JP2004158736A - 発光素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも1層の化合物半導体からなる発光層4を含む発光素子において、屈折率と厚さの積が発光波長の64分の9以上、且つ64分の27以下である層7を少なくとも1層含む構造とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光取出効率を向上させた発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に屈折率の高い物質から屈折率の低い物質には光が透過しにくい。そのため、屈折率が2〜4前後の化合物半導体で構成される発光素子から屈折率1の空気中に取り出される光は、発光素子内部で生じる光のごく一部に過ぎず、光取出効率はわずか数%となってしまう。
【0003】
この問題を解決する手段として、発光素子を構成する半導体の周囲を樹脂でモールドする方法が広く用いられている。これは、異なる屈折率を有するふたつの物質の間に、それらのちょうど中間の値となるような屈折率を有する物質を挟み込むと、光の透過率が増加するという物理現象を利用している。樹脂は屈折率が1.5程度とこの条件を満たすため、光取出効率を増加させることが可能なのである。
【0004】
このように半導体の屈折率と空気の屈折率の中間の値となるような屈折率を有する物質から形成される層(以下、光取出層と称する)を構成する材料は必ずしも樹脂に制限されるものではないが、形成の容易さやコスト等の面から、樹脂が用いられるのが一般的である。
【0005】
なお、光の取り出し効率を上げるため、発光素子を個別に封止する透明な樹脂の表面側にレンズを形成することも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−291629号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法においては、光取出層の厚さについては特に考慮されていなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、光取出層の厚さを最適化することで、光取出効率をさらに向上させた発光素子を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0010】
請求項1の発明に係る発光素子は、少なくとも1層の化合物半導体からなる発光層を含む発光素子において、屈折率と厚さの積が発光波長の64分の9以上、且つ64分の27以下である層を少なくとも1層含むことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発光素子において、前記発光層が、一般式GaPx1As1−x1(0≦x1≦1)、またはAlx2Ga1−x2As(0≦x2≦1)、または(Alx3Ga1−x3)yIn1−yP(0≦x3≦1、0≦y≦1)、またはAlx4Ga1−x4N(0≦x4≦1)、またはInx5Ga1−x5N(0≦x5≦1)で表される化合物半導体のうち少なくとも1種類の化合物半導体からなることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の発光素子において、前記の屈折率と厚さの積が発光波長の64分の9以上、且つ64分の27以下である層が、素子を構成する半導体多層膜の最外層となっていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発光素子において、前記の屈折率と厚さの積が発光波長の64分の9以上、且つ64分の27以下である層が、少なくともInを含む材料で構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発光素子において、前記の屈折率と厚さの積が発光波長の64分の9以上、且つ64分の27以下である層が、少なくともIn2O3を含む材料で構成されていることを特徴とする。
【0015】
<発明の要点>
光は波動としての性質を有するため、光取出層の厚さを光の波長程度とすれば、光取出層の透過率は膜厚依存性を示すようになる。そこで、透過率が最大となるように光取出層の膜厚を制御することで、光取出効率の向上を図る点が本発明の要点である。
【0016】
本発明による発光素子は、半導体の屈折率と空気の屈折率の中間の値となるような屈折率を有する物質から形成される層(光取出層)として、屈折率と厚さの積が発光波長の64分の9以上、且つ64分の27以下である層を少なくとも1層含む。
【0017】
この光取出層を構成する材料について特に制限はないが、発光素子は電流注入により発光しなければならないため、該光取出層は導電性を有することが望ましい。また、当然ながら発光波長に対し透明であることが望ましい。このような条件を満たす材料として、例えばIn2O3が挙げられる。
【0018】
本発明による発光ダイオードの発光を構成する化合物半導体について特に制限はないが、一般的な発光素子に応用することを考えると、一般式GaPx1As1−x1(0≦x1≦1)、またはAlx2Ga1−x2As(0≦x2≦1)、または(Alx3Ga1−x3)yIn1−yP(0≦x3≦1、0≦y≦1)、またはAlx4Ga1−x4N(0≦x4≦1)、またはInx5Ga1−x5N(0≦x5≦1)で表される化合物半導体が好ましい。
【0019】
光取出層が位置する場所について特に制限はないが、光取出効率向上効果を最大限に発揮するには、発光素子の最外層にあることが望ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0021】
図1に本発明の第一の実施形態にかかわる発光ダイオードの模式図な断面図を示す。
【0022】
まず、厚さ300μmのSiドープn型GaAs基板1上に、Seドープn型GaAsバッファ層2、Seドープn型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層3、アンドープ(Al0.15Ga0.85)0.5In0.5P活性層4、Znドープp型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層5と、Znドープ型GaAs保護層6を順次積層した積層構造の発光素子用ウェハを、有機金属化学的気相成長法で作製した。ここで、このウェハを12個にわけ、それぞれウェハA、ウェハB、ウェハC、ウェハD、ウェハE、ウェハF、ウェハG、ウェハH、ウェハI、ウェハJ、ウェハK、ウェハLとした。
【0023】
次に、(C7H15COO)Inと(C7H15COO)SnをSn/In比が8%となるように混合し、リノール酸を加えてベンゼンで希釈し、SnドープIn2O3前駆体を得た。この前駆体をウェハAを除く5枚のウェハのGaAs保護層6上にスプレー法にて塗布し、600℃で20分間の熱処理を施して、光取出層としてのSnドープIn2O3層7を積層した。
【0024】
次いで、In2O3層(光取出層)7上に、上部電極8、GaAs基板1上に下部電極9を形成し、以て、発光層たる活性層4の両側にクラッド層3、5を有するダブルヘテロ構造のAlGaInP系発光ダイオードを得た。
【0025】
このとき、ウェハB、ウェハC、ウェハD、ウェハE、ウェハF、ウェハG、ウェハH、ウェハI、ウェハJ、ウェハK、ウェハLへのスプレー回数は、それぞれ40回、80回、120回、160回、200回、240回、360回、480回、600回、720回、840回とし、各ウェハのIn2O3層(光取出層)の厚さが異なるようにした。
【0026】
このようにして作製した発光ダイオードの上部電極8にそれぞれワイヤ10をボンディングして20mAの電流を通電し、光パワーメータで発光出力を測定した。また、In2O3層(光取出層)7を形成しなかったウェハAはGaAs保護層6上に直接上部電極8を形成し、ウェハB等と同様に通電電流20mAにおける発光出力を測定した。
【0027】
さらに、発光出力測定後、各ウェハの断面を電子顕微鏡で観察し、In2O3層(光取出層)の厚さを求めた。これらの結果を表1及び図2にまとめて示す。また、上記で作製した12個の発光ダイオードの、In2O3膜(光取出層)の屈折率は全て2.0であった。発光波長を測定したところピーク波長は全て640nmであった。
【0028】
【表1】
【0029】
光取出層がないウェハAの発光素子に比べ、光取出層を形成したウェハB〜Lの発光素子は全て発光出力が増加している。これは、In2O3層が光取出層として機能していることを示している。表1及び図2にからわかるように、特にウェハC、D、Eの発光素子(実施例)で著しく発光出力の向上が認められる。そしてIn2O3膜厚が増加するにしたがって、発光出力は約4.5mWへと収束してゆくことがわかる。
【0030】
ウェハC、D、Eの発光素子(実施例)の光取出層となるIn2O3膜厚と屈折率の積は、それぞれ122nm、180nm、238nmであり、これらの値は発光波長640nmの64分の9以上、且つ64分の27以下、すなわち90nm以上270nm以下という条件を満たす本発明に関わる発光素子である。
【0031】
これに対し、ウェハG〜Lの発光素子(比較例)はIn2O3膜厚の最適化がされておらず、従来程度の発光出力の向上の効果しか得られていない。これは従来型の発光素子であるといえる。
【0032】
特にウェハGの発光素子では発光出力が低下するが、これはIn2O3膜厚の厚さが、むしろ光取出を阻害する反射膜として最適化されてしまっているためと考えられる。
【0033】
一方、ウェハHの発光素子においてやや優れた発光出力の向上が見られるのは、二次回折光に対して厚さが最適化されているためと考えられる。ただし、二次回折光は一次回折光に比べ強度が落ちるので、その効果は小さい。
【0034】
膜厚が増加するにつれて発光出力が一定の値に収束していくのは、薄膜としての効果が失われていくためであると理解できる。
【0035】
なお、半導体薄膜における光の挙動については、「光工学ハンドブック」(小瀬他、朝倉書店(1986))に記載されている。また、In2O3層のドーパントとしてSnが最適であることは、例えば「薄膜ハンドブック」(日本学術振興会 薄膜第131委員会編、オーム社(1983))に記載されている。
【0036】
本発明における光取出効率向上効果は、薄膜における光の一次回折を利用したものである。したがって、当然ながら二次回折光や三次回折光に対しても同様の効果を得ることが可能ではあるが、上記試作例の検討からわかるように、二次回折光に対してはその効果は極めて小さい。光の性質を考慮すれば、三次以降の回折光に対してもほとんど効果がないことは自明である。
【0037】
さらに、二次以降の回折光に対応するには膜厚が増加してしまうため、光吸収や電流注入の阻害等の悪影響を考慮すれば、一次回折光に対する最適化条件が最も望ましいといえる。
【0038】
上記実施例では光取出層がSnドープIn2O3層である場合について述べたが、光取出層を構成する物質は必ずしもIn2O3層である必要はなく、光を発生する半導体層と空気の屈折率の中間の屈折率を有する物質であればよい。また、発光波長はかならずしも可視光領域である必要はなく、紫外領域や赤外領域にあってもよい。
【0039】
本発明による発光素子は、照明機器、液晶用バックライト、各種インジケータ、表示パネル等のデバイスに応用することができる。従来型の発光素子よりも光取出効率が向上していることを考慮すると、バッテリ等で駆動する携帯機器への応用が考えられる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくとも1層の化合物半導体からなる発光層を含む発光素子において、屈折率と厚さの積が発光波長の64分の9以上、且つ64分の27以下である層を少なくとも1層設けているので、これにより従来よりも光取出効率を向上させた発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかわる発光ダイオードの模式図的な断面図である。
【図2】In2O3膜厚と発光出力の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 n型GaAs基板
2 n型GaAsバッファ層
3 n型AlGaInPクラッド層
4 アンドープAlGaInP活性層(発光層)
5 p型AlGaInPクラッド層
6 p型GaAs保護層
7 In2O3層(光取出層)
Claims (5)
- 少なくとも1層の化合物半導体からなる発光層を含む発光素子において、
屈折率と厚さの積が発光波長の64分の9以上、且つ64分の27以下である層を少なくとも1層含むことを特徴とする発光素子。 - 前記発光層が、一般式GaPx1As1−x1(0≦x1≦1)、またはAlx2Ga1−x2As(0≦x2≦1)、または(Alx3Ga1−x3)yIn1−yP(0≦x3≦1、0≦y≦1)、またはAlx4Ga1−x4N(0≦x4≦1)、またはInx5Ga1−x5N(0≦x5≦1)で表される化合物半導体のうち少なくとも1種類の化合物半導体からなることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
- 前記の屈折率と厚さの積が発光波長の64分の9以上、且つ64分の27以下である層が、素子を構成する半導体多層膜の最外層となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光素子。
- 前記の屈折率と厚さの積が発光波長の64分の9以上、且つ64分の27以下である層が、少なくともInを含む材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光素子。
- 前記の屈折率と厚さの積が発光波長の64分の9以上、且つ64分の27以下である層が、少なくともIn2O3を含む材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発光素子。
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2002
- 2002-11-08 JP JP2002324667A patent/JP2004158736A/ja active Pending
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