JP2004151286A - 平版印刷版 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム板を支持体とする平版印刷版において、印刷時のインキのりや耐刷性の良い、さらには酸化汚れの少ない平版印刷版を提供することにある。
【解決手段】アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版において、物理現像核層中に特定のポリマー、即ち水に不溶性で、アルカリ可溶性の重合体を含有することを特徴とする平版印刷版。
【選択図】 なし
【解決手段】アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版において、物理現像核層中に特定のポリマー、即ち水に不溶性で、アルカリ可溶性の重合体を含有することを特徴とする平版印刷版。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版に関し、特に印刷時におけるインキのり、耐刷力の向上及び酸化汚れに関する。
【0002】
【従来の技術】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版については、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著「フォトグラフィック シルバーハライド ディヒュージョン プロセシズ」101頁〜103頁に幾つかの例が記載されている。
【0003】
その中で述べられているように、DTR法を用いた平版印刷版には、転写材料と受像材料を別々にしたツーシートタイプ、あるいはそれらを一枚の支持体上に設けたモノシートタイプの二方式が知られており、前者については例えば特開昭57−158844号公報に、後者については例えば特公昭48−30562号、同51−15765号、特開昭51−111103号、同52−150105号などの各公報に詳しく記載されている。
【0004】
アルミニウム板を支持体とする、銀錯塩拡散転写法を利用したモノシートタイプの平版印刷版(以下、アルミニウム平版印刷版と称す)は特開昭57−118244号、同57−158844号、同63−260491号、特開平3−116151号、同4−282295号、米国特許4,567,131号、同第5,427,889号などの公報に詳しく記載されている。
【0005】
前記アルミニウム平版印刷版は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に、物理現像核を担持し、その上に実質的に硬化されていないハロゲン化銀乳剤層を設けた基本構成からなっている。このアルミニウム平版印刷版の一般的な製版方法は、露光後、現像処理、水洗処理(ウォッシュオフ:ハロゲン化銀乳剤層の除去)、仕上げ処理の工程からなっている。
【0006】
詳細には、現像処理によって物理現像核上に金属銀画像部が形成され、次の水洗処理によってハロゲン化銀乳剤層が除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部(以下、銀画像部と称す)が露出する。同時に陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。
【0007】
露出した銀画像部と非画像部には、その保護のためにアラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸などの保護コロイドを含有する仕上げ液の処理、いわゆるガム引きと言われる処理が施される。この仕上げ液は、定着液やフィニッシング液とも言われ、銀画像部を親油性にする化合物(例えば、メルカプト基やチオン基を有する含窒素複素環化合物)を含有する事も一般的に知られている。
【0008】
上述したアルミニウム平版印刷版に対して、もうひとつの実用化されているいわゆるフレキシブルな支持体を使用したフレキシブル平版印刷版がある。これはフィルムやRC紙などの上に順次に下塗層、ハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を設けたものであり、かかる平版印刷版は形成する層構成やDTRの機構が上述のアルミニウム平版印刷版とは異なるものである。即ちポリエチレン樹脂被覆紙やプラスチック樹脂フィルムのような支持体上に下塗層、ハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を順次塗布して設けられた平版印刷版を露光、現像することにより、露光部のゼラチン層(下塗り層及びハロゲン化銀乳剤層)の表面に存在する物理現像核によって析出する金属銀をインキ受容性の画像部として利用し、一方未露光部の硬化されたゼラチン層は洗い流されることなく、親水性であるので、それが非画像部となるものでる。
【0009】
このようなフレキシブル印刷版はアルミニウム印刷版に比べて耐刷力に劣ることから、近年ではアルミニウム印刷版の開発が望まれている。しかしながらアルミニウム支持体の場合、表面形状そのものの処理条件、例えば機械的粗面化処理、化学的粗面化処理、電解粗面化処理、陽極酸化の条件などによりアルミニウム表面が直接印刷性に影響を及ぼすことから、最適な処理条件で使用されてはいるが、未だ安定した耐刷力を得るには十分とはいえない。
【0010】
また、アルミニウム支持体の場合、ハイドロキノン等の現像主薬を含む高pHのアルカリ現像液を使用するため、アルミニウム表面が一部腐食されたり、表面が大気中の酸素ガスによる酸化を受け、これが印刷物の汚れの要因となったりする現象が現れる。又現像液自身も炭酸ガスを吸収してpHが低下しやすく、更に蒸発濃縮による現像液の塩濃度の上昇が起こりやすいこと等からアルミニウム板との複合的な作用により、印刷版の現像特性が変動しやすいため、耐刷力やインク受容性に優れた、酸化による汚れの少ない印刷版を得ることが困難であった。
【0011】
これらの問題点を改良するため、物理現像核層又はその隣接層に水溶性のポリオキシアルキレン単位を有する燐酸化合物あるいはカルボン酸エステル化合物を含有させたり、これらを含有する新たな層を設けることが開示されている(例えば、特許文献1)。また同様に、物理現像核層又はその隣接層に特定の化合物から誘導される親水性のポリマーを用いることで耐刷力やインキのり性を向上させることが開示されている(例えば、特許文献2)。しかし、より強固な析出銀による耐刷性向上やインキのり性向上に対してはいまだ不十分である。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−181052号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開2000−275850号公報(第1頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アルミニウム板を支持体とする平版印刷版において、印刷時の更なるインキのりや耐刷性の向上した、さらには酸化による汚れの少ない平版印刷版を提供することにある。
【0014】
【発明が解決しようとする手段】
発明者等は、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版において、物理現像核層中に特定の割合で混合されたカルボキシ基含有のポリマーを添加する事により本発明に至った。即ち特定の割合でカルボキシ基が混合されることにより、親水性が抑制され且つアルカリ可溶性を保持したポリマーが得られ、これを物理現像核層に添加することで、より強固な析出銀を作り、高い親油性即ちインキ受容性を発現するのである。機構を明確には説明できないが、物理現像核層中に添加され、成膜された本発明のポリマーは、製版過程において露光、現像後、ウォッシュオフにより処理される際、非画像部分ポリマーは所定濃度のアルカリ液中で溶解すると共に除かれるが、一方、銀画像形成部においては、ポリマーと表面析出銀とが何らかの相互作用で結合状態にあり、非画像部のポリマーより溶解性が低下していて、ウォッシュオフ過程で幾分かが溶解除去されずに残り析出銀と相乗的に強固な画像表面を形成すると考えられる。また非画像部における酸化汚れの発生については、物理現像核層中に存在するポリマーは現像処理後、ウォッシュオフにより除去されると思われるが、その過程において、物理現像核層中に形成されたカルボキシ基を含むポリマーマトリックスが、現像液の浸入速度を幾分緩和し、アルミニウム界面でのアルカリ現像液との接触が弱いものとなり、その結果相対的に酸化汚れの要因となる発生点を軽減するものと推定される。この条件を満たすポリマーを検討したところ、水には不溶性であり、カルボキシ基をアルカリ可溶性基として有するポリマー重合体が適していることを見いだし、その重合体中に占めるカルボキシ基を有する単量体の含有率が、15モル%以上45モル%以下であるポリマーがこの目的に添うことが分かった。この場合の水に不溶性とは、常温において、形成した皮膜が水に溶解しないことをさし、またアルカリ可溶性とは、通常写真処理に使用される現像液のアルカリ濃度(pH12以上)で溶解することをさす。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。本発明に使用するポリマーはアルカリ可溶性の性質と支持体上に強固な銀表面を形成する性質を備えていることが求められる。アルカリ可溶性のモノマーとしてはカルボキシ基が最適であり、カルボキシ基を有する具体的なビニルモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などがある。重合体中に占めるこれらカルボキシ基を有するモノマーの割合は、15モル%以上45モル%以下であり、15モル%以下では非画像部におけるウォッシュオフでの除去が不十分となり、ポリマーが残留し汚れの原因となる。また45モル%以上では画像部での溶解が進み、銀表面を弱くし、期待する耐刷性が得られない。一方析出銀と共に画像表面をより強固にするためには、種々の疎水性モノマーとの共重合をさせることにより目的が達せられる。これら疎水性を付与するビニルモノマーの例としては、スチレン類として、例えばスチレン、メチル置換スチレン、エチル置換スチレン、クロル置換スチレン、メトキシ置換スチレンなど、(メタ)アクリル酸エステル類として、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、、ベンジルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル−アクリル酸エステルなどがあり、その他のビニルモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエチルエーテル、アリルベンゼン、ビニルエチルケトン、ビニルへキシルケトンなどがある。また、無水マレイン酸などの酸無水物を含む重合体を全部あるいは部分的にハーフエステル化して、カルボキシ基を導入することでも本発明を実施することが可能である。重合体中に占めるこれら疎水性のモノマーの割合は、85モル%〜35モル%の範囲である。
【0016】
平版印刷版へポリマーを適用する際、アルカリ可溶性基とは別に、非画像部の親水性効果を上げるための目的で、水溶性のポリマーを混合する場合がある。例えば良く使用されるものとしてアミド系のアクリルアミドやメタクリルアミド等のモノマーを単独または適当に配合した水溶性の高いポリマーである。これらモノマーを本発明の重合体として使用する場合には、その重合体中に占める割合は、20モル%以下である。
【0017】
更には上述の疎水性のモノマーに加えて、上記に掲げた化1、化2及び化3に示すような画像部析出銀と親和性のある官能基を有するモノマーを添加することで、より強固な画像銀を与える。これら化1、化2及び化3に示した官能基を有するモノマーの代表的な例としては次の様なものが挙げられる。これら官能基を有するモノマーの重合体への占める割合は1モル%以上20モル%以下が適当である。1モル%以下では析出銀との結合が弱く、また20モル%以上ではアルカリに対する溶解性が悪くなる。
【0018】
【化4】
【0019】
【化5】
【0020】
【化6】
【0021】
上記に示したような種々のモノマーを重合させて本発明のポリマーを得る方法としては、数種のモノマーを共重合させて得られる通常の重合法を用いて行うことができる。これら重合するに当たっては、アルミニウム支持体や物理現像核液中の核物質への作用、増粘性の有無、接着性、隣接ハロゲン銀乳剤層への影響などを考慮してモノマーが選択される。
【0022】
本発明のポリマーの分子量としては重量平均分子量として5000〜100万の範囲にあることが望ましく、好ましくは10000〜50万である。これ以上の分子量のポリマーでは溶液の粘度が高く、水溶液または水混和性の有機溶媒中での分散性が悪くなり塗布する際の支障となる。またこの範囲以下のポリマーを使用した場合には、印刷版の耐刷性に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0023】
以下に本発明の共重合体ポリマーの代表的な例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。共重合体ポリマー中の数字はモル%を表す。また例示するこれらポリマーはいずれも水に不溶である。
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
【化9】
【0027】
本発明における共重合体ポリマーは、物理現像核層中に適用するのが支持体との接着性、析出銀との作用性等の点から好ましい。物理現像核層へ添加する場合、本発明ポリマーの塗布量が3mg/m2以上100mg/m2未満であり、好ましくは10mg/m2以上で90mg/m2未満になるように添加される。また添加の方法としては好ましくは該物理現像核塗布液がpH8以上の弱アルカリ液である水溶液あるいは水混和性の有機溶剤と水との混合液を塗液としてアルミニウム支持体上に塗布することが好ましい。
【0028】
本発明で用いられる物理現像核層の物理現像核としては、公知の銀錯塩拡散転写法に用いられるものでよく、例えば金、銀などのコロイド、パラジウム、亜鉛などの水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物などが使用できる。これらの詳細及び製法については、例えばフォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著「フォトグラフィック シルバーハライド ディヒュージョン プロセシズ」を参考にすることができる。その中にも示されるように、これら物理現像核の保護コロイドとして各種親水性コロイドを用いることもできるが、本発明者は物理現像核と共に本発明のアルカリ可溶性のポリマーを保護コロイドとして用いて熟成することによっても本発明の目的である高い耐刷力とインキのりに優れた平版印刷版を提供できることを見出した。この詳細な機構は明らかではないが、ポリマー中の種々の官能基が物理現像核を保持した状態で熟成されることによって、アルミニウム支持体の様々な表面状態による影響を受けにくい安定した物理現像層が得られると思われることと、その後の現像処理等の過程で、上層に塗布されたハロゲン化銀乳剤層中の銀イオンもしくは析出銀との何らかの相互作用により強固な疎水性の表面が形成されるものと思われる。
【0029】
本発明の共重合体ポリマーを物理現像核へ添加する溶剤としては、水溶液として添加する場合の他各種の溶剤を使用することができる。即ち一般的には水混和性の有機溶剤が好ましい。例えばメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ類やジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド等を単独または混合系として用いることができる。
【0030】
物理現像核層には各種の界面活性剤、例えばサポニン等の天然界面活性剤、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系統のノニオン系界面活性剤、高級アルキルアミン類、第四級アンモニウム塩類、スルホニウム塩類などのカチオン界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸またはリン酸エステル類等の両性界面活性剤、フッ素を含むフッ素系アニオン及び両性界面活性剤などが使用できる。
【0031】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀乳剤の種類としては、一般に用いられる塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩臭化銀、ヨウ臭化銀等から選択される。また乳剤のタイプとしては、ネガ型、ポジ型の何れでもよい。該ハロゲン化銀乳剤は必要に応じて貴金属増感、硫黄増感、還元増感及びこれらを組み合わせたもの等の化学増感、あるいは増感色素、例えばシアニン、メロシアニン等の色素を使用して分光増感する事ができる。更に、該ハロゲン化乳剤は通常の安定剤、例えばメルカプトトリアゾールの様な複素環化合物を含有することができる。またその他の成分例えば、かぶり防止剤、現像剤または現像促進剤、湿潤剤等を含有できる。該化合物は又、メルカプト基やチオン基を含む化合物のいくつかと併用して乳剤層中に含有させることができる。
【0032】
該ハロゲン化銀乳剤中の保護コロイドとして、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、ゼラチン誘導体、グラフト化ゼラチン等の各種ゼラチンを使用することができるほか、ポリビニルピロリドン、各種でんぷん、アルブミン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース等の親水性高分子化合物を含有する事ができる。この場合に、好ましくは物理現像後の親水性コロイド層の剥離性を容易にするために実質的に硬膜剤を含まない親水性コロイドを使用することが望ましい。
【0033】
本発明で用いられる現像液には、現像主薬、例えばポリヒドロキシベンゼン類、3−ピラゾリジノン類、アルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3リン酸ナトリウム、あるいはアミン化合物、保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウム、増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロース、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、現像変成剤、例えばポリオキシアルキレン化合物等の添加剤を含ませることができる。
【0034】
現像液のpHとして通常約10〜14,好ましくは約12〜14であるが、アルミニウム支持体の前処理(例えば陽極酸化)条件、写真要素、所望の像、現像液中の各種化合物の種類及び量、現像条件等によって異なる。
【0035】
ハロゲン化銀乳剤層等のゼラチン層を除去するための水洗処理(ウォッシュオフ)は、温度が20〜35℃程度の流水で洗い流すことによって行うことができる。
【0036】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されない。
実施例1
特開昭63−260491号公報の実施例に記載の方法に従って、陽極酸化皮膜量2.5g±0.2/m2、表面粗さ0.4±0.05μになるように電流および電圧条件を調整して、アルミニウム支持体を作製した。
【0037】
<物理現像核液>
物理現像核として硫化パラジウムを3.5mg/m2と、上記に示した本発明の例示ポリマー(2)[重量平均分子量約5万]、(3)[同分子量約5万]、(4)[同分子量約6万]、(5)[同分子量約6万]、(6)[同分子量約5万](8)[同分子量約6万]あるいは(9)[同分子量約5万]をそれぞれ30mg/m2になるように添加して物理現像核液を調製し、上記アルミニウム支持体上に塗布し、乾燥して物理現像核層を有するアルミニウム支持体を作製した(サンプル(A)〜(G))。又比較として、硫化パラジウムを3.5mg/m2と下記ポリマー化10(比較ポリマー1[同分子量約5万]、比較ポリマー2[同分子量約5万]、比較ポリマー3[同分子量約5万]あるいは比較ポリマー4[同分子量約7万])を30mg/m2になるように添加し、同様に物理現像核層を有するアルミニウム支持体を作製した(比較サンプル(H)、(I)、(J)及び(K))。また上記アルミニウム支持体上に物理現像核として硫化パラジウムが3.5mg/m2になるように塗布し、更にその上に例示ポリマー(2)及び(5)を100mg/m2になるように塗布して中間層を設けた。(比較サンプル(L)及び(M))
【0038】
【化10】
【0039】
次に、下記の如くにして、ハロゲン化銀乳剤層を作製した。
<ハロゲン化銀乳剤層>
ハロゲン化銀乳剤としてコントロールダブルジェット法で平均粒径0.2μmの、ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムを銀1モル当たり0.006ミリモルドープさせた塩ヨウ臭化銀乳剤(AgBr20モル%、AgI0.4モル%)を作製した。さらにこの乳剤に硫黄金増感を施し、化11の増感色素を銀1g当たり3mg用いて分光増感した。
【0040】
【化11】
【0041】
このようにして作製したハロゲン化銀乳剤に界面活性剤を加え、前記物理現像核が塗布されたアルミニウム支持体上(サンプル(A)〜(M))に銀量が2g/m2になるように塗布し、乾燥して平版印刷版を得た。
【0042】
上記で得た平版印刷版を633nmの赤色LDレーザーを光源とする出力機で画像出力し、次に製版用プロセッサー(デュポン社製SLT−85N自動現像機)で処理して平版印刷版を作製した。現像処理時間12秒、水洗処理(30℃の水洗液を10秒間シャワー噴射しながらスクラブローラーで乳剤層をウォッシュオフする)、仕上げ処理(20℃、5秒間シャワー)及び乾燥工程を経て製版した。用いた現像液、水洗液、仕上げ液を下記に記す。
【0043】
<現像液>
ハイドロキノン 20g
フェニドン 3g
無水亜硫酸ナトリウム 90g
EDTA 2g
チオ硫酸ナトリウム 10g
水酸化ナトリウム 25g
n−メチルエタノールアミン 45g
スチレンスルホン酸−無水マレイン酸共重合体 10g
(重量平均分子量50万)
水を加えて全量を1000mlとする。
最終的にpH=13.3(25℃)に調整した。
【0044】
<水洗液>
2−メルカプト−5−(n−ヘプチル)−1,3,4−
オキサジアゾール 0.5g
モノエタノールアミン 13g
重亜硫酸ナトリウム 10g
第一燐酸カリウム 40g
水を加えて全量を1000mlとする。
pH=6.0
【0045】
<仕上げ液>
燐酸 0.5g
2−メルカプト−5−(n−ヘプチル)−1,3,4−
オキサジアゾール 0.5g
モノエタノールアミン 5g
ポリグリセロール(6量体) 50g
水を加えて全量を1000mlとする。
pH=7.2
【0046】
このようにして作成した平版印刷版を、印刷機ハイデルベルグKORD(Heiderberg社製オフセット印刷機の商標)、インキ(大日本インキ(株)製のニューチャンピオン墨H)及び市販のPS版用給湿液を用いて印刷を行い、耐刷力及びインキのりについて印刷枚数で評価した。
【0047】
耐刷力は画像部のインキのりの不良、あるいは線飛びが生じた時の何れかにより印刷が不可能となった時点の印刷枚数で評価し、インキのりは版面にインキローラーを接触させながら同時に紙送りを始め、良好な画像濃度の印刷物が得られるまでの印刷枚数で評価した。その結果を表1に示した。また、版面の酸化による汚れは、通常の印刷を3000枚行った後、一旦停機し、そのまま30分放置した後、再び印刷を開始し、印刷物の画像部周辺のスポット汚れを観察した。現れたスポットの数5個以下を○、6〜10個を△、11個以上×として評価した。その結果を表2に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
上記結果から分かるように、本発明の平版印刷版は高い耐刷力と早いインキのり性が得られることが分かる。また酸化汚れに対しても効果があることが分かる。
【0051】
【発明の効果】
本発明により、アルミニウム支持体を用いた銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版において、耐刷力及びインキのり性に優れ、尚かつ酸化汚れにも改善された平版印刷版を提供することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版に関し、特に印刷時におけるインキのり、耐刷力の向上及び酸化汚れに関する。
【0002】
【従来の技術】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版については、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著「フォトグラフィック シルバーハライド ディヒュージョン プロセシズ」101頁〜103頁に幾つかの例が記載されている。
【0003】
その中で述べられているように、DTR法を用いた平版印刷版には、転写材料と受像材料を別々にしたツーシートタイプ、あるいはそれらを一枚の支持体上に設けたモノシートタイプの二方式が知られており、前者については例えば特開昭57−158844号公報に、後者については例えば特公昭48−30562号、同51−15765号、特開昭51−111103号、同52−150105号などの各公報に詳しく記載されている。
【0004】
アルミニウム板を支持体とする、銀錯塩拡散転写法を利用したモノシートタイプの平版印刷版(以下、アルミニウム平版印刷版と称す)は特開昭57−118244号、同57−158844号、同63−260491号、特開平3−116151号、同4−282295号、米国特許4,567,131号、同第5,427,889号などの公報に詳しく記載されている。
【0005】
前記アルミニウム平版印刷版は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に、物理現像核を担持し、その上に実質的に硬化されていないハロゲン化銀乳剤層を設けた基本構成からなっている。このアルミニウム平版印刷版の一般的な製版方法は、露光後、現像処理、水洗処理(ウォッシュオフ:ハロゲン化銀乳剤層の除去)、仕上げ処理の工程からなっている。
【0006】
詳細には、現像処理によって物理現像核上に金属銀画像部が形成され、次の水洗処理によってハロゲン化銀乳剤層が除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部(以下、銀画像部と称す)が露出する。同時に陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。
【0007】
露出した銀画像部と非画像部には、その保護のためにアラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸などの保護コロイドを含有する仕上げ液の処理、いわゆるガム引きと言われる処理が施される。この仕上げ液は、定着液やフィニッシング液とも言われ、銀画像部を親油性にする化合物(例えば、メルカプト基やチオン基を有する含窒素複素環化合物)を含有する事も一般的に知られている。
【0008】
上述したアルミニウム平版印刷版に対して、もうひとつの実用化されているいわゆるフレキシブルな支持体を使用したフレキシブル平版印刷版がある。これはフィルムやRC紙などの上に順次に下塗層、ハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を設けたものであり、かかる平版印刷版は形成する層構成やDTRの機構が上述のアルミニウム平版印刷版とは異なるものである。即ちポリエチレン樹脂被覆紙やプラスチック樹脂フィルムのような支持体上に下塗層、ハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を順次塗布して設けられた平版印刷版を露光、現像することにより、露光部のゼラチン層(下塗り層及びハロゲン化銀乳剤層)の表面に存在する物理現像核によって析出する金属銀をインキ受容性の画像部として利用し、一方未露光部の硬化されたゼラチン層は洗い流されることなく、親水性であるので、それが非画像部となるものでる。
【0009】
このようなフレキシブル印刷版はアルミニウム印刷版に比べて耐刷力に劣ることから、近年ではアルミニウム印刷版の開発が望まれている。しかしながらアルミニウム支持体の場合、表面形状そのものの処理条件、例えば機械的粗面化処理、化学的粗面化処理、電解粗面化処理、陽極酸化の条件などによりアルミニウム表面が直接印刷性に影響を及ぼすことから、最適な処理条件で使用されてはいるが、未だ安定した耐刷力を得るには十分とはいえない。
【0010】
また、アルミニウム支持体の場合、ハイドロキノン等の現像主薬を含む高pHのアルカリ現像液を使用するため、アルミニウム表面が一部腐食されたり、表面が大気中の酸素ガスによる酸化を受け、これが印刷物の汚れの要因となったりする現象が現れる。又現像液自身も炭酸ガスを吸収してpHが低下しやすく、更に蒸発濃縮による現像液の塩濃度の上昇が起こりやすいこと等からアルミニウム板との複合的な作用により、印刷版の現像特性が変動しやすいため、耐刷力やインク受容性に優れた、酸化による汚れの少ない印刷版を得ることが困難であった。
【0011】
これらの問題点を改良するため、物理現像核層又はその隣接層に水溶性のポリオキシアルキレン単位を有する燐酸化合物あるいはカルボン酸エステル化合物を含有させたり、これらを含有する新たな層を設けることが開示されている(例えば、特許文献1)。また同様に、物理現像核層又はその隣接層に特定の化合物から誘導される親水性のポリマーを用いることで耐刷力やインキのり性を向上させることが開示されている(例えば、特許文献2)。しかし、より強固な析出銀による耐刷性向上やインキのり性向上に対してはいまだ不十分である。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−181052号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開2000−275850号公報(第1頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アルミニウム板を支持体とする平版印刷版において、印刷時の更なるインキのりや耐刷性の向上した、さらには酸化による汚れの少ない平版印刷版を提供することにある。
【0014】
【発明が解決しようとする手段】
発明者等は、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版において、物理現像核層中に特定の割合で混合されたカルボキシ基含有のポリマーを添加する事により本発明に至った。即ち特定の割合でカルボキシ基が混合されることにより、親水性が抑制され且つアルカリ可溶性を保持したポリマーが得られ、これを物理現像核層に添加することで、より強固な析出銀を作り、高い親油性即ちインキ受容性を発現するのである。機構を明確には説明できないが、物理現像核層中に添加され、成膜された本発明のポリマーは、製版過程において露光、現像後、ウォッシュオフにより処理される際、非画像部分ポリマーは所定濃度のアルカリ液中で溶解すると共に除かれるが、一方、銀画像形成部においては、ポリマーと表面析出銀とが何らかの相互作用で結合状態にあり、非画像部のポリマーより溶解性が低下していて、ウォッシュオフ過程で幾分かが溶解除去されずに残り析出銀と相乗的に強固な画像表面を形成すると考えられる。また非画像部における酸化汚れの発生については、物理現像核層中に存在するポリマーは現像処理後、ウォッシュオフにより除去されると思われるが、その過程において、物理現像核層中に形成されたカルボキシ基を含むポリマーマトリックスが、現像液の浸入速度を幾分緩和し、アルミニウム界面でのアルカリ現像液との接触が弱いものとなり、その結果相対的に酸化汚れの要因となる発生点を軽減するものと推定される。この条件を満たすポリマーを検討したところ、水には不溶性であり、カルボキシ基をアルカリ可溶性基として有するポリマー重合体が適していることを見いだし、その重合体中に占めるカルボキシ基を有する単量体の含有率が、15モル%以上45モル%以下であるポリマーがこの目的に添うことが分かった。この場合の水に不溶性とは、常温において、形成した皮膜が水に溶解しないことをさし、またアルカリ可溶性とは、通常写真処理に使用される現像液のアルカリ濃度(pH12以上)で溶解することをさす。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。本発明に使用するポリマーはアルカリ可溶性の性質と支持体上に強固な銀表面を形成する性質を備えていることが求められる。アルカリ可溶性のモノマーとしてはカルボキシ基が最適であり、カルボキシ基を有する具体的なビニルモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などがある。重合体中に占めるこれらカルボキシ基を有するモノマーの割合は、15モル%以上45モル%以下であり、15モル%以下では非画像部におけるウォッシュオフでの除去が不十分となり、ポリマーが残留し汚れの原因となる。また45モル%以上では画像部での溶解が進み、銀表面を弱くし、期待する耐刷性が得られない。一方析出銀と共に画像表面をより強固にするためには、種々の疎水性モノマーとの共重合をさせることにより目的が達せられる。これら疎水性を付与するビニルモノマーの例としては、スチレン類として、例えばスチレン、メチル置換スチレン、エチル置換スチレン、クロル置換スチレン、メトキシ置換スチレンなど、(メタ)アクリル酸エステル類として、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、、ベンジルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル−アクリル酸エステルなどがあり、その他のビニルモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエチルエーテル、アリルベンゼン、ビニルエチルケトン、ビニルへキシルケトンなどがある。また、無水マレイン酸などの酸無水物を含む重合体を全部あるいは部分的にハーフエステル化して、カルボキシ基を導入することでも本発明を実施することが可能である。重合体中に占めるこれら疎水性のモノマーの割合は、85モル%〜35モル%の範囲である。
【0016】
平版印刷版へポリマーを適用する際、アルカリ可溶性基とは別に、非画像部の親水性効果を上げるための目的で、水溶性のポリマーを混合する場合がある。例えば良く使用されるものとしてアミド系のアクリルアミドやメタクリルアミド等のモノマーを単独または適当に配合した水溶性の高いポリマーである。これらモノマーを本発明の重合体として使用する場合には、その重合体中に占める割合は、20モル%以下である。
【0017】
更には上述の疎水性のモノマーに加えて、上記に掲げた化1、化2及び化3に示すような画像部析出銀と親和性のある官能基を有するモノマーを添加することで、より強固な画像銀を与える。これら化1、化2及び化3に示した官能基を有するモノマーの代表的な例としては次の様なものが挙げられる。これら官能基を有するモノマーの重合体への占める割合は1モル%以上20モル%以下が適当である。1モル%以下では析出銀との結合が弱く、また20モル%以上ではアルカリに対する溶解性が悪くなる。
【0018】
【化4】
【0019】
【化5】
【0020】
【化6】
【0021】
上記に示したような種々のモノマーを重合させて本発明のポリマーを得る方法としては、数種のモノマーを共重合させて得られる通常の重合法を用いて行うことができる。これら重合するに当たっては、アルミニウム支持体や物理現像核液中の核物質への作用、増粘性の有無、接着性、隣接ハロゲン銀乳剤層への影響などを考慮してモノマーが選択される。
【0022】
本発明のポリマーの分子量としては重量平均分子量として5000〜100万の範囲にあることが望ましく、好ましくは10000〜50万である。これ以上の分子量のポリマーでは溶液の粘度が高く、水溶液または水混和性の有機溶媒中での分散性が悪くなり塗布する際の支障となる。またこの範囲以下のポリマーを使用した場合には、印刷版の耐刷性に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0023】
以下に本発明の共重合体ポリマーの代表的な例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。共重合体ポリマー中の数字はモル%を表す。また例示するこれらポリマーはいずれも水に不溶である。
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
【化9】
【0027】
本発明における共重合体ポリマーは、物理現像核層中に適用するのが支持体との接着性、析出銀との作用性等の点から好ましい。物理現像核層へ添加する場合、本発明ポリマーの塗布量が3mg/m2以上100mg/m2未満であり、好ましくは10mg/m2以上で90mg/m2未満になるように添加される。また添加の方法としては好ましくは該物理現像核塗布液がpH8以上の弱アルカリ液である水溶液あるいは水混和性の有機溶剤と水との混合液を塗液としてアルミニウム支持体上に塗布することが好ましい。
【0028】
本発明で用いられる物理現像核層の物理現像核としては、公知の銀錯塩拡散転写法に用いられるものでよく、例えば金、銀などのコロイド、パラジウム、亜鉛などの水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物などが使用できる。これらの詳細及び製法については、例えばフォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著「フォトグラフィック シルバーハライド ディヒュージョン プロセシズ」を参考にすることができる。その中にも示されるように、これら物理現像核の保護コロイドとして各種親水性コロイドを用いることもできるが、本発明者は物理現像核と共に本発明のアルカリ可溶性のポリマーを保護コロイドとして用いて熟成することによっても本発明の目的である高い耐刷力とインキのりに優れた平版印刷版を提供できることを見出した。この詳細な機構は明らかではないが、ポリマー中の種々の官能基が物理現像核を保持した状態で熟成されることによって、アルミニウム支持体の様々な表面状態による影響を受けにくい安定した物理現像層が得られると思われることと、その後の現像処理等の過程で、上層に塗布されたハロゲン化銀乳剤層中の銀イオンもしくは析出銀との何らかの相互作用により強固な疎水性の表面が形成されるものと思われる。
【0029】
本発明の共重合体ポリマーを物理現像核へ添加する溶剤としては、水溶液として添加する場合の他各種の溶剤を使用することができる。即ち一般的には水混和性の有機溶剤が好ましい。例えばメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ類やジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド等を単独または混合系として用いることができる。
【0030】
物理現像核層には各種の界面活性剤、例えばサポニン等の天然界面活性剤、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系統のノニオン系界面活性剤、高級アルキルアミン類、第四級アンモニウム塩類、スルホニウム塩類などのカチオン界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸またはリン酸エステル類等の両性界面活性剤、フッ素を含むフッ素系アニオン及び両性界面活性剤などが使用できる。
【0031】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀乳剤の種類としては、一般に用いられる塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩臭化銀、ヨウ臭化銀等から選択される。また乳剤のタイプとしては、ネガ型、ポジ型の何れでもよい。該ハロゲン化銀乳剤は必要に応じて貴金属増感、硫黄増感、還元増感及びこれらを組み合わせたもの等の化学増感、あるいは増感色素、例えばシアニン、メロシアニン等の色素を使用して分光増感する事ができる。更に、該ハロゲン化乳剤は通常の安定剤、例えばメルカプトトリアゾールの様な複素環化合物を含有することができる。またその他の成分例えば、かぶり防止剤、現像剤または現像促進剤、湿潤剤等を含有できる。該化合物は又、メルカプト基やチオン基を含む化合物のいくつかと併用して乳剤層中に含有させることができる。
【0032】
該ハロゲン化銀乳剤中の保護コロイドとして、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、ゼラチン誘導体、グラフト化ゼラチン等の各種ゼラチンを使用することができるほか、ポリビニルピロリドン、各種でんぷん、アルブミン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース等の親水性高分子化合物を含有する事ができる。この場合に、好ましくは物理現像後の親水性コロイド層の剥離性を容易にするために実質的に硬膜剤を含まない親水性コロイドを使用することが望ましい。
【0033】
本発明で用いられる現像液には、現像主薬、例えばポリヒドロキシベンゼン類、3−ピラゾリジノン類、アルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3リン酸ナトリウム、あるいはアミン化合物、保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウム、増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロース、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、現像変成剤、例えばポリオキシアルキレン化合物等の添加剤を含ませることができる。
【0034】
現像液のpHとして通常約10〜14,好ましくは約12〜14であるが、アルミニウム支持体の前処理(例えば陽極酸化)条件、写真要素、所望の像、現像液中の各種化合物の種類及び量、現像条件等によって異なる。
【0035】
ハロゲン化銀乳剤層等のゼラチン層を除去するための水洗処理(ウォッシュオフ)は、温度が20〜35℃程度の流水で洗い流すことによって行うことができる。
【0036】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されない。
実施例1
特開昭63−260491号公報の実施例に記載の方法に従って、陽極酸化皮膜量2.5g±0.2/m2、表面粗さ0.4±0.05μになるように電流および電圧条件を調整して、アルミニウム支持体を作製した。
【0037】
<物理現像核液>
物理現像核として硫化パラジウムを3.5mg/m2と、上記に示した本発明の例示ポリマー(2)[重量平均分子量約5万]、(3)[同分子量約5万]、(4)[同分子量約6万]、(5)[同分子量約6万]、(6)[同分子量約5万](8)[同分子量約6万]あるいは(9)[同分子量約5万]をそれぞれ30mg/m2になるように添加して物理現像核液を調製し、上記アルミニウム支持体上に塗布し、乾燥して物理現像核層を有するアルミニウム支持体を作製した(サンプル(A)〜(G))。又比較として、硫化パラジウムを3.5mg/m2と下記ポリマー化10(比較ポリマー1[同分子量約5万]、比較ポリマー2[同分子量約5万]、比較ポリマー3[同分子量約5万]あるいは比較ポリマー4[同分子量約7万])を30mg/m2になるように添加し、同様に物理現像核層を有するアルミニウム支持体を作製した(比較サンプル(H)、(I)、(J)及び(K))。また上記アルミニウム支持体上に物理現像核として硫化パラジウムが3.5mg/m2になるように塗布し、更にその上に例示ポリマー(2)及び(5)を100mg/m2になるように塗布して中間層を設けた。(比較サンプル(L)及び(M))
【0038】
【化10】
【0039】
次に、下記の如くにして、ハロゲン化銀乳剤層を作製した。
<ハロゲン化銀乳剤層>
ハロゲン化銀乳剤としてコントロールダブルジェット法で平均粒径0.2μmの、ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムを銀1モル当たり0.006ミリモルドープさせた塩ヨウ臭化銀乳剤(AgBr20モル%、AgI0.4モル%)を作製した。さらにこの乳剤に硫黄金増感を施し、化11の増感色素を銀1g当たり3mg用いて分光増感した。
【0040】
【化11】
【0041】
このようにして作製したハロゲン化銀乳剤に界面活性剤を加え、前記物理現像核が塗布されたアルミニウム支持体上(サンプル(A)〜(M))に銀量が2g/m2になるように塗布し、乾燥して平版印刷版を得た。
【0042】
上記で得た平版印刷版を633nmの赤色LDレーザーを光源とする出力機で画像出力し、次に製版用プロセッサー(デュポン社製SLT−85N自動現像機)で処理して平版印刷版を作製した。現像処理時間12秒、水洗処理(30℃の水洗液を10秒間シャワー噴射しながらスクラブローラーで乳剤層をウォッシュオフする)、仕上げ処理(20℃、5秒間シャワー)及び乾燥工程を経て製版した。用いた現像液、水洗液、仕上げ液を下記に記す。
【0043】
<現像液>
ハイドロキノン 20g
フェニドン 3g
無水亜硫酸ナトリウム 90g
EDTA 2g
チオ硫酸ナトリウム 10g
水酸化ナトリウム 25g
n−メチルエタノールアミン 45g
スチレンスルホン酸−無水マレイン酸共重合体 10g
(重量平均分子量50万)
水を加えて全量を1000mlとする。
最終的にpH=13.3(25℃)に調整した。
【0044】
<水洗液>
2−メルカプト−5−(n−ヘプチル)−1,3,4−
オキサジアゾール 0.5g
モノエタノールアミン 13g
重亜硫酸ナトリウム 10g
第一燐酸カリウム 40g
水を加えて全量を1000mlとする。
pH=6.0
【0045】
<仕上げ液>
燐酸 0.5g
2−メルカプト−5−(n−ヘプチル)−1,3,4−
オキサジアゾール 0.5g
モノエタノールアミン 5g
ポリグリセロール(6量体) 50g
水を加えて全量を1000mlとする。
pH=7.2
【0046】
このようにして作成した平版印刷版を、印刷機ハイデルベルグKORD(Heiderberg社製オフセット印刷機の商標)、インキ(大日本インキ(株)製のニューチャンピオン墨H)及び市販のPS版用給湿液を用いて印刷を行い、耐刷力及びインキのりについて印刷枚数で評価した。
【0047】
耐刷力は画像部のインキのりの不良、あるいは線飛びが生じた時の何れかにより印刷が不可能となった時点の印刷枚数で評価し、インキのりは版面にインキローラーを接触させながら同時に紙送りを始め、良好な画像濃度の印刷物が得られるまでの印刷枚数で評価した。その結果を表1に示した。また、版面の酸化による汚れは、通常の印刷を3000枚行った後、一旦停機し、そのまま30分放置した後、再び印刷を開始し、印刷物の画像部周辺のスポット汚れを観察した。現れたスポットの数5個以下を○、6〜10個を△、11個以上×として評価した。その結果を表2に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
上記結果から分かるように、本発明の平版印刷版は高い耐刷力と早いインキのり性が得られることが分かる。また酸化汚れに対しても効果があることが分かる。
【0051】
【発明の効果】
本発明により、アルミニウム支持体を用いた銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版において、耐刷力及びインキのり性に優れ、尚かつ酸化汚れにも改善された平版印刷版を提供することができた。
Claims (2)
- 粗面化されたアルミニウム板を支持体として、その上に物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層を順次積層してなる銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版において、該物理現像核層中に、水に不溶性で、且つカルボキシ基をアルカリ可溶性基として有する単量体の、重合体中における含有率が、15モル%以上45モル%以下である重合体を含有すること特徴とする平版印刷版。
- 前記アルカリ可溶性基を有する重合体において、下記化1、化2及び化3で表される官能基を有する単量体の少なくとも一種を、重合体に対して1モル%以上20モル%以下の割合で含有する請求項1記載の平版印刷版。
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