JP2004140593A - 遅延回路 - Google Patents

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Tomomasa Miyanaga
宮永 倫正
Osamu Komura
小村 修
Naoharu Fujimori
藤森 直治
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Abstract

【課題】伝送損失を低減できる遅延回路を提供する。
【解決手段】本発明の遅延回路は、セラミックスを含むセラミックス基板1と、それぞれがストリップラインパターンによりセラミックス基板上に形成された1対の伝送線路21を含む位相遅延回路とを備え、セラミックス基板1の気孔率が20%以上であり、全気孔中の閉気孔の割合が50%以上であることを特徴とするものである。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遅延回路に関し、具体的には3GHz以上、特に30GHz以上の高周波数域で使用するストリップラインで形成した位相遅延回路に関し、さらには遅延に伴う損失を低減できる低損失遅延回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図9は、位相遅延回路の構成を示す平面図である。図9を参照して、セラミックス基板1上に、それぞれがストリップラインパターンからなる1対の伝送線路2、3が形成されている。伝送線路2は、入力端子4と出力端子5との間を接続するものであり、長さLを有している。また伝送線路3は、入力端子6と出力端子7との間を接続するものであり、長さL+ΔLを有している。
【0003】
このように伝送線路2、3により、入出力端子4、5と入出力端子6、7との間にはΔLの経路差が生じている。このため、以下の式で表わされる位相遅延Δθを得ることができる。
【0004】
Δθ=ΔL/λg×360(deg.)
(λgは誘電率の短縮率を考慮したストリップライン上の波長)
このような遅延回路の例は、たとえば特開平9−64603号公報、特開平5−183312号公報、特開平9−261183号公報などに開示されており、それらの遅延回路で用いられるセラミックス基板1には多くの場合アルミナセラミックス基板が用いられている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−64603号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平5−183312号公報
【0007】
【特許文献3】
特開平9−261183号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の遅延回路は、目的とする位相遅延に相当する波長長さΔLだけ伝送線路を長くする必要があるため、特にミリ波帯域では伝送損失が大きくなり、信号としての形態をなさなくなるか、または増幅回路を設置する必要が生じる。
【0009】
それゆえ本発明の目的は、伝送損失を低減できる遅延回路を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、伝送損失を低減すべく鋭意検討した結果、セラミックスの気孔率を制御することにより、従来のアルミナセラミックス(Al)やガラスセラミックス(SiO−MgOなど)よりも、低い比誘電率と誘電損失を有する基板を実現できることを見出した。そして、この低い比誘電率と誘電損失とを有するセラミックス基板を遅延回路の基板として用いることにより、ΔLだけ伝送路を長くした遅延回路においても、伝送損失を従来になく低減できる低損失遅延回路の得られることを見出した。
【0011】
よって、本発明の遅延回路は、セラミックスを含むセラミックス基板と、それぞれがストリップラインパターンによりセラミックス基板上に形成された1対の伝送線路を含む位相遅延回路とを備え、セラミックス基板の気孔率が20%以下であり、全気孔中の閉気孔の割合が50%以上であることを特徴とするものである。
【0012】
このように気孔率を20%以上、かつ全気孔中の閉気孔の割合が50%以上であることにより、伝送損失を従来より低減することが可能となる。
【0013】
セラミックス基板の気孔率が20%未満の場合、既存材料に比較して十分低い誘電率や、低い誘電損失を実現することができず、損失の低い遅延回路を構成することができない。
【0014】
また、全気孔中の閉気孔の割合が50%以上であるため、既存のセラミックス多孔体で生じる吸湿による誘電損失を低減することができるとともに、気密封止が容易となるため気密性が必要な環境で使用することもできる。またスルーホールを形成した場合でも金属ペーストがスルーホール以外の部分へ侵入することも抑制でき、それによる導体損も抑制することもできる。
【0015】
上記の遅延回路において好ましくは、セラミックス基板の全気孔中の閉気孔の割合が90%以上である。
【0016】
全気孔中の閉気孔の割合が90%以上であるため、吸湿による誘電損失をさらに低減することができるとともに、気密封止がさらに容易となる。またスルーホールを形成した場合でも金属ペーストがスルーホール以外の部分へ侵入することもさらに抑制でき、それによる導体損もさらに抑制することもできる。
【0017】
上記の遅延回路において好ましくは、セラミックス基板の比誘電率は5以下である。
【0018】
上記のようにセラミックス基板の気孔率を20%以上とし、かつ全気孔中の閉気孔の割合を50%以上とすることにより、セラミックス基板の比誘電率を5以下と低くすることが可能となる。
【0019】
上記の遅延回路において好ましくは、使用する周波数が10GHz以上もしくは遅延回路が実効的に10GHz以上で動作する。
【0020】
伝送損失を低減することができるため、このように高い周波数帯域においても正確に信号を伝えることができるとともに増幅回路を設置する必要もない。
【0021】
上記の遅延回路において好ましくは、セラミックス基板は第1のセラミックス基板と第2のセラミックス基板とを有し、第1のセラミックス基板の一面にアース電極と入出力電極とが互いに分離して形成されており、第2のセラミックス基板の一面に入出力電極に通じる導電性ストリップラインが形成されており、第2のセラミックス基板の他面にアース電極と入出力電極とが互いに分離して形成されており、第1のセラミックス基板と第2のセラミックス基板とが互いに重ね合わされて結合されている。
【0022】
このような構成の遅延回路においても伝送損失を低減することができる。
上記の遅延回路において好ましくは、セラミックス基板の表面から10μm以内の領域が気孔率10%以下の緻密質である。
【0023】
上記の遅延回路において好ましくは、セラミックス基板の表面の面粗度Raが0.5μm以下である。
【0024】
このように基板表面から10μm以内の領域が気孔率10%以下の緻密質層であり、基板表面の平均面粗度Raが0.5μm以下であることにより、既存のフォトリソグラフィ(レジスト塗布)とメタライズとを利用したストリップラインの形成が可能であり、基板表面の凹凸による導体損の増大も抑制することができる。なお、面粗度Raとは、JIS(Japanese Industrial Standards)に規定された中心線平均粗さのことである。
【0025】
上記の遅延回路において好ましくは、セラミックス基板が80質量%以上の窒化ケイ素を含有し、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)およびエルビウム(Er)の少なくとも1つを窒化ケイ素に対して15mol%以下で含有する。
【0026】
上記の遅延回路において好ましくは、セラミックス基板がRE10(SiOまたはRESiで示される酸窒化物相または酸窒化珪素化合物相を含有する。
【0027】
上記の遅延回路において好ましくは、セラミックス基板の緻密質層がアルミニウムを含有する。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
【0029】
図9を参照して、本実施の形態における遅延回路では、セラミックス基板1上に、それぞれストリップラインパターンからなる1対の伝送線路2、3を含む位相遅延回路が形成されている。このセラミックス基板1の気孔率が20%以上であり、全気孔中の閉気孔の割合が50%以上である。なお、これ以外の構成については従来例で説明した構成とほぼ同じであるため、その説明を省略する。
【0030】
遅延回路の構成は以下のような構成であってもよい。
図1は、本発明の一実施の形態における遅延回路の構成を概略的に示す分解斜視図である。図1を参照して、図中上側のセラミックス基板1の長手方向の両端には、凹部14、15が形成されている。また、上側セラミックス基板1の上面の略全領域にはアース電極11が形成されており、その領域と分離した両凹部14、15に連通した小領域には入出力電極12、13が形成されている。これらのアース電極11と入出力電極12、13とは、上側セラミックス基板1に導電ペーストを塗布した後に、焼成することにより形成される。
【0031】
図中下側のセラミックス基板1の長手方向の両端には、凹部25、26が形成されている。また下側セラミックス基板1の下面には、上側セラミックス基板1の上面と同様な形状のアース電極22と入出力電極27とが形成されている。なお、図に示されていないが、下側セラミックス基板1の下面の凹部25に連通した小領域にも入出力電極が形成されている。また、下側セラミックス基板1の上面には、凹部25、26の導電膜に連通する両端部に先太テーパ部23、24が形成されており、また両先太テーパ部23、24の間に細い幅のジグザグ状導電性ストリップライン21が形成されている。これらのアース電極22と入出力電極27と両先太テーパ部23、24とジグザグ状導電性ストリップライン21とは、下側セラミックス基板1に導電ペーストを塗布した後に、焼成することにより形成される。
【0032】
そして、2枚のセラミックス基板1、1は、アース電極11、22を外側にして、導電性ストリップライン21を内側にして重ねられ、その間に、たとえばガラスフリットなどを塗布して加熱することによって接着されている。
【0033】
これらの上側および下側セラミックス基板1、1の双方の気孔率が20%以上であり、全気孔中の閉気孔の割合が50%以上である。
【0034】
また、図1および図9に示す各セラミックス基板1の気孔率が20%以上であり、全気孔中の閉気孔の割合が90%以上であることが好ましい。また、図1および図9に示す各セラミックス基板1の比誘電率が5以下であることが好ましい。また、図1および図9に示す遅延回路にて使用する周波数が10GHz以上もしくは遅延回路が実効的に10GHz以上で動作することが好ましい。
【0035】
図1および図9に示す各セラミックス基板1の多孔質セラミックスは、図2に模式的に示すように閉気孔をなす中空部1aを有する構造となっているため、緻密質部分(骨格部)1がネットワーク状に連続した構造となる。また図2に示すセラミックス多孔体の任意の断面において、互いに隣り合う2つの空孔1aのそれぞれの半径r1、r2とセラミックス部分の(緻密質部分)の幅bとが、(r1+r2)/b>1の関係を満たすことが好ましい。
【0036】
なお、従来のセラミックス基板1に用いられる多孔質セラミックスの構造は、図3に示すように複数の粒子101aが結合され、それらの粒子101a間が気孔となった開気孔の構造を有しており、本実施の形態の閉気孔の構造とは異なる。
【0037】
次に、本実施の形態の遅延回路に用いられるセラミックス基板の製造方法について説明する。
【0038】
セラミックス基板1の多孔質セラミックスは、金属粉末と焼結助剤粉末とを準備する工程と、これらの粉末を混合し混合粉末とする工程と、その混合粉末を成形して成形体とする工程と、その成形体を窒素または酸素の存在する雰囲気下で焼結し、金属窒化物または金属酸化物の焼結体とする工程とを含む方法によって得られる。
【0039】
閉気孔は、セラミックスの前駆体である金属粉末を中空化することによって得られる。相対密度と全気孔中の閉気孔との割合は、出発原料である金属粉末の粒度によって制御することができる。金属粉末としては、市販の高純度金属粉末を用いることができる。しかし、金属粉末の表面には、自然酸化膜やその後の熱処理により熱酸化膜が形成される。酸化物セラミックス以外の場合は、これらの酸化膜の量によって中空化の度合いが著しく変化するので、金属粉末中の酸素量の制御が重要である。酸素量は、金属酸化物に換算して、0.4mol%以上1.5mol%以下の範囲のものを選択することが望ましい。
【0040】
金属粉末の平均粒径は、0.1μm以上15μm以下が好ましい。0.1μm未満になると比表面積が大きいため、前記酸素量の制御が困難となり、また15μmを超えると、完全に中空化するための反応時間が長くなるので経済的ではない。
【0041】
前記金属粉末に焼結助剤として希土類酸化物が添加される。希土類酸化物は、Yb、Sm、Er、Gd、Yから選ばれる少なくとも1種類を金属粉末に対して0.2mol%以上2.5mol%以下添加することが好ましい。0.2mol%未満では、金属の拡散が促進されず中空化が十分に行なわれない。また、2.5mol%以上では、全気孔率が低下しやすくなる。従来、セラミックスの焼結助剤として知られているFeやAlなどは、本実施の形態の場合、中空化が十分行なわれないので好ましくない。
【0042】
また、添加する焼結助剤の平均粒径は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。0.1μm未満では、凝集などが生じやすくなるので取扱が困難となり、また1μm以上では、金属粉末の窒化または酸化反応が進行しにくくなる。また、金属粉末の表面の酸化膜が反応を妨げる場合は、上記焼結助剤に加えて、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属あるいはそれら金属の酸化物を第2の焼結助剤として添加することが好ましい。第2の焼結助剤の添加量は0.1mol%以上1.5mol%以下が好ましく、その平均粒径は0.1μm以上2μm以下が好ましい。
【0043】
金属粉末、焼結助剤および必要に応じて添加される有機バインダが、既存のボールミルや超音波混合などの方法により混合され、その後乾燥される。その後、混合物は所定の形状に成形され、成形体が得られる。この成形は、通常の乾式プレス成形法、押出し成形法、ドクターブレード成形法および射出成形法のような公知の成形法を用いることができ、所望する形状に合わせて品質上・生産上最も望ましい成形方法を選択することができる。なお成形に先立ち混合後の混合粉末を顆粒状に造粒し、予めその嵩密度を高め、成形性を高めることもできる。前記有機バインダは、成形性をさらに向上させる場合に添加するものである。
【0044】
前記成形体を窒素または酸素を含有する雰囲気ガス中で熱処理することにより、金属の窒化または酸化反応を進行させることで、個々の金属粉末が中空化するとともに、反応した互いに隣り合う金属粉末の窒化物または酸化物同士が一体化し、微細な閉気孔を有する多孔質セラミックスを得ることができる。
【0045】
図4および図5は、金属粉末が窒化もしくは酸化により中空化していく様子を示す模式図である。図4および図5を参照して、まず金属粉末1bの表面が窒化または酸化され、金属粉末1bの外周に窒化膜もしくは酸化膜1が形成される。熱処理を進めると、窒化あるいは酸化反応の際に、金属が外周の窒化物あるいは酸化物1側へ拡散して、窒化または酸化反応が進行していく。このように金属が外周側へ拡散することにより金属粉末1b中に空孔1aが形成され、金属粉末1bは中空化する。最終的には、金属粉末1bであった部分の大半が空孔1aとなり、空孔1aが閉気孔として形成される。このように複数の空孔1aが閉気孔として形成されることにより、窒化物または酸化物からなるセラミックスの緻密質部分1がネットワーク状に連続した構造を形成する。
【0046】
中空化の度合いは、出発原料である金属粉末中に含まれる酸素量や、焼結助剤の種類あるいは熱処理方法によって異なる。個々の閉気孔の大きさは、基本的には、出発原料である金属粉末の粒度に依存する大きさとなるので、金属粉末の粒径が均一であれば、閉気孔の大きさは均一であり、粗大な閉気孔が含まれることはない。
【0047】
熱処理は、カーボンヒータ炉などで行なうことができる。金属粉末の拡散を促進し、粒成長による中空構造の消失を抑制するために、マイクロ波を用いた熱処理を行なうことが好ましい。特に20GHz以上の周波数のマイクロ波を照射して加熱すると、金属粉末の外殻に形成される金属窒化物あるいは金属酸化物への金属の拡散をより促進することができるので、金属粉末の中空化が容易になるため好ましい。
【0048】
熱処理温度は、出発原料の金属粉末によって好ましい温度範囲が異なるため、以下に、Siを窒化してSiの多孔質セラミックスを得る場合を例に挙げて詳述する。
【0049】
Siを窒化する熱処理温度は、1200℃以上が好ましい。1200℃未満では金属粉末の窒化反応の進行が遅くなり、経済的ではない。また、カーボンヒータ加熱では1500℃以下、マイクロ波加熱では1750℃以下の温度が好ましい。これ以上の温度では金属窒化物の相変態や粒成長が生じるため、中空化構造が変化して本実施の形態の多孔質セラミックスを得ることが困難となる。
【0050】
また、最高温度までの昇温は、2段階以上に分けて階段状に昇温するのが好ましい。これは、金属の窒化反応は発熱反応であるので、1度に最終焼結温度まで昇温すると、自らの発熱によって温度が金属の融点を超え、金属の溶融が発生するためである。金属の溶融が発生すると、未反応の溶融塊となり粗大な空孔が発生したり、成形体から溶出したりするので多孔質セラミックスの機械的、電気的特性の劣化を引起す。他の金属粉末を出発原料とする場合や酸化反応させる場合でも、温度条件は変わるが、2段階以上に分けて階段状に昇温することが好ましいことに変わりはない。
【0051】
熱処理時の雰囲気は、窒化物を得ようとする場合は、NあるいはNHを含む非酸化性雰囲気とする。酸化物を得ようとする場合は、Oを含む酸化性雰囲気とする。いずれの場合も圧力に限定はないが、1気圧(101kPa)以上5気圧(507kPa)以下が好ましい。
【0052】
以上のようにして得られる本実施の形態の基板1をなす多孔質セラミックスは、金属粉末の個々の粒子が中空化することにより、均一な径の空孔が分散した組織となり、実質的に無機セラミックス単一層の多孔質セラミックスである。このため、基板1を、耐吸湿性に優れ、低誘電率、低誘電損失である多孔質セラミックスから形成することができる。
【0053】
この多孔質セラミックスでは、気孔率を20%以上にし、かつ全気孔中の閉気孔の割合を50%以上にすることができる。さらに、原料金属粉末の平均粒径、表面の酸素量、焼結助剤の種類、焼結条件などを選べば、気孔率が20%以上で、全気孔中の閉気孔の割合を90%以上にすることもできる。
【0054】
本実施の形態におけるセラミックス基板1をなす多孔質セラミックスの任意の断面において、図2に示すように互いに隣り合う2つの空孔1aの半径をそれぞれr1、r2とし、セラミックス部1の厚みをbとすると、(r1+r2)/b>1となるものを得ることができる。つまり、原料金属粉末の平均粒径、表面の酸素量、焼結助剤の種類、焼結条件を選べば、空孔1aの直径がセラミックス部1の厚みの2倍以上とすることができる。より好ましくは、(r1+r2)/b>2である。このような組織にすることによって誘電正接をより低減することができる。
【0055】
また、本実施の形態のセラミックス基板1をなす多孔質セラミックスの誘電正接は、10−3〜10−4程度以下となる。機械的特性として、3点曲げによる抗折強度は、150MPa以上であり、優れた電気的、機械的特性を有する多孔質セラミックスが得られる。
【0056】
このようにして得られたセラミックス基板1に表面上にストリップラインパターンなどを形成する前に、セラミックス基板1に表面を平坦化することが好ましい。
【0057】
生産に適した方法で、かつ反りや内部応力などが発生せずに、高い寸法精度を保ちながら、十分な表面平滑性を得るためには、以下に述べる平坦化処理を用いることができる。
【0058】
すなわち、多孔質基材であるセラミックスと固相反応を生じる固体物質を砥粒または研磨材として選択し、加工、研磨する(機械的エネルギを加える)ことによって多孔質表面を平滑化する。
【0059】
たとえば、気孔率50%の窒化ケイ素多孔質セラミックスを加工する際においては、γAl粒子とSiO粒子を含む研磨砥粒を水に分散させて用いることにより、表面が平坦化した多孔質セラミックスを得ることができる。
【0060】
平滑な多孔質体表面を得るためには、砥粒、研磨液、研磨速度(接触圧)の諸条件を適切に選択、制御することが必要である。砥粒粒子の粒径は0.1μm以下が望ましく、砥粒を分担した水溶液のpHは7以上に調整される。
【0061】
水溶液のpHを7以上にした理由は次のとおりである。すなわち、本固相反応、または表面平滑化は、Si−OH等の水酸基の生成の寄与が大きく、加工効率(または表面平滑度)を上げることができる。pH7未満でもできないことはないが、長時間の加工が必要であったり、表面平滑性が得られにくい場合がある。
【0062】
通常の場合、研磨砥粒は、多孔質セラミックスの組成物、またはその酸化物と固相反応を生じるものの群から選択される。
【0063】
メカニズムの詳細は必ずしも明確ではないが、単なる機械的エネルギのみではなく、以下に示すような過程の酸化、溶解・再析出、固相拡散により表面の平坦化が進行する。
【0064】
【化1】
Figure 2004140593
【0065】
図6を参照して、得られたSi多孔質セラミックス1の表面1fの面粗度(Ra)は、研磨条件にもよるが、0.5μm未満、好ましくは0.2μm未満、より好ましくは0.1μm未満である。また平坦化された表面から10μm以内の領域が気孔率10%以下の緻密質層となっている。その緻密質層には、Alが、その濃度が厚み方向に傾斜するように分散しており、Al、Si、O、Nの複合相(固相反応によって生じたセラミックス組成と砥粒組成からなる複合相)となっているが、セラミックス基板1の内部から表面領域まで連続した構造となっている。図6に示す例では、表面は閉気孔となっている。
【0066】
表面の気孔を覆うように前述の固相拡散等を生じさせることもできるし任意の気孔を表面に残留させることもできる。表面の組成比が異なる領域は、表面から10μm未満、さらには5μm未満が好ましい。それ以上では、セラミックス多孔質体本来の特性を損なう場合がある。
【0067】
特には、気孔径が0.1μm以上、さらには1μm以上であっても、上記の平坦性が得られることにより、既存のフォトリソグラフィ(レジスト塗布)とメタライズとを利用したストリップラインパターンの形成が可能であり、基板表面の凹凸による導体損の増大も抑制することができる。
【0068】
また、多孔質セラミックス内部には含まれない元素の少なくとも1つを、表面領域(表面から10μm以内)に含有するか、または内部と表面領域の組成比が異なる場合がある。かかる表面平坦性多孔質セラミックスは、その表面に金属、酸化物または窒化物薄膜あるいはパターニングされた金属導体を形成して用いることもでき、この場合の表面粗度は表面膜と多孔質セラミックスの界面粗度により示される。
【0069】
このような多孔質のセラミックスよりなるセラミックス基板1の表面に、図9に示すように、それぞれがストリップラインパターンからなる1対の伝送線路3が形成されて遅延回路が形成される。
【0070】
また、このような多孔質のセラミックスよりなるセラミックス基板1の表面および/または裏面に、導電ペーストを塗布した後に焼成することにより、図1に示すように、入出力電極、アース電極、導電膜が形成され、その後に2枚のセラミックス基板1同士をガラスフリットなどを挟んで重ね合わせて結合することにより、遅延回路が形成される。
【0071】
セラミックス基板1は、80質量%以上の窒化珪素を含有し、Yb、SmおよびErの少なくとも1つを窒化珪素に対して15mol%以下で含有することが好ましい。また、セラミックス基板1は、RE10(SiOまたはRESiで示される酸窒化物相または酸窒化珪素化合物相を含有することが好ましい。ここで、REとは希土類元素(Rare Earth element)を意味する。
【0072】
なお、本実施の形態の多孔質セラミックスの材料や製造方法は、限定されるものではないが、多孔質セラミックスの材料としてはSi、SiO、AlN、Alなどの材料を用いることができ、特にSi、を用いることが好ましい。セラミックスの出発原料として、SiあるいはAlの金属粉末を用い、この金属粉末を窒化あるいは酸化させる反応過程で、金属元素の外殻への拡散を促進することによって、均一な空孔が微細に分散した多孔質セラミックスを容易に得ることができる。
【0073】
なお、図7に示すように多孔質セラミックス1の裏面にベース層8を設けることもできる。ベース層8によって基板の強度を補強したり、熱伝導性を改善することもできる。それゆえ、多孔質化により熱伝導性や強度が低下した場合でも、使用環境に応じた一定の熱伝導性と強度を確保することができる。また図8に示すようにベース層8としては両面にメタライズ層8a、8cを有する緻密質セラミックス(Al、AlN、Si、SiO)、シリコン基板などの基材8bを用いることもできる。なお、図7、8において上記以外の構成については図9に示す構成とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0075】
以下の表1に示すサンプルA、B、Cを作製し、このサンプルからなる基板を用いて図1に示す遅延回路を作製した。サンプルAおよびCは比較例であり、サンプルBは本発明例である。
【0076】
【表1】
Figure 2004140593
【0077】
なお、サンプルBについては以下の方法により作成した。
平均粒径1μmのSi粉末と焼結助剤として平均粒径0.8μmのYb粉末とを準備した。このとき、Yb粉末がSi粉末に対して2mol%となるように準備した。各粉末はいずれも市販のものである。なお、Si粉末表面の酸素量は、不活性ガス融解、赤外線検出法で測定し、SiO換算で0.7mol%であることを予め確認したものを用意した。
【0078】
準備した各粉末を、メチルアルコールを溶媒として、24時間ボールミル混合した。混合後、自然乾燥し、乾式プレスを用いて所定のサイズに成形した。この成形体を大気圧の窒素雰囲気中で、1200℃で3時間保持した後1400℃に昇温し3時間保持して焼結体を得た。得られた焼結体をX線回折したところ、金属Siは残存しておらずすべてSiになっていることを確認した。
【0079】
自然冷却後、厚みが0.635mmとなるように仕上げ加工を施した。
このようにして得られたセラミックス多孔体よりなる基板表面に、マスク蒸着法でAuをメタライズすることにより遅延回路を形成した。
【0080】
サンプルA、B、Cのそれぞれについて、ストリップラインの経路差ΔLを位相差Δθにして270(deg.)となるよう設計した。また、L+ΔL=1cmとなるように設計した。基板厚みはすべて0.635mmとし、インピーダンスが50Ωとなるようストリップライン幅を設定した。本遅延回路に10GHzおよび30GHzの高周波を伝送し、L+ΔL長のストリップラインにおける伝送損失を測定した。その結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
Figure 2004140593
【0082】
表2の結果より、セラミックス基板の気孔率が20%以上であり、全気孔中の閉気孔の割合(閉気孔比率)が50%以上の場合に、高い周波数帯域においても伝送損失が低くなることがわかる。また特にサンプルBの場合には、閉気孔比率が92%と90%以上であることから、特に伝送損失を大幅に低減できていることがわかる。またサンプルBでは、誘電率は5以下になることもわかった。
【0083】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の遅延回路によれば、気孔率を20%以上、かつ全気孔中の閉気孔の割合が50%以上であることにより、低い比誘電率と誘電損失を有する基板を実現できるため、伝送損失を従来より低減することが可能となる。これにより高周波数域において好適な遅延回路を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における遅延回路の構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態における遅延回路に用いられるセラミックス基板の断面構成を示す図である。
【図3】従来の遅延回路に用いられるセラミックス基板の断面構成を示す図である。
【図4】金属粉末が中空化する様子を示す工程図である。
【図5】1つの金属粉末が中空化する様子を示す工程図である。
【図6】表面平滑性多孔質セラミックスが得られる工程の概念図である。
【図7】本発明の一実施の形態における遅延回路にベース層を設けた一の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施の形態における遅延回路にベース層を設けた他の構成を示す斜視図である。
【図9】遅延回路を説明するための平面図である。
【符号の説明】
1 セラミックス基板、1a 空孔、1b 金属粉末、1f 表面、2,3 伝送線路、4,5,6,7 入出力端子、8 ベース層、8a,8c メタライズ層、8b 基材、11,22 アース電極、12,13,27 入出力電極、14,15,25,26 凹部、21 ジグザグ状導電性ストリップライン、23,24 先太テーパ部。

Claims (10)

  1. セラミックスを含むセラミックス基板と、
    それぞれストリップラインパターンにより前記セラミックス基板上に形成された1対の伝送線路を含む位相遅延回路とを備え、
    前記セラミックス基板の気孔率が20%以上であり、全気孔中の閉気孔の割合が50%以上である、遅延回路。
  2. 前記セラミックス基板の全気孔中の閉気孔の割合が90%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の遅延回路。
  3. 前記セラミックス基板の比誘電率が5以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の遅延回路。
  4. 使用する周波数が10GHz以上もしくは実効的に10GHz以上で動作することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の遅延回路。
  5. 前記セラミックス基板は、第1のセラミックス基板と第2のセラミックス基板とを有し、
    前記第1のセラミックス基板の一面にアース電極と入出力電極とが互いに分離して形成されており、
    前記第2のセラミックス基板の一面に前記入出力電極に通じる導電性ストリップラインが形成されており、前記第2のセラミックス基板の他面にアース電極と入出力電極とが互いに分離して形成されており、
    前記第1のセラミックス基板と前記第2のセラミックス基板とが互いに重ね合わされて結合されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の遅延回路。
  6. 前記セラミックス基板の表面から10μm以内の領域が気孔率10%以下の緻密質層であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の遅延回路。
  7. 前記セラミックス基板の表面の面粗度Raが0.5μm以下であることを特徴とする、請求項6に記載の遅延回路。
  8. 前記セラミックス基板が80質量%以上の窒化ケイ素を含有し、イッテルビウム、サマリウムおよびエルビウムの少なくとも1つを窒化ケイ素に対して15mol%以下で含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の遅延回路。
  9. 前記セラミックス基板がRE10(SiOまたはRESiで示される酸窒化物相または酸窒化珪素化合物相を含有することを特徴とする、請求項8に記載の遅延回路。
  10. 前記セラミックス基板の前記緻密質層がアルミニウムを含有することを特徴とする、請求項6または7に記載の遅延回路。
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