JP7283529B1 - 積層膜付き基材 - Google Patents

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Abstract

【課題】合わせガラスを製造する際の生産性を向上させる手段を提供すること。【解決手段】ガラス基板と前記ガラス基板上に配置される膜とを備えた膜付き基材であって、前記ガラス基板は、板厚が5mm以下であり、相互に対向する第1の面及び第2の面を有し、前記ガラス基板の前記第1の面に前記膜が設置され、前記膜付き基材の標準A光源に基づく可視光透過率が30%未満であり、かつ前記膜側表面の放射率が0.25未満である膜付き基材とする。【選択図】図1

Description

本発明は、膜付き基材に関し、更に詳しくは、合わせガラスに適した膜付き基材に関する。
薄膜付きガラス基材や薄膜付きフィルム等の膜付き基材は、主材となるガラスやフィルムに機能性膜を積層することにより各種要求特性を満たす素材として種々の分野に汎用されている。
例えば、車両や建築物に使用される窓ガラス等において、近年の省エネルギー意識の高まりから、断熱性や遮熱性が付与された低放射ガラス(Low-Eガラス)が用いられている。低放射ガラスは、ガラス基板上に金属酸化物等からなる機能層を1層あるいは複数層積層することにより構成され、機能層として、例えば、熱線反射層、熱線吸収層、可視光反射層、可視光吸収層、光学調整層等を備えている。
このような低放射ガラスとして、例えば、特許文献1には、ガラス基板の表面に、金属酸化物系薄膜として、少なくともアンチモンを含有したアンチモン含有・酸化スズ系薄膜と、フッ素を含有したフッ素含有・酸化スズ系薄膜とを含む低放射ガラスが記載されている。また、特許文献2には、(a)ガラス基板と、(b)前記ガラス基板に被着されたアンチモンドープ酸化スズコーティングと、(c)前記アンチモンドープ酸化スズコーティングに被着されたフッ素ドープ酸化スズコーティングとを含むコーティングガラス製品であって、コーティングの厚さが、コーティングガラス製品が13以上の選択性となる公称厚さ3mmの透明なガラス基板における可視光透過率(基準光源C)と全ソーラーエネルギー透過率(エアマス1.5の場合)との間の差を有するように選択されることが記載されている。
また、合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損した場合にガラス破片の飛散量が少なく、安全性に優れているため、車両や航空機、建築物等の窓ガラス等に広く用いられている。合わせガラスは、少なくとも一対の板ガラスの間に中間膜を介在させ、これらを一体化させたものが挙げられ、構成部材の各々の機能により所望の効果を得ている。
このような合わせガラスとして、例えば、特許文献3には、熱線遮蔽機能を有する日射遮蔽体の可視光透過率を低減させ、日射透過率と可視光透過率が特定の関係を満たす日射遮蔽体が記載され、これを2枚の板ガラス間に中間膜として介在させた合わせガラスとすることが記載されている。また、特許文献4には、第1及び第2のガラス層の間に少なくとも1つのプラスチック接着層を備え、プラスチック接着層の可視光透過率が50%未満であるパノラマ式車両ルーフ積層体が提案されている。
特開2001-199744号公報 特表2003-535004号公報 特開2008-44609号公報 国際公開第2019/008471号
例えば車両のパノラマルーフは、遮熱性、断熱性及び高級感のある色味を持つことが求められ、このような要求に対し、従来では合わせガラスの少なくとも一方の板ガラスを低放射ガラスで構成し、可視光透過率を低下させた中間膜を備えることで所望の透過率と放射率を両立させることがなされている。
近年、パノラマルーフの需要が増大するにつれ、透過率と放射率に対する要望が多様化しており、メーカーは多品種の製品を製造する必要があり、品種が増えるに従って、生産性の向上が難しくなるという問題があった。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、合わせガラスを製造する際の生産性を向上させる手段を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意取り組んだところ、膜付きガラス基材に断熱機能と光遮蔽機能とを両立して持たせることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
本発明は、下記(1)~(21)に関するものである。
(1)ガラス基板と前記ガラス基板上に配置される膜とを備えた膜付き基材であって、前記ガラス基板は、板厚が5mm以下であり、相互に対向する第1の面及び第2の面を有し、前記ガラス基板の前記第1の面に前記膜が設置され、前記膜付き基材の標準A光源に基づく可視光透過率が30%未満であり、かつ前記膜側表面の放射率が0.25未満である膜付き基材。
(2)前記膜付き基材のシート抵抗値が30Ω/□以下である、前記(1)に記載の膜付き基材。
(3)前記膜のキャリア密度が1×1019/cm以上である、前記(1)又は(2)に記載の膜付き基材。
(4)前記膜の移動度が20cm/Vs以上である、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の膜付き基材。
(5)前記膜付き基材の日射透過率が30%未満である、前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の膜付き基材。
(6)前記膜が、前記ガラス基板側から順番に熱線吸収層と赤外線反射層を含む、前記(1)~(5)のいずれか1つに記載の膜付き基材。
(7)前記赤外線反射層が、フッ素ドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、ガリウムドープ酸化亜鉛及びアルミニウムドープ酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つのドープ型金属酸化物の膜を含む、前記(6)に記載の膜付き基材。
(8)前記赤外線反射層がフッ素ドープ酸化スズ膜を備える、前記(6)又は(7)に記載の膜付き基材。
(9)前記赤外線反射層の厚みが100~400nmである、前記(6)~(8)のいずれか1つに記載の膜付き基材。
(10)前記熱線吸収層がアンチモンドープ酸化スズの膜を含む、前記(6)~(9)のいずれか1つに記載の膜付き基材。
(11)前記熱線吸収層に含まれるアンチモン濃度が5~20mol%である、前記(10)に記載の膜付き基材。
(12)前記熱線吸収層の厚みが300~700nmである、前記(6)~(11)のいずれか1つに記載の膜付き基材。
(13)前記膜がさらに光学調整層を有し、前記光学調整層は、前記ガラス基板と前記熱線吸収層との間に配置される、前記(6)~(12)のいずれか1つに記載の膜付き基材。
(14)前記光学調整層が、SiOC膜、SiOC/SiO積層膜、TiO/SiO積層膜及びSnO/SiO積層膜からなる群から選択される少なくとも1つの膜を備える、前記(13)に記載の膜付き基材。
(15)前記光学調整層がSiOC膜を備える、前記(13)に記載の膜付き基材。
(16)前記膜が熱CVD法により形成されたものである、前記(1)~(15)のいずれか1つに記載の膜付き基材。
(17)前記膜が前記ガラス基板の製造ライン上で前記熱CVD法により形成されたものである、前記(16)に記載の膜付き基材。
(18)前記(1)~(17)のいずれか1つに記載の膜付き基材を有する車両用窓ガラス。
(19)前記(1)~(17)のいずれか1つに記載の膜付き基材と中間膜と外側ガラス板とをこの順に有する合わせガラス。
(20)車両のルーフに用いる前記(19)に記載の合わせガラス。
(21)前記(19)に記載の合わせガラスを有するパノラマルーフ。
本発明の膜付き基材は、断熱機能と光遮蔽機能とを有しているので、合わせガラスを製造する際に、品種ごとにガラス基材と中間膜の両方を作り分ける必要がなく、ガラス基材の断熱性と透過率を変化させて膜付き基材を作製すれば共通の中間膜を利用できる。中間膜を共通化できるので、多種類の合わせガラスの製造においても、生産性が向上し、コストの削減もできる。
本発明の膜付き基材の一実施形態の構成を説明するための膜付き基材の断面図である。 本発明の膜付き基材の他の実施形態の構成を説明するための膜付き基材の断面図である。 本発明の膜付き基材の製造方法の一例を模式的に示したフロー図である。
以下、本発明について説明するが、以下の説明における例示によって本発明は限定されない。
本発明の膜付き基材は、ガラス基板と該ガラス基板上に配置される膜を有する。前記膜は、膜付きガラス基材に所望の機能を与える。本発明の膜付き基材は、標準A光源に基づく可視光透過率が30%未満であり、かつ膜側表面の放射率が0.25未満であるものである。膜は1層からなるものであってもよいし、2層以上を含んでいてもよい。
図1に本発明の膜付き基材の一実施形態を示す。図1に示した膜付き基材10は、ガラス基板1と該ガラス基板1上に配置される膜2とを備えている。ガラス基板は相互に対向する第1の面1a及び第2の面1bを有し、ガラス基板1の第1の面1aに膜2が設置されている。本実施形態では、膜2は、ガラス基板1に近い側から、熱線吸収層3と赤外線反射層5を有する積層膜である。
以下、各層について説明する。
(ガラス基板)
ガラス基板1は、膜付き基材10の骨格となり、自己支持性を有するものである。
ガラス基材を構成するガラスとしては、例えば、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
ガラス基板は、膜付き基材の使用用途や使用目的に応じて、透明、半透明、不透明のいずれも選択できる。また、ガラス基板は、無色であっても、着色がされていてもよい。
ガラス基板の形状は特に限定されず、板状、フィルム状、シート状等が挙げられ、使用用途に応じて任意の形状が可能である。例えば、車両用部材、建築用部材に使用するためには板状であるのが好ましい。
ガラス基板の板厚は5mm以下である。ガラス基板の板厚が5mm以下であると、車載向けに適した板厚となる。
ガラス基板の板厚は、4.5mm以下であるのが好ましく、4.3mm以下がより好ましく、4.1以下がさらに好ましい。ガラス基板の板厚は、1mm以上であるのが好ましく、1.3mm以上がより好ましく、1.6mm以上がさらに好ましい。
ガラス基板の大きさ(面積)は特に限定されず、膜付き基材の使用用途や使用目的に応じて適宜調整すればよい。
例えば、膜付き基材を車両に利用する場合、ガラス基板の主面の面積は0.5~5mであるのが好ましく、膜付き基材を建築物に利用する場合、ガラス基板の主面の面積は0.5~10mであるのが好ましい。
(膜)
図1に示した実施形態では、ガラス基板に積層される膜は、ガラス基板1に近い側から熱線吸収層3と赤外線反射層5を備えている。
<熱線吸収層>
熱線吸収層3は、日射熱を反射して、膜付き基材に遮熱性を与える層であり、結晶性を有している。
熱線吸収層を形成する材料としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル等の金属酸化物が挙げられる。また、熱線吸収層を形成する金属酸化物は、他の元素(不純物元素)をドープしたドープ型金属酸化物であってもよい。熱線吸収層をドープ型金属酸化物により形成することで、熱線吸収層にも所望の機能を付与できる。
ドープ型金属酸化物にドープさせる不純物元素としては、例えば、アンチモン、フッ素、スズ、カリウム、アルミニウム、タンタル、ニオブ、窒素、ホウ素、インジウム等が挙げられる。
熱線吸収層の形成にドープ型金属酸化物を用いる場合、ドープされる不純物元素の濃度は30mol%以下であるのが好ましい。不純物元素の濃度が30mol%以下であると、ドープ前の結晶構造を維持できる。不純物元素の濃度は、30mol%以下であるのが好ましく、25mol%以下がより好ましく、20mol%以下がさらに好ましい。また、不純物元素の濃度は、0.1mol%以上であるのが好ましい。膜付き基材の透過率を所定の値まで下げやすくするという観点から、不純物元素の濃度は1mol%以上であるのがより好ましく、2mol%以上がさらに好ましく、4mol%以上が特に好ましく、6mol%以上が最も好ましい。
本発明では、熱線吸収層はアンチモンドープ酸化スズ(ATO、SnOにSbを添加した金属酸化物)からなる膜を備えるのが好ましい。アンチモンドープ酸化スズ膜は、基材の内部に伝わる熱の量を小さくして、膜付き基材に優れた遮熱性を与えることができる。
なお、熱線吸収層に含まれるアンチモン濃度は5~20mol%であるのが好ましい。熱線吸収層中のアンチモン濃度が5mol%以上であると、遮熱性を発現できるとともに、透過率を下げることができ、アンチモン濃度が20mol%以下であると、ドープ前の結晶構造を維持することができる。熱線吸収層に含まれるアンチモン濃度は、6mol%以上であるのがより好ましく、7mol%以上がさらに好ましく、8mol%以上が特に好ましく、また、19mol%以下であるのがより好ましく、18mol%以下がさらに好ましく、15mol%以下が特に好ましい。
なお、熱線吸収層の組成やドープされる不純物元素の濃度は、X線光電子分光法(XPS)や二次イオン質量分析法(SIMS)により同定できる。
例えば、アンチモン(Sb)濃度は、X線光電子分光法(XPS)による深さ方向の分析を行い、SbとSnの強度比から調べられる。フッ素(F)濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS)による深さ方向の分析を行い、FとSnの強度比から調べられる。なお、SIMSについては、濃度既知のフッ素添加錫SnOを測定し、F/Snの強度比から濃度に変換する係数を求める必要がある。
熱線吸収層は、1層の膜からなるものであってもよいし、材料や金属含有量等が異なる2層以上の膜からなるものであってもよい。
本発明において、熱線吸収層の厚みは300~700nmであるのが好ましい。熱線吸収層の厚みが300m以上であると、膜付き基材に十分な遮熱性を与えることができ、また膜付き基材の透過率を所定の値に調整しやすい。また、熱線吸収層中で結晶粒をある程度大きく成長させることができるので、赤外線反射層を製膜する際に赤外線反射層における結晶粒径を成長させやすくなる。熱線吸収層の厚みが1000nm以下であると、膜表面を平坦に保ちやすい。
熱線吸収層の厚みは、350nm以上であるのがより好ましく、400nm以上がさらに好ましく、450nm以上が特に好ましく、900nm以下であるのがより好ましく、800nm以下がさらに好ましく、700nm以下が特に好ましい。
熱線吸収層の厚みは、X線光電子分光測定による深さ方向の分析等により測定できる。
なお、熱線吸収層は、金属酸化物の結晶粒により成膜されるので、ガラス基板側とは反対側の面に凹凸形状を有する。よって、熱線吸収層の「厚み」は場所によって異なるが、本発明においては測定領域における熱線吸収層の平均厚みを表すものとする。
熱線吸収層における結晶粒の大きさは、30~1500nmであるのが好ましい。結晶粒の大きさが30nm以上であると、熱線吸収層上に製膜される赤外線反射層の結晶粒形を十分に大きくでき、放射率を低くすることができる。
結晶粒の大きさは、30nm以上であるのが好ましく、50nm以上がより好ましく、80nm以上がさらに好ましく、また、結晶粒形は大きいほど良いため、特に上限値はないが、一般的に1500nm以下であるのが好ましく、1200nm以下がより好ましく、1000nm以下がさらに好ましい。
なお、結晶粒の大きさは、膜付き基材を厚み方向に切断した断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)観察することで測定できる。
<赤外線反射層>
赤外線反射層5は、赤外線を反射し、膜付き基材に断熱性を付与する層であり、結晶性を有している。
赤外線反射層を形成する材料としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タンタル及び酸化ニオブからなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物に他の元素(不純物元素)をドープしたドープ型金属酸化物が挙げられる。
ドープさせる不純物元素としては、例えば、フッ素、アンチモン、スズ、カリウム、アルミニウム、タンタル、ニオブ、窒素、ホウ素、インジウム等が挙げられる。
具体的なドープ型金属酸化物としては、例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO、SnOにFを添加した金属酸化物)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO、SnOにSbを添加した金属酸化物)、スズドープ酸化インジウム(ITO、InにSnを添加した金属酸化物)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO、ZnOにGaを添加した金属酸化物)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO、ZnOにAlを添加した金属酸化物)、タンタルドープ酸化スズ(SnOにTaを添加した金属酸化物)、ニオブドープ酸化スズ(SnOにNbを添加した金属酸化物)、タンタルドープ酸化チタン(TiにTaを添加した金属酸化物)、ニオブドープ酸化チタン(TiにNbを添加した金属酸化物)、アルミニウムドープ酸化スズ(SnOにAlを添加した金属酸化物)、フッ素ドープ酸化チタン(TiにFを添加した金属酸化物)、窒素ドープ酸化チタン(TiにNを添加した金属酸化物)等が挙げられる。
中でも、赤外線反射層は、酸化スズ、酸化インジウム及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物に他の元素をドープしたドープ型金属酸化物からなる膜を備えるのが好ましく、他の元素は、フッ素、アンチモン、スズ、ガリウム及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つであるのが好ましい。
具体的に、赤外線反射層が、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)及びアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)からなる群から選択される少なくとも1つのドープ型金属酸化物の膜を備えるのがより好ましく、より高い断熱性を得るという観点から、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜を備えるのがさらに好ましい。
赤外線反射層は、1層の膜からなるものであってもよいし、材料や元素含有量等が異なる2層以上の膜からなるものであってもよい。
赤外線反射層に含まれる不純物元素の含有量は、その濃度が0.01~20mol%であるのが好ましい。赤外線反射層に含まれる不純物元素の濃度が0.01mol%以上であると、断熱効果を発現できるとともに、膜付き基材の透過率を所定の値に調整しやすく、20mol%以下であると良好な結晶性を維持できる。
赤外線反射層に含まれる不純物元素の濃度は、0.01mol%以上であるのが好ましく、0.1mol%以上がより好ましく、0.5mol%以上がさらに好ましく、また10mol%以下であるのがより好ましく、8mol%以下がさらに好ましく、5mol%以下が特に好ましい。
なお、不純物元素の濃度は、赤外線反射層中に複数の不純物元素を含む場合は、その総量である。
なお、赤外線反射層の組成や不純物元素の濃度は、上記したように、X線光電子分光法(XPS)や二次イオン質量分析法(SIMS)により同定できる。
本発明において、赤外線反射層の厚みは、100~400nmとするのが好ましい。赤外線反射層の厚みが100nm以上であると、膜付き基材における断熱性能が向上し、また膜付き基材の透過率を所定の値に調整しやすい。赤外線反射層の厚みが400nm以下であると表面を平坦にできる。
赤外線反射層の厚みは、120nm以上であるのがより好ましく、130nm以上がさらに好ましく、150nm以上が特に好ましく、また、380nm以下であるのがより好ましく、350nm以下がさらに好ましい。
赤外線反射層の厚みは、X線光電子分光測定による深さ方向分析等により測定できる。
赤外線反射層が異種材料の複層で構成される場合、赤外線反射層の「厚み」は、各層の厚みの合計で表される。
なお、赤外線反射層は、金属酸化物の結晶粒により成膜され、赤外線反射層が積層される熱線吸収層の表面は凹凸形状であるので、層の表面(すなわち、熱線吸収層側表面と該熱線吸収層とは反対側の表面)に凹凸形状を有する。よって、赤外線反射層の「厚み」は場所によって異なるが、本発明においては測定領域における赤外線反射層の平均厚みを表すものとする。
赤外線反射層における結晶粒の大きさは、30nm以上であるのが好ましい。結晶粒の大きさが30nm以上であると、電子の粒界散乱が小さくなり、電気伝導性が高くなり、放射率が低くなるため、本発明の所望の効果が得られやすい。
結晶粒の大きさは、30nm以上であるのが好ましく、50nm以上がより好ましく、80nm以上がさらに好ましく、また、結晶粒形は大きいほど良いため、特に上限値はないが、一般的に1000nm以下であるのが好ましく、800nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましい。
なお、結晶粒の大きさの測定は、上記と同様に、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定できる。
また、赤外線反射層の表面の算術平均粗さRaは、30nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましい。
なお、熱線吸収層と赤外線反射層は、同じ種類の金属酸化物を含んで形成されるのが好ましい。熱線吸収層に含まれる金属酸化物と赤外線反射層に含まれる金属酸化物が同じ種類であると、赤外線反射層を形成する際に結晶粒の成長が途切れることがなく、赤外線反射層における結晶粒を大きく成長させることができる。例えば、熱線吸収層を構成する金属酸化物が酸化スズである場合、赤外線反射層はドープ型酸化スズ膜であるのが好ましい。
本発明の膜付き基材は、熱線吸収層がアンチモンドープ酸化スズ(ATO)膜からなり、赤外線反射層がフッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜からなるのが好ましい。この構成において、赤外線反射層に含まれるフッ素濃度は、0.01~10mol%であるのが好ましい。赤外線反射層に含まれるフッ素濃度が0.01mol%以上であると、十分な断熱効果を発現でき、10mol%以下であると不活性なフッ素の濃度を抑え、不純物散乱が小さくなるため移動度が高くできる。
赤外線反射層に含まれるフッ素の濃度は、0.05mol%以上であるのがより好ましく、0.1mol%以上がさらに好ましく、また5mol%以下であるのがより好ましく、3mol%以下がさらに好ましい。
本発明において、赤外線反射層と熱線吸収層の厚みの合計は、500~1500nmであるのが好ましい。各層の合計が500nm以上であると、赤外線反射層における結晶粒を十分に成長させることができるので、放射率を向上でき、また透過率も所定の範囲に調整しやすい。各層の合計が1500nm以下であると、膜付き基材の厚みが厚くなり過ぎることがない。
赤外線反射層と熱線吸収層の厚みの合計は、550nm以上であるのがより好ましく、600nm以上がさらに好ましく、650nm以上が特に好ましく、また、1100nm以下であるのがより好ましく、900nm以下がさらに好ましい。
<光学調整層>
本発明の膜付き基材は、図2に示すように、膜2がさらに光学調整層7を有していてもよい。膜付き基材20が光学調整層7を備える場合、光学調整層7は、ガラス基板1と熱線吸収層3との間に配置されるのが好ましい。
光学調整層を構成する材料としては、例えば、炭化酸化ケイ素(SiOC)、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)、窒化酸化ケイ素(SiON)等が挙げられる。光学調整層は1層からなるものであってもよいし、2層以上の膜からなるものであってもよい。また、上記材料いずれか2つ以上の混合物であってもよい。
具体的に、光学調整層としては、SiOC膜、ガラス基板側からSiOC膜及びSiO膜の順に積層されるSiOC/SiO積層膜、ガラス基板側からTiO膜及びSiO膜の順に積層されるTiO/SiO積層膜、ガラス基板側からSnO膜及びSiO膜の順に積層されるSnO/SiO積層膜等が挙げられる。
中でも、アルカリバリア性の観点から、光学調整層にはケイ素が含まれることが好ましく、SiOC膜、SiOC/SiO積層膜、TiO/SiO積層膜及びSnO/SiO積層膜からなる群から選択される少なくとも1つの膜を有するのがより好ましく、SiOC膜を備えているのがさらに好ましい。
光学調整層全体に含まれるケイ素の量は、5~40mol%の範囲であるのが好ましく、10~33mol%がより好ましい。
光学調整層の厚みは、10~100nmであるのが好ましい。光学調整層の厚みが10nm以上であると、ガラス基板表面を一様に被覆することができ、100nm以下であると、光学調整層内で新たな光干渉が発生するのを抑制し、光学調整層として所望の効果を発揮できる。
光学調整層の厚みは、20nm以上であるのがより好ましく、25nm以上がさらに好ましく、30nm以上が特に好ましく、また、100nm以下であるのが好ましく、90nm以下がより好ましく、80nm以下がさらに好ましく、70nm以下が特に好ましい。
なお、光学調整層が異種材料の複層で構成される場合、光学調整層の「厚み」は、各層の厚みの合計で表される。
本発明において、膜の厚みは、500~1600nmであるのが好ましい。膜の厚みが500nm以上であると、膜中の結晶粒が十分に成長するので放射率を向上でき、また透過率も調整しやすい。また膜の厚みが1600nm以下であると、膜付き基材の厚みが厚くなり過ぎることがない。
(その他の層)
本発明の膜付き基材には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の層を備えていてもよい。
その他の層としては、オーバーコート層等が挙げられる。
(膜付き基材の物性)
本発明の膜付き基材は、標準A光源に基づく可視光透過率(Tva、以下「A光源透過率」ともいう。)が30%未満である。A光源透過率(Tva)が30%未満であると、十分な熱線吸収性を担保できる。
A光源透過率(Tva)は、28%以下であるのが好ましく、25%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。また、自動車や建築物に使われたときに望ましい外観にできるという観点から、A光源透過率(Tva)は、1%以上であるのが好ましく、2%以上がより好ましく、4%以上がさらに好ましい。
A光源透過率(Tva)は、市販の分光光度計(例えば、PerkinElmer社製「Lambda 1050」等)を用いて測定できる。
また、膜付き基材の日射透過率(Te)は30%未満であるのが好ましい。日射透過率(Te)が30%未満であると、十分な熱線吸収性を担保できる。
日射透過率(Te)は、28%以下であるのがより好ましく、25%以下がさらに好ましく、20%以下が特に好ましい。また、自動車や建築物に使われたときに望ましい外観にできるという観点から、日射透過率(Te)は、1%以上であるのが好ましく、2%以上がより好ましく、4%以上がさらに好ましい。
日射透過率(Te)は、市販の分光光度計(例えば、PerkinElmer社製「Lambda 1050」等)を用いて測定できる。
なお、A光源透過率及び日射透過率は、膜中の不純物濃度や膜を構成する各層の厚みを調整することで、所望の透過率となるよう調整できる。
また、膜付き基材は、膜側の表面の放射率(En)が0.25未満である。膜側表面の放射率(En)が0.25未満であると、優れた断熱性を得られる。
放射率(En)は、0.23以下であるのがより好ましく、0.20以下がさらに好ましく、0.17以下が特に好ましい。また、放射率は低いほど断熱性に優れるため放射率の下限は特に限定されないが、0.01以上であるのが好ましく、0.02以上がより好ましく、0.04以上がさらに好ましい。
放射率は、物体が熱放射で放出する光のエネルギー(放射輝度)を、同温の黒体が放出する光(黒体放射)のエネルギーを1としたときの比である。膜付き基材の放射率は、膜側表面を、JIS R3106(2019)に記載の方法で、市販の放射率計(例えば、Devices&Services社製「Emissometer model AE1」)を用いて測定できる。
放射率は、赤外線反射層の膜厚、キャリア密度、移動度、シート抵抗等を調整することにより所望の値となるようにより調整できる。
また、膜付き基材のシート抵抗の値は、30Ω/□(ohm/square)以下であるのが好ましい。放射率とシート抵抗は相関があり、シート抵抗が30Ω/□以下であると、電気が流れやすいため放射率が低くなり、よって優れた断熱性を得られる。
シート抵抗の値は、25Ω/□以下であるのがより好ましく、20Ω/□以下がさらに好ましい。また、シート抵抗の値が低いほど電気が流れやすくなり放射率が低くなるため、シート抵抗の値の下限は特に限定されないが、1Ω/□以上であるのが好ましく、2Ω/□以上がより好ましく、3Ω/□以上がさらに好ましい。
シート抵抗の値は、ホール効果測定により測定できる。
本発明の膜付き基材は、入射角10度でD65光源の光を入射したときのL表色系における反射色の色座標aが5~-20であるのが好ましく、bが10~-20であるのが好ましい。L表色系では、色彩と彩度をa及びbで表し、aが大きい(+a)と赤方向、aが小さい(-a)と緑方向、そして、bが大きい(+b)と黄方向、bが小さい(-b)と青方向を示す。
値は、-15以上であるのがより好ましく、-12以上がさらに好ましく、また、2以下であるのがより好ましく、0以下がさらに好ましい。b値は、-15以上であるのがより好ましく、-10以上がさらに好ましく、また、5以下であるのがより好ましく、2以下がさらに好ましい。
また、本発明の膜付き基材は、入射角10度でD65光源の光を入射したときのL表色系における反射色の色座標Lが42以下であるのが好ましい。Lは明度を表し、L値が42以下であると反射光の強度を抑え、望ましくない映り込みを抑えることができる。L値は、40以下であるのがより好ましく、35以下がさらに好ましい。また、下限値は特にないが、一般的な赤外線反射層の反射率を考えると、L値は20以上であるのが好ましく25以上がさらに好ましく、30以上が特に好ましい。
値、b値及びL値は、紫外可視分光高度計や色度計により測定でき、これらの計測器を用いて入射角10度でD65光源の光を照射したときの値を測定する。
本発明において、a、b値及びL値は、膜中の不純物濃度や膜を構成する各層の厚みを調整することで、所望の値となるよう調整できる。
また、膜付き基材の膜の移動度は、20cm/Vs以上であるのが好ましい。移動度が高いほど優れた電気伝導性を持ち、結果的に断熱性が向上する。移動度が20cm/Vs以上であると、優れた断熱性を得ることができる。
膜の移動度は、25cm/Vs以上であるのがより好ましく、27cm/Vs以上がさらに好ましく、30cm/Vs以上が特に好ましく、35cm/Vs以上が最も好ましい。また、移動度は高ければ高いほどよいため上限は特に限定されないが、100cm/Vs以下であるのが好ましく、90cm/Vs以下がより好ましく、80cm/Vs以下がさらに好ましい。
また、膜付き基材は、赤外線反射層の移動度が20cm/Vs以上であるのが好ましい。移動度が20cm/Vs以上であると、優れた断熱性を得ることができる。
赤外線反射層の移動度は、25cm/Vs以上であるのがより好ましく、27cm/Vs以上がさらに好ましく、30cm/Vs以上が特に好ましく、35cm/Vs以上が最も好ましい。また、移動度は高ければ高いほどよいため上限は特に限定されないが、100cm/Vs以下であるのが好ましく、90cm/Vs以下がより好ましく、80cm/Vs以下がさらに好ましい。
なお、膜付き基材及び赤外線反射層の移動度は、ホール効果測定により測定できる。
膜付き基材のキャリア密度は、1×1019/cm以上であるのが好ましい。キャリア密度とは、物質中の単位体積あたりの自由電子あるいは正孔の数のことをいう。膜付き基材のキャリア密度が1×1019/cm以上であると、優れた断熱性を得ることができる。
膜付き基材のキャリア密度は、2×1019/cm以上であるのがより好ましく、5×1019/cm以上がさらに好ましく、1×1020/cm以上が特に好ましい。また、キャリア密度は高ければ高いほどよいため上限は特に限定されないが、1×1022/cm以下であるのが好ましく、1×1021/cm以下がより好ましく、5×1020/cm以下がさらに好ましい。
また、膜付き基材は、赤外線反射層のキャリア密度が1×1019/cm以上であるのが好ましい。赤外線反射層のキャリア密度が1×1019/cm以上であると、優れた断熱性を得ることができる。
赤外線反射層のキャリア密度は、2×1019/cm以上であるのがより好ましく、5×1019/cm以上がさらに好ましく、1×1020/cm以上が特に好ましい。また、キャリア密度は高ければ高いほどよいため上限は特に限定されないが、1×1022/cm以下であるのが好ましく、1×1021/cm以下がより好ましく、5×1020/cm以下がさらに好ましい。
なお、膜付き基材及び赤外線反射層のキャリア密度は、ホール効果測定により測定できる。
また、膜付き基材は、ヘイズ(Haze)が10%以下であるの好ましい。ヘイズ(Haze)が10%以下であると、膜付き基材において白濁が視認されるのを抑制し、美観に優れた膜付き基材を得られる。
ヘイズ(Haze)は9%以下であるのがより好ましく、7%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。また、ヘイズ(Haze)は小さいほど好ましいため、下限は特に限定されない。
ヘイズ(Haze)は、市販の測定器(例えば、スガ試験機株式会社製ヘーズメーター「HZ-V3」等)を用いて測定できる。
(膜付き基材の製造方法)
次に、図3を参照して、本発明の膜付き基材の製造方法の一例について説明する。
なお、ここでは、一例として、図1に示した膜付き基材10を例に、その製造方法について説明する。
図3は、膜付き基材10の製造方法のフローの一例を概略的に示している。
図3に示したように、本発明の膜付き基材の製造方法は、
(a)ガラス基板の第1の面に、熱線吸収層を設置するステップ(ステップS1)と、
(b)熱線吸収層の上に、赤外線反射層を設置するステップ(ステップS2)と、
を有する。
(ステップS1)
まず、ガラス基板が準備される。前述のように、ガラス基板の種類は特に限られず、ソーダライムシリケート系の高透過ガラスであってもよい。
ステップS1では、ガラス基板の第1の面に、熱線吸収層を形成する。
熱線吸収層は、化学気相成膜(CVD)法、電子ビーム蒸層法、真空蒸着法、スパッタ法、およびスプレー法等、各種成膜方法を用いて形成できる。中でも、優れた熱線吸収性を得るためには、SbがSnサイトを置換し、結晶構造の中に取り込まれる必要があり、そのためには高温プロセスである必要があるため、熱CVD法で形成されるのが好ましい。さらに、大気圧CVD法で形成することができると、大掛かりな真空装置が不要となり、さらに生産性を高めることができる。
熱線吸収層は、上記したように、例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等、各種薄膜材料を用いて構成できる。
例えば、赤外線反射層をフッ素ドープ酸化スズ(FTO)で構成し、熱線吸収層をアンチモンドープ酸化スズ(ATO)で構成し、各層を熱CVD法によって成膜する場合を説明する。
熱線吸収層は、原料として、無機系または有機系のスズ化合物と、アンチモン化合物との混合物が使用される。
スズ化合物としては、モノブチルティントリクロライド(CSnCl)および四塩化スズ(SnCl)などが挙げられる。スズ化合物としては、特に有機系のスズ化合物が好ましい。スズ化合物として無機系のスズ化合物を使用した場合、結晶粒の成長速度が速く、表面の凹凸が激しくなりやすい。
アンチモン化合物としては、三塩化アンチモン(SbCl)および五塩化アンチモン(SbCl)などが挙げられる。アンチモン化合物としては、特に三塩化アンチモンが好ましい。例えば、三塩化アンチモンは、原料ガス中の水と激しく反応し、気相中で三酸化アンチモン(Sb)および五酸化アンチモン(Sb)の粒子クラスタを生成する。従って、それらの粒子クラスタを膜に含有させることにより、表面の凹凸の程度を制御できる。
熱線吸収層の成膜において、原料ガスは、予め混合してから、搬送されてもよい。あるいは、原料ガスは、被成膜対象であるガラス基板の表面上で混合してもよい。原料物質が液体の場合は、バブリング法や気化装置などを用いて、原料物質を気化させてガス状としてもよい。
原料ガス中のスズ化合物1molに対する水の量は、5~50molとすることが好ましい。
水の量が5mol未満であると、形成する膜の抵抗値が増大しやすく、結果としてアンチモンによる熱線吸収機能が低下しやすくなる。また、核生成の起点が少なくなり、結果として結晶粒が大きく成長しやすく、表面の凹凸が激しくなりやすい。一方、水の量が50mol超であると、水の量の増加にともない、原料ガス容量が増大し、原料ガスの流速が高まることにより、着膜効率が低下するおそれがある。また、核生成の起点が多くなり、結果として結晶粒が小さく成長しやすく、表面がフラットになりやすい。
原料ガスが酸素を含有する場合、原料ガス中のスズ化合物1molに対する酸素の量は、0mol超40mol以下とすることが好ましく、4~40molとすることがより好ましい。酸素の量が少な過ぎると、生成する膜の抵抗値が増大する場合があるので、4mol以上であるのがより好ましい。一方、酸素の量が40mol超であると、原料ガス容量が増大し、原料ガスの流速が高まることにより着膜効率が低下するおそれがある。
熱線吸収層を形成する際のガラス基板の温度は、500~650℃であるのが好ましい。
ガラスの温度が500℃未満であると、熱線吸収層の形成速度が低下することがある。また、原料ガスの分解により生成した前駆体は、ガラスおよび熱線吸収層の表面で反応する速度よりも、ガラスおよび熱線吸収層の表面を拡散する速度の方が大きくなる。その結果、より多くの前駆体がガラスおよび熱線吸収層の表面の凹凸に流れ込み、表面がフラットになる傾向にある。一方、ガラスの温度が650℃超であると、ガラスの粘性が低い状態で成膜が実施されるため、ガラスが室温まで降温される過程で、反りが生じるおそれがある。また前記前駆体が、ガラスおよび熱線吸収層の表面を拡散する速度よりも、ガラスおよび熱線吸収層の表面で反応する速度の方が大きくなる。その結果、ガラスおよび熱線吸収層表面の凹凸に前駆体があまり流れ込まなくなり、表面の凹凸が大きくなる傾向にある。
(ステップS2)
次に、熱線吸収層の上に、赤外線反射層を形成する。
赤外線反射層も熱線吸収層と同様に、例えば、化学気相成膜(CVD)法、電子ビーム蒸層法、真空蒸着法、スパッタ法、およびスプレー法等、各種成膜方法を用いて形成できる。中でも、優れた赤外線反射性を得るためには、FがOサイトを置換し、結晶構造の中に取り込まれる必要があり、そのためには高温プロセスである必要があるため、熱CVD法で形成されるのが好ましい。さらに、大気圧CVD法で形成することができると、大掛かりな真空装置が不要となり、さらに生産性を高めることができる。
赤外線反射層は、上記したように、例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等、各種薄膜材料を用いて構成できる。
赤外線反射層が、例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)またはアンチモンドープ酸化スズ(ATO)で構成される場合、赤外線反射層の表面の凹凸を大きくでき、色調を所定の範囲に調整しやすい。
赤外線反射層が、例えば、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)またはガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)で構成される場合、結晶配向が揃いやすく、表面がフラットになりやすい。
また、スズドープ酸化インジウム(ITO)は、赤外線を反射する機能が強く、100nm前後の膜厚帯で使用されることが多い。従って、赤外線反射層がスズドープ酸化インジウム(ITO)で構成された場合は、反射色の色調を所定の範囲に調整することが難しくなることがあり、結晶粒の成長が不十分になり、表面がフラットになりやすい。
例えば、赤外線反射層をフッ素ドープ酸化スズ層(FTO)で構成し、熱CVD法によって成膜する場合、原料として、無機系または有機系のスズ化合物と、フッ素化合物との混合物が使用される。
スズ化合物としては、上記したように、モノブチルティントリクロライド(CSnCl)および四塩化スズ(SnCl)などが挙げられる。スズ化合物としては、特に有機系のスズ化合物が好ましい。スズ化合物として、無機系のスズ化合物を使用した場合、結晶粒の成長速度が速く、表面の凹凸が激しくなりやすい。
フッ素化合物としては、フッ化水素およびトリフルオロ酢酸などが挙げられる。
赤外線反射層の成膜において、原料ガスは、予め混合してから、搬送されてもよい。あるいは、原料ガスは、被成膜対象(具体的に、熱線吸収層)の表面上で混合してもよい。原料物質が液体の場合は、バブリング法や気化装置などを用いて、原料物質を気化させてガス状としてもよい。
原料ガス中のスズ化合物1molに対する水の量は、5~50molとすることが好ましい。
水の量が5mol未満であると、形成する膜の抵抗値が増大しやすく、結果として赤外線反射機能が低下しやすくなる。また、核生成の起点が少なくなり、結果として結晶粒が大きく成長しやすく、表面の凹凸が激しくなりやすい。一方、水の量が50mol超であると、水の量の増加にともない、原料ガス容量が増大し、原料ガスの流速が高まることにより、着膜効率が低下するおそれがある。また、核生成の起点が多くなり、結果として結晶粒が小さく成長しやすく、表面がフラットになりやすい。
原料ガスが酸素を含有する場合、原料ガス中のスズ化合物1molに対する酸素の量は、0mol超40mol以下とすることが好ましく、4~40molとすることがより好ましい。酸素の量が4mol未満であると、生成する膜の抵抗値が増大する場合がある。一方、酸素の量が40mol超であると、原料ガス容量が増大し、原料ガスの流速が高まることにより着膜効率が低下するおそれがある。
赤外線反射層の成膜において、原料ガス中のスズ化合物1molに対するフッ素化合物の量は、0.1~1.2molとすることが好ましい。フッ素化合物の量が0.1mol未満である場合や1.2mol超である場合、形成する膜の抵抗値が増大しやすくなる。
赤外線反射層を形成する際の温度は、500~650℃であることが好ましい。
処理温度が500℃未満であると、赤外線反射層の形成速度が低下することがある。また、原料ガスの分解により生成した前駆体は、ガラスおよび赤外線反射層の表面で反応する速度よりも、ガラスおよび赤外線反射層の表面を拡散する速度の方が大きくなる。その結果、より多くの前駆体がガラスおよび赤外線反射層の表面の凹凸に流れ込み、表面がフラットになる傾向にある。一方、処理温度が650℃超であると、ガラスの粘性が低い状態で成膜が実施されるため、ガラスが室温まで降温される過程で、反りが生じるおそれがある。また前記前駆体が、ガラスおよび赤外線反射層の表面を拡散する速度よりも、ガラスおよび赤外線反射層の表面で反応する速度の方が大きくなる。その結果、ガラスおよび赤外線反射層表面の凹凸に前駆体があまり流れ込まなくなり、表面の凹凸が大きくなる傾向にある。
なお、ステップS1およびステップS2は、フロート設備でガラス基板を作製する過程で、オンライン法によって実施されてもよい。あるいは、オフライン法により、フロート法で製造されたガラス基板を再加熱して、成膜を実施してもよい。製造効率の観点から、ガラス基板の製造ライン上で熱CVD法によりステップS1およびステップS2を行い膜を形成するのが好ましい。
(その他のステップ)
本発明において、ガラス基板と熱線吸収層の間に光学調整層を設ける場合は、ステップS1の前にガラス基板の第1の面に光学調整層を配置する。
光学調整層も熱線吸収層や赤外線反射層と同様に、化学気相成膜(CVD)法、電子ビーム蒸層法、真空蒸着法、スパッタ法、化学メッキ法、湿式塗布法およびスプレー法等、各種成膜方法を用いて形成できる。ステップS1およびステップS2と同様の方法で行うのが好ましい。
光学調整層は、上記したように、例えば、SiOC、SiO、TiO、SnO等、各種薄膜材料を用いて構成できる。
また、光学調整層は、1層からなるものであってもよいし、2層以上を積層してもよい。
例えば、光学調整層が炭化酸化ケイ素(SiOC)層を含む場合、光学調整層は、熱CVD法によって成膜されてもよい。この場合、原料としては、例えば、モノシラン(SiH)、エチレン及び二酸化炭素を含む混合ガスを用いることができる。このような炭素含有ガスを用いた場合、膜状のケイ素化合物とともに、粒子状のケイ素化合物が形成しやすくなり、ヘイズ率を高めることができる。
原料ガスは、予め混合してからガラス基板の第1の面上に搬送してもよい。あるいは、原料ガスは、ガラス基板の第1の面上で混合してもよい。
また、例えば、光学調整層が酸化ケイ素(SiO)層を含む場合、原料としては、例えば、モノシラン(SiH)、テトラエトキシシラン、および酸素などの混合ガスを用いることができる。
また、例えば、光学調整層が酸化チタン(TiO)層を含む場合、原料としては、例えば、オルトチタン酸テトライソプロピル(TTIP)、四塩化チタン等が挙げられる。中でも、オルトチタン酸テトライソプロピル(TTIP)がより好ましい。
光学調整層を形成する際のガラス基板の温度は、500~900℃であることが好ましい。ガラス基板の温度が500℃未満あるいは900℃超であると、膜の形成速度が低下しやすくなる。
例えば、光学調整層としてSiOからなる層(以下、SiO層ともいう)をCVD法で成膜する方法について説明する。
CVD法において、例えば温度500~800℃に加熱されたガラス基板と気体原料とを反応させ、前記ガラス基板上にSiO層を形成することが好ましい。
ガラス基板の温度は、CVD法の反応速度を向上させる観点から500℃以上が好ましく、600℃以上がより好ましく、700℃以上がさらに好ましい。また、ガラス基板の温度は、ガラス軟化の観点から800℃以下がより好ましく、760℃以下がさらに好ましい。
気体原料はケイ素含有物質、酸化剤及び不飽和炭化水素を含むことが好ましい。
ケイ素含有物質としては、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)、ジクロロシラン(SiHCl)、三酸化シラン(SiHCl)等のシラン類、テトラメチルシラン((CHSi)等のアルキル化シラン、四フッ化ケイ素(SiF)、四塩化ケイ素(SiCl)等が挙げられ、シラン類が好ましく、モノシランがより好ましい。
酸化剤としては二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、酸素(O)、水蒸気(HO)等の酸素元素を含む化合物が挙げられ、二酸化炭素が好ましい。
不飽和炭化水素としてはエチレン系不飽和炭化水素(オレフィン)、アセチレン系不飽和炭化水素、芳香族化合物等が挙げられ、常温常圧で気体である化合物が好適である。
不飽和炭化水素としては、オレフィンが好ましく、炭素数2~4のオレフィンがより好ましく、エチレンがさらに好ましい。
気体原料の混合比を調節することで、SiO層におけるSiOの組成を調節できる。
具体的には、ケイ素含有物質に対する酸化剤の体積比は、8.5以上が好ましく、12以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。また、ケイ素含有物質に対する酸化剤の体積比は、50以下が好ましい。
ケイ素含有物質に対する不飽和炭化水素の体積比は、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましい。また、ケイ素含有物質に対する不飽和炭化水素の体積比は、3.5以下が好ましく、2.7以下がより好ましい。
SiOの組成は、上述の酸化剤と不飽和炭化水素とが相互に作用することで変化する。したがって、SiOの組成を好ましい範囲に調整するには、ケイ素含有物質に対する酸化剤の体積比及び不飽和炭化水素の体積比は、両方の組み合わせが重要であり、両方ともを上述の好ましい範囲とすることが好ましい。
SiO層の厚さは十分な被覆性の点から10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、25nm以上がさらに好ましい。また、SiO層による光の吸収を抑制する観点からは、厚さは90nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、70nm以下がさらに好ましい。SiO層の厚さは、原料の種類、原料ガス濃度、ガラスリボン又はガラス基板への原料ガスの吹き付け流速、基板温度、コーティングビーム構造由来の反応ガス滞留時間等により制御できる。
また、本発明においてオーバーコート層を設ける場合は、ステップS2の後に赤外線反射層の表面にオーバーコート層を配置する。
オーバーコート層は、例えば、湿式法により形成される。
この場合、まず、オーバーコート層用のコーティング溶液が調製される。
コーティング溶液は、金属酸化物の前駆体、有機溶媒、および水を含む。また、コーティング溶液には、粒子および/または固形物が添加されてもよい。粒子の組成は、金属酸化物の前駆体と同じであっても、異なっていてもよい。
次に、コーティング溶液が膜付き基材の赤外線反射層の上に塗布される。
塗布の方法は、特に限られず、スピンコート法などの一般的な手段が使用されてもよい。
次に、コーティング溶液が設置された膜付き基材が大気中で加熱処理される。
加熱処理の温度は、例えば、80~650℃の範囲である。また、加熱時間は、例えば、5分~360分の範囲である。
加熱処理は、熱風循環炉またはIRヒーター炉等、一般的な装置を用いて実施されてもよい。またUV硬化処理、またはマイクロ波処理等により、コーティング溶液から、オーバーコート層が形成されてもよい。
これにより、赤外線反射層の上に、オーバーコート層を形成することができる。
なお、上記加熱処理は、必ずしもこの段階で実施する必要はない。すなわち、別の段階で実施される加熱工程を利用して、コーティング溶液を加熱してもよい。
このような工程により、本発明の膜付き基材を製造することができる。
本発明の膜付き基材の製造方法には、さらに、ガラス基板を風冷強化あるいは化学強化する工程(強化工程)が含まれてもよい。この強化工程は、例えば、ステップS1の前や、膜付き基材を製造した後等、いかなる順番で実施されてもよい。
強化工程を実施することにより、ガラス基板、さらには得られる膜付き基材の強度を高めることができる。
また、ガラス基板に膜を配置した後などに、得られた膜付き基材に対して曲げ加工を実施してもよい。
また、本発明の膜付き基材と中間膜と外側ガラス板とをこの順に貼り合せて合わせガラスを得ることもできる。
この他にも各種変更が可能であることは、当業者には明らかである。
本発明によれば、不純物濃度や膜厚を調整することで所望の断熱性能と光透過性能を有する膜付き基材が得られる。よって、種々の合わせガラスを製造する場合であっても、中間層を共通化できるので、生産性が向上し、またコストの削減もできる。
本発明の膜付き基材は、例えば、車両の窓ガラス(フロントガラス、リアガラス、サイドガラス、ルーフガラス等)、建築物の窓ガラス等に使用できる。特に、本発明の膜付き基材と中間膜と外側ガラス板とをこの順に有する合わせガラスは、パノラマルーフに適している。
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下で作製した例について、例1~16は実施例であり、例17~20は比較例である。
(各層の厚みの測定)
膜付き基材を厚み方向に切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立製作所製「SU 70」)により観察した。
熱線吸収層や赤外線反射層の界面がSEM観察により確認できる場合は、SEM画像から直接各層の膜厚を調べた。界面に凹凸を有する場合は、最も低い谷と最も高い山の各水平ラインの中間ラインを目安としながら各層の膜厚を導出した。観察倍率は、低すぎると膜厚計測の精度が不十分になってしまう一方、高すぎると局所的な凹凸を見てしまい、各層の膜厚を正しく導出出来ない恐れがある為、適した範囲が存在する。よって、観察条件の目安として、電子銃1.5kV、ワーキングディスタンス2.4mm、倍率5万倍を採用した。
熱線吸収層と赤外線反射層の界面がSEM観察により確認できない場合は、SEM画像から熱線吸収層及び赤外線反射層の膜厚の和を調べた後、X線光電子分光法(XPS)による深さ方向の分析を用い、熱線吸収層及び赤外線反射層の膜厚の比を調べた。深さ方向分析は、真空度10-6PaのXPSチャンバー内でArスパッタを用いて膜をエッチングしながらXPS測定を行った。X線の照射面積は100μmφ、X線の照射角度は45deg.に固定した。本例における熱線吸収層は、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)膜であるので、XPSによる深さ方向分析により得られるSbのモル比がエッチング時間に対して増加し始める点(時間)と増加し終わり傾きがおおよそゼロになる点(時間)の中間点を熱線吸収層と赤外線反射層の界面と据えた。また、本例における光学調整層は、SiOC膜であるので、SnとSiのモル比が同じ値を示すクロスポイントを熱線吸収層と光学調整層の界面と据えた。この方法によれば、予め単層膜品で測定しておいた熱線吸収層と赤外線反射層のエッチングレートを参考にしながら、各層の膜厚を再現性高く導出可能である。各原子のモル比導出においては、ULVAC社製ソフトウェア PHI MULTIPACを用いて、X線ピーク強度から組成を計算した。XPS分析条件として、O1s、Si2p、Sn3d5、Sb3d3軌道の電子情報を参照したが、O1sはSb3d5のピーク出現位置と重なっている為、各原子のモル比の導出においては、原理に則りSb3d3ピーク強度の1.5倍をO1sのピーク強度より差し引くことで校正を行なった。
XPSは、ULVAC-PHI社製「PHI 5000 Versa Probe」を用いた。
(アンチモン(Sb)濃度の測定)
アンチモン濃度は、X線光電子分光測定(XPS)による深さ方向の分析を行い、SbとSnの強度比から調べた。XPSは、ULVAC-PHI社製「PHI 5000 Versa Probe」を用いた。XPSの分析方法は、各層厚みを評価する際と同様である。
(L、a、bの測定)
分光測色計(コニカミノルタ株式会社製「CM-2500d」)を用いて、入射角10度でD65光源の光を入射したときの膜付き基材の色度測定を実施した。
(シート抵抗値の測定)
膜付き基材を1cm角に切断し、Hall測定器(Nanometrics製「HL 5500 PC」)によりシート抵抗値を測定した。
(透過率の測定)
PerkinElmer社製「Lambda 1050」を用いて測定した透過スペクトルから、膜付き基材の標準A光源に基づく可視光透過率(Tva)及び日射透過率(Te)を測定した。TeはJIS R3106(2019)の定義に基づき計算した。Tvaは標準A光源の定義に基づき計算した。
(放射率の測定)
膜付き基材の赤外線反射層側の放射率を、JIS R3106(2019)に記載の方法で、Devices&Services社製「Emissometer model AE1」を用いて測定した。
(ヘイズ(Haze)の測定)
膜付き基材のヘイズ(Haze)は、スガ試験機株式会社製ヘーズメーター「HZ-V3」を用いて測定した。
(移動度の測定)
膜付き基材を1cm角に切断し、Hall測定器(Nanometrics製「HL 5500 PC」)により、膜付き基板において電気が流れる層(熱線吸収層及び赤外線反射層)の移動度を測定(Van der Pauw法)した。
(キャリア密度の測定)
膜付き基材を1cm角に切断し、Hall測定器(Nanometrics製「HL 5500 PC」)により、膜付き基板において電気が流れる層(熱線吸収層及び赤外線反射層)のシートキャリア密度(1/cm)を測定(Van der Pauw法)し、熱線吸収層及び赤外線反射層の膜厚和で除することで、膜付き基板において電気が流れる部分(熱線吸収層及び赤外線反射層)のキャリア密度(1/cm)を導出した。
(例1)
以下の方法により、膜付き基材を作製した。
まず、厚みが2.1mmのガラス基板(ソーダライムシリケートガラス:AGC株式会社製)を準備した。
ガラスリボンの温度が760℃となる最上流側に位置するコーティングビームから、気体原料としてモノシラン(SiH)0.364kg/時間、エチレン0.25kg/時間、COガス12.5kg/時間、窒素ガス1.0kg/時間を供給し、ガラスリボン上に膜厚が70nmのSiOC層を製膜した。
次に、SiOC層の上に熱線吸収層を形成した。熱線吸収層はアンチモンドープ酸化スズ(SnO:Sb、ATO)とし、熱CVD法により成膜した。原料ガスとして、モノブチルティントリクロライド(CSnCl、MBTC)、三塩化アンチモン(SbCl)、水、空気、塩化水素を使用し、キャリアガスとして窒素を使用した。熱線吸収層の目標厚みは、500nmとした。
次に、熱線吸収層の上に、赤外線反射層を形成した。赤外線反射層は、フッ素ドープされた酸化スズ層(SnO:F、FTO)とし、熱CVD法により成膜した。原料ガスとして、モノブチルティントリクロライド(CSnCl、MBTC)、水、空気、トリフルオロ酢酸(FTO)、硝酸を使用し、キャリアガスとして窒素を使用した。赤外線反射層の目標厚みは、300nmとした。
これにより、膜付き基材が得られた。
(例2~20)
例1と同様の方法により、表1に記載の層構成を有する膜付き基材を作製した。なお、アンチモン濃度はモノブチルティントリクロライド(MBTC)と、三塩化アンチモン(SbCl)の比率を調整することにより調整した。
各例について上記の測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 0007283529000002
表1の結果より、例1~16は放射率が低く耐熱性に優れ、かつ透過率も低いものであった。このことから、断熱性能と光遮蔽性能を両立できていることがわかった。
1 ガラス基板
1a 第1の面
1b 第2の面
2 膜
3 熱線吸収層
5 赤外線反射層
7 光学調整層
10、20 膜付き基材

Claims (20)

  1. ガラス基板と前記ガラス基板上に配置される積層膜とを備えた積層膜付き基材であって、
    前記ガラス基板は、標準A光源に基づく可視光透過率が84.6%以上であり、板厚が5mm以下であり、相互に対向する第1の面及び第2の面を有し、前記ガラス基板の前記第1の面に前記積層膜が設置され、前記積層膜は、前記ガラス基板側から順番に熱線吸収層と赤外線反射層を含み、
    前記熱線吸収層はアンチモンドープ酸化スズの膜を含み、
    前記積層膜付き基材の標準A光源に基づく可視光透過率が25%以下であり、前記積層膜付き基材の日射透過率が28%以下であり、かつ前記積層膜側表面の放射率が0.25未満である積層膜付き基材。
  2. 前記積層膜付き基材のシート抵抗値が30Ω/□以下である、請求項1に記載の積層膜付き基材。
  3. 前記積層膜のキャリア密度が1×1019/cm以上である、請求項1又は2に記載の積層膜付き基材。
  4. 前記積層膜の移動度が20cm/Vs以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層膜付き基材。
  5. 前記赤外線反射層が、フッ素ドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、ガリウムドープ酸化亜鉛及びアルミニウムドープ酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つのドープ型金属酸化物の膜を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層膜付き基材。
  6. 前記赤外線反射層がフッ素ドープ酸化スズ膜を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層膜付き基材。
  7. 前記赤外線反射層の厚みが100~400nmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層膜付き基材。
  8. 前記熱線吸収層に含まれるアンチモン濃度が5~20mol%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層膜付き基材。
  9. 前記熱線吸収層の厚みが300~700nmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層膜付き基材。
  10. 前記積層膜がさらに光学調整層を有し、前記光学調整層は、前記ガラス基板と前記熱線吸収層との間に配置される、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層膜付き基材。
  11. 前記光学調整層が、SiOC膜、SiOC/SiO積層膜、TiO/SiO積層膜及びSnO/SiO積層膜からなる群から選択される少なくとも1つの膜を備える、請求項10に記載の積層膜付き基材。
  12. 前記光学調整層がSiOC膜を備える、請求項10に記載の積層膜付き基材。
  13. 前記熱線吸収層と前記赤外線反射層の厚みの合計が500~1500nmである、請求項1~12のいずれか1項に記載の積層膜付き基材。
  14. 前記放射率が0.15未満である、請求項1~13のいずれか1項に記載の積層膜付き基材。
  15. 請求項1~14のいずれか1項に記載の積層膜付き基材の製造方法であって、
    前記積層膜を熱CVD法により形成する、積層膜付き基材の製造方法。
  16. 前記積層膜を前記ガラス基板の製造ライン上で前記熱CVD法により形成する、請求項15に記載の積層膜付き基材の製造方法。
  17. 請求項1~14のいずれか1項に記載の積層膜付き基材を有する車両用窓ガラス。
  18. 請求項1~14のいずれか1項に記載の積層膜付き基材と中間膜と外側ガラス板とをこの順に有する合わせガラス。
  19. 車両のルーフに用いる請求項18に記載の合わせガラス。
  20. 請求項18に記載の合わせガラスを有するパノラマルーフ。
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