JP2005324984A - 薄膜、薄膜付きガラス物品およびその製造方法 - Google Patents

薄膜、薄膜付きガラス物品およびその製造方法 Download PDF

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英将 吉田
Tsutomu Otani
強 大谷
Akira Fujisawa
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Abstract

【課題】高温に加熱したときにも金属イオンバリア性能を保持できる薄膜、その薄膜をガラス基板の表面に形成されたガラス物品およびそのガラス物品を効率よく、安定して製造するガラス物品の製造方法を提供する。
【解決手段】酸窒化珪素を主成分とし、厚さが35nm以上である薄膜で、なおかつ、薄膜が含有する成分が、珪素:20〜45原子%、窒素:20〜60原子%、酸素:5〜50原子%、水素:1〜20原子%、炭素:0〜10原子%の比率であって、屈折率が1.6〜1.9である薄膜が、530℃以上の歪点を有するガラス基板表面の少なくとも一方に形成されているガラス物品を、錫フロートバス内で、ガラスリボンの表面に原料ガスを供給して、ガラス物品を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜、薄膜付きガラス物品およびその製造方法に関する。
フロート法で製造されたソーダライムガラスは、大面積のガラス板を低コストで、安定して生産できることから多くの用途に使用されている。また、フロート法で製造されたソーダライムガラスは、Na+の金属イオンを含有している。一方、ソーダライムガラスを基板として、その表面に金属電極膜(Ag、Cu、Au等)を形成し、導電性を付与したガラス物品が、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の平面型ディスプレイに使用されている。
PDPは、大きな面積で直視型である壁掛けハイビジョンテレビ用表示装置として注目されているが、PDPの製造工程において、ガラス基板上に、金属電極膜を焼き付ける工程、誘電体層を形成する工程、隔壁を形成する工程、蛍光体を形成する工程等が含まれ、ガラス基板は500〜600℃の加熱を受ける。
Ag金属膜を形成されたソーダライムガラスが加熱された場合、Ag+イオンがガラス中に存在するNa+イオンとイオン交換して還元される。還元によって生成したAgコロイドがガラス基板を黄変させて、ディスプレイの品位を低下させる問題があった。この問題に対して、Ag+イオンがNa+イオンと接触しないように、酸化珪素(SiO2)や窒化珪素(SiN)からなる金属イオンバリア膜がガラス基板表面に形成されてきた。また、金属イオンバリア膜として、珪素、酸素、炭素および窒素を含有する薄膜を形成することが、特許文献1に記載されている。
特開2000−109342号公報
金属イオンバリア膜は、ソーダライムガラスをフロート法で製造する工程中のガラスリボンの表面上に、金属イオンバリア膜形成用原料ガスを供給して、ガラスリボン表面上で熱分解させて、薄膜状に固着させる化学気相法(CVD法)で成膜される。
PDP用に使用されるガラス物品においては、PDPの製造工程で受ける500〜600℃の加熱によって、ガラス基板が熱収縮し、ガラス物品を重ね合わせる場合に、ガラス物品上に形成されたパターンが位置ずれを起こす問題がある。ガラス基板の熱収縮を小さくし、そのばらつきを小さくするために、歪点の高いガラスとする必要がある。LCDにおいて使用される無アルカリガラス基板は、高い歪点を有するが、熱膨張係数がPDP用ガラス物品に使用されるガラス基板としての要求に合致しない。高い歪点を有し、熱膨張係数がPDP用ガラス物品のガラス基板としての要求に合致するガラスが特許文献2に開示されている。
特開平10−152339号公報。
かかる高い歪点を有するガラスをフロート法で製造する場合には、通常のソーダライムガラスをフロート法で製造する場合に比して、ガラスリボンの温度が高くなるために、従来知られた金属イオンバリア膜では、金属イオンの拡散を十分に防止することができない。
さらに、金属イオンバリア膜として窒化珪素からなる薄膜を形成する場合には、窒化珪素膜の収縮応力による薄膜の剥離を防止するために、ガラスリボンの冷却速度を厳しく管理する必要があり、さらに、窒化珪素薄膜は高い屈折率を有するために、ガラス物品の光反射率が高くなるという問題もあった。
本発明の目的は、高温に加熱したときにも金属イオンバリア性能を保持できる薄膜、その薄膜をガラス基板の表面に形成されたガラス物品およびそのガラス物品を効率よく、安定して製造するガラス物品の製造方法を提供することにある。
前述した目的を達成するため、本発明は、酸窒化珪素を主成分とし、厚さが35nm以上である薄膜であって、なおかつ、該薄膜が含有する、珪素(Si)、窒素(N)、酸素(O)、水素(H)および炭素(C)の比率が、
Si:20〜45原子%
N :20〜60原子%
O : 5〜50原子%
H : 1〜20原子%
C : 0〜10原子%
である薄膜、および、屈折率が1.6〜1.9である前記薄膜を提供する。
また、本発明は、ガラス基板表面の少なくとも一方に、前記薄膜が形成されているガラス物品、および、前記ガラス基板が530℃以上の歪点を有する前記のガラス物品を提供する。
さらに、本発明は、ガラス製造工程におけるフロートバス内で、ガラスリボンの表面に原料ガスを供給して、前記薄膜を成膜し、前記のガラス物品を製造するガラス物品の製造方法、および、前記原料ガスが、シラン、アンモニアおよび酸化原料を含有する前記のガラス物品の製造方法を提供する。
本発明は、金属イオンバリア膜を構成する成分を前記の比率とした薄膜としているので、薄膜が高温に加熱されても金属イオンバリア性能が維持され、また薄膜の屈折率をガラスの屈折率に近付けているので、光反射率が低減できる。
また、本発明の金属イオンバリア膜を、高い歪点を有するガラス基板の表面に形成すると、PDP用ガラス物品のごとく、製造工程において高い温度で加熱する必要がある用途において、ガラスの熱収縮による問題が低減されて、より大きな効果を発揮することができる。
さらに、フロート法によるガラス製造工程におけるフロートバス内で、ガラスリボンの表面に原料ガスを供給して、前記金属イオンバリア膜を形成する方法によって前記ガラス物品を製造する場合には、原料ガスを熱分解して酸窒化珪素を生成するために必要な熱エネルギーがガラスリボンから供給されるために、エネルギーの節減ができ、また、高温での加熱が可能になって、前記金属イオンバリア膜を高速で成膜でき、さらに、大面積の前記ガラス物品が得られる。
またさらに、前記原料ガスが、シラン、アンモニアおよび酸化原料を含有する場合には、前記金属イオンバリア膜の成膜速度を管理でき、安定した成膜ができる。
以下、本発明による好適な実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のガラス物品の一例を示す概念図である。
ガラス物品1は、ガラス基板2とガラス基板2の表面上に形成された、本発明の金属イオンバリア膜3とで構成されている。
ディスプレイ用ガラス物品の場合、ガラス基板2は、高い歪点を有するガラス基板が好ましく使用される。高い歪点を有するガラス基板2を構成する成分の比率は、以下のように例示され、溶融温度が1560℃以下で、作業温度が1140℃以下であり、溶融炉壁面近くのガラスが失透し難いので、フロート法によるガラス製造に適している。得られたガラスは耐水性に優れ、歪点が530℃以上と高いので、高温に加熱されたときの熱収縮が小さくて、しかも熱膨張係数が小さいので、PDP用ガラス物品のガラス基板として好適である。
SiO2 56 〜68重量%
Al23 0.2〜 5重量%
ZrO2 0 〜 6.4重量%
Li2O 0 〜 0.5重量%
Na2O 0.2〜 8重量%
2O 2.5〜14重量%
MgO 1 〜 7重量%
CaO 2 〜12重量%
SrO 0 〜12重量%
ZnO 0 〜 2重量%
Na2O+K2O 7 〜12重量%
MgO+CaO 7 〜15重量%
SrO+BaO 4 〜18重量%
MgO+CaO+SrO+BaO 15 〜27重量%
SO3+Sb23 0 〜 1重量%
金属イオンバリア膜3は、酸窒化珪素を主成分とする薄膜であり、酸窒化珪素を基本骨格とすることから、硬質で透明度が高く可視光波長域における光吸収が少なく、ディスプレイ用途に好適である。酸窒化珪素を構成する成分は、次の比率であることが好ましい。
珪素 20〜45原子%
窒素 20〜60原子%
酸素 5〜50原子%
珪素の比率が20原子%未満の場合は、形成された薄膜が緻密な薄膜とならず、金属イオンバリア性能が低下する。一方、45原子%を超えると、形成された薄膜の可視光波長域における光吸収が大きくなって、得られるガラス物品の透明性が低下する。
酸素の比率が5原子%未満の場合は、形成された薄膜の屈折率が高くなって、得られるガラス物品の光反射率が大きくなる。一方、50原子%を超えると、形成された薄膜の金属イオンバリア性能が低下する。
金属イオンバリア膜3は、水素を1〜20原子%含有する必要がある。酸窒化珪素を主成分とする薄膜に、上記比率の範囲の水素成分を含有させることによって、前記薄膜の張力を低下させる効果があり、なおかつ、薄膜の金属イオンバリア性を保持することができるのである。また、金属イオンバリア膜3は、炭素を含有することができる。酸窒化珪素を主成分とする薄膜が含有する炭素成分の比率を変化させることによって、薄膜の可視光波長域における光吸収を変化させることができる。薄膜の金属イオンバリア性能を保持するためには、炭素成分の比率を0〜10原子%にする必要がある。
ここで、「主成分とする」とは、慣用に従って、当該成分を含有する比率が50重量%以上であることをいい、当該成分を含有する比率は、70重量%以上であることが好ましい。
金属イオンバリア膜3の厚さによって、金属イオンバリア性能と可視光波長域における光吸収が変化する。金属イオンバリア性能を発揮するためには、酸窒化珪素を主成分とする薄膜の厚さは35nm以上である必要がある。一方可視光波長域における光吸収を抑えて、光線透過率を確保するためには、前記薄膜の厚さは300nm以下とするのが好ましい。
ディスプレイ用ガラス物品において、ガラス物品の表面における光反射率が大きいと、ディスプレイの表示像が見にくくなるため、ガラス表面の光反射率を小さくするのが好ましい。ガラス基板とその表面に形成された薄膜との屈折率の差が大きいと、光反射率が大きくなるために、金属イオンバリア膜3の屈折率は、ガラス基板のそれに近い方が良く、屈折率が1.6〜1.9であることが好ましい。
図2は、本発明のガラス物品の製造方法、すなわち、フロート法によるガラス製造工程におけるフロートバス内で、ガラスリボンの表面に原料ガスを供給して、金属イオンバリア膜を形成する(以後、オンラインCVD法)で使用する装置の一例を示す側断面概念図である。
ソーダライムガラス材料が、溶融炉(フロート窯)11からフロートバス12内に流れ出し、ガラスリボン10となって溶融錫浴15上を移動して半固形となった後、ローラ17により引き上げられて徐冷炉13へと送り込まれる。徐冷炉13で固形化したガラスリボンは、図示を省略する切断装置により所定の大きさのガラス板へと切断される。
溶融錫浴15上にある、高温状態のガラスリボン10の表面から所定距離を隔てて、所定個数のコータ16(図示した形態では、3つのコータ16a、16b、16c)がフロートバス12内に配置される。これらのコータから原料ガスが供給されて、ガラスリボン10上に連続的に薄膜形成材料が供給され、ガラスリボン表面に金属イオンバリア膜3が形成される。
前記金属イオンバリア膜3は、前記の方法に限らず、スパッタリング法、イオンプレーティング法あるいは真空蒸着法などのいわゆる物理蒸着法や、スプレー法、あるいは、化学気相法(CVD法)など熱分解酸化反応を伴う化学蒸着法によって、前記ガラス基板上に形成される。これらの金属イオンバリア膜3の形成方法において、酸窒化珪素を主成分とする薄膜を形成する場合は、熱分解反応を伴う化学蒸着法、特に、常圧熱CVD法が好ましい。場合によっては、ガラス基板近傍に設置された触媒体と原料ガスの接触分解反応を利用した、触媒CVD法を利用することもできる。
本発明における、酸窒化珪素を主成分とする薄膜を形成するための原料ガスは、シラン、アンモニアおよび酸化原料を含有することが好ましい。前記原料ガスの材料は、気体状、液体状および固体状いずれでもよいが、原料ガスとしてガラス基板表面に供給されるときには、気体状であることが好ましい。
前記シランには、Sin2n+2で表される水素化珪素のみならず、有機珪素化合物も含まれる。例えば、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si26)、四塩化珪素(SiCl4)、ジクロルシラン(SiH2Cl2)もしくは三塩化シラン(SiHCl3)などの水素化珪素の他、テトラメチルシラン((CH34Si)等のアルキルタイプのシラン、または、四フッ化珪素(SiF4)等が使用できる。中でも、特にモノシランを使用することが好ましい。
モノシランは、アンモニアと反応し易いので、酸窒化珪素を主成分とする薄膜を形成するときに、副生成物が生成しにくく、そして、前記薄膜中に含有される水素や炭素の比率を調節・管理しやすい特徴がある。
アンモニアは、安定して大量に入手できる、不純物含有率の小さい、ガス状窒素原料であり、CVD法の原料ガスの成分として好適である。アンモニアはシランと反応して、前記薄膜に含有される水素の供給源ともなる。
酸素原料は、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素を原料ガス中に含有させるとよい。酸窒化珪素を主成分とする薄膜に含有される酸素の比率によって、前記薄膜の屈折率が変化し、前記薄膜の収縮応力が変化してガラス基板との付着力に影響を与えるので、前記薄膜に含有される比率を管理することが必要である。
前記原料ガスにアセチレン、エチレンなどの不飽和炭化水素を含有させて、シランとアンモニアの反応を抑制させる作用をさせることができる。これら不飽和炭化水素は、シランとアンモニアとの反応を抑制することができて、原料ガスが原料ガス供給のための配管中やコーター部で粉末化することを防止できるので、原料ガス中に少量含有させることは好ましい。しかしながら、前記薄膜に含有される炭素成分の供給源となることから、前記薄膜に含有される炭素成分の比率を勘案した、不飽和炭化水素の含有率とする必要がある。
オンラインCVD法における原料ガスに含有されるシランの濃度は、0.2モル%以上であることが好ましい。シランの前記濃度が0.2モル%未満の場合、ガラスリボンの表面温度を800℃にしても、酸窒化珪素を主成分とする薄膜の成膜速度が、8nm/秒以下まで低下してしまい、ガラスの製造速度に追随できなくなって、ガラスの製造能力を低下させる処置が必要になったり、ガラス基板の厚さに制限を受けることになる。
一方、シランの前記濃度は2.4モル%以下であることが好ましい。シランの前記濃度が2.4モル%を超えると、原料ガスがガラスリボンの表面に到達する前に熱分解反応が進行して粉末状となり、前記薄膜にピンホール等の不均一の原因となったり、前記薄膜の成膜速度を低下させる原因となることがある。また、原料ガス供給管中で爆発する危険もある。シランの前記濃度は1.4モル%以下であることがより好ましい。
前記原料ガスに含有されるシランに対するアンモニアの比率(アンモニアのモル/シランのモル)は、5〜400が好ましい。前記比率が400を超えると、原料ガスに含有されるシランの濃度が低下して、好適範囲を維持できなくなるとともに、アンモニアがシランの分解を抑制して、前記薄膜の成膜速度が低下することがある。
前記原料ガスに含有されるシランに対する酸素の比率(酸素のモル/シランのモル)は、0.01〜2.00が好ましい。前記比率が0.01より小さい場合、前記薄膜に含有される酸素の比率が低下して、前記薄膜が窒化珪素の薄膜に近似し、ガラス物品表面の光反射率が大きくなったり、前記薄膜とガラス基板との付着力が低下したりする。一方、前記比率が2.00を超えると、酸化珪素の薄膜に近似して、高温における金属イオンバリア性能が維持できなくなる。
オンラインCVD法以外の方法で、前記薄膜を形成する場合、シランの前記濃度およびシランに対するアンモニアの前記比率は、前記範囲に制限されることはなく、シランの前記濃度および前記比率による前記の影響を参考にして、前記薄膜を形成する方法に適合した前記濃度および前記比率を選定すればよい。
前記原料ガスを生成する原料は、シラン、アンモニアおよび酸素原料、ならびに、必要によって含有させる低級炭化水素、さらに必要によって、窒素、ヘリウムまたは水素等の気体状希釈剤を事前に混合して混合気体とし、ガラスリボンに向けて供給されるのが好ましい。混合が十分に行われないと、混合気体の組成のばらつきのために、形成された前記薄膜に組成ムラや膜厚ムラが発生しやすくなって、好ましくない。しかし、前記混合気体を構成する材料は、定量的に供給できて、均一な混合気体が構成できる限りにおいて、液体または固体であっても構わない。
前記原料ガスを供給する前に、ガラス基板あるいはガラスリボンの表面にアンモニアを供給すると前記薄膜の成膜速度を高めることができる。表面に吸着されたアンモニアの熱分解物が、供給されてくるシランと急速に反応して、酸窒化珪素の生成が促進されるためであろうと推測される。アンモニアの熱分解をさらに促進させるために、ガラス基板あるいはガラスリボンの表面の近傍に触媒を配置してもよい。
前記オンラインCVD法は、ガラスリボンの表面温度が500〜850℃の範囲にあるときに、前記原料ガスを供給して前記薄膜の成膜が進められるのが好ましい。ガラスリボンの表面温度が650〜830℃の範囲にあるときに、前記成膜が進められると、さらに好ましい。前記薄膜の成膜速度が高められるだけではなく、ガラスリボンの表面寸法の自由度が大きくなって、形成された前記薄膜の張力が緩和され、ガラス基板との付着力が向上した機械的強度の大きい薄膜が形成される。
図3は、本発明のガラス物品における金属イオンバリア膜3の上に、透明導電膜4を積層して製造した、本発明のガラス物品を応用した積層基板の一例を示す概念図である。透明導電膜4を積層されたガラス物品(積層基板)は、ディスプレイ用途や光電変換装置用途に好適に使用されるものである。前記透明導電膜4は、金属酸化物膜であり、酸化インジウム、錫や亜鉛をドープした酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、あるいは、フッ素やアンチモンをドープした酸化錫等の、金属酸化物の薄膜が好ましく使用される。前記金属酸化物膜は、図2に示す装置を用いたオンラインCVD法によって、コータ16aで金属イオンバリア膜3を形成した後、引き続いてコータ16bから金属酸化物形成用の原料ガスを供給して、金属イオンバリア膜3上に金属酸化物膜を形成するとよい。この方法によって製造された積層基板は、品質が安定しており、大面積の積層基板が、低コストで得られる利点がある。
前記積層基板を構成する透明導電層4は、一層に限らず、複数層の積層体としてもよく、積層体の場合には、同一組成の層を複数層としたり、異なる組成の層を積層してもよい。
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明する。ただし、以下の実施例に限定するものではない。
先ず、本実施例において、評価に使用する測定方法を説明する。
(金属イオンバリア膜に含有される成分の比率)
X線励起光電子分光分析およびラザフォード後方散乱分析による。
(金属イオンバリア膜の屈折率)
エリプソメーターによる。
(金属イオンバリア膜の金属イオンバリア機能)
金属イオンバリア膜上に銀ペーストを塗布し、600℃で1時間焼成処理する。そして、ガラス基板側から目視で着色を判定する。
(薄膜側表面付近の金属成分の存在状態)
光電子分光法(XPS)の深さ方向分析による。
(実施例1)
フロート法で製造した、歪点が580℃であり、厚さ2.8mmの高歪点ガラスを一辺が10cmの正方形に切断し、このガラス板を常圧CVD法をおこなう炉内に固定し、約800℃に加熱した。加熱された前記ガラス板の表面に、モノシラン、アンモニア、酸素、および、キャリアガスである窒素からなる原料ガスを供給し、厚さ60nmの薄膜を前記ガラス板の表面上に形成して、表面に薄膜を形成されたガラス物品を製造した。原料ガスに含有されるモノシランの濃度を0.1モル%、モノシランに対するアンモニアおよび酸素の比率を、それぞれ、20および0.1とした。
形成された薄膜の成分は、珪素39原子%、窒素31原子%、酸素21原子%および水素9原子%であり、水素成分を含む、酸窒化珪素を主成分とする薄膜であった。前記薄膜の屈折率は1.77であった。前記薄膜の表面抵抗値は1010Ω/□(スクエア)以上であった。前記薄膜の金属イオンバリア機能を評価した結果、着色はなく、十分な金属イオンバリア性能が確認された。
図4は、実施例1から得られたガラス物品の、薄膜側表面付近の金属成分の存在状態を光電子分光法(XPS)の深さ方向分析で測定した結果である。Ag原子またはAgイオンは、薄膜の表面から膜の半分を超えた深さまでは存在するが、それよりガラス基板表面側には検出されず、ガラス中にも存在せず、十分な金属イオンバリア性能が裏付けられた。
(実施例2)
原料ガスにエチレンを0.4モル%含有させた以外は実施例1と同様にして、表面に薄膜を形成されたガラス物品を製造した。
形成された薄膜の成分は、珪素35原子%、窒素31原子%、酸素17原子%、水素11原子%および炭素6原子%であり、水素成分と炭素成分を含む、酸窒化珪素を主成分とする薄膜であった。前記薄膜の屈折率は1.80であった。前記薄膜の表面抵抗値は1010Ω/□(スクエア)以上であった。前記薄膜の金属イオンバリア機能を評価した結果、着色はなく、十分な金属イオンバリア性能が確認された。
(比較例1)
前記薄膜の厚さを30nmとした以外は実施例1と同様にして、表面に薄膜を形成されたガラス物品を製造した。
形成された薄膜の成分は、珪素34原子%、窒素32原子%、酸素24原子%および水素10原子%であり、水素成分を含む、酸窒化珪素を主成分とする薄膜であった。前記薄膜の屈折率は1.75であった。前記薄膜の表面抵抗値は1010Ω/□(スクエア)以上であった。前記薄膜の金属イオンバリア機能を評価した結果、黄色に着色しており、金属イオンバリア性能が劣ることが確認された。
(比較例2)
前記原料ガスにアンモニアを含有させないで、該原料ガス中のモノシランの濃度を0.1モル%、モノシランに対する酸素の比率を4.0とする以外は、実施例1と同様にして、表面に厚さ35nmの薄膜を形成されたガラス物品を製造した。
形成された薄膜の成分は、珪素28原子%、酸素68原子%、水素4原子%であり、水素成分を含む、酸化珪素を主成分とする薄膜であった。前記薄膜の屈折率は1.46であった。前記薄膜の表面抵抗値は1010Ω/□(スクエア)以上であった。前記薄膜の金属イオンバリア機能を評価した結果、黄色に着色しており、金属イオンバリア性能が劣ることが確認された。
図5は、比較例2から得られたガラス物品の、薄膜側表面付近の金属成分の存在状態を光電子分光法(XPS)の深さ方向分析で測定した結果である。Ag原子またはAgイオンは、薄膜の表面から膜の半分を超えた深さまで減少するが、それよりガラス基板表面側にも検出され、ガラス中にも存在している。金属イオンバリア性能が劣ることが裏付けられた。
Figure 2005324984
表1は、前記実施例および比較例に使用したガラス板の成分比率を示している。
Figure 2005324984
表2は、前記実施例および比較例に使用した、薄膜の成膜条件、および、得られた薄膜の成分比率および特性を示している。
実施例1および実施例2から得られた薄膜は、十分な金属イオンバリア性能を有しているが、比較例1から得られた薄膜は、実施例1から得られた薄膜とほぼ同じ組成であるにも拘わらず、その厚さが不足するために、金属イオンバリア効果が不十分であり、比較例2から得られた薄膜は、酸窒化珪素を主成分としないために金属イオンバリア性能が不十分であって、表2から本発明の効果が明確に読み取れる。
本発明の薄膜を形成する基板材料はガラスに限定されず、例えば金属板の表面に薄膜が形成されて、さらにその上に形成される他の金属化合物との金属イオンバリア膜として利用する等、金属イオンバリア性能を必要とするあらゆる用途に利用できる。また、本発明のガラス物品は、ディスプレイ用途に限らず、太陽電池用透明導電性基板や金属ヒーターや金属電極を形成する自動車用や建築用等の高機能ガラスとして利用できる。
図1は、本発明のガラス物品の一例を示す概念図である。 図2は、オンラインCVD法で使用する装置の一例を示す側断面概念図である。 図3は、本発明のガラス物品における金属イオンバリア膜の上に、透明導電膜を積層して製造した、本発明のガラス物品を応用した積層基板の一例を示す概念図である。 図4は、実施例1から得られたガラス物品の、薄膜側表面付近の金属成分の存在状態を光電子分光法(XPS)の深さ方向分析で測定した結果である。 図5は、比較例2から得られたガラス物品の、薄膜側表面付近の金属成分の存在状態を光電子分光法(XPS)の深さ方向分析で測定した結果である。
符号の説明
1 ガラス物品
2 ガラス基板
3 金属イオンバリア膜
4 透明導電膜
10 ガラスリボン
11 溶融炉
12 フロートバス
13 徐冷炉
15 溶融錫浴
16(16a、16b、16c) コータ
17 ローラ

Claims (6)

  1. 酸窒化珪素を主成分とし、厚さが35nm以上である薄膜であって、なおかつ、該薄膜が含有する、珪素(Si)、窒素(N)、酸素(O)、水素(H)および炭素(C)の比率が、
    Si:20〜45原子%
    N :20〜60原子%
    O : 5〜50原子%
    H : 1〜20原子%
    C : 0〜10原子%
    であることを特徴とする薄膜。
  2. 屈折率が1.6〜1.9であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜。
  3. ガラス基板表面の少なくとも一方に、請求項1または2に記載の薄膜が形成されていることを特徴とするガラス物品。
  4. 前記ガラス基板が530℃以上の歪点を有することを特徴とする請求項3に記載のガラス物品。
  5. ガラス製造工程におけるフロートバス内で、ガラスリボンの表面に原料ガスを供給して、請求項1に記載の薄膜を成膜し、請求項3または4に記載のガラス物品を製造することを特徴とするガラス物品の製造方法。
  6. 前記原料ガスが、シラン、アンモニアおよび酸化原料を含有することを特徴とする請求項5に記載のガラス物品の製造方法。
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