JP2004157445A - 波面収差補正ミラーおよび光ピックアップ - Google Patents
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Abstract
【課題】温度によるミラーの平面度への影響を少なくすることの可能な波面収差補正ミラーおよび光ピックアップを提供する。
【解決手段】ミラー基板(6a)または(6b)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち、抑制層(21)が設けられている。
【選択図】 図1
【解決手段】ミラー基板(6a)または(6b)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち、抑制層(21)が設けられている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、波面収差補正ミラーおよび光ピックアップに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、光ディスクを用いた情報記憶装置として、CDやDVDなどがある。DVDなどは、CDに比べて記録密度が高いため、情報を読み書きするときの条件が厳しくなっている。
【0003】
例えば、光ピックアップの光軸とディスク面は垂直であることが理想であるが、実際にはディスクが樹脂製のため、かなりうねりを持っていて、これを回転させると、光ピックアップの光軸とディスク面は常に垂直ではなくなる(これを以降、チルトと表現する)。また、ディスクは、図18(a),(b)に示すように、記録層(108)が樹脂層(102)を介しているため、ディスク面が垂直でなくなると光路が曲げられディスク上に正しくスポットを絞れなくなり、コマ収差(103)が発生する。この収差が許容される量よりも大きくなると、正しく読み書きが出来なくなるという不具合が生じる。なお、図18(a),(b)はディスクがそれぞれCD,DVDの場合である。
【0004】
チルトの影響を少なくする手段としては、対物レンズと記録層との間の樹脂層を薄くすることがある。実際に、DVD(図18(b))が、CD(図18(a))に比較して、対物レンズ(101)と記録層(108)との間の樹脂層(102)の厚さを半分にしたのは、この効果を狙ったものである。しかし、この方法の場合、DVDよりも高密度記録をしようとした場合には樹脂層をもっと薄くしてさらにチルトの影響を少なくすることになるが、今度はディスク上にごみや傷がついた場合に、信号が正しく読み書きできなくなるという不具合が生じる。このため、アクチュエータによって光軸を傾けて(チルト)対応しているのが現状である。
【0005】
チルトを光学的に補正するため、液晶を用いたり(例えば、特許文献1参照。)、透明圧電素子を用いたり(例えば、特許文献2参照。)、可変ミラーを用いたりする(例えば、特許文献3参照。)ことが提案されている。
【0006】
具体的に、特許文献1(図15)では、液晶板を用いて位相制御することによりコマ収差を補正している。しかし、この方法では、レーザーが液晶板を通過するために光量が減衰し、書き込みに必要なエネルギーを得ることが困難であり、また液晶の特性から、特にタンジェンシャルチルト制御に要求される高周波動作に使用するのは困難であると思われる。
【0007】
また、特許文献2(図16)では、実際に透明圧電素子単体で必要な変位量を得るためには高電圧が必要となり、光ピックアップなどに用いるには現実的ではない。
【0008】
また、特許文献3(図17)は、ミラー自体を積層型圧電素子で変形させ位相制御するようにしている。しかし、光ピックアップなどの小さい部品に用いるには配線などの考慮がされておらず、複雑になりかつ組み付けコストも高くなる。また、配線などの問題が解決できたとしても、積層型圧電素子をかなり小さくしなければならなくなるため、技術的にもコスト的にもなかなか困難である。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−79135号公報
【0010】
【特許文献2】
特開平5−144056号公報
【0011】
【特許文献3】
特開平5−333274号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このような情報を読み書きするときに不具合を生じさせるチルトの影響を、圧電素子を使用したユニモルフまたはバイモルフ形状の波面収差補正ミラーで波面収差を補正する方法が、低電圧で小型化にも有利であると考えられるが、ミラー基板のミラー面を変形させる場合、低電圧で駆動させるためには変形しやすくなくてはならない。このためにはミラー基板を薄くすることが一番効果的であるが、図12(a),(b)に示すような波面収差補正ミラーの場合、ミラー基板を薄くすると、その非対称な形状から温度の影響を受けやすくなり、例えば室温から温度が上昇したとき図12(c)に示すように平面度は悪くなってしまう。
【0013】
本発明は、温度によるミラーの平面度への影響を少なくすることの可能な波面収差補正ミラーおよび光ピックアップを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項2記載の発明では、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料の物性値を制御することによって行なわれることを特徴としている。
【0016】
また、請求項3記載の発明では、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料に穴を開けるか、あるいは、溝を設けることによって行なわれることを特徴としている。
【0017】
また、請求項4記載の発明では、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料に気泡を設けることによって行なわれることを特徴としている。
【0018】
また、請求項5記載の発明では、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を部分的に設けることによって行なわれることを特徴としている。
【0019】
また、請求項6記載の発明では、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に対して、位置により、物性値や穴の数や大きさ、気泡の密度、部分的に設ける層の幅やピッチを制御することによって行なわれることを特徴としている。
【0020】
また、請求項7記載の発明では、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板内に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられていることを特徴としている。
【0021】
また、請求項8記載の発明では、請求項7記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられているミラー基板は、2つ以上の基板によって構成されており、互いの基板の固定部分が基板の端部あるいは基板の周囲であることを特徴としている。
【0022】
また、請求項9記載の発明では、請求項7または請求項8記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を挟んでいるミラー基板のミラー材側の基板厚と圧電材料側の基板厚とを制御することによって行なわれることを特徴としている。
【0023】
また、請求項10記載の発明では、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層の熱膨張率がミラー基板の熱膨張率よりも大きいことを特徴としている。
【0024】
また、請求項11記載の発明では、請求項10記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が樹脂であることを特徴としている。
【0025】
また、請求項12記載の発明では、請求項11波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が弾性接着剤であることを特徴としている。
【0026】
また、請求項13記載の発明では、レーザ光の光軸上にレーザー光の収差を補正する収差補正手段を有し、該収差補正手段として、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の波面収差補正ミラーが用いられていることを特徴とする光ピックアップである。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図11(a),(b),(c),(d)はミラー面が変位する波面収差補正ミラーの一例を示す図である。なお、図11(a)はミラー固定用ベースに固定された状態の斜視図であり、図11(b)はミラー基板を裏面から見た斜視図である。また、図11(c)または図11(d)はA−A’における断面図である。具体的に、図11(c)は、ミラー基板をドライエッチングで掘った例で、ミラーのエッチングした壁面がほぼ垂直であり、また、図11(d)はミラー基板を異方性エッチングで掘った例で、ミラーのエッチングした壁面が斜めになっている。
【0029】
図11(a),(b),(c),(d)を参照すると、ミラー基板(6)にはミラー材(1)が付いており、その反対側の面には、絶縁層(7)が付いている。絶縁層(7)の下には、共通電極(4)が付いており、その下には圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(ここで、上下の表現は、断面図でミラー基板(6)のミラー面を上として表現している)。このような構造のミラー部はミラー固定用ベース(8)にミラー基板固定部(3a)で固定されている。
【0030】
また、図12(a),(b)はミラー面が変位する波面収差補正ミラーの他の例を示す図である。なお、図12(a)は斜視図であり、図12(b)は図12(a)のA−A’における断面図である。
【0031】
図12(a),(b)を参照すると、ミラー基板(6)にはミラー材(1)が付いており、その反対側の面には、絶縁層(7)が付いている。絶縁層(7)の下には、共通電極(4)が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、左右に分かれた個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー基板(6)のミラー面を上として表現している)。このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端で固定されている。
【0032】
ところで、このような構造で、電極(4)を接地し、左右に分かれた個別電極(5)の一方にプラスの電圧をかけ、他方にマイナスの電圧をかけたとすると、ミラー基板(6)の断面にあたる部分は、例えば図14(b)に示すような断面形状になる。個別電極(5)に逆電圧をかけた場合には、その逆の形状になる。
【0033】
つまり、ミラー基板(6)は電圧がかかっても伸び縮みしないが、圧電材料(2)は電圧がかかれば伸び縮みするため、個別電極(15)にプラスの電圧を加えた場合、その部分の圧電材料(2)が横方向に縮むとすると、マイナス電圧をかけた場合には、その部分の圧電材料(2)は横方向に伸びることになり、個別電極(5)にプラスの電圧を加えた場合には、ミラー基板(6)のミラー材(1)の面は凸になり、個別電極(5)にマイナスの電圧を加えた場合には、ミラー基板(6)のミラー材(1)の面は凹になる。
【0034】
このような波面収差補正ミラーを図13に示すような光ピックアップの光軸上に設け制御することにより、チルトによるコマ収差を低減することが可能になる。
【0035】
なお、図13において、(10)は波面収差補正ミラー、(11)は光ディスク、(12)は対物レンズ及び対物光学系、(13)は立ち上げミラー、(14)は偏光ビームスプリッタ、(15)はレーザ素子及びレーザ光学系、(16)は光検出素子及び光検出光学系である。
【0036】
図13の光ピックアップでは、レーザー素子(15)から発せられたレーザー光は、レーザ光学系により平行光にされ偏光ビームスプリッタ(14)を通り、波面収差補正ミラー(10)で反射され、立ち上げミラー(13)でさらに反射され、対物レンズ及び対物光学系(12)で集光され、光ディスク(11)に焦点を結ぶ。
【0037】
また、光ディスク(11)から反射したレーザ光は、対物レンズ及び対物光学系(12)を通り、立ち上げミラー(13)で反射され、波面収差補正ミラー(10)で反射され、偏光ビームスプリッタ(14)を通り、光検出光学系で集光され、光検出素子(16)で検出する。この検出素子にはチルト検出用の検出素子も設置されている。
【0038】
このような光学系で、光ディスク(11)がレーザ光の光軸に対し垂直な位置から傾くと、光ディスクから反射して戻ってきたレーザ光の波面は乱れ、例えば図14(a)に示すような波面収差(コマ収差)が発生する。ここで横軸は例えば図12(a)に示した波面収差補正ミラーのA−A’断面と同一断面であり、縦軸は波面収差である。つまり、図13の光学系で、光ディスク(11)がチルトしたときに波面収差補正ミラー(10)のミラー面は平らであり、そこで反射した反射光の波面収差である。ちなみに、光ディスク(11)がレーザ光の光軸に対し垂直であれば、波面は図14(a)に示すような収差は発生せず、横軸と同じでまっすぐになる。図19は波面の面方向を等高線で表した図であり、A−A’断面が図14(a)のようになっている。
【0039】
図14(b)は波面収差補正ミラー(10)を故意に収差を発生させるよう動作させ、その反射光の波面収差を表した例である。ここで、横軸は例えば図12(a)に示した波面収差補正ミラーのミラー表面のA−A’断面と同一断面であり、縦軸は波面収差である。
【0040】
いま仮に、光ディスクが傾き、ディスクからの反射光の波面が図14(a)であったとする。ディスクが傾いていない時の反射光の波面が図14(b)のようになるよう波面収差補正ミラーを制御すれば、波面収差補正ミラーから反射された反射光の波面は図14(c)のようになり、図14(a)にくらべ波面収差を低減させることが可能となる。
【0041】
しかし、このような構造の波面収差補正ミラーは、ミラー基板(6)を薄くすると、その非対称な形状から温度の影響を受けやすくなり、例えば室温から温度が上昇したとき図12(c)に示すように平面度は悪くなってしまうという不具合を生じる。平面度が悪くなると、本来波面収差を低減させたい変形形状に変形させることができなくなる。例えば、図12(c)のように変形したミラーで波面収差補正の形状に変形させようとすると、図20(a)のような変形形状になってしまい、本来変形したい形状の20(b)とは違う形状になってしまう。
【0042】
最近のPC(パーソナルコンピューター)などは室温から60℃くらいまで温度上昇するため、このような不具合が出る可能性が高い。
【0043】
このため、電極に直接オフセット電圧などを与えることで平面度を良くする方法もあるが、本発明では、これらの温度によるミラーの平面度への影響を少なくするため、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間、あるいは、ミラー基板内に設けている。
【0044】
(第1の実施形態)
図1(a)または図1(b)は本発明の第1の実施形態の波面収差補正ミラーの構成例を示す図である。なお、図1(a)はミラー基板(6a)が板状のものとなっている例であり、図1(b)はミラー基板(6b)がエッチングにより掘られた構造のものとなっている例である。
【0045】
なお、図1(a)または(b)の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図11(a),(b),(c),(d)、図12(a),(b)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0046】
図1(a)または図1(b)を参照すると、ミラー基板(6a)または(6b)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0047】
このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部(3a)で固定されている。そして、図1(a)または図1(b)の例では、ミラー基板(6a)または(6b)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち、抑制層(21)が設けられている。
【0048】
図2は熱膨張にするミラー基板の変位を説明するための図である。なお、図2では、見やすくするため、厚さをより誇張し、ミラー固定用ベース(8)は省略した。また、使用しているミラー固定用ベース(8)はミラー基板(6)と同じ材質である。
【0049】
図12(a),(b)に示したような従来構造の場合、ミラー基板(6)と圧電材料(2)との熱膨張率は違い、熱膨張率がミラー基板(6)<圧電材料(2)の関係であるとすると、温度上昇が起きると、図2に示すように、圧電材料(2)のほうが大きく横に伸びるためミラー面は凹になるように撓む(矢印の長さは熱膨張率の大きさを表している)。一方、図3のように、ミラー基板(6)の反対側に同じ形状の同じ材料(例えば、圧電材料)を設けると、ミラー基板(6)が撓むことはないが、圧電材料(2)のように組成が粗い材料では研磨してもミラーとして使えない。また図4のように、ミラー基板(6)として、圧電材料(2)とほぼ同じ熱膨張率の基板を使用すれば、ミラー基板(6)はほとんど撓むことはないが、そのように都合の良い材料はなかなかなく、あったとしてもかなり限定される可能性が高い。
【0050】
これに対し、図1(a)または図1(b)で示した本発明の構造であれば、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6a)または(6b)より例えば横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6a)または(6b)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6a)または(6b)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6a)または(6b)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6a)または(6b)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6a)または(6b)はほとんど撓まなくなる。
【0051】
このように、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられていることによって、熱膨張が発生してミラー基板を変形させる力が発生しても、全体でキャンセルするようになり、温度変化に対してミラーの平面度の変化を小さくすることができる。
【0052】
また、使用する抑制層(21)に用いる材料の熱膨張率やヤング率などの物性値を制御することで、さらに撓まなくすることが可能となる。すなわち、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料の物性値を制御することによって、さらに撓まなくすることが可能となる。
【0053】
なお、図1(a),(b)の例では、ミラー基板(6a)または(6b)としてはSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としては弾性接着剤を用いることができる。
【0054】
また、図5(a)は例えば図1(b)の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【0055】
なお、図5(a)の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図11(a),(b),(c),(d)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0056】
図5(a)を参照すると、ミラー基板(6b)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0057】
このような構造のミラー部はミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部で固定されている。そして、図5(a)では、ミラー基板(6b)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち抑制層(21)が設けられており、抑制層(21)には穴(22)が設けられている。
【0058】
図5(a)の構造では、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6b)より例えば横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6b)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6b)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6b)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6b)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6b)はほとんど撓まなくなる。
【0059】
また、使用する抑制層(21)に穴(22)が開けられていることで、抑制層(21)の膨張度合いを制御することができ、さらに撓まなくすることが可能となる。なお、穴(22)は図示していないが面方向にも配置されている。
【0060】
なお、図5(a)の例では、ミラー基板(6b)としてはSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としては樹脂を用いることができる。
【0061】
また、図5(b)は図5(a)の変形例である。図5(b)は、図5(a)に対し、穴(22)の位置やピッチなどを必要に応じて変えた例であり、これによって、よりさらに撓まなくするように制御することが可能となる。
【0062】
また、抑制層(21)に穴を開けることのかわりに、溝を設けることも可能である。
【0063】
このように、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料に穴を開けるか、あるいは、溝を設けることによって行なうこともできる。
【0064】
図6(a)は例えば図1(b)の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【0065】
なお、図6(a)の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図11(a),(b),(c),(d)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0066】
図6(a)を参照すると、ミラー基板(6b)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0067】
このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部で固定されている。そして、図6(a)の構造では、ミラー基板(6b)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち抑制層(21)が設けられており、抑制層(21)には気泡(23)が設けられている。
【0068】
図6(a)の構造では、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6b)より例えば横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6b)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6b)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6b)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6b)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6b)はほとんど撓まなくなる。
【0069】
また、使用する抑制層(21)に気泡(23)を設けることで、抑制層(21)の膨張度合いを制御することができ、さらに撓まなくすることが可能となる。なお、気泡(23)は図示していないが面方向にも配置されている。
【0070】
なお、図6(a)の例では、ミラー基板(6b)としてはSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としては気泡が入るように調整した弾性接着剤を用いることができる。
【0071】
また、図6(b)は図6(a)の変形例である。図6(b)は、図6(a)に対し、気泡(23)の度合いを必要に応じて変えた例であり、これによって、よりさらに撓まなくするように制御することが可能となる。
【0072】
このように、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料に気泡を設けることによって行なうこともできる。
【0073】
また、図7(a)は例えば図1(b)の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【0074】
なお、図7(a)の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図11(a),(b),(c),(d)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0075】
図7(a)を参照すると、ミラー基板(6b)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0076】
このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部で固定されている。そして、図7(a)では、ミラー基板(6b)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち抑制層(21)が部分的に設けられている。
【0077】
図7(a)の構造では、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6b)より例えば横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6b)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6b)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6b)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6b)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6b)はほとんど撓まなくなる。
【0078】
また、使用する抑制層(21)を部分的に設けることで、抑制層(21)の膨張度合いを制御することができ、さらに撓まなくすることが可能となる。なお、部分的な抑制層(21)は、図示していないが、面方向にも部分的に配置されている。
【0079】
なお、図7(a)の例では、ミラー基板(6b)としてはSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としては部分的に配置した弾性接着剤を用いることができる。
【0080】
また、図7(b)は図7(a)の変形例である。図7(b)は、図7(a)に対し、抑制層(21)の部分的な配置を必要に応じて位置や幅,ピッチなどを変えた例であり、よりさらに撓まなくするように制御することが可能となる。
【0081】
このように、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を部分的に設けることによって行なうこともできる。
【0082】
(第2の実施形態)
また、図8(a)または図8(b)は本発明の第2の実施形態の波面収差補正ミラーの構成例を示す図である。
【0083】
なお、図8(a)または図8(b)の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図11(a),(b),(c),(d)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0084】
図8(a)または図8(b)を参照すると、ミラー基板(6a)または(6b)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0085】
このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部で固定されている。そして、図8(a)または図8(b)の構成では、ミラー基板(6a)または(6b)内に抑制層(21)が設けられている。
【0086】
図8(a)または図8(b)の構造では、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6a)または(6b)より例えば横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6a)または(6b)が図の下方向に撓もうとしても、図8(c)に示すように抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6a)または(6b)自体はミラー材側(9a)にも圧電材料側(9b)にも膨らもうとし、特に圧電材料側ミラー基板(9b)は図8(d)に示すように圧電材料(2)によって横に伸びるように引っ張られるため圧電材料側ミラー基板(9b)は図の下のほうに撓むが、ミラー材側ミラー基板(9a)はその分膨らもうとする力が小さくなり、お互いの力がキャンセルし合いミラー基板(9a)はほとんど撓まなくなる。
【0087】
このように、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板内に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を設けることもできる。
【0088】
なお、図8(a),(b)の例では、ミラー基板(6a)または(6b)としてはSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としては弾性接着剤を用いることかできる。
【0089】
また、図9(a),(b),(c)には、ミラー基板内に抑制層(21)を設ける方法の具体例が示されている。図9(a)の例では、ミラー材側ミラー基板(9a)をエッチングし、エッチングした部分に抑制層(21)を設け、圧電材料側ミラー基板(9b)をミラー基板固定部(3b)で固定している。また、図9(b)の例は、ミラー材側ミラー基板(9a)と枠だけのミラー基板(9c)と圧電材料側ミラー基板(9b)を抑制層(21)を挟んでミラー基板固定部(3c)で固定している。また、図9(c)の例は、ミラー基板がエッチングにより掘られた構造に使用した例である。
【0090】
このように、ミラー基板内に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられている波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられているミラー基板を、2つ以上の基板によって構成し、互いの基板の固定部分が基板の端部あるいは基板の周囲であるようにすることができる。
【0091】
また、図10(a),図10(b)は図8(a),図8(b)の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【0092】
なお、図10(a),図10(b)の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図11(a),(b),(c),(d)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0093】
図10(a)または図10(b)を参照すると、ミラー基板(6a)または(6b)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0094】
このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部で固定されている。そして、図10(a)または図10(b)では、ミラー基板(6a)または(6b)内には抑制層(21)が設けられている。また、ミラー基板(6a)または(6b)のミラー材側ミラー基板(9a)と圧電材料側ミラー基板(9b)の厚さとの関係は、ミラー材側ミラー基板(9a)の厚さ>圧電材料側ミラー基板(9b)の厚さとなっている。
【0095】
図10(a)または図10(b)の構造では、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6a)または(6b)より例えば横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6a)または(6b)が図の下方向に撓もうとしても、図10(c)に示すように抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6a)または(6b)自体はミラー材側(9a)にも圧電材料側(9b)にも膨らもうとし、特に圧電材料側ミラー基板(9b)は図10(d)に示すように圧電材料(2)によって横に伸びるように引っ張られるため圧電材料側ミラー基板(9b)は図の下のほうに撓むが、ミラー材側ミラー基板(9a)の厚さよりも圧電材料側ミラー基板(9b)の厚さの方が厚さが薄いため、図8の例に比べ、さらに下の方に撓むため、ミラー材側ミラー基板(9a)はその分膨らもうとする力がさらに小さくなり、お互いの力がキャンセルし合いミラー基板(9a)はさらに撓まなくなる。
【0096】
このように、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を挟んでいるミラー基板のミラー材側の基板厚と圧電材料側の基板厚とを制御することによって行なうこともできる。
【0097】
なお、図10(a),(b)の例ではミラー基板(6a)または(6b)としてはSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としては弾性接着剤を用いることができる。
【0098】
上述した本発明の実施形態,変形例において、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層の熱膨張率がミラー基板の熱膨張率よりも大きいものとなっている。具体的に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層は、例えば樹脂(例えば弾性接着剤)である。
【0099】
以上、本発明の実施形態,変形例を示したが、本発明はこれらの例にとどまることなく、あらゆる組み合わせや応用ができることはいうまでもない。例えば、抑制層は1層だけでなくて複数層でも良く、例えば図1の例と図8の例との組み合わせでも良いし、図5,図6,図7を任意に組み合わせたものでも良い。また、上述した例の図では、抑制層は密封されているように描かれているが、特に密封されていなくても良い。また、上述した例では、抑制層の作製方法は、基板の貼り合わせで行なっていたが、半導体プロセスなどで空間を作製し、その部分に抑制層となる材料を流し込む方法でも良い。また、上述した例において、共通電極としたところは個別電極でも良いし、また、圧電材料をミラー基板と同じ大きさにして電極だけ必要なサイズにしても良いし、電極と同じ大きさの圧電材料を複数個用いても良い。さらに、使用光学系の説明として、波面収差補正ミラー(10)と立ち上げミラー(13)を別々にした例で説明したが、立ち上げミラーに波面収差補正ミラーを直接用いても良い。また、レーザ光学系(15)と光検出光学系(16)を別々にした例で説明したが、レーザ光学系(15)と光検出光学系(16)が一体になっている光学系でも良い。
【0100】
以上述べてきたように、本発明の波面収差補正ミラーでは、温度変化に対し変形が少なくなり、ミラー面の平面度を良い状態に保つことができる。
【0101】
また、光ピックアップとして、レーザ光の光軸上にレーザー光の収差を補正する収差補正手段を有し、該収差補正手段として、上述した本発明の波面収差補正ミラーが用いられているものを構成することができる。
【0102】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項6記載の発明によれば、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられているので、熱膨張が発生してミラー基板を変形させる力が発生しても、全体でキャンセルするようになり、温度変化に対してミラーの平面度の変化を小さくすることができる。
【0103】
特に、請求項2記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、抑制するための層に用いる材料の物性値を制御することによって行なうので、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくすることができる。
【0104】
また、請求項3記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、抑制するための層に用いる材料に穴を開けるかあるいは、溝を設けることによって行なうので、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくすることができる。
【0105】
また、請求項4記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、抑制するための層に用いる材料に気泡を設けることによって行なうので、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくすることができる。
【0106】
また、請求項5記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、抑制するための層を部分的に設けることによって行なうので、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくすることができる。
【0107】
また、請求項6記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、抑制するための層に対して位置により物性値や穴の数や大きさ、気泡の密度、部分的に設ける層の幅やピッチを制御することによって行なうので、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに細かくコントロールでき、かつ小さくすることができる。
【0108】
また、請求項7記載の発明によれば、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板内に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられているので、温度変化に対してミラーの平面度の変化をより安定して小さくすることができる。
【0109】
また、請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられているミラー基板は、2つ以上の基板によって構成されており、互いの基板の固定部分が基板の端部あるいは基板の周囲であるので、容易に製作でき、ミラーの平面度の変化をより安定して小さくすることができる。
【0110】
また、請求項9記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、抑制するための層を挟んでいるミラー基板のミラー材側の基板厚と圧電材料側の基板厚とを制御することによって行なうので、ミラーの平面度の変化をさらに安定して小さくすることができる。
【0111】
また、請求項10記載の発明によれば、抑制するための層の熱膨張率がミラー基板の熱膨張率よりも大きいので、ミラーの平面度の変化を打ち消し合い小さくすることができる。
【0112】
また、請求項11記載の発明によれば、抑制するための層が樹脂であるので、ミラーの平面度の変化を打ち消し合い小さくすることができる。
【0113】
また、請求項12記載の発明によれば、抑制するための層が弾性接着剤であるので、ミラーの平面度の変化を打ち消し合い小さくでき、抑制層の作製も容易にすることができる。
【0114】
また、請求項13記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を設けた波面収差補正ミラーを用いているので、温度変化に対し、信頼性の良い光ピックアップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の波面収差補正ミラーの構成例を示す図である。
【図2】熱膨張によるミラー基板の変形を説明するための図である。
【図3】ミラー基板の反対側に同じ形状の同じ材料(例えば圧電材料)を設けた場合を示す図である。
【図4】ミラー基板として、圧電材料とほぼ同じ熱膨張率の基板を使用する場合を示す図である。
【図5】図1の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図6】図1の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図7】図1の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の波面収差補正ミラーの構成例を示す図である。
【図9】ミラー基板内に抑制層(21)を設ける方法の具体例を示す図である。
【図10】図8の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図11】ミラー面が変位する波面収差補正ミラーの一例を示す図である。
【図12】ミラー面が変位する波面収差補正ミラーの一例を示す図である。
【図13】光ピックアップの構成例を示す図である。
【図14】波面収差を説明するための図である。
【図15】従来技術を説明するための図である。
【図16】従来技術を説明するための図である。
【図17】従来技術を説明するための図である。
【図18】CV,DVDのディスクを示す図である。
【図19】反射膜の面を等高線で表した図である。
【図20】波面収差補正の形状変形を説明するための図である。
【符号の説明】
1 ミラー材
2 圧電材料
3a ミラー基板固定部
4 共通電極
5 個別電極
6,6a,6b ミラー基板
7 絶縁層
8 ミラー固定用ベース
9a ミラー材側ミラー基板
9b 圧電材料側ミラー基板
9c ミラー基板
10 波面収差補正ミラー
11 光ディスク
12 対物レンズ及び対物光学系
13 立ち上げミラー
14 偏光ビームスプリッタ
15 レーザ素子及びレーザ光学系
16 光検出素子及び光検出光学系
21 抑制層
22 穴
23 気泡
101a,101b 対物レンズ
102a,102b ディスク
103a,103b スポット(コマ収差)
108 記録層
【発明の属する技術分野】
本発明は、波面収差補正ミラーおよび光ピックアップに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、光ディスクを用いた情報記憶装置として、CDやDVDなどがある。DVDなどは、CDに比べて記録密度が高いため、情報を読み書きするときの条件が厳しくなっている。
【0003】
例えば、光ピックアップの光軸とディスク面は垂直であることが理想であるが、実際にはディスクが樹脂製のため、かなりうねりを持っていて、これを回転させると、光ピックアップの光軸とディスク面は常に垂直ではなくなる(これを以降、チルトと表現する)。また、ディスクは、図18(a),(b)に示すように、記録層(108)が樹脂層(102)を介しているため、ディスク面が垂直でなくなると光路が曲げられディスク上に正しくスポットを絞れなくなり、コマ収差(103)が発生する。この収差が許容される量よりも大きくなると、正しく読み書きが出来なくなるという不具合が生じる。なお、図18(a),(b)はディスクがそれぞれCD,DVDの場合である。
【0004】
チルトの影響を少なくする手段としては、対物レンズと記録層との間の樹脂層を薄くすることがある。実際に、DVD(図18(b))が、CD(図18(a))に比較して、対物レンズ(101)と記録層(108)との間の樹脂層(102)の厚さを半分にしたのは、この効果を狙ったものである。しかし、この方法の場合、DVDよりも高密度記録をしようとした場合には樹脂層をもっと薄くしてさらにチルトの影響を少なくすることになるが、今度はディスク上にごみや傷がついた場合に、信号が正しく読み書きできなくなるという不具合が生じる。このため、アクチュエータによって光軸を傾けて(チルト)対応しているのが現状である。
【0005】
チルトを光学的に補正するため、液晶を用いたり(例えば、特許文献1参照。)、透明圧電素子を用いたり(例えば、特許文献2参照。)、可変ミラーを用いたりする(例えば、特許文献3参照。)ことが提案されている。
【0006】
具体的に、特許文献1(図15)では、液晶板を用いて位相制御することによりコマ収差を補正している。しかし、この方法では、レーザーが液晶板を通過するために光量が減衰し、書き込みに必要なエネルギーを得ることが困難であり、また液晶の特性から、特にタンジェンシャルチルト制御に要求される高周波動作に使用するのは困難であると思われる。
【0007】
また、特許文献2(図16)では、実際に透明圧電素子単体で必要な変位量を得るためには高電圧が必要となり、光ピックアップなどに用いるには現実的ではない。
【0008】
また、特許文献3(図17)は、ミラー自体を積層型圧電素子で変形させ位相制御するようにしている。しかし、光ピックアップなどの小さい部品に用いるには配線などの考慮がされておらず、複雑になりかつ組み付けコストも高くなる。また、配線などの問題が解決できたとしても、積層型圧電素子をかなり小さくしなければならなくなるため、技術的にもコスト的にもなかなか困難である。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−79135号公報
【0010】
【特許文献2】
特開平5−144056号公報
【0011】
【特許文献3】
特開平5−333274号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このような情報を読み書きするときに不具合を生じさせるチルトの影響を、圧電素子を使用したユニモルフまたはバイモルフ形状の波面収差補正ミラーで波面収差を補正する方法が、低電圧で小型化にも有利であると考えられるが、ミラー基板のミラー面を変形させる場合、低電圧で駆動させるためには変形しやすくなくてはならない。このためにはミラー基板を薄くすることが一番効果的であるが、図12(a),(b)に示すような波面収差補正ミラーの場合、ミラー基板を薄くすると、その非対称な形状から温度の影響を受けやすくなり、例えば室温から温度が上昇したとき図12(c)に示すように平面度は悪くなってしまう。
【0013】
本発明は、温度によるミラーの平面度への影響を少なくすることの可能な波面収差補正ミラーおよび光ピックアップを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項2記載の発明では、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料の物性値を制御することによって行なわれることを特徴としている。
【0016】
また、請求項3記載の発明では、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料に穴を開けるか、あるいは、溝を設けることによって行なわれることを特徴としている。
【0017】
また、請求項4記載の発明では、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料に気泡を設けることによって行なわれることを特徴としている。
【0018】
また、請求項5記載の発明では、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を部分的に設けることによって行なわれることを特徴としている。
【0019】
また、請求項6記載の発明では、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に対して、位置により、物性値や穴の数や大きさ、気泡の密度、部分的に設ける層の幅やピッチを制御することによって行なわれることを特徴としている。
【0020】
また、請求項7記載の発明では、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板内に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられていることを特徴としている。
【0021】
また、請求項8記載の発明では、請求項7記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられているミラー基板は、2つ以上の基板によって構成されており、互いの基板の固定部分が基板の端部あるいは基板の周囲であることを特徴としている。
【0022】
また、請求項9記載の発明では、請求項7または請求項8記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を挟んでいるミラー基板のミラー材側の基板厚と圧電材料側の基板厚とを制御することによって行なわれることを特徴としている。
【0023】
また、請求項10記載の発明では、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層の熱膨張率がミラー基板の熱膨張率よりも大きいことを特徴としている。
【0024】
また、請求項11記載の発明では、請求項10記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が樹脂であることを特徴としている。
【0025】
また、請求項12記載の発明では、請求項11波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が弾性接着剤であることを特徴としている。
【0026】
また、請求項13記載の発明では、レーザ光の光軸上にレーザー光の収差を補正する収差補正手段を有し、該収差補正手段として、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の波面収差補正ミラーが用いられていることを特徴とする光ピックアップである。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図11(a),(b),(c),(d)はミラー面が変位する波面収差補正ミラーの一例を示す図である。なお、図11(a)はミラー固定用ベースに固定された状態の斜視図であり、図11(b)はミラー基板を裏面から見た斜視図である。また、図11(c)または図11(d)はA−A’における断面図である。具体的に、図11(c)は、ミラー基板をドライエッチングで掘った例で、ミラーのエッチングした壁面がほぼ垂直であり、また、図11(d)はミラー基板を異方性エッチングで掘った例で、ミラーのエッチングした壁面が斜めになっている。
【0029】
図11(a),(b),(c),(d)を参照すると、ミラー基板(6)にはミラー材(1)が付いており、その反対側の面には、絶縁層(7)が付いている。絶縁層(7)の下には、共通電極(4)が付いており、その下には圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(ここで、上下の表現は、断面図でミラー基板(6)のミラー面を上として表現している)。このような構造のミラー部はミラー固定用ベース(8)にミラー基板固定部(3a)で固定されている。
【0030】
また、図12(a),(b)はミラー面が変位する波面収差補正ミラーの他の例を示す図である。なお、図12(a)は斜視図であり、図12(b)は図12(a)のA−A’における断面図である。
【0031】
図12(a),(b)を参照すると、ミラー基板(6)にはミラー材(1)が付いており、その反対側の面には、絶縁層(7)が付いている。絶縁層(7)の下には、共通電極(4)が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、左右に分かれた個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー基板(6)のミラー面を上として表現している)。このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端で固定されている。
【0032】
ところで、このような構造で、電極(4)を接地し、左右に分かれた個別電極(5)の一方にプラスの電圧をかけ、他方にマイナスの電圧をかけたとすると、ミラー基板(6)の断面にあたる部分は、例えば図14(b)に示すような断面形状になる。個別電極(5)に逆電圧をかけた場合には、その逆の形状になる。
【0033】
つまり、ミラー基板(6)は電圧がかかっても伸び縮みしないが、圧電材料(2)は電圧がかかれば伸び縮みするため、個別電極(15)にプラスの電圧を加えた場合、その部分の圧電材料(2)が横方向に縮むとすると、マイナス電圧をかけた場合には、その部分の圧電材料(2)は横方向に伸びることになり、個別電極(5)にプラスの電圧を加えた場合には、ミラー基板(6)のミラー材(1)の面は凸になり、個別電極(5)にマイナスの電圧を加えた場合には、ミラー基板(6)のミラー材(1)の面は凹になる。
【0034】
このような波面収差補正ミラーを図13に示すような光ピックアップの光軸上に設け制御することにより、チルトによるコマ収差を低減することが可能になる。
【0035】
なお、図13において、(10)は波面収差補正ミラー、(11)は光ディスク、(12)は対物レンズ及び対物光学系、(13)は立ち上げミラー、(14)は偏光ビームスプリッタ、(15)はレーザ素子及びレーザ光学系、(16)は光検出素子及び光検出光学系である。
【0036】
図13の光ピックアップでは、レーザー素子(15)から発せられたレーザー光は、レーザ光学系により平行光にされ偏光ビームスプリッタ(14)を通り、波面収差補正ミラー(10)で反射され、立ち上げミラー(13)でさらに反射され、対物レンズ及び対物光学系(12)で集光され、光ディスク(11)に焦点を結ぶ。
【0037】
また、光ディスク(11)から反射したレーザ光は、対物レンズ及び対物光学系(12)を通り、立ち上げミラー(13)で反射され、波面収差補正ミラー(10)で反射され、偏光ビームスプリッタ(14)を通り、光検出光学系で集光され、光検出素子(16)で検出する。この検出素子にはチルト検出用の検出素子も設置されている。
【0038】
このような光学系で、光ディスク(11)がレーザ光の光軸に対し垂直な位置から傾くと、光ディスクから反射して戻ってきたレーザ光の波面は乱れ、例えば図14(a)に示すような波面収差(コマ収差)が発生する。ここで横軸は例えば図12(a)に示した波面収差補正ミラーのA−A’断面と同一断面であり、縦軸は波面収差である。つまり、図13の光学系で、光ディスク(11)がチルトしたときに波面収差補正ミラー(10)のミラー面は平らであり、そこで反射した反射光の波面収差である。ちなみに、光ディスク(11)がレーザ光の光軸に対し垂直であれば、波面は図14(a)に示すような収差は発生せず、横軸と同じでまっすぐになる。図19は波面の面方向を等高線で表した図であり、A−A’断面が図14(a)のようになっている。
【0039】
図14(b)は波面収差補正ミラー(10)を故意に収差を発生させるよう動作させ、その反射光の波面収差を表した例である。ここで、横軸は例えば図12(a)に示した波面収差補正ミラーのミラー表面のA−A’断面と同一断面であり、縦軸は波面収差である。
【0040】
いま仮に、光ディスクが傾き、ディスクからの反射光の波面が図14(a)であったとする。ディスクが傾いていない時の反射光の波面が図14(b)のようになるよう波面収差補正ミラーを制御すれば、波面収差補正ミラーから反射された反射光の波面は図14(c)のようになり、図14(a)にくらべ波面収差を低減させることが可能となる。
【0041】
しかし、このような構造の波面収差補正ミラーは、ミラー基板(6)を薄くすると、その非対称な形状から温度の影響を受けやすくなり、例えば室温から温度が上昇したとき図12(c)に示すように平面度は悪くなってしまうという不具合を生じる。平面度が悪くなると、本来波面収差を低減させたい変形形状に変形させることができなくなる。例えば、図12(c)のように変形したミラーで波面収差補正の形状に変形させようとすると、図20(a)のような変形形状になってしまい、本来変形したい形状の20(b)とは違う形状になってしまう。
【0042】
最近のPC(パーソナルコンピューター)などは室温から60℃くらいまで温度上昇するため、このような不具合が出る可能性が高い。
【0043】
このため、電極に直接オフセット電圧などを与えることで平面度を良くする方法もあるが、本発明では、これらの温度によるミラーの平面度への影響を少なくするため、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間、あるいは、ミラー基板内に設けている。
【0044】
(第1の実施形態)
図1(a)または図1(b)は本発明の第1の実施形態の波面収差補正ミラーの構成例を示す図である。なお、図1(a)はミラー基板(6a)が板状のものとなっている例であり、図1(b)はミラー基板(6b)がエッチングにより掘られた構造のものとなっている例である。
【0045】
なお、図1(a)または(b)の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図11(a),(b),(c),(d)、図12(a),(b)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0046】
図1(a)または図1(b)を参照すると、ミラー基板(6a)または(6b)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0047】
このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部(3a)で固定されている。そして、図1(a)または図1(b)の例では、ミラー基板(6a)または(6b)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち、抑制層(21)が設けられている。
【0048】
図2は熱膨張にするミラー基板の変位を説明するための図である。なお、図2では、見やすくするため、厚さをより誇張し、ミラー固定用ベース(8)は省略した。また、使用しているミラー固定用ベース(8)はミラー基板(6)と同じ材質である。
【0049】
図12(a),(b)に示したような従来構造の場合、ミラー基板(6)と圧電材料(2)との熱膨張率は違い、熱膨張率がミラー基板(6)<圧電材料(2)の関係であるとすると、温度上昇が起きると、図2に示すように、圧電材料(2)のほうが大きく横に伸びるためミラー面は凹になるように撓む(矢印の長さは熱膨張率の大きさを表している)。一方、図3のように、ミラー基板(6)の反対側に同じ形状の同じ材料(例えば、圧電材料)を設けると、ミラー基板(6)が撓むことはないが、圧電材料(2)のように組成が粗い材料では研磨してもミラーとして使えない。また図4のように、ミラー基板(6)として、圧電材料(2)とほぼ同じ熱膨張率の基板を使用すれば、ミラー基板(6)はほとんど撓むことはないが、そのように都合の良い材料はなかなかなく、あったとしてもかなり限定される可能性が高い。
【0050】
これに対し、図1(a)または図1(b)で示した本発明の構造であれば、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6a)または(6b)より例えば横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6a)または(6b)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6a)または(6b)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6a)または(6b)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6a)または(6b)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6a)または(6b)はほとんど撓まなくなる。
【0051】
このように、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられていることによって、熱膨張が発生してミラー基板を変形させる力が発生しても、全体でキャンセルするようになり、温度変化に対してミラーの平面度の変化を小さくすることができる。
【0052】
また、使用する抑制層(21)に用いる材料の熱膨張率やヤング率などの物性値を制御することで、さらに撓まなくすることが可能となる。すなわち、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料の物性値を制御することによって、さらに撓まなくすることが可能となる。
【0053】
なお、図1(a),(b)の例では、ミラー基板(6a)または(6b)としてはSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としては弾性接着剤を用いることができる。
【0054】
また、図5(a)は例えば図1(b)の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【0055】
なお、図5(a)の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図11(a),(b),(c),(d)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0056】
図5(a)を参照すると、ミラー基板(6b)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0057】
このような構造のミラー部はミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部で固定されている。そして、図5(a)では、ミラー基板(6b)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち抑制層(21)が設けられており、抑制層(21)には穴(22)が設けられている。
【0058】
図5(a)の構造では、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6b)より例えば横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6b)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6b)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6b)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6b)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6b)はほとんど撓まなくなる。
【0059】
また、使用する抑制層(21)に穴(22)が開けられていることで、抑制層(21)の膨張度合いを制御することができ、さらに撓まなくすることが可能となる。なお、穴(22)は図示していないが面方向にも配置されている。
【0060】
なお、図5(a)の例では、ミラー基板(6b)としてはSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としては樹脂を用いることができる。
【0061】
また、図5(b)は図5(a)の変形例である。図5(b)は、図5(a)に対し、穴(22)の位置やピッチなどを必要に応じて変えた例であり、これによって、よりさらに撓まなくするように制御することが可能となる。
【0062】
また、抑制層(21)に穴を開けることのかわりに、溝を設けることも可能である。
【0063】
このように、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料に穴を開けるか、あるいは、溝を設けることによって行なうこともできる。
【0064】
図6(a)は例えば図1(b)の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【0065】
なお、図6(a)の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図11(a),(b),(c),(d)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0066】
図6(a)を参照すると、ミラー基板(6b)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0067】
このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部で固定されている。そして、図6(a)の構造では、ミラー基板(6b)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち抑制層(21)が設けられており、抑制層(21)には気泡(23)が設けられている。
【0068】
図6(a)の構造では、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6b)より例えば横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6b)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6b)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6b)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6b)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6b)はほとんど撓まなくなる。
【0069】
また、使用する抑制層(21)に気泡(23)を設けることで、抑制層(21)の膨張度合いを制御することができ、さらに撓まなくすることが可能となる。なお、気泡(23)は図示していないが面方向にも配置されている。
【0070】
なお、図6(a)の例では、ミラー基板(6b)としてはSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としては気泡が入るように調整した弾性接着剤を用いることができる。
【0071】
また、図6(b)は図6(a)の変形例である。図6(b)は、図6(a)に対し、気泡(23)の度合いを必要に応じて変えた例であり、これによって、よりさらに撓まなくするように制御することが可能となる。
【0072】
このように、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料に気泡を設けることによって行なうこともできる。
【0073】
また、図7(a)は例えば図1(b)の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【0074】
なお、図7(a)の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図11(a),(b),(c),(d)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0075】
図7(a)を参照すると、ミラー基板(6b)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0076】
このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部で固定されている。そして、図7(a)では、ミラー基板(6b)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち抑制層(21)が部分的に設けられている。
【0077】
図7(a)の構造では、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6b)より例えば横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6b)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6b)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6b)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6b)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6b)はほとんど撓まなくなる。
【0078】
また、使用する抑制層(21)を部分的に設けることで、抑制層(21)の膨張度合いを制御することができ、さらに撓まなくすることが可能となる。なお、部分的な抑制層(21)は、図示していないが、面方向にも部分的に配置されている。
【0079】
なお、図7(a)の例では、ミラー基板(6b)としてはSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としては部分的に配置した弾性接着剤を用いることができる。
【0080】
また、図7(b)は図7(a)の変形例である。図7(b)は、図7(a)に対し、抑制層(21)の部分的な配置を必要に応じて位置や幅,ピッチなどを変えた例であり、よりさらに撓まなくするように制御することが可能となる。
【0081】
このように、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を部分的に設けることによって行なうこともできる。
【0082】
(第2の実施形態)
また、図8(a)または図8(b)は本発明の第2の実施形態の波面収差補正ミラーの構成例を示す図である。
【0083】
なお、図8(a)または図8(b)の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図11(a),(b),(c),(d)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0084】
図8(a)または図8(b)を参照すると、ミラー基板(6a)または(6b)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0085】
このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部で固定されている。そして、図8(a)または図8(b)の構成では、ミラー基板(6a)または(6b)内に抑制層(21)が設けられている。
【0086】
図8(a)または図8(b)の構造では、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6a)または(6b)より例えば横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6a)または(6b)が図の下方向に撓もうとしても、図8(c)に示すように抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6a)または(6b)自体はミラー材側(9a)にも圧電材料側(9b)にも膨らもうとし、特に圧電材料側ミラー基板(9b)は図8(d)に示すように圧電材料(2)によって横に伸びるように引っ張られるため圧電材料側ミラー基板(9b)は図の下のほうに撓むが、ミラー材側ミラー基板(9a)はその分膨らもうとする力が小さくなり、お互いの力がキャンセルし合いミラー基板(9a)はほとんど撓まなくなる。
【0087】
このように、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板内に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を設けることもできる。
【0088】
なお、図8(a),(b)の例では、ミラー基板(6a)または(6b)としてはSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としては弾性接着剤を用いることかできる。
【0089】
また、図9(a),(b),(c)には、ミラー基板内に抑制層(21)を設ける方法の具体例が示されている。図9(a)の例では、ミラー材側ミラー基板(9a)をエッチングし、エッチングした部分に抑制層(21)を設け、圧電材料側ミラー基板(9b)をミラー基板固定部(3b)で固定している。また、図9(b)の例は、ミラー材側ミラー基板(9a)と枠だけのミラー基板(9c)と圧電材料側ミラー基板(9b)を抑制層(21)を挟んでミラー基板固定部(3c)で固定している。また、図9(c)の例は、ミラー基板がエッチングにより掘られた構造に使用した例である。
【0090】
このように、ミラー基板内に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられている波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられているミラー基板を、2つ以上の基板によって構成し、互いの基板の固定部分が基板の端部あるいは基板の周囲であるようにすることができる。
【0091】
また、図10(a),図10(b)は図8(a),図8(b)の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【0092】
なお、図10(a),図10(b)の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図11(a),(b),(c),(d)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0093】
図10(a)または図10(b)を参照すると、ミラー基板(6a)または(6b)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0094】
このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部で固定されている。そして、図10(a)または図10(b)では、ミラー基板(6a)または(6b)内には抑制層(21)が設けられている。また、ミラー基板(6a)または(6b)のミラー材側ミラー基板(9a)と圧電材料側ミラー基板(9b)の厚さとの関係は、ミラー材側ミラー基板(9a)の厚さ>圧電材料側ミラー基板(9b)の厚さとなっている。
【0095】
図10(a)または図10(b)の構造では、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6a)または(6b)より例えば横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6a)または(6b)が図の下方向に撓もうとしても、図10(c)に示すように抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6a)または(6b)自体はミラー材側(9a)にも圧電材料側(9b)にも膨らもうとし、特に圧電材料側ミラー基板(9b)は図10(d)に示すように圧電材料(2)によって横に伸びるように引っ張られるため圧電材料側ミラー基板(9b)は図の下のほうに撓むが、ミラー材側ミラー基板(9a)の厚さよりも圧電材料側ミラー基板(9b)の厚さの方が厚さが薄いため、図8の例に比べ、さらに下の方に撓むため、ミラー材側ミラー基板(9a)はその分膨らもうとする力がさらに小さくなり、お互いの力がキャンセルし合いミラー基板(9a)はさらに撓まなくなる。
【0096】
このように、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を挟んでいるミラー基板のミラー材側の基板厚と圧電材料側の基板厚とを制御することによって行なうこともできる。
【0097】
なお、図10(a),(b)の例ではミラー基板(6a)または(6b)としてはSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としては弾性接着剤を用いることができる。
【0098】
上述した本発明の実施形態,変形例において、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層の熱膨張率がミラー基板の熱膨張率よりも大きいものとなっている。具体的に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層は、例えば樹脂(例えば弾性接着剤)である。
【0099】
以上、本発明の実施形態,変形例を示したが、本発明はこれらの例にとどまることなく、あらゆる組み合わせや応用ができることはいうまでもない。例えば、抑制層は1層だけでなくて複数層でも良く、例えば図1の例と図8の例との組み合わせでも良いし、図5,図6,図7を任意に組み合わせたものでも良い。また、上述した例の図では、抑制層は密封されているように描かれているが、特に密封されていなくても良い。また、上述した例では、抑制層の作製方法は、基板の貼り合わせで行なっていたが、半導体プロセスなどで空間を作製し、その部分に抑制層となる材料を流し込む方法でも良い。また、上述した例において、共通電極としたところは個別電極でも良いし、また、圧電材料をミラー基板と同じ大きさにして電極だけ必要なサイズにしても良いし、電極と同じ大きさの圧電材料を複数個用いても良い。さらに、使用光学系の説明として、波面収差補正ミラー(10)と立ち上げミラー(13)を別々にした例で説明したが、立ち上げミラーに波面収差補正ミラーを直接用いても良い。また、レーザ光学系(15)と光検出光学系(16)を別々にした例で説明したが、レーザ光学系(15)と光検出光学系(16)が一体になっている光学系でも良い。
【0100】
以上述べてきたように、本発明の波面収差補正ミラーでは、温度変化に対し変形が少なくなり、ミラー面の平面度を良い状態に保つことができる。
【0101】
また、光ピックアップとして、レーザ光の光軸上にレーザー光の収差を補正する収差補正手段を有し、該収差補正手段として、上述した本発明の波面収差補正ミラーが用いられているものを構成することができる。
【0102】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項6記載の発明によれば、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられているので、熱膨張が発生してミラー基板を変形させる力が発生しても、全体でキャンセルするようになり、温度変化に対してミラーの平面度の変化を小さくすることができる。
【0103】
特に、請求項2記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、抑制するための層に用いる材料の物性値を制御することによって行なうので、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくすることができる。
【0104】
また、請求項3記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、抑制するための層に用いる材料に穴を開けるかあるいは、溝を設けることによって行なうので、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくすることができる。
【0105】
また、請求項4記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、抑制するための層に用いる材料に気泡を設けることによって行なうので、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくすることができる。
【0106】
また、請求項5記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、抑制するための層を部分的に設けることによって行なうので、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくすることができる。
【0107】
また、請求項6記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、抑制するための層に対して位置により物性値や穴の数や大きさ、気泡の密度、部分的に設ける層の幅やピッチを制御することによって行なうので、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに細かくコントロールでき、かつ小さくすることができる。
【0108】
また、請求項7記載の発明によれば、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板内に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられているので、温度変化に対してミラーの平面度の変化をより安定して小さくすることができる。
【0109】
また、請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられているミラー基板は、2つ以上の基板によって構成されており、互いの基板の固定部分が基板の端部あるいは基板の周囲であるので、容易に製作でき、ミラーの平面度の変化をより安定して小さくすることができる。
【0110】
また、請求項9記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形抑制を、抑制するための層を挟んでいるミラー基板のミラー材側の基板厚と圧電材料側の基板厚とを制御することによって行なうので、ミラーの平面度の変化をさらに安定して小さくすることができる。
【0111】
また、請求項10記載の発明によれば、抑制するための層の熱膨張率がミラー基板の熱膨張率よりも大きいので、ミラーの平面度の変化を打ち消し合い小さくすることができる。
【0112】
また、請求項11記載の発明によれば、抑制するための層が樹脂であるので、ミラーの平面度の変化を打ち消し合い小さくすることができる。
【0113】
また、請求項12記載の発明によれば、抑制するための層が弾性接着剤であるので、ミラーの平面度の変化を打ち消し合い小さくでき、抑制層の作製も容易にすることができる。
【0114】
また、請求項13記載の発明によれば、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を設けた波面収差補正ミラーを用いているので、温度変化に対し、信頼性の良い光ピックアップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の波面収差補正ミラーの構成例を示す図である。
【図2】熱膨張によるミラー基板の変形を説明するための図である。
【図3】ミラー基板の反対側に同じ形状の同じ材料(例えば圧電材料)を設けた場合を示す図である。
【図4】ミラー基板として、圧電材料とほぼ同じ熱膨張率の基板を使用する場合を示す図である。
【図5】図1の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図6】図1の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図7】図1の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の波面収差補正ミラーの構成例を示す図である。
【図9】ミラー基板内に抑制層(21)を設ける方法の具体例を示す図である。
【図10】図8の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図11】ミラー面が変位する波面収差補正ミラーの一例を示す図である。
【図12】ミラー面が変位する波面収差補正ミラーの一例を示す図である。
【図13】光ピックアップの構成例を示す図である。
【図14】波面収差を説明するための図である。
【図15】従来技術を説明するための図である。
【図16】従来技術を説明するための図である。
【図17】従来技術を説明するための図である。
【図18】CV,DVDのディスクを示す図である。
【図19】反射膜の面を等高線で表した図である。
【図20】波面収差補正の形状変形を説明するための図である。
【符号の説明】
1 ミラー材
2 圧電材料
3a ミラー基板固定部
4 共通電極
5 個別電極
6,6a,6b ミラー基板
7 絶縁層
8 ミラー固定用ベース
9a ミラー材側ミラー基板
9b 圧電材料側ミラー基板
9c ミラー基板
10 波面収差補正ミラー
11 光ディスク
12 対物レンズ及び対物光学系
13 立ち上げミラー
14 偏光ビームスプリッタ
15 レーザ素子及びレーザ光学系
16 光検出素子及び光検出光学系
21 抑制層
22 穴
23 気泡
101a,101b 対物レンズ
102a,102b ディスク
103a,103b スポット(コマ収差)
108 記録層
Claims (13)
- 圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられていることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料の物性値を制御することによって行なわれることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料に穴を開けるか、あるいは、溝を設けることによって行なわれることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に用いる材料に気泡を設けることによって行なわれることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を部分的に設けることによって行なわれることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層に対して、位置により、物性値や穴の数や大きさ、気泡の密度、部分的に設ける層の幅やピッチを制御することによって行なわれることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板内に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられていることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項7記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が設けられているミラー基板は、2つ以上の基板によって構成されており、互いの基板の固定部分が基板の端部あるいは基板の周囲であることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項7または請求項8記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形抑制は、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層を挟んでいるミラー基板のミラー材側の基板厚と圧電材料側の基板厚とを制御することによって行なわれることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層の熱膨張率がミラー基板の熱膨張率よりも大きいことを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項10記載の波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が樹脂であることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項11波面収差補正ミラーにおいて、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層が弾性接着剤であることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- レーザ光の光軸上にレーザー光の収差を補正する収差補正手段を有し、該収差補正手段として、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の波面収差補正ミラーが用いられていることを特徴とする光ピックアップ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002325122A JP2004157445A (ja) | 2002-11-08 | 2002-11-08 | 波面収差補正ミラーおよび光ピックアップ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002325122A JP2004157445A (ja) | 2002-11-08 | 2002-11-08 | 波面収差補正ミラーおよび光ピックアップ |
Publications (1)
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JP2004157445A true JP2004157445A (ja) | 2004-06-03 |
Family
ID=32804446
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2002325122A Pending JP2004157445A (ja) | 2002-11-08 | 2002-11-08 | 波面収差補正ミラーおよび光ピックアップ |
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JP (1) | JP2004157445A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104317056A (zh) * | 2014-10-27 | 2015-01-28 | 中国科学院长春光学精密机械与物理研究所 | 一种光学系统像质红外加热补偿装置 |
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2002
- 2002-11-08 JP JP2002325122A patent/JP2004157445A/ja active Pending
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CN104317056A (zh) * | 2014-10-27 | 2015-01-28 | 中国科学院长春光学精密机械与物理研究所 | 一种光学系统像质红外加热补偿装置 |
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