JP2004143320A - 樹脂組成物、成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】JIS K6922−1の測定条件Dで測定したMFRが0.8g/10分以下かつ測定条件Gで測定したMFRが3g/10分以上のポリオレフィン系樹脂60〜96質量%、及び溶融粘度(温度310℃、剪断速度1200/秒)が20〜1000Pa・sのポリアリーレンスルフィド樹脂4〜40質量%を樹脂成分として含有する樹脂組成物。該樹脂組成物からなる成形体。該樹脂組成物を溶融成形する成形体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料不透過性、低温での衝撃強度、成形加工性などに優れた樹脂組成物、該樹脂組成物から形成された成形体、及び該成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の低燃費化の要求は、世界的な広がりを見せている。自動車の低燃費化の方策としては、燃焼効率の良いエンジンの開発、車体の軽量化などが進められている。車体の軽量化対策としては、車体本体や車体に塔載する各種部品を構成する材料の機械的強度を改善して、その使用量を低減する方法、複数の部品を統合する方法、金属製部品を軽量な樹脂製部品に置き換える方法などが採用されている。
【0003】
車体に塔載する燃料タンクについても、従来の金属製燃料タンクに代えて、軽量な樹脂製燃料タンクが使用されている。樹脂製燃料タンクは、主として高密度ポリエチレン(HDPE)から形成されている。樹脂製燃料タンクは、軽量であることに加えて、形状設計の自由度が高く、しかも防錆性や安全性にも優れるという利点を有している。
【0004】
近年、地球環境保護の観点から、各国において、排気ガスの削減と燃料タンクからの燃料透過に関する法規制が強化されている。また、排気ガスの削減対策などを目的として、メタノールやメチル−t−ブチルエーテルなどを添加した含酸素ガソリンが用いられるようになっている。しかし、HDPE製燃料タンクは、普通ガソリンに対する燃料透過性が比較的高く、かつ、含酸素ガソリンに対する燃料透過性が特に高いという欠点を有している。
【0005】
樹脂製燃料タンクの燃料不透過性(燃料バリア性)を高めるために、例えば、HDPE層中にポリアミド樹脂を層状に分散させた樹脂組成物を用いた燃料タンクや、HDPE層とポリアミド樹脂層とを接着剤層を介して多層化した多層構造の燃料タンクなどが開発されている。しかし、ポリアミド樹脂層は、燃料バリア層としての効果が低く、特にアルコール混合ガソリンなどの含酸素ガソリンに対するバリア性能が不十分である。
【0006】
排気ガスの削減と燃料不透過性に関する規制が強まるにつれて、より高度の燃料不透過性を有するとともに、耐熱性、耐薬品性、機械的強度などにも優れた樹脂製燃料タンクに対する要求が強くなっている。このような要求に対応するために、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、「PPS樹脂」と略記)に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、「PAS樹脂」と略記)を樹脂製燃料タンクを構成する樹脂成分の一部として使用する技術が提案されている。
【0007】
例えば、容器の壁が外側からPPS樹脂層、接着剤層、ポリエチレン層の順で構成された成形容器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、壁部が外側からポリエチレン層、接着剤層、PPS樹脂層の順で相互接着した層で構成されている成形容器が、メタノール混合ガソリン用容器として提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、これらの多層構造の燃料容器は、燃料不透過性は改善されているものの、ポリエチレン層とPPS層とが層間剥離しやすいという問題を抱えている。
【0008】
ポリアミド樹脂及びPPS樹脂の混合物とポリオレフィン樹脂とからなる樹脂組成物により構成された燃料タンクなどの構造体が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、この燃料タンクなどの構造体は、主としてポリアミド樹脂とPPS樹脂との混合物相を燃料透過の抑制相としているため、十分な燃料不透過性を達成することが困難である。
【0009】
ポリアミド樹脂とPPS樹脂とからなる樹脂組成物で構成された燃料タンクなどの構造体が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。また、PPS樹脂100重量部に対して、オレフィン系樹脂10〜100重量部を含有する樹脂組成物からなる燃料タンクなどの燃料系部品が提案されている(例えば、特許文献5−6参照。)。燃料タンクは、氷点下などの低温環境下で使用されることも多いため、低温での耐衝撃性に優れていることが求められている。しかし、これらの文献に記載の燃料タンクは、いずれも低温での耐衝撃性が不十分である。
【0010】
【特許文献1】
特開平5−193060号公報(第1−2頁)
【特許文献2】
特開平5−193061号公報(第1−2頁)
【特許文献3】
特開2001−226537号公報(第1−2頁)
【特許文献4】
特開2001−302918号公報(第1−2頁)
【特許文献5】
特開2002−226707号公報(第1−2頁)
【特許文献6】
特開2002−226604号公報(第1−2頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、燃料不透過性、低温での衝撃強度、成形加工性などに優れた樹脂組成物を提供することにある。本発明の他の課題は、該樹脂組成物から形成された燃料容器や燃料配管などの成形体を提供することにある。さらに、本発明の課題は、該成形体の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究した結果、MFR(即ち、メルトマスフローレイト)が小さいポリオレフィン系樹脂と、溶融粘度が低いポリアリーレンスルフィド樹脂とを特定割合で含有する樹脂組成物に想到した。本発明の樹脂組成物は、常温での耐衝撃性に優れるだけではなく、−40℃でのアイゾット衝撃強度が高く、低温での衝撃強度が顕著に優れている。本発明の樹脂組成物からなる容器は、普通ガソリンのみならず、アルコール含有ガソリンなどの含酸素ガソリンの不透過性に優れている。さらに、本発明の樹脂組成物は、耐熱性、耐薬品性、成形加工などが良好である。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、JIS K6922−1に準拠して、測定条件D(測定温度190℃、荷重21.18N)により測定したMFRが0.8g/10分以下かつ測定条件G(測定温度190℃、荷重211.83N)により測定したMFRが3g/10分以上の範囲内にあるポリオレフィン系樹脂(A)60〜96質量%、及び溶融粘度(測定温度310℃、剪断速度1200/秒)が20〜1000Pa・sの範囲内にあるポリアリーレンスルフィド樹脂(B)4〜40質量%を樹脂成分として含有する樹脂組成物が提供される。 また、本発明によれば、前記樹脂組成物から形成された成形体を提供することにある。
【0014】
さらに、本発明によれば、JIS K6922−1に準拠して、測定条件D(測定温度190℃、荷重21.18N)により測定したMFRが0.8g/10分以下かつ測定条件G(測定温度190℃、荷重211.83N)により測定したMFRが3g/10分以上の範囲内にあるポリオレフィン系樹脂(A)60〜96質量%、及び溶融粘度(測定温度310℃、剪断速度1200/秒)が20〜1000Pa・sの範囲内にあるポリアリーレンスルフィド樹脂(B)4〜40質量%を樹脂成分として含有する樹脂組成物を溶融成形する成形体の製造方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
1.ポリオレフィン系樹脂(A):
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂とは、α−オレフィンの単独重合体、α−オレフィン同士の共重合体、またはα−オレフィンと他の単量体との共重合体である。具体的に、ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン、イソブチレンなどのα−オレフィンの単独重合体;2種以上のα−オレフィンの共重合体;α−オレフィンとアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸及び/またはそのアルキルエステルとの共重合体;などが挙げられる。
【0016】
より具体的に、ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、これらのブレンド物などが挙げられる。
【0017】
本発明では、ポリオレフィン系樹脂の中でも、エチレンの単独重合体またはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体などのポリエチレン系樹脂が耐衝撃性の点で好ましい。エチレンと共重合させるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等が挙げられる。エチレンと共重合させるその他のα−オレフィンとしては、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式化合物、スチレンなどのビニル芳香族化合物などが挙げられる。エチレン系重合体におけるα−オレフィンの含有量は、10モル%以下であることが、熱安定性及び剛性の点から好ましい。
【0018】
本発明で使用するポリエチレン系樹脂としては、密度が0.94〜0.98g/cm3の範囲内にある高密度ポリエチレンが好ましい。ポリエチレン系樹脂としては、市販品を使用することができるが、例えば、特開平7−149828号公報、特開平11−12320号公報、特開平11−12321号公報などに開示されたものも好適に使用することができる。
【0019】
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂は、MFRが小さなポリオレフィン系樹脂であり、好ましくはポリエチレン系樹脂である。即ち、本発明で使用するポリオレフィン系樹脂は、JIS K6922−1に準拠して、測定条件D(測定温度190℃、荷重21.18N)により測定したMFRが0.8g/10分以下かつ測定条件G(測定温度190℃、荷重211.83N)により測定したMFRが3g/10分以上の範囲内にあるポリオレフィン系樹脂である。
【0020】
JIS K6922−1によれば、MFR(メルトマスフローレイト)は、測定条件E(測定温度190℃、荷重3.18N)、D(測定温度190℃、荷重21.18N)、T(測定温度190℃、荷重49.03N)、及びG(測定温度190℃、荷重211.83N)により測定される。一般に、測定条件Dが標準となり、そして、測定条件Tは、測定条件Dで測定したとき、MFRが0.1g/10分未満の材料に適用され、また、測定条件Gは、測定条件Tで測定したとき、MFRが0.1g/10分未満の材料に適用される。
【0021】
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂は、JIS K6922−1に準拠して、測定条件D、T、及びGのいずれかの条件により測定可能なMFR値を有しており、そして、流動性の高い材料の上限値が測定条件Dにより測定した0.8g/10分であり、流動性の低い材料の下限値が測定条件Gにより測定した3g/10分である。ポリオレフィン系樹脂のMFRが低すぎると、溶融成形時における樹脂組成物の流動性が低下し、高すぎると、樹脂組成物の耐衝撃性が低下するので、いずれも好ましくない。
【0022】
ポリオレフィン系樹脂は、合成品を使用することができるが、市販品の中から選択して使用することもできる。高密度ポリエチレンなどの市販ポリオレフィン系樹脂のMFR値は、多くの場合、測定条件DまたはGにより表示されている。本発明で使用するポリオレフィン系樹脂は、測定条件D(測定温度190℃、荷重21.18N)により測定したMFRが好ましくは0.1〜0.8g/10分、より好ましくは0.1〜0.5g/10分の範囲内にあるか、あるいは測定条件G(測定温度190℃、荷重211.83N)により測定したMFRが好ましくは3〜10g/10分、より好ましくは3〜8g/10分の範囲内にある。
【0023】
2.ポリアリーレンスルフィド樹脂(B):
本発明で使用するPAS樹脂とは、式[−Ar−S−](式中、−Ar−は、アリーレン基である。)で表されるアリーレンスルフィドの繰り返し単位を主たる構成要素とする芳香族ポリマーである。この繰り返し単位[−Ar−S−]を1モル(「基本モル」という)と定義すると、本発明で使用するPAS樹脂は、この繰り返し単位を通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上の割合で含有するポリマーである。
【0024】
アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、置換フェニレン基(置換基は、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基などが好ましい。)、p,p′−ジフェニレンスルホン基、p,p′−ビフェニレン基、p,p′−ジフェニレンカルボニル基、ナフチレン基などを挙げることができる。PAS樹脂としては、主として同一のアリーレン基を有するポリマーを好ましく用いることができるが、加工性や耐熱性の観点から、2種以上のアリーレン基を含んだコポリマーを用いることもできる。
【0025】
これらのPAS樹脂の中でも、p−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を主構成要素とするPPS樹脂が、加工性に優れ、工業的に入手が容易であることから特に好ましい。この他に、PAS樹脂として、ポリアリーレンケトンスルフィド、ポリアリーレンケトンケトンスルフィドなどを使用することができる。コポリマーの具体例としては、p−フェニレンスルフィドの繰り返し単位とm−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するランダムまたはブロックコポリマー;フェニレンスルフィドの繰り返し単位とアリーレンケトンスルフィドの繰り返し単位を有するランダムまたはブロックコポリマー;フェニレンスルフィドの繰り返し単位とアリーレンケトンケトンスルフィドの繰り返し単位を有するランダムまたはブロックコポリマー;フェニレンスルフィドの繰り返し単位とアリーレンスルホンスルフィドの繰り返し単位を有するランダムまたはブロックコポリマーなどを挙げることができる。
【0026】
本発明で使用するPAS樹脂は、耐熱性や強度の観点から、結晶性ポリマーであることが好ましい。また、PAS樹脂は、靭性や強度などの観点から、直鎖状ポリマーであることが好ましい。このようなPAS樹脂は、N−メチル−2−ピロリドンなどの極性溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロゲン置換芳香族化合物とを重合反応させる公知の方法(例えば、特公昭63−33775号公報)により得ることができる。
【0027】
アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムなどを挙げることができる。反応系中で、NaSHとNaOHを反応させることにより生成させた硫化ナトリウムなども使用することができる。
【0028】
ジハロゲン置換芳香族化合物としては、例えば、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、p−ジブロモベンゼン、2,6−ジクロロナフタリン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4′−ジクロロビフェニル、3,5−ジクロロ安息香酸、p,p′−ジクロロジフェニルエーテル、4,4′−ジクロロジフェニルスルホン、4,4′−ジクロロジフェニルスルホキシド、4,4′−ジクロロジフェニルケトンなどを挙げることができる。これらのジハロゲン置換芳香族化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
PAS樹脂に若干の分岐構造または架橋構造を導入するために、1分子当たり3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロゲン置換芳香族化合物を少量併用することができる。ポリハロゲン置換芳香族化含物としては、例えば、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリブロモベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリブロモベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリブロモベンゼン、1,3−ジクロロ−5−ブロモベンゼンなどのトリハロゲン置換芳香族化合物とこれらのアルキル置換体を挙げることができる。これらのポリハロゲン置換芳香族化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、経済性、反応性、物性などの観点から、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、及び1,2,3−トリクロロベンゼンがより好ましい。
【0030】
本発明で使用するPAS樹脂は、溶融粘度(測定温度310℃、剪断速度1200/秒)が20〜1000Pa・s、好ましくは25〜600Pa・s、より好ましくは25〜500Pa・sの範囲内にある比較的低溶融粘度のPAS樹脂である。PAS樹脂の溶融粘度が低すぎると、樹脂組成物の低温での耐衝撃性が低下し、高すぎると、樹脂組成物の溶融流動性が低下し、成形加工性が損なわれる。
【0031】
3.エポキシ基含有シラン化合物(C):
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂(A)とPAS樹脂(B)とを樹脂成分として含有するものであるが、他の成分として、エポキシ基含有シラン化合物を含有させることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂(A)とPAS樹脂(B)とは、相溶性が不十分であるため、溶融混しても均一な単一相を形成することが困難である。エポキシ基含有シラン化合物(C)は、両樹脂相の界面での密着性を高める上で好ましい。
【0032】
エポキシ基含有シラン化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、及びγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群より選ばれた少なくとも一種の有機シラン化合物が好ましい。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂(A)とPAS樹脂(B)とを樹脂成分とする樹脂組成物から形成された容器は、例えば、メタノール、エタノール、オクタンなどの有機溶剤、これらの有機溶剤を含有するガソリンなどを充填すると、樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂(A)相とPAS樹脂(B)相との界面で剥離若しくは破壊が進行しやすくなる。エポキシ基含有シラン化合物(C)を含有させると、樹脂組成物内での相間剥離や破壊が抑制され、機械的強度や燃料不透過性を長期間にわたって安定的に維持することができる。
【0034】
4.その他の成分:
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内において、必要に応じて、充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐光性改良剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、結晶化促進剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤などのその他の成分を含有させることができる。
【0035】
充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維(PAN系またはピッチ系炭素繊維)、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミドなどの有機繊維、石膏繊維、セラミックス繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化珪素繊維、ロックウール、チタン酸カリウム繊維、チタン酸バリウム繊維、棚酸アルミニウム繊維、窒化棚素繊維などの繊維状あるいはウィスカー状の充填剤;マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、ワラストナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、黒鉛、カーボンブラック、炭素前駆体、金属酸化物などの粉末状、板状若しくはテトラポット状の充填剤;などが挙げられる。
【0036】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内において、その他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を少量成分として含有させることができる。ただし、その他の樹脂成分の割合は、樹脂成分中の通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下とする。
【0037】
5.樹脂組成物:
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂(A)60〜96質量%と、PAS樹脂(B)4〜40質量%を樹脂成分として含有する樹脂組成物である。PAS樹脂の配合割合が低すぎると、有機溶剤や燃料に対する不透過性の改善効果が小さくなり、高すぎると、低温での耐衝撃性が低下する。
【0038】
樹脂成分中のポリオレフィン系樹脂(A)の配合割合は、好ましくは62.5〜95.5質量%、より好ましくは65〜80質量%であり、PAS樹脂(B)の配合割合は、好ましくは4.5〜37.5質量%、より好ましくは20〜35質量%である。低温での耐衝撃性と燃料不透過性とを高度にバランスさせる観点からは、ポリオレフィン系樹脂(A)65〜80質量%とPAS樹脂(B)20〜35質量%とを樹脂成分として含有する樹脂組成物が特に好ましい。
【0039】
エポキシ基含有シラン化合物(C)の配合割合は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.05〜1.5質量部、より好ましくは0.1〜1.2質量部、特に好ましくは0.2〜1質量部である。
【0040】
エポキシ基含有シラン化合物(C)を配合する場合は、予めPAS樹脂(B)と溶融混練してからポリオレフィン系樹脂(A)とブレンドすることが、樹脂組成物中での各樹脂相の界面での剥離や破壊を効果的に抑制する上で好ましい。具体的には、PAS樹脂(B)とエポキシ基含有シラン化合物(C)とを押出機に供給し、PAS樹脂(B)の融点以上の温度で溶融混練して、ペレットを作製する。このようにして得られたペレットは、ポリオレフィン系樹脂(A)と溶融混練する。
【0041】
上記方法を採用する場合には、エポキシ基含有シラン化合物(C)は、PAS樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは0.7〜3質量部の割合で配合し、樹脂成分100質量部に対する割合が前記範囲内となるように調整する。この方法によれば、エポキシ基含有シラン化合物(C)は、樹脂成分中でのPAS樹脂(A)中に実質的に含有され、そして、PAS樹脂(B)相とポリオレフィン系樹脂(A)相との界面で作用することになる。
【0042】
6.成形体とその製造方法:
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として、ポリオレフィン系樹脂(A)とPAS樹脂(B)とを含有するものである。本発明の成形体は、該樹脂組成物を所望の形状に溶融成形したものである。溶融成形法としては、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、これらを組み合わせた方法などがある。
【0043】
本発明の樹脂組成物の調製方法としては、ポリオレフィン系樹脂(A)、PAS樹脂(B)、必要に応じて添加剤成分を、単軸押出機、2軸押出機または3軸以上の多軸押出機へ供給し、PAS樹脂の融点以上の温度で溶融混練した後、押し出してペレット化する方法がある。
【0044】
また、ポリオレフィン系樹脂(A)を含有するペレットと、ポリアリーレンスルフィド樹脂(B)を含有するペレットとをドライブレンドして混合物を調製した後、該混合物を成形機に供給し、溶融成形する方法がある。充填剤などを配合するには、ドライブレンド時に第三成分として添加するか、各樹脂成分のペレット製造時に、樹脂成分と一緒に溶融混練してペレット中に含有させておく。エポキシ基含有シラン化合物(C)を使用する場合には、PAS樹脂(B)のペレット製造時に、該ペレット中に含有させることが好ましい。成形機としては、射出成形機、押出成形機、ブロー成形機などが挙げられる。成形機中で、混合物は溶融混練されて樹脂組成物になるとともに、射出成形や押出成形などにより所望の形状の成形体に成形される。
【0045】
このペレットを用いたドライブレンド法を採用すると、成形体中でポリオレフィン系樹脂(A)とPAS樹脂(B)とが不均一な分布構造を形成しやすいと考えることができる。低MFR(高溶融粘度)のポリオレフィン系樹脂(A)60〜96質量%と低溶融粘度のPAS樹脂(B)4〜40質量%とを溶融成形すると、ポリオレフィン系樹脂(A)がマトリックス相を形成し、その中にPAS樹脂(B)が分散相となった相構造の成形体が得られやすい。各樹脂成分のペレットをドライブレンドした後、混合物を成形機に供給して溶融成形すると、表面層にPAS樹脂(B)の分散相が濃密に分布した成形体が得られやすいと推定される。その結果、本発明の樹脂組成物を溶融成形してなる成形体は、−40℃という低温での衝撃強度が高く、かつ、アルコール含有燃料などに対する燃料不透過性に優れていると考えることができる。ただし、本発明は、このような推定される機構によって制限されるものではない。
【0046】
本発明の樹脂組成物を溶融成形することにより、該樹脂組成物単層の成形体を形成することができる。成形体としては、容器、パイプ(チューブを含む管状成形体)などが代表的なものである。容器は、射出成形やブロー成形により成形することができる。パイプは、押出成形により成形される。
【0047】
本発明の樹脂組成物を他の熱可塑性樹脂とともに共押出成形法により溶融成形して、該樹脂組成物から形成された樹脂組成物層の片面または両面に、直接または接着剤層を介して、他の熱可塑性樹脂層が配置された多層構造を有する成形体を形成することができる。他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、PAS樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ABS樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、これらの2種以上の混合物などを挙げることができる。これらの他の熱可塑性樹脂には、必要に応じて、充填剤などの各種添加剤を含有させることができる。
【0048】
接着剤としては、エポキシ基含有オレフィン系(共)重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、アイオノマー、エチレン・α,β−不飽和酸アルキルエステル・酸無水物共重合体、カルボキシル基含有オレフィン系重合体、無水マレイン酸変性水添スチレン・ブタジエンブロック共重合体などが挙げられる。
【0049】
多層構造の成形体としては、例えば、共押出成形法により溶融成形して、多層ブロー容器または多層パイプの形状に成形したものが挙げられる。多層ブロー容器を成形する方法としては、例えば、本発明の樹脂組成物、接着剤、及び他の熱可塑性樹脂を押出機に供給し、パイプ状の多層パリソンを成形し、この多層パリソンを金型内で容器の形状にブロー成形する方法が挙げられる。
【0050】
また、予め組み上げた部品あるいは成形した部品を金型内に載置しておき、該金型内に本発明の樹脂組成物を射出成形して一体化する方法;他の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂または金属から形成された物品の内部及び/または外部に、本発明の樹脂組成物層を積層する方法などを採用して、各種複合成形体を成形することも可能である。
【0051】
本発明の樹脂組成物を使用して得られた成形体は、ガスバリヤ性、耐衝撃性、加工性などを活用して、各種用途に適用することができる。このような用途としては、トリクロロエタン、塩化メチレン、塩化エチレン、メチルクロロホルムなどの塩素系有機溶剤;イソブタン、n−ブタン、ジメチルエーテルなどの炭化水素系化合物;ブレーキオイル、パワーステアリングオイル、冷凍機油などの各種オイル類;フロンあるいは代替フロンなどの冷媒類;メタノール、エタノール、イソブタノール、ブタノールなどのアルコール類;窒素、酸素、水素、二酸化炭素などの気体;ガソリン、プロパン、天然ガスなどの燃料類;に代表される薬液またはガスの輸送及び/または貯蔵容器、その付属部品などが挙げられる。
【0052】
本発明の成形体は、各種洗剤、不凍液、ウォシャー液など水と界面活性剤、アルコール類、グリコール類を含有する薬剤の輸送及び/または貯蔵容器、その付属部品などとしても活用することが可能である。本発明の樹脂組成物からなる成形体は、燃料不透過性、低温での耐衝撃性、成形加工性などに優れているため、燃料容器や燃料配管などの用途に適用することが特に好ましい。
【0053】
本発明の樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた成形体は、−40℃でのアイゾット衝撃強度が通常80J/m以上、好ましくは90J/m以上、より好ましくは100J/m以上である。また、本発明の成形体(外径32mm、内径26.5mm、高さ35mm、底部の厚み3mmの容器)は、その中にエタノールを25質量%混合した試験用ガソリンを5g封入し、アルミニウム製蓋を被せて防爆型オーブンに入れ、40℃にて10日間静置し、試験用ガソリンの減少量を測定する方法により測定した燃料透過度が通常1.00g以下、好ましくは0.80g以下である。
【0054】
ポリオレフィン系樹脂(A)とPAS樹脂(B)との含有割合を好ましい範囲に調整することにより、−40℃でのアイゾット衝撃強度が通常100J/m以上で、かつ、燃料透過度が0.30g以下の容器を成形することが可能である。
【0055】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を示して、本発明をより具体的に説明する。なお、各種特性の測定法は、次の通りである。
(1)アイゾット衝撃強度:
JIS K7110に準拠して、試験片のアイゾット衝撃強度(J/m)を測定した。
【0056】
(2)燃料透過度:
樹脂組成物を用いて、外径32mm、内径26.5mm、高さ35mm、底部の厚み3mmの容器を射出成形し、その中にエタノールを25質量%混合した試験用ガソリンを5g封入し、アルミニウム製蓋を被せて防爆型オーブンに入れ、40℃にて10日間静置し、試験用ガソリンの減少量(g)を測定した。
【0057】
[実施例1]
ポリフェニレンスルフィド樹脂(呉羽化学工業社製「W203」、温度310℃、剪断速度1200/秒での溶融粘度=28Pa・s)100質量部と、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1質量部とを20リットルのヘンシェルミキサーヘ投入し、約10分間撹拌して混含物を得た。得られた混合物を、約4時間室温において乾燥した後、200℃から310℃に温度調整された2軸押出機へ供給し、ペレット(以下「PPS樹脂ペレット」という)を作製した。
【0058】
次いで、高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン社製「ジェイレックスHDKBY47C」、測定条件コードGで測定したMFR=5g/10分、密度=0.945g/cm3)ペレット100質量部と、PPS樹脂ペレット35質量部とを、タンブラーミキサーを使用して10分間混合し、混含物を調製した。この混合物を、シリンダー温度が290℃から150℃、金型温度が50℃に調整された射出成形機へ供給し、試験片を作成した。この試験片を使用して、−40℃におけるアイゾッド衝撃強度を測定したところ、116J/mであった。
【0059】
前記混合物を射出成形機へ供給し、容器(外径32mm、内径26.5mm、高さ35mm、底部の厚み3mm)を成形した。この容器内に市販のレギュラーガソリン75質量%とエタノール25質量%とを混合した試験用ガソリンを5g封入し、アルミニウム製蓋を被せて防爆型オーブンに入れ、40℃にて10日間静置し、試験用ガソリンの減少量を測定したところ、0.30gであった。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例2]
ポリフェニレンスルフィド樹脂を、呉羽化学工業社製「W214」(温度310℃、剪断速度1200/秒における溶融粘度=140Pa・s)に代えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例3]
ポリフェニレンスルフィド樹脂を、呉羽化学工業社製「W300」(温度310℃、剪断速度1200/秒における溶融粘度=300Pa・s)に代えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例4]
高密度ポリエチレンを、三井化学社製高密度ポリエチレン「ハイゼックス5300B」(測定条件コードDで測定したMFR=0.4g/10分、密度=0.952g/cm3)のペレットに代えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例5]
ポリフェニレンスルフィド樹脂を呉羽化学工業社製「W300」に、高密度ポリエチレンを三井化学社製「ハイゼックス5300B」に、それぞれ代えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0064】
[実施例6]
高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン社製「ジェイレックスHD KBY47C」)ペレット100質量部と、PPS樹脂ペレット60質量部とを用いたこと以外は、実施例2と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0065】
[実施例7]
高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン社製「ジェイレックスHD KBY47C」)ペレット100質量部と、PPS樹脂ペレット5質量部とを用いたこと以外は、実施例2と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例1]
ポリフェニレンスルフィド樹脂(呉羽化学工業社製「W214」)を200℃から310℃に調整された2軸押出機へ供給し、ペレットを作製した。次いで、高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン社製「ジェイレックスHD KBY47C」)ペレット100質量部と、該PPS樹脂ペレット70質量部とを、タンブラーミキサーを使用して10分間混含し、混合物を調製した。以下、この混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0067】
[比較例2]
ポリフェニレンスルフィド(呉羽化学工業社製「W203」)を、200℃から310℃に調整された2軸押出機ヘ供給し、ペレットを作製した。次いで、高密度ポリエチレン(三井化学社製「ハイゼックス2200J」、測定条件コードDで測定したMFR=5.2g/10分、密度=0.968g/cm3)ペレット100質量部と、該PPS樹脂ペレット35質量部とを、タンブラーミキサーを使用して10分間混含し、混合物を調製した。以下、この混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0068】
[比較例3]
実施例2で使用したポリフェニレンスルフィド樹脂(呉羽化学工業社製「W214」)を熱風循環式オーブン中で熱処理し、温度310℃、剪断速度1200/秒で測定した溶融粘度が1200Pa・sにまで増粘したPPS樹脂を調製した。このPPS樹脂を、200℃から310℃に調整された2軸押出機へ供給して、ペレットを作製した。次いで、高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン社製「ジェイレックスHD KBY47C」)100質量部と、該PPS樹脂ペレット35質量部を、タンブラーミキサーを使用して10分間混合し、混合物を調製した。この混合物は、溶融流動性が悪く、射出成形が困難であった。
【0069】
[比較例4]
ポリフェニレンスルフィド樹脂(呉羽化学工業社製「W202」、温度310℃、剪断速度1200/秒で測定した溶融粘度=15Pa・s)を、200℃から310℃に調整された2軸押出機へ供給し、ペレットを作製した。次いで、高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン社製「ジェイレックスHD KBY47C」)100質量部と、該PPS樹脂ペレット35質量部とを、タンブラーミキサーを使用して10分間混合し、混合物を調製した。以下、この混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の結果から明らかなように、本発明の樹脂組成物を用いると(実施例1〜6)、低温での耐衝撃性と燃料不透過性に優れた成形体を得ることができる。これに対して、各樹脂成分の配合割合が本発明の範囲外である場合(比較例1)には、低温での耐衝撃性が急速に低下する。MFRが大きな高密度ポリエチレンを用いた場合(比較例2)にも、低温での耐衝撃性が急速に低下する。
【0072】
PAS樹脂の溶融粘度が高すぎる場合(比較例3)には、溶融成形することが困難である。PAS樹脂の溶融粘度が低すぎる場合(比較例4)には、低温での耐衝撃性が劣悪となる。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料不透過性、低温での衝撃強度、成形加工性などに優れた樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、該樹脂組成物から形成された燃料容器や燃料配管などの成形体が提供される。さらに、本発明によれば、該成形体の製造方法が提供される。本発明の成形体は、有機溶剤や燃料の透過が抑制され、低温での耐衝撃性に優れているため、有機溶剤や燃料などの輸送、貯蔵などに好適な容器や配管として好適である。
Claims (18)
- JIS K6922−1に準拠して、測定条件D(測定温度190℃、荷重21.18N)により測定したMFRが0.8g/10分以下かつ測定条件G(測定温度190℃、荷重211.83N)により測定したMFRが3g/10分以上の範囲内にあるポリオレフィン系樹脂(A)60〜96質量%、及び溶融粘度(測定温度310℃、剪断速度1200/秒)が20〜1000Pa・sの範囲内にあるポリアリーレンスルフィド樹脂(B)4〜40質量%を樹脂成分として含有する樹脂組成物。
- ポリオレフィン系樹脂(A)が、エチレンの単独重合体またはエチレン90モル%以上とα−オレフイン10モル%以下との共重合体である請求項1記載の樹脂組成物。
- ポリオレフィン系樹脂(A)が、高密度ポリエチレンである請求項1記載の樹脂組成物。
- ポリアリーレンスルフィド樹脂(B)が、ポリフェニレンスルフィド樹脂である請求項1記載の樹脂組成物。
- ポリフェニレンスルフィド樹脂の溶融粘度(測定温度310℃、剪断速度1200/秒)が25〜600Pa・sの範囲内にある請求項4記載の樹脂組成物。
- 樹脂成分100質量部に対して、エポキシ基含有シラン化合物(C)0.05〜1.5質量部を更に含有する請求項1記載の樹脂組成物。
- エポキシ基含有シラン化合物(C)が、樹脂成分中のポリアリーレンスルフィド樹脂(A)に含有されている請求項6記載の樹脂組成物。
- エポキシ基含有シラン化合物(C)が、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群より選ばれた少なくとも一種の有機シラン化合物である請求項6記載の樹脂組成物。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形体。
- 成形体が、該樹脂組成物から形成された樹脂組成物層の片面または両面に、直接または接着剤層を介して、他の熱可塑性樹脂層が配置された多層構造を有するものである請求項9記載の成形体。
- 燃料容器または燃料配管である請求項9または10記載の成形体。
- JIS K6922−1に準拠して、測定条件D(測定温度190℃、荷重21.18N)により測定したMFRが0.8g/10分以下かつ測定条件G(測定温度190℃、荷重211.83N)により測定したMFRが3g/10分以上の範囲内にあるポリオレフィン系樹脂(A)60〜96質量%、及び溶融粘度(測定温度310℃、剪断速度1200/秒)が20〜1000Pa・sの範囲内にあるポリアリーレンスルフィド樹脂(B)4〜40質量%を樹脂成分として含有する樹脂組成物を溶融成形する成形体の製造方法。
- ポリオレフィン系樹脂(A)を含有するペレットと、ポリアリーレンスルフィド樹脂(B)を含有するペレットとをドライブレンドして混合物を調製した後、該混合物を成形機に供給し、溶融成形する請求項12記載の製造方法。
- ポリアリーレンスルフィド樹脂(B)を含有するペレットが、ポリアリーレンスルフィド樹脂(B)100質量部に対して、エポキシ基含有シラン化合物(C)を0.5〜5質量部の割合で含有するものである請求項13記載の製造方法。
- 射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、またはプレス成形法により、溶融成形する請求項12記載の製造方法。
- 容器またはパイプの形状に溶融成形する請求項12記載の製造方法。
- 該樹脂組成物を他の熱可塑性樹脂とともに共押出成形法により溶融成形して、該樹脂組成物から形成された樹脂組成物層の片面または両面に、直接または接着剤層を介して、他の熱可塑性樹脂層が配置された多層構造を有する成形体を形成する請求項12記載の製造方法。
- 共押出成形法により溶融成形して、多層ブロー容器または多層パイプの形状に成形する請求項17記載の製造方法。
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