JP2004154929A - 放電加工用電極材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、又は希土類元素、若しくはその酸化物などを含むCu−W合金からなり、従来よりも更に電極の消耗が少なく且つ加工速度の速い放電加工用電極材料を提供する。
【解決手段】 NaやKなどのアルカリ金属元素、CaやSrなどのアルカリ土類金属元素、又はLaやThなどの希土類元素、若しくはその酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物の少なくとも1種を含み、W濃度が40重量%以上のCu−W合金からなる放電加工用電極材料であって、その合金を硝酸液で腐食した後のWスケルトンのビッカース硬度が22以上であるか、又は上記Cu−W合金中の全W粒子の60%以上が粒径1μm以下である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、主として型彫り放電加工に用いられる加工電極として好適な放電加工用電極材料に関する。
放電加工においては、被加工物の加工速度が速いこと、及び加工電極自体の消耗が少ないことが望まれてきた。この様な要望を満たすために、従来から様々な放電加工用電極材料が開発されてきたが、その中でもCu−W合金及びAg−W合金は、Wの高い融点や沸点、Cu又はAgの高い熱伝導性と電気伝導性を活かして、消耗が少なく、精密加工や仕上げ加工に適した電極材料として、特に精密加工用途や超硬型の放電加工用途に適した放電加工用電極材料として使用されてきた。
かかるCu−W合金及びAg−W合金からなる放電加工用電極材料の製造方法の一つとして、W粉末を主成分とする粉末を電極形状に型押しした後、この型押し体中に最終合金組成となるようにCu又はAgを溶融浸透させる溶浸法がある。また、別の製造方法として、W粉末とCu又はAg粉末を最終合金組成に配合した後、電極形状に型押しし、焼結して作製する焼結法がある。
これらのCu−W合金又はAg−W合金からなる放電加工用電極材料については、実際の放電加工現場において能率アップの要求が強いことから、電極の消耗を少なくすることと共に、更に加工速度を上げて放電加工特性を向上させることが検討されている。
例えば、特開昭63−195242号公報や特開昭50−109595号公報に記載されるように、これらのCu−W合金又はAg−W合金中にNaやKなどのアルカリ金属元素、SrやCaなどのアルカリ土類金属元素、Laなどの希土類元素又はこれらの酸化物などを添加することにより、合金の仕事関数を小さくし、加工速度を向上させた電極材料が開発されている。
特開昭63−195242号公報 特開昭50−109595号公報
上記したアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、又はその酸化物などを含む放電加工用電極材料は、確かにその仕事関数が低く、加工速度の向上などに改善がみられる。しかしながら、電極に対する耐消耗性や加工速度の向上のニーズが更に強まっている現状では、電極の消耗がより一層少なく且つ加工速度が更に向上した電極材料の開発が望まれている。
本発明は、このような従来の事情に鑑み、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、又は希土類元素、若しくはその酸化物などを含むCu−W合金からなる放電加工用電極材料であって、従来よりも更に電極の消耗が少なく且つ加工速度が向上した放電加工用電極材料を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明が提供する第1の放電加工用電極材料は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種を含み、W濃度が40重量%以上のCu−W合金からなり、該合金を硝酸液で腐食した後のWスケルトンの硬度がビッカース硬度で22以上であることを特徴とするものである。
また、上記本発明の第1の放電加工用電極材料においては、前記合金中の全W粒子の20%以上が粒径1μm以下であることが好ましく、全W粒子の60%以上が粒径1μm以下であることが更に好ましい。
本発明が提供する第2の放電加工用電極材料は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種を含み、W濃度が40重量%以上のCu−W合金からなり、該合金中の全W粒子の60%以上が粒径1μm以下であることを特徴とする。
上記本発明の第1及び第2の放電加工用電極材においては、前記アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種からなる粒子であって、その粒径が7μm以下の粒子を合金全体の0.2重量%以上含むことが好ましい。
また、上記本発明の第1及び第2の放電加工用電極材においては、前記アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種からなる粒子の平均粒子間距離が20μm以下であることが好ましい。
上記本発明の第1及び第2の放電加工用電極材においては、前記アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種からなる粒子が、Cu中に存在することが好ましい。また、前記アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種の含有量が合金全体の10重量%以下であることが好ましい。
尚、本発明においては、W粒子の粒径の測定は下記の方法によって行う。合金の任意の断面を走査電子顕微鏡観察により1500倍で写真撮影し、これをコピー機にて4倍に拡大複写する。この拡大した写真内に長さ20cmの線分を任意に引き、この線分と交差したW粒子について、その交差した長さを測定してW粒子の粒径とする。また、粒径1μm以下のW粒子の割合は、上記の作業を測定数が所定の数、例えば300個になるまで繰り返し、その300個の粒子中に含まれる粒径1μm以下のW粒子の百分率をもって表すものとする。
また、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物の粒径及び粒子間距離の測定方法は以下のとおりである。即ち、合金の任意の断面について走査電子顕微鏡による面分析を1000倍で行い、上記元素や化合物の存在を示す白い斑点が凝集した部分の直径を測定する。分析設備能力上の理由により、粒子は実際には測定した直径よりも小さい場合が多いと考えられるが、本発明では上記により測定した粒子の直径をもって粒径とする。粒子が楕円形の場合は長軸を測定する。この粒径の測定を任意の粒子500個について行い、粒径の分布を求める。また、粒子間距離は、任意の粒子から最も近い粒子までの粒子中心間距離を測定し、任意の500個粒子の平均をもって平均粒子間距離とする。
本発明によれば、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物を含むCu−W合金からなる放電加工用電極材料であって、従来よりも更に電極の消耗が少なく、且つ加工速度の速い放電加工用電極材料を提供することができる。
本発明者らは、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種を含むCu−W合金からなる放電加工用電極材料について検討を重ねた結果、放電加工に伴う電極の消耗を更に抑え、且つ加工速度を向上させるためには、上記Cu−W合金中のW粒子が互いに強固に接合していることが有効であることを見出した。
このW粒子が強固に接合されている度合いは、Cu−W合金を硝酸液に浸漬してCuを腐食し、得られたWスケルトンの硬度を測定することにより評価することができる。即ち、本発明による第1の放電加工用電極材料は、上記Wスケルトンの硬度がビッカース硬度で22以上であることを特徴とする。上記Wスケルトンの硬度として、ビッカース硬度が22以上であるとき、W粒子が相互に強固に接合されているため、電極の耐消耗性と加工速度が改善向上する。このWスケルトンのビッカース硬度は高いほど放電加工特性にとって好ましく、22未満ではその改善効果が小さい。
本発明のアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種を含むCu−W合金からなる放電加工用電極材料では、上記のごとくW粒子同士の接合強度を高めることによって、W粉末の種類(粒度分布など)によらず、安定した放電加工特性を得ることができるので、電極製品の品質管理上や原料粉末管理上の利点が大きい。
また、上記したようにW粒子同士の接合強度を高めることに加えて、W粒子の粒径を細かくするほど、電極の耐消耗性と加工速度の改善効果が増すことが分った。Cu−W合金中のW粒子の粒径が小さい場合には、放電現象が加工面において均一に起こるので電極の消耗が少なくなり、また電極の消耗に消費されるエネルギーが小さくなるため、その分だけ加工速度も速くなるものと考えられる。
また、本発明のCu−W合金は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種が添加されているので、これらの添加元素や添加化合物を含まない場合に比べて、少ない割合の微細なW粒子を配合しただけで、優れた電極の耐消耗性と加工速度を得ることができる。同時にまた、W粒子同士の固着が強固なため、固着が弱い場合に比べて、少ない割合の微細なW粒子を配合しただけで、優れた電極の耐消耗性と加工速度を得ることができる。
このような理由から、本発明の第1の放電加工用電極材料において、より一層望ましい電極の耐消耗性及び加工速度の向上を得るためには、Cu−W合金中における微細なW粒子の割合として、粒径が1μm以下のW粒子が全W粒子の20%以上であることが好ましく、60%であることが更に好ましい。
また、本発明者らは検討を重ねた結果、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種を含むCu−W合金からなる放電加工用電極材料は、Cu−W合金中のW粒子が微粒を多く含むことにより、放電加工に伴う電極の消耗が抑えられ、加工速度が向上することを見出した。
即ち、本発明による第2の放電加工用電極材料は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種を含むCu−W合金からなり、そのCu−W合金中の全W粒子の60%以上が粒径1μm以下の微細なW粒子であることを特徴とするものである。尚、第2の放電加工用電極材料においては、上述の第1の放電加工用電極材料の場合のようにW粒子同士の接合強度を高める必要はない。
Cu−W合金中の粒径1μm以下の微細なW粒子の割合を60%以上とすることにより、電極の耐消耗性が一層改善されると同時に、放電加工特性についても十分な改善向上が得られる。尚、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物を含むCu−W合金からなる放電加工用電極材料においては、粒径1μm以下の微細なW粒子の割合が20〜30%程度では、若干の性能の向上は認められても、十分な改善効果は得られない。
本発明の第1及び第2の放電加工用電極材料におけるW−Cu合金は、基本的には40重量%以上、多くの場合は60重量%以上のWと、Cuとからなり、更にアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種を含んでいる。特に型彫り放電加工用の電極材料では、放電加工特性及び製造し易さなどを考えると、W濃度が60〜80重量%であることが望ましい。尚、このW−Cu合金には、上記以外に不可避的不純物も含まれている。
W−Cu合金に添加される必須の添加元素に関しては、アルカリ金属元素としてはNaやKなどがあり、アルカリ土類金属元素としてはCa、Sr、Baなどがあり、希土類元素としてはLaやThなどがある。これらの添加元素及びその酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた添加化合物の添加量は、合金全体の10重量%を超えると放電加工用電極自体の機械加工性が低下するため10重量%以下が好ましく、0.05〜10重量%の範囲が更に好ましい。尚、これらの添加元素及び添加化合物を含め、合金中に含まれる添加元素及び添加化合物は、合計で15重量%以下とすることが望ましい。また、一般に電気陰性度が小さい元素の方が添加の効果は高く、例えばアルカリ土類金属元素では、Ba以上の原子量のものが特に有効である。
また、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種からなる粒子は、W粒子中にあるよりも、Cu中に存在することによって、その効果が一層発揮される。例えば、Ce、Baなどの酸化物は、これらの元素とWとの複合酸化物となっている状態よりも、これらの酸化物がCu中に存在することによって、電極の耐消耗性や放電加工特性がより一層改善されることが分った。尚、これらの添加元素や添加化合物の粒子をCu中に存在させるためには、原料粉末として、これらの元素とWとの化合物粉末を使用せず、これらの元素粉末又は化合物粉末を用いることが好ましい。
一般に、W−Cu合金の原料粉末にアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素あるいはその化合物などを添加する場合には、これらの元素が焼結性を阻害するため、Niのような焼結促進効果のある元素を0.05〜5重量%程度添加する必要があった。ところが、本発明のCu−W合金においては、高温で焼結するなどの手法によりW粒子同士の接合強度を高めるため、又は微細なW粒子の割合が多く焼結性が向上するため、Niを必ずしも添加する必要がないだけでなく、かえってNiを添加せず、不可避不純物として以外はNiを含まないことが望ましい。
また、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、若しくはその酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物を含むCu−W合金からなる放電加工用電極では、巣が発生しやすいという問題があるが、これらの元素や化合物の濃度が低ければ、発生する巣の大きさや数量を小さく抑えることができる。しかし、上記元素や化合物の濃度を低くすれば、巣の発生を抑制することができる反面、電極の耐消耗性と加工速度が低下する傾向にある。ところが、本発明によれば、Wスケルトンの硬度をビッカース硬度で22以上とすることにより、巣の発生を最小限に抑えた状態で、同時に電極の耐消耗性と加工速度の優れた放電加工用電極材料を得ることができる。
上述した本発明による第1及び第2の放電加工用電極材料においては、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種からなる粒子の大きさ、及びその粒子間距離を制御することが好ましい。即ち、上記粒子のうち粒径が7μm以下の粒子が合金全体の0.2重量%以上含まれること、上記粒子の平均粒子間距離が20μm以下であること、あるいはその両方であることが好ましい。
アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種からなる粒子の大きさについては、その粒径が7μm以下の粒子を合金全体の0.2重量%以上含むことにより、放電加工中のアークが安定し、加工速度が高くなると共に、電極の耐消耗性が更に向上する。この粒径が7μm以下の小さい粒子は多く含まれるほど良く、合金全体の0.4重量%が望ましく、0.6重量%以上が更に望ましく、1重量%以上が最も望ましい。また同様に、上記粒子の大きさ自体も小さい方が望ましく、粒径が5μm以下の粒子を合金全体の0.2重量%以上含むことが好ましく、粒径が3μm以下の粒子を同じくの0.2重量%以上含むことが更に好ましい。
また、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種からなる粒子の平均粒子間距離についても、20μm以下に制御することによって、放電加工中のアークが安定し、加工速度が高くなると共に、電極の耐消耗性が更に向上する。この平均粒子間距離は小さいほど効果が大きく、12μm以下が望ましく、10μm以下が更に望ましい。
上記した添加元素や添加化合物の粒径及び平均粒子間距離を小さくする方法としては、原料となるこれらの粉末として、小さな粒径をもつ原料粉末を用いる方法が簡単であるが、更に微細均一な粒子の分散状態を得る方法としてメカニカルアロイング法がある。即ち、アトライターやボールミルなどにより、W粉末及びCu粉末と共に、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種からなる元素及び/又は化合物の粉末を、メカニカルアロイング処理することにより、これらの元素や化合物の粒子を合金中に均一且つ微細に分散させることができる。尚、メカニカルアロイング法は、少量のアルコールなどの溶剤を含む湿式でも、溶剤を含まない乾式でも行うことができるが、乾式での処理の方がより有効である。
本発明のCu−W合金からなる放電加工用電極材料の製造は、通常の焼結法又は溶浸法による。ただし、焼結法及び溶浸法のいずれにおいても、第1の放電加工用電極材料の製造においてWスケルトン硬度の高いCu−W合金を得る場合には、例えば焼結を通常よりも高い温度で行い、W粒子同士の接合状態をより強固にする必要がある。
具体的には、焼結法では、粒径1μm以下の粒子が20%以上となるような粒度分布のW粉末、例えば粒径1μm以下の粒子を23重量%以上含むW粉末に、Cu粉末と、粒径1〜1.5μmのアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた元素及び/又は化合物の粉末を混合して、例えばW−30重量%Cuなどの所望の最終合金組成に調整する。この混合粉末を所望の形状に型押しした後、Cuの融点以上、好ましくは1350℃以上、更に好ましくは1410℃以上の温度にて、水素雰囲気中で加熱して焼結する。
また、溶浸法による場合には、上記W粉末をそのまま、又は上記W粉末に例えば2〜3重量%程度のCu粉末と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた元素及び/又は化合物の粉末を混合した後、所望の形状に型押しする。次に、この型押し体内に、W−30重量%Cuなどの最終合金組成となるようにCuなどを溶浸するが、その際にCuの融点以上、好ましくは1350℃以上、更に好ましくは1410℃以上の温度にて溶浸する。尚、具体的なCuの溶浸については、型押し体をCuの溶融液体中に浸漬する方法、型押し体とCuを接触させた状態で、Cuの融点以上の温度に加熱する方法などがある。
一方、第2の放電加工用電極材料の製造においては、焼結法では、粒径1μm以下の粒子が60%以上となるような粒度分布のW粉末、例えば粒径1μm以下の粒子を60重量%以上含むW粉末に、Cu粉末と、粒径1〜1.5μmのアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた元素及び/又は化合物の粉末を混合して、例えばW−30重量%Cuなどの所望の最終合金組成に調整する。この混合粉末を所望の形状に型押しした後、Cuの融点以上の温度にて水素雰囲気中で加熱して焼結する。
また、溶浸法の場合には、粒径1μm以下の粒子が60%以上となるような粒度分布のW粉末をそのまま、又はそのW粉末に例えば2〜3重量%程度のCu粉末と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた元素及び/又は化合物の粉末を混合した後、所望の形状に型押しする。次に、この型押し体内に、例えばW−30重量%Cuなどの最終合金組成となるように、Cuなどを溶浸させる。具体的なCuの溶浸については、型押し体をCuの溶融液体中に浸漬する方法、型押し体とCuを接触させた状態で、Cuの融点以上の温度に加熱する方法などがある。
尚、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種を含むCu−W合金からなる放電加工用電極材料の場合、上記した焼結温度を高めるなどの手法によりCu−W合金中のW粒子を互いに強固に接合する第1の放電加工用電極材料によらなくても、第2の放電加工用電極材料では上記のごとく合金中の全W粒子の60%以上を粒径1μm以下に調整するだけで、電極の耐消耗性及び加工速度の向上を達成できる。従って、焼結を特別に高い温度で行う必要がなく、経済的にも有利である。
[実施例1]
0.5〜5.3μmの粒度分布を持つW粉末と、Cu粉末、CaO粉末、Y粉末を原料とし、W−2重量%Cu−(CaO、Y)組成に配合して、アトライターで混合した後、この混合粉末を電極形状に型押しした。得られた型押し体に、純Cu粉末を型押しした材料を接触させ、水素雰囲気中にて1410℃で加熱焼結すると同時にCuを溶浸させることにより、最終合金組成がW−30重量%Cu−0.8重量%CaO−0.8重量%Yである本発明の電極材料(試料a−1)を作製した。
また、原料のW粉末の粒度分布を変えることにより、粒径1μm以下のW粒子の割合を増やした以外は上記試料Aと同様にして、最終合金組成がW−30重量%Cu−0.8重量%CaO−0.8重量%Yである本発明による電極材料(試料a−2、a−3)をそれぞれ作製した。
更に、比較例として、上記試料Bと同じ粒度分布のW粉末を用い、焼結時の温度を通常の1230℃とした以外は上記試料Bの場合と同様にして、最終合金組成がW−30重量%Cu−0.8重量%CaO−0.8重量%Yである電極材料(試料a−4)を作製した。
得られた本発明の試料a−1〜a−3及び比較例の試料a−4の各電極材料について、それぞれ粒径1μm以下のW粒子量を求めると共に、濃度30%の硝酸液に浸漬してW以外の部分を除去し、残ったWスケルトンの硬度(ビッカース硬度Hv)を測定し、その結果を下記表1に示した。
更に、上記試料a−1〜a−4の各電極材料から電極面が15×15mmの加工電極を作製し、この電極面が15×5mmだけ超硬合金(硬さ88.5HRA)の被加工材にかかるように対向させて、ピーク電流(Ip)=135A、加工電圧(V)=80V、パルス幅(ON)=8.7μsec、休止時間(OFF)=128μsecの条件で、4mmの加工深さまで放電加工を行った。この放電加工時における電極消耗量と加工速度を求め、得られた結果を下記表1に併せて示した。
Figure 2004154929
上記の結果から分るように、本発明の試料a−1〜a−3の各電極材料は、比較例の試料a−4の電極材料に比べて、同じW−30重量%Cu−0.8重量%CaO−0.8重量%Y組成であっても、Wスケルトン硬度が22Hv以上と高いため、電極の消耗が少なく且つ加工速度が優れている。また、本発明の試料a−1〜a−3の各電極材料では、Wスケルトン硬度が同じであっても、合金中の1μm以下のW粒子割合が多いほど、電極の耐消耗性及び加工速度が向上することが分る。
[実施例2]
0.5〜3.7μmの粒度分布を持つW粉末と、Cu粉末、CaO粉末、Y粉末を原料とし、W−2重量%Cu−(CaO、Y)組成に配合して、アトライターで混合した後、この混合粉末を電極形状に型押しした。得られた型押し体に、純Cu粉末を型押しした材料を接触させ、水素雰囲気中にて1250℃で加熱焼結すると同時にCuを溶浸させることにより、最終合金組成がW−30重量%Cu−0.8重量%CaO−0.8重量%Yである本発明の電極材料(試料b−1)を作製した。
比較例として、中間的な粒度分布のW粉末を用いた以外は上記試料b−1の場合と同様にして、最終合金組成が同じくW−30重量%Cu−0.8重量%CaO−0.8重量%Yである電極材料(試料b−2)を作製した。得られた本発明の試料b−1及び比較例の試料−2の各電極材料について、それぞれ粒径1μm以下のW粒子量を求め、その結果を下記表2に示した。尚、参考のために、試料b−1及び試料b−2の電極材料のスケルトン硬度を実施例1と同様に測定したところ、いずれも17Hvであった。
上記試料b−1及び試料b−2の各電極材料から電極面が15×15mmの加工電極を作製し、この電極面が15×5mmだけ超硬合金(硬さ88.5HRA)の被加工材にかかるように対向させて、ピーク電流(Ip)=135A、加工電圧(V)=80V、パルス幅(ON)=8.7μsec、休止時間(OFF)=128μsecの条件で、4mmの加工深さまで放電加工を行った。この放電加工時における電極消耗量と加工速度を求め、得られた結果を下記表2に併せて示した。
Figure 2004154929
上記の結果から分るように、本発明の試料b−1の電極材料は、比較例の試料b−2の電極材料に比べて、組成が同じW−30重量%Cu−0.8重量%CaO−0.8重量%Yであっても、粒径1μm以下のW粒子の量が60%以上となっているため、電極の消耗が少なく、同時に加工速度が優れている。
[実施例3]
上記実施例1の試料a−1において、凝集した2次粒子の平均粒径が1μmのCaO粉末を用いた以外は実施例1と同様にして、最終合金組成がW−30重量%Cu−0.8重量%CaO−0.8重量%Yである本発明の電極材料(試料a−5)を作製した。尚、この試料a−5の電極材料のスケルトン硬度は、実施例1と同様に測定したところ、25Hvであった。
同様に上記実施例1の試料a−5において、CaO粉末の代りに平均粒径1μmのBaO粉末を用い、アトライターでの混合条件を変化させた以外は実施例1と同様にして、最終合金組成がW−25重量%Cu−1.3重量%BaO−0.8重量%Yである本発明の電極材料(試料a−6〜a−10)を作製した。尚、得られた試料a−6〜a−10の電極材料のスケルトン硬度は、実施例1と同様に測定したところ、いずれも25Hvであった。
また、同様にして平均粒径が小さいBaO粉末を用いて本発明の電極材料(試料a−11〜a−12)を作製した。更に、上記試料a−11において、BaO粉末の代りにSrO粉末を用いた以外は同様にして、本発明の電極材料(試料a−13)を作製した。尚、得られた試料a−11〜a−13の電極材料のスケルトン硬度は、実施例1と同様に測定したところ、いずれも25Hvであった。
これらの試料a−5〜a−13の各電極材料について、粒径7μm以下のCaO粒子、BaO粒子、SrO粒子の含有量(重量%)を求めると共に、実施例1と同様にして電極の耐消耗性及び加工速度を測定し、得られた結果を下記表3に示した。尚、下記表3には、実施例1の試料a−1の電極材料についても、参考のために、粒径7μm以下のCaO粒子の含有量と、電極の耐消耗性及び加工速度を併記した。
尚、試料a−11〜a−13は他の試料よりも平均粒径の小さいBaO粉末又はSrO粉末を使用したので、合金中の各粒子の粒径も小さいものが得られた。そのため、これらの試料では、粒径7μmよりも更に小さい粒子の含有量を基準にして評価したところ、試料a−11とa−12では粒径4.5μmのBaO粒子が0.62重量%含まれ、試料a−13では粒径2.8μmのSrO粒子が0.62重量%含まれていた。
Figure 2004154929
上記の結果から、本発明の試料a−5〜a−13の電極材料においては、CaOとBaOとSrO以外は同じ合金組成であっても、合金中に含まれる粒径7μm以下のCaO粒子、BaO粒子、SrO粒子の含有量(重量%)が多くなるほど、電極の耐消耗性及び加工速度が向上していることが分る。
[実施例4]
上記実施例2の試料b−1において、凝集した2次粒子の平均粒径が1μmのCaO粉末を用いた以外は実施例2と同様にして、最終合金組成がW−30重量%Cu−0.8重量%CaO−0.8重量%Yである電極材料(試料b−3)を作製した。
同様に上記実施例2の試料b−1において、CaO粉末の代りに平均粒径1μmのBaO粉末を用い、アトライターでの混合条件を変化させた以外は実施例2と同様にして、最終合金組成がW−25重量%Cu−1.3重量%BaO−0.8重量%Yである電極材料(試料b−4〜b−9)を作製した。
これらの試料b−3〜b−9の各電極材料について、CaO粒子又はBaO粒子の平均粒子間距離を求めると共に、実施例2と同様にして電極の耐消耗性及び加工速度を測定し、得られた結果を下記表4に示した。尚、下記表4には、実施例2の試料b−1の電極材料についても、参考のために、CaO粒子の平均粒子間距離、電極の耐消耗性及び加工速度を併記した。
Figure 2004154929
上記の結果から、CaOとBaO以外は同じ合金組成であっても、合金中に含まれるCaO粒子又はBaO粒子の平均粒子間距離が小さくなるほど、電極の耐消耗性及び加工速度が向上していることが分る。

Claims (8)

  1. アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種を含み、W濃度が40重量%以上のCu−W合金からなり、該合金を硝酸液で腐食した後のWスケルトンの硬度がビッカース硬度で22以上であることを特徴とする放電加工用電極材料。
  2. 前記合金中の全W粒子の20%以上が粒径1μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の放電加工用電極材料。
  3. 前記合金中の全W粒子の60%以上が粒径1μm以下であることを特徴とする、請求項2に記載の放電加工用電極材料。
  4. アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種を含み、W濃度が40重量%以上のCu−W合金からなり、該合金中の全W粒子の60%以上が粒径1μm以下であることを特徴とする放電加工用電極材料。
  5. 前記アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種からなる粒子であって、その粒径が7μm以下の粒子を合金全体の0.2重量%以上含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の放電加工用電極材料。
  6. 前記アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種からなる粒子の平均粒子間距離が20μm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の放電加工用電極材料。
  7. 前記アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種からなる粒子が、Cu中に存在することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の放電加工用電極材料。
  8. 前記アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及びこれらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物から選ばれた少なくとも1種の含有量が合金全体の10重量%以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の放電加工用電極材料。
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