JP2004155805A - 改質セルロースエーテルフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水溶性セルロースエーテルフィルムをシランで処理することにより該処理面を一時的に耐水化してなることを特徴とする改質セルロースエーテルフィルム。
【効果】本発明の改質セルロースエーテルフィルムは、水溶性セルロースエーテルをシラン類にて処理することにより、該フィルムの耐水性を向上させることができ、水のpHを調整することにより、速やかに溶解、分解処理することができる。また、フィルムの片面だけをシラン類にて処理、一時不溶化することにより、片面は耐水性が発揮され、未処理面を水に接触させることにより中性の水でも容易に当該セルロースエーテルフィルムを溶解、分解処理することが可能である。
【選択図】 なし
【効果】本発明の改質セルロースエーテルフィルムは、水溶性セルロースエーテルをシラン類にて処理することにより、該フィルムの耐水性を向上させることができ、水のpHを調整することにより、速やかに溶解、分解処理することができる。また、フィルムの片面だけをシラン類にて処理、一時不溶化することにより、片面は耐水性が発揮され、未処理面を水に接触させることにより中性の水でも容易に当該セルロースエーテルフィルムを溶解、分解処理することが可能である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性セルロースエーテルをベースポリマーとしてなる改質セルロースエーテルフィルムに関する。更に詳しくは、一時的に耐水性を付与し、かつ使用後は極めて容易に水に溶解し得る改質セルロースエーテルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水溶性セルロースエーテルは、本来、水に不溶のセルロースに化学的に特定の置換基を導入して水溶性にしたものであり、一般的には水もしくは特定の有機溶剤又はその混合物に溶解され、増粘剤、接着剤、保水剤、更にはその界面活性を利用した分散剤、乳化安定剤として広く使用されている。また、この水溶液を薄く塗布し、乾燥によって溶剤を除去することにより、水溶性のフィルムを調製することが可能であることは広く知られている。
【0003】
上記水溶性セルロースエーテルとしては、例えばメチルセルロースのようなアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキルセルロースや、その混合エーテルであるヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなヒドロキシアルキルアルキルセルロース、更にはカルボキシメチルセルロース等が挙げられ、実際に工業的に製造され、市販されている。
【0004】
これらの水溶性セルロースエーテルを使用したフィルムは、導入置換基の種類により食品、医薬品への応用も認められている。例えば食品分野では、ピザ等の水分が異なる複層食品の層間水分の移動防止(米国特許第4,915,971号公報)や人工甘味料の放出抑制(米国特許第4,822,622号公報)、香辛料又は調味料を含んだフィルムとしての使用(特開昭52−70039号公報、特開昭52−108058号公報)等が提案されている。また、シート状フィルムではないが、錠剤の苦みマスキング用として錠剤に水溶性セルロースエーテルをコーティングすることは一般的に行われており、これもいわゆる水溶性セルロースエーテルのフィルム用途の一つと数えてもよい。工業的には包装材として用いられており、特にノニオン性置換基を導入したセルロースエーテルは薬物との相互作用が少ないため、特殊な洗浄剤の包装材料として使用されている。これらは全て水と接触したときに溶解して跡形もなく固形物が消えてしまうという特性を生かしている。更に、セルロースは元のベースポリマーが天然物のセルロースゆえに生分解性を持ち、他の合成ポリマーと環境面にやさしい基材として一線を画している。
【0005】
この廃棄後の生分解可能な特徴を生かし、透明性、印刷の良好性から光投影資料(いわゆるオーバーヘッドプロジェクター)の基材としての使用も提案されている(特開2001−205926号公報)。
【0006】
しかし、この水溶性ゆえに、その優れた生分解性、透明性が発揮されずに使用しにくく、又は使用できない分野がある。例えば、先に挙げた光投影資料用の透明フィルムは、通常ポリエチレンテレフタレートのような合成樹脂が使用されている。この分野で水溶性セルロースエーテルが未だ利用されていないのは、例えばお茶、コーヒーのような水滴を落とした場合、フィルム表面が溶解又は膨潤して印刷面が変形又は消失してしまうためである。インクジェット印刷用の光投影資料の表面は水溶性インキを吸収しなければならず、ポリビニルアルコールを合成樹脂フィルム上に塗布したフィルム基材が実際に使用されているため、先の水溶性セルロースエーテルフィルムも有用ではあるが、やはり耐水性の問題がつきまとう。
【0007】
更に、包装材料として使用後、溶解して消失させる用途においても、使用までは耐水性があることが望ましい。例えば、水溶性セルロースエーテルフィルムは、洗剤、農薬等を必要量だけ小分けして包装し、使用時に破袋して内容物を取り出し、包装はそのまま洗濯槽に入れたり農地に放置しても、水溶性、生分解性ゆえに支障はなく、かかる用途に有効に使用されるが、使用時に濡れた手で扱った場合、溶解して接着したり、雨中で急速に破袋するのは望ましくない。
【0008】
また、フィルムの用途として、開口部を透明フィルムで覆い、内容物の印刷が読める封筒があるが、最近のリサイクルの気運により、この封筒を回収し、再生紙として使用する場合、水に不溶な合成樹脂フィルムを使用した場合には、いちいち取り外さなければならず、手間がかかる。この場合も水溶性フィルムであれば分離する必要はなく、極めて簡便に使用できるが、配達時の耐水性が問題となる。
【0009】
従って、使用前には一時的に不溶化し、耐水性を持つが、使用後には極めて容易に水に溶解するフィルムが望まれる。
【0010】
水溶性セルロースエーテルフィルムに撥水性をもたせるための手段としては、上記米国特許第4,915,971号公報では、水溶性セルロースエーテルのフィルム上に油脂層を設けることが提案されている。また、油脂に代わって撥水性のオイル、例えば撥水性シリコーンオイルを塗布することも考えられるが、単に塗布してあるだけでは、輸送中、ハンドリング中に他のものと接触、こすれがあった場合、部分的な撥水剤の脱落が予想され、安定して使用するには困難がある。
よって、別の化学物質を水溶性セルロースエーテルと反応せしめることで、化学結合により安定して不溶化する技術が望まれ、以下種々の提案がなされてきた。
【0011】
この水溶性セルロースエーテルを不溶化する技術は、例えば、特開昭52−73988号公報に開示されているように、セルロースエーテルをクロロ蟻酸エステルと反応させる方法があるが、溶解時においてpHを12以上にする必要があり、このpHを使用できない場合は不適である。また、クロロ蟻酸エステルは猛毒性、腐食性を持つため、取り扱いが困難である。
【0012】
一方、ホルムアルデヒドとセルロースエーテルとを反応させて水不溶化させることも知られているが、アセタール結合により不溶化したセルロースエーテルは、水に分散させてももはや溶解することなく、実用的でない。
【0013】
最も一般的に使用されている水溶性セルロースエーテルの不溶化法は、グリオキサールを用いる方法である。これは、セルロースが持つ水酸基とグリオキサールとをヘミアセタール結合させて架橋反応させるもので、このグリオキサール処理をした水溶性セルロースエーテルは、その架橋密度にもよるが、中性からアルカリ性の領域で水と接触後緩やかにヘミアセタール結合がはずれ、再度水に溶解することができる。このグリオキサール処理技術は、具体的には米国特許第2,879,268号公報等に記載されている。
【0014】
しかし、上記グリオキサールは、いわゆる「変異原生物質」として指定されている(「変異原生が認められた化学物質の取り扱いについて」基・発第341号2、1994年6月6日)。変異原生物質とは遺伝子に損傷を与え、発現性等を損なう物質であり、その使用は好ましくない。
また、グリオキサールを使用しない一時的不溶化技術としては、シランとの反応が種々提案されている。例えば、特公昭51−2103号公報では、メトキシ基又はエトキシ基を反応基としたアミノシランやエポキシシランが開示されているが、ここで用いられるシラン類は価格が高い上に反応速度が遅く実用に適さない。
【0015】
【特許文献1】
米国特許第4,915,971号公報
【特許文献2】
米国特許第4,822,622号公報
【特許文献3】
特開昭52−70039号公報
【特許文献4】
特開昭52−108058号公報
【特許文献5】
特開2001−205926号公報
【特許文献6】
特開昭52−73988号公報
【特許文献7】
米国特許第2,879,268号公報
【特許文献8】
特公昭51−2103号公報
【特許文献9】
特公平6−39481号公報
【特許文献10】
特開平8−183801号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルムを一時的に不溶化して耐水性を持たせることにより、使用中は安易に取り扱うことができ、使用後は溶解、分解が可能な改質セルロースエーテルフィルムを提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、水溶性セルロースエーテルフィルムの製造過程においてその一面又は両面をシラン類にて処理することにより、一時的な不溶化を達成し、所望の改質セルロースエーテルフィルムを製造できることを知見し、本発明を完成させた。
【0018】
即ち、従来、水溶性セルロースエーテルを一般式Si(−R1)(−R2)(−R3)(−R4)(式中のR1は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R2、R3、R4は同一でも異なってもよいアルコキシ基又はアシルオキシ基を表す。)で表されるアルキルトリアルコキシシラン又はアルキルテトラアシルオキシシランで処理することが知られている(特公平6−39481号公報)。
【0019】
更に、特開平8−183801号公報には、同様に一般式Si(−R1)(−R2)(−R3)(−R4)(式中のR1、R2、R3及びR4はそれぞれ相互に独立して炭素数1又は2のアルコキシ基又はアシルオキシ基を表す。)で表されるシランで処理することが提案されており、先の特公平6−39481号公報で開示されるシラン類より効果が高いことが判っている。これらシラン処理した水溶性セルロースエーテルは、中性域の水には溶解しないが、若干の酸又はアルカリを加えることにより、容易にシランとセルロースエーテルの結合がはずれ、再び水溶性となる。
【0020】
しかし、これらのシラン類にて処理される方法は、粉状水溶性セルロースエーテルの未分散の塊状物発生を防止し、速やかに水に分散させることを目的としており、フィルムの不溶化には言及されていない。
【0021】
これに対し、本発明者は、水溶性セルロースエーテルのフィルムを製造する過程において、まず目的の水溶性セルロースエーテルを水等の溶剤に溶解させ、これをキャスト、乾燥することにより水溶性セルロースエーテルのフィルムを製造し、その片面又は両面の全部又は一部分にシラン類を塗布し、加熱することにより、一時的に水に不溶化した部分を持つ水溶性セルロースエーテルフィルムが得られることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0022】
なお、本発明において、「耐水化」、「水に不溶化」とは、pH6.5〜7.5で、25℃の水に10分間触れても溶解しない状態をいう。
【0023】
従って、本発明は、下記改質セルロースエーテルフィルムを提供する。
(1)水溶性セルロースエーテルフィルムをシランで処理することにより該処理面を一時的に耐水化してなることを特徴とする改質セルロースエーテルフィルム。
(2)シランが、下記一般式(1)で表されるシランであることを特徴とする(1)記載の改質セルロースエーテルフィルム。
SiR1R2R3R4 …(1)
(式中、R1は炭素数1又は2のアルキル基、アルコキシ基又はアシルオキシ基を表し、R2、R3、R4はそれぞれ相互に独立して炭素数1又は2のアルコキシ基又はアシルオキシ基を表す。)
(3)水溶性セルロースエーテルが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースであることを特徴とする(1)又は(2)記載の改質セルロースエーテルフィルム。
【0024】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の改質セルロースエーテルフィルムは、水溶性セルロースエーテルフィルムをシランで処理することにより、該処理面を一時的に耐水化してなるものである。
【0025】
ここで、本発明において、水溶性セルロースエーテルとしては、メチルセルロースのようなアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなヒドロキシアルキルアルキルセルロース、更にはカルボキシメチルセルロースが用いられる。
【0026】
これらの水溶性セルロースエーテルは、まず、水もしくは水に一部有機溶剤を含む混合溶媒に溶解せしめてフィルム基材溶液を調製する。なお、ここに使用される水溶性セルロースエーテルは不溶化されていても無意味であり、実質的に完全に溶解せしめることが必要である。
【0027】
この水溶性セルロースエーテル水溶液には、必要に応じて添加剤を添加することができる。例えば、カラーフィルムが必要な場合は、少量の顔料、特に透明性が必要な場合は、水溶性の顔料を添加することが可能である。
【0028】
また、不透明なフィルムが必要な場合、例えば、包装する内容物を見えなくしたり、光を遮る必要がある場合には、二酸化チタン粉末等を分散混合してもよい。
【0029】
更に、フィルムに柔らかさ、強度を増すために、グリセリン、ポリエチレングリコール、アセチン、トリアセチン、クエン酸トリエチル等を添加してもよい。
添加量は特に限定されるものではないが、水溶性セルロースエーテル100重量部に対し5〜30重量部が好ましい。
【0030】
この水溶性セルロースエーテル水溶液は、金属プレート、ガラス板、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の支持体にキャストされ、引き続き乾燥してフィルムとなる。この乾燥されたフィルムの片面又は両面に対し、部分的又は全面にシラン類を処理する。
【0031】
シラン類としては、水溶性セルロースエーテルの水酸基と反応する官能基を有し、かつ疎水性基を有するものであれば、いずれのものでもよいが、特には下記一般式(1)、
SiR1R2R3R4 …(1)
(式中、R1は炭素数1又は2のアルキル基、アルコキシ基又はアシルオキシ基を表し、R2、R3、R4はそれぞれ相互に独立して炭素数1又は2のアルコキシ基又はアシルオキシ基を表す。)
で表されるシラン類を塗布する。更に、加熱することにより、目的とする一時不溶化した水溶性セルロースエーテルフィルムが得られる。
【0032】
これらシラン類としては、例えばメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン類のうち、特に上記式(1)においてR1、R2、R3、R4がそれぞれ相互に独立して炭素数1又は2のアルコキシ基又はアシルオキシ基であるシラン類の効果が高く、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
水溶性セルロースエーテルフィルムを不溶化するメカニズムとしては、ここで用いられるシラン類が、水溶性セルロースエーテルと反応してセルロースエーテルの水酸基とシラン類のアルコキシ基やアシルオキシ基が結合して親水基が減少して水に不溶になると同時に、シランが疎水性であるゆえに撥水効果が同時に現れて水の付着を防ぐものである。
【0034】
シラン類の添加量は、特に限定されるものではないが、フィルム厚み10〜100μmのフィルムの両面を処理する場合には、セルロースのグルコースユニット(Mw=162g/mol)に対し0.001〜0.005g/molが好ましく、片面を処理する場合にはこの半分量が好ましい。
シラン類の水溶性セルロースエーテルフィルムへの塗布は、シラン類だけでも構わないが、少量の揮発性溶剤で希釈して行ってもよい。
【0035】
また、塗布方式はスプレー方式でも構わないし、フェルトに含浸させてフィルム上に接触させてもよい。更に、二枚の薄膜から毛細管現象で塗布液をしみ出させ、盛り上がった塗布液をフィルムに接触させて塗布することもできる。この方式として株式会社ヒラノテクシードのCAP Coaterが適する。
【0036】
また、アルコキシ基を持つシラン類には、少量の酸をシラン希釈液に添加することで反応速度が上がるので有利である。用いる酸としては、酢酸、グリコール酸が使用可能であり、シラン類と同量程度で十分効果がある。
【0037】
シラン類を塗布したフィルムは、特に限定されるものではないが、30〜150℃、好ましくは60〜120℃で30〜60分間保持し、シラン類と水溶性セルロースエーテルとの反応を完結することが好ましい。
【0038】
本発明の一時不溶化セルロースエーテルフィルムの製造法は、特に限定されるものではないが、水溶性セルロースエーテルを乾燥フィルム化した後、まだ乾燥後の暖かいうちにシラン類又はシラン希釈液を塗布し、乾燥時の熱を利用して更に加熱することによりエネルギーロスが少なく製造することができる。よって、連続フィルムキャスティング工程、乾燥工程1、シラン塗布工程、乾燥工程2と直列に配置され、連続的にフィルムを生産することが、生産性、コストの面から望ましい。
【0039】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ60SH−50、信越化学工業社製、グルコース単位当たり分子量203g/mol)の10重量%水溶液を調製した。
フィルム成形はテーブルコーター(株式会社ヒラノテクシード製)を用い、先の10重量%水溶液をA3板ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに落とし、1,000μm厚でキャストした。続いて、同じテーブルコーターにて80℃で30分間乾燥し、PETフィルムから剥離させ、膜厚60μmの透明フィルムを得た。密度は1.2g/mlであり、B4版の面積(=936cm2)に相当する水溶性セルロースエーテルの重量は6.74gであった。以下、PET基材と接触していた面を裏面、接触していない面を表面と称する。
【0041】
テトラメトキシシラン(KBM−04、信越化学工業社製、Mw=152g/mol)と酢酸をそれぞれ10重量%になるようイソプロピルアルコールに溶解し、この混合液をフェルトに含浸させてシランのアプリケーターとした。
上記調製した透明フィルムをPETフィルムから剥離しないまま、B4版相当の大きさに印をつけ、シラン・酢酸・IPA混合液を0.126gのみ塗布し、続いて80℃で30分間再度加熱した。以下、シランを塗布、反応させた面を処理面、もう一方の面を未処理面と称する。膜厚、密度は下記比較例1と変わらなかった。
【0042】
[比較例1]
実施例1と同様にヒドロキシプロピルメチルセルロースのフィルムを調製したが、シランの塗布及び再乾燥を行わず、比較用試料とした。フィルムの厚み、密度は実施例1と同じであった。
【0043】
<評価方法>
上記セルロースエーテルフィルムの耐水性、溶解性を以下の方法で評価した。
比較例、実施例で調製したフィルムを16mmφに切り抜き、温度40℃、湿度75%RHにて7日間保存した。試料フィルムをガスケットで上下挟み込み、2ヶの内径12mmφのガラス円筒で更に挟み込んだ。これを垂直に立て、上部に25℃の5mlのpH調整した水を入れ、破膜するまでの時間を測定した。なお、測定値は3回測定し、平均値を採用した。また30分を経過しても破膜しないものは30分以上とした。
実施例、比較例の各面について破膜時間を測定した結果を以下に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
本発明の改質セルロースエーテルフィルムは、水溶性セルロースエーテルをシラン類にて処理することにより、該フィルムの耐水性を向上させることができ、水のpHを調整することにより、速やかに溶解、分解処理することができる。また、フィルムの片面だけをシラン類にて処理、一時不溶化することにより、片面は耐水性が発揮され、未処理面を水に接触させることにより中性の水でも容易に当該セルロースエーテルフィルムを溶解、分解処理することが可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性セルロースエーテルをベースポリマーとしてなる改質セルロースエーテルフィルムに関する。更に詳しくは、一時的に耐水性を付与し、かつ使用後は極めて容易に水に溶解し得る改質セルロースエーテルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水溶性セルロースエーテルは、本来、水に不溶のセルロースに化学的に特定の置換基を導入して水溶性にしたものであり、一般的には水もしくは特定の有機溶剤又はその混合物に溶解され、増粘剤、接着剤、保水剤、更にはその界面活性を利用した分散剤、乳化安定剤として広く使用されている。また、この水溶液を薄く塗布し、乾燥によって溶剤を除去することにより、水溶性のフィルムを調製することが可能であることは広く知られている。
【0003】
上記水溶性セルロースエーテルとしては、例えばメチルセルロースのようなアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキルセルロースや、その混合エーテルであるヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなヒドロキシアルキルアルキルセルロース、更にはカルボキシメチルセルロース等が挙げられ、実際に工業的に製造され、市販されている。
【0004】
これらの水溶性セルロースエーテルを使用したフィルムは、導入置換基の種類により食品、医薬品への応用も認められている。例えば食品分野では、ピザ等の水分が異なる複層食品の層間水分の移動防止(米国特許第4,915,971号公報)や人工甘味料の放出抑制(米国特許第4,822,622号公報)、香辛料又は調味料を含んだフィルムとしての使用(特開昭52−70039号公報、特開昭52−108058号公報)等が提案されている。また、シート状フィルムではないが、錠剤の苦みマスキング用として錠剤に水溶性セルロースエーテルをコーティングすることは一般的に行われており、これもいわゆる水溶性セルロースエーテルのフィルム用途の一つと数えてもよい。工業的には包装材として用いられており、特にノニオン性置換基を導入したセルロースエーテルは薬物との相互作用が少ないため、特殊な洗浄剤の包装材料として使用されている。これらは全て水と接触したときに溶解して跡形もなく固形物が消えてしまうという特性を生かしている。更に、セルロースは元のベースポリマーが天然物のセルロースゆえに生分解性を持ち、他の合成ポリマーと環境面にやさしい基材として一線を画している。
【0005】
この廃棄後の生分解可能な特徴を生かし、透明性、印刷の良好性から光投影資料(いわゆるオーバーヘッドプロジェクター)の基材としての使用も提案されている(特開2001−205926号公報)。
【0006】
しかし、この水溶性ゆえに、その優れた生分解性、透明性が発揮されずに使用しにくく、又は使用できない分野がある。例えば、先に挙げた光投影資料用の透明フィルムは、通常ポリエチレンテレフタレートのような合成樹脂が使用されている。この分野で水溶性セルロースエーテルが未だ利用されていないのは、例えばお茶、コーヒーのような水滴を落とした場合、フィルム表面が溶解又は膨潤して印刷面が変形又は消失してしまうためである。インクジェット印刷用の光投影資料の表面は水溶性インキを吸収しなければならず、ポリビニルアルコールを合成樹脂フィルム上に塗布したフィルム基材が実際に使用されているため、先の水溶性セルロースエーテルフィルムも有用ではあるが、やはり耐水性の問題がつきまとう。
【0007】
更に、包装材料として使用後、溶解して消失させる用途においても、使用までは耐水性があることが望ましい。例えば、水溶性セルロースエーテルフィルムは、洗剤、農薬等を必要量だけ小分けして包装し、使用時に破袋して内容物を取り出し、包装はそのまま洗濯槽に入れたり農地に放置しても、水溶性、生分解性ゆえに支障はなく、かかる用途に有効に使用されるが、使用時に濡れた手で扱った場合、溶解して接着したり、雨中で急速に破袋するのは望ましくない。
【0008】
また、フィルムの用途として、開口部を透明フィルムで覆い、内容物の印刷が読める封筒があるが、最近のリサイクルの気運により、この封筒を回収し、再生紙として使用する場合、水に不溶な合成樹脂フィルムを使用した場合には、いちいち取り外さなければならず、手間がかかる。この場合も水溶性フィルムであれば分離する必要はなく、極めて簡便に使用できるが、配達時の耐水性が問題となる。
【0009】
従って、使用前には一時的に不溶化し、耐水性を持つが、使用後には極めて容易に水に溶解するフィルムが望まれる。
【0010】
水溶性セルロースエーテルフィルムに撥水性をもたせるための手段としては、上記米国特許第4,915,971号公報では、水溶性セルロースエーテルのフィルム上に油脂層を設けることが提案されている。また、油脂に代わって撥水性のオイル、例えば撥水性シリコーンオイルを塗布することも考えられるが、単に塗布してあるだけでは、輸送中、ハンドリング中に他のものと接触、こすれがあった場合、部分的な撥水剤の脱落が予想され、安定して使用するには困難がある。
よって、別の化学物質を水溶性セルロースエーテルと反応せしめることで、化学結合により安定して不溶化する技術が望まれ、以下種々の提案がなされてきた。
【0011】
この水溶性セルロースエーテルを不溶化する技術は、例えば、特開昭52−73988号公報に開示されているように、セルロースエーテルをクロロ蟻酸エステルと反応させる方法があるが、溶解時においてpHを12以上にする必要があり、このpHを使用できない場合は不適である。また、クロロ蟻酸エステルは猛毒性、腐食性を持つため、取り扱いが困難である。
【0012】
一方、ホルムアルデヒドとセルロースエーテルとを反応させて水不溶化させることも知られているが、アセタール結合により不溶化したセルロースエーテルは、水に分散させてももはや溶解することなく、実用的でない。
【0013】
最も一般的に使用されている水溶性セルロースエーテルの不溶化法は、グリオキサールを用いる方法である。これは、セルロースが持つ水酸基とグリオキサールとをヘミアセタール結合させて架橋反応させるもので、このグリオキサール処理をした水溶性セルロースエーテルは、その架橋密度にもよるが、中性からアルカリ性の領域で水と接触後緩やかにヘミアセタール結合がはずれ、再度水に溶解することができる。このグリオキサール処理技術は、具体的には米国特許第2,879,268号公報等に記載されている。
【0014】
しかし、上記グリオキサールは、いわゆる「変異原生物質」として指定されている(「変異原生が認められた化学物質の取り扱いについて」基・発第341号2、1994年6月6日)。変異原生物質とは遺伝子に損傷を与え、発現性等を損なう物質であり、その使用は好ましくない。
また、グリオキサールを使用しない一時的不溶化技術としては、シランとの反応が種々提案されている。例えば、特公昭51−2103号公報では、メトキシ基又はエトキシ基を反応基としたアミノシランやエポキシシランが開示されているが、ここで用いられるシラン類は価格が高い上に反応速度が遅く実用に適さない。
【0015】
【特許文献1】
米国特許第4,915,971号公報
【特許文献2】
米国特許第4,822,622号公報
【特許文献3】
特開昭52−70039号公報
【特許文献4】
特開昭52−108058号公報
【特許文献5】
特開2001−205926号公報
【特許文献6】
特開昭52−73988号公報
【特許文献7】
米国特許第2,879,268号公報
【特許文献8】
特公昭51−2103号公報
【特許文献9】
特公平6−39481号公報
【特許文献10】
特開平8−183801号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルムを一時的に不溶化して耐水性を持たせることにより、使用中は安易に取り扱うことができ、使用後は溶解、分解が可能な改質セルロースエーテルフィルムを提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、水溶性セルロースエーテルフィルムの製造過程においてその一面又は両面をシラン類にて処理することにより、一時的な不溶化を達成し、所望の改質セルロースエーテルフィルムを製造できることを知見し、本発明を完成させた。
【0018】
即ち、従来、水溶性セルロースエーテルを一般式Si(−R1)(−R2)(−R3)(−R4)(式中のR1は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R2、R3、R4は同一でも異なってもよいアルコキシ基又はアシルオキシ基を表す。)で表されるアルキルトリアルコキシシラン又はアルキルテトラアシルオキシシランで処理することが知られている(特公平6−39481号公報)。
【0019】
更に、特開平8−183801号公報には、同様に一般式Si(−R1)(−R2)(−R3)(−R4)(式中のR1、R2、R3及びR4はそれぞれ相互に独立して炭素数1又は2のアルコキシ基又はアシルオキシ基を表す。)で表されるシランで処理することが提案されており、先の特公平6−39481号公報で開示されるシラン類より効果が高いことが判っている。これらシラン処理した水溶性セルロースエーテルは、中性域の水には溶解しないが、若干の酸又はアルカリを加えることにより、容易にシランとセルロースエーテルの結合がはずれ、再び水溶性となる。
【0020】
しかし、これらのシラン類にて処理される方法は、粉状水溶性セルロースエーテルの未分散の塊状物発生を防止し、速やかに水に分散させることを目的としており、フィルムの不溶化には言及されていない。
【0021】
これに対し、本発明者は、水溶性セルロースエーテルのフィルムを製造する過程において、まず目的の水溶性セルロースエーテルを水等の溶剤に溶解させ、これをキャスト、乾燥することにより水溶性セルロースエーテルのフィルムを製造し、その片面又は両面の全部又は一部分にシラン類を塗布し、加熱することにより、一時的に水に不溶化した部分を持つ水溶性セルロースエーテルフィルムが得られることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0022】
なお、本発明において、「耐水化」、「水に不溶化」とは、pH6.5〜7.5で、25℃の水に10分間触れても溶解しない状態をいう。
【0023】
従って、本発明は、下記改質セルロースエーテルフィルムを提供する。
(1)水溶性セルロースエーテルフィルムをシランで処理することにより該処理面を一時的に耐水化してなることを特徴とする改質セルロースエーテルフィルム。
(2)シランが、下記一般式(1)で表されるシランであることを特徴とする(1)記載の改質セルロースエーテルフィルム。
SiR1R2R3R4 …(1)
(式中、R1は炭素数1又は2のアルキル基、アルコキシ基又はアシルオキシ基を表し、R2、R3、R4はそれぞれ相互に独立して炭素数1又は2のアルコキシ基又はアシルオキシ基を表す。)
(3)水溶性セルロースエーテルが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースであることを特徴とする(1)又は(2)記載の改質セルロースエーテルフィルム。
【0024】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の改質セルロースエーテルフィルムは、水溶性セルロースエーテルフィルムをシランで処理することにより、該処理面を一時的に耐水化してなるものである。
【0025】
ここで、本発明において、水溶性セルロースエーテルとしては、メチルセルロースのようなアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなヒドロキシアルキルアルキルセルロース、更にはカルボキシメチルセルロースが用いられる。
【0026】
これらの水溶性セルロースエーテルは、まず、水もしくは水に一部有機溶剤を含む混合溶媒に溶解せしめてフィルム基材溶液を調製する。なお、ここに使用される水溶性セルロースエーテルは不溶化されていても無意味であり、実質的に完全に溶解せしめることが必要である。
【0027】
この水溶性セルロースエーテル水溶液には、必要に応じて添加剤を添加することができる。例えば、カラーフィルムが必要な場合は、少量の顔料、特に透明性が必要な場合は、水溶性の顔料を添加することが可能である。
【0028】
また、不透明なフィルムが必要な場合、例えば、包装する内容物を見えなくしたり、光を遮る必要がある場合には、二酸化チタン粉末等を分散混合してもよい。
【0029】
更に、フィルムに柔らかさ、強度を増すために、グリセリン、ポリエチレングリコール、アセチン、トリアセチン、クエン酸トリエチル等を添加してもよい。
添加量は特に限定されるものではないが、水溶性セルロースエーテル100重量部に対し5〜30重量部が好ましい。
【0030】
この水溶性セルロースエーテル水溶液は、金属プレート、ガラス板、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の支持体にキャストされ、引き続き乾燥してフィルムとなる。この乾燥されたフィルムの片面又は両面に対し、部分的又は全面にシラン類を処理する。
【0031】
シラン類としては、水溶性セルロースエーテルの水酸基と反応する官能基を有し、かつ疎水性基を有するものであれば、いずれのものでもよいが、特には下記一般式(1)、
SiR1R2R3R4 …(1)
(式中、R1は炭素数1又は2のアルキル基、アルコキシ基又はアシルオキシ基を表し、R2、R3、R4はそれぞれ相互に独立して炭素数1又は2のアルコキシ基又はアシルオキシ基を表す。)
で表されるシラン類を塗布する。更に、加熱することにより、目的とする一時不溶化した水溶性セルロースエーテルフィルムが得られる。
【0032】
これらシラン類としては、例えばメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン類のうち、特に上記式(1)においてR1、R2、R3、R4がそれぞれ相互に独立して炭素数1又は2のアルコキシ基又はアシルオキシ基であるシラン類の効果が高く、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
水溶性セルロースエーテルフィルムを不溶化するメカニズムとしては、ここで用いられるシラン類が、水溶性セルロースエーテルと反応してセルロースエーテルの水酸基とシラン類のアルコキシ基やアシルオキシ基が結合して親水基が減少して水に不溶になると同時に、シランが疎水性であるゆえに撥水効果が同時に現れて水の付着を防ぐものである。
【0034】
シラン類の添加量は、特に限定されるものではないが、フィルム厚み10〜100μmのフィルムの両面を処理する場合には、セルロースのグルコースユニット(Mw=162g/mol)に対し0.001〜0.005g/molが好ましく、片面を処理する場合にはこの半分量が好ましい。
シラン類の水溶性セルロースエーテルフィルムへの塗布は、シラン類だけでも構わないが、少量の揮発性溶剤で希釈して行ってもよい。
【0035】
また、塗布方式はスプレー方式でも構わないし、フェルトに含浸させてフィルム上に接触させてもよい。更に、二枚の薄膜から毛細管現象で塗布液をしみ出させ、盛り上がった塗布液をフィルムに接触させて塗布することもできる。この方式として株式会社ヒラノテクシードのCAP Coaterが適する。
【0036】
また、アルコキシ基を持つシラン類には、少量の酸をシラン希釈液に添加することで反応速度が上がるので有利である。用いる酸としては、酢酸、グリコール酸が使用可能であり、シラン類と同量程度で十分効果がある。
【0037】
シラン類を塗布したフィルムは、特に限定されるものではないが、30〜150℃、好ましくは60〜120℃で30〜60分間保持し、シラン類と水溶性セルロースエーテルとの反応を完結することが好ましい。
【0038】
本発明の一時不溶化セルロースエーテルフィルムの製造法は、特に限定されるものではないが、水溶性セルロースエーテルを乾燥フィルム化した後、まだ乾燥後の暖かいうちにシラン類又はシラン希釈液を塗布し、乾燥時の熱を利用して更に加熱することによりエネルギーロスが少なく製造することができる。よって、連続フィルムキャスティング工程、乾燥工程1、シラン塗布工程、乾燥工程2と直列に配置され、連続的にフィルムを生産することが、生産性、コストの面から望ましい。
【0039】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ60SH−50、信越化学工業社製、グルコース単位当たり分子量203g/mol)の10重量%水溶液を調製した。
フィルム成形はテーブルコーター(株式会社ヒラノテクシード製)を用い、先の10重量%水溶液をA3板ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに落とし、1,000μm厚でキャストした。続いて、同じテーブルコーターにて80℃で30分間乾燥し、PETフィルムから剥離させ、膜厚60μmの透明フィルムを得た。密度は1.2g/mlであり、B4版の面積(=936cm2)に相当する水溶性セルロースエーテルの重量は6.74gであった。以下、PET基材と接触していた面を裏面、接触していない面を表面と称する。
【0041】
テトラメトキシシラン(KBM−04、信越化学工業社製、Mw=152g/mol)と酢酸をそれぞれ10重量%になるようイソプロピルアルコールに溶解し、この混合液をフェルトに含浸させてシランのアプリケーターとした。
上記調製した透明フィルムをPETフィルムから剥離しないまま、B4版相当の大きさに印をつけ、シラン・酢酸・IPA混合液を0.126gのみ塗布し、続いて80℃で30分間再度加熱した。以下、シランを塗布、反応させた面を処理面、もう一方の面を未処理面と称する。膜厚、密度は下記比較例1と変わらなかった。
【0042】
[比較例1]
実施例1と同様にヒドロキシプロピルメチルセルロースのフィルムを調製したが、シランの塗布及び再乾燥を行わず、比較用試料とした。フィルムの厚み、密度は実施例1と同じであった。
【0043】
<評価方法>
上記セルロースエーテルフィルムの耐水性、溶解性を以下の方法で評価した。
比較例、実施例で調製したフィルムを16mmφに切り抜き、温度40℃、湿度75%RHにて7日間保存した。試料フィルムをガスケットで上下挟み込み、2ヶの内径12mmφのガラス円筒で更に挟み込んだ。これを垂直に立て、上部に25℃の5mlのpH調整した水を入れ、破膜するまでの時間を測定した。なお、測定値は3回測定し、平均値を採用した。また30分を経過しても破膜しないものは30分以上とした。
実施例、比較例の各面について破膜時間を測定した結果を以下に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
本発明の改質セルロースエーテルフィルムは、水溶性セルロースエーテルをシラン類にて処理することにより、該フィルムの耐水性を向上させることができ、水のpHを調整することにより、速やかに溶解、分解処理することができる。また、フィルムの片面だけをシラン類にて処理、一時不溶化することにより、片面は耐水性が発揮され、未処理面を水に接触させることにより中性の水でも容易に当該セルロースエーテルフィルムを溶解、分解処理することが可能である。
Claims (3)
- 水溶性セルロースエーテルフィルムをシランで処理することにより、該処理面を一時的に耐水化してなることを特徴とする改質セルロースエーテルフィルム。
- シランが、下記一般式(1)で表されるシランであることを特徴とする請求項1記載の改質セルロースエーテルフィルム。
SiR1R2R3R4 …(1)
(式中、R1は炭素数1又は2のアルキル基、アルコキシ基又はアシルオキシ基を表し、R2、R3、R4はそれぞれ相互に独立して炭素数1又は2のアルコキシ基又はアシルオキシ基を表す。) - 水溶性セルロースエーテルが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースであることを特徴とする請求項1又は2記載の改質セルロースエーテルフィルム。
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