JP2004148332A - 冷間タンデム圧延機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】補助ロールが金属ストリップのパスラインに沿って複数箇所に設置されている冷間タンデム圧延機であって、補助ロールのうちの、少なくとも1本の補助ロールに、該ロール表面に向けて洗浄油をスプレー可能な補助ロール洗浄装置が設けられている冷間タンデム圧延機。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間タンデム圧延機に関し、特にブリキ原板や亜鉛メッキ原板等の鋼帯を高速で圧延可能な冷間タンデム圧延機に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属ストリップ、例えば、ブリキ原板や亜鉛メッキ原板等の鋼帯の冷間圧延には、圧延機を複数タンデムに配置した冷間タンデム圧延機が用いられる。また、このような鋼帯を高速で圧延する冷間タンデム圧延機には、図3に示すような直接方式の圧延潤滑油供給システムを採用したものが知られている。
【0003】
直接方式の圧延潤滑油供給システムは、一般に鋼帯1とワークロール2との間の潤滑を行うための圧延潤滑油をスプレーするノズル5と、圧延された鋼帯1を冷却する冷却水をスプレーする金属ストリップ冷却用ノズル8と、ワークロール2を冷却する冷却水をスプレーするロール冷却用ノズル9を備え、圧延潤滑油と冷却水とを別系統で供給するように構成されている。
【0004】
図3は、従来の冷間タンデム圧延機における圧延潤滑油供給システムの要部を示す模式図であって、符号1は、金属ストリップである鋼帯を示し、また符号2は、ワークロールを示す。ワークロール2は、図示しないスタンドに鋼帯1を挟んで上下に組み込まれている。符号3はバックアップロールであり、バックアップロール3は、鋼帯1を圧延するワークロール2を補強している。符号4は、各スタンド間に設置されている補助ロールであり、補助ロール4は、鋼帯1の高さ方向パスライン位置を規制したり、鋼帯1の張力を測定するために、冷間圧延中、鋼帯1に接触されている。
【0005】
また、図3中符号6は、圧延潤滑油供給配管で、圧延潤滑油供給配管6にノズル5が接続され、ノズル5から圧延潤滑油が鋼帯表面に向けてスプレー可能に構成されている。符号10は、鋼帯1の圧延方向を示す矢印である。圧延潤滑油をスプレーするノズル5は、各スタンドの入側の鋼帯1の上方と下方にそれぞれ鋼帯1の幅方向に沿って複数配置されている。ノズル8は、鋼帯1に冷却水をスプレーすることにより鋼帯を冷却するストリップ冷却用ノズルであり、ストリップ冷却用ノズル8は、圧延潤滑油をスプレーするノズル5より下流側であって、かつ各スタンドの入側の鋼帯1の上方と下方にそれぞれ鋼帯1の幅方向に沿って複数配置されている。ノズル9は、ワークロール2に冷却水をスプレーすることによりワークロール2を冷却するロール冷却用ノズルであり、ロール冷却用ノズル9は、各スタンドの入側直近にワークロール2の幅方向に沿って複数配置されている。
【0006】
このようなノズルが複数配置された冷間タンデム圧延機においては、鋼帯1の冷間圧延を行うに際し、各スタンドの入側でノズル5から圧延潤滑油を鋼帯表面にスプレーして鋼帯1とワークロール2間の潤滑を行い、かつ鋼帯1の冷却とワークロール2の冷却を行いながら上流側から順次、ワークロール2により鋼板を圧下することにより所望の板厚の冷延鋼板とすることができる。その際、直接方式の圧延潤滑油供給システムを採用した冷間タンデム圧延機では、金属ストリップとワークロール2間の潤滑に寄与する圧延潤滑油の供給と、金属ストリップの冷却およびワークロールの冷却とを別系統で行っているために、ヒートスクラッチと呼ばれる金属ストリップとワークロール間の潤滑不足に起因する焼付きが発生し難く、また、金属ストリップ表面にスプレーされた後、冷却水と混ざってしまった使用済み圧延潤滑油は、循環使用せずに、一旦、ロールの磨耗粉や鉄粉等の異物が管理範囲内となるように油分を分離してから圧延潤滑油として再使用している。
【0007】
このため、表面性状に対する要求が厳しいブリキ原板や亜鉛メッキ原板等の鋼帯を冷間圧延するには適しているといわれている。
最近、直接方式の圧延潤滑油供給システムを採用した冷間タンデム圧延機において、冷延鋼帯表面に押し込み欠陥が時々発生するようになった。図4は、冷延鋼帯表面に発生した押し込み欠陥の位置を示す平面図であり、Aは押し込み欠陥の発生範囲を示し、Bは冷延鋼帯の幅を示す。
【0008】
本発明者らは、冷延鋼帯表面に発生した押し込み欠陥の原因を鋭意検討し、この押し込み欠陥が、補助ロール表面に堆積したスマッジに起因して発生する表面欠陥であるということを究明した。すなわち、近年の傾向として冷間タンデム圧延機に供給される素材厚みが厚くなり、一方製品厚みが薄くなっているので、各スタンドでの圧下率が高くなっていたとことに加えて、ワークロール替えを行うまでの圧延処理量を増やすために前段スタンドに表面粗さの粗いワークロールを使用するようになったことに起因し、ワークロールと鋼帯間の滑り摩擦によって発生するワークロールの磨耗粉と鋼帯表面の鉄粉量が増え、これらの異物が補助ロールの表面に付着して堆積してスマッジが形成された。このスマッジが冷間圧延時に補助ロールと接触する鋼帯表面に付着し、そのままワークロールで圧下され、押し込み欠陥となるということがわかった。
【0009】
このような補助ロールに形成されたスマッジに起因する押し込み欠陥を防止するため、従来、金属ストリップ冷却用ノズル8からスプレーする冷却水により、金属ストリップ表面に付着したスマッジを洗い流すことにより金属ストリップの表面性状を向上しようとしていた。
しかしながら、冷間タンデム圧延機において、金属ストリップを冷却する冷却水のスプレー圧力を高くして金属ストリップ表面に付着したスマッジを除去しようとすると、金属ストリップ表面に付着した圧延潤滑油まで洗い流すことになり、圧延潤滑油の付着効率を悪化させ、上述したヒートスクラッチと呼ばれる潤滑不足に起因する焼付きが発生するために圧延速度を低下させなければならないという問題があった。また、冷間タンデム圧延機の潤滑不足を生じやすいスタンドにおいて、圧延潤滑油の温度を80℃以上にして供給するか、圧延潤滑油供給装置とロールバイト入口間で水切りを行うか、あるいは、圧延機出側から圧延潤滑油をワークロールに供給することのうち、一つ以上の手段を採用して金属ストリップ表面に発生するヒートスクラッチを防止する冷間タンデム圧延方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−218305 号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2000−218305 号公報に記載の冷間タンデム圧延方法は、ワークロールと金属ストリップ間の潤滑状態を変えるために、金属ストリップの表面性状に大きな影響を与える恐れがあり、採用するのは困難であった。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解消することにあり、圧延速度を維持したうえで、ヒートスクラッチや押し込み欠陥などの金属ストリップの表面に生じる表面欠陥を防止することが可能な冷間タンデム圧延機を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討し、押し込み欠陥の根本原因となる、金属ストリップ表面に付着した異物が補助ロール表面に堆積することを防止する手段として、補助ロール表面に洗浄油をスプレーする装置を設けることにより、押し込み欠陥を効果的に抑制することができるという知見を得て、本発明を完成させた。その際に、補助ロール表面に温水をスプレーしたのでは金属ストリップ表面に付着した異物が補助ロール表面に堆積してスマッジとなることを抑制する効果が極めて小さいことも判明した。
【0013】
本発明は、以下の通りである。
1. 補助ロールが金属ストリップのパスラインに沿って複数箇所に設置されている冷間タンデム圧延機であって、前記補助ロールのうちの、少なくとも1本の補助ロールに、該ロール表面に向けて洗浄油をスプレー可能な補助ロール洗浄装置が設けられていることを特徴とする冷間タンデム圧延機。
2. 前記補助ロール洗浄装置は、ノズルおよび該ノズルに接続された分岐配管を備え、該分岐配管が圧延潤滑油を送る潤滑油供給配管に接続され、前記補助ロールに向けて前記圧延潤滑油をスプレー可能にされていることを特徴とする上記1.に記載の冷間タンデム圧延機。
3. 前記補助ロール洗浄装置のノズルが前記金属ストリップの幅方向端部に相当する前記補助ロールの胴長方向部分に対向させて設けられていることを特徴とする上記1.または2.に記載の冷間タンデム圧延機。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、鋼帯を冷間圧延する冷間タンデム圧延機に本発明を適用した場合について図1、2を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る6スタンドからなる冷間タンデム圧延機の第1、第2スタンドの近傍の要部を示す模式図であり、図2は、図1に示した冷間タンデム圧延機のスタンド間の補助ロールに設置した補助ロール洗浄装置の配置図である。図1に示した冷間タンデム圧延機は、直接方式の圧延潤滑油供給システムを採用した冷間タンデム圧延機であり、図3に示した従来の冷間タンデム圧延機と同じものについては同一符号を付し説明を省略する。
【0015】
図1、2において、補助ロール4は、金属ストリップである鋼帯1のパスラインの上下方向位置を規制するために、鋼帯1を挟んで上、下に鋼帯1のパスライン沿って2箇所に設置されている。この鋼帯1のパスラインの上下方向位置を規制する補助ロール4は、第2−第3スタンド間、第3−第4スタンド間、第4−第5スタンド間、第5−第6スタンド間にも同様な位置に設置されている。これらの補助ロール4は、冷間圧延時に鋼帯1と接触しつつ、スタンド間の鋼帯1の速度と同じ周速で回転可能に支持されている。符号7は、第1−第2スタンド間の補助ロールに設置した補助ロール洗浄装置のノズルであり、ノズル7は、分岐配管7Aに接続され、分岐配管7Aは鋼帯1に圧延潤滑油を送る潤滑油供給配管6に接続され、圧延潤滑油を洗浄油としてスプレー可能に構成されている。
【0016】
ここで、第1−第2スタンド間に設置された補助ロール4に補助ロール洗浄装置を設けた理由は、他のスタンドに比べて第1スタンドのワークロールの表面粗さが粗く、圧下率も高いために第1スタンドのワークロールと鋼帯間の滑り摩擦によって発生するワークロールの磨耗粉と鋼帯表面の鉄粉量が多く、第1スタンド出側の鋼帯表面上の異物が補助ロール表面に堆積してスマッジとなりやすいからである。また、補助ロール洗浄装置のノズル4は、鋼帯表面上の異物が付着してスマッジとなりやすい補助ロール4の胴長方向部分に対向させて設けられている。この場合、スプレーノズル4は、鋼帯1の幅方向端部に相当する補助ロール4の胴長方向部分のロール表面に対向させて設けられている。このように鋼帯表面上の異物が付着してスマッジとなりやすいスタンド間に設置された補助ロール4に限定して補助ロール洗浄装置を設けるようにするのが好ましく、さらに補助ロール洗浄装置のスプレーノズル4を鋼帯表面上の異物が付着してスマッジとなりやすい鋼帯の幅方向端部に相当する補助ロール4の胴長方向部分に対向させて設けるようにするのがより好ましい。この理由は、ワークロールと金属ストリップ間の潤滑状態を大きく変えずに、押し込み欠陥の根本原因となる、金属ストリップ表面に付着した異物が補助ロール表面に堆積することを防止できるからである。
【0017】
また、ノズル4およびノズル4に接続された分岐配管7Aを備え、分岐配管7Aが鋼帯1に圧延潤滑油を送る潤滑油供給配管6に接続された補助ロール洗浄装置とするのが好ましい理由は、圧延潤滑油を洗浄油としてスプレーする際に、新設する配管長さを短くすることができると共に、別途、洗浄油として用いる圧延潤滑油を貯留しておくタンクや、タンクから洗浄油として圧延潤滑油をノズル4へ送るポンプが不要になるからである。また、洗浄油として圧延潤滑油を使用するのが好ましい理由は、ノズル4から補助ロール表面に向けてスプレーされた圧延潤滑油が鋼帯表面に付着した場合でも、ワークロールと金属ストリップ間の潤滑状態を変えることがないからである。ここで、図2中、符号11は、ノズル5からスプレーされる圧延潤滑油の鋼帯表面上におけるスプレー範囲を示し、符号12は、金属ストリップ冷却用ノズル8からスプレーされる冷却水の鋼帯表面上におけるスプレー範囲を示す。
【0018】
本発明に係る冷間タンデム圧延機の補助ロール洗浄装置に用いる洗浄油としては、ワークロールと金属ストリップ間の潤滑状態を大きく変えない油であれば使用することができる。また、本発明に係る冷間タンデム圧延機の補助ロール洗浄装置としては、図1に示した圧延潤滑油供給系統に接続せず、洗浄油タンク、ポンプ、洗浄油供給配管を別に備えた装置とすることもできる。
【0019】
【実施例】
図1、2に示したようにブリキ原板や亜鉛メッキ原板等の鋼帯を冷間圧延する6スタンド冷間タンデム圧延機に本発明を適用した。なお、ヒートスクラッチと称される表面欠陥および押し込み欠陥は、冷間タンデム圧延機で冷間圧延した冷延鋼帯表面を検査ラインにおいて目視観察し、ヒートスクラッチ欠陥の有無、および補助ロール表面のスマッジに起因して発生した表面欠陥の有無を調べた。
【0020】
この冷間タンデム圧延機では、パーム油脂を主体とする圧延潤滑油が使用され、冷間圧延時に温水と圧延潤滑油を混合して濃度5〜25vol %のエマルションとし、各スタンドの入側で鋼帯表面に向けてノズル5からスプレーした。また冷間圧延時には、補助ロール4に向けてノズル7から圧延潤滑油を圧力0.2 〜0.8MPaでスプレーした。6スタンド冷間タンデム圧延機に供した鋼帯の入側厚みは、1.6 〜3.0 mmの範囲であり、冷間圧延により厚み0.10〜0.80mmとし、圧延速度は本発明を適用する以前と同じとした。この結果、6スタンド冷間タンデム圧延機に本発明を適用してから以降、補助ロール表面のスマッジに起因する押し込み欠陥およびヒートスクラッチと称される金属ストリップ表面欠陥は認められず、本発明を適用する以前と同様な圧延速度で冷間圧延することができた。一方、6スタンド冷間タンデム圧延機に本発明を適用する以前においては、補助ロール表面のスマッジに起因する押し込み欠陥の一次不良率は0.14%であった。このことから、本発明を適用することによって、圧延速度を維持したうえで、ヒートスクラッチや押し込み欠陥などの発生を防止することができ、表面性状の良好な極薄鋼帯を製造できることがわかる。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、ワークロールと金属ストリップ間の潤滑状態を変えずに、補助ロール表面にスマッジとして異物が堆積することを効果的に抑制できる。この結果、圧延速度を維持したうえで、ヒートスクラッチや押し込み欠陥などの発生を防止することができ、表面性状の良好な金属ストリップを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る冷間タンデム圧延機の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示した冷間タンデム圧延機の補助ロール洗浄装置の配置図である。
【図3】図3は、従来の冷間タンデム圧延機の構成を示す模式図である。
【図4】図4は、補助ロール表面に堆積したスマッジに起因して発生する金属ストリップの表面欠陥の位置を示す平面図である。
【符号の説明】
1 金属ストリップ(鋼帯)
2 ワークロール
3 バックアップロール
4 補助ロール
5、7、8、9 ノズル
6 圧延潤滑油供給配管
7A 分岐配管
10 圧延方向を示す矢印
11 ノズル5からスプレーされる圧延潤滑油の鋼帯表面上におけるスプレー範囲
12 金属ストリップ冷却用ノズル8からスプレーされる冷却水の鋼帯表面上におけるスプレー範囲
A 押し込み欠陥の発生範囲
B 鋼帯の幅
Claims (3)
- 補助ロールが金属ストリップのパスラインに沿って複数箇所に設置されている冷間タンデム圧延機であって、前記補助ロールのうちの、少なくとも1本の補助ロールに、該ロール表面に向けて洗浄油をスプレー可能な補助ロール洗浄装置が設けられていることを特徴とする冷間タンデム圧延機。
- 前記補助ロール洗浄装置は、ノズルおよび該ノズルに接続された分岐配管を備え、該分岐配管が圧延潤滑油を送る潤滑油供給配管に接続され、前記補助ロールに向けて前記圧延潤滑油をスプレー可能にされていることを特徴とする請求項1に記載の冷間タンデム圧延機。
- 前記補助ロール洗浄装置のノズルが前記金属ストリップの幅方向端部に相当する前記補助ロールの胴長方向部分に対向させて設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の冷間タンデム圧延機。
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