光ディスク装置では、シーク制御からトラッキング追従制御に移行する引き込み制御において、対物レンズのシーク制御時の速度を計測することによって定められた減速電流を出力し、十分に安定なトラッキング引き込みのできる速度にまで減速させてから、トラック追従制御に切り換える方法が取られている。
このとき、装置の低コスト化のため、ビームスポットのトラッキング機構の制御にMPUやDSPを用いたディジタルサーボ方式が用いられるとともに、トラッキング機構を一軸にする方法が採用されている。
このため、サンプリング処理に適した制御方法を実現する必要がある。また、トラッキング引き込みを安定化する必要がある。
このような、光ディスク装置では、シーク制御からトラック追従制御に移行する引き込み制御において、対物レンズのシーク制御時の速度を計測することによって定められた減速電流を出力し、十分に安定なトラック引き込みのできる速度にまで減速させてから、トラック追従制御に切り換えるという方法がとられている。
通常、シーク引き込みを安定に行う方法としては、目標トラックまでの残り距離dと、引き込み開始時の速度vを用いて、減速パルスのパルス高さ、すなわち、加速度αとパルス幅、すなわち、時間tを次式に従って算出する方法が知られている。
t=2d/v ・・・(1)
α=v2 /2d ・・・(2)
なお、詳細は特開平3−37876号に記載されている。
近年、低コスト化のため光ディスク装置のトラッキング制御をDSP(Digital Signal Processor)のようなディジタル演算器により行うことが多くなってきている。この場合、制御出力は一定のサンプリング周期で行われることになる。 すなわち、引き込み開始速度vを元に減速パルス幅tを求めても、その分解能はDSPの制御サンプリング周期で決定されていた。
例えば、1.1μmトラックピッチの光ディスク媒体において1/2トラック手前でv=8.3mm/sから減速パルスを出力することを考えた場合、その時の減速パルスの高さ、すなわち、加速度αは、式(2)から
α=−62.6[m/s2 ]
減速パルスの幅、すなわち、期間tは、式(1)から
t=132.5μs
となる。
これは、60kHzサンプリングで制御したとすると、7.95サンプル分に相当する。すなわち、7サンプル分の減速パルス出力となる。
7サンプル分は、期間t
t=116.7μsに相当するので、この間に実際には
v=αT=7.3mm/s分の減速しか行われず、実際に減速しようとする速度v=8.3mm/sに対して1.0mm/s分の残留速度を生じる。この残留速度がトラック引き込み時の安定性を劣化させる。
実際の装置では、速度vは、トラッキングエラー信号(TES:Tracking Error Signal )の周期Tを測定し、トラックピッチpを周期Tで除算することにより求められる。
すなわち、
v=p/T ・・・(3)
で表される。
したがって、式(1)は、式(3)から
t=2dT/p ・・・(4)
式(2)は、式(4)から
α=p2 /(2dT2 ) ・・・(5)
で求められている。
ところが、トラッキングエラー信号に雑音が乗ると、この周期Tの測定値に誤差が生じることになる。この周期Tの誤差は、式(4)から減速パルスのバルス幅tに反映されるとともに、式(5)から加速度αに反映される。このとき、式(5)に示すように加速度αでは周期Tが二乗で効いてくる。このため、測定誤差が大きく反映され、正確な制御が行えなかった。
また、従来は上記式(4),(5)により求められたパルス幅t、パルス高さαの単一の減速パルスによって減速を行っていた。
シーク制御の目標トラックに最も近接しており、かつ、ビームスポットの現在位置を検出できるのは、目標トラックの0.5トラック前、例えば、1.1μmピッチの媒体の場合は0.55μm前であり、一般には、この位置でトラック引き込み制御が行われている。
例えば、シーク制御において引き込み開始時の速度v=8.0mm/sとした場合、これを残り0.5トラックで速度ゼロにするためには、パルス幅t=137.5μsec、パルス高さα=58.2m/s2 の減速パルスが必要となる。 しかしながら、一軸型トラッキング機構の場合、構造上、加速性能が低いため、このように大きな加速度を出すことは非常に難しい。このため、加速度を小さくする必要がある。
加速度を小さくするためには、引き込み開始時の速度vを低下させる方法があるが、速度が下がりすぎると、シーク速度制御が不安定になる。
また、加速度を小さくするためには、目標トラックまでの残り距離dを大きくする、すなわち、ビームスポットの速度を検知することのできるタイミングである残り1.0トラックあるは1.5トラック手前から引き込み減速パルスを出力し始めるという方法がある。
例えば、特開平9−81940号には、1.0トラック手前から減速を行う点が記載されている。この場合、減速パルス幅tが長くなり、トラッキングアクチュエータの加速性能に誤差があった場合や、減速中に外乱変化が発生した場合にその変化に対応できない。この問題を解決するために、減速パルス幅tを短くする方法が取られている。
しかしながら、この方法では、やはり減速パルス開始時の残留速度を十分に高くすることができず、シーク制御が不安定になる。
また、この方式を強化するものとして、特開平9−102135号が提案されている。特開平9−102135号は、目標の1トラック手前で減速パルスを出力した後、その次のタイミングである0.5トラック手前で、減速パルス高さを補正しようというものである。
しかしながら、この方法では0.5トラック手前でトラッキングエラー信号から速度を検出する際に、この間ずっと減速パルスによる加速度を受け続けているため、正確な速度が得られない。
例えば、特開平9−102135号では、速度検出値VDETを得る際に、トラックピッチをトラッキングエラー信号のゼロクロス周期で除算しているが、これによって得られる速度はトラッキングエラー信号のゼロクロス間での平均速度であるので、加速度が生じた場合は、最新ゼロクロスを検出した時点での瞬間速度を得ることはできなかった。
特開平9−081940号公報
特開平9−102135号公報
図1は本発明の一実施例のブロック構成図を示す。
光ディスク装置1は、スピンドルモータ2、光ピックアップ3、光学系4、トラッキング制御回路5、フォーカシング制御回路6、信号処理回路7から構成される。スピンドルモータ2は、光ディスク8を回転させる。光ピックアップ3は、スピンドルモータ2より回転される光ディスク8に光ビーム9を照射する。光ピックアップ3は、後述するようにアクチュエータにより光ディスク8の半径方向に移動可能とされている。
光ピックアップ3は、後述するアクチュエータにより光ディスク8の半径方向に移動され、光ビーム9を光ディスク8に形成されたトラックのうち所望のトラックにトラッキングする。
光学系4は、レーザダイオード、光検出器、プリズムなどから構成され、レーザ光を光ピックアップ3に供給するとともに、光ディスク8から光ピックアップ3を介して供給された反射光からトラッキングエラー信号成分、フォーカシングエラー信号成分、情報信号成分を抽出する。光学系4で抽出されたトラッキングエラー信号成分はトラッキング制御回路5に供給される。また、光学系4で抽出されたフォーカシングエラー信号成分はフォーカシング制御回路6に供給される。さらに、光学系4で抽出された情報信号成分は信号処理回路7に供給される。 トラッキング制御回路5は、光学系4から供給されるトラッキングエラー信号成分を検出し、光ピックアップ3の光ディスク8の半径方向(矢印A方向)への移動を制御する。
次に、光ピックアップ3の構造について説明する。
図2は本発明の一実施例の光ピックアップ周辺の構成図を示す。図2(A)は平面図、図2(B)は側面図を示す。
光ピックアップ3は、キャリッジ11、対物レンズ12、反射部13、支持板ばね14、フォーカスシングアクチュエータ15、ボイスコイル16から構成される。キャリッジ11は、ベース17に固定されたレール18によりガイドされ、矢印A方向に移動可能とされている。
対物レンズ12は、支持板ばね14を介して矢印B方向に揺動可能にキャリッジ11に保持される。フォーカシングアクチュエータ15はキャリッジ11に搭載され、対物レンズ12を矢印B方向に揺動させる。ボイスコイル16は、キャリッジ11の側面に固定されている。
ボイスコイル16は、ベース17にレール18に沿って固定されたヨーク19、永久磁石20とともに、トラッキングアクチュエータを構成している。ボイスコイル16に電流を流すことにより、キャリッジ11が矢印A方向に移動する。 次に、図1に戻ってトラッキング制御回路5について説明する。
トラッキング制御回路5は、図1に示すようにトラッキングエラー信号検出回路21、トラッキング追従制御回路22、速度制御回路23、減速制御回路24、トラッキング選択回路25、コマンド制御回路26、ドライバ回路27から構成される。
トラッキングエラー信号検出回路21は、光学系4から供給される信号からトラッキングエラー信号TESを作成する。トラッキングエラー信号検出回路21で生成されたトラッキングエラー信号TESは、トラック追従制御回路22及び速度制御回路23に供給される。
トラック追従制御回路22は、トラッキングエラー信号検出回路21から供給されたトラッキングエラー信号TESに応じて光ピックアップ3を所望のトラックに追従させるように駆動するためのトラック追従制御信号TRKDRVを生成し、トラッキング選択回路25に供給する。
また、速度制御回路23は、トラッキングエラー信号TESからジャンプトラック数を検出し、目標位置までのシーク制御信号SEEKDRVを生成する。速度制御回路23で生成されたシーク制御信号SEEKDRVは、トラッキング選択回路25に供給される。
トラッキング選択回路25は、コマンド制御回路26からのコマンドに応じてトラック追従制御信号TRKDRV又はシーク制御信号SEEKDRVを選択する。トラッキング選択回路25は所望のトラックを追従するときには、トラック追従制御信号TRKDRVを選択し、シーク動作を行うときにはシーク制御信号SEEKDRVを選択する。
トラッキング選択回路25で選択された選択信号TDRVは、ドライバ回路27に供給される。ドライバ回路27は、トラッキング選択回路25で選択された選択信号TDRVに応じた駆動電流を光ピックアップ3のボイスコイル16に供給する。光ピックアップ3はドライバ回路27からボイスコイル16に供給された駆動電流に応じて矢印A方向に駆動される。
ここで速度制御回路23について説明する。
速度制御回路23は、トラックゼロクロス検出回路28、トラックゼロクロスカウンタ回路29、速度検出回路30、目標速度発生回路31、減算器32、シーク制御回路33から構成される。
トラックゼロクロス検出回路28は、トラッキングエラー信号検出回路21で生成されたトラッキングエラー信号TESのゼロクロス点を検出し、ゼロクロス点に応じたゼロクロスパルス信号TZCを生成する。トラックゼロクロス検出回路27で生成されたゼロクロスパルス信号TZCは、トラックゼロクロスカウンタ回路29及び速度検出回路30に供給される。
トラックゼロクロスカウンタ回路29は、トラックゼロクロス検出回路28から供給されたゼロクロスパルス信号TZCをカウントし、カウント値TRKCNTを出力する。トラックゼロクロスカウンタ回路29のカウント値は、目標速度発生回路31に供給される。目標速度発生回路31は、トラックゼロクロスカウンタ回路29のカウント値から目標速度情報を発生する。
速度検出回路30は、トラックゼロクロス検出回路29から供給されたゼロクロスパルス信号TZCから光ビームの移動速度情報SEEKVELを生成する。 減算器32は、目標速度発生回路31から供給された目標速度情報から速度検出回路30で生成された移動速度情報SEEKVELを減算する。減算器32の出力信号は、目標速度と実際の移動速度との差分、すなわち、シーク速度エラー信号となる。
減算器32の出力信号、すなわち、シーク速度エラー信号は、シーク制御回路33に供給される。シーク制御回路33は、減算器32から供給されるシーク速度エラー信号を位相補償し、シーク速度制御信号SEEKDRVを得る。
シーク制御回路33で得られたシーク速度制御信号SEEKDRVは、トラッキング選択回路25に供給される。光ピックアップ3は、シーク速度制御信号SEEKDRVに応じて駆動されることにより、所定の速度プロフィールに従って駆動される。
次に、減速制御回路24は、減速パルス出力回路34、目標トラック本数比較器35、低域抽出回路36、切換回路37、加算器38、タイマ39、出力コントローラ40から構成される。
減速パルス出力回路34には、速度検出回路30から移動速度情報SEEKVELが供給されるとともに、目標トラック本数比較器35からクロック信号CLKが供給される。減速パルス出力回路34は、移動速度情報SEEKVELから減速パルスを生成し、クロック信号CLKに応じたタイミングで出力する。
図3は本発明の一実施例の減速パルス出力回路のブロック構成図を示す。
減速パルス出力回路34は、減算器41、速度オフセット設定部42、乗算器43、ラッチ信号生成部44から構成される。減算器41には、速度検出回路30から移動速度情報SEEKVELが供給されるとともに、速度オフセット設定部42からオフセット値V0 が供給される。速度オフセット設定部42には、速度オフセット値V0 が設定されている。速度オフセット値V0 は、シーク制御後の引き込みが可能となる範囲によって予め経験的に求められた値に設定されている。減算器41は、速度検出回路30から供給される移動速度情報SEEKVELから速度オフセット設定部42に設定された速度オフセット値V0 を減算する。
速度オフセット値V0 は、乗算器43に供給される。乗算器43は、減算器41の出力信号に予め設定された定数Kを乗算して減速パルス信号として出力する。すなわち、現在の移動速度をV、速度オフセット値をV0 、定数をKとすると、減速パルス出力回路34の出力減速パルスαは、
α=K(V−V0 ) ・・・(6)
で表される。
減速パルス出力回路34の出力信号αは、減速パルスの高さであり、この減速パルスの高さによって、光ピックアップ3の減速度が決定される。なお、式(6)の各パラメータの設定方法は後述する。
減速パルス出力回路34で生成された減速パルスは、切換回路37に供給される。切換回路37は、目標トラック本数比較器35から出力されるクロックCLK及びタイマ39から出力されるタイミング信号に応じて減速パルス出力回路34の出力を制御する。なお、減速パルス出力回路34は、クロックCLKに応じて減速パルスαを任意に設定できる。例えば、1回目のクロックCLKが供給されたときには、減速パルスα1 を出力し、2回目のクロックCLKが供給されたときには、減速パルスα2 を出力する。減速パルスα1 ,α2 は任意に設定できる。
また、ラッチ信号生成部44は、目標トラック本数比較器35で目標トラックに達したときに出力されるクロックCLKが供給され、クロックCLKの最初の立ち上がりを検出して、ラッチ信号LATCHを生成する。ラッチ信号生成部44で生成されたラッチ信号LATCHは低域抽出回路36に供給される。
低域抽出回路36には、減速パルス出力回路34からラッチ信号LATCHが供給されるとともに、シーク制御回路33で生成されたシーク制御信号SEEKDRVが供給される。低域抽出回路36は、シーク制御回路33から供給されたシーク制御信号SEEKDRVに含まれる低域成分CSTDRVを抽出し、抽出された低域成分CSTDRVをラッチ信号LATCHのタイミングでラッチする。低域抽出回路36にラッチされた低域成分信号CSTDRVは、加算器38に供給される。
また、目標トラック本数比較器35は、速度制御回路23のトラックゼロクロスカウンタ回路29の出力カウント値TRKCNTが目標位置までのトラック本数に応じて予め設定された所定の値となったときに、ローレベルとなる引き込み制御信号PULLINを生成するとともに、クロックCLKを出力する。目標トラック本数比較器35で生成された引き込み制御信号PULLINは、出力コントローラ40に供給される。また、目標トラック本数比較器35から出力されたクロックCLKは、減速パルス出力回路34、切換回路37、タイマ39に供給される。目標トラック本数比較器35から出力されるクロックCLKは、タイマ39の起動信号として用いられる。
タイマ39は、目標トラック本数比較器35から供給されるクロックCLKがローレベルからハイレベルに立ち上がると、起動され、予め設定された時間経過すると、出力をローレベルからハイレベルに反転させる。タイマ39には2種類の計時時間t0 ,t10が設定されており、1回目のクロックCLKでは計時時間t0 で出力を反転させ、2回目のクロックCLKでは計時時間t10で出力を反転させる。
なお、タイマ39は、クロックCLKが供給されると出力をローレベルにリセットさせる。タイマ39の出力信号は、減速パルスの出力を停止するためのストップ信号STOPとして用いられる。
タイマ39の出力信号、すなわち、ストップ信号STOPは、切換回路37及び出力コントローラ40に供給される。切換回路37は、目標トラック本数比較器35の出力クロックCLK又はタイマ39からの出力信号により減速パルス出力回路34で生成された減速パルスの出力を切り換える。
切換回路37の出力は、加算器38に供給される。加算器38は、切換回路37により減速パルスが出力されているときには、減速パルス出力回路34で生成された減速パルスに低域抽出回路36で抽出された低域成分CSTDRVを加算した加算結果をトラッキング選択回路25に供給する。また、加算器38は、切換回路38により減算パルスの出力が停止されているときには、低域抽出回路36で抽出された低域成分CSTDRVだけをトラッキング選択回路25に供給する。
出力コントローラ40は、不可逆ロータリスイッチとなっており、コマンド制御回路26からの供給されるコマンド信号TRKCOM、及び、目標トラック本数比較器35で生成される引き込み信号PULLIN並びにタイマ39で生成されるストップ信号STOPに応じて選択制御信号SELCNTのレベルを「0」→「1」→「2」→「0」の順に不可逆的に出力する。
出力コントローラ40は、コマンド制御回路26から出力されるコマンド信号TRKCOMがローレベルからハイレベルに反転したときに、選択制御信号SELCNTのレベルを「0」から「1」とする。
次に、出力コントローラ40は、目標トラック本数比較器35で生成される引き込み信号PULLINがローレベルからハイレベルに反転したときに、選択制御信号SELCNTをレベルを「1」から「2」とする。さらに、出力コントローラ40は、目標トラック本数比較器35で生成される引き込み信号PULLINがローレベルで、タイマ39で生成されるストップ信号STOPがローレベルからハイレベルに反転したときに、選択制御信号SELCNTをレベルを「2」から「0」とする。出力コントローラ40で生成された選択制御信号SELCNTは、トラッキング選択回路25に供給される。
ここで、トラッキング選択回路25の選択動作について説明する。
図4は本発明の一実施例のトラッキング選択回路25の選択動作を説明するための図を示す。
トラッキング選択回路25は、コマンド制御回路26から供給されるコマンド信号TRKCOM及び出力コントローラ40から供給される選択制御信号SELCNTによりトラック追従制御回路22で生成されたトラック追従制御信号TRKDRV、シーク制御回路33で生成されたシーク制御信号SEEKDRV、減速パルス信号PULLINDRVの選択を行う。トラッキング選択回路25は、コマンド制御回路26から供給されるコマンド信号TRKCOMがローレベルのときには、出力コントローラ40の出力によらず、トラック追従制御回路22で生成されたトラック追従制御信号TRKDRVを選択する。
また、トラッキング選択回路25は、コマンド制御回路26から供給されるコマンド信号TRKCOMがハイレベルのときには、出力コントローラ40の選択制御信号SELCNTに応じてトラック追従制御回路22で生成されたトラック追従制御信号TRKDRV、シーク制御回路33で生成されたシーク制御信号SEEKDRV、減速パルス信号PULLINDRVの選択を行う。
トラッキング制御回路25は、コマンド制御回路26から供給されるコマンド信号TRKCOMがハイレベルで、出力コントローラ40から出力される選択制御信号SELCNTのレベルが「1」のときは、シーク制御回路33で生成されたシーク制御信号SEEKDRVを選択出力する。トラッキング選択回路25により選択されたトラッキング制御信号TDRVは、ドライバ回路27を介して光ピックアップ27に供給される。光ピックアップ27は、トラッキング選択回路25により選択されたトラッキング制御信号TDRVにより駆動される。
次に、トラッキング制御回路5の動作を図面とともに説明する。
図5は本発明の一実施例の動作説明図を示す。図5(A)はトラッキングエラー信号検出回路21で生成されるトラッキングエラー信号TES、図5(B)はトラッキングゼロクロス検出回路28で検出されるトラッキングゼロクロスパルスTZC、図5(C)は目標トラック数から移動トラック数TRKCNTを減算した目標位置までの残りトラック数、図5(D)は速度検出回路30で生成されるSEEKVEL、図5(E)はシーク制御回路33で生成されるシーク制御信号SEEKDRV、図5(F)は目標トラック本数比較器35で生成される引き込み信号PULLIN、図5(G)はタイマ39で生成されるストップ信号STOP、図5(H)は出力コントローラ40で生成される選択制御信号SELCNT、図5(I)は目標トラック本数比較器35で生成されるクロックCLK、図5(J)は減速パルス出力回路34で生成されるラッチ信号LATCHのタイミングを示す。
コマンド制御回路26のコマンド信号TRKCOMがハイレベルで、移動トラックが所定トラック以下に達していないとき、すなわち、図5に示す期間T1では、出力コントローラ40の選択制御信号SELCNTは図5(H)に示すようにレベル「1」となる。出力コントローラ40の選択制御信号SELCNTがレベル「1」のときには、トラッキング選択回路25は、シーク制御回路33で生成されたシーク制御信号SEEKDRVを選択、出力する。
次に、時刻t1で、図5(C)に示すように目標位置までの残りトラック数が所定トラック数以下となると、図5(I)に示すように目標トラック数比較器35のクロックCLKが出力される。減速パルス出力回路34では、図5(I)のクロックCLKの最初のクロックに応答して図5(J)に示すようにラッチ信号LATCHを低域抽出回路36に供給する。低域抽出回路36は、図5(J)に示すラッチ信号LATCHに応じてシーク制御信号SEEKDRVの低域成分をラッチする。また、クロックCLKによって、タイマ39が起動される。
また、時刻t1で、目標トラック数比較器35は図5(F)に示すように引き込み信号PULLINをローレベルからハイレベルに反転させる。出力コントローラ40は、目標トラック数比較器35から出力される引き込み信号PULLINがハイレベルになると、図5(H)に示すように選択制御信号SELCNTをレベル「2」にする。図5(H)に示すように時刻t1で、選択制御信号SELCNTがレベル「2」になると、トラッキング選択回路25は、加算器38の出力、すなわち、減速パルス信号PULLINDRVを選択する。このとき、切換回路37は減速パルス出力回路34からの出力減速パルスを出力している。なお、このとき、減速パルス出力回路34は、1回目のクロックCLKが供給されたときには、パルス高さがα1となる出力減速パルスを出力する。
加算器28の出力は、減速パルス出力回路34の出力信号に低域抽出回路36で抽出された低域成分CSTDRVを加算したレベルとなる。よって、トラッキング選択回路25の出力信号TDRVは図5(E)に示すような波形となる。
次に、タイマ39が時刻t1から所定の時間t0 を計時した時刻t2になると、タイマ39で生成されるストップ信号が図9(G)に示すようにハイレベルになる。タイマ39の出力ストップ信号STOPがハイレベルになると、切換回路37がオフし、加算器38の出力は低域抽出回路36の低域成分CSTDRVのみとなる。
このとき、出力コントローラ40の選択制御信号SELCNTはレベル「2」に保持されている。よって、トラッキング選択回路25の出力信号TDRVは、図5(E)に示すように加算器38の出力信号、すなわち、低域抽出回路36の低域成分CSTDRVのみとなる。
以上の動作により、減速パルス信号PULLINDRVとして、まず、パルス幅がt0 、パルス高さが(α1 +CSTDRV)となる信号が出力される。
次に、時刻t3で光ピックアップ3の移動によりトラック数が1本減少すると、図5(F)に示すように目標トラック比較器35は引き込み信号PULLINをローレベルにするとともに、図5(I)に示すようにクロックCLKを出力する。目標トラック比較器35から出力されるクロックCLKによりタイマ39が起動する。タイマ39は、今回のクロックCLKでは前回のクロックCLKにより起動されたときの計時時間t0 とは異なる計時時間t10を計時する。
次に、タイマ39が時刻t3から所定の時間t10を計時した時刻t4になると、タイマ39で生成されるストップ信号が図9(G)に示すようにハイレベルになる。タイマ39の出力ストップ信号STOPがハイレベルになると、出力コントローラ40の選択制御信号SELCNTがレベル「0」になる。
出力コントローラ40の選択制御信号SELCNTがレベル「0」になると、トラッキング選択回路25は、トラック追従制御回路22からのトラック追従信号TRKDRVを選択し、トラック追従動作が行われる。
以上の動作により、減速パルス信号PULLINDRVとして、パルス幅がt10、パルス高さが(α2 +CSTDRV)となる信号が出力される。
以上のようにして、シーク制御動作から減速制御動作、そして、トラック追従動作への移行が行われる。このとき、本実施例では、減速制御動作は2つの減速パルス信号PULLINDRVにより減速制御が行われる。また、2つの減速パルス信号PULLINDRVとしては、パルス幅t0 、パルス高さ(α1 +CSTDRV)なる第1の減速パルス信号、パルス幅t10、パルス高さ(α2 +CSTDRV)なる第2の減速パルス信号が設定される。
このとき、第1の減速パルス信号と第2の減速パルス信号とは、クロックCLKの入力に応じてタイマ39での計時時間t0 ,t10、減速パルス出力回路34のパルス高さα1 ,α2 を任意に設定することができる。
このように複数回減速パルスを出力するようにすることにより、1回当たりのパルス高さαを低くでき、最適な減速パルスを得ることができる。また、サンプリングに影響のないパルス幅にできるため、適切な減速パルスで減速を行うことができる。
さらに、減速度は、減速パルス出力回路34で、現在の移動速度から式(6)に示すような1次関数によって決定される。
ここで、式(6)のパラメータK、速度オフセットV0 の設定方法について説明する。
まず、制御出力のサンプリング周期をΔt、トラック引き込み制御移行時のシーク速度SEEKVELをV、目標トラック本数比較器35の閾値m本[(目標トラック本数)−n〔本〕]、減速パルス出力回路34の速度オフセット値をV0 、減速パルス出力回路34の減速パルスゲインをK、減速パルス幅に相当するタイマ39の設定値をt(=nΔt)とすると、減速パルスのパルス高さαは前述のように式(6)から
α=K(V−V0 )
パルス幅Tは、
T=nΔt
となる。
次に減速パルス出力後の速度V1 は、
V1 =V+αt
であることから、
V1 =V+Kt(V−V0 ) ・・・(7)
で表すことができる。
式(7)を変形すると、
V−V1 =Kt(V−V0 )
と表すことができる。
よって、V0 =V1 ,K=1/tとすることにより、どんなシーク速度Vに対しても一定パルス幅T=nΔtとし、パルス出力後の速度をV0 とするようなパルス高さα=K(V−V0 )を決定することができる。
ここで、サンプリング周期tは任意に決めても良いが、トラック追従制御移行時におけるビームスポットが目標トラックにおけるTES線形区間内に収まるようにすることが望ましい。つまり、トラック幅dの光ディスク8において、目標のmトラック手前から減速パルスを出力した後のビームスポットは、目標トラックの中心に対して、
x=md−{Vt+(1/2)αt2 }
だけ手前に位置することになるので、この値がトラッキングエラー信号のピーク範囲内に収まるように、すなわち、|x|<(d/4)となるようにサンプリング周期tを設定すればよい。
例えば、1/t=60kHzの制御サンプリング周期において、光ディスク8のトラック幅dが1.1μm、目標トラック本数比較器35の閾値を[(目標トラック本数)−0.5〔本〕]減速パルス出力回路34における速度オフセットV0 =0〔mm/s〕、減速パルスゲインK=−3669(m/s2 )/(m/s)、減速パルス幅に相当するタイマ39の閾値t=117μs(7Δt)と設定したとする。このとき、トラック引き込み制御移行時のシーク速度SEEKVELを移動速度V=8〔mm/s〕とすると、減速パルス出力回路34で生成される減速パルスの高さαは、
α=K(V−V0 )=−69m/s2 となり、パルス出力後の速度V1 は、
V1 =V+αt=0〔mm/s〕
となる。
以上のように減速パルスの高さαを速度検出誤差の影響の少ない一次式で記述することができ、また、減速パルス幅tをサンプリングによる分解能低下の影響を受けない一定値で与えることができるので、減速パルス出力が可能となる。これにより、シーク制御からトラック追従制御への移行の際に、残留速度の生ずることのない、安定したトラック引き込み制御を実現できる。