JP2004140416A - 半導体発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 V族元素として窒素を含有するIII −V族化合物半導体からなる発光層を含む半導体発光素子において、動作電流の一部が電極直下の発光部に流入し、その部分からの発光が外部への光の取り出しに寄与しない問題点を解決する。
【解決手段】 基板上に、V族元素として窒素を含有するIII−V族化合物半導体層を含む発光部、電流阻止層、導電性薄膜電極、台座電極を有する半導体発光素子であって、導電性薄膜電極は、発光に対して透過性を有し、電流阻止層と台座電極とに接し、発光の取り出し面の略全面に設けられ、電界が発光部のほぼ全域に波及するように形成されている構造とする。
【選択図】 図1

Description

 本発明は、窒化ガリウム(GaN)や窒化アルミニウム(AlN)や窒化インジウム(InN)及びそれらの混晶等の、V族元素として窒素を含有するIII −V族化合物半導体を発光層とする、主に短波長の発光をもたらす発光ダイオード(LED)等の半導体発光素子に係わり、特に発光面積が拡大された半導体発光素子に関するものである。
 GaNや窒化ガリウム・インジウム(GaInN)等のV族元素として窒素を含有するIII
−V族化合物半導体は、青色或いは青緑色等の短波長LEDの発光層として利用されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照。)。
 図2はGaInN混晶を発光層とする従来のダブルヘテロ接合型青色LEDの断面構造の一例を示す模式図である。従来のダブルヘテロ接合型青色LEDは、基板(101)上に下部クラッド層(102)、発光層(103)、上部クラッド層(104)、コンタクト層(105)を順次積層し、コンタクト層(105)上の一部、および下部クラッド層(102)上の一部にそれぞれ電極を形成した構造になっている。
 図2に示す従来のダブルヘテロ接合型青色LEDにおいては、基板(101)はアルミナ単結晶(サファイア)からなる。下部クラッド層(102)は、n形のGaN層からなり、基板(101)と発光層(103)との間の緩衝層の役割を兼ねている。発光層(103)は、珪素(Si)と、亜鉛(Zn)またはマグネシウム(Mg)が添加されたn形のGaInN層からなる。上部クラッド層(104)は、マグネシウムを添加したp形の窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)からなる。上述の下部クラッド層(102)、発光層(103)、上部クラッド層(104)によりダブルヘテロ接合が形成されている。また、n形の発光層(103)とp形の上部クラッド層(104)によりpn接合が形成されている。そしてこの下部クラッド層(102)、発光層(103)、上部クラッド層(104)により発光部が構成されている。
 コンタクト層(105)は、低抵抗で且つ発光部からの発光を吸収しない程度にバンドギャップ(禁止帯幅)が小さい半導体材料からなるのが通例である。また、コンタクト層(105)の伝導型は、その直下に存在する層、例えば図2に示すダブルヘテロ構造のLEDにあっては上部クラッド層(104)を構成する半導体層の伝導型と同一とするのが常である。n形のGaInN層を発光層とする図2に示す従来のLEDにあっては、上部クラッド層(104)がp形層であることから、コンタクト層(105)はp形のGaNから構成されるのが通例である。
 電極は、コンタクト層(105)上の一部および、下部クラッド層(102)上の一部にそれぞれ形成されている。従来の発光ダイオードにおいては、発光層からの光は発光層に対して基板(101)と反対側の表面から取り出される。従って図2に例示したLEDでは、コンタクト層(105)上の一部に形成された第1の電極(106)が発光の取り出し方向に配置された電極となる。第2の電極(107)は、下部クラッド層(102)上に形成される。これは、基板(101)が絶縁性であるためである。基板が導電性を有する場合は、第2の電極は基板(101)に被着して形成するのが一般的である。
 コンタクト層(105)は、金属電極と半導体との接合において、良好なオーム接触を得る目的で形成される。また該コンタクト層が低抵抗であれば、発光を得るための動作電流の広範囲への拡散が促進され、発光面積の拡張がもたらされ得る。しかし、上述した従来の発光ダイオードでは、コンタクト層として用いられるp形GaN層のキャリア濃度は一般に高くても概ね1017cm-3程度であった。これは以下の理由による。すなわち、GaNは室温において、III −V族化合物半導体にあっては比較的大きな約3.4eVのバンドギャップを有する。しかも、気相成長方法により得られるGaNは、通常高濃度の窒素の空孔(vacancy)等の欠陥の存在により、1018〜1019cm-3の高いキャリア濃度を有するn形層となる。n形キャリアとして作用するこの高濃度の空孔の存在のために、それを電気的に補償して、動作電流を発光領域へと拡散させるに充分に足る低抵抗のp形GaN層を形成するのは現状では困難であった。
 動作電流を広範囲へ拡散する目的においては、コンタクト層としてはやはり1018cm-3程度或いはそれを越えるキャリア濃度の低抵抗層が望ましい。前記の様な比較的高い抵抗のp形GaN層をコンタクト層とした場合には、その表面上に直接被着された電極から供給される動作電流は、コンタクト層内の広い領域に亘って流通させることができない。このため、動作電流を発光領域へ充分に拡散させるには至らない。このことが、低キャリア濃度のp形のGaNコンタクト層の表面上に電極が直接被着された従来の構造からなるLEDにあって、発光面積を拡張することによって発光強度に優れるLEDを得るにあたっての障害となっていた。
 電極から供給される動作電流を発光部のより広範囲な領域に拡散させることはLEDにあって発光面積の拡張を果たすために是非とも必要である。そのため、発光の取り出し面例えば図2に示した従来のLEDにあってはp形GaNコンタクト層表面上に、半導体材料に比較すれば遥かに抵抗が小さい金属材料からなる透光性の被膜を導電性薄膜電極として被着したLEDが提示されている(特許文献1参照。)。
 この技術は金属材料の良好な導電性をもって、動作電流の発光部の広範囲に亘る拡散を果たすことを意図しているものである。この導電性薄膜電極を例えば発光部のほぼ全域に相当するコンタクト層の表面上の領域に敷設すれば、発光を呈する面積の拡大がもたらされる利点がある。p形GaNコンタクト層の表面上に直接、透光性の導電性薄膜電極を設けた構成からなるV族元素として窒素を含有するIII −V族化合物半導体を発光層とするLEDの従来例を図3に掲示する。図3に示すLEDにおいて、コンタクト層(105)上の透光性の導電性薄膜電極(109)及びその上の台座電極(110)以外の構造は図2に示したLEDと同じである。この導電性薄膜電極(109)は発光の取り出し面上に形成されるため、発光に対して透過性を確保するため膜厚を厚くすることはできず、約100nm程度の薄膜から構成されている。透光性の導電性薄膜電極(109)は金(Au)及びニッケル(Ni)から構成される例がある。これらの導電性薄膜電極(109)はその一部が台座電極(110)と電気的に導通している。
「豊田合成技報」、第35巻(1993)、91〜95頁 「アプライド フィジクス レターズ(Appl.Phys.Lett.)」、第64巻(1994)、1687〜1689頁 特開平6−338632号公報
 光の取り出し方向に透光性の導電性薄膜電極を備えた従来のLEDにあっては、導電性薄膜電極が直下に存在する層を構成する半導体材料に比較すれば低抵抗である金属材料より構成されているが故に、動作電流は台座電極から導電性薄膜電極を経由して導電性薄膜電極が被着されている領域のほぼ全域に行き渡るようになる。とはいえ、台座電極から発光層に直接注入される動作電流による発光は、台座電極によって遮られて外部への光の取り出しには寄与しない。発光部の広い領域に亘り動作電流の拡散を促すには、台座電極から発光部への直接的な動作電流の流入を防止する措置を施す必要があった。本発明では、この課題を解決する手段を提供する。
 本出願に係わる発明は、基板と、該基板上に形成されたV族元素として窒素を含有するIII
−V族化合物半導体からなる発光層を含む発光部と、発光部上の基板と反対側の表面上に配置された第1の電極と、該電極に対して発光層を挟んで反対側に存する基板もしくは半導体層上に配置された第2の電極とを具備し、発光部上の基板と反対側の表面から光を取り出す半導体発光素子に於いて、発光部上の基板と反対側の表面上に配置された第1の電極は、回路基板等への実装或いは結線に供される台座電極と該台座電極に導通する導電性薄膜電極からなり、該導電性薄膜電極は発光部から放出される光に対して透過性を有し、かつ前記台座電極と発光部の間には電流阻止層が存し、該台座電極は該電流阻止層上に配置されており、該電流阻止層は半導体発光素子をなす半導体からなる積層構造の最上部に形成されており、かつ該電流阻止層は比抵抗が1Ω・cm以上の高抵抗の層あるいは発光部を構成する最上層の半導体層とは異なる導電型を有する半導体層からなることを特徴とする。
 電流阻止層は動作電流の台座電極から発光部への漏洩を防止する。導電性薄膜電極は、動作電流を発光部の広範囲に亘り拡散させ、発光に寄与する動作電流の有効成分の割合を増ずる作用を有する。また、導電性薄膜電極は発光部から放出される光に対して透過性を有するようにすることにより、発光部からの光を外部に有効に取り出せるようになる。これらの作用により、発光面積が拡大された半導体発光素子を得ることができるようになる。また、電流阻止層の占有する領域の表面積を、台座電極の表面積(S)に対し0.7×S以上で2.45×S以下とすることにより、発光に寄与する動作電流の有効成分の割合を増し、かつ電流阻止層の形成によって減ずる発光部の有効面積を最小限にすることができる。さらに、台座電極を電流阻止層と平面形状に於いて略相似形をなすようにすることにより、動作電流の漏洩を低減することが出来る。また、導電性薄膜電極を発光部からの発光の取り出し面の略全面に設けることにより、動作電流の拡散する発光部の領域の面積を拡張させることが出来る。
 本発明においては、発光の取り出し方向に配置する第1の電極は、回路基板等への実装或いは結線に供される台座電極と、該台座電極と電気的に導通させた導電性薄膜電極とから構成する。更に本発明では、発光の取り出し方向に配置する第1の電極のうちの台座電極は、コンタクト層上に直接被着するのではなく、コンタクト層上の少なくとも一部の領域に形成された、比抵抗が1Ω・cm以上の高抵抗の層或いは発光部を構成する最上層の半導体層とは異なる導電型を有する半導体層からなる電流阻止層上に配置する。これは、当該台座電極から発光部へ動作電流が短絡的に流入するのを防止するためである。この結果、動作電流は第1の電極のうちの台座電極からは短絡的に発光部へ流入せず、主に導電性薄膜電極を介して発光部へ均等に流入するようになる。
 台座電極と導電性薄膜電極との導通は、導電性薄膜電極を台座電極の上表面或いは下表面に接触させれば確保できる。しかし、回路基板等への実装或いは結線に供される台座電極は発光を透過させる必要がある導電性薄膜電極に比べれば一般には厚い。このため、導電性薄膜電極を台座電極の上表面上に接触する様に敷設すると、台座電極の厚さに相当する段差が少なくとも存在するため、この段差により導電性薄膜電極に不連続性が生ずる不具合が発生する。従って、導電性薄膜電極は電流阻止層と台座電極との中間に挿入して、台座電極との電気的な接触を保持するのが好ましい。この配置により、台座電極と電気的に導通し、且つ連続性が確保された導電性薄膜電極を形成することができる。これにより、電流阻止層によって台座電極から発光部への流通が妨げられた動作電流を、導電性薄膜電極を介して、光を取り出す表面に沿って有効に導通させられる。台座電極はアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)や金(Au)などの従来からある金属材料から構成すれば良い(「ジャーナル
オブ フィジクスアンド ケミストリ オブ ソリッド(J.Phys.Chem.Solids)」、第29巻(1968)、1255〜1267頁)。台座電極と接触している領域以外にある導電性薄膜電極は発光層からの光を取り出す表面のコンタクト層に接触させる。
 電流阻止層は、比抵抗が1Ω・cm以上の高抵抗の層あるいは発光部を構成する最上層の半導体層とは異なる導電型を有する半導体層から構成する。比抵抗が1Ω・cm以上の高抵抗の電流阻止層には、元素周期律表の第II族に属するマグネシウムや亜鉛等が適量ドーピングされ、ドナー成分を電気的に補償した高抵抗のGaN、AlNやAlGaN等のV族元素として窒素を含有するIII
−V族化合物半導体層が利用できる。電流阻止層は上記のV族元素として窒素を含有するIII −V族化合物半導体から構成する必要は必ずしもなく、例えばヒ化ガリウム(GaAs)やヒ化アルミニウム・ガリウム(AlGaAs)等から構成しても差し支えはない。酸化珪素膜や窒化珪素膜等の絶縁膜を利用することもできる。電流阻止層として要求される主たる電気的性質は抵抗率であって、それが大きい程好ましい。電流阻止層となる高抵抗層は、電流阻止層が積層される電流阻止層の直下の層の比抵抗に比較して、少なくとも約1桁以上高い比抵抗を有することが好ましく、具体的にはその比抵抗を約1Ω・cmから102 Ω・cm以上とするのが望ましい。電流阻止層を比抵抗が1Ω・cm未満で約0.1Ω・cm程度である半導体層から構成した場合、台座電極から発光部への動作電流の短絡的な流通を阻止するに充分な効果は必ずしも得られない。
 電流阻止層は、発光部を構成する最上層とは伝導形を異にする半導体から構成してもよい。発光部を構成する最上層とは、例えばダブルヘテロ接合型LEDにあっては上部クラッド層であり、ホモ接合型或いは下部クラッド層のみを備えたシングルヘテロ接合型LEDにあっては、発光層そのものとなる。従って、例えばダブルヘテロ接合型LEDの場合、上部クラッド層がn形であれば、上部クラッド層上のコンタククト層上には、p形の伝導形を呈する半導体からなる電流阻止層を設ける。コンタクト層を発光部を構成する最上層の表面上に設ける場合、コンタクト層の伝導型はその最上層の伝導型と同一とするのが常である。例えば、上部クラッド層とコンタクト層とを備えたLEDにあって、コンタクト層の伝導型はn形の上部クラッド層についてはn形、逆にp形の上部クラッド層についてはp形となる。従って、LED用途の積層構造にあって、発光部の最上層より発光の取り出し方向の上部に存在する半導体層の伝導形は、発光部の最上層の伝導形と同一とするのが通例であって、これより、光の取り出し方向に在る電極を設けるための電流阻止層の伝導形は発光部を構成する最上層の伝導形をもって規定することができる。電流阻止層と発光部の最上層との伝導形を異にするのは、電流阻止層と電流阻止層が積層される電流阻止層の直下の層との間でpn接合を形成して、動作電流の発光部への直接的で短絡的な漏洩を防止するためである。
 上記の比抵抗が1Ω・cm以上の高抵抗の層或いはpn接合をもたらす半導体層からなる電流阻止層の好ましい膜厚の範囲は、概ね、50nm以上で1000nm以下の範囲である。50nm以下の膜厚では高電界の印加時に動作電流が通過し易い。電流阻止層を1000nmを越える膜厚とすると、電流阻止層の側面で電極に不連続を生じる可能性があるなどの問題を生ずるおそれがあるため好ましくはない。望ましい膜厚は100〜200nmの範囲である。なお、コンタクト層がなくても電極と半導体の良好なオーム接触を得られる場合、上述した本発明に係わる半導体発光素子においてはコンタクト層を省略しても良い。その場合、上述の電流阻止層は発光部の最上層上に形成する。また、発光部上に半導体多重膜反射層等の機能層を積層する構造のLEDにおいては、該機能層上に本発明における電流阻止層を形成することも可能である。
 なお本発明においては、上記のように電流阻止層は、半導体発光素子をなす半導体からなる積層構造の内部に設けるのではなく半導体からなる積層構造の最上部に設けることを特徴とする。これは電流阻止層を半導体からなる積層構造の内部に設けるようにした場合、以下に述べるような問題が生じるためである。すなわち電流阻止層を半導体からなる積層構造の内部に設けるためには、半導体層の積層の途中で積層のプロセスを一度中断し、電流阻止層を形成するための半導体の積層とは別個のプロセスを経た後、再度半導体の積層を行う必要がある。そのため、半導体の積層のプロセスが複雑になる、或いは半導体の積層プロセスの中断のために積層する半導体層の品質が低下するといった問題が生じる。本発明においては、電流阻止層を半導体からなる積層構造の最上部に設けることにより、上記の問題の発生を防止することができる。
 さらに本発明者は実験結果から、電流阻止層が占有する領域の表面積を台座電極の表面積(S)に対し、0.7×S以上で2.45×S以下とすると、台座電極から発光部への動作電流の漏洩が低減され、且つ動作電流のより広範囲に亘る拡散を果たすに特に効果があることが見い出した。電流阻止層の表面積が台座電極の表面積(S)に対し、0.7×Sで与えられる値未満である場合、漏洩電流の流通を抑制する電流阻止層の表面積は台座電極が占める表面積より著しく小さくなる。従って、台座電極の下方のこの様な電流阻止層が欠損した領域の割合が増加し短絡的に発光部へと流入する動作電流が増加するため好ましくない。台座電極から発光部へと短絡的に流通する動作電流によっても一応の発光は得られるが、台座電極直下からの発光は、透光性の導電性薄膜電極に比較すれば膜厚を大とする台座電極に遮光されるためLEDの発光強度を顕著に増大させるには然したる寄与を示さない。また、台座電極の占有する領域に対して電流形成層が占有する表面積が小となると、漏れ電流の発生のために、導電性薄膜電極を経由して発光の取り出し面に沿って横方向に流れる電流が減少し、導電性薄膜電極を設けて発光面積を拡張する施策を施しても導電性薄膜電極に流入する動作電流の割合の低下を招き、発光強度の増大には不都合となる。
 一方、表面積が2.45×Sで与えられる数値を越える電流阻止層上に台座電極を設けると、台座電極より電流阻止層の表面積が大となるため、動作電流の発光部への短絡的な流通を回避するには充分となる。しかし、逆に表面積の大きな電流阻止層を配置すれば、この電流阻止層の直下の領域には動作電流が流入し難いため、動作電流が流入し得る発光部の面積がそもそも減少し、発光面積を拡張するに充分な効果が得られない。即ち、電流阻止層の表面積の上限を2.45×Sと規定する主たる理由は、電流阻止層の表面積の増大に伴い動作電流が流通し得る発光部の領域が縮小し、発光面積が拡張された発光強度に優れる発光素子を得るに効率的とはならないからである。
 さらに上述の発明において、前記の台座電極と前記の電流阻止層とが平面形状に於いて略相似形をなすように構成すると、動作電流の台座電極から発光部への短絡的な漏洩を低減するのに特に有効である。電流阻止層の平面形状がその上方に敷設する台座電極の平面形状と著しく異なる場合、台座電極の下方には電流阻止層が存在しない領域ができる。電流阻止層が存在しない領域に被着された台座電極からは動作電流が発光部へ直接流れ込む。即ち、発光領域への短絡的で局所的な動作電流の流入が起こる。よって、電流阻止層と同層の上方に設ける台座電極とは略相似形とし、形状の顕著な差異に基づき台座電極が電流阻止層から”はみ出す”領域を減少させることが、動作電流の台座電極から発光部への短絡的な漏洩を低減するために有効に働く。
 以上述べた発明においては、前記の導電性薄膜電極は発光部から放出される発光に対して透過性を有するものとする。本発明の半導体発光素子の発光部からの光は、該導電性薄膜電極を透過して外部に放出される。よって、導電性薄膜電極は発光に対し透過性を有する必要がある。本発明に係わる透光性の導電性薄膜電極は、Al、MgやAuなどの金属材料から構成する場合にあっては、その金属膜の膜厚を単純に薄くすれば、透光性が増大し、透光性の導電性薄膜電極と成すことができる。導電性薄膜電極を構成する金属膜の最適な厚さは発光波長により変化するが、発光波長を400〜500nmとするGaN系LEDにあっては概ね、100nm程度を最大の膜厚とする。また、導電性薄膜電極はインジウム・錫酸化膜(略称ITO)等の透明である無機材質から構成することもできる。ITOの様な、元来透明な材料から透光性電極を構成する場合にあっては、その膜厚を敢えて金属材料からなる薄膜を採用する際の様に100nm程度に抑制する必要は勿論ない。また、導電性薄膜電極は窒化チタン(TiN)、窒化アルミニウムチタン(TiAlN)等の高融点金属元素を含む窒素化合物材料から構成してもよい。特に、これらの窒素化合物材料はLEDの積層構造を構成するGaN等と同類の窒化物であり好都合である。導電性薄膜電極と台座電極とは同一の材料から構成しても構わない。また、導電性薄膜電極を例えばチタン(Ti)とし、台座電極をアルミニウム(Al)とするように、導電性薄膜電極と台座電極とを異なる材料から構成することも可能である。導電性薄膜電極は台座電極共々、多層構造としても差し支えない。多層構造からなる導電性薄膜電極の場合、各層の膜厚を合計した膜厚は発光の透過率の極端な低下を防止するためやはり最大100nm程度とする。上に例示した電極材料は通常の真空蒸着法やスパッタリング法等の公知の薄膜形成技術を利用して被着させることができる。
 さらに上述した発明において、前記の導電性薄膜電極は発光部からの発光の取り出し面の略全面に設けられているように構成すると、発光面積を拡大するのに有効である。すなわち、導電性薄膜電極の面積に比例して動作電流が拡散される領域の拡張が果たせるため、導電性薄膜電極を発光の取り出し面の略全面に設けるのが最良であって、電界が発光部のほぼ全域に充分に波及する様に形成されているのが好ましい。
 以下、本発明を実施例を基に説明する。図4に本発明の実施例に係わるLEDの平面模式図を示す。図1には、図4に示す破線A−A’に沿った断面模式図を示す。
 本実施例に係わるLED用途の半導体発光素子をなす積層構造は、面方位を{0001}(C面)とするサファイア(アルミナ単結晶)からなる基板(101)上に構成した。V族元素として窒素を含有するIII −V族化合物半導体からなる各層はトリメチルガリウム((CH33 Ga)をガリウム(Ga)源とし、アンモニア(NH3
)を窒素(N)源とする通常の常圧方式の有機金属熱分解気相成長(MOCVD)法で成長させた。このMOCVD成長系により650℃〜1080℃の成長温度範囲に於いて、基板(101)上に第1から第4のV族元素として窒素を含有するIII −V族化合物半導体層(102)〜(105)と第5の層とした電流阻止層(108)とを含めて合計5層のV族元素として窒素を含有するIII
−V族化合物半導体層を順次積層した。
 第1の層は約1000℃で成長させた、膜厚を約2μmとするキャリア濃度が約1×1018cm-3のn形GaNからなる下部クラッド層(102)である。第2の層は下部クラッド層(102)上に堆積された亜鉛(Zn)を再結合中心としてドーピングしたキャリア濃度を約6×1017cm-3とするn形のIn0.05Ga0.95Nからなる発光層(103)である。発光層(103)の成長温度は890℃とし、また、膜厚は約100nmとした。発光層(103)上には、第3の層として成長温度1080℃でマグネシウム(Mg)をドーピングしたキャリア濃度を約6×1016cm-3とした膜厚約100nmのp形のAl0.05Ga0.95N混晶からなる上部クラッド層(104)を設けた。上記の下部クラッド層(102)、発光層(103)、上部クラッド層(104)でLEDの発光部を構成した。上部クラッド層(104)の上には、成長温度を約1000℃としてマグネシウムを添加した膜厚を約200nmのp形のGaNからなるコンタクト層(105)を第4の層として設けた。コンタクト層(105)はキャリア濃度は約1×1017cm-3であって、比抵抗にすれば約10Ω・cmであった。
 p形のGaNからなるコンタクト層(105)上には、成長温度を650℃として、第5の電流阻止層(108)に用いる高抵抗のGaN層を形成した。この高抵抗のGaN層の膜厚は約50nmであり、比抵抗は約103 Ω・cmであった。本実施例に於ける電流阻止層(108)に用いる高抵抗のGaN層の比抵抗は、それを堆積したコンタクト層(105)の比抵抗に比較し約2桁高い値になっている。
 然る後、公知のフォトリソグラフィー技術に依るパターニング技術を利用して、選択された領域に限りGaNからなる下部クラッド層(102)の表面が露呈するに至る迄、エッチングを進めた。露呈した下部クラッド層(102)の表面上には、後に通常の真空蒸着法等のプロセス手法により金(Au)を被着し、電極(107)を形成した。
 残存する高抵抗のGaN層上には更に公知のフォトリソグラフィー技術を駆使して、後に発光の取り出し方向に設ける台座電極(110)を配置する領域をパターニングした。パターニングを施したのは平面形状を長方形とする、表面積が1.45×10-4cm2 の領域である。パターニングした領域は、台座電極(110)と相似である長方形とした。この表面積は台座電極(110)の表面積である1.20×10-4cm2 の1.21倍に相当した。このパターニングされた領域に限り高抵抗のGaN層を残存させながら、それ以外の領域に在る高抵抗のGaN層はエッチングにより除去した。これにより、残存する高抵抗のGaN層は台座電極(110)を配置する予定の領域のみとなり、この残存させた高抵抗のGaN層は電流阻止層(108)として利用した。
 台座電極(110)の形成予定領域にのみ電流阻止層(108)を残存させた積層構造の表面にアルミニウム(Al)からなる薄膜を通常の真空蒸着法により被着した。公知のパターニング技術及びリフトオフ技術により、このアルミニウム薄膜を発光層(103)のほぼ全域に相当するp形GaNコンタクト層(105)上に残存させ、透光性の導電性薄膜電極(109)とした。この透光性の導電性薄膜電極(109)の膜厚は約80nmとした。同時に電流阻止層(108)の表面及び側壁周囲も上記の導電性薄膜電極(109)で被覆した。然る後に、再びアルミニウムを真空蒸着し、リフトオフ工程等を経て、発光の取り出し方向に配置する台座電極(110)を形成した。台座電極(110)は図1に示す断面模式図から明かな様に、電流阻止層(108)上に導電性薄膜電極(109)を介在して敷設されており、導電性薄膜電極(109)とは電気的に導通している。台座電極(110)の膜厚は約1300nmとした。
 一辺を約350μmのほぼ正方形とした本実施例に係わる半導体発光素子に、20mAの動作電流を流通した場合に得られる特性を表1に纏める。同表には比較のため、本発明に係わる電流阻止層を備えていないが本実施例とは同様の半導体積層構成からなるLEDの特性を従来例として示してある。本発明及び従来例共に、LEDからの発光の中心の発光波長は450nmであり、両者に差異は認められない。これは、本実施例に係わるLEDに於いても、従来例と同じく発光が再結合中心である亜鉛によっているからである。発光スペクトルの半値幅を比較すれば、双方共に65nm(本実施例)から72nm(従来例)の範囲であり、極端な差異は認められない。一方発光の強度は、本発明では1.2mWであるのに対し、従来例では0.94mWであり、本発明により約1.28倍の向上が果たされている。これは本発明に係わる電流阻止層を設けることにより、台座電極から発光層への短絡的に流入する動作電流成分が減少され、動作電流のほとんどが導電性薄膜電極を介して発光部のほぼ全域に拡散された結果、発光面積が拡張されたことによるものである。
 本発明は、半導体発光素子において動作電流の発光部への拡散が助長され発光強度を増大させる効果が得られる。本発明は、金属等からなる透光性の導電性薄膜電極を用いて動作電流の発光部への拡散を図る半導体発光素子において有効に働く。本発明は、上述してきたような半導体層によっては動作電流の発光部への十分な拡散が図れないV族元素として窒素を含有するIII −V族化合物半導体からなる半導体発光素子において特に有効であるが、他のIII −V族化合物半導体からなる半導体発光素子においても同様に用いることができる。あるいはV族元素として窒素を含有するIII
−V族化合物半導体と他のIII −V族化合物半導体とを組み合わせてなる半導体発光素子においても用いることが出来る。特にV族元素として窒素を含有するIII −V族化合物半導体からなる発光層を有する青ないし青緑色等の発光をなすLEDにおいて本発明を用いると、従来のLEDに比較して発光強度の優れたLEDを得ることが出来る。
Figure 2004140416
本発明の実施例に係わるLEDの断面模式図である。 従来のV族元素として窒素を含有するIII −V族化合物半導体からなるLEDの断面模式図である。 透光性の導電性薄膜電極を設けてなる従来のLEDの一構造例を示す断面模式図である。 図1に示す本発明の実施例に係わるLEDの平面模式図である。
符号の説明
(101) 基板
(102) 下部クラッド層
(103) 発光層
(104) 上部クラッド層
(105) コンタクト層
(106) 電極
(107) 電極
(108) 電流阻止層
(109) 導電性薄膜電極
(110) 台座電極

Claims (2)

  1. 基板上に、V族元素として窒素を含有するIII−V族化合物半導体層を含む発光部、電流阻止層、導電性薄膜電極、台座電極を有する半導体発光素子であって、導電性薄膜電極は、発光に対して透過性を有し、電流阻止層と台座電極とに接し、発光の取り出し面の略全面に設けられ、電界が発光部のほぼ全域に波及するように形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
  2. 発光部と導電性薄膜電極との間にコンタクト層が設けられ、導電性薄膜電極はコンタクト層と電流阻止層とに接して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
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