JP2004154862A - 金属缶の開口カール部成形方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】折り畳み部分21B(及び21C)をフランジ加工する際には、円盤状のスピニングダイを使用して、スピニングダイの外縁加工面を缶の開口部に内側から略線接触させた状態で押圧させて、円周方向に沿って一部分ずつ順次にフランジ加工し、また、フランジ加工された折り畳み部分21B(及び21C)を更に折り畳み加工する際には、環状のインターナルローラーを使用して、インターナルローラーの内縁加工面を缶の開口部に外側から略線接触させた状態で押圧させて、円周方向に沿って一部分ずつ順次に折り畳み加工する。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属缶の開口部に外巻きのカール部を成形するための方法に関し、特に、缶の開口部の切断端部から所定の長さの部分を外側に二重以上に折り畳んでから、フランジ加工と折り畳み加工とにより切断端部を巻き込むように外巻きのカール部を成形するような金属缶の開口カール部成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲料缶詰の缶容器として、キャップによりリシール(再密閉)が可能なボトル型の金属缶が、近年、ビール,炭酸飲料,お茶等のような様々な飲料の缶詰において数多く使用されており、そのようなボトル型缶では、周壁にネジが形成された口頸部の上端開口縁が外巻きのカール部が形成されているが、この開口カール部については、飲料を充填した後で、キャップを装着して密封する際に、上方からの大きな押圧力をカール部が受けることから、これに耐え得る強度を有することが必要であり、また、飲料を充填・密封した後の製品(飲料缶詰)として、カートンケース内に収容された輸送・保管時に落下衝撃を受けたり、店頭陳列時に落下衝撃を受けたりしても、容易に変形しないような耐変形性が必要があって、カール部に変形が起きると、キャップのシール材とカール部との間での密封性を良好に維持できないこととなる。
【0003】
一方、一般的に陽圧缶として使用されるボトル型缶に対して装着するキャップの上部には、開栓時のガス抜きの目的でベントスリットと呼ばれる小孔が円周方向に多数設けられており(ベントスリットを設けないと、開栓時にキャップと口頸部の間にガス圧が生じることでキャップが飛ばされることがある)、缶の内部はキャップの頂板裏面に取り付けられたシール材により密封されているが、そのようにキャップにベントスリットを設けることにより、キャップの装着後も口頸部とキャップの間に空気中の湿気や水が入り込んだり、或いは、金属缶の冷却や外気温の急激な変化により空気中の水分が結露したりすることで、たとえ両面が樹脂被膜で被覆された金属板から缶体が製造されていても、口頸部上端のカール部の切断端部(金属板が露出した切断端面)では、付着した水分により腐食が発生するような虞がある。
【0004】
そのようなカール部の切断端部での水分による腐食について、アルミ缶の場合にはそれ程の問題はないが、スチール缶の場合には、カール部の切断端部から錆が発生して商品価値を著しく低下させる虞があることから、カール部の切断端部に水分を付着させないようにすることが必要である。そのためには、カール部の切断端部(金属板が露出した切断端面)に対して、溶液の塗料や溶融させた熱可塑性樹脂などで塗膜処理を施すという方法も考えられるが、そのような塗膜処理をカール部の切断端部に対して施す場合には、塗料の飛び散りや樹脂の糸引きというような問題を生じ易く、これを回避するためには新たな装置や新規技術の開発が必要となる。
【0005】
これに対して、缶の開口部に外巻きのカール部を形成する場合に、切断端部をカール部の内部に巻き込んで閉じ込めるようにカール部を形成するということが、例えば、特公昭56−14051号公報、実開昭56−24431号公報(第6図参照)、実開昭61−51314号公報(第6図参照)、実開昭62−22945号公報等により従来から公知となっており、そのようなカール部の構造によれば、カール部の切断端部に外部からの水分が付着するのを防止することができるため、スチール缶におけるカール部の切断端部の耐錆性という点では効果的である。
【0006】
なお、アルミ缶の場合には、スチール缶のようにカール部の切断端部から錆が発生して商品価値を著しく低下させるような虞はないが、スチール缶かアルミ缶かに拘わらず、樹脂被覆金属板から製造される缶体では、何れにしても、製造工程中で缶体の開口部側の端部を切断する際に、金属板に被覆された樹脂被膜の一部が切断端部で毛羽立って剥がれたような状態となることがあり、端部が切断された開口部に形成するカール部が外巻きであると、毛羽立って剥がれた樹脂がカール部の下端で外側から見えて缶の外観が悪いものとなる虞があることから、外巻きのカール部では、切断端部をカール部の内部に巻き込むように形成することが好ましい。このことは、絞りしごき加工方法により成形した缶体の内外面に塗装を施した後に、その開口部側を大きく縮径加工してから開口端部をトリミング加工する工程を経て製造されたボトル型缶にも言えることである。
【0007】
しかしながら、そのように形成された従来公知のカール部の構造を見ると、例えば、特公昭56−14051号公報や、実開昭56−24431号公報(第6図参照)に開示されたような構造では、カール部が上方からの大きな押圧力を受けたり、落下衝撃を受けたような時に、強度的に充分な耐変形性を有するものとは思われず、カール部が変形してキャップ(シール材)との間での密封性が悪化する虞があり、一方、例えば、実開昭61−51314号公報(第6図参照)や、実開昭62−22945号公報に開示されたような構造では、樹脂製の筒状体を口頸部に嵌挿した後で、口頸部の上端部分を二重に巻き込むようにカール成形していることから、強度的には優れていると思われるが、樹脂製の筒状体に対してカールが常に強く押し付けられていないと、カール部がスプリングバック(カール成形による巻きが少し元に戻るように弛む)する虞があって、スプリングバックによりカール部の形状や寸法が一定しないことで、キャップ(シール材)との間での密封性にバラツキが生じる虞がある。
【0008】
そこで、そのような問題を解消するために、缶の開口部に外巻きのカール部が形成された金属缶について、少なくとも缶の開口部付近を形成する金属板の内外両面を樹脂被膜により被覆しておくと共に、上端の切断端部をカール部の内部に巻き込んで閉じ込めるように傾斜面の上方に形成されるカール部を、その下端部を傾斜面と接触させるように、幅方向で押し潰された状態とすることにより、カール部の上下両端付近を除く大部分では、金属板同士が樹脂被膜を介して互いに略当接するように幅方向で重なった(具体的には、四重に重なった)状態として、カール部の上部付近では、カール部の頂部に向かって先細りの状態にする、ということが本出願に先だって本出願人により既に提案されている(特願2002−127869号)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、缶の開口部に外巻きのカール部に成形する場合、例えば、固定された缶の開口部に対して、下端に円周方向の加工面を持つ円盤状のヘッドで上方から押圧したり、或いは、ロールヘッドに回転自在に支持された複数の加工ロールを開口部に接触させて、ロールヘッドを回転させながら上方から押圧したりすることにより、開口部の切断端部付近が未だ円筒状の缶に対して、先ず、フランジ加工してから、更に、フランジ加工された部分を下方に湾曲させるようにカール加工することで、断面略円形状に外巻きカール部を成形するということが従来から行なわれている。
【0010】
これに対して、上記のような本出願人の提案による金属缶の外巻きカール部の場合には、従来の断面略円形状のカール部を成形する場合とは違って、先ず、開口部の切断端部の近傍を所定の長さだけ外側に二重に折り畳んだ後、この折り畳み部分を外方に向けるようにフランジ加工してから、フランジ加工された折り畳み部分を下方に向けるように更に折り畳み加工して、更に、そのようなフランジ加工と折り畳み加工をもう一度繰り返して行なうようにしているが、そのようなカール部成形のためのフランジ加工や折り畳み加工の際には、従来のカール部成形(フランジ加工とカール加工)の場合と比べて大きな力を加えることが必要となる。
【0011】
すなわち、カール部の成形において、フランジ加工の時には、加工部分が外方に移動して径が大きくなることから、加工部分の金属材料が引き伸ばされることとなり、また、折り畳み加工(又はカール加工)の時には、外方に移動した加工部分が下方内方に移動して径が小さくなることから、加工部分の金属材料が押し縮められることとなるが、そのように伸縮する加工部分が、従来の断面略円形状のカール部では単に一重構造であるのに対して、上記のような本出願人の提案によるカール部の場合には多重構造(即ち、一回目のフランジ加工と折り畳み加工の時には二重構造、二回目のフランジ加工と折り畳み加工の時には三重構造)となっていることから、従来のカール部を成形する場合と比べて、加工部分の金属材料を伸縮させるために大きな力が必要となる。そのために加工の際に加える力(加工用具による押圧力)を大きくすると、加工用具との接触部分で缶の開口部の内面側を被覆している樹脂被膜が損傷するような虞が生じる。
【0012】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、金属缶の開口カール部成形方法について、円筒状の開口部の切断端部から所定の長さの部分を外側に二重以上に折り畳んでから、フランジ加工と折り畳み加工とにより切断端部を巻き込むように外巻きのカール部を成形する場合に、加工用具との接触部分で缶の開口部の内面側を被覆している樹脂被膜が損傷するようなことがないようにすることを課題とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、開口部の切断端部の付近が未だ円筒状で、その少なくとも内面側が樹脂被膜により被覆されている金属缶に対して、開口部の切断端部から所定の長さの部分を外側に二重以上に折り畳んでから、フランジ加工と折り畳み加工とにより切断端部を巻き込むように外巻きのカール部を成形するのに際して、折り畳み部分を外方に向けてフランジ加工する際には、円盤状のスピニングダイを使用して、缶とスピニングダイを同じ方向に回転させながら、スピニングダイの外縁加工面の円周方向の一部分を、缶の開口部に内側から略線接触させた状態で、スピニングダイにより上方からの押圧力を加えて、缶の開口部を円周方向に沿って一部分ずつ順次にフランジ加工し、また、フランジ加工された折り畳み部分を下方に向けて更に折り畳み加工する際には、缶の軸線方向と直交する方向に移動する環状のインターナルローラーを使用して、回転自在に保持されたインターナルローラーの内縁加工面の円周方向の一部分を、回転する缶の開口部に外側から略線接触させた状態で、インターナルローラーにより側方からの押圧力を加えて、缶の開口部を円周方向に沿って一部分ずつ順次に折り畳み加工するようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
上記のような方法によれば、外巻きのカール部を成形するためのフランジ加工や折り畳み加工において、加工用具と缶の開口部との接触を、円周方向の一部分での略線接触の状態として、缶の開口部を円周方向に沿って一部分ずつ順次に加工していくことで、加工部分が二重(或いは三重)に折り畳まれた部分であっても、加工用具による押圧力をあまり大きくすることなく、缶の開口部を少しずつ加工することができて、その結果、カール部を成形する際の加工用具との接触によって缶の開口部の内面側を被覆している樹脂被膜が損傷されるのを防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の金属缶の開口カール部成形方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、図1は、本発明の方法が適用される金属缶の一例であるボトル型缶の全体を底部側の一部分を破断した状態で示すものである。また、本発明の第1実施形態について、図2は、キャップが缶に装着された状態での開口カール部の構造を拡大して示し、図3と図4は、缶を開口してから開口端部の付近をカール部に成形する各工程を示し、図5は、図3及び図4に示した各工程での開口端部付近の加工状態を示すものである。また、本発明の第2実施形態について、図6は、キャップが缶に装着された状態での開口カール部の構造を拡大して示し、図7は、缶を開口してから開口端部の付近をカール部に成形する各工程での開口端部付近の加工状態を示すものである。さらに、図8は、図3に示した第1工程での加工装置を示し、図9は、図3に示した第2工程での加工装置を示し、図10は、図4に示した第3工程での加工装置を示し、図11は、図4に示した第4工程での加工装置を示すものである。さらにまた、図12は、図4に示した第3工程での図10に示す加工装置の改変例を示し、図13は、図4に示した第4工程での図11に示す加工装置の改変例を示すものである。
【0016】
本発明の方法の実施形態に係る金属缶は、キャップによりリシール(再密閉)が可能なボトル型缶であって、図1に示すように、大径円筒状の胴部4から上方に、縦断面が円弧状のドーム形状(外方に突出する半球面状)の肩部3を介して、小径円筒状の口頸部2が一体的に成形されており、胴部4の下端側を縮径して形成されたネック部5の下端(ネック部5の下端開口縁に形成されたフランジ部)には、金属製で別部材の底蓋6が二重巻締めにより固着されている。
【0017】
そのようなボトル型缶1の口頸部2には、その上端開口縁に沿って環状に外巻きのカール部21が形成され、その下方(カール部21の下方の傾斜面22よりも下方)の円筒状の周壁にネジ23が形成され、ネジ23の下方に環状のビード部24が形成されていて、この口頸部2には、図示していないが、缶内に飲料が充填された後で、周知のキャップ装着装置(キャッパー)によって、金属製で別部品のキャップがリシール(再密閉)可能なように装着される。
【0018】
このボトル型缶1の口頸部2と肩部3と胴部4(及び胴部4の下端側に形成されるネック部5やフランジ部)は、金属板の両面に樹脂被膜が被覆された樹脂被覆鋼板から一体成形されており、そのような樹脂被覆金属板としては、例えば、ポリエステル樹脂,ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂フィルム(具体的には、PBT:PETを6:4の割合で混合したポリエステル樹脂)を、缶内面側で25μmの厚さとなり、缶外面側で12μmの厚さとなるように、板厚が0.230mmの鋼板(具体的には、電解クロム酸処理鋼板)の両面に予めラミネートした樹脂被覆鋼板がある。
【0019】
なお、樹脂被覆金属板に基材として使用される金属板としては、鋼板に限らず、アルミニウム板やアルミニウム合金板を使用するようにしても良いが、鋼板を使用する場合には、各種の金属メッキを施した後にクロメート処理,リン酸処理,有機無機複合化成処理等の周知の化成処理を施した金属メッキ鋼板、例えば、ニッケルメッキ鋼板,錫メッキ鋼板,極薄錫メッキ鋼板,亜鉛メッキ鋼板,クロムメッキ鋼板や、鋼板に直接化成処理被膜を施した電解クロム酸処理鋼板(TFS−CT),リン酸処理鋼板,有機無機複合化成処理鋼板等の表面処理鋼板を使用することができる。
【0020】
金属板の両面に樹脂被膜として熱可塑性樹脂フィルムをラミネートする場合、金属板の両面に熱可塑性樹脂フィルムを直接ラミネートする(熱接着する)場合と、接着剤層を介して熱接着する場合とがある。なお、金属板の両面に保護被膜として樹脂被膜を被覆する場合、熱可塑性樹脂フィルムのラミネートに限らず、熱硬化型塗料を塗装することで樹脂被膜を形成しても良く、その場合には、金属板に対して予め塗装を施してから、この樹脂被覆金属板から有底円筒状の中間成形品(口頸部や肩部を成形する前の深いカップ)を成形する場合と、金属板を有底円筒状の中間成形品に成形してから、この中間成形品の内外面に対して塗装を施す場合とがある。
【0021】
樹脂被覆金属板からボトル型缶を製造するための方法については、図示していないが、その概略を以下に説明すると、先ず、樹脂被覆金属板の両面を被覆する樹脂被膜(熱可塑性樹脂層)の上から適宜の潤滑剤を予め塗布しておいてから、カップ成形工程で、樹脂被覆金属板を円板状のブランクに打ち抜くと共に、絞り加工を施すことで浅いカップ状に成形した後、更に、缶胴成形工程で、再絞り加工(ストレッチ加工を含む)としごき加工とを組み合わせて施すことにより、胴部が薄肉化された有底円筒状の中間成形品(口頸部や肩部を成形する前の深いカップ)を製造する。
【0022】
次いで、この有底円筒状の中間成形品に対して、トップドーム成形工程で、その底部側に複数回の絞り加工と再成形加工を施すことにより、小径の口頸部(未開口)とドーム状の肩部を成形してボトル型缶の基本形状としてから、更に、口頸部の未開口の端部に2回の口絞り成形を施した後、潤滑剤を揮発させ、胴部の開口端側をトリミングして中間成形品の高さを一定に切り揃えてから、胴部外面に装飾印刷を施し、その後、ネジ・カール成形工程で、未開口の口頸部の先端部を切断して口頸部を開口させてから、口頸部の上端開口縁に沿って環状に外巻きのカール部に成形し、その下方の円筒状の周壁にネジを成形し、ネジの下方に環状のビード部を形成する。
【0023】
そして、ネック・フランジ成形工程で、口頸部とは反対側となる胴部の開口端(下端)付近に対してネック・フランジ加工を施すことで、胴部の下端側にネック部とフランジ部を形成してから、底蓋巻締工程において、ネック部の下端開口縁に形成されたフランジ部に対して、二重巻き締め法により別体の底蓋を一体的に固着することで、図1に示すようなボトル型缶(キャップを装着する前の缶)が製造される。
【0024】
なお、上記のように製造されるボトル型缶には、缶内に飲料が充填された後で、金属製で別部品のキャップ(ピルファープルーフキャップ)を口頸部に被せてから、周知のキャッパー(キャップ装着装置)を使用して、トッププレッシャーによりキャップの頂部に上から押圧力を加えながら、ネジ形成ロールによりキャップのスカート部を側方から口頸部のネジ部に押圧して該スカート部にネジを形成し、更に、絞り込みロールにより該スカート部の下端部を側方から内側に絞り込むことで、該スカート部の下端部を口頸部の環状ビード下方の環状凹部に押し込んで口頸部にキャップを固定させているが、そのようなキャップ装着の際には、口頸部上端のカール部には上方からの大きな押圧力(883〜1274N)が作用することとなる。
【0025】
これに対して、ネジ・カール成形工程において成形される外巻きのカール部は、後で述べるような実施形態の方法により成形されることによって、図2(又は図6)に示すように、開口部の切断端部21aをカール部21の内部に巻き込んで閉じ込めるような状態となり、上下両端部分を除く大部分では、金属板同士が樹脂被膜を介して互いに略当接するように、幅方向で押し潰されて四重(又は三重)に重なった状態となっていて、2回の口絞り成形により口頸部のカール形成部分とネジ形成部分との間に形成された傾斜面22に対して、カール部21の下端部が下方の傾斜面22に接触していると共に、カール部21の上部付近では、カール部21の頂部に向かって先細りの状態となっている。
【0026】
そのようにカール部21が成形されていることによって、製造時(未開口の口頸部の先端部を切断して開口した時)に、開口部の切断端部が樹脂被膜の剥離した毛羽立ちにより見苦しい状態となっていても、切断端部21aをカール部21の内部に巻き込んで閉じ込めていることで、そのような見苦しさを完全に隠蔽することができると共に、カール部21の内部で金属板同士が樹脂被膜を介して互いに略当接するように重なっていることで、キャップ3のベントスリット32から外部の水分が侵入してきても、カール部21の切断端部21aにまで水分が到達するのを確実に防ぐことができ、切断端部21aでの腐食の発生を効果的に防止することができて、その結果、金属缶がスチール缶であっても、切断端部21aで錆が発生するのを確実に防止することができる。
【0027】
また、カール部21の下端部を傾斜面22に接触させるようにカール部21が幅方向で押し潰されていることで、キャップ装着時にキャッパーからの強い押圧力を上方から受けたり、缶詰製造後に誤って商品を落下させることで落下衝撃を受けたりしても、それによりカール部21が変形するようなことはなく、カール部21がスプリングバックを起して形状や寸法にバラツキを生じるようなこともないため、キャップのシール材とカール部との間の密封性を安定的に維持することができる。特に、カール部21の上下両端付近を除く大部分では、金属板同士が幅方向で四重(又は三重)に重なるようにしていることから、上記のようなカール部21の内部への水分の侵入防止やカール部の耐変形性という点で一層効果的なものとなっている。
【0028】
さらに、カール部21を頂部に向けて先細り状態にしていることで、キャップ30を装着する際に、キャッパーによる上方からの押圧力によってキャップ30のシール材31とカール部21の頂部とが加圧接触した時に、シール材31の表面にカール部21の頂部が食い込む形となり、その結果、キャップ30のシール材31とカール部21との間の密封性を向上させることができる。なお、密封性を向上させるためには、カール部21の頂部先端の幅を1.5mm以下にするのが好ましく、更に、1.2mm以下にするのが好ましく、特に、1.0mm以下にするのがより好ましい。
【0029】
上記のようなカール部の成形については、第1実施形態の方法では、図2に示すような、金属板が幅方向で四重に重なった状態のカール部21を成形するために、先ず、図3に示すように、トップドーム成形工程で成形された未開口(プレス上がり)の口頸部に対して、ネジ・カール成形工程で、未開口の口頸部の先端部を切断(トリム)して口頸部を開口させてから、ネジ成形工程に先立つカール成形工程において、先ず、第1工程で、円筒状の開口部の切断端部から所定の長さの部分を外方に向けるようにフランジ加工してから、第2工程で、フランジ加工した部分を下方に向けるように折り畳んで、円筒状の開口部の切断端部から所定の長さの部分を外側に二重に折り畳むようにしている。
【0030】
そして、そのように開口端部に形成された二重の折り畳み部分に対して、図4に示すように、第3工程で、折り畳み部分を外方に向けるようにフランジ加工してから、第4工程で、フランジ加工された折り畳み部分を下方に向けるように更に折り畳み加工して、切断端部を巻き込むように三重の折り畳み部分を形成した後、更に、この三重の折り畳み部分に対して、第5工程で、折り畳み部分を外方に向けるようにフランジ加工してから、第6工程で、フランジ加工された折り畳み部分を下方に向けるように更に折り畳み加工することによって、カール成形を終了している。
【0031】
そのようなカール成形工程の各工程での開口端部付近の加工状態については、図5に示すように、切断(トリム)により口頸部が開口されて、傾斜面22から上方が円筒状のカール形成部分21Aとなっている(A)の状態から、第1工程では(B)の状態にフランジ成形され、第2工程では(C)の状態に折り畳み成形されて、開口端部に二重の折り畳み部分21Bが形成される。次いで、第3工程では(D)の状態にフランジ成形され、第4工程では(E)の状態に折り畳み成形されて、開口端部に小さなカール部(三重の折り畳み部分)21Cが形成される。そして、第5工程では(F)の状態にフランジ成形され、第6工程では(G)の状態を経て(H)のようにカール全体が幅方向で押し潰された状態に折り畳み成形されることで、カール部21は最終的な形状に形成される。そのように成形されたカール部21では、カール部21の下端部は下方の傾斜面22に接触しており、カール部21は、その上下両端部分を除く大部分では金属板同士が樹脂被膜を介して互いに略当接するように、幅方向で四重に重なった状態となっていて、カール部21の上部付近では、カール部21の頂部に向かって先細りの状態となっている。
【0032】
上記のように金属板が幅方向で四重に重なった状態のカール部21を成形するための第1実施形態に対して、本発明の第2実施形態では、図6に示すような、金属板が幅方向で三重に重なった状態のカール部21を成形するために、図7に示すように、カール成形工程の各工程で開口端部付近を以下のように加工している。
【0033】
この第2実施形態においても、第1実施形態の場合と同様に、トップドーム成形工程で形成された未開口の口頸部に対して、ネジ・カール成形工程で、未開口の口頸部の先端部を切断(トリム)して口頸部を開口させてから、ネジ成形工程に先立つカール成形工程において、図7に示すように、切断(トリム)により口頸部が開口されて、傾斜面22から上方が円筒状のカール形成部分21Aとなっている(A)の状態から、先ず、第1工程で、円筒状の開口部の切断端部21aから所定の長さの部分を外方に向けて折り曲げ加工することにより、(B)の状態にフランジ成形してから、第2工程で、フランジ成形された部分を下方に向けて折り畳み加工することにより、(C)の状態に折り畳み成形して、開口端部に二重の折り畳み部分21Bを形成している。
【0034】
そして、折り畳み部分21Bが形成された開口端部に対して、第3工程で、所定の長さの部分を外方に向けて折り曲げ加工することにより、(D)の状態にフランジ成形してから、第4工程で、フランジ成形された部分を下方に向けて折り畳み加工することにより、(E)の状態に折り畳み成形して切断端部21aを巻き込むことにより、カール部21を、幅方向で金属板が三重に重なった最終的な形状に成形している。すなわち、この第2実施形態では、カール成形工程の最終形状において、カール部21の上下両端部分を除く大部分では、幅方向で金属板同士が樹脂被膜を介して互いに略当接しており、カール部21の下端部は下方の傾斜面22に接触している。
【0035】
そのように金属板が幅方向で三重に重なった状態となるようにカール部21を押し潰された状態に形成していることで、金属板が幅方向で四重に重なった状態に形成されている場合と比べて、カール部21の内部への水分の侵入防止やカール部の耐変形性という点では効果的に若干は劣るものの、カール部21を成形するための工程を少なくすることができて、製造コストを削減できると共に、カール部21が全体的に幅方向で薄いものとなり、カール部21の頂部付近が幅方向で比較的狭くなることから、キャップを装着する時に、キャップ30のシール材31にカール部21の頂部を充分に食い込ませることができて、キャップ30のシール材31とカール部21との間の密封性を向上させることができる。
【0036】
ところで、上記のような各実施形態のカール部成形方法のそれぞれにおいて、第3工程で二重の折り畳み部分21Bを外方に向けるようにフランジ加工する際には、図10に示すように、缶1の軸線方向に対して回転軸を傾斜させた(缶の軸線方向に対して0.5°〜8.0°、好ましくは1.0°〜5.0°傾斜させた)円盤状のスピニングダイ(回転するフランジ加工用ヘッド)10を使用して、缶1とスピニングダイ10を同じ方向に回転させながら、スピニングダイ10の外縁加工面10aの円周方向の一部分を、缶1の開口部に内側から略線接触させた状態で、スピニングダイ10により上方からの押圧力を加えて、缶1の開口部を円周方向に沿って一部分ずつ順次にフランジ加工している。
【0037】
具体的には、スピニングダイ10を固定的に支持する軸部材11と、缶1を着脱可能に保持するマンドレル12とについて、何れか一方を回転自在に保持して他方を回転駆動させるか、或いは、両方を回転駆動させることにより、缶1とスピニングダイ10とを同じ方向に回転させ、しかも、缶1の軸線方向に対してスピニングダイ10の回転軸を僅かな角度で傾斜させた状態にしていることで、円盤状のスピニングダイ10の下端外縁に形成された円周方向に延びる加工面10aを、缶1の開口上端部に対して傾斜させた状態で内側から接触させて、スピニングダイ10の外縁加工面10aを缶1の開口部に部分的に内接させた略線接触(極めて短い幅の円弧状の面接触)の状態としながら、スピニングダイ10により上方から押圧力を加えることで、缶1の開口端部に形成された二重の折り畳み部分を、円周方向に沿って一部分ずつ順次に外方に向けるようにフランジ加工している。
【0038】
また、フランジ加工された折り畳み部分21Bを第4工程で下方に向けるように更に折り畳み加工する際には、図11に示すように、缶1の軸線方向と直交する方向に移動する環状のインターナルローラー(折り畳み加工用ローラー)13を使用して、インターナルローラー13の内縁加工面13aの円周方向の一部分を、缶1の開口部に外側から略線接触させた状態で、回転自在に保持されたインターナルローラー13により側方からの押圧力を加えながら、回転する缶1の開口部を円周方向に沿って一部分ずつ順次に折り畳み加工するようにしている。
【0039】
具体的には、環状のインターナルローラー13がベアリング14を介して枠部材15に回動自在に保持されているのに対して、缶1を着脱可能に保持するマンドレル16には、インターナルローラー13の中央空間部を通過する回転駆動軸17が連結されていて、回転駆動軸17の駆動によりマンドレル16を介して缶1を回転させると共に、枠部材15を水平方向に動かしてインターナルローラー13を水平方向(缶1の軸線方向と直交する方向)に移動させ、インターナルローラー13の下端内縁に形成された円周方向に延びる加工面13aを、缶1の開口外端部に対して外側から接触させて、缶1の開口部をインターナルローラー13の内縁加工面13aに部分的に内接させた略線接触(極めて短い幅の円弧状の面接触)の状態として、インターナルローラー13により側方からの押圧力を加えることで、フランジ加工された二重の折り畳み部分を、円周方向に沿って一部分ずつ順次に下方に向けるように折り畳み加工している。
【0040】
さらに、第1実施形態の方法においては、缶1の開口部の切断端部から所定の長さの部分を外側に二重に折り畳んでから、この二重の折り畳み部分21Bに対して、第3工程と第4工程において、上記のようにフランジ加工と折り畳み加工を順次に行なった後、そのような加工により成形された小さなカール部(三重の折り畳み部分)21Cに対して、更に、第5工程と第6工程において、フランジ加工と折り畳み加工をもう一度繰り返して行なっているが、そのような第5工程でのフランジ加工や、第6工程での折り畳み加工については、説明は省略しているが、上記のような第3工程でのスピニングダイ10によるフランジ加工、および、第4工程でのインターナルローラー13による折り畳み加工とそれぞれ同様の方法によるものである。
【0041】
なお、第1工程と第2工程において円筒状の開口部の切断端部から所定の長さの部分を外側に二重に折り畳むための方法については、特に限定されるものではなく、適宜の方法により可能なものであるが、上記の各実施形態では、先ず、第1工程において、図8に示すように、従来からカール成形のフランジ加工で行なわれているのと同様に、固定された状態の缶1に対して、回転しない円盤状のフランジ加工用ヘッド18により上方から缶1の開口部を押圧することで、円周方向の全周で同時的にフランジ加工しており、次いで、第2工程において、図9に示すように、インナー部材19aとアウター部材19bとからなる折り畳み加工用ヘッド19を使用して、第3工程のスピニングダイ10の場合と同様に、缶1とヘッド19を同じ方向に回転させながら、ヘッド19の加工面(インナー部材19aとアウター部材19bの隙間)の円周方向の一部分を、缶1の開口部上端を挟むように略線接触させた状態で、ヘッド19により上方からの押圧力を加えて、缶1の開口部を円周方向に沿って一部分ずつ順次に折り畳み加工するようにしている。
【0042】
上記のような各実施形態でのスピニングダイ10によるフランジ加工に関しては、例えば、円筒状の管材の端部のフランジ加工等において、材料(管材)の軸線方向に対して回転軸を傾斜させた加工用具を使用して、加工用具を回転させながら、加工用具の加工面の円周方向の一部分を、材料(管材)の端部の円周方向の一部分に略線接触させた状態で、加工用具により上方からの押圧力を加えて、材料(管材)の端部を円周方向に沿って一部分ずつ順次に加工(フランジ加工)する、ということが従来公知(例えば、特公昭60−28571号公報,特開平10−216893号公報,実開平5−49123号公報等参照)であって、スピニングダイ10によるフランジ加工は、そのような技術を基本的には転用したものであるが、そのような技術は缶の開口部に外巻きのカール部を成形する場合には今まで行なわれていない。
【0043】
すなわち、缶の開口部に外巻きのカール部を成形する際に行なうフランジ加工については、例えば、固定された状態の缶に対して、回転しない円盤状のフランジ加工用ヘッドにより上方から缶の開口部を全周的に押圧することで、全周で同時的にフランジ加工したり、或いは、固定された状態の缶に対して、複数のフランジ加工用ロールを回転自在に支持するロールヘッドを使用して、各フランジ加工用ロールを缶の開口部に内接させた状態で、ロールヘッドを回転させながら缶の開口部を上方から押圧することで、各フランジ加工用ロールによってそれぞれ部分的にフランジ加工したりすることが従来から行なわれている。
【0044】
上記のような各実施形態による金属缶の開口カール部成形方法によれば、缶1の開口部の切断端部21aから所定の長さの部分を外側に二重又は三重に折り畳んでから、切断端部21aを巻き込むように外巻きのカール部21を成形することで、缶1の開口部に形成する外巻きのカール部21を、全体的に幅方向で押し潰された状態として、カール部21の上下両端付近を除く大部分では金属板同士が樹脂被膜を介して幅方向で三重又は四重に重なるように形成できることから、既に述べたように、カール部21の耐変形性を高めることができると共に、カール部21の内部に水分が侵入するのを防止することができて、切断端部21aで錆が発生するのを効果的に防止することができる。
【0045】
しかも、そのようなカール部21を成形するためのフランジ加工や折り畳み加工において、加工用具(スピニングダイ10やインターナルローラー13)と缶1の開口部との接触を一部分での略線接触の状態として、開口部を円周方向に沿って一部分ずつ順次に加工していくことで、二重又は三重に折り畳まれた部分(21B,21C)が加工部分となっていても、加工用具により加える力(押圧力)をあまり大きくすることなく、開口部の加工を少しずつ行なうことができて、その結果、加工用具との接触により缶1の開口部の内面側を被覆している樹脂被膜が損傷するのを防止することができる。
【0046】
以上、本発明の金属缶の開口カール部成形方法の各実施形態について説明したが、本発明の方法は、上記のような実施形態に限られるものではなく、例えば、上記の各実施形態では、未だ円筒状の口頸部に対して、開口カール部の成形工程を最後まで行なってから、その下方にネジを成形するようにしているが、これとは逆に、未だ円筒状の口頸部に対して、その周壁にネジを成形してから、開口カール部の成形工程を行なうようにしても良い。
【0047】
すなわち、上記の各実施形態では、カール部を成形加工するための各装置の芯出し(中心合わせ)を、未だネジが形成されていない円筒状の口頸部を使用して行なうために、カール部の成形加工を先行させているが、例えば、カール部成形加工装置の芯出し(中心合わせ)を円筒状の胴部を使用して行なうようにすれば、円筒状の口頸部に先にネジを形成してから、その後にカール部の成形加工を行なうようにしても問題はない。
【0048】
また、未だ円筒状の口頸部に対して、開口カール部の成形工程を途中まで行なってから、その下方にネジを成形した後で、開口カール部の残りの成形工程を最後まで行なうようにしても良く、例えば、第1実施形態において、図5の(F)又は(G)の状態までカール部を成形した後、ネジを成形してから、その後で、図5の(G)と(H)の状態、又は(H)の状態にカール部を成形するように、カール部の残りの成形工程を完了させたり、或いは、第2実施形態において、図7の(D)の状態までカール部を成形した後、ネジを成形してから、その後で、図7の(E)の状態にカール部を成形するように、カール部の残りの成形工程を完了させたりするようにしても良い。
【0049】
そのようにした場合、ネジの成形時に口頸部の周壁に加えられるネジ成形用ロールの押圧力により、たとえ口頸部の横断面形状が真円状から多少変形した(歪んだ)としても、その後、カール部の残りの成形工程において、インターナルローラー13による折り畳み加工の際に、口頸部を内側から保持している円柱形状のマンドレル16の外周面形状により、カール部の内面が真円状に再成形されることとなる。その結果、最終的に形成されたカール部は、その内面が真円状(真円度が高い)となり、その外面の真円度も当然に高いものとなる。一方、インターナルローラー13の内縁加工面13aによりカール部の上面も平滑になるため、最終的に形成されたカール部の内面、外面、上面のうちのどの面が密封面となる場合でも、カール部とその上に冠着されるキャップのシール部材(密封材)との間の密封性は非常に良好なものとなる。
【0050】
さらに、本発明の方法の対象となる金属缶については、上記の実施形態に示したようなタイプのボトル型缶(スチール缶又はアルミ缶)に限らず、例えば、周知の深絞り加工方法や絞りしごき加工方法により缶胴と缶底を一体的に成形した缶体(所謂ドローアンドリドロー缶やDI缶)に対して、その上端開口部に口頸部や肩部を有する別体の缶蓋を巻締め固着したようなボトル型缶や、缶胴と缶底を一体的に成形した缶体の上端開口側に複数段のネックイン加工を施すことで口頸部と肩部を成形した(肩部を滑らかなスムーズネックとしても良い)ようなボトル型缶のような、上記の実施形態とは異なるタイプのボトル型缶であっても良く、また、顕著な口頸部や肩部を有するボトル型缶に限らず、ネックイン加工したDI缶の上端開口部をネジ付きの口部とした広口タイプのネジ付き缶であっても良いし、さらには、シームレス缶(胴部に縦方向の継ぎ目が無い)に限らず、溶接缶胴を使用した適宜のタイプのボトル型缶や広口タイプのネジ付き缶(溶接継目部をカール部に成形するネジ付き缶をも含む)であっても良い等、缶の開口部に外巻きのカール部が形成される金属缶である限りにおいて、対象となる金属缶のタイプは適宜に変更可能なものである。
【0051】
なお、缶胴と缶底とを一体成形した缶体の上端開口側に複数段のネックイン加工を施すことで口頸部と肩部とを成形したようなボトル型缶について、本発明ののカール部成形方法を適用する場合には、上記の実施態様で使用したような底部側から挿入するマンドレルは使用できないことから、使用する加工装置を一部変更する必要がある。すなわち、図8と図9に示す加工工程(図3の第1工程と第2工程)に対応する加工工程では、缶1の底部側が開いていないので、上記の実施態様で使用しているマンドレルを使用しないで加工を施すこととなる。
【0052】
そして、その後、図10に示す加工工程(図4の第3工程)に対応する加工工程では、マンドレル12を使用することなく、例えば、図12に示すように、使用するスピニングダイ(回転するフランジ加工用へッド)10として、缶1の開口部(口頸部)の内径よりも小径で、缶の軸線方向と平行な回転軸を有するスピニングダイ10を使用して、缶1とスピニングダイとを同じ方向に回転させながら(缶1は図示しない装置によって、底部を吸着させてスピニングダイ10と同期させて回転させる)、スピニングダイ10の円周方向加工面10aの一部分を缶1の開口部に内側から略線接触(極めて短い幅の円弧状の面接触)させている。また、その際に、缶1の開口部を外面側から支えるための回転自在に保持されたローラーのような支持装置40を使用している。
【0053】
この支持装置(ローラー)40は、フランジ厚み分のクリアランスとフランジレグスに相当する位置だけスピニングダイ10とは離隔されており、スピニングダイ10及び缶1と同期して回転し、スピニングダイ10が略線接触している部分の缶1の開口部の外側に接触し、スピニングダイ10から外方へ折り曲げられる力を加えられる部分の下方を外側から支えて、この部分が変形(座屈)するのを防止している。なお、この加工工程では、缶1の底部を支持している部分(図示せず)とスピニングダイ10を回転させることにより缶1に回転力を与えるようにすることが好ましい。
【0054】
また、図11に示す加工工程(図4の第4工程)に対応する加工工程では、マンドレル16を使用することなく、例えば、図13に示すように、回転駆動軸17として、図11に示したマンドレル16の上部を一体化したような構造の回転駆動軸17、即ち、缶1の開口部の内径と略等しい外径で缶1の開口部内に挿入される下方部分17aを備えた回転駆動軸17を使用しており、この回転駆動軸17の下方部分17aは、上方から缶1の開口部内に挿入したり抜き出したりすることが可能となっている。
【0055】
そして、図11に示した加工装置と同様に、インターナールローラー13を水平方向に移動させ、インターナールローラー13の下端内縁に形成された円周方向に延びる内縁加工面13aを、缶1の開口外端部に対して外側から接触させて、缶1の開口部をインターナールローラー13の内縁加工面13aに部分的に内接させた略線接触(極めて短い幅の円弧状の面接触)の状態として、インターナールローラー13により側方からの押圧力を加えることで、フランジ加工された二重の折り畳み部分を、円周方向に沿って一部分ずつ順次下方に向けるように折り畳み加工することができるようになっている。なお、この加工工程でも、缶1の底部を支持している部分を回転させることにより缶1を回転させても良い。
【0056】
上記のような図12及び図13に示した加工装置については、缶胴と缶底が一体成形されたボトル型缶の成形加工に好適なものであるが、底部側が開口されているタイプのボトル型缶に対しても勿論使用することができるものである。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したような本発明の金属缶の開口カール部成形方法によれば、円筒状の開口部の切断端部から所定の長さの部分を外側に二重以上に折り畳んでから、切断端部を巻き込むように外巻きのカール部を成形する際に、折り畳まれて多重構造となっている加工部分を、加工用具による加える力をあまり大きくすることなく加工することができて、その結果、カール部を成形する際に加工用具との接触により缶の開口部の内面側を被覆している樹脂被膜が損傷されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の開口カール部成形方法が適用される金属缶の一例であるボトル型缶について、(キャップを除いた)缶全体の外観を示す一部破断側面図。
【図2】本発明の方法の第1実施形態について、キャップが缶に装着された状態での開口カール部の構造を拡大して示す拡大断面図。
【図3】本発明の方法の第1実施形態について、ボトル型缶の開口部(口頸部の上端部)にカール部を成形する各工程の前半部分を示す断面説明図。
【図4】本発明の方法の第1実施形態について、ボトル型缶の開口部(口頸部の上端部)にカール部を成形する工程の後半部分を示す断面説明図。
【図5】本発明の方法の第1実施形態について、図3及び図4に示した各工程での開口端部付近の加工状態を示す拡大断面説明図。
【図6】本発明の方法の第2実施形態について、キャップが缶に装着された状態での開口カール部の構造を拡大して示す拡大断面図。
【図7】本発明の方法の第2実施形態について、ボトル型缶の開口部(口頸部の上端部)にカール部を成形する各工程での開口端部付近の加工状態を示す拡大断面説明図。
【図8】図3に示した第1工程での加工装置を示す断面図。
【図9】図3に示した第2工程での加工装置を示す断面図。
【図10】図4に示した第3工程での加工装置を示す断面図。
【図11】図4に示した第4工程での加工装置を示す断面図。
【図12】図4に示した第3工程での加工装置の改変例を示す断面図。
【図13】図4に示した第4工程での加工装置の改変例を示す断面図。
【符号の説明】
1 缶(ボトル型缶)
2 口頸部
3 肩部
4 胴部
10 スピニングダイ
10a (スピニングダイの)外縁加工面
13 インターナルローラー
13a (インターナルローラーの)内縁加工面
17 回転駆動軸
21 カール部
21a 切断端部
21B (二重の)折り畳み部分
21C (三重の)折り畳み部分
23 (口頸部の)ネジ
40 支持装置(ローラー)
Claims (8)
- 開口部の切断端部の付近が未だ円筒状で、その少なくとも内面側が樹脂被膜により被覆されている金属缶に対して、開口部の切断端部から所定の長さの部分を外側に二重以上に折り畳んでから、フランジ加工と折り畳み加工とにより切断端部を巻き込むように外巻きのカール部を成形するのに際して、折り畳み部分を外方に向けてフランジ加工する際には、円盤状のスピニングダイを使用して、缶とスピニングダイを同じ方向に回転させながら、スピニングダイの外縁加工面の円周方向の一部分を、缶の開口部に内側から略線接触させた状態で、スピニングダイにより上方からの押圧力を加えて、缶の開口部を円周方向に沿って一部分ずつ順次にフランジ加工し、また、フランジ加工された折り畳み部分を下方に向けて更に折り畳み加工する際には、缶の軸線方向と直交する方向に移動する環状のインターナルローラーを使用して、回転自在に保持されたインターナルローラーの内縁加工面の円周方向の一部分を、回転する缶の開口部に外側から略線接触させた状態で、インターナルローラーにより側方からの押圧力を加えて、缶の開口部を円周方向に沿って一部分ずつ順次に折り畳み加工するようにしたことを特徴とする金属缶の開口カール部成形方法。
- 円盤状のスピニングダイとして、缶の軸線方向に対して回転軸を傾斜させたものを使用していることを特徴とする請求項1に記載の金属缶の開口カール部成形方法。
- 円盤状のスピニングダイとして、缶の軸線方向と平行な回転軸を有し、外径が缶の開口部の内径よりも小径で、缶の軸線方向と直交する方向に移動可能なものを使用していることを特徴とする請求項1に記載の金属缶の開口カール部成形方法。
- 開口部の切断端部から所定の長さの部分を外側に二重に折り畳んだ後、フランジ加工と折り畳み加工を順次に行うことにより、カール部が全体的に幅方向で押し潰された状態となって、カール部の上下両端付近を除く大部分では、金属板同士が樹脂被膜を介して幅方向で三重に重なるようにしていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の金属缶の開口カール部成形方法。
- 開口部の切断端部から所定の長さの部分を外側に二重に折り畳んだ後、フランジ加工と折り畳み加工を順次に行なってから、更に、フランジ加工と折り畳み加工をもう一度繰り返して行うことにより、カール部が全体的に幅方向で押し潰された状態となって、カール部の上下両端付近を除く大部分では、金属板同士が樹脂被膜を介して幅方向で四重に重なるようにしていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の金属缶の開口カール部成形方法。
- 金属缶が、口頸部の開口カール部よりも下方にネジを有するものであって、未だ円筒状の口頸部に対して、開口カール部の成形工程を最後まで行なってから、その下方にネジを成形していることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の金属缶の開口カール部成形方法。
- 金属缶が、口頸部の開口カール部よりも下方にネジを有するものであって、未だ円筒状の口頸部に対して、その周壁にネジを成形してから、開口カール部の成形工程を行なっていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の金属缶の開口カール部成形方法。
- 金属缶が、口頸部の開口カール部よりも下方にネジを有するものであって、未だ円筒状の口頸部に対して、開口カール部の成形工程を途中まで行なってから、その下方にネジを成形した後で、開口カール部の残りの成形工程を最後まで行なっていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の金属缶の開口カール部成形方法。
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