JP2004142148A - 樹脂被覆金属板の製造方法及び樹脂被覆金属板 - Google Patents
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Abstract
【課題】工程の簡略化を図ることによって、金属板の表面をポリオレフィン被覆した樹脂被覆金属板を効率良く製造する方法およびその方法によって製造された樹脂被覆金属板を提供することにある。
【解決手段】第1発明の製造方法は、少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物を第1押出機3で加熱溶融させて変性ポリオレフィンを合成し、該第1押出機3に付属する単層形成用Tダイ11から、変性ポリオレフィンR1を溶融状態のまま押し出し、Tダイ11の出側に配設された圧着手段6を用いて、金属板M1の表面を変性ポリオレフィン層からなる単一樹脂で被覆することによって、樹脂被覆金属板M2を製造する。
【選択図】 図1
【解決手段】第1発明の製造方法は、少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物を第1押出機3で加熱溶融させて変性ポリオレフィンを合成し、該第1押出機3に付属する単層形成用Tダイ11から、変性ポリオレフィンR1を溶融状態のまま押し出し、Tダイ11の出側に配設された圧着手段6を用いて、金属板M1の表面を変性ポリオレフィン層からなる単一樹脂で被覆することによって、樹脂被覆金属板M2を製造する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、金属板の表面をポリオレフィン被覆した樹脂被覆金属板を効率良く製造する方法およびその方法によって製造された樹脂被覆金属板に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼板などの金属板に、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂を被覆する方法が、例えば特許文献1および2などに開示されている。これらの方法は、ポリオレフィン樹脂と金属板との接着性に優れた変性ポリオレフィン樹脂からなる多層フィルムを鋼板に被覆する方法である。従って、樹脂をフィルム化する工程が別途必要となり、高コストであり、効率が良くなかった。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−99543号公報
【特許文献2】
特開2000−246835号公報
【0004】
また、特許文献3などでは、フィルム化を行わず、ポリオレフィンと変性ポリオレフィンを溶融させてTダイから押し出し、直接、溶融した樹脂を金属板に被覆する方法が記載されている。かかる方法は、フィルム化の工程を必要としない利点があるが、変性ポリオレフィンを事前に合成する工程が別途必要であり、依然として、効率が良くなかった。
【0005】
【特許文献3】
特開平6−8368号公報
【0006】
さらに、特許文献4には、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、不飽和カルボン酸と、有機過酸化物の混合物を、フィルムなどのポリオレフィン成形体と金属などの他の部品との間に介在させて、加熱圧着して、ポリオレフィンと金属などを接着する方法が開示されている。この方法では、ポリオレフィンと金属の積層体を製造する際に、予め、ポリオレフィンフィルムなどの成形体を製造する必要があり、工程が煩雑となって、高コストであり、効率的ではなかった。また、接着層の成分に用いているエチレン−酢酸ビニル共重合体は、金属との接着性については十分確保できるものの、ポリオレフィンに比べて高価であり、また、ポリオレフィンより融点が低く、接着層が溶融するなどの問題が生じやすいため、耐熱性が要求される分野においては適用することができない。
【0007】
【特許文献4】
特公昭51−21419号公報
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、工程の簡略化を図ることによって、金属板の表面をポリオレフィン被覆した樹脂被覆金属板を効率良く製造する方法およびその方法によって製造された樹脂被覆金属板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に従う樹脂被覆金属板の製造方法は、少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物を第1押出機で加熱溶融させて変性ポリオレフィンを合成し、該第1押出機に付属する単層形成用Tダイから、変性ポリオレフィンを溶融状態のまま押し出し、Tダイの出側に配設された圧着手段を用いて、金属板の表面を変性ポリオレフィン層からなる単一樹脂で被覆することにある(第1発明)。
【0010】
本発明に従う樹脂被覆金属板の他の製造方法は、第1押出機で少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物を加熱溶融させて変性ポリオレフィンを合成すると同時に、第2押出機でポリオレフィンを加熱溶融させ、両押出機に付属する単一の複層形成用Tダイから、ポリオレフィンと変性ポリオレフィンのそれぞれが分離した溶融状態のまま、変性ポリオレフィンが金属板の表面に接するように押し出し、Tダイの出側に配設された圧着手段を用いて、金属板の表面をポリオレフィン層と変性ポリオレフィン層の少なくとも二層からなる複層樹脂で被覆することにある(第2発明)
【0011】
第1および第2発明とも、第1押出機中での変性ポリオレフィンの合成は、130〜350℃の範囲の温度で行うことが好ましく、より好ましくは180〜300℃の範囲である。130℃未満だとポリオレフィンが溶融しにくくなるとともに、変性反応も進行しにくくなるからであり、一方、350℃超えだと、樹脂の分解が起こりやすくなるからである。
【0012】
また、変性ポリオレフィンを合成する際の変性効率を向上させる必要がある場合には、前記混合物は、ポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類に、ラジカル開始剤を加えたものであることが好ましい。
【0013】
さらに、変性ポリオレフィンを合成する際の変性効率をより一層向上させる必要がある場合には、第1押出機に、ポリオレフィン、および不飽和カルボン酸類またはこれとラジカル開始剤とを予め溶解させておいた有機溶媒を供給することによって変性ポリオレフィンを合成されることがより好適である。
【0014】
ポリオレフィンは第1押出機の原料投入口から供給し、不飽和カルボン酸類またはこれとラジカル開始剤とを予め溶解させておいた有機溶媒は第1押出機の原料投入口と樹脂吐出側先端までの間に設けた副供給口から供給することが好ましい。
【0015】
さらにまた、変性ポリオレフィンの合成に用いられる第1押出機として、排気手段を具える単軸もしくは2軸押出機を用いれば、排気手段を通じて、未反応の不飽和カルボン酸類および/または未反応のラジカル開始剤を効果的に除去しながら変性ポリオレフィンを合成することができる。
【0016】
なお、不飽和カルボン酸類またはこれとラジカル開始剤とを予め溶解させておいた有機溶媒を用いれば、未反応の不飽和カルボン酸類および/または未反応のラジカル開始剤をより一層効果的に除去することができる。
【0017】
金属板としては、例えば表面をSn,Cr,ZnおよびNiから選ばれる少なくとも1種を含有するめっき皮膜で被覆しためっき鋼板、または該めっき鋼板の表面を、例えば金属水和酸化物からなる化成皮膜で被覆した表面処理鋼板を用いることが、変性ポリオレフィン樹脂との密着性に優れる点で好ましいが、これら以外にも、アルミニウム板、アルミニウム合金板、ステンレス板およびこれらの金属板の表面をめっきや化成処理した表面処理金属板を用いてもよい。
【0018】
また、樹脂と金属板との密着性をより高める必要がある場合には、金属板の表面を樹脂被覆するに先立って、金属板を予め、80℃以上300℃未満で加熱することが好ましく、より好ましくは120〜280℃、さらに好ましくは150〜260℃である。
【0019】
加えて、第1押出機に供給される変性ポリオレフィンの原料としては、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンを用いることが好ましく、特に、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物を用いることが最適である。
【0020】
また、第2押出機に供給されるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0021】
そして、本発明である第1および第2発明の方法を用いれば、耐食性および密着性に優れた樹脂被覆金属板を効率良く製造することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関し、より詳細に説明する。
第2発明の第2押出機に供給されるポリオレフィンとしては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンと30モル%以下、好ましくは10モル%以下のエチレンを共重合したブロックもしくはランダム共重合体、またはこれらに1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数4以上のαオレフィンを共重合したブロックもしくはランダム共重合ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン類、さらには、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン−ブテン共重合ゴム(EBR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、またはこれらのポリオレフィンを2種以上混合した混合物、などが挙げられる。
【0023】
これらの中でも、樹脂被覆金属板の加工性の点から、10モル%以下のエチレンもしくはαオレフィンをプロピレンと共重合したブロックまたはランダム共重合ポリプロピレンと、直鎖低密度ポリエチレンが好ましい。
【0024】
ポリオレフィンとして用いられる樹脂の分子量は、特に制限されないが、金属板に被覆する際の製膜性や耐食性などの点から、ホモまたは共重合ポリプロピレンの場合には、メルトフローレートが、30g/10min(230℃、5kg荷重下)〜0.1g/10min(230℃、5kg荷重下)、より好ましくは、20g/10min(230℃、5kg荷重下)、0.5g/10min(230℃、5kg荷重下)の範囲であり、また、ポリエチレン系樹脂の場合には、30g/10min(190℃、5kg荷重下)〜0.05g/10min(190℃、5kg荷重下)、より好ましくは、20g/10min(190℃、5kg荷重下)〜0.3g/10min(190℃、5kg荷重下)の範囲である。メルトフローレートが、上記範囲よりも小さいと、分子量が大きくなるため製膜性が劣り、上記範囲よりも大きいと、分子量が小さくなるため耐食性が劣る傾向があるからである。
【0025】
また、第1および第2発明の第1押出機に供給されるポリオレフィン、すなわち、変性ポリオレフィンの原料に用いられるポリオレフィンは、第2押出機に供給されるポリオレフィンの場合と同様、上述した全ての樹脂から選択して用いることができる。
【0026】
なかでも、第1および第2発明の第1押出機に供給されるポリオレフィン、すなわち、変性ポリオレフィンの原料に用いられるポリオレフィンとしては、ポリプロピレンとポリエチレンの混合物を用いることが特に好適である。
【0027】
その理由は、一般にポリプロピレン類は、変性反応を行うと、その副反応として、3級ラジカルの分解により、分子量が低下する傾向を示し、一方、ポリエチレン類は、2級ラジカルのカップリングによる架橋反応により、分子量が増加する傾向を示すため、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物を用いれば、変性反応時に樹脂の溶融粘度を安定させやすくなるからである。
【0028】
変性ポリオレフィンの原料として、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物を用いる場合、その混合割合は、用いる樹脂の流動性によって適宜変化させれば良いが、一般的には、ポリエチレン:ポリプロピレン=1:9〜9:1、好ましくは、3:7〜7:3の範囲である。
【0029】
変性ポリオレフィンの原料に用いられるポリオレフィンのメルトフローレートも特に制限されないが、ポリプロピレン樹脂の場合には、前記した変性工程における分解反応を考慮して、好ましくは、10g/10min(230℃、5kg荷重下)〜0.01g/10min(230℃、5kg荷重下)、より好ましくは、5g/10min(230℃、5kg荷重下)〜0.01g/10min(230℃、5kg荷重下)の範囲である比較的高分子量のものが良く、また、ポリエチレン系樹脂の場合には、前記した変性工程における架橋反応を考慮して、30g/10min(190℃、5kg荷重下)〜0.5g/10min(190℃、5kg荷重下)、より好ましくは、30g/10min(190℃、5kg荷重下)〜1g/10min(190℃、5kg荷重下)の範囲の比較的低分子量のものが良い。
【0030】
本発明で用いる不飽和カルボン酸類には、不飽和カルボン酸類とその誘導体が含まれる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、エンド−ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などの不飽和モノあるいはジカルボン酸類、またはその誘導体、例えば、酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等が挙げられる。
【0031】
誘導体の具体例としては、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水エンディック酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、特に、マレイン酸、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレートまたはこれらの混合物が好ましい。
【0033】
不飽和カルボン酸類の添加量は、特に制限されないが、変性ポリオレフィンの原料として用いるポリオレフィンに対し、通常、0.1〜30重量%の範囲であり、好ましくは0.2〜10重量%の範囲である。この範囲よりも添加量が少ないと、変性量が少なくなり金属板との密着性が劣る傾向があるからであり、一方、この範囲よりも添加量が多いと、未反応物が樹脂被覆金属板中に残存し易くなり、樹脂被覆金属板の耐蝕性を低下させる恐れがあるからである。
【0034】
本発明で用いられるラジカル開始剤は、通常のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化アセチル、t−ブチルパーオキシ安息香酸、過酸化ジクミル、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキシン、α、α‘−ビス(t−ブチルフェノキシm−イソプロピル)ベンゼンなどの過酸化物や、アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、過酸化ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキシン、α、α‘−ビス(t−ブチルフエノキシm−イソプロピル)ベンゼンなどが特に好適である。
【0036】
ラジカル開始剤の添加量は、特に制限されないが、0.01〜5重量%の範囲、好ましくは0.02〜2重量%の範囲である。ラジカル開始剤の添加量が、この範囲よりも少ないと、変性反応の進行が進みにくく、一方、この範囲より多いと、前述した3級ラジカルの分解や、2級ラジカルのカップリングによる架橋反応などの副反応が起り易くなるため好ましくない。
【0037】
図1は、第1発明の製造方法に用いた代表的な樹脂被覆金属板の製造装置の概略を示したものである。
【0038】
図1に示す樹脂被覆金属板の製造装置1は、金属板M1を連続的に供給する金属板供給装置2と、金属板M1の表面を変性ポリオレフィン層からなる単一樹脂で被覆するため、変性ポリオレフィンを合成するとともに、合成した変性ポリオレフィンR1を溶融状態で押し出す第1押出機3とで主に構成されている。
【0039】
金属板供給装置2は、長尺状の金属板M1を供給する供給ロール4と、樹脂被覆した後の樹脂被覆金属板M2を巻き取る巻取りロール5と、これらの間に配設された圧着手段6、図1では1対の圧着ローラー6a,6bとを主に具えており、図1では、供給ロール4と圧着手段6との間に位置し、金属板M1を加熱するための加熱装置7と、圧着ロール6a,6bの温度を独立に制御するためのロール温調装置8をさらに具えている。
【0040】
第1押出機3は、図1では、シリンダー9を中心とする要部のみを概念的に示してあり、シリンダー9の後端側に配設された原料投入口10と、シリンダー9の先端に取り付けられた単層形成用Tダイ11とを具えている。
【0041】
そして、第1発明に従う樹脂被覆金属板の製造方法は、少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物を第1押出機3の原料投入口10からシリンダー9内に供給し、これらの混合物を加熱溶融させて変性ポリオレフィンを合成し、次いで、第1押出機3に付属する単層形成用Tダイ11から、変性ポリオレフィンR1を溶融状態のまま押し出し、Tダイ11の出側に配設された圧着手段6を用いて、金属板M1の表面を変性ポリオレフィン層からなる単一樹脂で被覆することによって、樹脂被覆金属板M2を製造することができる。
【0042】
また、図2は、第2発明の製造方法に用いた樹脂被覆金属板の製造装置の一例を示したものである。
【0043】
図2に示す樹脂被覆金属板の製造装置は、基本的には図1に示す製造装置1と同じであり、構成上の主な相違点としては、金属板M1の表面を、ポリオレフィン層と変性ポリオレフィン層の二層からなる複層樹脂で被覆するため、押出機として、第1押出機3および第2押出機12を用いる点、および両押出機3、12に付属する単一の複層形成用Tダイ13を用いる点である。
【0044】
そして、第2発明に従う樹脂被覆金属板の製造方法は、第1押出機3で少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物を加熱溶融させて変性ポリオレフィンを合成すると同時に、第2押出機12でポリオレフィンを加熱溶融させ、両押出機3、12に付属する単一の複層形成用Tダイ13から、ポリオレフィンR2と変性ポリオレフィンR1のそれぞれが分離した溶融状態のまま、変性ポリオレフィンR1が金属板M1の表面に接するように押し出し、Tダイ13の出側に配設された圧着手段6を用いて、金属板M1の表面をポリオレフィン層と変性ポリオレフィン層の二層からなる複層樹脂で被覆することによって、樹脂被覆金属板M2を製造することができる。
【0045】
第2発明においては、さらに、別途1台以上の押出機を用意し、これらを第1、第2押出機とともに複層形成用Tダイに配置して、三層以上の複層樹脂で被覆することによって、前記同様にして、樹脂被服金属板を製造することができる。
【0046】
このように、第1および第2発明の方法はいずれも、金属板との接着性に優れる変性ポリオレフィンを合成しながら、少なくとも変性ポリオレフィン樹脂を金属板に被覆する方法であるため、従来のように、別途フィルムを製膜する工程や、別途変性ポリオレフィンを合成する工程を必要とせず、この結果、工程の簡略化が図れ、低コストで効率良く樹脂被覆金属板M2の製造が可能となる。
【0047】
また、第1および第2発明とも、変性ポリオレフィンを合成する工程では、ラジカル開始剤を必要に応じて用いればよいが、ラジカル開始剤を用いた方が変性効率の点で好ましい。
【0048】
また、不飽和カルボン酸類をポリオレフィンと反応させる方法としては、予め、少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物、特に好ましくは、ポリオレフィン、不飽和カルボン酸類およびラジカル開始剤かからなる混合物を、均一に混合した後、図1に示すように、押出機の原料供給口10から投入する方法や、図2および図3に示すように、ポリオレフィンのみを押出機の原料供給口10から投入し、不飽和カルボン酸類、または不飽和カルボン酸類とラジカル開始剤の混合物を、第1押出機3のシリンダー9の途中に設けた副供給口14から供給する方法なども用いることができる。
【0049】
また、好ましくは、シリンダーの先端側(バレル後部)に、排気手段、例えば、図1に示すように、トラップ室を15介して真空ポンプ16に接続されたベント口17を設け、シリンダー9内で変性ポリオレフィンを合成する際に真空ポンプ16でシリンダー9内に存在するガスを排出する排気手段を設ける構成にすれば、シリンダー9内に存在する未反応の不飽和カルボン酸類や未反応のラジカル開始剤を効果的に除去することができ、その結果として、樹脂被覆金属板M2における、樹脂層と金属板との密着性の向上や、耐食性の向上が図れる点で好ましい。
【0050】
特に、変性ポリオレフィンの好適な合成方法としては、図3に示すように、ポリオレフィンのみを第1押出機3の原料供給口10から投入し、不飽和カルボン酸類、または不飽和カルボン酸類とラジカル開始剤の混合物を、有機溶剤に予め溶解したものを原料タンク18に貯蔵し、第1押出機3のシリンダー9の途中に設けた副供給口14から、例えば、原料タンク18と接続した送液ポンプ19(真空ポンプ)などに作用によって、液注入ノズル20などを通じてシリンダー9内に供給し、シリンダーの先端側(バレル後部)に設けたベント口17から、未反応の不飽和カルボン酸類や未反応のラジカル開始剤を有機溶媒と共に除去する方法が挙げられる。
【0051】
このように有機溶媒を用いると、混練段階でのポリオレフィンの溶融粘度が低下する為、変性効率が増加し、未反応の不飽和カルボン酸類や未反応のラジカル開始剤の除去効率も増加するので、樹脂被覆金属板における、樹脂層と金属板との密着性の向上や耐食性の向上が図られる。
【0052】
なお、前記で用いる有機溶媒としては、特に制限されるものではないが、好ましくは、不飽和カルボン酸類を溶解し、かつ、不飽和カルボン酸類や、ラジカル開始剤と反応しにくく、さらには、沸点が50〜250℃の範囲であり、変性反応の工程でベント口から容易に排気し易いものが好ましく、このような有機溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンなどが挙げられる。
【0053】
本発明において、不飽和カルボン酸類の変性量は、特に制限されないが、ポリオレフィンに対して0.01〜30重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.05〜10重量%の範囲であり、最も好ましくは、0.1〜5重量%の範囲である。この範囲よりも変性量が低いと金属板との密着性が劣り、この範囲よりも変性量が多いと、変性ポリオレフィンが黄色く着色し易くなる為、樹脂被覆金属板を無色で用いる場合や所望の色に着色して用いる場合には、いずれも色調の点で好ましくない。
【0054】
本発明で用いられる金属板は、特に限定されるものではなく、目的に応じて、いかなる金属板を用いても良い。好ましい金属板としては、例えば表面をSn,Cr,ZnおよびNiから選ばれる少なくとも1種を含有するめっき皮膜で被覆しためっき鋼板、または該めっき鋼板の表面を、例えば金属水和酸化物からなる化成皮膜で被覆した表面処理鋼板を用いることが、変性ポリオレフィン樹脂との密着性に優れる点で好ましいが、これら以外にも、アルミニウム板、アルミニウム合金板、ステンレス板およびこれらの金属板の表面をめっきや化成処理した表面処理金属板を用いてもよい。これらは、樹脂との密着性に優れる点で好ましい。
【0055】
また、金属板の表面を樹脂被覆するに先立って、金属板を予め、80℃以上300℃未満で加熱することが好ましく、より好ましくは120〜280℃、さらに好ましくは150〜260℃である。このように金属板を予め加熱することで、金属板との密着性がより強固となる。
【0056】
さらには、得られた樹脂被覆金属板を適当な温度や速度で冷却または、再加熱することもできる。適当な速度で冷却することにより、被覆樹脂の結晶性が制御され、加工性、耐熱性などの改善が可能となり、また、再加熱すると、被覆するときに発生した残留応力が緩和され、後加工の際に、熱収縮などの問題を低減させることができる。
【0057】
加えて、圧着手段(例えば圧着ロール)も予め加熱しておくことが好ましく、この場合、圧着手段の温度は、金属板の温度よりも50℃以上低く設定することが樹脂が圧着ロール等に巻き付きにくくなる点で好ましい。
【0058】
本発明において、被覆樹脂の厚みは、単一樹脂および複層樹脂で被覆する場合とも、特に制限されない。目的に応じて、種々の厚みを用いることができる。例えば、被覆樹脂の厚みは、総厚で、缶などの容器用に用いる場合は、好ましくは、5μm〜200μmの範囲、さらに好ましくは、10μm〜150μmの範囲である。また、家電等の分野で用いる場合は、好ましくは、20μm〜1000μmの範囲、さらに好ましくは、25μm〜300μmである。
【0059】
また、ポリオレフィンと変性ポリオレフィンを複層で被覆する場合、それぞれの厚みは特に制限されないが、好ましくは、変性ポリオレフィンの厚みが1〜50μmの範囲、さらに好ましくは2〜30μmの範囲とし、残りをポリオレフィン層とする事が好ましい。変性ポリオレフィン層の厚みがこの範囲より薄いと、密着性が低下する傾向にあり、この範囲より厚いとコストの点で好ましくないからである。
【0060】
本発明(第1および第2発明)の製造方法においては、その目的を損なわない範囲で、被覆樹脂中に、ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機添加剤、有機添加剤、各種顔料、各種酸化防止剤、各種相溶化剤などを添加しても良い。
【0061】
ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、塩ビ、ポリカーボネート、ウレタン、各種ゴムやエラストマーなどを添加することができ、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂のビーズなどを添加することができ、また、無機添加剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維などの各種金属繊維、酸化チタン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどを添加することができ、有機添加剤としては、アラミド繊維などを添加することができる。
【0062】
また、図1〜3に示す第1押出機3はいずれも2軸押出機であり、図2に示す第2押出機は単軸押出機である場合を示したが、両押出機とも、特に限定はせず、単軸または2軸押出機のいずれを用いてもよい。
そして、本発明で製造した樹脂被覆金属板を胴体ならびに地蓋および/または天蓋に用いて缶を作製することができる。
【0063】
次に、本発明の上記樹脂被覆金属板を用い、缶体の内面側を樹脂被覆面が面とし、外面側は塗装あるいは印刷焼き付け、または外面も同様に樹脂被覆を施した後、製缶加工を行う。このとき、内外面とも樹脂を被覆する場合は、同時に樹脂被覆することが好ましく、また、外面塗装の場合には、その焼き付け温度を140〜190℃とすることが好ましい。
【0064】
缶が溶接缶である場合には、胴体の両端に樹脂被覆の未被覆部分を設け、かかる部分を電気抵抗溶接するため、その後、溶接部に皮膜を形成するような補修を施す必要がある。
【0065】
かかる補修の方法としては、ポリオレフィン系またポリエステル系樹脂テープ、好ましくはポリオレフィン系樹脂テープを用い、接着剤を介して又は熱融着によって溶接部に樹脂皮膜を形成するか、または、ポリエステル系もしくはエポキシ系粉体塗料によって塗膜を形成することが好ましい。また、ポリオレフィン系テープを用いる場合は、テープに変性ポリオレフィンなどの接着層を有するテープを用いる事がより好ましい。
【0066】
また、18L缶や天板固着式ペール缶では、手環をプロジェクション溶接にて接合し、さらに、天板取り外し式ペール缶では、吊り手の取り付けのためにイヤーをプロジェクション溶接にて接合するが、これらの接合のときに、接合部およびその周辺に位置する缶内面の樹脂被覆面が溶接熱によって劣化し、ピンホールが発生する傾向があるため、これらの部分についても、上述した補修方法を適用することが好ましい。
【0067】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0068】
【実施例】
以下実施例により本発明を詳しく説明する。
(実施例1)
ポリオレフィンとしてポリプロピレン(サンアロマー製PB370A,ブロックコポリマー、メルトフローレート=1.3g/10min(230℃、5kg荷重下))を用い、不飽和カルボン酸類として無水マレイン酸を用い、ポリプロピレンと0.5重量%の無水マレイン酸及び0.1重量%のラジカル開始剤(α、α‘−ビス(t−プチルフェノキシm−イソプロピル)ベンゼン、商品名:日本油脂製パーブチルP)をヘンシェルミキサーで十分に混合した後、真空ベント装置、リップ幅300mmの単層形成用Tダイが付属した第1押出機を2軸押出機(日本製鋼所製TEX30)とし、第1押出機における、シリンダー温度200℃、処理量10kg/hで溶融混練した。溶融混練しながら、付属するTダイ(温度200℃)から溶融樹脂を下方に向かって押し出して流下させ、シリコーンゴムで被覆したロールとクロームメッキ処理した金属ロールとの異種ロールの組合せからなる、一対の圧着ロール(いずれのロールも温度は、80℃に制御)を用いて、予め210℃に加熱した、厚み0.32mm,幅200mmのTFS(ティンフリースチール;極低炭素鋼両面をクロム酸処理(金属クロム量:120mg/m2,クロム水和酸化物量:クロム換算で20mg/m2被覆)したもの)に、10m/minのスピードでTFSの片面に被覆、冷却した。実施例1では、図1に示す製造装置を用いた。
【0069】
(実施例2)
ポリプロピレンのみを押出機の供給口から投入し、無水マレイン酸とラジカル開始剤を、ヘキサンに10%の濃度で溶解して、送液ポンプで、押出機のシリンダー途中の副供給口から供給した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂被覆金属板を製造した。実施例2では、図3に示す製造装置を用いた。
【0070】
(実施例3)
第2押出機として単軸押出機(日本製鋼所製P40−25AB)を用い、この第2押出機でポリプロピレン(サンアロマー製PM854X,ブロックコポリマー、メルトフローレート=20g/10min(230℃、5kg荷重下))のみを200℃で溶融混練(処理量8kg/h)し、同時に、第1押出機(2軸押出機)で、実施例2と同様の方法で、変性ポリプロピレンの合成を行いながら(処理量2kg/h)、両押出機に付属する単一の二層形成用Tダイ(温度200℃)から、変性ポリオレフィン層がTFSに接する様に、ポリプロピレン層と変性ポリプロピレン層の二層からなる複層樹脂をTFSの片面に被覆した。実施例3では、図2に示す製造装置を用いた。
【0071】
(実施例4)
ポリプロピレンとして、ホモポリプロピレン(サンアロマー製PM802A、メルトフローレート=20g/10min(230℃、5kg荷重下))を用いた以外は、実施例2と同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0072】
(実施例5)
ポリプロピレンとして、ランダムポリプロピレン(サンアロマー製PH943B、メルトフローレート=21g/10min(230℃、5kg荷重下))を用いた以外は、実施例2と同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0073】
(実施例6)
ポリオレフィンとして、直鎖低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン製ジェイレックスAM93NA,メルトフローレート=30g/10min(190℃、5kg荷重下))を用い、第1押出機のシリンダー温度を180℃とした以外は、実施例2と同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0074】
(実施例7)
ポリプロピレンの変わりに、ポリプロピレン(サンアロマー製PB370A,ブロックコポリマー、メルトフローレート=1.3g/10min(230℃、5kg荷重下))と直鎖低密度ポリエチレン〈日本ポリオレフィン製ジェイレックスAM93NA,メルトフローレート=30g/10min(190℃、5kg荷重下)〉の等量混合物を用いた以外は、実施例2と同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0075】
(実施例8)
第2押出機(単軸押出機)で、直鎖低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン製ジェイレックスAF481B,メルトフローレート=2.0g/10min(190℃、5kg荷重下))を180℃で溶融混練し、第1押出機(2軸押出機)で直鎖低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン製ジェイレックスAM93NA,メルトフローレート=30g/10min(190℃、5kg荷重下))の変性反応を行った以外は、実施例3と同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0076】
(実施例9)
第2押出機(単軸押出機)で、直鎖低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン製ジェイレックスAF481B,メルトフローレート=2.0g/10min(190℃、5kg荷重下))を180℃で溶融混練し、第1押出機(2軸押出機)で直鎖低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン製ジェイレックスAM93NA,メルトフローレート=30g/10min(190℃、5kg荷重下))とポリプロピレン(サンアロマー製PB370A,ブロックコポリマー、メルトフローレート=1.3g/10min(230℃、5kg荷重下))の等量混合物の変性反応を行った以外は、実施例3と同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0077】
(実施例10)
実施例1において、排気手段(真空ベント)を用いなかった以外は、同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0078】
(実施例11)
実施例1において、無水マレイン酸の代わりに、グリシジルメタクリレートを用いた以外は、同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0079】
(実施例12)
実施例6において、押出機の温度を150℃とした以外は、同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0080】
(実施例13)
実施例2において、ラジカル開始剤を用いなかった以外は、同様の方法で、樹脂被覆金属板を試作した。
【0081】
(実施例14)
金属板として、厚み0.35mm、幅200mmのすず系めっき鋼板(低炭素鋼表面に、ニッケル層(付着量40mg/m2)、鉄−錫−ニッケル合金層(付着量200mg/m2)、すず層(付着量300mg/m2),金属クロム層(付着量10mg/m2)、クロム水和酸化物層(付着量10mg/m2)を順次積層したもの)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で樹脂被覆金属板を製造した。
【0082】
(実施例15)
金属板として、厚み0.3mm、幅200mmの亜鉛めっき鋼板(低炭素鋼表面に、亜鉛を電気めっきした後(亜鉛付着量30g/m2)クロメート層を設けたもの)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で樹脂被覆金属板を製造した。
【0083】
(比較例1)
実施例1において、不飽和カルボン酸類及びラジカル開始剤を使用しなかった以外は、同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0084】
(比較例2)
ポリプロピレン(サンアロマー製PB370A,ブロックコポリマー、メルトフローレート=1.3g/10min(230℃、5kg荷重下))に0.5重量%の無水マレイン酸と0.1重量%のラジカル開始剤(α、α‘−ビス(t−ブチルフェノキシm−イソプロピル)ベンゼン、商品名:日本油脂製パーブチルP)をヘンシェルミキサーで十分に混合した後、排気手段(真空ベント)の付属していない2軸押出機(日本製鋼所製TEX30)で処理量10kg/h,温度200℃で溶融混練し、ペレット化した。得られた変性ポリプロピレンペレットを、Tダイが付属する真空べントの付属していない2軸押出機(日本製鋼所製TEX30)で処理量10kg/h,温度200℃で溶融混練しながら、実施例1と同様の方法で、TFSの片面に被覆して樹脂被覆金属板を試作した。
【0085】
(試験方法)
上記で試作された各樹脂被覆金属板における、被覆樹脂の変性量および被覆樹脂の膜厚、ならびに第1押出機における残留モノマー量およびメルトフローレートを以下に示す方法によって測定するとともに、金属板に対する樹脂層の密着性および樹脂被覆金属板の耐食性を以下に示す方法によって評価した。これらの結果については表1に示す。
【0086】
1.被覆樹脂の変性量の測定
金属板から被覆樹脂を0.5g採取し、熱キシレン100mlに溶解した後、アセトン100ml中に再沈殿させて未反応モノマーを除去した。沈殿物をろ過後、100℃で1晩真空乾燥した後、熱プレスでフィルムにしてIRスペクトルを測定した。変性量は、COMPALLOY’90、p182−183を参考に、下記式により算出した。
【0087】
記
ポリプロピレンの変性量(mass%)=0.32×1780cm−1の吸光度/1165cm−1の吸光度ポリエチレンの変性量(mass%)=3.5×1780cm−1の吸光度/712cm−1の吸光度
【0088】
2.被覆樹脂の膜厚の測定
エポキシ樹脂に埋め込んだ樹脂被覆金属の断面を研磨した後、光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察して膜厚を測定した。
【0089】
3.残留モノマー量の測定
IRで測定した精製前の不飽和カルボン酸類の量から、IRで測定した精製後の変性量を差し引いた値を残留モノマー量とした。
【0090】
4.メルトフローレートの測定
ポリプロピレンは、JIS K6921−2に準じて測定し、また、ポリエチレンおよび、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物は、JIS K6922−2に準じて測定した。
【0091】
5.金属板に対する樹脂層の密着性評価
樹脂被覆金属板を50mm角に切断した後、カッターで5mm幅に「#」形状の切れ目を入れた。「#」形状の中心部が凸となるようにエリクセン押出機で5mmの押出加工を行った。凸部頂点からピンセットで被覆樹脂を強制剥離させ、下記基準により密着性を5段階評価した。
【0092】
記
◎: 凸部頂点付近で被覆樹脂が破損した場合
○: 凸部スロープ付近で被覆樹脂が破損した場合
△: 平面部で被覆樹脂が破損した場合
×: 凸部および平面部で被覆樹脂が破損することなく剥離した場合
××:押出加工前から被覆樹脂が剥離した場合
【0093】
6.耐食性の評価
樹脂被覆金属板を50mmφに切断した後、エリクセン押出機で5mmだけ押出加工を行った。その後、界面活性剤(ジョンソン製Jクリーン)に50℃で1ヶ月浸漬し、下記基準により耐食性を5段階で評価した。
【0094】
記
◎: 錆が全く認められない場合
○: 凸部のみでわずかな錆が認められた場合
△: 凸部のみで錆が認められた場合
×: 凸部および平面部の双方で錆が認められた場合
××:押出加工前から被覆樹脂が剥離した場合
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示す評価結果から、実施例はいずれも、比較例1および2に比べて、樹脂層と金属板との密着性が同等以上でかつ耐食性が優れている。
【0097】
特に、実施例10と比較例2の比較から、実施例10のように、変性ポリオレフィンを合成しながら樹脂被覆を行う方法は、比較例2のように、別途で変性ポリオレフィンを合成し、再度加熱溶融して金属板への被覆を行う方法に比ベて、工程が簡略化されている利点以外にも、樹脂劣化(メルトフローレートの増加)が少なく、密着性や耐食性に優れていることが判る。
【0098】
また、実施例10と実施例1の比較から、本発明において、変性ポリオレフィンを合成する際に、排気手段(真空ベント)を使用することで、残留モノマーが低減され、耐食性がより一層向上することが判る。
【0099】
さらには、実施例1と実施例2の比較から、変性剤(不飽和カルボン酸類)とラジカル開始剤を溶媒に溶かして供給することで、更なる変性効率の増加と残留モノマーの低減が可能となり、密着性がより一層向上することが判る。
【0100】
さらには、実施例2と実施例7の比較から、変性ポリオレフィンの原料として、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物を用いることで、変性工程における溶融粘度の変化を抑制できる効果が生じ、安定した製造が可能であった。
【0101】
【発明の効果】
以上のように、本発明の製造方法を用いることで、従来よりも、簡略化された工程で樹脂被覆金属板を効率良く製造することが可能となる。
【0102】
さらに、第1押出機での変性ポリオレフィンの合成の際に排気手段によってシリンダー内を排気すれば、残留モノマーが少なくなるため、密着性と耐蝕性の両方に優れた樹脂被覆金属板を得ることが可能となる。
【0103】
本発明で得られる樹脂被覆金属板は、工程が簡略なため安価であり、また、密着性や耐食性も良好な為、例えば、18L缶やベール缶などの容器用材料として、また、家電や自動車などの外板や部品として、さらには、建材分野における、内装材、外装材、パネル等として使用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1発明に従う単一樹脂被覆金属板の製造方法に用いた製造装置の概略図である。
【図2】第2発明に従う複層樹脂被覆金属板の製造方法に用いた製造装置の概略図である。
【図3】第1発明に従う単一樹脂被覆金属板の製造方法に用いた他の製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 樹脂被覆金属板の製造装置
2 金属板供給装置
3 第1押出機
4 供給ロール
5 巻取りロール
6 圧着手段
6a,6b 圧着ローラー
7 加熱装置
8 ロール温調装置
9 シリンダー
10 原料投入口
11 単層形成用Tダイ
12 第2押出機
13 複層形成用Tダイ
14 副供給口
15 トラップ室
16 真空ポンプ
17ベント口
18 原料タンク
19 送液ポンプ
20 液注入ノズル
【産業上の利用分野】
本発明は、金属板の表面をポリオレフィン被覆した樹脂被覆金属板を効率良く製造する方法およびその方法によって製造された樹脂被覆金属板に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼板などの金属板に、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂を被覆する方法が、例えば特許文献1および2などに開示されている。これらの方法は、ポリオレフィン樹脂と金属板との接着性に優れた変性ポリオレフィン樹脂からなる多層フィルムを鋼板に被覆する方法である。従って、樹脂をフィルム化する工程が別途必要となり、高コストであり、効率が良くなかった。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−99543号公報
【特許文献2】
特開2000−246835号公報
【0004】
また、特許文献3などでは、フィルム化を行わず、ポリオレフィンと変性ポリオレフィンを溶融させてTダイから押し出し、直接、溶融した樹脂を金属板に被覆する方法が記載されている。かかる方法は、フィルム化の工程を必要としない利点があるが、変性ポリオレフィンを事前に合成する工程が別途必要であり、依然として、効率が良くなかった。
【0005】
【特許文献3】
特開平6−8368号公報
【0006】
さらに、特許文献4には、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、不飽和カルボン酸と、有機過酸化物の混合物を、フィルムなどのポリオレフィン成形体と金属などの他の部品との間に介在させて、加熱圧着して、ポリオレフィンと金属などを接着する方法が開示されている。この方法では、ポリオレフィンと金属の積層体を製造する際に、予め、ポリオレフィンフィルムなどの成形体を製造する必要があり、工程が煩雑となって、高コストであり、効率的ではなかった。また、接着層の成分に用いているエチレン−酢酸ビニル共重合体は、金属との接着性については十分確保できるものの、ポリオレフィンに比べて高価であり、また、ポリオレフィンより融点が低く、接着層が溶融するなどの問題が生じやすいため、耐熱性が要求される分野においては適用することができない。
【0007】
【特許文献4】
特公昭51−21419号公報
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、工程の簡略化を図ることによって、金属板の表面をポリオレフィン被覆した樹脂被覆金属板を効率良く製造する方法およびその方法によって製造された樹脂被覆金属板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に従う樹脂被覆金属板の製造方法は、少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物を第1押出機で加熱溶融させて変性ポリオレフィンを合成し、該第1押出機に付属する単層形成用Tダイから、変性ポリオレフィンを溶融状態のまま押し出し、Tダイの出側に配設された圧着手段を用いて、金属板の表面を変性ポリオレフィン層からなる単一樹脂で被覆することにある(第1発明)。
【0010】
本発明に従う樹脂被覆金属板の他の製造方法は、第1押出機で少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物を加熱溶融させて変性ポリオレフィンを合成すると同時に、第2押出機でポリオレフィンを加熱溶融させ、両押出機に付属する単一の複層形成用Tダイから、ポリオレフィンと変性ポリオレフィンのそれぞれが分離した溶融状態のまま、変性ポリオレフィンが金属板の表面に接するように押し出し、Tダイの出側に配設された圧着手段を用いて、金属板の表面をポリオレフィン層と変性ポリオレフィン層の少なくとも二層からなる複層樹脂で被覆することにある(第2発明)
【0011】
第1および第2発明とも、第1押出機中での変性ポリオレフィンの合成は、130〜350℃の範囲の温度で行うことが好ましく、より好ましくは180〜300℃の範囲である。130℃未満だとポリオレフィンが溶融しにくくなるとともに、変性反応も進行しにくくなるからであり、一方、350℃超えだと、樹脂の分解が起こりやすくなるからである。
【0012】
また、変性ポリオレフィンを合成する際の変性効率を向上させる必要がある場合には、前記混合物は、ポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類に、ラジカル開始剤を加えたものであることが好ましい。
【0013】
さらに、変性ポリオレフィンを合成する際の変性効率をより一層向上させる必要がある場合には、第1押出機に、ポリオレフィン、および不飽和カルボン酸類またはこれとラジカル開始剤とを予め溶解させておいた有機溶媒を供給することによって変性ポリオレフィンを合成されることがより好適である。
【0014】
ポリオレフィンは第1押出機の原料投入口から供給し、不飽和カルボン酸類またはこれとラジカル開始剤とを予め溶解させておいた有機溶媒は第1押出機の原料投入口と樹脂吐出側先端までの間に設けた副供給口から供給することが好ましい。
【0015】
さらにまた、変性ポリオレフィンの合成に用いられる第1押出機として、排気手段を具える単軸もしくは2軸押出機を用いれば、排気手段を通じて、未反応の不飽和カルボン酸類および/または未反応のラジカル開始剤を効果的に除去しながら変性ポリオレフィンを合成することができる。
【0016】
なお、不飽和カルボン酸類またはこれとラジカル開始剤とを予め溶解させておいた有機溶媒を用いれば、未反応の不飽和カルボン酸類および/または未反応のラジカル開始剤をより一層効果的に除去することができる。
【0017】
金属板としては、例えば表面をSn,Cr,ZnおよびNiから選ばれる少なくとも1種を含有するめっき皮膜で被覆しためっき鋼板、または該めっき鋼板の表面を、例えば金属水和酸化物からなる化成皮膜で被覆した表面処理鋼板を用いることが、変性ポリオレフィン樹脂との密着性に優れる点で好ましいが、これら以外にも、アルミニウム板、アルミニウム合金板、ステンレス板およびこれらの金属板の表面をめっきや化成処理した表面処理金属板を用いてもよい。
【0018】
また、樹脂と金属板との密着性をより高める必要がある場合には、金属板の表面を樹脂被覆するに先立って、金属板を予め、80℃以上300℃未満で加熱することが好ましく、より好ましくは120〜280℃、さらに好ましくは150〜260℃である。
【0019】
加えて、第1押出機に供給される変性ポリオレフィンの原料としては、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンを用いることが好ましく、特に、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物を用いることが最適である。
【0020】
また、第2押出機に供給されるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0021】
そして、本発明である第1および第2発明の方法を用いれば、耐食性および密着性に優れた樹脂被覆金属板を効率良く製造することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関し、より詳細に説明する。
第2発明の第2押出機に供給されるポリオレフィンとしては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンと30モル%以下、好ましくは10モル%以下のエチレンを共重合したブロックもしくはランダム共重合体、またはこれらに1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数4以上のαオレフィンを共重合したブロックもしくはランダム共重合ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン類、さらには、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン−ブテン共重合ゴム(EBR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、またはこれらのポリオレフィンを2種以上混合した混合物、などが挙げられる。
【0023】
これらの中でも、樹脂被覆金属板の加工性の点から、10モル%以下のエチレンもしくはαオレフィンをプロピレンと共重合したブロックまたはランダム共重合ポリプロピレンと、直鎖低密度ポリエチレンが好ましい。
【0024】
ポリオレフィンとして用いられる樹脂の分子量は、特に制限されないが、金属板に被覆する際の製膜性や耐食性などの点から、ホモまたは共重合ポリプロピレンの場合には、メルトフローレートが、30g/10min(230℃、5kg荷重下)〜0.1g/10min(230℃、5kg荷重下)、より好ましくは、20g/10min(230℃、5kg荷重下)、0.5g/10min(230℃、5kg荷重下)の範囲であり、また、ポリエチレン系樹脂の場合には、30g/10min(190℃、5kg荷重下)〜0.05g/10min(190℃、5kg荷重下)、より好ましくは、20g/10min(190℃、5kg荷重下)〜0.3g/10min(190℃、5kg荷重下)の範囲である。メルトフローレートが、上記範囲よりも小さいと、分子量が大きくなるため製膜性が劣り、上記範囲よりも大きいと、分子量が小さくなるため耐食性が劣る傾向があるからである。
【0025】
また、第1および第2発明の第1押出機に供給されるポリオレフィン、すなわち、変性ポリオレフィンの原料に用いられるポリオレフィンは、第2押出機に供給されるポリオレフィンの場合と同様、上述した全ての樹脂から選択して用いることができる。
【0026】
なかでも、第1および第2発明の第1押出機に供給されるポリオレフィン、すなわち、変性ポリオレフィンの原料に用いられるポリオレフィンとしては、ポリプロピレンとポリエチレンの混合物を用いることが特に好適である。
【0027】
その理由は、一般にポリプロピレン類は、変性反応を行うと、その副反応として、3級ラジカルの分解により、分子量が低下する傾向を示し、一方、ポリエチレン類は、2級ラジカルのカップリングによる架橋反応により、分子量が増加する傾向を示すため、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物を用いれば、変性反応時に樹脂の溶融粘度を安定させやすくなるからである。
【0028】
変性ポリオレフィンの原料として、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物を用いる場合、その混合割合は、用いる樹脂の流動性によって適宜変化させれば良いが、一般的には、ポリエチレン:ポリプロピレン=1:9〜9:1、好ましくは、3:7〜7:3の範囲である。
【0029】
変性ポリオレフィンの原料に用いられるポリオレフィンのメルトフローレートも特に制限されないが、ポリプロピレン樹脂の場合には、前記した変性工程における分解反応を考慮して、好ましくは、10g/10min(230℃、5kg荷重下)〜0.01g/10min(230℃、5kg荷重下)、より好ましくは、5g/10min(230℃、5kg荷重下)〜0.01g/10min(230℃、5kg荷重下)の範囲である比較的高分子量のものが良く、また、ポリエチレン系樹脂の場合には、前記した変性工程における架橋反応を考慮して、30g/10min(190℃、5kg荷重下)〜0.5g/10min(190℃、5kg荷重下)、より好ましくは、30g/10min(190℃、5kg荷重下)〜1g/10min(190℃、5kg荷重下)の範囲の比較的低分子量のものが良い。
【0030】
本発明で用いる不飽和カルボン酸類には、不飽和カルボン酸類とその誘導体が含まれる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、エンド−ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などの不飽和モノあるいはジカルボン酸類、またはその誘導体、例えば、酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等が挙げられる。
【0031】
誘導体の具体例としては、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水エンディック酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、特に、マレイン酸、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレートまたはこれらの混合物が好ましい。
【0033】
不飽和カルボン酸類の添加量は、特に制限されないが、変性ポリオレフィンの原料として用いるポリオレフィンに対し、通常、0.1〜30重量%の範囲であり、好ましくは0.2〜10重量%の範囲である。この範囲よりも添加量が少ないと、変性量が少なくなり金属板との密着性が劣る傾向があるからであり、一方、この範囲よりも添加量が多いと、未反応物が樹脂被覆金属板中に残存し易くなり、樹脂被覆金属板の耐蝕性を低下させる恐れがあるからである。
【0034】
本発明で用いられるラジカル開始剤は、通常のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化アセチル、t−ブチルパーオキシ安息香酸、過酸化ジクミル、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキシン、α、α‘−ビス(t−ブチルフェノキシm−イソプロピル)ベンゼンなどの過酸化物や、アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、過酸化ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキシン、α、α‘−ビス(t−ブチルフエノキシm−イソプロピル)ベンゼンなどが特に好適である。
【0036】
ラジカル開始剤の添加量は、特に制限されないが、0.01〜5重量%の範囲、好ましくは0.02〜2重量%の範囲である。ラジカル開始剤の添加量が、この範囲よりも少ないと、変性反応の進行が進みにくく、一方、この範囲より多いと、前述した3級ラジカルの分解や、2級ラジカルのカップリングによる架橋反応などの副反応が起り易くなるため好ましくない。
【0037】
図1は、第1発明の製造方法に用いた代表的な樹脂被覆金属板の製造装置の概略を示したものである。
【0038】
図1に示す樹脂被覆金属板の製造装置1は、金属板M1を連続的に供給する金属板供給装置2と、金属板M1の表面を変性ポリオレフィン層からなる単一樹脂で被覆するため、変性ポリオレフィンを合成するとともに、合成した変性ポリオレフィンR1を溶融状態で押し出す第1押出機3とで主に構成されている。
【0039】
金属板供給装置2は、長尺状の金属板M1を供給する供給ロール4と、樹脂被覆した後の樹脂被覆金属板M2を巻き取る巻取りロール5と、これらの間に配設された圧着手段6、図1では1対の圧着ローラー6a,6bとを主に具えており、図1では、供給ロール4と圧着手段6との間に位置し、金属板M1を加熱するための加熱装置7と、圧着ロール6a,6bの温度を独立に制御するためのロール温調装置8をさらに具えている。
【0040】
第1押出機3は、図1では、シリンダー9を中心とする要部のみを概念的に示してあり、シリンダー9の後端側に配設された原料投入口10と、シリンダー9の先端に取り付けられた単層形成用Tダイ11とを具えている。
【0041】
そして、第1発明に従う樹脂被覆金属板の製造方法は、少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物を第1押出機3の原料投入口10からシリンダー9内に供給し、これらの混合物を加熱溶融させて変性ポリオレフィンを合成し、次いで、第1押出機3に付属する単層形成用Tダイ11から、変性ポリオレフィンR1を溶融状態のまま押し出し、Tダイ11の出側に配設された圧着手段6を用いて、金属板M1の表面を変性ポリオレフィン層からなる単一樹脂で被覆することによって、樹脂被覆金属板M2を製造することができる。
【0042】
また、図2は、第2発明の製造方法に用いた樹脂被覆金属板の製造装置の一例を示したものである。
【0043】
図2に示す樹脂被覆金属板の製造装置は、基本的には図1に示す製造装置1と同じであり、構成上の主な相違点としては、金属板M1の表面を、ポリオレフィン層と変性ポリオレフィン層の二層からなる複層樹脂で被覆するため、押出機として、第1押出機3および第2押出機12を用いる点、および両押出機3、12に付属する単一の複層形成用Tダイ13を用いる点である。
【0044】
そして、第2発明に従う樹脂被覆金属板の製造方法は、第1押出機3で少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物を加熱溶融させて変性ポリオレフィンを合成すると同時に、第2押出機12でポリオレフィンを加熱溶融させ、両押出機3、12に付属する単一の複層形成用Tダイ13から、ポリオレフィンR2と変性ポリオレフィンR1のそれぞれが分離した溶融状態のまま、変性ポリオレフィンR1が金属板M1の表面に接するように押し出し、Tダイ13の出側に配設された圧着手段6を用いて、金属板M1の表面をポリオレフィン層と変性ポリオレフィン層の二層からなる複層樹脂で被覆することによって、樹脂被覆金属板M2を製造することができる。
【0045】
第2発明においては、さらに、別途1台以上の押出機を用意し、これらを第1、第2押出機とともに複層形成用Tダイに配置して、三層以上の複層樹脂で被覆することによって、前記同様にして、樹脂被服金属板を製造することができる。
【0046】
このように、第1および第2発明の方法はいずれも、金属板との接着性に優れる変性ポリオレフィンを合成しながら、少なくとも変性ポリオレフィン樹脂を金属板に被覆する方法であるため、従来のように、別途フィルムを製膜する工程や、別途変性ポリオレフィンを合成する工程を必要とせず、この結果、工程の簡略化が図れ、低コストで効率良く樹脂被覆金属板M2の製造が可能となる。
【0047】
また、第1および第2発明とも、変性ポリオレフィンを合成する工程では、ラジカル開始剤を必要に応じて用いればよいが、ラジカル開始剤を用いた方が変性効率の点で好ましい。
【0048】
また、不飽和カルボン酸類をポリオレフィンと反応させる方法としては、予め、少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物、特に好ましくは、ポリオレフィン、不飽和カルボン酸類およびラジカル開始剤かからなる混合物を、均一に混合した後、図1に示すように、押出機の原料供給口10から投入する方法や、図2および図3に示すように、ポリオレフィンのみを押出機の原料供給口10から投入し、不飽和カルボン酸類、または不飽和カルボン酸類とラジカル開始剤の混合物を、第1押出機3のシリンダー9の途中に設けた副供給口14から供給する方法なども用いることができる。
【0049】
また、好ましくは、シリンダーの先端側(バレル後部)に、排気手段、例えば、図1に示すように、トラップ室を15介して真空ポンプ16に接続されたベント口17を設け、シリンダー9内で変性ポリオレフィンを合成する際に真空ポンプ16でシリンダー9内に存在するガスを排出する排気手段を設ける構成にすれば、シリンダー9内に存在する未反応の不飽和カルボン酸類や未反応のラジカル開始剤を効果的に除去することができ、その結果として、樹脂被覆金属板M2における、樹脂層と金属板との密着性の向上や、耐食性の向上が図れる点で好ましい。
【0050】
特に、変性ポリオレフィンの好適な合成方法としては、図3に示すように、ポリオレフィンのみを第1押出機3の原料供給口10から投入し、不飽和カルボン酸類、または不飽和カルボン酸類とラジカル開始剤の混合物を、有機溶剤に予め溶解したものを原料タンク18に貯蔵し、第1押出機3のシリンダー9の途中に設けた副供給口14から、例えば、原料タンク18と接続した送液ポンプ19(真空ポンプ)などに作用によって、液注入ノズル20などを通じてシリンダー9内に供給し、シリンダーの先端側(バレル後部)に設けたベント口17から、未反応の不飽和カルボン酸類や未反応のラジカル開始剤を有機溶媒と共に除去する方法が挙げられる。
【0051】
このように有機溶媒を用いると、混練段階でのポリオレフィンの溶融粘度が低下する為、変性効率が増加し、未反応の不飽和カルボン酸類や未反応のラジカル開始剤の除去効率も増加するので、樹脂被覆金属板における、樹脂層と金属板との密着性の向上や耐食性の向上が図られる。
【0052】
なお、前記で用いる有機溶媒としては、特に制限されるものではないが、好ましくは、不飽和カルボン酸類を溶解し、かつ、不飽和カルボン酸類や、ラジカル開始剤と反応しにくく、さらには、沸点が50〜250℃の範囲であり、変性反応の工程でベント口から容易に排気し易いものが好ましく、このような有機溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンなどが挙げられる。
【0053】
本発明において、不飽和カルボン酸類の変性量は、特に制限されないが、ポリオレフィンに対して0.01〜30重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.05〜10重量%の範囲であり、最も好ましくは、0.1〜5重量%の範囲である。この範囲よりも変性量が低いと金属板との密着性が劣り、この範囲よりも変性量が多いと、変性ポリオレフィンが黄色く着色し易くなる為、樹脂被覆金属板を無色で用いる場合や所望の色に着色して用いる場合には、いずれも色調の点で好ましくない。
【0054】
本発明で用いられる金属板は、特に限定されるものではなく、目的に応じて、いかなる金属板を用いても良い。好ましい金属板としては、例えば表面をSn,Cr,ZnおよびNiから選ばれる少なくとも1種を含有するめっき皮膜で被覆しためっき鋼板、または該めっき鋼板の表面を、例えば金属水和酸化物からなる化成皮膜で被覆した表面処理鋼板を用いることが、変性ポリオレフィン樹脂との密着性に優れる点で好ましいが、これら以外にも、アルミニウム板、アルミニウム合金板、ステンレス板およびこれらの金属板の表面をめっきや化成処理した表面処理金属板を用いてもよい。これらは、樹脂との密着性に優れる点で好ましい。
【0055】
また、金属板の表面を樹脂被覆するに先立って、金属板を予め、80℃以上300℃未満で加熱することが好ましく、より好ましくは120〜280℃、さらに好ましくは150〜260℃である。このように金属板を予め加熱することで、金属板との密着性がより強固となる。
【0056】
さらには、得られた樹脂被覆金属板を適当な温度や速度で冷却または、再加熱することもできる。適当な速度で冷却することにより、被覆樹脂の結晶性が制御され、加工性、耐熱性などの改善が可能となり、また、再加熱すると、被覆するときに発生した残留応力が緩和され、後加工の際に、熱収縮などの問題を低減させることができる。
【0057】
加えて、圧着手段(例えば圧着ロール)も予め加熱しておくことが好ましく、この場合、圧着手段の温度は、金属板の温度よりも50℃以上低く設定することが樹脂が圧着ロール等に巻き付きにくくなる点で好ましい。
【0058】
本発明において、被覆樹脂の厚みは、単一樹脂および複層樹脂で被覆する場合とも、特に制限されない。目的に応じて、種々の厚みを用いることができる。例えば、被覆樹脂の厚みは、総厚で、缶などの容器用に用いる場合は、好ましくは、5μm〜200μmの範囲、さらに好ましくは、10μm〜150μmの範囲である。また、家電等の分野で用いる場合は、好ましくは、20μm〜1000μmの範囲、さらに好ましくは、25μm〜300μmである。
【0059】
また、ポリオレフィンと変性ポリオレフィンを複層で被覆する場合、それぞれの厚みは特に制限されないが、好ましくは、変性ポリオレフィンの厚みが1〜50μmの範囲、さらに好ましくは2〜30μmの範囲とし、残りをポリオレフィン層とする事が好ましい。変性ポリオレフィン層の厚みがこの範囲より薄いと、密着性が低下する傾向にあり、この範囲より厚いとコストの点で好ましくないからである。
【0060】
本発明(第1および第2発明)の製造方法においては、その目的を損なわない範囲で、被覆樹脂中に、ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機添加剤、有機添加剤、各種顔料、各種酸化防止剤、各種相溶化剤などを添加しても良い。
【0061】
ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、塩ビ、ポリカーボネート、ウレタン、各種ゴムやエラストマーなどを添加することができ、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂のビーズなどを添加することができ、また、無機添加剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維などの各種金属繊維、酸化チタン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどを添加することができ、有機添加剤としては、アラミド繊維などを添加することができる。
【0062】
また、図1〜3に示す第1押出機3はいずれも2軸押出機であり、図2に示す第2押出機は単軸押出機である場合を示したが、両押出機とも、特に限定はせず、単軸または2軸押出機のいずれを用いてもよい。
そして、本発明で製造した樹脂被覆金属板を胴体ならびに地蓋および/または天蓋に用いて缶を作製することができる。
【0063】
次に、本発明の上記樹脂被覆金属板を用い、缶体の内面側を樹脂被覆面が面とし、外面側は塗装あるいは印刷焼き付け、または外面も同様に樹脂被覆を施した後、製缶加工を行う。このとき、内外面とも樹脂を被覆する場合は、同時に樹脂被覆することが好ましく、また、外面塗装の場合には、その焼き付け温度を140〜190℃とすることが好ましい。
【0064】
缶が溶接缶である場合には、胴体の両端に樹脂被覆の未被覆部分を設け、かかる部分を電気抵抗溶接するため、その後、溶接部に皮膜を形成するような補修を施す必要がある。
【0065】
かかる補修の方法としては、ポリオレフィン系またポリエステル系樹脂テープ、好ましくはポリオレフィン系樹脂テープを用い、接着剤を介して又は熱融着によって溶接部に樹脂皮膜を形成するか、または、ポリエステル系もしくはエポキシ系粉体塗料によって塗膜を形成することが好ましい。また、ポリオレフィン系テープを用いる場合は、テープに変性ポリオレフィンなどの接着層を有するテープを用いる事がより好ましい。
【0066】
また、18L缶や天板固着式ペール缶では、手環をプロジェクション溶接にて接合し、さらに、天板取り外し式ペール缶では、吊り手の取り付けのためにイヤーをプロジェクション溶接にて接合するが、これらの接合のときに、接合部およびその周辺に位置する缶内面の樹脂被覆面が溶接熱によって劣化し、ピンホールが発生する傾向があるため、これらの部分についても、上述した補修方法を適用することが好ましい。
【0067】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0068】
【実施例】
以下実施例により本発明を詳しく説明する。
(実施例1)
ポリオレフィンとしてポリプロピレン(サンアロマー製PB370A,ブロックコポリマー、メルトフローレート=1.3g/10min(230℃、5kg荷重下))を用い、不飽和カルボン酸類として無水マレイン酸を用い、ポリプロピレンと0.5重量%の無水マレイン酸及び0.1重量%のラジカル開始剤(α、α‘−ビス(t−プチルフェノキシm−イソプロピル)ベンゼン、商品名:日本油脂製パーブチルP)をヘンシェルミキサーで十分に混合した後、真空ベント装置、リップ幅300mmの単層形成用Tダイが付属した第1押出機を2軸押出機(日本製鋼所製TEX30)とし、第1押出機における、シリンダー温度200℃、処理量10kg/hで溶融混練した。溶融混練しながら、付属するTダイ(温度200℃)から溶融樹脂を下方に向かって押し出して流下させ、シリコーンゴムで被覆したロールとクロームメッキ処理した金属ロールとの異種ロールの組合せからなる、一対の圧着ロール(いずれのロールも温度は、80℃に制御)を用いて、予め210℃に加熱した、厚み0.32mm,幅200mmのTFS(ティンフリースチール;極低炭素鋼両面をクロム酸処理(金属クロム量:120mg/m2,クロム水和酸化物量:クロム換算で20mg/m2被覆)したもの)に、10m/minのスピードでTFSの片面に被覆、冷却した。実施例1では、図1に示す製造装置を用いた。
【0069】
(実施例2)
ポリプロピレンのみを押出機の供給口から投入し、無水マレイン酸とラジカル開始剤を、ヘキサンに10%の濃度で溶解して、送液ポンプで、押出機のシリンダー途中の副供給口から供給した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂被覆金属板を製造した。実施例2では、図3に示す製造装置を用いた。
【0070】
(実施例3)
第2押出機として単軸押出機(日本製鋼所製P40−25AB)を用い、この第2押出機でポリプロピレン(サンアロマー製PM854X,ブロックコポリマー、メルトフローレート=20g/10min(230℃、5kg荷重下))のみを200℃で溶融混練(処理量8kg/h)し、同時に、第1押出機(2軸押出機)で、実施例2と同様の方法で、変性ポリプロピレンの合成を行いながら(処理量2kg/h)、両押出機に付属する単一の二層形成用Tダイ(温度200℃)から、変性ポリオレフィン層がTFSに接する様に、ポリプロピレン層と変性ポリプロピレン層の二層からなる複層樹脂をTFSの片面に被覆した。実施例3では、図2に示す製造装置を用いた。
【0071】
(実施例4)
ポリプロピレンとして、ホモポリプロピレン(サンアロマー製PM802A、メルトフローレート=20g/10min(230℃、5kg荷重下))を用いた以外は、実施例2と同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0072】
(実施例5)
ポリプロピレンとして、ランダムポリプロピレン(サンアロマー製PH943B、メルトフローレート=21g/10min(230℃、5kg荷重下))を用いた以外は、実施例2と同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0073】
(実施例6)
ポリオレフィンとして、直鎖低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン製ジェイレックスAM93NA,メルトフローレート=30g/10min(190℃、5kg荷重下))を用い、第1押出機のシリンダー温度を180℃とした以外は、実施例2と同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0074】
(実施例7)
ポリプロピレンの変わりに、ポリプロピレン(サンアロマー製PB370A,ブロックコポリマー、メルトフローレート=1.3g/10min(230℃、5kg荷重下))と直鎖低密度ポリエチレン〈日本ポリオレフィン製ジェイレックスAM93NA,メルトフローレート=30g/10min(190℃、5kg荷重下)〉の等量混合物を用いた以外は、実施例2と同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0075】
(実施例8)
第2押出機(単軸押出機)で、直鎖低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン製ジェイレックスAF481B,メルトフローレート=2.0g/10min(190℃、5kg荷重下))を180℃で溶融混練し、第1押出機(2軸押出機)で直鎖低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン製ジェイレックスAM93NA,メルトフローレート=30g/10min(190℃、5kg荷重下))の変性反応を行った以外は、実施例3と同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0076】
(実施例9)
第2押出機(単軸押出機)で、直鎖低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン製ジェイレックスAF481B,メルトフローレート=2.0g/10min(190℃、5kg荷重下))を180℃で溶融混練し、第1押出機(2軸押出機)で直鎖低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン製ジェイレックスAM93NA,メルトフローレート=30g/10min(190℃、5kg荷重下))とポリプロピレン(サンアロマー製PB370A,ブロックコポリマー、メルトフローレート=1.3g/10min(230℃、5kg荷重下))の等量混合物の変性反応を行った以外は、実施例3と同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0077】
(実施例10)
実施例1において、排気手段(真空ベント)を用いなかった以外は、同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0078】
(実施例11)
実施例1において、無水マレイン酸の代わりに、グリシジルメタクリレートを用いた以外は、同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0079】
(実施例12)
実施例6において、押出機の温度を150℃とした以外は、同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0080】
(実施例13)
実施例2において、ラジカル開始剤を用いなかった以外は、同様の方法で、樹脂被覆金属板を試作した。
【0081】
(実施例14)
金属板として、厚み0.35mm、幅200mmのすず系めっき鋼板(低炭素鋼表面に、ニッケル層(付着量40mg/m2)、鉄−錫−ニッケル合金層(付着量200mg/m2)、すず層(付着量300mg/m2),金属クロム層(付着量10mg/m2)、クロム水和酸化物層(付着量10mg/m2)を順次積層したもの)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で樹脂被覆金属板を製造した。
【0082】
(実施例15)
金属板として、厚み0.3mm、幅200mmの亜鉛めっき鋼板(低炭素鋼表面に、亜鉛を電気めっきした後(亜鉛付着量30g/m2)クロメート層を設けたもの)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で樹脂被覆金属板を製造した。
【0083】
(比較例1)
実施例1において、不飽和カルボン酸類及びラジカル開始剤を使用しなかった以外は、同様の方法で樹脂被覆金属板を試作した。
【0084】
(比較例2)
ポリプロピレン(サンアロマー製PB370A,ブロックコポリマー、メルトフローレート=1.3g/10min(230℃、5kg荷重下))に0.5重量%の無水マレイン酸と0.1重量%のラジカル開始剤(α、α‘−ビス(t−ブチルフェノキシm−イソプロピル)ベンゼン、商品名:日本油脂製パーブチルP)をヘンシェルミキサーで十分に混合した後、排気手段(真空ベント)の付属していない2軸押出機(日本製鋼所製TEX30)で処理量10kg/h,温度200℃で溶融混練し、ペレット化した。得られた変性ポリプロピレンペレットを、Tダイが付属する真空べントの付属していない2軸押出機(日本製鋼所製TEX30)で処理量10kg/h,温度200℃で溶融混練しながら、実施例1と同様の方法で、TFSの片面に被覆して樹脂被覆金属板を試作した。
【0085】
(試験方法)
上記で試作された各樹脂被覆金属板における、被覆樹脂の変性量および被覆樹脂の膜厚、ならびに第1押出機における残留モノマー量およびメルトフローレートを以下に示す方法によって測定するとともに、金属板に対する樹脂層の密着性および樹脂被覆金属板の耐食性を以下に示す方法によって評価した。これらの結果については表1に示す。
【0086】
1.被覆樹脂の変性量の測定
金属板から被覆樹脂を0.5g採取し、熱キシレン100mlに溶解した後、アセトン100ml中に再沈殿させて未反応モノマーを除去した。沈殿物をろ過後、100℃で1晩真空乾燥した後、熱プレスでフィルムにしてIRスペクトルを測定した。変性量は、COMPALLOY’90、p182−183を参考に、下記式により算出した。
【0087】
記
ポリプロピレンの変性量(mass%)=0.32×1780cm−1の吸光度/1165cm−1の吸光度ポリエチレンの変性量(mass%)=3.5×1780cm−1の吸光度/712cm−1の吸光度
【0088】
2.被覆樹脂の膜厚の測定
エポキシ樹脂に埋め込んだ樹脂被覆金属の断面を研磨した後、光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察して膜厚を測定した。
【0089】
3.残留モノマー量の測定
IRで測定した精製前の不飽和カルボン酸類の量から、IRで測定した精製後の変性量を差し引いた値を残留モノマー量とした。
【0090】
4.メルトフローレートの測定
ポリプロピレンは、JIS K6921−2に準じて測定し、また、ポリエチレンおよび、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物は、JIS K6922−2に準じて測定した。
【0091】
5.金属板に対する樹脂層の密着性評価
樹脂被覆金属板を50mm角に切断した後、カッターで5mm幅に「#」形状の切れ目を入れた。「#」形状の中心部が凸となるようにエリクセン押出機で5mmの押出加工を行った。凸部頂点からピンセットで被覆樹脂を強制剥離させ、下記基準により密着性を5段階評価した。
【0092】
記
◎: 凸部頂点付近で被覆樹脂が破損した場合
○: 凸部スロープ付近で被覆樹脂が破損した場合
△: 平面部で被覆樹脂が破損した場合
×: 凸部および平面部で被覆樹脂が破損することなく剥離した場合
××:押出加工前から被覆樹脂が剥離した場合
【0093】
6.耐食性の評価
樹脂被覆金属板を50mmφに切断した後、エリクセン押出機で5mmだけ押出加工を行った。その後、界面活性剤(ジョンソン製Jクリーン)に50℃で1ヶ月浸漬し、下記基準により耐食性を5段階で評価した。
【0094】
記
◎: 錆が全く認められない場合
○: 凸部のみでわずかな錆が認められた場合
△: 凸部のみで錆が認められた場合
×: 凸部および平面部の双方で錆が認められた場合
××:押出加工前から被覆樹脂が剥離した場合
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示す評価結果から、実施例はいずれも、比較例1および2に比べて、樹脂層と金属板との密着性が同等以上でかつ耐食性が優れている。
【0097】
特に、実施例10と比較例2の比較から、実施例10のように、変性ポリオレフィンを合成しながら樹脂被覆を行う方法は、比較例2のように、別途で変性ポリオレフィンを合成し、再度加熱溶融して金属板への被覆を行う方法に比ベて、工程が簡略化されている利点以外にも、樹脂劣化(メルトフローレートの増加)が少なく、密着性や耐食性に優れていることが判る。
【0098】
また、実施例10と実施例1の比較から、本発明において、変性ポリオレフィンを合成する際に、排気手段(真空ベント)を使用することで、残留モノマーが低減され、耐食性がより一層向上することが判る。
【0099】
さらには、実施例1と実施例2の比較から、変性剤(不飽和カルボン酸類)とラジカル開始剤を溶媒に溶かして供給することで、更なる変性効率の増加と残留モノマーの低減が可能となり、密着性がより一層向上することが判る。
【0100】
さらには、実施例2と実施例7の比較から、変性ポリオレフィンの原料として、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物を用いることで、変性工程における溶融粘度の変化を抑制できる効果が生じ、安定した製造が可能であった。
【0101】
【発明の効果】
以上のように、本発明の製造方法を用いることで、従来よりも、簡略化された工程で樹脂被覆金属板を効率良く製造することが可能となる。
【0102】
さらに、第1押出機での変性ポリオレフィンの合成の際に排気手段によってシリンダー内を排気すれば、残留モノマーが少なくなるため、密着性と耐蝕性の両方に優れた樹脂被覆金属板を得ることが可能となる。
【0103】
本発明で得られる樹脂被覆金属板は、工程が簡略なため安価であり、また、密着性や耐食性も良好な為、例えば、18L缶やベール缶などの容器用材料として、また、家電や自動車などの外板や部品として、さらには、建材分野における、内装材、外装材、パネル等として使用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1発明に従う単一樹脂被覆金属板の製造方法に用いた製造装置の概略図である。
【図2】第2発明に従う複層樹脂被覆金属板の製造方法に用いた製造装置の概略図である。
【図3】第1発明に従う単一樹脂被覆金属板の製造方法に用いた他の製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 樹脂被覆金属板の製造装置
2 金属板供給装置
3 第1押出機
4 供給ロール
5 巻取りロール
6 圧着手段
6a,6b 圧着ローラー
7 加熱装置
8 ロール温調装置
9 シリンダー
10 原料投入口
11 単層形成用Tダイ
12 第2押出機
13 複層形成用Tダイ
14 副供給口
15 トラップ室
16 真空ポンプ
17ベント口
18 原料タンク
19 送液ポンプ
20 液注入ノズル
Claims (8)
- 少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物を第1押出機で加熱溶融させて変性ポリオレフィンを合成し、該第1押出機に付属する単層形成用Tダイから、変性ポリオレフィンを溶融状態のまま押し出し、Tダイの出側に配設された圧着手段を用いて、金属板の表面を変性ポリオレフィン層からなる単一樹脂で被覆する樹脂被覆金属板の製造方法。
- 第1押出機で少なくともポリオレフィンおよび不飽和カルボン酸類を含む混合物を加熱溶融させて変性ポリオレフィンを合成すると同時に、第2押出機でポリオレフィンを加熱溶融させ、両押出機に付属する単一の複層形成用Tダイから、ポリオレフィンと変性ポリオレフィンのそれぞれが分離した溶融状態のまま、変性ポリオレフィンが金属板の表面に接するように押し出し、Tダイの出側に配設された圧着手段を用いて、金属板の表面をポリオレフィン層と変性ポリオレフィン層の少なくとも二層からなる複層樹脂で被覆する樹脂被覆金属板の製造方法。
- 前記混合物は、ポリオレフィン、不飽和カルボン酸類およびラジカル開始剤からなる請求項1または2記載の樹脂被覆金属板の製造方法。
- 変性ポリオレフィンは、第1押出機に、ポリオレフィン、および、不飽和カルボン酸類またはこれとラジカル開始剤とを予め溶解させておいた有機溶媒を供給することによって合成される請求項1、2または3記載の樹脂被覆金属板の製造方法。
- 変性ポリオレフィンの合成に用いられる第1押出機は、排気手段を具える単軸もしくは2軸押出機である請求項1〜4のいずれか1項記載の樹脂被覆金属板の製造方法。
- 金属板は、表面をSn,Cr,ZnおよびNiから選ばれる少なくとも1種を含有するめっき皮膜で被覆しためっき鋼板、または該めっき鋼板の表面をさらに化成皮膜で被覆した表面処理鋼板である請求項1〜5のいずれか1項記載の樹脂被覆金属板の製造方法。
- 金属板の表面を樹脂被覆するに先立って、金属板を予め、80℃以上300℃未満で加熱する請求項1〜6のいずれか1項記載の樹脂被覆金属板の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項記載の方法によって製造される樹脂被覆金属板。
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JPWO2006137571A1 (ja) * | 2005-06-21 | 2009-01-22 | Jfeスチール株式会社 | ラミネート金属板の製造方法 |
JP2012521287A (ja) * | 2009-03-26 | 2012-09-13 | ハイドロ アルミニウム ドイチュラント ゲー エム ベー ハー | 剛性パッケージ用押出し被覆ストリップ |
CN114102941A (zh) * | 2021-11-24 | 2022-03-01 | 泉州市环球新材料科技有限公司 | 一种易于品控的流延膜生产设备及其工作方法 |
-
2002
- 2002-10-22 JP JP2002307179A patent/JP2004142148A/ja active Pending
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