JP2004155941A - 可塑剤含有樹脂成形体 - Google Patents

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Tatsushi Fukuzumi
達志 福住
Takeshi Funaki
剛 舟木
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健司 安部
Yutaka Midori
翠  豊
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Abstract

【課題】可塑剤が他のものに移行することを抑制し、さらには優れた耐ブロッキング性をも有する可塑剤含有樹脂成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の可塑剤含有樹脂成形体は、ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(A)と、計算溶解性パラメーターが9.4以上となるように選択されたヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体とその他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体を含む単量体混合物(B)とを乳化重合させた共重合体(X)を含む可塑剤移行防止用水性被覆材により被覆されていることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可塑剤のブリードアウトが抑制され、可塑剤含有樹脂を折り畳んだり、可塑剤含有樹脂同士を積み重ねたりする際の耐ブロッキング性にも優れた可塑剤含有樹脂成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリ塩化ビニルゾルやアクリルゾル等の可塑剤含有樹脂は、成形材料として、現在、カーペットバッキング材、シート、フィルム等の幅広い用途で使用されている。しかしながら、この可塑剤含有樹脂は、経時的に可塑剤が樹脂内部から表面に移行してブリードアウトするため、その成形品は長期間経過すると、表面のべたつき、それによる塵埃の付着、又はそれを置いた場所が汚染されたりする問題や、成形された可塑剤含有樹脂を積み重ねたり折り畳んだりした後に可塑剤含有樹脂同士が剥がれにくくなる、いわゆるブロッキングが発生したり、成形品を基材に貼り付けるために成形品の表面に粘着材を塗布した場合、粘着材層が可塑剤によって汚染され、成形品の密着性が経時的に低下することによって、商品としての価値を損なうといった問題が発生することがあった。
【0003】
これらの問題を解決するために、現在、汎用的に使用されている可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂に対しては各種の可塑剤移行防止用組成物が提案されている。例えば、メタクリル酸メチルとカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体よりなる共重合体と、アルキレンイミンを反応させることを特徴とする可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂用可塑剤移行防止剤(特許文献1)や、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルを含有するアクリル系樹脂に架橋性化合物、有機系酸触媒を配合した可塑剤移行防止剤を塗布した可塑剤含有ポリ塩化ビニル系樹脂成形体(特許文献2)が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの可塑剤移行防止剤は全て溶剤に樹脂が溶解している溶液型の可塑剤移行防止剤であるため、取り扱いに注意する必要があり、さらに、揮発性の溶剤が大量に含まれているためVOC対策の面でも好ましくなかった。また、カルボキシル基含有共重合体水性エマルションに、オキサゾリン基含有水溶性樹脂を架橋剤として配合し、アンモニア等のアミン類を反応抑制剤として配合した可塑剤移行防止用水性塗料(特許文献3)、第3級アミン塩基及びまたは第4級アミン塩基を有し、共重合体のガラス転移温度が、−5〜50℃である可塑剤移行防止用水性塗料(特許文献4)、ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルションと特定の単量体混合物を乳化重合して得られるフロアポリッシュ用エマルション(特許文献5)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特公平8−19250号公報
【特許文献2】
特開平8−48009号公報
【特許文献3】
特開2000−169788号公報
【特許文献4】
特開2001−106943号公報
【特許文献5】
特許第2698447号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のいずれの可塑剤移行防止剤を被覆した可塑剤含有樹脂において、可塑剤移行防止性能、耐ブロッキング性等の面を全て満足できるものではなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、可塑剤含有樹脂の表面に、特定の構造を有する共重合体(X)を含有する可塑剤移行防止用水性被覆材を塗布被覆して、可塑剤が他のものに移行することを抑制し、さらには優れた耐ブロッキング性をも有する可塑剤含有樹脂成形体を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の可塑剤含有樹脂成形体は、ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(A)と、計算溶解性パラメーターが9.4以上となるように選択されたヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体とその他共重合可能なエチレン性不飽和単量体を含む単量体混合物(B)を乳化重合させた共重合体(X)を含む可塑剤移行防止用水性被覆材により被覆されていることを特徴とする。
また、上記カーペットバッキング材として用いられることが好ましい。
また、可塑剤移行防止用水性被覆材により被覆されている面に粘着材層を有することが好ましい。
また、シート又はフィルムとして用いられることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の可塑剤含有樹脂成形体は、可塑剤移行防止用水性被覆材を可塑剤含有樹脂からなる成形体に被覆して製造される。
可塑剤移行防止用水性被覆材を被覆する対象としては、可塑剤含有樹脂を成形したものであれば特に制約を受けるものではなく、例えば、可塑剤含有塩化ビニル樹脂や可塑剤含有アクリル樹脂等の公知の可塑剤含有樹脂を、射出成形法等の公知の成形法で成形したものが挙げられる。特に、カーペットバッキング材用に成形された成形体や、フィルムやシート状に成形された成形体に適用することが好ましい。
【0009】
以下、本発明に適用される可塑剤移行防止用水性被覆材について説明する。
本発明において、可塑剤移行防止用水性被覆材は、ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(A)と、計算溶解性パラメーターが9.4以上となるように選択された、ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体及びその他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体を含む単量体混合物(B)を乳化重合させた共重合体(X)を含む。共重合体(X)は、その構成成分として、ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(A)と、ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体を含む単量体混合物(B)を用いることにより、ポリオルガノシロキサン部位とヒドロキシル基が導入されているものである。
【0010】
ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(A)としては、特に限定されるものではなく公知のものが使用できるが、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤とを共縮合して得られるポリオルガノシロキサンであることが好ましい。オルガノシロキサンは、例えば、一般式R SiO(4− (式中、Rは置換、又は非置換の1価の炭化水素基であり、mは0〜3の整数を表す)で表される構造単位を有するものであり、直鎖状、分岐状もしくは環状構造を有するものである。このオルガノシロキサンが有する置換、又は非置換の1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基、及びそれらの水素原子をハロゲン原子又はシアノ基で置換した置換炭化水素基等を挙げることができる。
【0011】
このようなオルガノシロキサンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン等の環状化合物の他に、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。
【0012】
オルガノシロキサンは、予め重合されたポリオルガノシロキサンであってもよい。この場合、その分子鎖末端は、水酸基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基、メチルジフェニルシリル基等で封鎖されていてもよい。
【0013】
上記グラフト交叉剤としては、例えば、分子内に1個以上の加水分解性シリル基と、1個以上のエチレン性不飽和基又はメルカプト基とを含有するものを挙げることができる。加水分解性シリル基としては、重合反応性、取り扱いの容易さ等の点からアルコキシシリル基が好ましい。
グラフト交叉剤の具体例としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン類;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルシラン類;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプトアルキルシラン類等が挙げられる。これらの成分は必要に応じて単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0014】
グラフト交叉剤の使用割合は特に制約を受けるものではないが、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤との合計を100質量%とした際に、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましい。0.1質量%以上のグラフト交叉剤を使用することにより、高分子量のポリオルガノシロキサンとエチレン性不飽和単量体を含有する単量体混合物(B)とのグラフト重合が効率良く行われ、塗膜の可塑剤移行防止性能を向上させることができる。また、30質量%以下のグラフト交叉剤を使用することにより、ポリオルガノシロキサンの分子量を下げることなくグラフト率を向上させ、塗膜の可塑剤移行防止性能を向上させることができる。
【0015】
ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(A)は、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤とをホモミキサーや圧力型ホモジナイザー等で水中に強制的に乳化分散させたものに、重合開始剤としてアルキルベンゼンスルホン酸等の酸成分を加えて重縮合させることにより製造することができる。この重縮合の後で、この酸成分をアルカリ成分で中和することにより乳化剤として使用することもできる。
重合開始剤の使用量は特に規定されるものではなく、目的とするポリオルガノシロキサンの分子量、固形分量、及び重合温度等により任意に設定できるものであるが、重合を速やかに進行させるためには、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤との合計を100質量部としたときに0.5質量部以上の量を使用するのが望ましい。
【0016】
このようにして得られるポリオルガノシロキサンの平均分子量は10,000以上であり、好ましくは50,000以上であるのがよい。このような比較的高分子量のポリオルガノシロキサンを使用することにより、可塑剤移行防止性能を低下させることなく耐ブロッキング性を向上させることが可能となる。
【0017】
また、共重合体(X)に含まれるポリオルガノシロキサンの量は特に制約を受けるものではないが、耐ブロッキング性と可塑剤移行防止性能の観点から共重合体(X)全体を100質量%としたときに5質量%〜40質量%となるようにすることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましい。
【0018】
上記ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(A)に乳化重合させる単量体混合物(B)には、ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体、及びその他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体が含有される。
ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等の(メタ)アクリル酸ポリオキシアルキレングリコールエステルや、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。これらは、単独または2種類以上を組み合わせて用いられる。
このように、共重合体(X)がポリオルガノシロキサン部位とヒドロキシル基を有することによって、可塑剤防止用水性被覆材から形成される塗膜の可塑剤移行防止性能、耐ブロッキング性、及び耐アルカリ基材性が良好になる。
【0019】
上記単量体混合物(B)中に含有される、その他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を使用するのが好ましい。炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチルを挙げることができるが、中でもメタクリル酸メチルが好ましい。
このように、(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることによって、可塑剤移行防止性能等が向上する傾向にある。
【0020】
また、上記以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル−シュウ酸付加体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル−テトラヒドロフタル酸無水物付加体等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の炭素数3〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコシキアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ブチレングリコール等のジ(メタ)アクリル酸グリコールエステル、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン等のトリ(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル等の(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等の化合物を挙げることができる。
【0021】
さらに、単量体混合物(B)を構成するその他のエチレン性不飽和単量体として、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体を使用し、可塑剤移行防止用水性被覆材中に、2個以上のヒドラジル残基を有する有機ヒドラジド化合物を添加しておくことで、塗膜形成時に、共重合体(X)が有するカルボニル基とヒドラジル残基との間で架橋反応を起こさせることができ、可塑剤移行防止性能をさらに向上させることができる。この場合、2個以上のヒドラジル残基を有する有機ヒドラジン化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の2塩基酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(商品名「アミキュアVDH」、味の素ファインテクノ(株))等の有機ヒドラジン化合物を挙げることができる。
【0022】
単量体混合物(B)を構成する、その他のエチレン性不飽和単量体は、必要に応じて適宜選択して使用することができるが、中でも20℃における単量体の水への溶解度が1g/100ml(水)以上である単量体を使用することが可塑剤移行防止性能の面から好ましい。
【0023】
20℃における単量体の水への溶解度が1g/100ml(水)以上であるエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル−シュウ酸付加体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル−テトラヒドロフタル酸無水物付加体等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0024】
本発明において、共重合体(X)を得るために使用される単量体混合物(B)の計算溶解性パラメーター(Sp値)は9.4以上であることが必要で、より好ましくは9.45以上であり、更に好ましくは9.5以上である。
これは、計算溶解性パラメーター(Sp値)が9.4以上であれば、共重合体(X)の可塑剤に対する溶解性が低下し、可塑剤移行防止用水性被覆材から形成される塗膜の可塑剤移行防止性能が良好となるためである。
【0025】
以下、溶解性パラメーター(Sp値)、及びその算出方法を説明する。
溶解性パラメーター(Sp値)は、凝集エネルギー密度、すなわち1分子の単位体積当たりの蒸発エネルギーを1/2乗したもので、単位体積当たりの極性の大きさを示す数値である。
また、その算出方法は、単量体混合物(B)を構成する単量体のsmallの式による溶解性パラメーター(Sp値)から算出することができる。ここで、smallの式による溶解性パラメーター(Sp値)とは、溶剤ハンドブック(第1版)(講談社刊)p91〜p97に記載されているように、単量体の化学構造毎に決められた値の合計に密度を掛けたものを、当該単量体の分子量で割ることで得られるものであり、物質の化学構造と密度に基づいて算出されるものである。なお、単量体混合物(B)の計算溶解性パラメーター(Sp値)は、上記のようにして求めた各単量体の計算溶解性パラメーター(Sp値)を用いて、以下の計算式により算出されるものである。
単量体混合物(B)のSp値=ΣSp(i)×W(i)
(ただし、Sp(i)は単量体混合物(B)に含有される単量体iの計算溶解性パラメーター(Sp値)、W(i)は単量体iの質量分率を示す。)
【0026】
また、単量体混合物(B)は、その理論水酸基価が10〜80mgKOH/gの範囲となるようにヒドロキシル基を有するのが好ましく、更に好ましくは、20〜70mgである。これは、水酸基価を10mgKOH/g以上とすることによって、充分な可塑剤移行防止性能や耐アルカリ基材性が得られる傾向にあるためである。また、80mgKOH/g以下とすることによって、塗膜の耐水性が良好となる傾向にあるためである。
【0027】
さらに、単量体混合物(B)は、Foxの式より算出される計算ガラス転移温度(Tg)が15〜70℃の範囲にあることが好ましく、20〜65℃の範囲にあることがより好ましい。Foxの式とは、単量体混合物(B)のTgについての下記の関係式である。
1/(Tg+273)=Σ{W(i)/(Tg(i)+273)}
(ただし、W(i)は単量体混合物(B)に含有される単量体iの質量分率、Tg(i)は単量体iのホモポリマーのTgを示す。)
なお、共重合体(X)を得る際に、単量体混合物(B)を2つ以上に分割していわゆる多段重合を行った場合は、単量体混合物(B)を構成する全単量体量を100質量%として各層を構成する単量体の質量分率を算出し、Foxの式を用いて算出したものを単量体混合物(B)のTgとする。
【0028】
共重合体(X)は乳化重合法によって得ることができる。また、適用される乳化重合法は特に制約されるものではなく、例えば、乳化剤の存在下、単量体混合物(B)を重合系内に供給し、水溶性開始剤により重合を行わせる方法や、有機過酸化物とチオ硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤により重合を行わせる等の方法によって、共重合体(X)を得ることができる。
【0029】
また、単量体の重合系中への供給方法は従来公知の手法を用いることができる。さらに、各種重合法を用いて共重合体(X)を重合する際に、分子量の調整が必要な場合には、分子量調整剤として、n−ドデシルメルカプタン、α−スチレンダイマー等の連鎖移動剤を用いることで調整が可能である。
【0030】
本発明において、可塑剤移行防止用水性被覆材は、上記のようにして乳化重合法で得られた共重合体(X)をそのままの状態で、又は水性媒体中に溶解、分散させたりして使用することができる。この際使用する乳化剤や分散剤は特に制限されるものではなく、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤を適宜選択して使用することができるのみならず、乳化剤分子中にエチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を有する、いわゆる反応性乳化剤も使用することができる。
【0031】
共重合体(X)を主成分とする可塑剤移行防止用水性被覆材は、その性能をさらに向上させるために、必要に応じて、各種水分散型樹脂、各種水溶性樹脂、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、顔料、染料、防カビ剤、防藻剤、発泡剤、滑剤等を配合することもできる。
【0032】
このようにして調製される可塑剤移行防止用水性被覆材は、可塑剤含有樹脂の表面に被覆して、長期間経過しても、可塑剤がブリードアウトして他のものに移行することを防止することができる上に、耐ブロッキング性、耐アルカリ基材性にも優れ、更に貯蔵安定性にも非常に優れている。
【0033】
上記可塑剤移行防止用水性被覆材を塗布する方法としては、ドクターブレードコート法、グラビアロールコート法、エアナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロッド法等の公知の方法が挙げられる。
また、上記方法により可塑剤移行防止用水性被覆材を塗装した場合は、分散媒である水を揮発させるために、公知の自然乾燥法、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法等の各種の乾燥方法により、塗膜を乾燥させることができる。
【0034】
また、可塑剤移行防止用水性被覆材を被覆する方法として、予め可塑剤移行防止用水性被覆材よりなる塗膜を形成した後、これを可塑剤含有樹脂に被覆して、共押出しラミネート法、押出しコーティング法、押出しラミネート法、ラミネート法等を適宜選択して行うことができる。
【0035】
このようにして製造された本発明の可塑剤含有樹脂成形体は、各種用途に使用することができ、例えば、カーペットバッキング材(裏糊材)や、シート、フィルム等に好適に使用することができ、特に、床面等の基材への密着性を付与する粘着材層を有するカーペットバッキング材として好適に使用することができる。粘着材層を有するカーペットバッキング材として、本発明の可塑剤含有樹脂成形体を使用することによって、基材への密着性を長期間維持できるカーペットを製造することができる。このようなカーペットは、施工時に粘着材を使用する必要がないため、施工性が非常に優れたものである。
以上説明したように、本発明の可塑剤含有樹脂成形体によれば、長期間経過しても、可塑剤のブリードアウトを大幅に抑制することができるとともに、優れた耐ブロッキング性を有するものである。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
(可塑剤含有アクリル樹脂(1)の製造)
乳化重合法により、下記に示す単量体組成のコア/シェル型アクリル系エマルションを製造した。そして、これを入り口温度220℃、出口温度95℃、アトマイザー回転数25000rpmの条件で、スプレードライを行い、アクリル樹脂粉体を製造した。
(エマルション単量体組成)
コア部:メタクリル酸メチル40質量%、アクリル酸n−ブチル60質量%
シェル部:メタクリル酸メチル100質量%
コア/シェル比:50/50(質量比)
次いで、上記アクリル樹脂粉体100gと、可塑剤としてフタル酸ジイソノニル120gとをホモディスパーで攪拌混合し、アクリル樹脂粉体が均一に分散されたゾルを作製した。
このゾルを減圧脱泡したものを乾燥後の膜厚が約2mmになるように、ガラス板に塗装し、150℃で10分間加熱乾燥して、評価用の可塑剤含有アクリル樹脂(1)からなる被膜を形成した。
【0037】
(可塑剤含有アクリル樹脂(2)の製造)
可塑剤含有アクリル樹脂(1)の製造にて用いたアクリル樹脂粉体100gと、炭酸カルシウム100gと、可塑剤としてフタル酸ジオクチル120gとをホモディスパーで攪拌混合し、アクリル樹脂粉体が均一に分散されたゾルを作製した。
このゾルを減圧脱泡したものを乾燥後の膜厚が約2mmになるように、ガラス板に塗装し、150℃で10分間加熱乾燥して、評価用の可塑剤含有アクリル樹脂(2)からなる被膜を形成した。
【0038】
(可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂の製造)
ポリ塩化樹脂粉体(「ゼオン121」、日本ゼオン(株)製)100gに、炭酸カルシウム100gと、可塑剤としてフタル酸ジオクチル120gとをホモディスパーで攪拌混合し、ポリ塩化ビニル樹脂粉体が均一に分散されたゾルを作製した。
このゾルを減圧脱泡したものを乾燥後の膜厚が約2mmとなるように、ガラス板に塗装し、150℃で10分間加熱乾燥して、評価用の可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂からなる被膜を形成した。
【0039】
(ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(1)の製造)
環状ジメチルシロキサンオリゴマー3〜7量体混合物98部と、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン2部と、水310部と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部とをホモミキサーで予備混合した後、圧力式ホモジナイザーによる200kg/cmの圧力で強制乳化してシリコーン原料エマルションを得た。
次いで、水90部及びドデシルベンゼンスルホン酸10部を攪拌機、コンデンサー、加熱ジャケット及び滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコ内の温度を85℃に保ちながら4時間かけて上記のシリコーン原料エマルションを滴下した。滴下終了後、さらに1時間重合を進行させた後、冷却してドデシルベンゼンスルホン酸と当モル量の水酸化ナトリウムを加えて固形分18%のポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(1)を得た。得られたポリオルガノシロキサンのポリスチレン換算質量平均分子量は168,000であった。
【0040】
(ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(2)の製造)
環状ジメチルシロキサンオリゴマー3〜7量体混合物98部と、γ−メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン2部と、水200部と、ドデシルベンゼンスルホン酸0.67部と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部とをホモミキサーで予備混合した後、圧力式ホモジナイザーにより200kg/cmの圧力で強制乳化してシリコーン原料エマルションを得た。
このシリコーン原料エマルションを攪拌機、コンデンサー、加熱ジャケット及び滴下ポンプを備えたフラスコに一括で仕込み、80℃に昇温し、攪拌下で6時間反応させた後、冷却してドデシルベンゼンスルホン酸と当モル量の水酸化ナトリウムを加え、さらに水を加えて固形分18%のポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(2)を得た。得られた重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は323,000であった。
【0041】
(可塑剤移行防止用水性被覆材の調製)
(実施例1)
攪拌機、冷却器、温度計を備えた重合容器に、ポリオリガノシロキサン重合体の水中油滴型エマルション(1)27.8質量部と、脱イオン水36.7質量部とを仕込み、内温を60℃に昇温した。
表1に示される組成の単量体混合物95質量部、界面活性剤、及び脱イオン水35質量部を十分に混合し、均一な乳化状態のプレエマルション(以下「PE液」と略す)を作製した。この作製したPE液5質量部を上記重合容器内へ入れ、重合容器の内温を80℃まで昇温し、内温が安定した段階で過硫酸ナトリウム0.1質量部を脱イオン水5質量部に溶解したものを添加し1時間放置した。1時間経過後からPE液の残りと、過硫酸ナトリウム0.2質量部を脱イオン水10質量部に溶解したものを重合容器の内温を80℃に維持しながら3時間かけて重合容器中に滴下し、滴下完了後、内温を80℃に2時間維持して反応を完結した。
反応完結後、冷却を行い、アクリル系エマルションのpHが7.5〜10の間になるように、28質量%アンモニア水溶液を添加し、加熱残分が40%となるように脱イオン水を加えた。
なお、得られたアクリル系エマルションの固形分(加熱残分)、粘度、pHは、表1の通りであった。
【0042】
【表1】
Figure 2004155941
以下、表中の略語を説明する。
MMAはメタクリル酸メチル、EMAはメタクリル酸エチル、MAはアクリル酸メチル、EAはアクリル酸エチル、2HEAはアクリル酸2−ヒドロキシエチル、2HEMAはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、2HPMAはメタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、FM2はプラクセルFM2(ダイセル化学工業(株)製)、Stはスチレン、n−BMAはメタクリル酸n−ブチル、2−MTAはアクリル酸2−メトキシエチル、DAAmはダイアセトンアクリルアミド、MAAはメタクリル酸、AE−HHはアクリエステルHH(三菱レイヨン(株)製)、AAmはアクリルアミド、NP−203はアニオン系乳化剤(「サンノールNP−2030」、ライオン(株)製)、TD−313はアニオン系乳化剤(「サンノールTD−3130」、ライオン(株)製)、SE−10Nはアニオン系反応性乳化剤(「アデカリアソープSE−10N」、旭電化(株)製)、TD−120はノニオン系乳化剤(「レオコールTD−120」、ライオン(株)製)、TD−700はノニオン系乳化剤(「レオコールTD−700」、ライオン(株)製)、APDHはアジピン酸ジヒドラジド、VDHは1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(「アミキュアVDH」、味の素ファインテクノ(株)製)を示す。
【0043】
上記エマルション100gに対し、20℃で造膜できるように、表2に従って造膜助剤を添加して十分に攪拌した後、増粘剤としてアデカノール(「UH−420」、旭電化(株)製)を1.5g、消泡剤としてサーフィノール(「DF−58」、日信化学工業(株))を0.2g添加して、再度十分に攪拌したものを100メッシュナイロン紗でろ過し、評価用の可塑剤移行防止用水性被覆材とした。
この可塑剤移行防止用水性被覆材を上述した可塑剤含有アクリル樹脂(1)、(2)、及び可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂からなる被膜上に、乾燥後の膜厚が10μmになるように、アプリケーターを用いて塗装した。それを15分間室温で放置してから、90℃の乾燥機中で60分乾燥させ、可塑剤移行防止用水性被覆材を被覆した試験片を作製した。
【0044】
【表2】
Figure 2004155941
【0045】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、表1に示されるポリオルガノシロキサン、単量体混合物、乳化剤を使用して乳化重合を行い、シリコンアクリル系エマルションを製造した。得られたシリコンアクリル系エマルションの固形分(加熱残分)、粘度、pHは、表1の通りであった。
次いで、このエマルションを用い、実施例1と同様の方法で、可塑剤移行防止用水性被覆材を製造し、それを上述した可塑剤含有アクリル樹脂(1)、(2)、及び可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂からなる被膜上に被覆して試験片を作製した。
なお、乳化剤として使用したVDH(「アミキュアVDH」、味の素ファインテクノ(株)製)は、同量の脱イオン水に溶解して添加した。
【0046】
(実施例3)
本実施例は、2段滴下法を用いてシリコンアクリル系エマルションを重合した。
まず、実施例1と同様な重合容器内に、ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(1)111.1質量部を仕込み、60℃に昇温した。そして、1段目として、表1に示される組成の単量体混合物のうち、メタクリル酸メチル38質量部と、アクリル酸エチル2質量部と、アニオン系反応性乳化剤(「アデカリアソープSE−10N」、旭電化(株)製)1.5質量部と、脱イオン水15質量部とを十分に混合し、均一な乳化状態のPE液(1)を作製した。
作製したPE液(1)5質量部を重合容器内へ入れ、重合容器の内温を80℃まで昇温し、内温が安定した段階で、過硫酸ナトリウム0.1質量部を脱イオン水5質量部に溶解したものを添加し1時間放置した。1時間経過後からPE液(1)の残りと、過硫酸ナトリウム0.1質量部を脱イオン水5質量部に溶解したものを重合容器の内温を80℃に維持しながら1.5時間かけて重合容器中に滴下し、滴下完了後、内温を80℃に3時間維持した。
次いで2段目として、残りのメタクリル酸メチル9.6質量部と、アクリル酸エチル19.4質量部と、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル5質量部と、ダイアセトンアクリルアミド6質量部と、アニオン系反応性乳化剤(「アデカリアソープSE−10N」、旭電化(株)製)1.5質量部と、脱イオン水15質量部とを十分に混合し、均一な乳化状態のPE液(2)を作製し、PE液(2)と、過硫酸ナトリウム0.1質量部を脱イオン水5質量部に溶解したものを重合容器の内温を80℃に維持しながら1.5時間かけて重合容器中に滴下し、滴下完了後、内温を80℃に2時間維持して反応を完結した。
反応完結後、冷却を行い、エマルションのpHが7.5〜10の間になるように28質量%アンモニア水溶液を添加し、アジピン酸ジヒドラジド3.8質量部を添加した後に、ノニオン系乳化剤(「レオコールTD−700」、ライオン(株)製)の50%水溶液6質量部を添加し、加熱残分が40%となるように脱イオン水を加えた。
なお、得られたシリコンアクリル系エマルションの固形分(加熱残分)、粘度、pH、は表1の通りであった。
上記エマルション100gに対し、20℃で造膜できるように、表2に従って造膜助剤を添加して十分に攪拌した後、増粘剤としてアデカノール(「UH−420」、旭電化(株)製)を1.5g、消泡剤としてサーフィノール(「DF−58」、日信化学工業(株))を0.2g添加して、再度十分に攪拌したものを100メッシュナイロン紗でろ過したものを、評価用の可塑剤移行防止用水性被覆材とした。
この可塑剤移行防止用水性被覆材を上述した可塑剤含有アクリル樹脂(1)、(2)、及び可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂からなる被膜上に、乾燥後の膜厚が10μmになるように、アプリケーターを用いて塗装した。それを15分間室温で放置してから、90℃の乾燥機中で60分乾燥させ、可塑剤移行防止用水性被覆材を被覆した試験片を作製した。
【0047】
(実施例4)
実施例3と同様の方法で、表1に示されるポリオルガノシロキサン、単量体混合物、乳化剤を使用して乳化重合を行い、アクリル系エマルションを製造した。なお、1段目と2段目の単量体組成は、以下の通りである。
1段目:メタクリル酸メチル38質量部、アクリル酸エチル2質量部
2段目:メタクリル酸メチル8質量部、アクリル酸エチル20質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル3質量部、ダイアセトンアクリルアミド9質量部得られたアクリル系エマルションの固形分(加熱残分)、粘度、pH、は表1の通りであった。
上記エマルション100gに対し、20℃で造膜できるように、表2に従って造膜助剤を添加して十分に攪拌した後、増粘剤としてアデカノール(「UH−420」、旭電化(株)製)を1.5g、消泡剤としてサーフィノール(「DF−58」、日信化学工業(株))を0.2g添加して、再度十分に攪拌したものを100メッシュナイロン紗でろ過し、評価用の可塑剤移行防止用水性被覆材とした。
この可塑剤移行防止用水性被覆材を上述した可塑剤含有アクリル樹脂(1)、(2)、及び可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂からなる被膜上に、乾燥後の膜厚が10μmになるように、アプリケーターを用いて塗装した。それを15分間室温で放置してから、90℃の乾燥機中で60分乾燥させ、可塑剤移行防止用水性被覆材を被覆した試験片を作製した。
【0048】
(実施例5)
実施例1と同様の方法で、表1に示されるポリオルガノシロキサン、単量体混合物、乳化剤を使用して乳化重合を行い、アクリル系エマルションを製造した。得られたシリコンアクリル系エマルションの固形分(加熱残分)、粘度、pHは、表1の通りであった。
次いで、このエマルションを用い、実施例1と同様の方法で、可塑剤移行防止用水性被覆材を製造し、それを上述した可塑剤含有アクリル樹脂(1)、(2)、及び可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂からなる被膜上に被覆して試験片を作製した。
【0049】
(実施例6)
実施例3と同様の方法で、表1に示されるポリオルガノシロキサン、単量体混合物、乳化剤を使用して乳化重合を行い、アクリル系エマルションを製造した。なお、1段目と2段目の単量体組成は、以下の通りである。
1段目:メタクリル酸メチル22.8質量部、スチレン7.2質量部
2段目:メタクリル酸メチル16.2質量部、メタクリル酸n−ブチル1.8質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル10.8質量部、プラクセルFM2 1.2質量部
得られたシリコンアクリル系エマルションの固形分(加熱残分)、粘度、pH、は表1の通りであった。
上記エマルション100gに対し、20℃で造膜できるように、表2に従って造膜助剤を添加して十分に攪拌した後、増粘剤としてアデカノール(「UH−420」、旭電化(株)製)を1.5g、消泡剤としてサーフィノール(「DF−58」、日信化学工業(株))を0.2g添加して、再度十分に攪拌したものを100メッシュナイロン紗でろ過し、評価用の可塑剤移行防止用水性被覆材とした。
この可塑剤移行防止用水性被覆材を上述した可塑剤含有アクリル樹脂(1)、(2)、及び可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂からなる被膜上に、乾燥後の膜厚が10μmになるように、アプリケーターを用いて塗装した。それを15分間室温で放置してから、90℃の乾燥機中で60分乾燥させ、可塑剤移行防止用水性被覆材を被覆した試験片を作製した。
【0050】
(比較例1〜4)
実施例1と同様の方法で、表3に示される単量体混合物、乳化剤を使用して乳化重合を行い、アクリル系エマルションを製造した。得られた各々のアクリル系エマルションの固形分(加熱残分)、粘度、pH、は表3の通りであった。
次いで、このエマルションを用い、実施例1と同様の方法で、可塑剤移行防止用水性被覆材を製造し、それを上述した可塑剤含有アクリル樹脂(1)、(2)、及び可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂からなる被膜上に被覆して試験片を作製した。なお、比較例1及び比較例4のアジピン酸ジヒドラジドは同量の脱イオン水に分散して添加した。
【0051】
【表3】
Figure 2004155941
以下、表中の略語を説明する。
MMAはメタクリル酸メチル、EAはアクリル酸エチル、2HEMAはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、2HPMAはメタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、Stはスチレン、n−BMAはメタクリル酸n−ブチル、2−EHAはアクリル酸2−エチルヘキシル、2−MTAはアクリル酸2−メトキシエチル、DAAmはダイアセトンアクリルアミド、MAAはメタクリル酸、AE−HHはアクリエステルHH(三菱レイヨン(株)製)、NP−203はアニオン系乳化剤(「サンノールNP−2030」、ライオン(株)製)、TD−313はアニオン系乳化剤(「サンノールTD−3130」、ライオン(株)製)、SE−10Nはアニオン系反応性乳化剤(「アデカリアソープSE−10N」、旭電化(株)製)、TD−120はノニオン系乳化剤(「レオコールTD−120」、ライオン(株)製)、TD−700はノニオン系乳化剤(「レオコールTD−700」、ライオン(株)製)、APDHはアジピン酸ジヒドラジドを示す。
【0052】
(比較例5)
ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(2)を可塑剤移行防止材として使用し、実施例1と同様の方法で、可塑剤移行防止用水性被覆材を製造した。これを上述した可塑剤含有アクリル樹脂(1)、(2)、及び可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂からなる被膜上に被覆して試験片を作製した。
【0053】
各実施例、比較例で得られた試験片について、可塑剤移行防止性能、耐アルカリ基材性、耐ブロッキング性、耐汚染性の評価を行った。以下、評価方法を述べる。
【0054】
(可塑剤移行量評価方法)
試験片の可塑剤移行防止用水性被覆材で被覆された面に、あらかじめ重量(W−1(単位g))を測定しておいた5cm×5cmの塩化ビニル樹脂シートを載せ、その上にガラス板を置き、さらにガラス板の上に500g/cmとなるように重りを置いて、80℃の乾燥機中に入れ、24時間経過後乾燥機より取り出し、室温まで自然冷却した。
冷却後、塩化ビニル樹脂シートを評価用可塑剤含有アクリル樹脂より剥離し、その重量(W−2(単位g))を測定した。
この結果をもとに、下記の式により塩化ビニル樹脂シートの単位重量当たりの可塑剤移行量を算出した。この結果を表4、表5に示す。
可塑剤移行量(g/g)=((W−2)−(W−1))/(W−1)
なお、この可塑剤移行量(g/g)の値が小さいほど被覆した可塑剤移行防止用水性被覆材の可塑剤移行防止性能が優れていることを示す。
【0055】
【表4】
Figure 2004155941
【0056】
【表5】
Figure 2004155941
【0057】
また、算出した可塑剤移行量をもとに可塑剤移行性を以下の基準で評価した。この結果を表4に示す。
◎ :可塑剤移行量が未被覆の場合の10%未満に減少。
○ :可塑剤移行量が未被覆の場合の10%以上20%未満に減少。
△ :可塑剤移行量が未被覆の場合の20%以上30%以下に減少。
×:可塑剤移行量が未被覆の場合の30%より多い。
【0058】
(耐アルカリ基材試験)
試験片の可塑剤移行防止用水性被覆材を被覆した面の上に、縦×横×高が各々70mm×70mm×20mmのJIS A 6910に準拠したモルタル板を載せ、脱イオン水で満たしたビーカーに浸漬し、ビーカーごと50℃の恒温水槽に入れた。1週間経過後、試験片を取り出し、可塑剤移行防止用水性被覆材を被覆した面の変化(ブリスターの有無等)を目視で確認し、以下の基準で判断した。この結果を表4、表5に示す。
◎ :外観の変化全く見られない。
○ :若干白化が見られるが、ブリスター等は見られない。
△ :ブリスターがわずかに見られる。
×:ブリスターが著しい、または塗膜が溶出している。
【0059】
(耐ブロッキング性試験)
試験片の可塑剤移行防止用水性被覆材を被覆した面同士を重ねあわせ、その上に500g/cmとなるように重りを置いて、80℃の乾燥機中に入れ、24時間経過後乾燥機より取り出し、室温まで自然冷却した。
冷却後、手で試験片を剥離するときの剥離のしやすさを以下の基準で判断した。この結果を表4、表5に示す。
◎ :力をかけることなく簡単に剥離できる。
○ :◎より劣るが簡単に剥離可能。
△:一部付着して剥離する際に力が要るが、可塑剤移行防止剤塗布面を損傷することなく剥離可能。
×:剥離不可能
【0060】
(耐汚染性試験)
試験片の可塑剤移行防止用水性被覆材を被覆した面の上に、長さ5cm、幅1.9cmのビニルテープ(「ビニルテープエスロンNo.360」積水化学工業(株)製)を5枚貼り付け、50℃の乾燥機中にいれて、10日間放置後取り出して、室温で24時間放置した後に、ビニルテープと評価用の可塑剤含有樹脂成形体との密着性を以下の基準で判断した。この結果を表4、表5に示す。
◎ :5枚とも初期と同じ程度の密着性を維持している。
○ :5枚中3枚は初期と同じ程度の密着性を維持しているが、2枚は密着性が低下している。
△ :5枚とも密着性が低下している。
×:可塑剤のブリードアウトによりビニルテープに塗布された粘着剤が劣化し、5枚簡単に剥がれる。
【0061】
表4から明らかなように、実施例1〜6で得られた可塑剤移行防止用水性被覆材で被覆された可塑剤含有樹脂はいずれも、可塑剤移行防止性能、耐アルカリ基材性、耐ブロッキング性、耐汚染性に非常に優れていた。
一方、表5から明らかなように、比較例1では、可塑剤移行防止用水性被覆材の製造にポリオルガノシロキサンが使用されておらず、さらに単量体混合物の計算溶解性パラメーター(Sp値)が9.4未満であるため、可塑剤移行防止性能、耐アルカリ基材性、耐ブロッキング性、耐汚染性が劣っている。
また、比較例2では、可塑剤移行防止用水性被覆材の製造にポリオルガノシロキサンが使用されておらず、さらに共重合体中にヒドロキシル基が導入されていないため、実施例に比べて、可塑剤移行防止性能、耐アルカリ基材性、耐ブロッキング性、耐汚染性が劣っている。
また、比較例3では、可塑剤移行防止用水性被覆材の製造にポリオルガノシロキサンが使用されておらず、さらに単量体混合物の計算溶解性パラメーター(Sp値)が9.4未満であるため、可塑剤移行防止性能、耐ブロッキング性が劣っている。特に、可塑剤含有アクリル樹脂からなる成形体に対して、上記性能が劣っている。
また、比較例4では、可塑剤移行防止用水性被覆材の製造にポリオルガノシロキサンが使用されておらず、さらに共重合体中に、ヒドロキシル基が導入されておらず、単量体混合物の計算溶解性パラメーター(Sp値)も9.4未満であるため、可塑剤移行防止性能、耐アルカリ基材性、耐ブロッキング性、耐汚染性に劣っている。
比較例5では、製造例(2)のポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション単体を塗布したが、乾燥後も塗膜としての性能が不十分であり、各種性能評価を行うことができなかった。
【0062】
【発明の効果】
本発明の可塑剤含有樹脂成形体は、長期間経過しても、可塑剤のブリードアウトが大幅に抑制され、優れた耐ブロッキング性をも兼ね備えている。
また、本発明の可塑剤含有樹脂成形体は、各種用途に用いることができるが、中でもカーペットバッキング材、シート、フィルム等として好適に用いられ、工業上極めて有用である。

Claims (4)

  1. ポリオルガノシロキサンの水中油滴型エマルション(A)と、計算溶解性パラメーターが9.4以上となるように選択されたヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体とその他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体を含む単量体混合物(B)とを乳化重合させた共重合体(X)を含む可塑剤移行防止用水性被覆材により被覆されていることを特徴とする可塑剤含有樹脂成形体。
  2. カーペットバッキング材として用いられることを特徴とする請求項1記載の可塑剤含有樹脂成形体。
  3. 可塑剤移行防止用水性被覆材により被覆されている面に粘着材層を有することを特徴とする請求項1記載の可塑剤含有樹脂成形体。
  4. シート又はフィルムとして用いられることを特徴とする請求項1記載の可塑剤含有樹脂成形体。
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