となる部分を有する層とされ、残りの4層が非活性層とされたものである。つまり、上述したアクチュエータユニット21と同様に最上層の圧電シート351の上面には、積層方向への射影領域が圧力室領域に含まれる主電極部35aと、主電極部35aよりも小さいほぼひし形の補助電極部35bとからなる個別電極35が圧力室10ごとに形成されており、圧電シート351とその下方に隣接した圧電シート352との間には、シート全面に形成された共通電極34が介在している。そして、個別電極35が正又は負の所定電位となると、個別電極35と共通電極34との間に挟まれた部分が活性層として上述した活性層と同様に働く。
【0117】
また、アクチュエータユニット341は上述したアクチュエータユニット21の圧電シート44の下面に圧電シート44と同様の圧電シートが設けられ、その圧電シートと圧電シート44との間に補強用金属膜が設けられたものと同様である。つまり、圧電シート352の下方に圧電シート353が設けられ、その圧電シート353の下方に圧電シート354が設けられるとともに圧電シート354の下方にも圧電シート355が設けられてアクチュエータユニット341が構成されている。そして、圧電シート353と圧電シート354との間、及び圧電シート352と圧電シート352との間に補強用金属膜36a、36bが介在されているとともに、さらに圧電シート354と圧電シート355との間にも同様の補強用金属膜36cが介在されている。
【0118】
このようにアクチュエータユニット341が5枚の圧電シート351〜355で構成されているために、活性層を含む圧電シート351と非活性層を含む4枚の圧電シート352〜355とをその積層方向に大きく変形させることが可能となり、圧力室の容積変化量を比較的大きくすることができる。従って、個別電極の駆動電圧の低電圧化と共に圧力室の小型化及び高集積化を図ることが可能となる。また、ヘッド本体にアクチュエータユニット341を適用したインクジェットヘッド及びそのインクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタにおいても上述したものと同様の効果が得られる。
【0119】
続いて、本発明の第5の実施の形態について、図24に基づいて以下に説明する。図24は、第5の実施の形態に係るヘッド本体の部分断面図である。なお、本実施形態においても図24に示すヘッド本体のアクチュエータユニット以外は、上述した第1の実施の形態と同様なため、説明を省略する。つまり、第5の実施の形態では、インクジェットヘッドのヘッド本体のアクチュエータユニット361が第1の実施の形態と異なるだけでそれ以外は、同様な構成を有している。なお、図24において、上述したものと同様なものについては同符号を示し説明を省略する。
【0120】
図24に示すように、第5の実施の形態におけるヘッド本体のアクチュエータユニット341は、3枚の圧電シート371〜373がキャビティプレート22の上面に積層され且つ電極が配置されることによってそのうちの最上層だけが電界印加時に活性層となる部分を有する層とされ、残りの2層が非活性層とされたものである。つまり、上述したアクチュエータユニット21と同様に最上層の圧電シート371の上面には、積層方向への射影領域が圧力室領域に含まれる主電極部35aと、主電極部35aよりも小さいほぼひし形の補助電極部35bとからなる個別電極35が圧力室10ごとに形成されており、圧電シート371とその下方に隣接した圧電シート372との間には、シート全面に形成された共通電極34が介在している。そして、個別電極35が正又は負の所定電位となると、個別電極35と共通電極34との間に挟まれた部分が活性層として上述した活性層と同様に働く。
【0121】
また、アクチュエータユニット361は上述したアクチュエータユニット21の圧電シート44がなく、電圧シート43の厚みが分厚く形成されると共に圧電シート43及び圧電シート44との間、及び、圧電シート42と圧電シート43との間に介在された補強用金属膜36a、36bが介在されていないものと同様である。つまり、圧電シート372の下方に積層された圧電シート373が圧電シート371、372の厚みより分厚く形成されて、十分な強度を有するアクチュエータユニット361を構成している。そのため、圧電シート372と圧電シート373との間に補強用金属膜を形成する必要がなくなるために、アクチュエータユニット361の作成時における製造工程が簡略化され、インクジェットヘッドが容易に製造可能となる。また、ヘッド本体にアクチュエータユニット361を適用したインクジェットヘッド及びそのインクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタにおいても上述したものと同様の効果が得られる。
【0122】
なお、上述した第2〜5の実施の形態におけるアクチュエータユニット301、321、341、361をそれぞれ有するインクジェットヘッドも上述したインクジェットヘッド1と同様の製造方法により製造することができる。また、各圧電シートも上述したアクチュエータユニット21の圧電シートの材質と同様のもので形成されている。
【0123】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、上述した各実施の形態で用いられている圧電シートや電極の材料は、上述したものに限らず、その他の公知の材料に変更してもよい。また、圧力室の平面形状や断面形状、配置形態、そして、活性層を含む圧電シートの数、非活性層の数などは、適宜変更してよい。
【0124】
また、上述の実施の形態では、圧電シートに個別電極及び共通電極を配置することでアクチュエータユニットを形成しているが、必ずしもこのようなアクチュエータユニットを流路ユニットに接着する必要はなく、アクチュエータユニットは各圧力室の容積を個別に変化させることができるものであれば他のものを用いることもできる。
【0125】
上述の実施の形態では、圧力室から最も離れた最上層の圧電シートだけに活性層を形成しているが、最上層の圧電シートは必ずしも活性層を含んでいなくてもよく、また、最上層の圧電シートに加えてそれ以外の圧電シートに活性層を形成してもよい。これらの場合であっても、十分なクロストークの抑制効果を得ることができる。
【0126】
また、上述の実施の形態では、エッチングにより流路ユニットを構成する各プレートに開孔やマークを形成しているが、エッチング以外の方法で各プレートに開孔やマークを形成してもよい。
【0127】
【0128】
また、本発明において、圧電シート含有体は、上述の実施の形態のように、共通電極と個別電極とによって挟まれた活性層が存在する圧電シート1層だけを含むものであってもよいし、活性層が存在する一又は複数の圧電シートのほかにこれに積層された非活性層としての複数のシート状部材を含むものであってもよい。
【0129】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、アクチュエータユニットの内部に個別電極が存在しなくなるため、平面視で互いに重なる複数の個別電極同士を互いに接続するためのスルーホールを形成するという複雑な工程を経ることなく、比較的簡易にインクジェットヘッドを製造することが可能となる。
非活性層が圧電シートからなるため、非活性層と、活性層を含む層とを同じ材料とすることができるので、製造工程が簡略化される。
アクチュエータユニットが複数の圧力室に跨って配置されているので、アクチュエータユニットを圧力室ごとに設ける場合と比較して、インクジェットヘッドの構造及び製造工程が簡略化される。
平面視において圧力室の外側にある補助電極部において個別電極とフレキシブルプリント配線板とが接続されていることにより、アクチュエータユニットの積層方向への変形が阻害されることが少なく、圧力室の容積変化量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態によるインクジェットヘッドを含むインクジェットプリンタの概略図である。
【図2】 本発明の第1の実施の形態によるインクジェットヘッドの斜視図である。
【図3】 図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】 図2に描かれたインクジェットヘッドに含まれるヘッド本体の平面図である。
【図5】 図4内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図6】 図5内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図7】 図4に描かれたヘッド本体の部分断面図である。
【図8】 図5内に描かれた二点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図9】 図4に描かれたヘッド本体の部分分解斜視図である。
【図10】 図6に示す領域におけるアクチュエータユニットの拡大平面図である。
【図11】 図10のXI−XI線に沿った図4に示すヘッド本体の部分断面図である。
【図12】 第1の製造方法に基づいた図4に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における、マークが形成されたキャビティプレートを示す平面図である。
【図13】 図13(A)及び図13(B)は、それぞれ、第1の製造方法に基づいた図4に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における部分断面図である。
【図14】 図14(A)及び図14(B)は、それぞれ、第1の製造方法に基づいた図4に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における、アクチュエータユニットの部分拡大断面図である。
【図15】 第1の製造方法に基づいた図4に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における、印刷が施される領域を説明するための平面図である。
【図16】 図16(A)及び図16(B)は、それぞれ、第2の製造方法に基づいた図4に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における部分断面図である。
【図17】 図17(A)及び図17(B)は、それぞれ、第2の製造方法に基づいた図4に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における、アクチュエータユニットの部分拡大断面図である。
【図18】 第2の製造方法に基づいた図4に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における、メタルマスクが配置された領域を説明するための平面図である。
【図19】 図19(A)及び図19(B)は、それぞれ、第3の製造方法に基づいた図4に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における部分断面図である。
【図20】 第3の製造方法に基づいた図4に示すインクジェットヘッドの製造途中の一過程における、フォトレジストが配置された領域を説明するための平面図である。
【図21】第2の実施の形態に係るヘッド本体の部分断面図である。
【図22】第3の実施の形態に係るヘッド本体の部分断面図である。
【図23】第4の実施の形態に係るヘッド本体の部分断面図である。
【図24】第5の実施の形態に係るヘッド本体の部分断面図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
4 流路ユニット
10 圧力室
21、301、321、341、361 アクチュエータユニット
22 キャビティプレート
34 共通電極
35 個別電極
35a 主電極部
35b 補助電極部
36a、36b、36c 補強用金属膜
41、42、43、44、311、312、313、314、331、332、333、351、352、353、354、355、371、372、373 圧電シート
101 インクジェットプリンタ
Claims (9)
- 一端をノズルに他端を共通インク室にそれぞれ接続された複数の圧力室が相互に隣接配置されていると共に、前記複数の圧力室が凹部として形成された一表面を有する流路ユニットと、
前記圧力室の容積を変化させるために前記一表面の前記凹部以外の桁部に固定されて前記凹部を塞ぐアクチュエータユニットと、
前記圧力室の容積を変化させるための駆動信号を前記アクチュエータユニットに供給するフレキシブルプリント配線板とを備えており、
前記圧力室が、平面視において、菱形形状を有しており、
前記共通インク室が、平面視において、前記圧力室と重なり合っており、
前記流路ユニットは、どの前記圧力室についても対角線が同じ方向を向くように前記複数の圧力室がマトリクス状に互いに隣接して形成された第1のプレートと、前記ノズルが形成された第2のプレートとを含む複数のプレートが積層された積層体であって、
前記第1のプレートが前記一表面を有し、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に残りの前記プレートが挟まれており、
前記ノズルが、前記積層体の積層方向に開口しており、
前記アクチュエータユニットが、
一定電位に保たれた共通電極と、
各圧力室に対応する位置に配置された個別電極であって、前記アクチュエータユニットの前記流路ユニットとの固定面とは反対側の面上にだけ形成された個別電極と、
前記共通電極と前記個別電極とによって挟まれ、且つ、前記複数の圧力室に跨って配置された圧電シートと、
前記共通電極と前記流路ユニットとによって挟まれた圧電シートからなる非活性層とを含んでおり、
前記一表面の前記桁部には、平面形状が台形である複数の前記アクチュエータユニットが、互いに隣接するものの斜辺同士が前記流路ユニットの幅方向にオーバーラップするように固定されており、
各個別電極が、平面視において前記圧力室内に収まる主電極部と、前記主電極部の一端部から前記桁部上にまで引き出された補助電極部とから構成されていると共に、複数の前記個別電極が、前記圧力室に対応してマトリクス状に規則的に配列されており、
前記個別電極が、前記共通電極よりも薄く、
前記フレキシブルプリント配線板が、前記桁部に対向した補助電極部とのみ接続されていることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記アクチュエータユニットは、前記アクチュエータユニットの最外層となり且つ前記共通電極が形成された前記圧電シートと、前記圧電シートよりも大きい膜厚を有する前記非活性層とを含んでいることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 前記非活性層が、複数枚の絶縁性シート状部材を積層したものであることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
- 前記複数枚の絶縁性シート状部材が同じ膜厚を有していることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド。
- 前記非活性層が、3枚の絶縁性シート状部材を積層したものであることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
- 前記アクチュエータユニットが前記共通電極と前記個別電極のうち、前記共通電極だけを内部に保持していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
- 前記共通電極がグランド電位に保たれていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
- 前記共通電極が前記圧電シートの全面を覆うように配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドを含むインクジェットプリンタ。
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