JP2004143612A - カールを防止した紙およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子写真用複写機などを用いて熱転写した後の通紙カールを防止した紙およびその製造方法を提供する。
【解決手段】表面サイズプレス液の糊液として、カチオン化酸化タピオカ澱粉が塗布されたものであることを特徴とするカールを防止した紙。また、表面サイズプレスの方式として、メタードフィルムトランスファー方式(以下、MFT方式と略す。)により、カチオン化酸化タピオカ澱粉を表面サイズプレス液の糊液とし、液濃度10〜14質量%の該表面サイズプレス液を用いて製造することを特徴とするカールを防止した紙の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】表面サイズプレス液の糊液として、カチオン化酸化タピオカ澱粉が塗布されたものであることを特徴とするカールを防止した紙。また、表面サイズプレスの方式として、メタードフィルムトランスファー方式(以下、MFT方式と略す。)により、カチオン化酸化タピオカ澱粉を表面サイズプレス液の糊液とし、液濃度10〜14質量%の該表面サイズプレス液を用いて製造することを特徴とするカールを防止した紙の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用複写機などを用いて熱転写した後のカール(以下、通紙カールと略す。)を防止した紙およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、通紙カールを改善しようとする試みは各社各様の方法によって実施されている。例えば、紙の収縮比に着目した通紙カールの改善を目的として、収縮比の抑制にインクラインドサイズプレス方式(以下、ISP方式と略す。)を用いていることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
各製紙メーカーにおいても、通紙カールの優れた紙を製造するために、低濃度、低粘度の表面サイズプレス液を用いたISP方式が採用されているのが実状である。しかしながら、ISP方式では、低濃度、低粘度の表面サイズプレス液のため、紙切れの発生、乾燥負荷の増加、抄速の低下などの操業上の問題が多い。
【0004】
これに対し、MFT方式では、高濃度の表面サイズプレス液が用いられることから、ISP方式で見られる操業上の問題は解消されるものの、紙中への浸透性が少ないため、得られる通紙カールのレベルは劣ることが知られており、通紙カール性能が重要な紙の製造においてMFT方式が用いられることは少ない。しかしながら、操業性の向上は各製紙メーカーにおいて重要な課題であり、操業効率の高いMFT方式においても通紙カールの優れた紙を製造できる技術の開発が必須であることは言うまでもない。
【0005】
また、従来用いられている酸化澱粉の製造方法は、コーンスターチの澱粉スラリーや澱粉糊化液を、次亜塩素酸ソーダなどの酸化剤を用いて酸化反応させる方法が一般的であり、いわゆる水系スラリーでの反応処理により得られる(以下、湿式酸化澱粉と略す。)。湿式酸化澱粉は、糊液濃度が高くなるに従って増粘化が大きくなることが知られており、MFT方式に適した表面サイズプレス液の液濃度の高いレベルにおいて高粘度となることが、紙中への浸透性を低下させる要因であった。
【0006】
本発明で用いられる表面サイズプレス液とは、澱粉糊化液にサイズ性を付与する目的で添加される表面サイズ剤と、数種の添加剤が添加混合された液を総称するものである。通常、15質量%以上で糊化された糊液に、表面サイズ剤が1質量%以下、添加剤がppmオーダーで添加され、澱粉糊化液を主成分とするものである。表面サイズプレス液の液濃度は、MFT方式やISP方式などの表面サイズプレス方式、および目的とする塗布量により、適宜15質量%以下に希釈して使用される。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−73297号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、表面サイズプレス液に用いられる糊液として、粘性の低いカチオン化酸化タピオカ澱粉を用いることにより、紙中への浸透性を高め、MFT方式でもISP方式と遜色ないレベルを有し、電子写真用複写機などを用いて熱転写した後の通紙カールを防止した紙およびその製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究した結果、本発明のカールを防止した紙およびその製造方法を発明するに至った。
【0010】
即ち、本発明のカールを防止した紙は、表面サイズプレス液の糊液として、カチオン化酸化タピオカ澱粉を用いたものであることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のカールを防止した紙の製造方法は、表面サイズプレスの方式としてMFT方式により、カチオン化酸化タピオカ澱粉を表面サイズプレス液の糊液とし、液濃度10〜14質量%の該表面サイズプレス液を用いて製造することを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のカールを防止した紙およびその製造方法について、詳細に説明する。
【0013】
近年の抄紙機械の高速化に伴い、表面サイズプレスの方式は、従来技術であるISP方式から、MFT方式への切り替えが進んでいる。
【0014】
ISP方式とは、2本のロール(アプリケーターロール)間のニップに表面サイズプレス液を供給し、その液溜まり部(以下、ポンドと略す。)に紙をどぶ浸けして通紙することにより両面塗布を行う方式である。ISP方式では、ロール本数が2本のみであることから、投資額と所用スペース、維持費が比較的少なくて済むという利点があるが、短所について多くの指摘がなされている。
【0015】
ISP方式において、表面サイズプレス液は、回転するロールによってニップに引き込まれるが、ニップを通過する液量はニップ圧によって制限されることから、ニップを通過できない液は上方に逆流することになる。この逆流の速度は、流体力学的な力となり、抄紙機械が高速になるほど大きくなって、ある速度以上になると表面サイズプレス液が、ポンドの液面を破ってはね飛ぶ”ボイリング”と呼ばれる現象が発生する。
【0016】
ボイリングが発生すると、表面サイズプレス液の塗布量が幅方向不均一となったり、さらに、ポンドにおいて紙にかかる表面サイズプレス液の重量分布も幅方向不均一となるため、紙切れの要因ともなる。ボイリングを防止するために、表面サイズプレス液の濃度を2〜4質量%の低濃度に抑えて低粘度化することにより、流体力学的な力を抑えたり、ロール径を大きくしたりする対策が取られているが、過度の低濃度化は、ISP方式がどぶ浸け方式であるため、紙中への低濃度液の浸透が増大することとなり、紙力の大幅な低下による紙切れや、サイズプレス後のアフタードライヤーでの乾燥能力の不足という大きな問題を引き起こし、一般的には800m/分がISP方式での速度の上限と言われている。
【0017】
また、ISP方式による塗布量の調整は、ボイリングが発生しない範囲での表面サイズプレス液の液濃度の調整と、若干のアプリケーターロール加圧力調整のみであり、どぶ浸けのため、事実上の塗布量の微妙な調整は困難である。
【0018】
以上のようなISP方式での問題点を解決するために登場したのが、MFT方式である。MFT方式は、ISP方式同様2本のアプリケーターロール間に原紙を通過させて液を塗布するものであり、所望の塗布量を得るために各アプリケーターロールの外側には、金属ロール、ゴム被覆ロール、ワーヤー巻き付けロール、平滑なロッド、溝付きのロッド、ワイヤー巻き付けロッド、ブレード等の一つまたは複数の組み合わせによるメタリング装置が設けられており、所定量の液をアプリケーターロールに供給できるようになっている。
【0019】
MFT方式としては、そのメタリング装置の種類に応じて、ロッドメタードフィルムプレス方式、ゲートロールメタードフィルムプレス方式、ブレードメタードフィルムプレス方式等が挙げられる。
【0020】
MFT方式は、ISP方式と比較して紙部でのポンドがないことから、幅方向において安定である。また、転写塗布のため、表面サイズプレス液を10〜14質量%に高濃度化することが可能となり、表面サイズプレス液の紙中への浸透が少ないことから、紙力の低下がなく、アフタードライヤーでの乾燥負荷を軽減できる。このことは、MFT方式では紙切れが少なく、高速塗布に適していることを示すものである。
【0021】
以上のように、紙切れの抑制や、高速高濃度塗布が可能であるなど、操業的な利点が多いことから、現在多くの製紙メーカーではISP方式からMFT方式への切り替えがなされている。
【0022】
しかしながら、本発明において問題とする通紙カールに関して、MFT方式はISP方式に比較して、得られる通紙カールの性能は非常に劣るものであり、操業性で得られる効果とは相反する結果となることが知られている。
【0023】
これは、ISP方式とMFT方式の塗布方法の違いによるところが大きい。表面サイズプレス液を塗布される前の紙内部が有する応力ひずみは、プレドライヤーでの乾燥収縮により強固な繊維間結合が維持されたまま蓄積された状態にあるためである。
【0024】
ISP方式では、低濃度、低粘度の表面サイズプレス液によるどぶ浸け塗布のため、紙中への表面サイズプレス液の浸透が増大され、繊維間結合が緩和されることから、塗布前の紙内部が有していた応力ひずみは開放され、部分的に発生した変形が紙全体へと伝達されにくくなる。このことが、ISP方式で塗布された紙は、非常に良好な通紙カール性能が得られる要因である。
【0025】
逆にMFT方式では、高濃度の表面サイズプレス液による転写塗布のため、紙中への表面サイズプレス液の浸透は少なく、紙表面にフィルム状に表面サイズプレス液が留まった状態となる。このフィルムは、表面強度の向上には大きく寄与するが、いかんせん紙中への表面サイズプレス液の浸透が少ないことから、塗布前の紙内部が有する応力ひずみは開放されず、また強固な繊維間結合も維持された状態のため、部分的に発生した変形でも紙全体に伝達されやすい紙となる。さらに、紙表面にフィルム状に留まった表面サイズプレス液は、僅かな表裏での塗布量の差や表裏での水分の吸脱湿の差により、あたかもバイメタルのような挙動を簡単に起こすようになる。このことがMFT方式で塗布された紙の通紙カールが悪化する要因となっている。
【0026】
以上のように、表面サイズプレス液の紙中への浸透性を増さない限り、MFT方式において、ISP方式と同レベルの通紙カールが良好な紙を得ることは非常に困難と言わざるを得ない。
【0027】
また、表面サイズプレス液の主成分として用いられる澱粉は、前記紙中への浸透性に対し密接な関係を持っている。
【0028】
MFT方式を採用するに当たって、従来用いられている湿式酸化澱粉を用いた表面サイズプレス液の糊液濃度を10質量%未満に下げて低粘度化し、浸透性を向上する方法も考えられる。しかし、MFT方式では、事実上、浸透性が増す粘度まで濃度を下げてしまうと、規定塗布量を確保することができなかったり、できた用紙の表面強度が低下するといった問題が発生するため、事実上の操業は不可能である。
【0029】
また、製紙メーカーで自製している低粘度の自家変性澱粉を用いる方法では、糊液の老化が早く高濃度での保存が困難であり、表面強度が劣るなどの問題があることから、一般に塗布量の少ないコート原紙には用いられるが、電子写真用転写紙のような紙には用いられることはない。
【0030】
そこで本発明では、MFT方式で塗布可能な10〜14質量%の濃度まで表面サイズプレス液の液濃度を高くしても、増粘せずに低粘度を維持し、紙中への浸透性が高く、さらに従来通りの使い勝手の良さや面強度、サイズ性の維持ができる澱粉を用いることが必要となる。
【0031】
本発明では、MFT方式においても表面サイズプレス液の紙中への浸透性を上げるために、カチオン化酸化タピオカ澱粉を用いることにより、高濃度でも増粘せずに低粘度を維持し、紙中への浸透性が高い効果が得られることに着目した。
【0032】
本発明におけるカチオン化酸化タピオカ澱粉は、カチオン化剤として第3級アミン化合物、第4級アンモニウム塩化合物等の一般的に使用されるカチオン化剤はいずれのものも使用できる。具体例としては、第3級アミン化合物としては、2−ジエチルアミノエチルクロライド等が例示され、第4級アンモニウム塩化合物としては、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が例示される。
【0033】
また、カチオン化酸化タピオカ澱粉のカチオン化の程度を表すDS(カチオン化置換度)は、0.01〜0.02%が好ましい。
【0034】
使用される澱粉は、脂肪酸を含まないタピオカ澱粉が好ましく、脂肪酸を含まないことにより、アミロースの再結晶が起こらないため、糊化後の液の安定性に優れている。
【0035】
さらに、本発明におけるカチオン化酸化タピオカ澱粉は、酸化剤により酸化処理を行った澱粉であり、酸化することにより澱粉分子の解重合がおこり、分子量を下げることなく低粘度化することが可能となる。上記酸化処理とは、無機酸または有機酸を利用し加水分解を行った酸処理澱粉(可溶性澱粉)とは異なる。
【0036】
カチオン化酸化タピオカ澱粉の分子量は、用紙強度に影響を与えるため、なるべく高い方が好ましいが、糊液の粘度が高くなり過ぎると、取り扱いが難しく操業上の問題が発生することから、粘度は低い方が好ましい。上記、カチオン化および酸化処理により、分子量を下げることなく、糊液の低粘度化が可能となる。本発明で使用されるカチオン化酸化タピオカ澱粉の分子量は、特に規定されるものではないが、好ましくは500000以上のものが使用される。
【0037】
カチオン化酸化タピオカ澱粉の糊液は、従来から用いられている湿式酸化澱粉の糊液と全く同様の糊化方法により得ることができる。つまり、澱粉スラリーは、攪拌装置を備えた加温容器により85〜95℃で一定時間保持するか、ジェットクッカーにより加熱蒸気を加え、130〜160℃に加温しながら通過させることで簡単に糊化できる。
【0038】
本発明のカールを防止した紙の製造方法において、カチオン化酸化タピオカ澱粉を糊液とする表面サイズプレス液の濃度が10質量%未満の場合、粘度が低すぎるために目標の塗布量を得られない場合があり、14質量%を越える場合は、例えば、ロッドメタードフィルムプレス方式ではロッド筋の発生や過塗布量の問題、ゲートロールメタードフィルムプレス方式ではメタリングロール回転比が低くなりすぎるため、ロールの摩耗が早くなり操業上好ましくない等の問題が発生する。即ち、適切な塗布量を維持し、良好な操業性を得るためには、表面サイズプレス液の濃度は10〜14質量%となる。塗布量の制御をマシン側の調整で行うか、糊液濃度で行うかの選択は、実際の製造におけるミストの発生状況などの操業上の観点から、使用者が判断すればよい。
【0039】
本発明のカチオン化酸化タピオカ澱粉を用いたカールを防止した紙は、操業性の良好なMFT方式において特に効果を発揮するが、ISP方式で用いても何ら問題ない。
【0040】
カールの発生は、コピー時の通紙トラブルの一因(紙詰まり、排紙収容性不良)ともなり、またコピー後の積み姿の悪さゆえ客先でのクレームともなる。また、製造メーカーにおける操業性向上の点からも、MFT方式による高速高濃度塗布も必要不可欠である。このことから、表面サイズプレス液に用いられる糊液として、カチオン化酸化タピオカ澱粉を用いることにより、MFT方式を用いて製造しても、カールの小さな寸法安定性の良い紙を製造できることは非常に有益である。
【0041】
また、本発明の表面サイズプレス液中には、カチオン化酸化タピオカ澱粉の他、表面サイズ剤、消泡剤、着色剤、蛍光増白剤、防腐剤等の添加剤を適宜配合することもできる。
【0042】
本発明のカールを防止した紙は、木材繊維主体の紙、または木材繊維や合成繊維を主体とした不織布の如きシート状物質が挙げられ、紙の場合に使用される木材パルプは、NBKP、LBKP、NBSP、LBSP、GP、TMPなどの他に、古紙パルプが挙げられ、必要に応じて単独或いは併用して用いられる。
【0043】
なお、古紙パルプの原料としては、(財)古紙再生促進センターの古紙標準品質規格表に示されている、上白、罫白、クリーム白、カード、特白、中白、模造、色白、ケント、白アート、特上切、別上切、新聞、雑誌などが挙げられる。さらに具体例としては、情報関連用紙である非塗工コンピュータ用紙、感熱紙、感圧紙などのプリンター用紙、およびPPC用紙などのOA古紙、アート紙、コート紙、微塗工紙、マット紙などの塗工紙、或いは上質紙、色上質、ノート、便箋、包装紙、ファンシーペーパー、中質紙、新聞用紙、更紙、スーパー掛け紙、模造紙、純白ロール紙、ミルクカートンなどの非塗工紙などの紙や板紙の古紙で、化学パルプ紙、高歩留りパルプ含有紙などが使用されるが、印字、複写、印刷、非印刷を問わず特に限定されるものではない。
【0044】
また、内添填料は、白色顔料として従来公知の顔料が用いられ、単独或いは併用できるが、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムのような白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂のような有機顔料などが挙げられる。
【0045】
さらに、本発明のカールを防止した紙を抄造する際に使用される内添サイズ剤としては、中性抄紙に用いられる中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)、アルキルケテンダイマー(AKD)、石油樹脂系サイズ剤などが使用できる。
【0046】
本発明において、紙料中には、その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤などを本発明の所望の効果を損なわない範囲で、適宜配合することもできる。
【0047】
本発明の抄紙方法において、抄紙機は、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機など製紙業界で公知の抄紙機を適宜使用できる。
【0048】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。
【0049】
実施例1
濾水度450mlcsfのLBKP90部、濾水度475mlcsfのNBKP10部からなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−121、奥多摩工業社製)6部、両性澱粉(商品名:Cato3210、王子ナショナル社製)0.8部、硫酸バンド1部、中性ロジンサイズ剤(商品名:NeuSize M−10、ハリマ化成社製)0.35部、歩留まり向上剤(商品名:NR−11LS、ハイモ社製)0.02部を添加して、長網抄紙機で抄造し、表面サイズプレス液の澱粉糊液としてカチオン化酸化タピオカ澱粉(商品名:PERFECTACAT975、AVEBE社製)を液濃度10%、表面サイズ剤(商品名:BLS−720、星光化学社製)を液濃度0.2%になるよう調整し、塗布量が両面で1.5g/m2となるようにゲートロールフィルムプレス方式で塗布を行いマシンカレンダー掛けをして坪量64g/m2の実施例1の紙を作製した。表面サイズプレス液の液温度は60℃とした。抄速1200m/分において、特に操業上の問題は無かった。
【0050】
実施例2
実施例1のカチオン化酸化タピオカ澱粉の液濃度を12%とした以外は、実施例1と同様にして実施例2の紙を作製した。抄速1200m/分において、特に操業上の問題は無かった。
【0051】
実施例3
実施例1のカチオン化酸化タピオカ澱粉の液濃度を14%とした以外は、実施例1と同様にして実施例3の紙を作製した。抄速1200m/分において、特に操業上の問題は無かった。
【0052】
実施例4
実施例2の塗布方式をロッドフィルムプレス方式とした以外は、実施例2と同様にして実施例4の紙を作製した。抄速1200m/分において、特に操業上の問題は無かった。
【0053】
比較例1
表面サイズプレス液の澱粉糊液として、湿式酸化澱粉(商品名:MS#3800、日本食品化工社製)を用い、液濃度を12%とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の紙を作製した。抄速1200m/分において、特に操業上の問題は無かった。
【0054】
比較例2
比較例1の澱粉糊液の液濃度を10%とした以外は、比較例1と同様にして、比較例2の紙を作製した。ただし、抄速1200m/分において、塗布量調整をするも塗布量は両面で1.2g/m2しか塗布できなかった。
【0055】
比較例3
比較例1の澱粉糊液の液濃度を8%とした以外は、比較例1と同様にして、比較例3の紙を作製した。ただし、抄速1200m/分において、塗布量調整をするも塗布量は両面で1.0g/m2しか塗布できなかった。
【0056】
比較例4
実施例1の澱粉を湿式酸化澱粉(商品名:MS#3800、日本食品化工社製)液濃度4%、表面サイズ剤の液濃度を0.05%とし、塗布方式をISP方式で行った以外は、実施例1と同様にして、比較例4の紙を作製した。操業上の問題が発生せずに、塗布できた最大抄速は800m/分であった。
【0057】
比較例5
表面サイズプレス液の澱粉糊液として、自家変性澱粉を用い変性可能濃度である液濃度8%にて塗布を行った以外は、実施例1と同様にして、比較例5の紙を作製した。ただし、抄速1200m/分において、塗布量調整をするも塗布量は両面で0.9g/m2しか塗布できなかった。
【0058】
上記により作製した実施例1〜4および比較例1〜5における製造条件、得られた紙の表面強度、通紙カールについて、下記の評価方法により評価し、その結果を表1に示した。
【0059】
<通紙カール>
通紙カールは、得られた紙をA4サイズに断裁し、100枚連続通紙後、平面に置いた四隅のカール高さの最大値を測定した。複写機はNP−3050(キャノン社製)を用いた。単位はmmである。評価は下記の基準で評価し、AおよびBを許容範囲、CおよびDは不可とした。
A:20mm以下
B:21〜24mm
C:25〜28mm
D:29mm以上
【0060】
<表面強度>
デニソンワックス(粘着力の異なるワックス棒、数字の大きいほど粘着力が強い)を使用し、アルコールランプで溶かしたワックス棒を紙面に立て、15分放冷後ワックス棒をはがした。紙面の状態を見て紙むけの起こらない最高の番号で示すが、16A以上のものは16Aとして表示した。通常14A以上では問題なく、13A以下では実用上問題がある。
【0061】
【表1】
【0062】
表1の結果から明らかなように、表面サイズプレス液としてカチオン化酸化タピオカ澱粉を用い、液濃度を10〜14質量%でMFT方式で塗布を行った用紙は、表面強度を損なうことなく、通紙カールの発生が抑制され、また、操業性に優れたカールを防止した紙を製造することが可能となる。
【0063】
湿式酸化澱粉の糊液濃度を低濃度とし低粘度化することにより、紙中への浸透性を増大させようとしても、目的の塗布量を得ることができず、表面強度の低下を招く結果となり、通紙カールへの効果も充分ではない。これは比較例5の自家変性澱粉の場合と同様である。さらに、比較例4のISP方式で得られる通紙カールのレベルは良いが、抄速が遅く非常に生産性が悪いことがわかる。
【0064】
【発明の効果】
上記結果から明らかなように、表面サイズプレス液としてカチオン化酸化タピオカ澱粉を用いることにより、表面強度を損なうことなく、通紙カールに優れたカールを防止した紙を得ることができた。さらには、表面サイズプレス液の液濃度を10〜14質量%とすることにより、MFT方式での操業性および特性に優れたカールを防止した紙を製造することが可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用複写機などを用いて熱転写した後のカール(以下、通紙カールと略す。)を防止した紙およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、通紙カールを改善しようとする試みは各社各様の方法によって実施されている。例えば、紙の収縮比に着目した通紙カールの改善を目的として、収縮比の抑制にインクラインドサイズプレス方式(以下、ISP方式と略す。)を用いていることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
各製紙メーカーにおいても、通紙カールの優れた紙を製造するために、低濃度、低粘度の表面サイズプレス液を用いたISP方式が採用されているのが実状である。しかしながら、ISP方式では、低濃度、低粘度の表面サイズプレス液のため、紙切れの発生、乾燥負荷の増加、抄速の低下などの操業上の問題が多い。
【0004】
これに対し、MFT方式では、高濃度の表面サイズプレス液が用いられることから、ISP方式で見られる操業上の問題は解消されるものの、紙中への浸透性が少ないため、得られる通紙カールのレベルは劣ることが知られており、通紙カール性能が重要な紙の製造においてMFT方式が用いられることは少ない。しかしながら、操業性の向上は各製紙メーカーにおいて重要な課題であり、操業効率の高いMFT方式においても通紙カールの優れた紙を製造できる技術の開発が必須であることは言うまでもない。
【0005】
また、従来用いられている酸化澱粉の製造方法は、コーンスターチの澱粉スラリーや澱粉糊化液を、次亜塩素酸ソーダなどの酸化剤を用いて酸化反応させる方法が一般的であり、いわゆる水系スラリーでの反応処理により得られる(以下、湿式酸化澱粉と略す。)。湿式酸化澱粉は、糊液濃度が高くなるに従って増粘化が大きくなることが知られており、MFT方式に適した表面サイズプレス液の液濃度の高いレベルにおいて高粘度となることが、紙中への浸透性を低下させる要因であった。
【0006】
本発明で用いられる表面サイズプレス液とは、澱粉糊化液にサイズ性を付与する目的で添加される表面サイズ剤と、数種の添加剤が添加混合された液を総称するものである。通常、15質量%以上で糊化された糊液に、表面サイズ剤が1質量%以下、添加剤がppmオーダーで添加され、澱粉糊化液を主成分とするものである。表面サイズプレス液の液濃度は、MFT方式やISP方式などの表面サイズプレス方式、および目的とする塗布量により、適宜15質量%以下に希釈して使用される。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−73297号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、表面サイズプレス液に用いられる糊液として、粘性の低いカチオン化酸化タピオカ澱粉を用いることにより、紙中への浸透性を高め、MFT方式でもISP方式と遜色ないレベルを有し、電子写真用複写機などを用いて熱転写した後の通紙カールを防止した紙およびその製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究した結果、本発明のカールを防止した紙およびその製造方法を発明するに至った。
【0010】
即ち、本発明のカールを防止した紙は、表面サイズプレス液の糊液として、カチオン化酸化タピオカ澱粉を用いたものであることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のカールを防止した紙の製造方法は、表面サイズプレスの方式としてMFT方式により、カチオン化酸化タピオカ澱粉を表面サイズプレス液の糊液とし、液濃度10〜14質量%の該表面サイズプレス液を用いて製造することを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のカールを防止した紙およびその製造方法について、詳細に説明する。
【0013】
近年の抄紙機械の高速化に伴い、表面サイズプレスの方式は、従来技術であるISP方式から、MFT方式への切り替えが進んでいる。
【0014】
ISP方式とは、2本のロール(アプリケーターロール)間のニップに表面サイズプレス液を供給し、その液溜まり部(以下、ポンドと略す。)に紙をどぶ浸けして通紙することにより両面塗布を行う方式である。ISP方式では、ロール本数が2本のみであることから、投資額と所用スペース、維持費が比較的少なくて済むという利点があるが、短所について多くの指摘がなされている。
【0015】
ISP方式において、表面サイズプレス液は、回転するロールによってニップに引き込まれるが、ニップを通過する液量はニップ圧によって制限されることから、ニップを通過できない液は上方に逆流することになる。この逆流の速度は、流体力学的な力となり、抄紙機械が高速になるほど大きくなって、ある速度以上になると表面サイズプレス液が、ポンドの液面を破ってはね飛ぶ”ボイリング”と呼ばれる現象が発生する。
【0016】
ボイリングが発生すると、表面サイズプレス液の塗布量が幅方向不均一となったり、さらに、ポンドにおいて紙にかかる表面サイズプレス液の重量分布も幅方向不均一となるため、紙切れの要因ともなる。ボイリングを防止するために、表面サイズプレス液の濃度を2〜4質量%の低濃度に抑えて低粘度化することにより、流体力学的な力を抑えたり、ロール径を大きくしたりする対策が取られているが、過度の低濃度化は、ISP方式がどぶ浸け方式であるため、紙中への低濃度液の浸透が増大することとなり、紙力の大幅な低下による紙切れや、サイズプレス後のアフタードライヤーでの乾燥能力の不足という大きな問題を引き起こし、一般的には800m/分がISP方式での速度の上限と言われている。
【0017】
また、ISP方式による塗布量の調整は、ボイリングが発生しない範囲での表面サイズプレス液の液濃度の調整と、若干のアプリケーターロール加圧力調整のみであり、どぶ浸けのため、事実上の塗布量の微妙な調整は困難である。
【0018】
以上のようなISP方式での問題点を解決するために登場したのが、MFT方式である。MFT方式は、ISP方式同様2本のアプリケーターロール間に原紙を通過させて液を塗布するものであり、所望の塗布量を得るために各アプリケーターロールの外側には、金属ロール、ゴム被覆ロール、ワーヤー巻き付けロール、平滑なロッド、溝付きのロッド、ワイヤー巻き付けロッド、ブレード等の一つまたは複数の組み合わせによるメタリング装置が設けられており、所定量の液をアプリケーターロールに供給できるようになっている。
【0019】
MFT方式としては、そのメタリング装置の種類に応じて、ロッドメタードフィルムプレス方式、ゲートロールメタードフィルムプレス方式、ブレードメタードフィルムプレス方式等が挙げられる。
【0020】
MFT方式は、ISP方式と比較して紙部でのポンドがないことから、幅方向において安定である。また、転写塗布のため、表面サイズプレス液を10〜14質量%に高濃度化することが可能となり、表面サイズプレス液の紙中への浸透が少ないことから、紙力の低下がなく、アフタードライヤーでの乾燥負荷を軽減できる。このことは、MFT方式では紙切れが少なく、高速塗布に適していることを示すものである。
【0021】
以上のように、紙切れの抑制や、高速高濃度塗布が可能であるなど、操業的な利点が多いことから、現在多くの製紙メーカーではISP方式からMFT方式への切り替えがなされている。
【0022】
しかしながら、本発明において問題とする通紙カールに関して、MFT方式はISP方式に比較して、得られる通紙カールの性能は非常に劣るものであり、操業性で得られる効果とは相反する結果となることが知られている。
【0023】
これは、ISP方式とMFT方式の塗布方法の違いによるところが大きい。表面サイズプレス液を塗布される前の紙内部が有する応力ひずみは、プレドライヤーでの乾燥収縮により強固な繊維間結合が維持されたまま蓄積された状態にあるためである。
【0024】
ISP方式では、低濃度、低粘度の表面サイズプレス液によるどぶ浸け塗布のため、紙中への表面サイズプレス液の浸透が増大され、繊維間結合が緩和されることから、塗布前の紙内部が有していた応力ひずみは開放され、部分的に発生した変形が紙全体へと伝達されにくくなる。このことが、ISP方式で塗布された紙は、非常に良好な通紙カール性能が得られる要因である。
【0025】
逆にMFT方式では、高濃度の表面サイズプレス液による転写塗布のため、紙中への表面サイズプレス液の浸透は少なく、紙表面にフィルム状に表面サイズプレス液が留まった状態となる。このフィルムは、表面強度の向上には大きく寄与するが、いかんせん紙中への表面サイズプレス液の浸透が少ないことから、塗布前の紙内部が有する応力ひずみは開放されず、また強固な繊維間結合も維持された状態のため、部分的に発生した変形でも紙全体に伝達されやすい紙となる。さらに、紙表面にフィルム状に留まった表面サイズプレス液は、僅かな表裏での塗布量の差や表裏での水分の吸脱湿の差により、あたかもバイメタルのような挙動を簡単に起こすようになる。このことがMFT方式で塗布された紙の通紙カールが悪化する要因となっている。
【0026】
以上のように、表面サイズプレス液の紙中への浸透性を増さない限り、MFT方式において、ISP方式と同レベルの通紙カールが良好な紙を得ることは非常に困難と言わざるを得ない。
【0027】
また、表面サイズプレス液の主成分として用いられる澱粉は、前記紙中への浸透性に対し密接な関係を持っている。
【0028】
MFT方式を採用するに当たって、従来用いられている湿式酸化澱粉を用いた表面サイズプレス液の糊液濃度を10質量%未満に下げて低粘度化し、浸透性を向上する方法も考えられる。しかし、MFT方式では、事実上、浸透性が増す粘度まで濃度を下げてしまうと、規定塗布量を確保することができなかったり、できた用紙の表面強度が低下するといった問題が発生するため、事実上の操業は不可能である。
【0029】
また、製紙メーカーで自製している低粘度の自家変性澱粉を用いる方法では、糊液の老化が早く高濃度での保存が困難であり、表面強度が劣るなどの問題があることから、一般に塗布量の少ないコート原紙には用いられるが、電子写真用転写紙のような紙には用いられることはない。
【0030】
そこで本発明では、MFT方式で塗布可能な10〜14質量%の濃度まで表面サイズプレス液の液濃度を高くしても、増粘せずに低粘度を維持し、紙中への浸透性が高く、さらに従来通りの使い勝手の良さや面強度、サイズ性の維持ができる澱粉を用いることが必要となる。
【0031】
本発明では、MFT方式においても表面サイズプレス液の紙中への浸透性を上げるために、カチオン化酸化タピオカ澱粉を用いることにより、高濃度でも増粘せずに低粘度を維持し、紙中への浸透性が高い効果が得られることに着目した。
【0032】
本発明におけるカチオン化酸化タピオカ澱粉は、カチオン化剤として第3級アミン化合物、第4級アンモニウム塩化合物等の一般的に使用されるカチオン化剤はいずれのものも使用できる。具体例としては、第3級アミン化合物としては、2−ジエチルアミノエチルクロライド等が例示され、第4級アンモニウム塩化合物としては、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が例示される。
【0033】
また、カチオン化酸化タピオカ澱粉のカチオン化の程度を表すDS(カチオン化置換度)は、0.01〜0.02%が好ましい。
【0034】
使用される澱粉は、脂肪酸を含まないタピオカ澱粉が好ましく、脂肪酸を含まないことにより、アミロースの再結晶が起こらないため、糊化後の液の安定性に優れている。
【0035】
さらに、本発明におけるカチオン化酸化タピオカ澱粉は、酸化剤により酸化処理を行った澱粉であり、酸化することにより澱粉分子の解重合がおこり、分子量を下げることなく低粘度化することが可能となる。上記酸化処理とは、無機酸または有機酸を利用し加水分解を行った酸処理澱粉(可溶性澱粉)とは異なる。
【0036】
カチオン化酸化タピオカ澱粉の分子量は、用紙強度に影響を与えるため、なるべく高い方が好ましいが、糊液の粘度が高くなり過ぎると、取り扱いが難しく操業上の問題が発生することから、粘度は低い方が好ましい。上記、カチオン化および酸化処理により、分子量を下げることなく、糊液の低粘度化が可能となる。本発明で使用されるカチオン化酸化タピオカ澱粉の分子量は、特に規定されるものではないが、好ましくは500000以上のものが使用される。
【0037】
カチオン化酸化タピオカ澱粉の糊液は、従来から用いられている湿式酸化澱粉の糊液と全く同様の糊化方法により得ることができる。つまり、澱粉スラリーは、攪拌装置を備えた加温容器により85〜95℃で一定時間保持するか、ジェットクッカーにより加熱蒸気を加え、130〜160℃に加温しながら通過させることで簡単に糊化できる。
【0038】
本発明のカールを防止した紙の製造方法において、カチオン化酸化タピオカ澱粉を糊液とする表面サイズプレス液の濃度が10質量%未満の場合、粘度が低すぎるために目標の塗布量を得られない場合があり、14質量%を越える場合は、例えば、ロッドメタードフィルムプレス方式ではロッド筋の発生や過塗布量の問題、ゲートロールメタードフィルムプレス方式ではメタリングロール回転比が低くなりすぎるため、ロールの摩耗が早くなり操業上好ましくない等の問題が発生する。即ち、適切な塗布量を維持し、良好な操業性を得るためには、表面サイズプレス液の濃度は10〜14質量%となる。塗布量の制御をマシン側の調整で行うか、糊液濃度で行うかの選択は、実際の製造におけるミストの発生状況などの操業上の観点から、使用者が判断すればよい。
【0039】
本発明のカチオン化酸化タピオカ澱粉を用いたカールを防止した紙は、操業性の良好なMFT方式において特に効果を発揮するが、ISP方式で用いても何ら問題ない。
【0040】
カールの発生は、コピー時の通紙トラブルの一因(紙詰まり、排紙収容性不良)ともなり、またコピー後の積み姿の悪さゆえ客先でのクレームともなる。また、製造メーカーにおける操業性向上の点からも、MFT方式による高速高濃度塗布も必要不可欠である。このことから、表面サイズプレス液に用いられる糊液として、カチオン化酸化タピオカ澱粉を用いることにより、MFT方式を用いて製造しても、カールの小さな寸法安定性の良い紙を製造できることは非常に有益である。
【0041】
また、本発明の表面サイズプレス液中には、カチオン化酸化タピオカ澱粉の他、表面サイズ剤、消泡剤、着色剤、蛍光増白剤、防腐剤等の添加剤を適宜配合することもできる。
【0042】
本発明のカールを防止した紙は、木材繊維主体の紙、または木材繊維や合成繊維を主体とした不織布の如きシート状物質が挙げられ、紙の場合に使用される木材パルプは、NBKP、LBKP、NBSP、LBSP、GP、TMPなどの他に、古紙パルプが挙げられ、必要に応じて単独或いは併用して用いられる。
【0043】
なお、古紙パルプの原料としては、(財)古紙再生促進センターの古紙標準品質規格表に示されている、上白、罫白、クリーム白、カード、特白、中白、模造、色白、ケント、白アート、特上切、別上切、新聞、雑誌などが挙げられる。さらに具体例としては、情報関連用紙である非塗工コンピュータ用紙、感熱紙、感圧紙などのプリンター用紙、およびPPC用紙などのOA古紙、アート紙、コート紙、微塗工紙、マット紙などの塗工紙、或いは上質紙、色上質、ノート、便箋、包装紙、ファンシーペーパー、中質紙、新聞用紙、更紙、スーパー掛け紙、模造紙、純白ロール紙、ミルクカートンなどの非塗工紙などの紙や板紙の古紙で、化学パルプ紙、高歩留りパルプ含有紙などが使用されるが、印字、複写、印刷、非印刷を問わず特に限定されるものではない。
【0044】
また、内添填料は、白色顔料として従来公知の顔料が用いられ、単独或いは併用できるが、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムのような白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂のような有機顔料などが挙げられる。
【0045】
さらに、本発明のカールを防止した紙を抄造する際に使用される内添サイズ剤としては、中性抄紙に用いられる中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)、アルキルケテンダイマー(AKD)、石油樹脂系サイズ剤などが使用できる。
【0046】
本発明において、紙料中には、その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤などを本発明の所望の効果を損なわない範囲で、適宜配合することもできる。
【0047】
本発明の抄紙方法において、抄紙機は、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機など製紙業界で公知の抄紙機を適宜使用できる。
【0048】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。
【0049】
実施例1
濾水度450mlcsfのLBKP90部、濾水度475mlcsfのNBKP10部からなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−121、奥多摩工業社製)6部、両性澱粉(商品名:Cato3210、王子ナショナル社製)0.8部、硫酸バンド1部、中性ロジンサイズ剤(商品名:NeuSize M−10、ハリマ化成社製)0.35部、歩留まり向上剤(商品名:NR−11LS、ハイモ社製)0.02部を添加して、長網抄紙機で抄造し、表面サイズプレス液の澱粉糊液としてカチオン化酸化タピオカ澱粉(商品名:PERFECTACAT975、AVEBE社製)を液濃度10%、表面サイズ剤(商品名:BLS−720、星光化学社製)を液濃度0.2%になるよう調整し、塗布量が両面で1.5g/m2となるようにゲートロールフィルムプレス方式で塗布を行いマシンカレンダー掛けをして坪量64g/m2の実施例1の紙を作製した。表面サイズプレス液の液温度は60℃とした。抄速1200m/分において、特に操業上の問題は無かった。
【0050】
実施例2
実施例1のカチオン化酸化タピオカ澱粉の液濃度を12%とした以外は、実施例1と同様にして実施例2の紙を作製した。抄速1200m/分において、特に操業上の問題は無かった。
【0051】
実施例3
実施例1のカチオン化酸化タピオカ澱粉の液濃度を14%とした以外は、実施例1と同様にして実施例3の紙を作製した。抄速1200m/分において、特に操業上の問題は無かった。
【0052】
実施例4
実施例2の塗布方式をロッドフィルムプレス方式とした以外は、実施例2と同様にして実施例4の紙を作製した。抄速1200m/分において、特に操業上の問題は無かった。
【0053】
比較例1
表面サイズプレス液の澱粉糊液として、湿式酸化澱粉(商品名:MS#3800、日本食品化工社製)を用い、液濃度を12%とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の紙を作製した。抄速1200m/分において、特に操業上の問題は無かった。
【0054】
比較例2
比較例1の澱粉糊液の液濃度を10%とした以外は、比較例1と同様にして、比較例2の紙を作製した。ただし、抄速1200m/分において、塗布量調整をするも塗布量は両面で1.2g/m2しか塗布できなかった。
【0055】
比較例3
比較例1の澱粉糊液の液濃度を8%とした以外は、比較例1と同様にして、比較例3の紙を作製した。ただし、抄速1200m/分において、塗布量調整をするも塗布量は両面で1.0g/m2しか塗布できなかった。
【0056】
比較例4
実施例1の澱粉を湿式酸化澱粉(商品名:MS#3800、日本食品化工社製)液濃度4%、表面サイズ剤の液濃度を0.05%とし、塗布方式をISP方式で行った以外は、実施例1と同様にして、比較例4の紙を作製した。操業上の問題が発生せずに、塗布できた最大抄速は800m/分であった。
【0057】
比較例5
表面サイズプレス液の澱粉糊液として、自家変性澱粉を用い変性可能濃度である液濃度8%にて塗布を行った以外は、実施例1と同様にして、比較例5の紙を作製した。ただし、抄速1200m/分において、塗布量調整をするも塗布量は両面で0.9g/m2しか塗布できなかった。
【0058】
上記により作製した実施例1〜4および比較例1〜5における製造条件、得られた紙の表面強度、通紙カールについて、下記の評価方法により評価し、その結果を表1に示した。
【0059】
<通紙カール>
通紙カールは、得られた紙をA4サイズに断裁し、100枚連続通紙後、平面に置いた四隅のカール高さの最大値を測定した。複写機はNP−3050(キャノン社製)を用いた。単位はmmである。評価は下記の基準で評価し、AおよびBを許容範囲、CおよびDは不可とした。
A:20mm以下
B:21〜24mm
C:25〜28mm
D:29mm以上
【0060】
<表面強度>
デニソンワックス(粘着力の異なるワックス棒、数字の大きいほど粘着力が強い)を使用し、アルコールランプで溶かしたワックス棒を紙面に立て、15分放冷後ワックス棒をはがした。紙面の状態を見て紙むけの起こらない最高の番号で示すが、16A以上のものは16Aとして表示した。通常14A以上では問題なく、13A以下では実用上問題がある。
【0061】
【表1】
【0062】
表1の結果から明らかなように、表面サイズプレス液としてカチオン化酸化タピオカ澱粉を用い、液濃度を10〜14質量%でMFT方式で塗布を行った用紙は、表面強度を損なうことなく、通紙カールの発生が抑制され、また、操業性に優れたカールを防止した紙を製造することが可能となる。
【0063】
湿式酸化澱粉の糊液濃度を低濃度とし低粘度化することにより、紙中への浸透性を増大させようとしても、目的の塗布量を得ることができず、表面強度の低下を招く結果となり、通紙カールへの効果も充分ではない。これは比較例5の自家変性澱粉の場合と同様である。さらに、比較例4のISP方式で得られる通紙カールのレベルは良いが、抄速が遅く非常に生産性が悪いことがわかる。
【0064】
【発明の効果】
上記結果から明らかなように、表面サイズプレス液としてカチオン化酸化タピオカ澱粉を用いることにより、表面強度を損なうことなく、通紙カールに優れたカールを防止した紙を得ることができた。さらには、表面サイズプレス液の液濃度を10〜14質量%とすることにより、MFT方式での操業性および特性に優れたカールを防止した紙を製造することが可能となる。
Claims (2)
- 表面サイズプレス液の糊液として、カチオン化酸化タピオカ澱粉を用いたものであることを特徴とするカールを防止した紙。
- カールを防止した紙の製造方法において、表面サイズプレスの方式として、メタードフィルムトランスファー方式(以下、MFT方式と略す。)により、カチオン化酸化タピオカ澱粉を表面サイズプレス液の糊液とし、液濃度10〜14質量%の該表面サイズプレス液を用いて製造することを特徴とするカールを防止した紙の製造方法。
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