JP2004157275A - 光導波路デバイスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリマー屑を発生させずにV溝を有するポリマー光導波路デバイスを製造する方法を提供すること、及びポリマー屑の付着による光軸のずれなどが無いV溝を有するポリマー光導波路デバイスを、短い工程時間で製造する方法を提供すること。
【解決手段】基板上にポリマー層からなる光導波路と、前記光導波路に接続する光ファイバを搭載するためのV溝を少なくとも有する光導波路デバイスの製造方法であって、前記基板上にV溝を設ける工程、前記V溝を設けた基板上にポリマー層からなる光導波路を形成する工程、前記V溝領域上のポリマー層を反応性イオンエッチングにより少なくともV溝上端面まで除去する工程、前記V溝内に残存するポリマー層を、超音波振動、加熱若しくは冷却、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される方法により除去する工程を含む上記製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバを固定するためのV溝を有するポリマー光導波路デバイスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のパソコンやインターネットの普及に伴い、情報伝送需要が急激に増大している。このため、伝送速度の速い光伝送を、パソコン等の末端の情報処理装置まで普及させることが望まれている。これを実現するには、光インターコネクション用に、高性能な光導波路を、安価かつ大量に製造する必要がある。
【0003】
光導波路の材料として、従来より樹脂を用いたものが知られているが、ガラス転移温度(Tg)が高く、耐熱性に優れるポリイミドが特に期待されている。ポリイミドにより光導波路のコア層及びクラッド層を形成した場合、長期信頼性が期待でき、半田付けにも耐えることができる。
このようなポリマー光導波路デバイスには目的により、光ファイバを搭載するためのV溝と称される溝を設けることが必要である。このようなV溝を有するポリマー光導波路デバイスを製造する方法として、予めV溝を設けた基板上にクラッド及びコアとなるポリマー層を全体に設けた後、V溝領域上に積層されたポリマー層を削除する方法が知られている。
V溝領域上のポリマー層を削除する方法として、従来フォトリソグラフィーによりマスクを上部に形成してエッチングを行う方法があるが、エッチングすべき膜厚が厚いと時間がかかり、さらに長時間のエッチングに耐えるようにマスクを厚くしなければならず、また端面表面の荒れが見られるという問題があった。
この問題を解決する方法として、V溝領域に下部クラッド層として基板と低い接着力を有する層若しくは下部クラッド層と基板との密着性を低下させるための層を形成するか、またはV溝領域以外の光導波路形成領域(光導波路領域)にのみポリマー層と基板の接着性を高めるための層を形成し、V溝領域と光導波路領域との境界をダイシング等により切断して、V溝領域上のポリマー層を例えば粘着テープにより剥離する方法が報告されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。しかし、切断後にV溝領域上のポリマー層を剥離させる場合、剥離されるポリマーが隣接する基板上に残存するポリマー層と接触して、ポリマー屑を発生しやすい。このようなポリマー屑は光導波路上に再付着する場合があり、特に電極素子搭載領域上や、V溝領域上に付着した場合には、光軸のずれがおきるなど問題となっていた。また、このような従来の方法では各ウエハについてV溝領域と光導波路領域との間を切断する必要があり、作業時間が長くなるという問題もある。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−139641号公報
【特許文献2】
特開2000−144458号公報
【特許文献3】
特開2001−281479号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリマー屑を発生させずにV溝を有するポリマー光導波路デバイスを製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ポリマー屑の付着による光軸のずれなどが無いV溝を有するポリマー光導波路デバイスを、短い工程時間で製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、基板上にポリマー層からなる光導波路と、前記光導波路に接続する光ファイバを搭載するためのV溝を少なくとも有する光導波路デバイスの製造方法であって、前記基板上にV溝を設ける工程、前記V溝を設けた基板上にポリマー層からなる光導波路を形成する工程、前記V溝領域上のポリマー層を反応性イオンエッチングにより少なくともV溝上端面まで除去する工程、前記V溝内に残存するポリマー層を、超音波振動、加熱若しくは冷却、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される方法により除去する工程を含む上記製造方法により解決される。
上記方法により、ポリマー層同士の接触によりポリマー屑を発生させることなく、V溝を有するポリマー光導波路デバイスを製造することができる。また、各ウエハにおけるV溝領域と光導波路領域との間を切断する工程が不必要である一方、反応性イオンエッチング及びその後の超音波処理等は複数のウエハを一括してバッチ処理できるため、多数のウエハを短時間で処理できるという利点がある。
本発明の製造方法の他の形態は、上述した製造方法においてさらに、V溝形成後ポリマー層形成前に、該基板上全体に接着層を設けた後、該V溝領域上の接着層を除去する工程を含む方法である。
上記製造方法において、該超音波振動によるポリマー層除去は、ウエハに純水中で200〜600W/15〜60kHzの超音波振動をかけることにより行われる事が好ましく、また該加熱によるポリマー層除去は、ウエハを90〜95℃の純水に浸漬することにより行われる事が好ましい。また、上記製造方法において、ポリマー層がフッ素化ポリイミド樹脂からなることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の光導波路デバイスの製造方法は、基板上に光ファイバを搭載するためのV溝を設ける工程、前記V溝を設けた基板上にポリマー層からなる光導波路を形成する工程、前記V溝領域上のポリマー層を反応性イオンエッチングにより少なくともV溝上端面まで除去する工程、前記V溝内に残存するポリマー層を、超音波振動、加熱若しくは冷却、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される方法により除去する工程を含む製造方法である。
【0008】
以下、本発明の光導波路デバイスの製造方法の代表的例について、図1a、図1b及び図2を用いて説明する。
(1)基板1上に光ファイバを搭載するためのV溝21を異方性ウエットエッチングにより形成する。
(2)V溝21を設けた基板1上に必要に応じて二酸化珪素層等の無機膜を形成する。
(3)前記基板1全体に接着層2を形成する。
(4)V溝領域20上の接着層2をフォトリソグラフィによりマスクを形成してエッチング除去する。
(5)基板1上にコア4及びクラッド3及びクラッド5となるポリマー層を形成する。
(6)任意にポリマー層上に保護層を形成する。
(7)フォトリソグラフィと反応性イオンエッチングによりV溝領域20上のポリマー層を少なくともV溝上端面まで除去する。
(8)V溝21内のポリマー層を、超音波振動、加熱若しくは冷却、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される方法により除去する。
【0009】
光導波路デバイス100とは、基板として、ガラス、石英等の無機材料、シリコン、ガリウムヒ素、アルミニウム、チタン等の半導体や、金属材料、ポリイミド、ポリアミド等の高分子材料、またはこれらの材料を複合化した材料を用いて、これら基板の上に、ポリマー層からなる光導波路と、光ファイバを搭載するためのV溝を少なくとも有する。さらに、光合波器、光分波路、光減衰器、光回折器、光増幅器、光干渉器、光フィルタ、光スイッチ、波長変換器、発光素子、受光素子あるいはこれらが複合化されたものなどが形成されていてもよい。上記の基板上には、発光ダイオード、フォトダイオード等の半導体装置や金属膜を形成することもあり、更に基板の保護や屈折率調整などのために、基板上に、上述のとおり二酸化珪素被膜を形成したり、あるいは、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化タンタルなどの被膜を形成してもよい。
【0010】
V溝21は、光導波路のコアを伝搬した光を受ける光ファイバを搭載するための基板に設けられた断面がV字形状をした溝である。従って溝21は光導波路10と連続して形成されている。V溝21をシリコン基板上に設ける場合には、通常、シリコン単結晶の基板を異方性のウェットエッチングすることにより形成され、その深さ及び幅は搭載する光ファイバがコア4とアライメントした状態(ひかりファイバの軸心とコアの軸心と一致する)となるように光ファイバのサイズ(径)により決定される。本明細書において、“V溝領域”とは、V溝内部及びV溝に隣接する領域であって、光導波路を設けない領域を意味する。また、“V溝上端面”とは、V溝長手方向の両端を結ぶ面であって、V溝が設けられていない基板の表面と同じ高さの面を意味する。従ってV溝上端面までポリマー層の反応性イオンエッチングを行うと、V溝領域中のV溝以外の領域の基板が露出することになる。
【0011】
本発明において、光導波路デバイスに使用される基板は上述したように種々のものが挙げられるが、最も代表的なものはシリコン基板である。
V溝21が設けられた基板1の上面に、任意に基板1を保護し、屈折率を調整するための二酸化珪素層等の無機膜(図示されていない)が備えられる。この二酸化珪素層の上に、有機ジルコニウム化合物層2Aと、フッ素を含まない樹脂層2Bが設けられる(図1a−(1A))。有機ジルコニウム化合物層2A及びフッ素を含まない樹脂層2Bは、基板1と下部クラッド3との接着性を高めるために配置される接着層2である。一般にフッ素を含むポリマーを下部クラッド3として用いた場合には、シリコンや酸化シリコン等の無機物との密着性が低いためこのような密着層2を設ける事が好ましい。しかし、このような密着層2を設けた場合には、後工程においてV溝領域20のポリマー層の除去が困難となるため、密着層2はV溝領域20以外の領域(すなわち光導波路領域10)に選択的に設けるか、若しくは基板全体に設けた後、V溝領域20の密着層2を選択的に除去する必要がある。
接着層2としては、アルミニウム、ジルコニウム、チタンなどの有機金属キレートやエステル溶液を塗布、ベークして得られる有機金属化合物や、シリコンを含有したシリコン樹脂やフッ素を含有しない樹脂、あるいは両者の複合膜などを用いることができる。前記有機金属化合物の例としては、特開平7−174930号公報に記載されているものを挙げることができる。また、シリコン樹脂やフッ素を含有しない樹脂としては、国際特許出願国際公開パンフレットWO98/37445号に記載されるものが挙げられる。
【0012】
有機金属化合物層は、膜厚が50オングストローム以上200オングストローム以下の範囲に収まるように、特に望ましくは、50オングストローム以上150オングストローム以下の範囲に収まるようにむらなく形成されていることが好ましい。これは、膜厚が50オングストロームよりも薄くなると、接着性向上の効果を発揮できず、下部クラッド層3が基板1からはがれることがあるためである。また膜厚が200オングストロームを超えると、膜がもろくなるためである。フッ素を含まない樹脂層の場合には、約0.1〜0.4μmであることが好ましい。0.4μmを超えると光が導波しやすくなり、光強度の損失があるためであり、また0.1μmより薄くなると下部クラッドを重ね塗りした時に溶解して無くなり、直接有機金属化合物層と下部クラッドが接触して接着力が低下するためである。
接着層2として有機ジルコニウム化合物を用いる場合には、種々の化合物を用いることができるが、ここでは有機ジルコニウム化合物層2Aとして、トリブトキシアセチルアセトネートジルコニウムを用いている。
【0013】
次に、V溝領域20のポリマー層を後工程で剥離するために、V溝領域20上の有機ジルコニウム化合物層2Aと、フッ素を含まない樹脂層2Bを除去する。まず、有機ジルコニウム層2Aとフッ素を含まない樹脂層2Bとを形成したウエハ状の基板1の全面にレジスト液をスピンコートし、100℃で乾燥することによりポジ型またはネガ型のレジスト膜を形成する。この後、水銀ランプでフォトマスクの像を露光する。フォトマスクは、V溝領域20にはレジスト膜が残らず、光導波路を形成すべき光導波路領域10にのみレジスト膜が残るように形成されている(図1a−(1B))。その後、レジスト膜を現像する。これによりレジスト膜のみならず、フッ素を含まない樹脂層2Bもウェットエッチングされ、両者をほぼ除去することができる。さらにフッ酸を用いたウェットエッチングまたは反応性イオンエッチングにより有機ジルコニウム化合物層2Aを除去する(図1a−(1C))。最後にレジスト膜を除去する。
【0014】
V溝領域20について有機ジルコニウム層2A及びフッ素を含まない樹脂層2Bを選択的に除去した後、コア及びクラッドとなるポリマー層を設ける(図1a−(1D))。コア及びクラッドを設ける方法には種々の方法があるが、例として、下部クラッド3と、コア4と、コア4を埋め込む上部クラッド5からなるポリマー層の形成方法について述べる。この例では下部クラッド3、コア4及び上部クラッド5は、いずれもフッ素を含むポリイミド樹脂により形成されている。
【0015】
下部クラッド3及び上部クラッド5は、いずれも、第1のポリイミド樹脂膜からなる。下部クラッド3、上部クラッド5及びコア4等の厚さは、ポリマー光導波路デバイスの目的等により適宜選択可能である。一実施態様として、下部クラッド3の膜厚は、約5〜10μm、上部クラッド5の膜厚は、コア4の直上で約5〜20μm、他の部分で約10〜30μmである。コア4は、第2のポリイミド樹脂膜からなり、その膜厚は約5〜10μmである。
なお、V溝21内に形成されるポリマー層の厚さは、塗布等の際にV溝内部にポリマーが流れ込むためV溝内では他の領域に比べて厚くなっている。
上部クラッド層5の上にさらに、レジスト剥離など溶剤浸漬処理によるクラックやダイシング後の個片単位での取り扱いで生じる傷によりコアが切断されることを防止する目的で、保護層が設けられていてもよい。保護層は、第3のポリイミド樹脂膜であり、その膜厚は、コア4から離れた端部で約1〜5μmである。
【0016】
また、光導波路(コア及びクラッド)を作成するためのポリマーとしてはいずれのものも使用できるが、具体例としては、ポリイミド系樹脂(例、ポリイミド樹脂、ポリ(イミド・イソインドロキナゾリンジオンイミド)樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエステルイミド樹脂等)、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリキノリン系樹脂、ポリキノキサリン系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、及びフォトブリーチング用樹脂(例、特開2001−296438号公報記載のポリシラン、ニトロン化合物を有するシリコーン樹脂、DMAPN{(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−N−フェニルニトロン}を含有するポリメタクリル酸メチル、ダイポリマー(dye polymer)、ニトロン化合物を含有するポリイミド樹脂あるいはエポキシ樹脂、特開2000−66051号公報記載の加水分解性シラン化合物等)が挙げられる。上記樹脂はフッ素原子を有しているものであってもよい。ポリマーとして好ましいものとしては、ガラス転移温度(Tg)が高く、耐熱性に優れることからポリイミド樹脂が挙げられ、その中でもフッ素化ポリイミド樹脂が特に好ましい。
【0017】
下部クラッド3から保護層までの各ポリマー層は、これらが不要なV溝領域20に配置されているため、これを剥がして除去する必要がある。
除去は、ポリマー層が不要なV溝領域20のみを反応性イオンエッチングを少なくともV溝上端面まで行うことにより行う。すなわち、ポリマー層及び任意に設けた保護層上に無機レジスト液をスピンコートし、90℃で乾燥することによりポジ型またはネガ型のレジスト膜を形成する。この後、水銀ランプでフォトマスクの像を露光する。フォトマスクは、光導波路領域10にのみレジスト膜が残るように形成されている。その後、レジスト膜を現像する(図1b−(1E))。さらに、反応性イオンエッチングを行うことにより、ポリマー層を少なくともV溝上端面まで、すなわちV溝領域20(V溝21内部以外)のシリコン基板表面まで除去する(図1b−(1F))。反応性イオンエッチングは、酸素を用いたO−RIEを用い行うが、アルゴンガスを20%程度混ぜて使用しても良い。エッチング時間は、ポリマ導波路1μm厚あたり、約3分程度にガス圧及びパワーを調節して行う。これ以上早いと、導波路にクラック等が発生し易くなり、遅いとエッチング時間が長くなり作業効率が低下する。
反応性イオンエッチングの条件は、ポリマーの種類やガスの種類により適宜当業者が選択することができ、特に限定されないが、例えばO−RIEの場合、パワー400〜1000wでガス圧10〜30Pa程度であり、アルゴンを20%混合する場合には、パワーを同程度にし、ガス圧を1〜5Pa程度にして行うことができる。
【0018】
次に、V溝21内に残存するポリマーを、超音波振動、加熱若しくは冷却、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される方法により除去する(図1b−(1G))。
超音波振動による具体的処理方法は、例えばウエハ全体を純水で満たされた超音波処理槽内にいれ、200〜600W/15〜60kHz程度の超音波を5〜15分かけることにより行う。フッ素化ポリイミド等の基板との接着力が弱いポリマーは基板との間に接着力を高める接着層が存在しないと、超音波による振動によりシリコン基板から遊離する。
加熱による具体的処理方法は、例えばウエハ全体を90℃〜95℃の純水に10〜20分浸漬し、その後常温に戻すことにより行う。これはポリマーとシリコンウエハの熱膨張係数の差により両者の界面が遊離するためと考えられる。このとき、90℃以上の純水に10〜20分浸漬した後、すぐに常温に戻すとウエハにクラックが発生する場合があるので、50℃程度の純水に3分程度浸漬して徐冷することが望ましい。同様にウエハを冷却することによりV溝21内のポリマーを遊離させることもできる。
上記超音波振動及び加熱若しくは冷却を適宜組み合わせることによりポリマー層を剥離することもできる。
その後無機レジストを通常の方法により剥離する。
【0019】
次に、ウエハ状の基板1をダイシングにより切断することにより、短冊状に切り出し、この短冊状の基板1をダイシングにより、個々のポリマー光導波路デバイス100(図2)に切り出し、ポリマー光導波路デバイス100を完成させる。なお、基板1を切断するダイシング工程の手順は、この手順に限られるものではなく、縦横にメッシュ状にダイシングしてポリマー光導波路デバイス100を形成することも可能である。
この実施態様の光導波路のコア4は直線形状であるが、コア4の形状は、ポリマー光導波路デバイスとして必要とされる機能に合わせて直線形状に限らずy分岐やx型等の所望の形状にすることができる。また、コアの形状に合わせて、電極を複数個備える構成にすることも可能である。
【0020】
また、こうして製造されるポリマー光導波路デバイス100は、下部クラッド3から上部クラッド5まで全ての層をポリイミド樹脂で形成すると、Tgが高く、耐熱性に優れるため好ましい。よって、本実施の形態のポリマー光導波路デバイス100は、高温になっても伝搬特性を維持できる。また、ポリイミド樹脂は、半田付け等の高温工程にも耐えることができるため、ポリマー光導波路の上にさらに別のポリマー光導波路や電気回路素子や発光素子を半田付けすることも可能である。
【0021】
実施例
次に、本発明のポリマー光導波路デバイス100の製造方法をさらに具体的に説明する。
[基板上に光ファイバ搭載用のV溝を形成する工程]
ここでは、基板1として直径約12.7cmのシリコンウエハを用意し、このウエハの上に図2の構造を縦横に多数配列して形成し、後の工程でダイシングにより切り離して、個々のポリマー光導波路デバイス100に分離した。これにより、多数のポリマー光導波路デバイス100を量産することができる。よって、成膜やパターニング等は、ウエハ状の基板1全体で一度に行った。
まず、ウエハ状の基板1の上面全体に、二酸化珪素層を熱酸化法や気相堆積法等により形成した後、フォトリソグラフィとシリコン単結晶の異方性を利用したウェットエッチングにより、深さ100μm×幅141μm×長さ1.5mmのV溝21を配列して形成した。
【0022】
[接着層の形成]
次に、ウエハ状の基板1の全体に有機ジルコニウム化合物層2Aを形成した(厚さ100Å)。この有機ジルコニウム化合物層2Aの上に、フッ素を含まない樹脂層形成用組成物をスピンコートで塗布し、得られた塗膜を加熱して溶媒を蒸発させ、さらに加熱して硬化させることにより、フッ素を含まない樹脂層2Bを形成した。フッ素を含まない樹脂層2Bの厚さは、0.23μmとなるようにスピンコートの条件を制御した。
次に、ウエハ状の基板1の上面のうち、完成後のポリマー光導波路デバイスで光導波路が配置されないV溝領域20について、フッ素を含まない樹脂層2Bと、有機ジルコニウム化合物層2Aを以下のようにして除去した。
【0023】
[V溝領域20上の接着層の除去]
まず、ウエハ状の基板1の全面にレジスト液をスピンコートし、100℃で乾燥することによりレジスト膜を形成した。この後、水銀ランプでフォトマスクの像を露光した。フォトマスクは、光導波路を形成すべき部分(光導波路領域10)にのみレジスト膜が残るように形成した。その後、レジスト膜を現像した。これによりレジスト膜のみならず、フッ素を含まない樹脂層2Bもウェットエッチングされ、両者をほぼ除去することができた。
この後、フッ酸を用いたウェットエッチングまたは反応性イオンエッチングにより、有機ジルコニウム化合物層2Aを除去した。有機ジルコニウム化合物層2Aは、膜厚が非常に薄いため、V溝21の内部の層もウェットエッチングまたは反応性イオンエッチングにより除去することができる。最後に、レジスト膜を除去した。
【0024】
[基板上に下部クラッド3を形成する工程]
次に、ウエハ状の基板1の上面全体に前述の第1のポリイミド樹脂膜形成用組成物(すなわち、下部クラッド3形成用組成物)をスピンコートして材料溶液膜を形成した。これを加熱硬化させ、厚さ6μmの下部クラッド3を形成した。
【0025】
[下部クラッド3上にコア4を形成する工程]
この下部クラッド3の上に、コア用の前述の第2のポリイミド樹脂膜形成用組成物をスピンコートして材料溶液膜を形成した。これを加熱硬化させ、コア4となる厚さ6.5μmの第2のポリイミド樹脂膜を形成した。
【0026】
次に、第2のポリイミド樹脂膜(即ち、コア4となる層)上に、シリコン含有レジスト層(通常は膜厚約1μm程度)を設け、該レジスト層を所望のコア4のパターンを有するフォトマスクを介して露光、現像してレジストパターンを形成した。
該レジストパターンをエッチングマスクとして、コア4となる樹脂層をエッチングして、所望のコア4を形成した。エッチングは、レジストパターンをエッチングマスクとして、酸素イオンを用いた反応性イオンエッチング(O−RIE)により行った。これにより、基板1上に多数のポリマー光導波路デバイス100を配列して一度に形成することができた。
【0027】
[上部クラッド5及び保護層を形成する工程]
次に、コア4及び下部クラッド3を覆うように、第1のポリイミド樹脂膜形成用組成物をスピンコートした。得られた材料溶液膜を、加熱硬化させ第1のポリイミド樹脂膜の上部クラッド5を形成した。上部クラッド5の膜厚は、コア4の直上で約10μm、他の部分で約15μmであった。さらに、上部クラッド5の上面に、フッ素を含まないポリイミド樹脂膜形成用組成物をスピンコートし、加熱硬化させて、上面がほぼ平坦でコア4から離れた端部の部分の厚さが約2μmのフッ素を含まないポリイミド樹脂膜の保護層を得た。
【0028】
[反応性イオンエッチングによりV溝領域20上のポリマー層を除去する工程]
上述したように設けた保護層上に反応性イオンエッチング用無機レジスト液(富士フィルムアーチ製、FH−SP−3CL)をスピンコートし、90℃で90秒間加熱乾燥することにより2〜3μmのポジ型レジスト膜を形成した。この後、白色水銀ランプ(露光量600mJ)でフォトマスクの像を露光した。フォトマスクは、ポリマー層が不要なV溝領域20のレジスト膜が除去されるように形成されている。その後、レジスト膜をTMAH2.38%アルカリ現像液に100秒間浸漬して現像した。
次に反応性イオンエッチング(プロセスガス:O)をV溝領域20のシリコン基板表面が露出するまで(V溝上端面まで)行い、ポリマー層を除去した。V溝21内にはポリマー層が残存するため、次の操作によりV溝21内のポリマー層を除去した。
【0029】
[V溝21内のポリマー層を除去する工程]
反応性イオンエッチング後、ウエハ全体を95℃の純水に10分浸漬し、その後50℃の純水に3分浸漬し、さらに常温の純水に浸漬すると、V溝21内のポリマー層のみが剥離した。ポリマー層とシリコンウエハの熱膨張係数の差によりポリマー層が基板表面から剥離したと考えられる。
無機レジストは、60℃のジプロピレングリコールモノメチルエーテル−モノイソプロパノールアミン(75:25)溶液に5分浸漬し、その後純水中で超音波処理により前記溶液の除去を行い、溶液中に溶解したレジストを光導波路より剥離した。
【0030】
[ポリマー光導波路デバイス100を形成する工程]
次に、ウエハ状の基板1をダイシングにより切断することにより、短冊状に切り出し、この短冊状の基板1をダイシングにより、個々のポリマー光導波路デバイス100に切り出し、ポリマー光導波路デバイス100を完成させた。
【0031】
実施例2
実施例1において、[V溝21内のポリマー層を除去する工程]のみを下記のように変えて行った。
反応性イオンエッチング後、ウエハ全体を常温の純水が満たされた超音波処理装置内にいれて、300W、45kHzの条件下で超音波を3分間かけると、V溝21内のポリマー層のみが剥離した。機械的振動によりポリマー層が基板表面から剥離すると考えられる。
【0032】
(結果)
光導波路(ポリマー層)が不要なV溝領域と光導波路領域との間にダイシングにより溝を入れ、光導波路を剥離する工程を含む製造方法ではウエハ1枚あたり40分の作業時間を有していたが、実施例1及び実施例2に記載の方法によりウエハ1枚あたり作業時間を18分に短縮することができた。また、光導波路の剥がし取り工程によるポリマー屑の発生も見られなかった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の方法により、光導波路が不要なV溝領域と光導波路領域との間にダイシングにより溝を入れて不要な光導波路を剥がす工程を行うことなく、V溝を有するポリマー光導波路デバイスを製造することが出来る。各ウエハのダイシング工程が不要となり、一括して反応性イオンエッチング、超音波処理等を行えることにより作業時間が大幅に短縮され、ポリマー光導波路の剥離工程で生じるポリマー屑等の異物の発生も無い。
【図面の簡単な説明】
【図1a】本発明のポリマー光導波路デバイスの製造方法の一実施形態を示す図である。
【図1b】本発明のポリマー光導波路デバイスの製造方法の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の製造方法により製造されるポリマー光導波路デバイスの斜視図である。
【図3】従来のの製造方法により製造されるポリマー光導波路デバイスの斜視図である。
【符号の説明】
1:シリコン基板、2A:有機ジルコニウム化合物層、2B:フッ素を含まない樹脂層、2:接着層、3:下部クラッド、4:コア、5:上部クラッド、7:溝:10:光導波路領域、20:V溝領域、21:V溝、100:光導波路デバイス。

Claims (5)

  1. 基板上にポリマー層からなる光導波路と、前記光導波路に接続する光ファイバを搭載するためのV溝を少なくとも有する光導波路デバイスの製造方法であって、前記基板上にV溝を設ける工程、前記V溝を設けた基板上にポリマー層からなる光導波路を形成する工程、前記V溝領域上のポリマー層を反応性イオンエッチングにより少なくともV溝上端面まで除去する工程、前記V溝内に残存するポリマー層を、超音波振動、加熱若しくは冷却、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される方法により除去する工程を含む上記製造方法。
  2. V溝形成後ポリマー層形成前に、該基板上全体に接着層を設けた後、該V溝領域上の接着層を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 該超音波振動によるポリマー層除去が、ウエハに純水中で200〜600W/15〜60kHzの超音波振動をかけることにより行われる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 該加熱によるポリマー層除去が、ウエハを90〜95℃の純水に浸漬することにより行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 該ポリマー層がフッ素化ポリイミド樹脂からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
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