JP2004152852A - 電子部品用回路基材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】基材との密着強度が高い金属膜、または金属回路を各種基材上に形成する、電子部品用回路基材を製造する方法を提供する。
【解決手段】表面にポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、パラジウムアンモニア錯塩水溶液で被覆して前記ポリイミド樹脂前駆体を感光性高分子パラジウム錯体にし、水素供与体の存在下において金属層形成部に紫外線を照射し、無電解メッキにより前記基材上に金属層を形成することにより基材と密着強度が高い金属層を従来より少ない工種で、容易に形成することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】表面にポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、パラジウムアンモニア錯塩水溶液で被覆して前記ポリイミド樹脂前駆体を感光性高分子パラジウム錯体にし、水素供与体の存在下において金属層形成部に紫外線を照射し、無電解メッキにより前記基材上に金属層を形成することにより基材と密着強度が高い金属層を従来より少ない工種で、容易に形成することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は微細加工用の電子部品材料および回路基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂基材表面に金属回路を形成する方法としては、ポリイミドフィルムの表面をアルカリ加水分解し、ポリアミック酸とした後、硫酸銅や塩化パラジウムを吸着させた後、蟻酸ソーダを還元剤として低圧水銀灯の紫外線を照射する方法(例えば、非特許文献1参照。)や硫酸銅塩水溶液にエキシマレーザーを照射して、フィルム上に直接金属銅を析出させる方法(例えば、非特許文献2参照。)が報告されている。しかし、前者では紫外線照射による触媒核の形成に要する時間が非常に長いだけでなく、還元剤の分解でNaOHが生成してアルカリ性となり、ポリイミド自体の劣化が起こるという問題がある。また後者ではレーザーの照射条件が非常に厳しく、低照射量では金属膜は非常に薄い膜しか得られず、また、照射量が多い場合は析出した金属膜やポリイミドが損傷されるという問題がある。
【0003】
また、基材の表面に触媒金属のイオンを錯化可能なカルボン酸基のみを有する錯化剤を有する触媒処理液を付着させ、パターンマスクを介して光を照射し、触媒活性を失活させた後、光の未照射部分にめっき回路を形成することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、前記めっき回路形成方法においては、回路形成すべき部分は、光が照射されず、かつ、触媒処理液が付着している部分に無電解めっきを形成することにより回路を形成する方法であり、この方法では上記触媒処理液は触媒金属のイオンを錯化可能なカルボン酸基を含有する錯化剤溶液が、基材に吸着されているだけであるため、形成された金属回路の精度や密着強度が低いという問題があった。
【特許文献1】
特開平6−77626号公報
【非特許文献1】
西岡太郎、他3名、「ポリイミド樹脂の表面改質および紫外線照射を利用する銅回路の形成」、第13回エレクトロニクス実装学術講演大会講演論文集、1999年3月、P183
【非特許文献2】
富田 雅明、外2名、「ポリイミドフィルム上への銅回路パターンの直接形成」、レーザー学会学術講演会第19回年次大会講演予稿集、1999年1月28日、P90
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、上記のような問題点に着目し、とくに、基材との密着強度が高い金属膜または金属回路を各種基材上に形成する電子部品用回路基材を製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、表面にポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、パラジウムアンモニア錯塩水溶液で被覆して前記ポリイミド樹脂前駆体を感光性高分子パラジウム錯体にし、水素供与体の存在下において金属層形成部に紫外線を照射し、無電解メッキにより基材上に金属層を形成することを特徴とするものである。
【0007】
この場合、ポリイミド樹脂前駆体が、常温でパラジウムアンモニア錯塩水溶液と反応して高分子パラジウム錯体を形成する。さらに基材と密着強度が高い金属層を形成することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、表面にポリイミド樹脂前駆体層を有する基材の表面に開口部を有するメッキレジストパターンを形成し、パラジウムアンモニア錯塩水溶液で被覆して前記メッキレジスト回路パターンの開口部のポリイミド樹脂前駆体を感光性高分子パラジウム錯体にし、水素供与体の存在下において紫外線を照射し、無電解メッキにより基材上に金属層を形成することを特徴とするものである。
【0009】
この場合、メッキレジストパターンを形成した後に、パラジウムアンモニア錯塩水溶液を反応させるため、金属層をよりシャープに形成することができる。
【0010】
また、ポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、ポリイミド樹脂前駆体溶液を基材の表面に塗布・乾燥することによって形成したり、ポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、ポリイミド基材の表面をアルカリ加水分解によってポリイミド樹脂前駆体層にすることによって形成することを特徴とするものである。
【0011】
また、照射する紫外線の波長が300nm以下の紫外線であり、また水素供与体として水、アルコールまたはアルコール水溶液のいずれかであることを特徴とするものである。
【0012】
また、無電解メッキにより基材上に金属膜または金属回路を形成した後、電解メッキ、イミド化処理を行うことを特徴とするものである。
【0013】
また、基材が、樹脂、セラミック、シリコンの少なくとも1つからなる基材であり、パラジウムアンモニア錯塩水溶液がpH4〜7であることを特徴とするものである。パラジウムアンモニア錯塩水溶液はアルカリ水溶液に可溶であるため、pH4〜7の弱酸性から中性で反応させることが好ましい。pHが4より小さい強酸性の場合、パラジウムアンモニア錯塩水溶液とポリイミド樹脂前駆体との錯体形成反応が起こりにくくなる。また、pHが8以上のアルカリ性になると、金属回路を形成する場合に通常使われているアルカリ現像型メッキレジストでは、感光性レジストのパターンマスクがアルカリによって剥離を起こすため、アディティブ法でのパターン形成ができなくなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
各種電子部品用回路基板の製造方法に関して、操作が容易でコスト面でも優れた方法についてあらゆる方面から鋭意検討した結果、ポリアミック酸型ポリイミド樹脂前駆体が常温でパラジウムアンモニア錯塩水溶液と反応して、高分子パラジウム錯体を形成すること、さらに、この高分子パラジウム錯体においては、錯体中のパラジウムイオンが水素供与体の存在下で紫外線照射によってパラジウム金属まで還元される感光性高分子パラジウム錯体であることを見出した。
【0015】
その結果、ポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、パラジウムアンモニア錯塩水溶液に浸漬して反応させ、ポリアミック酸とパラジウムからなる感光性高分子ポリイミド前駆体樹脂錯体層を形成させ、紫外線を照射した後で、無電解メッキを行うことにより、ポリアミック酸樹脂と金属とが一体となった金属層をもった各種基材を形成することができることを見出した。そして、さらに、金属層に電解メッキを行ったり、また、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸をイミド化することにより、耐熱性や耐薬品性を上げることができることを見出した。
【0016】
図1は、本発明における電子部品用回路基板の製造方法の第1の実施形態を示したものである。
【0017】
セラミック基材2上にポリイミド樹脂前駆体溶液を塗布・乾燥させてポリイミド樹脂前駆体層3を形成し(図1(a))、パラジウムアンモニア錯塩水溶液4で被覆してポリイミド樹脂前駆体を感光性高分子パラジウム錯体5にする(図1(b))。次いで、水素供与体6の存在下において、金属層形成部7に紫外線8をパターンマスク10を介して照射し(図1(c))、無電解メッキにより金属層9を形成し(図1(d))電子部品用回路基材1を得る。
【0018】
本発明で使用される基材としては、樹脂、セラミック、ガラス等の絶縁性基材やシリコン基板などがある。樹脂基材としては、イミド化のため加熱することを考慮すると、ポリイミドや液晶ポリマー等のような熱変形温度が280℃以上のものが好ましく、たとえば、ピロメリット酸無水物(PMDA)とオキシジアニリン(ODA)からなるポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BTDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)からなるポリイミドおよびこれらのモノマーの共重合体、芳香族テトラカルボン酸無水物と分子中に−O−、−CO−、−Si−等の屈曲基を持った芳香族ジアミン等からなる熱可塑性ポリイミド、さらには脂環式カルボン酸無水物との共重合体などの溶剤可溶型熱可塑性ポリイミドなどがあげられる。
【0019】
ポリイミド樹脂前駆体としては、ポリイミドと同じモノマー成分から得られたポリアミック酸ワニスおよび又は分子中に感光性基を含有するポリアミック酸ワニスや、溶剤可溶型ポリイミドワニスを使用することができる。ワニスとしては、例えば、東レの“トレニース”ワニスや“フォトニース”ワニス、宇部興産の“U−ワニス”などがあげられ、ポリイミド樹脂前駆体ワニスと溶剤可溶型ポリイミドワニスを混合使用することもできる。溶剤可溶型ポリイミドワニスとしては新日鉄化学製熱可塑性ポリイミドワニス“SPI−200N”などがある。なお、溶剤可溶型ポリイミドワニスを使用する場合は、ポリイミド樹脂前駆体ワニスと混合して使用するのが好ましい。
【0020】
前記ポリイミド樹脂前駆体は、たとえば、スピンコーターやバーコーター、さらには、スクリーン印刷などを使って各種基材の上に薄膜として塗布され、通常は150℃以下の温度で乾燥される。乾燥後のポリイミド樹脂前駆体の膜厚は通常0.1〜10μmであり、また、スクリーン印刷法は基材上にフォトリソなどの工程を経ずに直接配線や接続バンプなどを形成するのに好ましい。
【0021】
パラジウムアンモニア錯塩水溶液は、パラジウムの塩酸塩,硫酸塩,酢酸塩、蓚酸塩、クエン酸塩、フタール酸塩等を、アンモニア水溶液と反応させ生成することができる。
【0022】
パラジウムアンモニア錯塩水溶液は、やや黄色の無色透明液であり、アルカリ性から酸性まで広いpH範囲で安定である。前記パラジウムアンモニア錯塩水溶液は、常温でかつ、広いpH範囲ポリアミック酸と反応することができるが、ポリアミック酸がアルカリ水溶液に可溶であるため、pH4〜7程度の弱酸性から中性で反応させることが好ましい。また、pHが4以下と低い場合は高分子との錯体形成反応が起こりにくくなり、pHが8以上になると、金属回路を形成する場合に通常使われているアルカリ現像型メッキレジストでは、感光性レジストのパターンマスクがアルカリによって剥離を起こすため、アディティブ法でのパターン形成ができなくなる。特に好ましくはpH5〜6である。パラジウムアンモニア錯塩水溶液中のパラジウムイオンの濃度は、0.1ミリモル/L以下の濃度であれば、反応に時間がかかりすぎ、5.0ミリモル/L以上の濃度であれば、不必要なパラジウムイオンの付着が多くなり、洗浄によるロスが多くなるため、0.1〜5.0ミリモル/L程度が良く、好ましくは1〜2ミリモル/L程度である。
【0023】
ポリイミド樹脂前駆体とパラジウム錯塩水溶液との反応は、通常、常温で表面にポリイミド樹脂前駆体を有する基材をパラジウムアンモニア錯塩水溶液に浸漬することによって行われる。反応に要する時間は、溶液中のパラジウムイオンの濃度やポリアミック酸の膜厚みによっても異なるが、通常は、1分間〜30分間程度である。パラジウムイオンは時間が経過するとともにポリアミック酸の内部にまで進入し、錯体形成が内部にまでできるので、密着強度の高い金属膜が得られる。ポリイミド樹脂前駆体とパラジウムイオンとの間で錯体が形成されることは、パラジウムイオンがポリイミド樹脂前駆体の官能基(カルボキシル基やアミド基)と反応して、ポリマー分子中に金属イオンが配位した錯体を形成し、一つの成分として取り込まれた状態にあるものと考えられる。実際に、図3に示すポリイミド樹脂前駆体薄膜表面のXPS測定結果、および図4に示すオージェスペクトル測定結果から、パラジウム金属錯体がポリイミド樹脂前駆体表面およびポリイミド樹脂前駆体層の深さ方向にも存在していることが確認されている。
【0024】
本発明で使用する紫外線としては、紫外線ランプや紫外線レーザー発生装置から放射される波長300nm以下の光が有効であり、特に254nm以下の紫外線が有効である。紫外線ランプとしては市販の低圧水銀灯を使用することができるが、その他、レーザー発生器などであっても良い。
【0025】
紫外線を照射するとパラジウム高分子錯体化合物が光を吸収して励起され、励起錯体分子中のパラジウムイオンが水素供与体の存在下で金属まで還元されるものと考えられる。このことは水素供与体の存在で紫外線照射した図3に示すポリイミド樹脂前駆体薄膜表面のXPSの測定結果から、パラジウムイオンが金属パラジウムに還元されていることからも明らかである。
【0026】
紫外線照射量としては、オーク製作所製紫外線照度計UV−02で測定した場合、500〜15000mJ/cm2程度のエネルギーが必要であり、特に、1500〜9000mJ/cm2程度が好ましい。紫外線照射量が500mJ/cm2以下になるとパラジウム化合物のパラジウムイオンがパラジウム金属に完全に還元されない場合があり、15000mJ/cm2以上になるとポリイミド樹脂前駆体層が損傷する場合がある。紫外線照射量が1500〜9000mJ/cm2の場合、パラジウムイオンがパラジウム金属に安定して還元される。
【0027】
上述の紫外線照射量を得るのに必要な照射時間は、紫外線の照射強度によって異なるが、通常の紫外線ランプの照射時間は1分〜20分間程度、レーザー発生装置からの紫外線照射の場合は、照射時間は60秒以内である。
【0028】
水素供与体としては、水、アルコールさらにアルコール水溶液などがあるが、特に、上述の紫外線波長域に紫外線吸収があまりなく、ポリイミド樹脂前駆体層の表面と適度な濡れ性を有するアルコール水溶液が好んで用いられる。なお、金属イオンを金属に還元する反応は、酸素があると反応が阻害されるので、照射時は酸素(空気)を遮断することが好ましい。
【0029】
紫外線照射は一般に水素供与体の中にポリイミド基材を浸漬させた状態で行うが、水素供与体が水の場合は、外部から水分を供給しながら紫外線を照射することや、ポリイミド樹脂前駆体層に水分を十分に吸着させて紫外線を照射することは可能である。
【0030】
なお、パラジウム化合物と紫外線の光反応を促進するために、金属とポリイミドとの密着性などに殊更の悪影響がない限り、増感剤を添加することは可能である。
【0031】
下地金属層を形成するための無電解メッキ浴としては、特に制限されないが、金属イオンに対するバリア性とポリイミド樹脂前駆体の耐薬品性(耐アルカリ性)から考えて通常は中性から弱酸性の次亜りん酸塩系やジメチルアミノボラン系のニッケルメッキ浴が好んで用いられる。また、電解メッキ浴には通常の電解銅メッキや電解ニッケルメッキ浴などを用いることができる。
【0032】
図2は、本発明における電子部品用回路基板の製造方法の第2の実施形態を示したものである。
【0033】
ポリイミド基材12表面をKOHなどのアルカリ液21によるアルカリ加水分解によってポリイミド樹脂前駆体層13にし(図2(a))、ポリイミド樹脂前駆体層13上にメッキレジストパターン20を形成し(図2(b))、パラジウムアンモニア錯塩水溶液14で被覆してメッキレジストパターン20の開口部のポリイミド樹脂前駆体13を感光性高分子パラジウム錯体15にする(図2(c))。次いで、水素供与体16の存在下において、金属回路形成部17に紫外線18を照射し(図2(d))、無電解メッキにより金属層19を形成した後(図2(e))、電解メッキをし(図2(f))、メッキレジストパターン20を剥離し(図2(g))、イミド化処理を行(図2(h))非金属回路形成部の感光性高分子パラジウム錯体層22をポリイミドエッチング液でエッチングして除去する(図2(i))ことにより電子部品用回路基板11を得る。
【0034】
イミド化処理では、400℃付近まで加熱することによりポリイミド樹脂前駆体層がイミド化されポリイミド樹脂層となり、耐熱性や耐薬品性が改善され、金属回路形成後の線間絶縁性も優れる。なお、イミド化処理は真空中や窒素雰囲気中など酸素を含まない雰囲気中で加熱することが好ましい。
【0035】
上述の実施態様に基づいた実施例は以下の通りである。
【0036】
(実施例1)
宇部興産製のポリイミド基材“ユーピレックス−S”の試片10×10cm(厚さ50μm)を1%NaOH水溶液および1%のHCL水溶液により表面を粗化し、イオン交換膜により精製した純水により洗浄して乾燥した後、東レ製のポリイミド前駆体ワニス“トレニース”をバーコーターで塗布し、室温および120℃で乾燥したところ、ポリイミド樹脂前駆体層の厚みは5μmであった。
【0037】
塩化パラジウム300mgを1000mlの純水に溶解し、塩化パラジウム水溶液を生成した。次いで28%アンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した。前記溶液の色調は黄色からピンク色を経て無色透明に変化した。その後、pHが7になるまで1NのHClを添加し、パラジウムアンモニア錯塩溶液を得た。前記溶液のパラジウム濃度は1ミリモル/Lであった。
【0038】
次いで、前記ポリイミド基材を前記パラジウムアンモニア錯塩水溶液に25℃で3分間浸漬した後、純水で十分水洗し、20%エタノール水溶液を滴下して石英板の間に挟みエタノール水溶液膜を形成した状態で、低圧水銀灯からの紫外線を3分間照射した。紫外線の照射量はオーク製作所製の照度計UV−02で測定した結果、4500mJ/cm2であった。
【0039】
次に前記ポリイミド基材を65℃に加温されたメルテック製の次亜りん酸ソーダを還元剤とした無電解ニッケル浴“エンプレートNi―426”(PH=6〜7)で5分間浸漬させたところ、光照射部に均一な金属光沢のあるニッケルメッキが進行し、ニッケルメッキ膜を有するポリイミド基材が得られた。
【0040】
このニッケルメッキされたポリイミド基材について、ニッケルメッキ部およびポリイミド樹脂前駆体層部の深さ方向のオージェスペクトルを測定した結果は図4と同様であり、ニッケルがメッキ部からポリイミド樹脂前駆体層部の深部まで検出され、ニッケル金属がポリイミド樹脂前駆体層の中まで存在していることが確認された。
【0041】
その後、前記基材に電解銅メッキ浴で3.3A/dm2の電流密度で電解メッキを行い、銅膜厚24μmのポリイミド基材を得た。前記ポリイミド基材を窒素雰囲気中において150℃で乾燥した後、さらに、350℃まで加熱し、350℃の状態で15分間保持してポリイミド樹脂前駆体層のイミド化を行った後、窒素雰囲気中で常温(20℃〜25℃)まで冷却し、金属膜を有するポリイミド基材を得た。
【0042】
得られた金属膜を有するポリイミド基材の金属膜とポリイミド樹脂間の接着(密着)強度はJISC−6481に定められた方法で測定したところ、6N/cm(600gf/cm)であった。
【0043】
次に、上述の方法で得られた金属膜を有するポリイミド基材にドライフィルム型フォトレジストを用いて、露光・現像した後、塩化第二鉄系エッチャントでL/S=100/100(μm)の配線パターンを作製し、スペース部のニッケルメッキ層を酸性過酸化水素液でエッチングし、さらに、濃度0.1モル/Lの過マンガン酸カリウム水溶液で感光性高分子錯体薄膜を除去した。得られた金属回路を有する基材の配線間の絶縁抵抗をJISC−5016で測定した結果、印加電圧100Vで1.5×1012Ω・cmであった。
【0044】
(実施例2)
東レデュポン製のポリイミド基材“カプトンEN”の試片10×10cm(厚み50μm)を1%NaOH水溶液および1%のHCL水溶液により表面を粗化し、純水により洗浄して乾燥した後、東レ製“セミコファイン”ワニスをバーコーターで塗布し、室温および120℃で乾燥したところ、ポリイミド樹脂前駆体層の厚みは約3μmであった。
【0045】
塩化パラジウム300mgを1000mlの純水に溶解し、塩化パラジウム水溶液を生成した。次いで28%アンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した後、pHが6になるまで1NのHClを添加し、パラジウムアンモニア錯塩溶液を得た。
【0046】
次いで、前記パラジウムアンモニア錯塩水溶液に前記ポリイミド基材を25℃で3分間浸漬した後、純水で十分水洗し、純水を滴下して石英板の間に挟み水膜を形成した状態で、低圧水銀灯からの紫外線を5分間照射した。紫外線の照射量はオーク製作所製の照度計UV−02で測定した結果、7500mJ/cm2であった。
【0047】
次に前記ポリイミド基材を65℃に加温されたメルテック製の次亜りん酸ソーダを還元剤とした無電解ニッケル浴“エンプレートNi―426”(PH=6〜7)で5分間浸漬させたところ、光照射部に均一な金属光沢のあるニッケルメッキが進行し、ニッケルメッキ膜を有するポリイミド基材が得られた。
【0048】
その後、前記基材に電解銅メッキ浴で3.3A/dm2の電流密度で電解メッキを行い、銅膜厚24μmのポリイミド基材を得た。得られた金属膜を有するポリイミド基材の金属膜とポリイミド樹脂間の接着(密着)強度はJISC−6481に定められた方法で測定したところ、8N/cm(800gf/cm)であった。
【0049】
(実施例3)
東レデュポン製のポリイミド基材“カプトンEN”の試片試片10×10cm(厚み50μm)を5NのKOH水溶液に40℃で3分間浸漬し、1NのHCL水溶液で中和し、純水により洗浄した後、120℃で乾燥し、ポリイミド樹脂前駆体層を有するポリイミド基材を得た。
【0050】
塩化パラジウム300mgを1000mlの純水に溶解し、塩化パラジウム水溶液を生成した。次いで28%アンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した後、pHが4になるまで1NのHClを添加し、パラジウムアンモニア錯塩溶液を得た。
【0051】
前記パラジウムアンモニア錯塩水溶液に前記ポリイミド基材を25℃で5分間浸漬した後、純水で十分水洗し、純水を滴下して石英板の間に挟み水膜を形成した状態で、低圧水銀灯からの紫外線を5分間照射した。紫外線の照射量はオーク製作所製の照度計UV−02で測定した結果、7500mJ/cm2であった。
【0052】
次に前記ポリイミド基材を65℃に加温されたメルテック製の次亜りん酸ソーダを還元剤とした無電解ニッケル浴“エンプレートNi―426”(PH=6〜7)で5分間浸漬させたところ、光照射部に均一な金属光沢のあるニッケルメッキが進行し、ニッケルメッキ膜を有するポリイミド基材が得られた。
【0053】
(実施例4)
実施例2と同様にして、ポリイミド樹脂前駆体層を有するポリイミド基材を得た。
【0054】
次いで、前記ポリイミド樹脂前駆体層上にニゴーモートン社製のアクリル系感光性ドライフィルム“NIT225”(厚さ25μm)を130℃でラミネートし、L/S=50/50(μm)の櫛形電極回路パターンのポリエステルマスクを通して、高圧水銀ランプからの紫外線拡散光を85mJ/cm2になるよう露光処理した。感光性樹脂を専用の現像液(1%Na2CO3水溶液)で常温で30秒間現像処理し水洗し、メッキレジストマスクを有する基材を得た。
【0055】
塩化パラジウム300mgを1000mlの純水に溶解し、塩化パラジウム水溶液を生成した。次いで28%アンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した後、pHが5.5になるまで1NのHClを添加し、パラジウムアンモニア錯塩溶液を得た。
【0056】
次いで、前記ポリイミド基材を前記パラジウムアンモニア錯塩水溶液に25℃で5分間浸漬した後、純水で十分水洗し、純水を滴下して石英板の間に挟み水膜を形成した状態で、低圧水銀灯からの紫外線を5分間照射した。紫外線の照射量はオーク製作所製の照度計UV−02で測定した結果、7500mJ/cm2であった。
【0057】
次に前記ポリイミド基材を65℃に加温されたメルテック製の次亜りん酸ソーダを還元剤とした無電解ニッケル浴“エンプレートNi―426”(PH=6〜7)で5分間浸漬させたところ、光照射部(メッキレジストマスクからセミコファインが露出している部分)に均一な金属光沢のあるニッケルメッキが進行し、ニッケル配線を有するポリイミド基材が得られた。
【0058】
さらに、電解銅メッキ浴で3.3A/dm2の電流密度で電気メッキを行ったところ、銅膜厚6μmの銅/ニッケル配線の櫛型電極回路が得られた。得られたポリイミド基材の配線間の絶縁抵抗をJISC−5016で測定した結果、印加電圧100Vで1.5x1012Ω・cmであった。
【0059】
(実施例5)
8インチシリコンウエハーに、東レ製のポリイミド樹脂前駆体ワニス”セミコファイン”をスピンコーターで塗布し、室温および120℃で乾燥した。ポリイミド樹脂前駆体層の厚みは約2μmであった。
【0060】
次いで、前記ポリイミド樹脂前駆体層表面にニゴーモートン製のアルカリ現像型のドライフィルム”NIT215”をラミネートし、L/S=35/35の櫛型電極回路パターンのマスクを通して高圧水銀ランプからの紫外線拡散光を85mJ/cm2になるよう露光処理した。感光性樹脂を専用の現像液(1%Na2CO3水溶液)で常温で30秒間現像処理し水洗し、メッキレジストマスクを有する基材を得た。
【0061】
次いで、実施例4と同様の方法で得たパラジウムアンモニア錯塩水溶液に25℃で3分間浸漬した後、純水で十分水洗し、純水を滴下して石英板に挟み水膜を形成した状態で、低圧水銀灯からの紫外線を5分間照射した。紫外線の照射量はオーク製作所製の照度計UV−02で測定した結果、7500mJ/cm2であった。
【0062】
次に前記ポリイミド基材を65℃に加温されたメルテック製の次亜りん酸ソーダを還元剤とした無電解ニッケル浴“エンプレートNi―426”(PH=6〜7)で5分間浸漬させたところ、光照射部(メッキレジストマスクからセミコファインが露出している部分)に均一な金属光沢のあるニッケルメッキが進行し、ニッケル配線を有するポリイミド基材が得られた。
【0063】
さらに、電解銅メッキ浴で3.3A/dm2の電流密度で電気メッキを行ったところ、銅膜厚6μmの銅/ニッケル配線の櫛型電極回路が得られた。得られたポリイミド基材の配線間の絶縁抵抗をJISC−5016で測定した結果、印加電圧100Vで1.4×1012Ω・cmであった。
【0064】
(実施例6)
10cm×10cmのセラミック基板に、東レ製のポリイミド樹脂前駆体ワニス”セミコファイン”をスピンコーターで塗布し、室温および120℃で乾燥する工程を2回行った。ポリイミド樹脂前駆体層の厚みは約3μmであった。
【0065】
次いで、前記ポリイミド樹脂前駆体層表面にニゴーモートン製のアルカリ現像型ドライフィルム”NIT225”をラミネートし、L/S=50/50の櫛型電極回路パターンのマスクを通して露光・現像することにより、メッキレジストパターンを形成した。
【0066】
次いで、実施例4と同様の方法で得たパラジウムアンモニア錯塩水溶液に25℃で5分間浸漬した後、純水で十分水洗し、純水を滴下して石英板に挟み水膜を形成した状態で、低圧水銀灯からの紫外線を5分間照射した。紫外線の照射量はオーク製作所製の照度計UV−02で測定した結果、7500mJ/cm2であった。
【0067】
次に前記ポリイミド基材を65℃に加温されたメルテック製の次亜りん酸ソーダを還元剤とした無電解ニッケル浴“エンプレートNi―426”(PH=6〜7)で5分間浸漬させたところ、光照射部(メッキレジストマスクからセミコファインが露出している部分)に均一な金属光沢のあるニッケルメッキが進行し、ニッケル配線を有するポリイミド基材が得られた。
【0068】
さらに、電解銅メッキ浴で3.3A/dm2の電流密度で電気メッキを行ったところ、銅膜厚8μmの銅/ニッケル配線の櫛型電極回路が得られた。得られたポリイミド基材の配線間の絶縁抵抗をJISC−5016で測定した結果、印加電圧100Vで1.5×1012Ω・cmであった。
(比較例1)実施例4において、パラジウムアンモニア錯塩溶液として塩化パラジウム水溶液にアンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した後、HClを添加せずにアルカリ性のパラジウムアンモニア錯塩溶液を用いる以外は同じ条件で実験を行ったところ、パラジウムアンモニア錯塩溶液に基材を浸漬中にメッキレジストマスクが剥離し、メッキがメッキレジストマスクに関係なく不均一についた。
(比較例2)実施例5において、パラジウムアンモニア錯塩溶液として塩化パラジウム水溶液にアンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した後、HClを添加せずにアルカリ性のパラジウムアンモニア錯塩溶液を用いる以外は同じ条件で実験を行ったところ、比較例1と同様にメッキが不均一についた。
(比較例3)実施例6において、パラジウムアンモニア錯塩溶液として塩化パラジウム水溶液にアンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した後、HClを添加せずにアルカリ性のパラジウムアンモニア錯塩溶液を用いる以外は同じ条件で実験を行ったところ、比較例1および比較例2と同様にメッキが不均一についた。
【0069】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係る電子部品用回路基材の製造方法によれば、ポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、パラジウムアンモニア錯塩水溶液によりポリイミド樹脂前駆体を感光性高分子パラジウム錯体にし、水素供与体の存在下において金属層形成部に紫外線を照射した後に無電解メッキにより金属層を形成するようにしたので、基材と密着強度が高い金属層を従来より少ない工程で、容易に形成することができる。
【0070】
また、基材がポリイミドの場合は、ポリミック酸を塗布する代わりに、ポリイミド表面をアルカリ加水分解すことによって表面にポリアミック酸層を形成しても同じように金属膜を形成することができる。この方法はパラジウムアンモニア錯塩が広いpHの範囲で安定であり、中性弱酸性でも使用できるので、アルカリ現像型メッキレジストを使用することが可能になり工業的な利用価値が高い。
【0071】
さらに、ポリアミック酸を塗布する方法は、樹脂、ガラス、シリコンウエハーなど多くの基材に適用できる上に、適度な膜厚みのポリアミック酸膜を形成できるため、ポリイミド絶縁膜の厚みを自由に制御しながら、金属配線を形成することができ、多層積層基板へ応用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の金属回路パターンの形成方法を断面的に示す図である。
【図2】本発明の他の実施例の金属回路パターンの形成方法を断面的に示す図である。
【図3】紫外線照射前後におけるポリイミド樹脂前駆体層のパラジウムの結合エネルギー変化を示すXPS分析結果を示す図である。
【図4】無電解ニッケルメッキ後のニッケルメッキ部およびポリイミド樹脂前駆体層のオージェ分析チャート図である。
【符号の説明】
1 ポリイミド基材
2 ポリイミド樹脂前駆体層
3 感光性樹脂
7 水素供与体
8 紫外線
【発明の属する技術分野】
本発明は微細加工用の電子部品材料および回路基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂基材表面に金属回路を形成する方法としては、ポリイミドフィルムの表面をアルカリ加水分解し、ポリアミック酸とした後、硫酸銅や塩化パラジウムを吸着させた後、蟻酸ソーダを還元剤として低圧水銀灯の紫外線を照射する方法(例えば、非特許文献1参照。)や硫酸銅塩水溶液にエキシマレーザーを照射して、フィルム上に直接金属銅を析出させる方法(例えば、非特許文献2参照。)が報告されている。しかし、前者では紫外線照射による触媒核の形成に要する時間が非常に長いだけでなく、還元剤の分解でNaOHが生成してアルカリ性となり、ポリイミド自体の劣化が起こるという問題がある。また後者ではレーザーの照射条件が非常に厳しく、低照射量では金属膜は非常に薄い膜しか得られず、また、照射量が多い場合は析出した金属膜やポリイミドが損傷されるという問題がある。
【0003】
また、基材の表面に触媒金属のイオンを錯化可能なカルボン酸基のみを有する錯化剤を有する触媒処理液を付着させ、パターンマスクを介して光を照射し、触媒活性を失活させた後、光の未照射部分にめっき回路を形成することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、前記めっき回路形成方法においては、回路形成すべき部分は、光が照射されず、かつ、触媒処理液が付着している部分に無電解めっきを形成することにより回路を形成する方法であり、この方法では上記触媒処理液は触媒金属のイオンを錯化可能なカルボン酸基を含有する錯化剤溶液が、基材に吸着されているだけであるため、形成された金属回路の精度や密着強度が低いという問題があった。
【特許文献1】
特開平6−77626号公報
【非特許文献1】
西岡太郎、他3名、「ポリイミド樹脂の表面改質および紫外線照射を利用する銅回路の形成」、第13回エレクトロニクス実装学術講演大会講演論文集、1999年3月、P183
【非特許文献2】
富田 雅明、外2名、「ポリイミドフィルム上への銅回路パターンの直接形成」、レーザー学会学術講演会第19回年次大会講演予稿集、1999年1月28日、P90
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、上記のような問題点に着目し、とくに、基材との密着強度が高い金属膜または金属回路を各種基材上に形成する電子部品用回路基材を製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、表面にポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、パラジウムアンモニア錯塩水溶液で被覆して前記ポリイミド樹脂前駆体を感光性高分子パラジウム錯体にし、水素供与体の存在下において金属層形成部に紫外線を照射し、無電解メッキにより基材上に金属層を形成することを特徴とするものである。
【0007】
この場合、ポリイミド樹脂前駆体が、常温でパラジウムアンモニア錯塩水溶液と反応して高分子パラジウム錯体を形成する。さらに基材と密着強度が高い金属層を形成することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、表面にポリイミド樹脂前駆体層を有する基材の表面に開口部を有するメッキレジストパターンを形成し、パラジウムアンモニア錯塩水溶液で被覆して前記メッキレジスト回路パターンの開口部のポリイミド樹脂前駆体を感光性高分子パラジウム錯体にし、水素供与体の存在下において紫外線を照射し、無電解メッキにより基材上に金属層を形成することを特徴とするものである。
【0009】
この場合、メッキレジストパターンを形成した後に、パラジウムアンモニア錯塩水溶液を反応させるため、金属層をよりシャープに形成することができる。
【0010】
また、ポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、ポリイミド樹脂前駆体溶液を基材の表面に塗布・乾燥することによって形成したり、ポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、ポリイミド基材の表面をアルカリ加水分解によってポリイミド樹脂前駆体層にすることによって形成することを特徴とするものである。
【0011】
また、照射する紫外線の波長が300nm以下の紫外線であり、また水素供与体として水、アルコールまたはアルコール水溶液のいずれかであることを特徴とするものである。
【0012】
また、無電解メッキにより基材上に金属膜または金属回路を形成した後、電解メッキ、イミド化処理を行うことを特徴とするものである。
【0013】
また、基材が、樹脂、セラミック、シリコンの少なくとも1つからなる基材であり、パラジウムアンモニア錯塩水溶液がpH4〜7であることを特徴とするものである。パラジウムアンモニア錯塩水溶液はアルカリ水溶液に可溶であるため、pH4〜7の弱酸性から中性で反応させることが好ましい。pHが4より小さい強酸性の場合、パラジウムアンモニア錯塩水溶液とポリイミド樹脂前駆体との錯体形成反応が起こりにくくなる。また、pHが8以上のアルカリ性になると、金属回路を形成する場合に通常使われているアルカリ現像型メッキレジストでは、感光性レジストのパターンマスクがアルカリによって剥離を起こすため、アディティブ法でのパターン形成ができなくなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
各種電子部品用回路基板の製造方法に関して、操作が容易でコスト面でも優れた方法についてあらゆる方面から鋭意検討した結果、ポリアミック酸型ポリイミド樹脂前駆体が常温でパラジウムアンモニア錯塩水溶液と反応して、高分子パラジウム錯体を形成すること、さらに、この高分子パラジウム錯体においては、錯体中のパラジウムイオンが水素供与体の存在下で紫外線照射によってパラジウム金属まで還元される感光性高分子パラジウム錯体であることを見出した。
【0015】
その結果、ポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、パラジウムアンモニア錯塩水溶液に浸漬して反応させ、ポリアミック酸とパラジウムからなる感光性高分子ポリイミド前駆体樹脂錯体層を形成させ、紫外線を照射した後で、無電解メッキを行うことにより、ポリアミック酸樹脂と金属とが一体となった金属層をもった各種基材を形成することができることを見出した。そして、さらに、金属層に電解メッキを行ったり、また、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸をイミド化することにより、耐熱性や耐薬品性を上げることができることを見出した。
【0016】
図1は、本発明における電子部品用回路基板の製造方法の第1の実施形態を示したものである。
【0017】
セラミック基材2上にポリイミド樹脂前駆体溶液を塗布・乾燥させてポリイミド樹脂前駆体層3を形成し(図1(a))、パラジウムアンモニア錯塩水溶液4で被覆してポリイミド樹脂前駆体を感光性高分子パラジウム錯体5にする(図1(b))。次いで、水素供与体6の存在下において、金属層形成部7に紫外線8をパターンマスク10を介して照射し(図1(c))、無電解メッキにより金属層9を形成し(図1(d))電子部品用回路基材1を得る。
【0018】
本発明で使用される基材としては、樹脂、セラミック、ガラス等の絶縁性基材やシリコン基板などがある。樹脂基材としては、イミド化のため加熱することを考慮すると、ポリイミドや液晶ポリマー等のような熱変形温度が280℃以上のものが好ましく、たとえば、ピロメリット酸無水物(PMDA)とオキシジアニリン(ODA)からなるポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BTDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)からなるポリイミドおよびこれらのモノマーの共重合体、芳香族テトラカルボン酸無水物と分子中に−O−、−CO−、−Si−等の屈曲基を持った芳香族ジアミン等からなる熱可塑性ポリイミド、さらには脂環式カルボン酸無水物との共重合体などの溶剤可溶型熱可塑性ポリイミドなどがあげられる。
【0019】
ポリイミド樹脂前駆体としては、ポリイミドと同じモノマー成分から得られたポリアミック酸ワニスおよび又は分子中に感光性基を含有するポリアミック酸ワニスや、溶剤可溶型ポリイミドワニスを使用することができる。ワニスとしては、例えば、東レの“トレニース”ワニスや“フォトニース”ワニス、宇部興産の“U−ワニス”などがあげられ、ポリイミド樹脂前駆体ワニスと溶剤可溶型ポリイミドワニスを混合使用することもできる。溶剤可溶型ポリイミドワニスとしては新日鉄化学製熱可塑性ポリイミドワニス“SPI−200N”などがある。なお、溶剤可溶型ポリイミドワニスを使用する場合は、ポリイミド樹脂前駆体ワニスと混合して使用するのが好ましい。
【0020】
前記ポリイミド樹脂前駆体は、たとえば、スピンコーターやバーコーター、さらには、スクリーン印刷などを使って各種基材の上に薄膜として塗布され、通常は150℃以下の温度で乾燥される。乾燥後のポリイミド樹脂前駆体の膜厚は通常0.1〜10μmであり、また、スクリーン印刷法は基材上にフォトリソなどの工程を経ずに直接配線や接続バンプなどを形成するのに好ましい。
【0021】
パラジウムアンモニア錯塩水溶液は、パラジウムの塩酸塩,硫酸塩,酢酸塩、蓚酸塩、クエン酸塩、フタール酸塩等を、アンモニア水溶液と反応させ生成することができる。
【0022】
パラジウムアンモニア錯塩水溶液は、やや黄色の無色透明液であり、アルカリ性から酸性まで広いpH範囲で安定である。前記パラジウムアンモニア錯塩水溶液は、常温でかつ、広いpH範囲ポリアミック酸と反応することができるが、ポリアミック酸がアルカリ水溶液に可溶であるため、pH4〜7程度の弱酸性から中性で反応させることが好ましい。また、pHが4以下と低い場合は高分子との錯体形成反応が起こりにくくなり、pHが8以上になると、金属回路を形成する場合に通常使われているアルカリ現像型メッキレジストでは、感光性レジストのパターンマスクがアルカリによって剥離を起こすため、アディティブ法でのパターン形成ができなくなる。特に好ましくはpH5〜6である。パラジウムアンモニア錯塩水溶液中のパラジウムイオンの濃度は、0.1ミリモル/L以下の濃度であれば、反応に時間がかかりすぎ、5.0ミリモル/L以上の濃度であれば、不必要なパラジウムイオンの付着が多くなり、洗浄によるロスが多くなるため、0.1〜5.0ミリモル/L程度が良く、好ましくは1〜2ミリモル/L程度である。
【0023】
ポリイミド樹脂前駆体とパラジウム錯塩水溶液との反応は、通常、常温で表面にポリイミド樹脂前駆体を有する基材をパラジウムアンモニア錯塩水溶液に浸漬することによって行われる。反応に要する時間は、溶液中のパラジウムイオンの濃度やポリアミック酸の膜厚みによっても異なるが、通常は、1分間〜30分間程度である。パラジウムイオンは時間が経過するとともにポリアミック酸の内部にまで進入し、錯体形成が内部にまでできるので、密着強度の高い金属膜が得られる。ポリイミド樹脂前駆体とパラジウムイオンとの間で錯体が形成されることは、パラジウムイオンがポリイミド樹脂前駆体の官能基(カルボキシル基やアミド基)と反応して、ポリマー分子中に金属イオンが配位した錯体を形成し、一つの成分として取り込まれた状態にあるものと考えられる。実際に、図3に示すポリイミド樹脂前駆体薄膜表面のXPS測定結果、および図4に示すオージェスペクトル測定結果から、パラジウム金属錯体がポリイミド樹脂前駆体表面およびポリイミド樹脂前駆体層の深さ方向にも存在していることが確認されている。
【0024】
本発明で使用する紫外線としては、紫外線ランプや紫外線レーザー発生装置から放射される波長300nm以下の光が有効であり、特に254nm以下の紫外線が有効である。紫外線ランプとしては市販の低圧水銀灯を使用することができるが、その他、レーザー発生器などであっても良い。
【0025】
紫外線を照射するとパラジウム高分子錯体化合物が光を吸収して励起され、励起錯体分子中のパラジウムイオンが水素供与体の存在下で金属まで還元されるものと考えられる。このことは水素供与体の存在で紫外線照射した図3に示すポリイミド樹脂前駆体薄膜表面のXPSの測定結果から、パラジウムイオンが金属パラジウムに還元されていることからも明らかである。
【0026】
紫外線照射量としては、オーク製作所製紫外線照度計UV−02で測定した場合、500〜15000mJ/cm2程度のエネルギーが必要であり、特に、1500〜9000mJ/cm2程度が好ましい。紫外線照射量が500mJ/cm2以下になるとパラジウム化合物のパラジウムイオンがパラジウム金属に完全に還元されない場合があり、15000mJ/cm2以上になるとポリイミド樹脂前駆体層が損傷する場合がある。紫外線照射量が1500〜9000mJ/cm2の場合、パラジウムイオンがパラジウム金属に安定して還元される。
【0027】
上述の紫外線照射量を得るのに必要な照射時間は、紫外線の照射強度によって異なるが、通常の紫外線ランプの照射時間は1分〜20分間程度、レーザー発生装置からの紫外線照射の場合は、照射時間は60秒以内である。
【0028】
水素供与体としては、水、アルコールさらにアルコール水溶液などがあるが、特に、上述の紫外線波長域に紫外線吸収があまりなく、ポリイミド樹脂前駆体層の表面と適度な濡れ性を有するアルコール水溶液が好んで用いられる。なお、金属イオンを金属に還元する反応は、酸素があると反応が阻害されるので、照射時は酸素(空気)を遮断することが好ましい。
【0029】
紫外線照射は一般に水素供与体の中にポリイミド基材を浸漬させた状態で行うが、水素供与体が水の場合は、外部から水分を供給しながら紫外線を照射することや、ポリイミド樹脂前駆体層に水分を十分に吸着させて紫外線を照射することは可能である。
【0030】
なお、パラジウム化合物と紫外線の光反応を促進するために、金属とポリイミドとの密着性などに殊更の悪影響がない限り、増感剤を添加することは可能である。
【0031】
下地金属層を形成するための無電解メッキ浴としては、特に制限されないが、金属イオンに対するバリア性とポリイミド樹脂前駆体の耐薬品性(耐アルカリ性)から考えて通常は中性から弱酸性の次亜りん酸塩系やジメチルアミノボラン系のニッケルメッキ浴が好んで用いられる。また、電解メッキ浴には通常の電解銅メッキや電解ニッケルメッキ浴などを用いることができる。
【0032】
図2は、本発明における電子部品用回路基板の製造方法の第2の実施形態を示したものである。
【0033】
ポリイミド基材12表面をKOHなどのアルカリ液21によるアルカリ加水分解によってポリイミド樹脂前駆体層13にし(図2(a))、ポリイミド樹脂前駆体層13上にメッキレジストパターン20を形成し(図2(b))、パラジウムアンモニア錯塩水溶液14で被覆してメッキレジストパターン20の開口部のポリイミド樹脂前駆体13を感光性高分子パラジウム錯体15にする(図2(c))。次いで、水素供与体16の存在下において、金属回路形成部17に紫外線18を照射し(図2(d))、無電解メッキにより金属層19を形成した後(図2(e))、電解メッキをし(図2(f))、メッキレジストパターン20を剥離し(図2(g))、イミド化処理を行(図2(h))非金属回路形成部の感光性高分子パラジウム錯体層22をポリイミドエッチング液でエッチングして除去する(図2(i))ことにより電子部品用回路基板11を得る。
【0034】
イミド化処理では、400℃付近まで加熱することによりポリイミド樹脂前駆体層がイミド化されポリイミド樹脂層となり、耐熱性や耐薬品性が改善され、金属回路形成後の線間絶縁性も優れる。なお、イミド化処理は真空中や窒素雰囲気中など酸素を含まない雰囲気中で加熱することが好ましい。
【0035】
上述の実施態様に基づいた実施例は以下の通りである。
【0036】
(実施例1)
宇部興産製のポリイミド基材“ユーピレックス−S”の試片10×10cm(厚さ50μm)を1%NaOH水溶液および1%のHCL水溶液により表面を粗化し、イオン交換膜により精製した純水により洗浄して乾燥した後、東レ製のポリイミド前駆体ワニス“トレニース”をバーコーターで塗布し、室温および120℃で乾燥したところ、ポリイミド樹脂前駆体層の厚みは5μmであった。
【0037】
塩化パラジウム300mgを1000mlの純水に溶解し、塩化パラジウム水溶液を生成した。次いで28%アンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した。前記溶液の色調は黄色からピンク色を経て無色透明に変化した。その後、pHが7になるまで1NのHClを添加し、パラジウムアンモニア錯塩溶液を得た。前記溶液のパラジウム濃度は1ミリモル/Lであった。
【0038】
次いで、前記ポリイミド基材を前記パラジウムアンモニア錯塩水溶液に25℃で3分間浸漬した後、純水で十分水洗し、20%エタノール水溶液を滴下して石英板の間に挟みエタノール水溶液膜を形成した状態で、低圧水銀灯からの紫外線を3分間照射した。紫外線の照射量はオーク製作所製の照度計UV−02で測定した結果、4500mJ/cm2であった。
【0039】
次に前記ポリイミド基材を65℃に加温されたメルテック製の次亜りん酸ソーダを還元剤とした無電解ニッケル浴“エンプレートNi―426”(PH=6〜7)で5分間浸漬させたところ、光照射部に均一な金属光沢のあるニッケルメッキが進行し、ニッケルメッキ膜を有するポリイミド基材が得られた。
【0040】
このニッケルメッキされたポリイミド基材について、ニッケルメッキ部およびポリイミド樹脂前駆体層部の深さ方向のオージェスペクトルを測定した結果は図4と同様であり、ニッケルがメッキ部からポリイミド樹脂前駆体層部の深部まで検出され、ニッケル金属がポリイミド樹脂前駆体層の中まで存在していることが確認された。
【0041】
その後、前記基材に電解銅メッキ浴で3.3A/dm2の電流密度で電解メッキを行い、銅膜厚24μmのポリイミド基材を得た。前記ポリイミド基材を窒素雰囲気中において150℃で乾燥した後、さらに、350℃まで加熱し、350℃の状態で15分間保持してポリイミド樹脂前駆体層のイミド化を行った後、窒素雰囲気中で常温(20℃〜25℃)まで冷却し、金属膜を有するポリイミド基材を得た。
【0042】
得られた金属膜を有するポリイミド基材の金属膜とポリイミド樹脂間の接着(密着)強度はJISC−6481に定められた方法で測定したところ、6N/cm(600gf/cm)であった。
【0043】
次に、上述の方法で得られた金属膜を有するポリイミド基材にドライフィルム型フォトレジストを用いて、露光・現像した後、塩化第二鉄系エッチャントでL/S=100/100(μm)の配線パターンを作製し、スペース部のニッケルメッキ層を酸性過酸化水素液でエッチングし、さらに、濃度0.1モル/Lの過マンガン酸カリウム水溶液で感光性高分子錯体薄膜を除去した。得られた金属回路を有する基材の配線間の絶縁抵抗をJISC−5016で測定した結果、印加電圧100Vで1.5×1012Ω・cmであった。
【0044】
(実施例2)
東レデュポン製のポリイミド基材“カプトンEN”の試片10×10cm(厚み50μm)を1%NaOH水溶液および1%のHCL水溶液により表面を粗化し、純水により洗浄して乾燥した後、東レ製“セミコファイン”ワニスをバーコーターで塗布し、室温および120℃で乾燥したところ、ポリイミド樹脂前駆体層の厚みは約3μmであった。
【0045】
塩化パラジウム300mgを1000mlの純水に溶解し、塩化パラジウム水溶液を生成した。次いで28%アンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した後、pHが6になるまで1NのHClを添加し、パラジウムアンモニア錯塩溶液を得た。
【0046】
次いで、前記パラジウムアンモニア錯塩水溶液に前記ポリイミド基材を25℃で3分間浸漬した後、純水で十分水洗し、純水を滴下して石英板の間に挟み水膜を形成した状態で、低圧水銀灯からの紫外線を5分間照射した。紫外線の照射量はオーク製作所製の照度計UV−02で測定した結果、7500mJ/cm2であった。
【0047】
次に前記ポリイミド基材を65℃に加温されたメルテック製の次亜りん酸ソーダを還元剤とした無電解ニッケル浴“エンプレートNi―426”(PH=6〜7)で5分間浸漬させたところ、光照射部に均一な金属光沢のあるニッケルメッキが進行し、ニッケルメッキ膜を有するポリイミド基材が得られた。
【0048】
その後、前記基材に電解銅メッキ浴で3.3A/dm2の電流密度で電解メッキを行い、銅膜厚24μmのポリイミド基材を得た。得られた金属膜を有するポリイミド基材の金属膜とポリイミド樹脂間の接着(密着)強度はJISC−6481に定められた方法で測定したところ、8N/cm(800gf/cm)であった。
【0049】
(実施例3)
東レデュポン製のポリイミド基材“カプトンEN”の試片試片10×10cm(厚み50μm)を5NのKOH水溶液に40℃で3分間浸漬し、1NのHCL水溶液で中和し、純水により洗浄した後、120℃で乾燥し、ポリイミド樹脂前駆体層を有するポリイミド基材を得た。
【0050】
塩化パラジウム300mgを1000mlの純水に溶解し、塩化パラジウム水溶液を生成した。次いで28%アンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した後、pHが4になるまで1NのHClを添加し、パラジウムアンモニア錯塩溶液を得た。
【0051】
前記パラジウムアンモニア錯塩水溶液に前記ポリイミド基材を25℃で5分間浸漬した後、純水で十分水洗し、純水を滴下して石英板の間に挟み水膜を形成した状態で、低圧水銀灯からの紫外線を5分間照射した。紫外線の照射量はオーク製作所製の照度計UV−02で測定した結果、7500mJ/cm2であった。
【0052】
次に前記ポリイミド基材を65℃に加温されたメルテック製の次亜りん酸ソーダを還元剤とした無電解ニッケル浴“エンプレートNi―426”(PH=6〜7)で5分間浸漬させたところ、光照射部に均一な金属光沢のあるニッケルメッキが進行し、ニッケルメッキ膜を有するポリイミド基材が得られた。
【0053】
(実施例4)
実施例2と同様にして、ポリイミド樹脂前駆体層を有するポリイミド基材を得た。
【0054】
次いで、前記ポリイミド樹脂前駆体層上にニゴーモートン社製のアクリル系感光性ドライフィルム“NIT225”(厚さ25μm)を130℃でラミネートし、L/S=50/50(μm)の櫛形電極回路パターンのポリエステルマスクを通して、高圧水銀ランプからの紫外線拡散光を85mJ/cm2になるよう露光処理した。感光性樹脂を専用の現像液(1%Na2CO3水溶液)で常温で30秒間現像処理し水洗し、メッキレジストマスクを有する基材を得た。
【0055】
塩化パラジウム300mgを1000mlの純水に溶解し、塩化パラジウム水溶液を生成した。次いで28%アンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した後、pHが5.5になるまで1NのHClを添加し、パラジウムアンモニア錯塩溶液を得た。
【0056】
次いで、前記ポリイミド基材を前記パラジウムアンモニア錯塩水溶液に25℃で5分間浸漬した後、純水で十分水洗し、純水を滴下して石英板の間に挟み水膜を形成した状態で、低圧水銀灯からの紫外線を5分間照射した。紫外線の照射量はオーク製作所製の照度計UV−02で測定した結果、7500mJ/cm2であった。
【0057】
次に前記ポリイミド基材を65℃に加温されたメルテック製の次亜りん酸ソーダを還元剤とした無電解ニッケル浴“エンプレートNi―426”(PH=6〜7)で5分間浸漬させたところ、光照射部(メッキレジストマスクからセミコファインが露出している部分)に均一な金属光沢のあるニッケルメッキが進行し、ニッケル配線を有するポリイミド基材が得られた。
【0058】
さらに、電解銅メッキ浴で3.3A/dm2の電流密度で電気メッキを行ったところ、銅膜厚6μmの銅/ニッケル配線の櫛型電極回路が得られた。得られたポリイミド基材の配線間の絶縁抵抗をJISC−5016で測定した結果、印加電圧100Vで1.5x1012Ω・cmであった。
【0059】
(実施例5)
8インチシリコンウエハーに、東レ製のポリイミド樹脂前駆体ワニス”セミコファイン”をスピンコーターで塗布し、室温および120℃で乾燥した。ポリイミド樹脂前駆体層の厚みは約2μmであった。
【0060】
次いで、前記ポリイミド樹脂前駆体層表面にニゴーモートン製のアルカリ現像型のドライフィルム”NIT215”をラミネートし、L/S=35/35の櫛型電極回路パターンのマスクを通して高圧水銀ランプからの紫外線拡散光を85mJ/cm2になるよう露光処理した。感光性樹脂を専用の現像液(1%Na2CO3水溶液)で常温で30秒間現像処理し水洗し、メッキレジストマスクを有する基材を得た。
【0061】
次いで、実施例4と同様の方法で得たパラジウムアンモニア錯塩水溶液に25℃で3分間浸漬した後、純水で十分水洗し、純水を滴下して石英板に挟み水膜を形成した状態で、低圧水銀灯からの紫外線を5分間照射した。紫外線の照射量はオーク製作所製の照度計UV−02で測定した結果、7500mJ/cm2であった。
【0062】
次に前記ポリイミド基材を65℃に加温されたメルテック製の次亜りん酸ソーダを還元剤とした無電解ニッケル浴“エンプレートNi―426”(PH=6〜7)で5分間浸漬させたところ、光照射部(メッキレジストマスクからセミコファインが露出している部分)に均一な金属光沢のあるニッケルメッキが進行し、ニッケル配線を有するポリイミド基材が得られた。
【0063】
さらに、電解銅メッキ浴で3.3A/dm2の電流密度で電気メッキを行ったところ、銅膜厚6μmの銅/ニッケル配線の櫛型電極回路が得られた。得られたポリイミド基材の配線間の絶縁抵抗をJISC−5016で測定した結果、印加電圧100Vで1.4×1012Ω・cmであった。
【0064】
(実施例6)
10cm×10cmのセラミック基板に、東レ製のポリイミド樹脂前駆体ワニス”セミコファイン”をスピンコーターで塗布し、室温および120℃で乾燥する工程を2回行った。ポリイミド樹脂前駆体層の厚みは約3μmであった。
【0065】
次いで、前記ポリイミド樹脂前駆体層表面にニゴーモートン製のアルカリ現像型ドライフィルム”NIT225”をラミネートし、L/S=50/50の櫛型電極回路パターンのマスクを通して露光・現像することにより、メッキレジストパターンを形成した。
【0066】
次いで、実施例4と同様の方法で得たパラジウムアンモニア錯塩水溶液に25℃で5分間浸漬した後、純水で十分水洗し、純水を滴下して石英板に挟み水膜を形成した状態で、低圧水銀灯からの紫外線を5分間照射した。紫外線の照射量はオーク製作所製の照度計UV−02で測定した結果、7500mJ/cm2であった。
【0067】
次に前記ポリイミド基材を65℃に加温されたメルテック製の次亜りん酸ソーダを還元剤とした無電解ニッケル浴“エンプレートNi―426”(PH=6〜7)で5分間浸漬させたところ、光照射部(メッキレジストマスクからセミコファインが露出している部分)に均一な金属光沢のあるニッケルメッキが進行し、ニッケル配線を有するポリイミド基材が得られた。
【0068】
さらに、電解銅メッキ浴で3.3A/dm2の電流密度で電気メッキを行ったところ、銅膜厚8μmの銅/ニッケル配線の櫛型電極回路が得られた。得られたポリイミド基材の配線間の絶縁抵抗をJISC−5016で測定した結果、印加電圧100Vで1.5×1012Ω・cmであった。
(比較例1)実施例4において、パラジウムアンモニア錯塩溶液として塩化パラジウム水溶液にアンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した後、HClを添加せずにアルカリ性のパラジウムアンモニア錯塩溶液を用いる以外は同じ条件で実験を行ったところ、パラジウムアンモニア錯塩溶液に基材を浸漬中にメッキレジストマスクが剥離し、メッキがメッキレジストマスクに関係なく不均一についた。
(比較例2)実施例5において、パラジウムアンモニア錯塩溶液として塩化パラジウム水溶液にアンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した後、HClを添加せずにアルカリ性のパラジウムアンモニア錯塩溶液を用いる以外は同じ条件で実験を行ったところ、比較例1と同様にメッキが不均一についた。
(比較例3)実施例6において、パラジウムアンモニア錯塩溶液として塩化パラジウム水溶液にアンモニア水溶液をpHが10になるまで添加した後、HClを添加せずにアルカリ性のパラジウムアンモニア錯塩溶液を用いる以外は同じ条件で実験を行ったところ、比較例1および比較例2と同様にメッキが不均一についた。
【0069】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係る電子部品用回路基材の製造方法によれば、ポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、パラジウムアンモニア錯塩水溶液によりポリイミド樹脂前駆体を感光性高分子パラジウム錯体にし、水素供与体の存在下において金属層形成部に紫外線を照射した後に無電解メッキにより金属層を形成するようにしたので、基材と密着強度が高い金属層を従来より少ない工程で、容易に形成することができる。
【0070】
また、基材がポリイミドの場合は、ポリミック酸を塗布する代わりに、ポリイミド表面をアルカリ加水分解すことによって表面にポリアミック酸層を形成しても同じように金属膜を形成することができる。この方法はパラジウムアンモニア錯塩が広いpHの範囲で安定であり、中性弱酸性でも使用できるので、アルカリ現像型メッキレジストを使用することが可能になり工業的な利用価値が高い。
【0071】
さらに、ポリアミック酸を塗布する方法は、樹脂、ガラス、シリコンウエハーなど多くの基材に適用できる上に、適度な膜厚みのポリアミック酸膜を形成できるため、ポリイミド絶縁膜の厚みを自由に制御しながら、金属配線を形成することができ、多層積層基板へ応用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の金属回路パターンの形成方法を断面的に示す図である。
【図2】本発明の他の実施例の金属回路パターンの形成方法を断面的に示す図である。
【図3】紫外線照射前後におけるポリイミド樹脂前駆体層のパラジウムの結合エネルギー変化を示すXPS分析結果を示す図である。
【図4】無電解ニッケルメッキ後のニッケルメッキ部およびポリイミド樹脂前駆体層のオージェ分析チャート図である。
【符号の説明】
1 ポリイミド基材
2 ポリイミド樹脂前駆体層
3 感光性樹脂
7 水素供与体
8 紫外線
Claims (9)
- 表面にポリイミド樹脂前駆体層を有する基材を、パラジウムアンモニア錯塩水溶液で被覆して前記ポリイミド樹脂前駆体を感光性高分子パラジウム錯体にし、水素供与体の存在下において金属層形成部に紫外線を照射し、無電解メッキにより前記基材上に金属層を形成することを特徴とする電子部品用回路基板の製造方法。
- 表面にポリイミド樹脂前駆体層を有する基材の表面に開口部を有するメッキレジストパターンを形成し、パラジウムアンモニア錯塩水溶液で被覆して前記メッキレジストパターンの開口部のポリイミド樹脂前駆体を感光性高分子パラジウム錯体にし、水素供与体の存在下において紫外線を照射し、無電解メッキにより前記基材上に金属層を形成することを特徴とする電子部品用回路基材の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載の電子部品用回路基材の製造方法において、
前記基材が、ポリイミド樹脂前駆体溶液を基材の表面に塗布・乾燥することによって形成されたことを特徴とする電子部品用回路基板の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載の電子部品用回路基板の製造方法において、
前記基材が、ポリイミド基材の表面をアルカリ加水分解によってポリイミド樹脂前駆体層にされたことを特徴とする電子部品用回路基板の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載の電子部品用回路基板の製造方法において、
前記紫外線が300nm以下の波長であることを特徴とする電子部品用回路基板の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載の電子部品用回路基板の製造方法において、
前記水素供与体が水、アルコールまたはアルコール水溶液のいずれかであることを特徴とする電子部品用回路基板の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載の電子部品用回路基板の製造方法において、
無電解メッキにより基材上に金属膜または金属回路を形成した後、電解メッキ、イミド化処理を行うことを特徴とする電子部品用基材の製造方法。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品用回路基板の製造方法において、
前記基材が、樹脂、セラミック、シリコンの少なくとも1つからなる基材であることを特徴とする電子部品用基材の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載の電子部品用回路基板の製造方法において、
前記パラジウムアンモニア錯塩水溶液がpH4〜7であることを特徴とする電子部品用回路基板の製造方法。
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