JP2004142998A - 薄膜を有するガラス物品およびその製造方法 - Google Patents

薄膜を有するガラス物品およびその製造方法 Download PDF

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大谷 強
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平田 昌宏
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小山 昭浩
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Abstract

【課題】高歪点ガラス上に、オンラインCVD法で高い拡散防止能力を有する薄膜を形成することにより、熱処理における熱収縮および黄変が防止されたPDP用ガラス基板を提供する。
【解決手段】ガラス物品は、歪点が530℃以上であるガラス基板表面の少なくとも一方に、窒化シリコンを主成分とする薄膜が形成されている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスプレイ等の電子材料や、電波透過性を必要とする建築用ガラスまたは自動車用ガラス等に適用される薄膜を有するガラス物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラズマディスプレイ(PDP)やフィールドエミッションディスプレイ(FED)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELD)等の平面型ディスプレイでは、通常、2枚のガラス基板上に電極等の部材を形成した後、貼り合わせて使用されるが、特に、前面側ガラス基板にはITO、SnO等の透明電極が使用されている。また、特に大型のディスプレイでは電極の配線抵抗を下げるためにAg、Cr/Cu/Cr等の金属が補助電極として使用されている。
【0003】
PDPは大面積で直視型の壁掛けハイビジョンTV用表示装置として注目されており、PDPに用いられるガラス基板は、従来、一般建築用と同じソーダライムガラスが用いられてきた。PDPの製造工程では、ガラス基板上への電極の焼き付け、誘電体層の形成、隔壁の形成、蛍光体の形成等を行う工程で500〜600℃の熱処理が成される。この熱処理により発生するガラス基板の熱収縮により、パターン合わせする際に重ね合わせの位置ずれが生じる。高精度な積層形成には、ガラス基板の熱収縮率の値およびばらつきを管理することが必要である。
【0004】
上記熱処理によるガラス収縮を小さくするためには、歪点の高いガラスを使用することが必要である。液晶表示装置に用いられる無アルカリガラス基板は高い歪点を有するが、熱膨張係数が小さいため、PDPの用途には適さない。一方、従来用いられてきたソーダライムガラスは、大面積の板を安価に製造できるフロート法によって製造されており、熱膨張係数の値は要求を満たすが、歪点は500℃程度であり、500〜600℃の熱処理を行うと熱収縮を生じる。現在は、PDP用のガラス基板として1.5〜3.5mm厚さの、板状に成形された高歪点のアルカリ含有ガラスが用いられている。通常、このようなガラスは大量生産に向き、平滑性に優れたフロート法で成形することが望まれる。
【0005】
熱収縮の問題を解決し、かつフロート成形に適したガラス組成物が開示されている。これによれば、ソーダライムガラス並の膨張係数とより高い歪点を有するガラス組成物であって、通常のアルミナ質及びジルコニア質のレンガを用いた溶融炉で高品質なガラスが溶融でき、フロート成形による連続生産に適したガラス組成物を提供することが可能である。
【0006】
フロート法で成形されたガラス基板は、成形過程で水素雰囲気に晒されるため、ガラス表面に数ミクロンの還元層が生成し、この層には溶融Sn由来のSn2+が存在することが一般に知られている。
【0007】
PDPの製造工程においては、一般に、ガラス基板表面に透明電極を介してAgがバス電極として塗布された後、550〜600℃で20〜60分保持するという熱処理が数回繰り返される。この熱処理工程において、Agイオンが透明電極内に拡散してガラス表面に至り、ガラス中のNaイオンとの間でイオン交換が生じる。その結果、ガラス中にAgイオンが侵入し、侵入したAgイオンは還元層に存在するSn2+によって還元され、Agのコロイドを生成する。そして、Agコロイドによってガラス基板の黄変が生じ、この黄変がディスプレイの表示品位を著しく低下させるという問題があった。
【0008】
このような金属コロイドによるガラス基板の黄変の問題は、Agに限らず、拡散し易いCu,Au等の金属電極膜を形成した場合にも起こり得る。また、PDPに限らず、曇り防止のためにストライプ状にAg電極を形成した自動車用リアガラスにおいても、Agコロイドによりガラス基板が黄変するという問題が知られている。
【0009】
アルカリ含有ガラスをディスプレイ基板として用いる場合、ガラス基板の黄変を防止する方法として、PDP等ではガラス中のアルカリと、電極として使用されるAg等との交換反応を防止し、金属コロイドによるガラス基板の黄変を防止するための金属イオン拡散防止膜を形成する必要がある。この金属イオン拡散防止膜には、電極間でのリーク防止のために絶縁性が必要である。
【0010】
さらに、この金属イオン拡散防止膜の成膜は、フロートバス内でガラスリボン表面に原料ガスを吹き付けて熱分解反応を利用して成膜する方法(以下、オンラインCVD法)が望まれる。これは、フロート法で成形した高歪点ガラス基板上に成膜することにより、大量生産が可能となり、コスト低減が可能となる利点がある。
【0011】
【特許文献】
特開平10−152339号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
PDP用ガラス基板は、熱処理による熱収縮および黄変が防止される必要がある。黄変を防止する金属イオン拡散防止膜は、絶縁性があり、オンラインCVD法で成膜可能な薄膜であることが必要である。このような薄膜として、SiO膜が挙げられる。しかし、高歪み点ガラスはソーダライムガラスよりもフロートバス内でのガラスリボン温度が高くなるため、金属イオンが拡散し易くなり、従来のSiO膜では金属イオンの拡散防止性能は不十分であった。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、高歪点ガラス上に、オンラインCVD法で高い拡散防止能力を有する薄膜を形成することにより、熱処理における熱収縮および黄変が防止されたPDP用ガラス基板を提供することが目的である。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の薄膜が形成されたガラス物品は、歪点が530℃以上であるガラス基板表面の少なくとも一方に、窒化シリコンを主成分とする薄膜が形成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の窒化シリコン膜を主成分とする薄膜が形成されたガラス物品は、炭素(C)または酸素(O)の少なくとも一方、窒素(N)および水素(H)を含有するシリコン(Si)を主成分とすることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の薄膜が形成されたガラス物品の製造方法は、窒化シリコンを主成分とする薄膜をフロートバス内でガラスリボン表面に原料ガスを吹き付けて成膜することを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、歪点が530℃以上であるガラス基板表面に、窒化シリコンを主成分とする薄膜を形成することにより、熱処理による熱収縮および黄変が防止できることを見い出した。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るディスプレイ用途としてのガラス物品の模式構造を示す断面図である。
【0020】
同図において、ガラス物品1は、ガラス基板2と、ガラス基板2上に形成された窒化シリコンを主成分とする薄膜3とを有する。
【0021】
前記ガラス基板2は、重量%で表示して
SiO2                     56〜68%
Al                    0.2〜5%
ZrO                     0〜6.4%
LiO                     0〜0.5%
NaO                     0.2〜8%
O                      2.5〜14%
O                      1〜7%
CaO                     2〜12%
SrO                     0〜12%
BaO                     0〜13%
ZnO                     0〜2%
NaO+KO                 7〜17%
MgO+CaO                 7〜15%
SrO+BaO                 4〜18%
MgO+CaO+SrO+BaO         15〜27%
SO+Sb                 0〜1%
からなるガラス組成物である。
【0022】
上記のガラス組成は、溶融温度が1560℃以下、作業温度が1140℃以下でレンガ近傍で失透し難く、かつ作業温度が失透温度より高いので、フロート法による高品質のガラス基板の連続生産が可能である。また、耐水性が優れており、歪点が530℃以上と高くガラスの熱収縮が小さいにもかかわらず、熱膨張係数は従来のソーダライムシリカガラスと同等であるため、本発明によるガラス組成物をPDP用ガラス基板に用いることにより、他部材の変更なく高精度のPDPの製作が可能である。
【0023】
窒化シリコンを主成分とする薄膜は、スパッタリング法、イオンプレーティング法または真空蒸着法等のいわゆる物理蒸着法を用いても成形できるが、この発明ではCVD法を用いる。物理蒸着法は、膜厚の均一性に優れているが、薄膜成形後の耐久性等を考慮すると、CVD法により成膜することが好ましい。CVD法の中でも、特に常圧熱CVDが適している。場合によっては、透明基体の近傍に設置された触媒体と原料ガスの接触分解反応を利用した触媒CVD法を利用してもよい。
【0024】
窒化シリコンを主成分とする薄膜3の原料ガスには、少なくともシランおよびアンモニアが含まれている必要がある。ここで、シランには、SinH+2で表される水素化シリコンのみならず、有機シリコン化合物も含まれる。たとえば、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)、四塩化シリコン(SiCl)、ジクロルシラン(SiHCl)もしくは三塩化シラン(SiHCl)などの水素化シリコンの他、テトラメチルシラン((CHSi)等のアルキルタイプのシランまたは四フッ化シリコン(SiF)等を使用できる。中でも特に、モノシランを使用することが好ましい。モノシランはアンモニアと反応し易いことから、成膜時に副生成物が少なく、また窒化シリコンを主成分とする薄膜中の炭素、酸素および水素の含有率を広範囲に調節することができる。
【0025】
一方、アンモニアは、CVD法において従来から使用されてきた窒素原料であり、容易に入手でき安価でもある。アンモニア以外の窒素原料として、従来は窒素、アミン類およびヒドラジンタイプの有機物質等を使用してきたが、窒素は反応性に乏しく、前記有機物質は工業的生産規模の原料調達が困難であり、また工業的に使用する場合にはその毒性が問題となる。またアンモニアを原料ガスに使用すれば、窒化シリコンを主成分とする薄膜中に炭素が混入することを防止できるので、成膜速度を向上させることができる。
【0026】
原料ガス中におけるシランの濃度は、0.2mol%以上が好ましい。この濃度が0.2mol%未満の場合は、透明基体の表面温度が800℃以上であっても成膜速度が8nm/s以下となり、成膜に時間が掛かりすぎる。特にオンラインCVD法においては、成膜速度が8nm/s以下の場合、成膜装置や操業条件により左右されるが、利用できるガラスリボンの厚さが概ね4mm以上に限定される等の問題も生じる。一方でシランの濃度が高くなりすぎると、アンモニアとのモル比を上記範囲内に収めることが困難になるので、CVD法におけるシラン濃度の上限は2.4mol%が適当である。また、シランの濃度が高すぎると、気相中において熱分解反応が進行して粉末状となり、窒化シリコンを主成分とする薄膜にピンホールなどの欠点が発生したり、成膜速度が低下したりするだけでなく、原料ガス中でシランが爆発する危険性がある。そのため、シランの濃度は1.4mol%以下が実用的である。
【0027】
原料ガス中におけるシランに対するアンモニアのモル比(アンモニアのモル数/シランのモル数)は、40〜400が好ましい。この比が40より小さい場合は、Si−Si結合が多くなり、可視光域に吸収帯を持つ透明度の低い薄膜が形成される。一方、この比が400より大きくなると、原料ガス中のシラン濃度を高めることが困難になるばかりでなく、アンモニアがシランの分解を抑制するようになって成膜速度が低下する。
【0028】
窒化シリコン薄膜に取り込まれる酸素は、原料ガス中に添加される一酸化二窒素、一酸化炭素および二酸化炭素などの酸化原料から供給される。なお、原料ガス中にこれら酸化原料を添加しない場合でも、成膜後に大気との接触による自然酸化により、窒化シリコン薄膜の表面近傍に酸素が取り込まれる。また、窒化シリコン薄膜に取り込まれる炭素は、上記有機シリコン化合物の残渣の場合もあれば、シランの反応性を抑制するために原料ガス中に添加されるアセチレン、エチレンまたはエタン等の低級炭化水素から供給される場合もある。さらに、窒化シリコン薄膜に取り込まれる水素は、上記シランまたはアンモニアの残渣である。これらの元素が窒化シリコンの基本骨格中に取り込まれることにより、窒素−シリコン結合が所々で切断され、その結果窒化シリコン薄膜の張力が緩和されて、窒化シリコン薄膜がガラス基板から剥離し難くなる。
【0029】
原料ガス中には、上記のシラン、アンモニア、酸化原料および低級炭化水素の他に、窒素、ヘリウムまたは水素等を添加してもよい。
【0030】
窒化シリコンを主成分とする薄膜をCVD法で成膜する場合、適当な寸法に裁断したガラス板に対して薄膜を成形してもよいが、後述するオンラインCVD法によりガラス板の整形と同時に薄膜を成形するのが良い。工業的生産においては、オンラインCVD法の方が利点がより多い。オンラインCVD法では、フロートバス内において軟化点以上の熱を有するガラスリボンの表面に成膜するので、原料ガスの熱分解反応がガラスリボンの熱で促進されることになる。その結果、熱分解反応のための加熱が不要となり、トータルエネルギーコストが削減される。さらに、成膜速度および成膜反応効率が向上し、ピンホール等の欠点の生成が抑制される。並びに、軟化点以上の熱を有するガラスリボンは大きな表面寸法自由度を有するので、オンラインCVD法によれば、窒化シリコン薄膜特有の膜中張力が低減され、付着力および機械的強度の高い薄膜が形成される。
【0031】
なお、CVD法においては、窒化シリコンを主成分とする薄膜を成形する直前にガラス基板もしくはガラスリボンの表面にアンモニアを吹き付けることにより、成膜速度を一層向上させることができる。これは、ガラス基板もしくはガラスリボンと接触したアンモニアが分解してそこに吸着されることにより、シランが供給された時点で急速に熱分解反応が進行するためであると考えられる。さらに、アンモニアの分解を促進するために、ガラス基板もしくはガラスリボンの表面近傍に触媒を配置してもよい。
【0032】
オンラインCVD法では、図2に示す装置を用いる。この装置では、熔融炉(フロート窯)11からフロートバス12内に流れ出し、スズ浴15上を帯状に移動するガラスリボン10の表面から所定距離を隔て、所定個数のコータ16(図示した形態では3つのコータ16a,16b,16c)がフロートバス内に配置されている。これらのコータからは、原料ガスが供給され、ガラスリボン10上に連続的に薄膜が形成されていく。また、複数のコータを利用すれば、ガラスリボン10上に、薄膜を積層することができる。ガラスリボンの温度は、コータ16の直前で所定温度となるように、フロートバス内に配置されたヒータおよびクーラ(図示省略)により調整される。各薄膜が形成されたガラスリボン10は、ローラ17により引き上げられて徐冷炉13へと送り込まれる。なお、徐冷炉13で徐冷されたガラス板は、図示を省略するフロート法汎用の切断装置により、所定の大きさのガラス板へと切断される。
【0033】
オンラインCVD法では、一般にガラスリボンの表面温度が500〜850℃の範囲において成膜できる。この窒化シリコンを主成分とする薄膜は、成膜直前のガラスリボンの表面温度が700〜830℃の範囲で成形されることが好ましい。この温度範囲であれば、成膜速度が速いことに加えて、ガラスリボンの表面寸法自由度により、窒化シリコン膜特有の薄膜中の張力が低減されて、付着力が向上した機械的強度の高い薄膜が形成されるからである。
【0034】
この窒化シリコンを主成分とする薄膜は、窒化シリコンを基本骨格とするため、硬質で透明度が高く可視光域の吸収が少ない。窒化シリコンを主成分とする薄膜におけるシリコンと窒素との原子含有率は、シリコン:35〜45原子%、窒素:30〜60原子%であることが好ましい。シリコンの原子含有率が35原子%未満の場合は、窒化シリコンを主成分とする薄膜の緻密性が劣化し、各種イオンの拡散障壁能力が低下する。一方、45原子%を越えると、可視光域の吸収が大きくなり、薄膜の透明性が低下する。また、窒化シリコンを主成分とする薄膜におけるシリコンの原子含有率に対する窒素の原子含有率の比は、窒化シリコンの化学量論組成比の1.3に近いほど好ましい。また、窒化シリコンを主成分とする薄膜におけるシリコンの原子含有率に対する窒素の原子含有率の比が、0.9より小さくなると、可視光域の吸収が大きくなり、薄膜の透明性が低下する。よって、この窒化シリコンを主成分とする薄膜のシリコンの原子含有率に対する窒素の原子含有率の比は、0.9〜1.3の範囲で調整することが適当である。
【0035】
窒化シリコンを主成分とする薄膜は、炭素または酸素の少なくとも一方を1〜10原子%含有することが好ましい。炭素は、その含有率により、窒化シリコンを主成分とする薄膜の可視光域の吸収率を変化させる。一方酸素は、窒化シリコンを主成分とする薄膜の張力を緩和させてストレスを低減させ、ガラス基板に対する付着力を向上させると伴に機械的強度も向上させる。これらの機能が有効に発揮されるためには、炭素または酸素の原子含有率を1〜10原子%の範囲に収めることが好ましい。なお、炭素と酸素は、いずれか一方が選択的に、または両方が含有されていてもよい。さらに、この窒化シリコンを主成分とする薄膜は、水素を必須の構成元素とする。水素の含有率が高くなると、窒化シリコンを主成分とする薄膜の緻密性が劣化し、各種イオンの拡散障壁能力が低下するため、その含有率は5〜20原子%であることが好ましい。
【0036】
窒化シリコンを主成分とする薄膜の厚さは、パッシベーション機能を確保するため20nm以上が、一方で高い可視光透過率を確保するため300nm以下が好適である。また、窒化シリコンを主成分とする薄膜の屈折率は、後述する透明導電膜またはガラス基体の屈折率との差が大きくなるほど反射率が高くなるため、一般的な酸化スズからなる透明導電膜およびガラス基板の屈折率に比較的近い1.8〜2.1が好ましい。
【0037】
また、窒化シリコンを主成分とする薄膜は透過率が高いほど好ましく、この窒化シリコンを主成分とする薄膜であれば、厚さ40nmであっても可視光透過率83%を確保できる。
【0038】
図3は、本発明のガラス物品の窒化シリコンを主成分とする薄膜3上に透明導電膜である薄膜4が積層されたガラス物品の一例を示したものである。この構成のガラス物品は、透明導電膜が形成されているためディスプレイ用基板や太陽電池用基板などとして有用である。透明導電膜としては、酸化スズや酸化インジウムや酸化亜鉛を主成分とした薄膜が挙げられる。特に酸化スズを主成分とする薄膜は、他の導電膜と比較して、オンラインCVD法で容易に成膜が可能であるため、本発明のガラス物品の窒化シリコンを主成分とする上に酸化スズを主成分とする薄膜が積層されたガラス物品は、大量生産が可能となり、低コストで製造できる利点がある。
【0039】
なお、この発明において「主成分」とは、慣用に従い、構成成分の重量含有率で50重量%以上であることをいう。
【0040】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0041】
(実施例1)
フロート法で製造した高歪点ガラスをガラス基板とした。目標組成となるように調合したバッチ原料を溶融窯で溶融後、フロートバスに流し込み、厚み2.8mmのガラスリボンに成形した。ガラスリボンは、徐冷炉で徐冷した後、洗浄、乾燥、切断した。得られたガラス基板の組成を表1に示した。このガラス基板の歪点は、580℃であった。
【0042】
【表1】
Figure 2004142998
【0043】
このガラス基板を一辺が10cmの正方形となるように切断し、このガラス板上に常圧CVD法により、窒化シリコンを主成分とする窒化シリコンを主成分とする薄膜を成形した。成膜は、約830℃の炉内をガラス板が1.5m/minの速度で搬送される条件下で行った。炉内に設置したコータから、モノシランに対するアンモニアのモル比が200で、モノシラン濃度0.5mol%およびキャリアガスとしての窒素からなる原料ガスを供給し、ガラス基板表面に厚さ40nmの窒化シリコンを主成分とする薄膜を成形した。
【0044】
この窒化シリコンを主成分とする薄膜のパッシベーション機能を確認するため、窒化シリコンを主成分とする薄膜上に銀ペーストを塗布し、570℃で1時間の焼成処理を施した。その結果、銀に着色(黄色変化)は見られなかった。この高歪点ガラスは、フロート法で製造されたものであるから、この銀の着色の有無により、窒化シリコンを主成分とする薄膜をスズが透過したか否かを判別できる。すなわち、窒化シリコンを主成分とする薄膜は、ディスプレイ用途に求められるパッシベーション機能を十分に備えると言える。
【0045】
X線励起光電子分光分析およびラザフォード後方散乱分析から、この窒化シリコンを主成分とする薄膜の組成構成は、シリコンが39原子%、窒素が43原子%、酸素が3原子%および水素が15原子%であることが確認された。この窒化シリコンを主成分とする薄膜の可視光透過率を、分光高度計を用いて測定したところ88.5%で、550nmの屈折率をエリプソメーターを用いて測定したところ1.91であった。この特性は、建物や自動車などの用途のみならず、高い透明性が要求されるディスプレイ用基板として、その実使用に問題ないレベルである。また、窒化シリコンを主成分とする薄膜の表面抵抗値は1010Ω/□(スクエア)以上であり、絶縁性の高いことがわかった。
【0046】
上記成膜条件および窒化シリコンを主成分とする薄膜の特性について、下記「表2」にまとめて示す。
【0047】
(実施例2)
図2に示した装置を用いて、オンラインCVD法により、高歪点ガラスリボンの表面に窒化シリコンを主成分とする薄膜を成膜した。実施例1の高歪点ガラスを製造するフロートバス内のガラスリボンの温度が830℃のときに、最上流側に位置する第1のコータ(図3中16a)から、モノシランに対するアンモニアのモル比が100で、モノシラン濃度が0.4mol%、およびキャリアガスとしての窒素を含む原料ガスを供給し、厚さ2.8mmのガラスリボン表面に厚さ45nmの窒化シリコンを主成分とする薄膜を成形した。このガラスリボンを徐冷炉で徐冷し、さらに搬送下流側に配置した切断機で所定寸法に切断して窒化シリコンを主成分とする薄膜が成膜されたガラス基板を作製した。得られたガラス基板の組成は表1と同様であり、ガラス基板の歪点は580℃であった。
【0048】
実施例1と同様の手段で、ガラス物品の特性を調査した。銀ペーストを塗布した焼成処理後の銀着色(黄色変化)は見られなかったことから、パッシベーション機能を十分に備えると言える。
【0049】
薄膜の組成構成は、シリコンが45原子%、窒素が39原子%、酸素が2原子%および水素が14原子%であり、その可視光透過率が84.9%、屈折率が1.95、表面抵抗値が1010Ω/□(スクエア)以上であった。
【0050】
上記成膜条件および窒化シリコンを主成分とする薄膜の特性について、下記「表2」にまとめて示す。
【0051】
(比較例1)
実施例2において、オンラインCVD法により、窒化シリコンを主成分とする薄膜の代わりに、モノシラン、エチレン、酸素および窒素からなる混合ガスを供給し、膜厚が40nmの二酸化ケイ素薄膜を成膜した以外は、実施例2と同じ方法で、薄膜が成膜されたガラス基板を作製した。得られたガラス基板の組成は表1と同様であり、ガラス基板の歪点は580℃であった。
【0052】
実施例1と同様の手段で、ガラス物品の特性を調査した。銀ペーストを塗布した焼成処理後の銀着色(黄色変化)が見られた。ディスプレイ用基板として要求されるパッシベーション機能がないことがわかった。
【0053】
上記成膜条件および窒化シリコンを主成分とする薄膜の特性について、下記「表2」にまとめて示す。
【0054】
【表2】
Figure 2004142998
【0055】
上記実施例および比較例を対比することにより、ソーダライムガラスよりリボン温度が高い高歪み点ガラス上に従来使用されてきたSiO2膜を成膜した場合は、銀ペーストを塗布した焼成処理後の銀着色(黄色変化)が見られるが、窒化シリコンを主成分とする薄膜を有するガラス基板はこの銀着色(黄色変化)が見られないことがわかる。また、この窒化シリコンを主成分とする薄膜を有するガラス基板は高い可視光透過性、高い絶縁性を備えることがわかる。
【0056】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のガラス物品によれば、高歪点ガラス基板の表面に、金属イオンの拡散防止性能に優れた窒化シリコンを主成分とする薄膜を有するので、熱処理により熱収縮が防止できるだけでなく、銀を含有する電極膜を形成した場合に、金属コロイドによりガラスの黄変が生ずる問題がないガラス物品を得ることができる。従って、本発明のガラス物品は、建築用ガラス基板、自動車用高機能ガラス等として、特にディスプレイ用基板として有用である。
【0057】
さらに、本発明のガラス物品の製造方法によれば、窒化シリコンを主成分とする薄膜をフロートバス内で高歪点ガラスリボン表面に原料ガスを吹き付けて成膜するため、ガラス物品の連続生産および大量生産が可能となり、工業的生産に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガラス物品の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明のガラス物品を製造できる装置の概略を示す図である。
【図3】本発明のガラス物品の窒化シリコンを主成分とする薄膜上に透明導電膜が積層された一実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1 ガラス物品
2 ガラス基板
3 窒化シリコンを主成分とする薄膜
4 透明導電膜
10 ガラスリボン
11 熔融炉
12 スズフロート槽
13 徐冷炉
15 スズ浴
16 コータ
17 ローラ

Claims (3)

  1. 歪点が530℃以上であるガラス基板表面の少なくとも一方に、窒化シリコンを主成分とする薄膜が形成されたことを特徴とするガラス物品。
  2. 炭素(C)または酸素(O)の少なくとも一方、窒素(N)および水素(H)を含有するシリコン(Si)を主成分とする薄膜が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のガラス物品。
  3. 請求項1または請求項2に記載の薄膜を有するガラス基板であって、窒化シリコンを主成分とする薄膜をフロートバス内でガラスリボン表面に原料ガスを吹き付けて成膜することを特徴とするガラス物品の製造方法。
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