JP2004138655A - 定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物 - Google Patents
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Abstract
【課題】生産安定性と生産効率を改善できるように成形中も高い引裂強度を有し、搬送運転中の端面からの割れやつぶれを抑制できるように十分な剛性、可撓性、引裂強度を備え、高転写性と高速印刷にも十分対応できる高い熱伝導性を有する定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物を得る。
【解決手段】イミド化促進剤を添加後加熱焼成して得られるポリイミド樹脂100重量部に対して無機フィラーを30〜250重量部含有し、熱伝導率が0.30W/m・K以上であることを特徴とする、定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物。
【選択図】 なし
【解決手段】イミド化促進剤を添加後加熱焼成して得られるポリイミド樹脂100重量部に対して無機フィラーを30〜250重量部含有し、熱伝導率が0.30W/m・K以上であることを特徴とする、定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイミド樹脂が本来有する優れた機械特性、耐熱性等の特性に加え、高熱伝導性も有する、定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐熱性樹脂、なかでもポリイミド樹脂は、その優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性等の特性を活かし、フィルム、チューブ若しくはベルト等の管状体、又は各種成形物等として幅広く利用されている。例えば、フィルム状としてフレキシブルプリント配線板(以下、FPC)やTAB(Tape Automated Bonding)のベース基材、電線の絶縁被膜、チューブ若しくはベルト状の管状物として電子写真記録装置やインクジェットといったOA機器のパーツ等、様々な用途に用いられている。また、近年では半導体周辺でも用いられており、その特性を活かして、例えば、接着剤等にも用いられつつある。
【0003】
しかしながら、FPCや半導体周辺では、近年の高密度実装に伴って、ベース基材や絶縁膜として用いられる樹脂の放熱性の問題が顕在化してきている。具体的には、放熱性に乏しい樹脂フィルムを使用するために蓄熱が起こり、電子機器そのものの信頼性が低下するといったことである。
【0004】
また、電子写真装置周辺では、フィルム状のエンドレスベルトを介して、ヒータにより記録紙上のトナーを直接加熱溶融させる定着方式が採用されてきている。この定着方式において、ベルト等の管状物材料は樹脂であるために、熱伝導性が低く、定着速度の高速化に十分に対応することが困難であった。また、例えば、前記ベルトの熱伝導性を改善するために、厚みを薄くすると、その剛性が低下するため、定着時の回転によりベルトにしわやつぶれが発生し易くなる。
【0005】
以上のような問題を解決するために、樹脂表面に、アルミニウムなどの熱伝導性に優れる金属薄膜を形成する手段が講じられている。この方法は、大幅な製造コストアップを招くという問題がある。また、カーボンブラック、セラミック等の熱伝導性に優れたフィラーを混合させるなどの提案がされているが、樹脂組成物の機械特性が大幅に低下する問題が生じる。
【0006】
また特に定着ベルトの分野においては、高熱伝導性無機フィラーを配合したポリイミド樹脂組成物を用いて定着用ベルトを作製することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。ところが、無機フィラーを含有するポリイミド樹脂製ベルトは、ポリイミド樹脂単体からなるベルトに比べて、可撓性が著しく低下する。また、ポリイミド樹脂製ベルトの熱伝導性と可撓性を両立させるために、特定のポリマーブレンド物またはポリイミド共重合体から選ばれる少なくとも一種のポリイミド樹脂と無機フィラーからなるベルトが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、このような構成の定着用ベルトは、成形後の可撓性は高いが、無機フィラーを多く含むために成形中の強度が著しく劣り、成形が非常に困難になるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−25478号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平8−80580号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、生産安定性と生産効率を改善できるように成形中も高い引裂強度を有し、搬送運転中の端面からの割れやつぶれを抑制できるように十分な剛性、可撓性、引裂強度を備え、高転写性と高速印刷にも十分対応できる高い熱伝導性を有する、定着若しくは転写定着用に好適なポリイミド成形物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、このような課題を解決すべく、成形条件、フィラーの効果等を種々比較検討した結果、イミド化促進剤を添加後加熱焼成して得られるポリイミド樹脂に無機フィラーを配合したポリイミド樹脂組成物を用いた定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明の第一は、イミド化促進剤を添加後加熱焼成して得られるポリイミド樹脂100重量部に対して無機フィラーを30〜250重量部含有し、熱伝導率が0.30W/m・K以上であることを特徴とする、定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物を内容とする。
【0012】
本発明の第二は、イミド化促進剤を添加後加熱焼成して得られるポリイミド樹脂100重量部に対して無機フィラーを30〜250重量部含有し、熱伝導率が0.30W/m・K以上である内層と、フッ素樹脂を含有する外層とを有することを特徴とする、定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物を内容とする。
【0013】
好ましい実施態様は、無機フィラーの含有量が50〜200重量部であることを特徴とする、前記いずれかに記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物に関する。
【0014】
更に好ましい実施態様は、無機フィラーが、針状または鱗片状のフィラーを無機フィラー中に30vol%以上含むものであることを特徴とする、前記いずれかに記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物に関する。
【0015】
更に好ましい実施態様は、イミド化促進剤が酸無水物および/または三級アミンであることを特徴とする、前記いずれかに記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物に関する。
【0016】
更に好ましい実施態様は、熱伝導率が0.40W/m・K以上であることを特徴とする、前記いずれかに記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物に関する。
【0017】
更に好ましい実施態様は、引裂強度が15kg/mm以上であることを特徴とする、前記いずれかに記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物に関する。
【0018】
更に好ましい実施態様は、フィルム状または管状に成形されていることを特徴とする、前記いずれかに記載のポリイミド成形物に関する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリイミド樹脂とは、その構造中にイミド結合を有する樹脂全般を意味し、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミドなどの一般名称で呼ばれる樹脂はもちろん、他樹脂との共重合系やブレンド物も含むものである。なお、他樹脂との共重合系やブレンド物の場合は、全樹脂中にポリイミド樹脂成分が50重量%以上、好ましくは80重量%以上含まれていればよい。
【0020】
中でも、無機フィラーの表面活性基と強く結合することができる反応硬化型の直鎖状ポリイミド樹脂が好ましい。ここで、反応硬化型の直鎖状ポリイミド樹脂とは、その前駆体である直鎖状ポリアミド酸を経由し、アミド酸部位が脱水閉環することで得られるポリイミド樹脂のことを意味し、例えば、ピロメリット酸二無水物と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルとの反応で得られる直鎖状のポリアミド酸を、加熱及び/又は触媒添加等することで得られるポリイミド樹脂が代表例として挙げられる。反応硬化型の直鎖状ポリアミド酸は、カルボン酸基やアミノ基等の官能基を有しており、これら官能基は無機フィラーと強く相互作用する。このため、無機フィラーと強固な結合を形成することができる点から、好ましく用いられ得る。
【0021】
さらに、イミド化促進剤として酸無水物および/または三級アミンを添加後加熱焼成(以下、ケミカルキュアとも言う。)すると、熱キュアする場合と比較して、成形初期の段階から強度の高いものが得られる傾向があるため好ましい。この場合、成形中に乾燥や脱水反応により樹脂が収縮したとしても、樹脂が裂けることが少ないため、収率改善すなわち生産性の改善に繋がる。
【0022】
例えば、フィルム状で成形する場合、端部をピン枠で固定して成形を行うが、この場合、成形中に樹脂に強いテンションがかかりフィルムが裂ける場合がある。ところが、ケミカルキュア法を用いればこのような事態は発生しにくくなる。特に樹脂中に無機フィラーを含む場合、特に30重量部以上の高充填をした場合、フィルム等が非常に裂けやすくなるが、ケミカルキュア法を用いればこのような問題を回避することができる。
【0023】
また、管状に成形する方法として、例えば、円筒状の金型に原料樹脂溶液を塗布後、乾燥させる方法が例示され得るが、この乾燥中に樹脂は収縮する。このため、熱キュア法では成形中の強度が弱いことが原因で、管状物等が裂けることがよくある。しかし、ケミカルキュア法を用いれば、このような裂けを抑制することができる。また、無機フィラーを含む場合、或いは管状物の径が30mm以上さらには50mm以上となる場合には、樹脂の収縮による裂けが顕著になるが、ケミカルキュア法を用いればこのような問題を回避することができる。
【0024】
また、フィルムや管状物のように厚みが200μm以下、特に100μm以下の薄い成形体を作成する場合、裂けやすくなる傾向があるが、ケミカルキュア法を用いた場合はこのような問題を回避することが可能となり得る。
【0025】
ケミカルキュア法を用いた場合は、成形後においても引裂強度の高い成形物が得られるため、例えば、冷却による収縮によりフィルムや管状物が裂けることを抑制することができる。特に管状物として成形した場合、管状物を金型から引き抜く必要があるが、熱キュア法により作成したものやフィラーを高充填したものは引裂強度が弱く、引き抜く過程で管状物が破損する場合がある。ところが、ケミカルキュア法で作成した場合は、このような破損を大幅に抑制することができる。
【0026】
また、ケミカルキュア法で作成した管状物は、例えば、定着ベルト若しくは転写定着ベルトとして長時間回転させた場合でも、端部からの裂けやつぶれが発生することなく安定的に使用することができる。
【0027】
前記イミド化促進剤である酸無水物としては、例えば、無水酢酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸無水物や無水安息香酸等の芳香族酸無水物などが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられ得る。また三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン等の脂肪族第三級アミン類、N,N−ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリン、キノリン等の複素環式第三級アミン類などが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられ得る。
【0028】
次に、本発明で用いられるポリイミド樹脂の具体的な構造について説明する。
【0029】
一般的なポリイミド樹脂としては、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物をモノマーとして用いて形成するのが通常である。ジアミン化合物としては、例えば、
【0030】
【化1】
(式中、Xは同一または異なって、ハロゲン、−CH3、−OCH3、−O(CH2)nCH3、−(CH2)nCH3、−CF3、−OCF3からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を表す。また、Aは同一または異なって、O、S、C=O、(CH2)n、SO2、N=Nからなる群から選ばれる少なくとも一種の基を表す。mは1以上の整数。nは1以上の整数。)
に示す種々のモノマーを用いる事ができる。
【0031】
またテトラカルボン酸二無水物としては、
【0032】
【化2】
(式中、nは1以上の整数。)
に示す種々のモノマーを用いる事ができる。
【0033】
上記の組み合わせにより様々な特徴を出す事が可能であり、用途や加工法などの状況に応じて適宜選択することができる。
【0034】
例えば、屈曲鎖を多く(好ましくは2以上)含む、および/またはアミノ基をメタ位に有する芳香族ジアミンを用い、2環以上のテトラカルボン酸二無水物を用いる事で、熱可塑性のポリイミドとすることができ、加熱溶融成形が可能な樹脂組成物を提供することが可能である。例えば、2、2´−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンと、オキシジフタル酸二無水物の組み合わせや、ビス(2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ)エタンと3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の組み合わせ等を例示することができる。
【0035】
また、ポリイミド樹脂はイミド基の存在により通常高吸水率を有するが、特定のモノマーの組み合わせにより比較的低吸水率とすることもできる。例えば、テトラカルボン酸二無水物として2以上のエステル結合を有し複数のベンゼン核が結合された構造を有するものを使用して得られたポリイミド樹脂が挙げられる。具体的には、
【0036】
【化3】
(式中、nは1以上の整数。)
【0037】
【化4】
【0038】
【化5】
に示されるような酸二無水物が挙げられる。
【0039】
この場合、用いられるジアミン化合物としては、イミド基含有率を調整するために比較的長鎖のモノマーを用いることが好ましい。例えば、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンやその結合位置異性体、2,2´−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。ただし、酸二無水物についてもジアミン化合物についても、長鎖でかつ屈曲鎖を多数有する構造は、同時に前述の熱可塑性発現の条件でもあり、十分な耐熱性が要求される場合には不適当である。この場合は長鎖でありかつ直線的構造を全体的または部分的に有するモノマーが好適である。例えばテトラカルボン酸二無水物としては、
【0040】
【化6】
で示す構造のモノマー(以下、TMHQ)が例として挙げられる。このモノマーは、屈曲鎖を含むものの全体としては概ね直線的なコンフォメーションを取りうる構造であり、その結合数の多さのわりには比較的剛直なポリイミドを形成する。この原料を用いれば、例えば、線膨張係数15ppm以下、吸水率1.5%以下、吸湿膨張係数10ppm以下といった加熱や吸湿による寸法変化が少ないポリイミド樹脂を容易に得ることも可能になる。
【0041】
一方、ジアミン化合物としても、例えば、ビフェニル構造やナフタレン構造をエーテル結合でつなぐような構造が、長鎖でありながら比較的剛直な構造として選択できる。例えば4,4´−ビスアミノフェノキシビフェニルなどがあげられる。これら酸二無水物とジアミン化合物の組み合わせにより、比較的低吸水率であり、かつ顕著な熱軟化性を有さないポリイミド樹脂を得ることができる。またこれらモノマーのみではなく、汎用のピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、パラフェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル等を適宜共重合する事により、任意の特性のポリイミド樹脂を設計可能である。
【0042】
また、ポリイミドの線膨張係数は、銅といった金属と比べて一般に大きいのが通常である。しかし、モノマーの種類や組成比が同じ場合でも、モノマーの組み合わせを制御(シーケンスコントロール)することにより、比較的小さな線膨張係数を有するポリイミド樹脂を得ることができる。例えば、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミン、ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAとも言う。)をランダム共重合する場合に比べて、4,4´−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物を予め反応させておき、その後パラフェニレンジアミンを添加する手順を取ると低線膨張係数のポリイミド樹脂を得ることができる。
【0043】
本発明においては、ポリイミド樹脂に無機フィラーを配合するため、ポリイミド樹脂に対し、ポリイミド樹脂単体で用いる場合に比較して、より高い靭性が求められる。ポリイミド樹脂自身の靭性が十分でないと、無機フィラーの配合により必然的に靭性が低下するため、実用に供する事ができなくなる場合がある。その点で最も好ましいのは、ピロメリット酸二無水物と4,4´−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリイミド樹脂である。本構造は、十分な耐熱性と高い靭性を兼ね備え、なおかつ広い範囲の加工条件でその特性を維持できるバランスの取れた構造である。
【0044】
本発明において、ポリイミド樹脂の熱伝導性を向上させる無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、タングステンカーバイト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、マイカ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、インジウムチンオキサイド、タルク、導電性物質で被覆された半導電性フィラー等があげられる。
【0045】
ここで上記半導電性フィラーの体積抵抗値は、1×103〜1×1010Ω・cmの範囲であり、より好ましくは1×103〜1×108Ω・cm、特に好ましくは1×103〜1×107Ω・cmの範囲である。上記導電性物質で被覆された半導電性フィラーとしては、例えば、炭素、黒鉛等の黒色導電性物質、又はインジウム−錫複合酸化物(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、ニオブドープ酸化錫(NTO)、タンタルドープ酸化錫(TTO)、フッ素化物ドープ酸化錫(FTO)、酸化錫(TO)等の酸化錫系導電性物質で被覆された半導電性フィラーが挙げられる。
【0046】
これら材料は、前記導電性物質の種類、量、形成方法によって熱伝導性や抵抗値を調整することができる。黒色導電性物質や酸化錫系導電性物質は、電子伝導性を有するため、電子移動による熱移動に優れ、熱伝導性に優れる。
【0047】
具体的な導電性物質の調整方法としては次のような方法がある。例えば、炭素や黒鉛等の黒色導電性物質で被覆された材料では、空気中で、50〜750℃の温度で加熱すると、抵抗が上がり、熱伝導性が下がる。また、酸化錫やドーピングを施した酸化錫で被覆された材料では、そのドーピング量、酸化錫層を形成した後、加熱雰囲気を酸化性若しくは非酸化性のどちらかに選択すること、又は加熱温度を変更することでも熱伝導性と抵抗を制御することができる。
【0048】
本発明に用いられる導電性物質で被覆された半導電性フィラーの無機芯材としては、金属、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物といったセラミック材料や金属塩といったものが挙げられる。例えば、亜鉛、酸化亜鉛、アルミニウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、カルシウム、炭酸カルシウム、銀、酸化クロム、ケイ素、ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、シリカ、ガラス、酸化チタン、チタン酸金属塩、ホウ酸アルミニウム、酸化錫、鉄、酸化鉄、銅、酸化銅、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化バリウム、マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ゲルマニウム、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ホウ素、マイカ、タルク、ウォラストナイト、タルク、カオリン、粘土鉱物等が挙げられる。
【0049】
本発明における無機フィラーとしては、上記のフィラーの中でも優れた熱伝導性を有する点から、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、インジウムチンオキサイド、導電性物質で被覆された半導電性フィラーから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0050】
また、ポリイミド樹脂及び上記の熱伝導性無機フィラーを含有する樹脂組成物が、定着ベルト若しくは転写定着ベルトとして使用される場合は、該ベルトは、使用時の電圧で破損しないように高絶縁で、かつ樹脂の帯電を防止するために、中抵抗(1×106〜1×1013Ω・cm、好ましくは1×108〜1×1013Ω・cm)である必要がある。特に、転写定着ベルトに使用される場合には、中抵抗の特性も非常に重要となる。そのためには、上記の熱伝導性無機フィラーも高絶縁性で中抵抗値(1×103〜1×1013Ω・cm)の特性を有する必要がある。このような特性を有する熱伝導性無機フィラーとしては、炭化ケイ素、炭化チタン、チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化錫、導電性物質で被覆された半導電性フィラーから選ばれる1種又は2種以上であることが特に好ましい。
【0051】
本発明に用いる無機フィラーの形状としては、粒状、針状、鱗片状等、特に限定されるものではないが、針状または鱗片状のフィラーが、全無機フィラー中に体積分率で30vol%以上含まれることが、以下の点からより好ましい。粒状フィラーのみを用いて成形する場合、成形中のテンションや成形後の長期使用により裂けやすくなることがあり、またフィラー間の接触も起こりにくい場合があるため熱伝導性が低くなることもある。しかし、針状または鱗片状のフィラーを30vol%以上含む場合は、フィラー間の接触が起こりやすくなることより、フィラーを少量添加する場合でも熱伝導性が改善できる傾向がある。また、成形中および成形後の引裂強度が高くなるため、断裂や張力による寸法変化や破損を抑制することが可能で、高耐久かつ高寸法安定性で長期の搬送特性が実現できる機械強度に優れたフィルムや管状物を得ることができる。また線膨張係数、吸湿膨張係数の小さい樹脂組成物を得ることもできる。
【0052】
このような針状または鱗片状の熱伝導性無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、チタン酸カリウム、酸化チタンが挙げられる。導電性物質で被覆された半導電性フィラーを用いる場合、その針状または鱗片状の無機芯材としては、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ケイ素、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムが用いられ得る。
【0053】
前記無機フィラーが粒状である場合、粒径は10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。100μm以下といった厚みが薄い成形物においては、無機フィラーが10μmよりも大きい場合、分散不良による局部の凝集によって絶縁破壊が起こる場合があるため、好ましくない。これに対し、無機フィラーが10μm以下であれば、多少の凝集があっても絶縁性の悪化に至りにくいために好ましい。
【0054】
無機フィラーが針状や鱗片状である場合、その短軸径は5μm以下、好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。100μm以下といった厚みが薄い成形物において、前記無機フィラーの短軸径が10μmよりも大きい場合、絶縁破壊が起こりやすくなるため好ましくない。これに対し、短軸径が10μm以下であれば、多少の凝集があっても絶縁性の悪化に至りにくいために好ましい。
【0055】
これらの熱伝導性無機フィラーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
次にポリイミド樹脂に対する無機フィラーの配合量は、ポリイミド樹脂100重量部に対し30〜250重量部であることが好ましく、更には50〜200重量部であることがより好ましく、特には50〜180重量部であることが最も好ましい。無機フィラーの配合部数が250重量部よりも多いと、成形中及び成形後においてフィルム若しくは管状物等の成形物が脆くなる傾向がある。逆に、30重量部よりも少ないと、熱伝導性の改良効果が小さく目的の熱伝導性を有するポリイミド成形物を得ることができないために好ましくない。
【0057】
得られるフィルム若しくは管状物等の成形物の熱伝導率は、0.30W/m・K以上であると好ましく、0.40W/m・K以上であるとさらに好ましい。0.30W/m・Kを下回る場合は定着性に劣る傾向があり、未定着のトナーが紙から剥がれる場合がある。また、定着に時間がかかり、印刷速度の高速度化を妨げる場合がある。なお、本発明における熱伝導率は、京都電子工業(株)製の迅速熱伝導率計KemthermQTM−500により測定することができる。
【0058】
次に、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸と熱伝導性無機フィラーを混合する方法について説明する。例えば、主に二つの方法があげられる。一つ目としては、ポリアミド酸の重合溶媒に予め無機フィラーを添加して無機フィラーの分散溶液を調製しておき、その後ポリアミド酸の原料であるジアミン化合物と酸二無水物とを添加してポリアミド酸を重合する方法がある。二つ目としては、予め重合して得たポリアミド酸溶液と上記の無機フィラーの分散溶液を混合する方法がある。
【0059】
前記無機フィラーの分散溶液を調製するに際し、分散剤を配合しても良い。分散剤としては、金属塩や界面活性剤といったものが挙げられる。特に金属塩が好ましく、Li塩、Na塩、K塩、Rb塩、Cs塩、Be塩、Mg塩、Ca塩、Sr塩、Ba塩からなる群より選択される1種又は2種以上の組み合わせが好ましい。中でも、Li塩、Na塩、K塩がより好ましい。Li塩としては格子エネルギーが1100kJmol−1以下のLi塩が好ましく、具体的には LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSCN、LiCF3SO3といったものが挙げられる。Na塩としては格子エネルギーが800kJmol−1以下のNa塩が好ましく、具体的にはNaF、 NaCl、 NaBr、 NaI、 NaSCN、 NaCF3SO3といったものが挙げられる。K塩としては格子エネルギーが800kJmol−1以下のK塩が好ましく、具体的にはKF、 KCl、 KBr、 KI、 KSCN、 KCF3SO3といったものが挙げられる。これらの金属塩は、常温でイオンが解離しやすく、前記無機フィラーと相互作用が強くなるために好ましい。ただし、格子エネルギーが小さすぎると、添加量の影響が大きくなりすぎる傾向がある。これら金属塩は有機物を含まないために、成形中に高温乾燥される場合でも樹脂が焼け付くようなことがない。
【0060】
分散剤の配合量はポリイミド樹脂100重量部に対して1重量部以下の所定の量を配合すれば良く、0.01〜0.1重量部以下でも十分効果はある。一般に電線被覆の用途では、金属塩が添加されると絶縁性が悪化し、特に誘電率が4以上の材料に添加した場合にはイオン伝導性が高まり、絶縁性が悪化するため好ましくないが、ポリイミド樹脂と熱伝導性無機フィラーの組み合わせにおいては、ポリイミド樹脂が絶縁性に優れ、誘電率が4以下であるため、上記で示した配合範囲では特に絶縁性が悪化することはない。
【0061】
添加する熱伝導性無機フィラーをポリイミド樹脂に分散させるための方法としては、種々の方法がとられ得る。
【0062】
ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸溶液中に、フィラーを溶媒に予備分散した分散液を加え、攪拌翼で混合する方法、或いは3本ロールなどの混練り機を用いて混合する方法を用いることができる。また、逆に予めフィラーを溶媒に予備分散した物に対し、ポリアミド酸溶液を加えて良く混合するという方法も可能である。前記予備分散の方法としては、フィラーを溶剤に加えて超音波分散機によって十分に分散を進めておくといった方法が有効である。特に針状フィラーは過剰な剪断力を受けると形状が破壊される可能性があるため、過剰な剪断力を受けにくい分散方法を用いることがより好ましい。
【0063】
予備分散を行うに際し、フィラーの分散性を補助するための分散剤を併用することも、ポリイミド樹脂の特性劣化を顕著に起こさない範囲で可能である。予備分散液に分散剤として金属塩を添加した場合には、分散状態が非常に均一になるため、手による攪拌でも十分均一な分散状態を実現することができる。また、予備分散液に、ポリアミド酸溶液を少量ずつ攪拌しながら添加していく方法は、上記の逆手順よりも分散性がより向上する。
【0064】
また、特に良好な分散性が得られる別の方法として、まず溶剤中にフィラーを加え超音波分散機等により十分に分散させておき、これにポリイミド樹脂(ポリアミド酸)の原料であるジアミン化合物と酸二無水物化合物を加えて重合反応を行うという方法がある。この方法によれば超音波分散等によりミクロなレベルでの分散が良好に保たれると同時に、初期のフィラー分散後から重合中にかけて常に攪拌がなされるために、マクロなレベルの分散性も非常に良好となる。
【0065】
ポリアミド酸溶液からイミド化させてポリイミド樹脂を得る方法としては、下記のような方法が挙げられる。
【0066】
ポリアミド酸溶液を任意の形状に加工した後、加熱、場合によっては減圧を併用する加熱により溶剤を揮発せしめ、ポリイミド成形物を得ることができる。この場合、加熱に先立ち、イミド化促進のため、脱水剤として無水酢酸などの酸無水物や触媒として三級アミンを単独または併用して用いるとよい。ただし、酸無水物はイミド化反応の促進だけでなく、ポリアミド酸の分子主鎖の切断も引き起こし得るため、ポリイミド成形物の機械的特性のためには、酸無水物及び三級アミンの併用、または三級アミンのみの添加がより好ましい。
【0067】
このようなイミド化促進剤の添加によるケミカルキュアをおこなえば、熱のみによりイミド化する場合に比べて、成形中及び成形後の成形物の引裂強度が強くなるため、裂けの少ない成形物を得ることができる。特に無機フィラーを高充填した場合にはより顕著になる。具体的には、成形後における成形物の引裂強度が15kg/mm以上となることが好ましく、更には20kg/mm以上となることが好ましく、特には25kg/mm以上となることが最も好ましい。また、ケミカルキュアを実施することで、加熱時間を減らすことが可能で、熱伝導性無機フィラーが熱劣化することを抑制することができる。更に加熱時間が短いために、樹脂の熱劣化や樹脂と熱伝導性無機フィラーの反応による劣化を抑制することもできるために好ましい。
【0068】
また、イミド化促進剤を添加する製法においては、樹脂の面内配向が進むため、針状や鱗片状の熱伝導性無機フィラーを用いた場合、熱伝導性無機フィラーも平面状に配向しやすくなる。その結果、厚みが100μm以下といった薄い成形物の場合、厚み方向に配向する熱伝導性無機フィラーが減少し、電気絶縁性を改善できる。またフィラーの吸湿により厚み方向の電気特性が劣化した部分を減らすことができる点からも好ましい。また、成形時間が短くて済むため、生産性が飛躍的に向上し、製造中に成形物の強度が出やすく製造中に脆くなることが抑制できる。
【0069】
フィルム又は管状物への具体的な成形法として、下記の方法が例示され得る。
【0070】
上記無機フィラーを分散させた樹脂溶液をエンドレスベルト上に、例えば、Tダイ、コンマコーター、ドクターブレードなどを用いて厚みを制御した上で塗布する。樹脂溶液を熱風などによって自己支持性が発現するまで加熱乾燥し、そののちエンドレスベルトより引き剥がす。引き剥がした半乾燥状態のフィルムの幅両端をピンやクリップによって固定し、幅方向の長さを規制しながら順次高温の加熱炉内を通すことにより、フィルム状成形物を得ることができる。または金属などの連続したシート状の支持体上に同様の方法で塗布し、これを加熱炉内へ通過せしめることによってシート状に固定されたフィルム若しくはシート形状のポリイミド成形物を得、そののち支持体シートより引き剥がす、若しくは支持体シートをエッチングなどの手段により除去する方法も取られ得る。
【0071】
このようにして得たフィルムまたはシート状の成形物を所定の長さと幅に切り、ベルト状またはチューブ状につなぎ合わせて目的の管状物を得る方法が最も容易である。つなぎ合わせには接着剤や接着テープ等を用いることができるが、この方法は不可避的につなぎ目で段差や切れ目が存在する。このため、用途によっては不都合が生じる場合がある。
【0072】
管状物を得る方法としては、円筒状金型の内面または外面に樹脂溶液を塗布し、加熱乾燥あるいは減圧乾燥などにより溶媒を揮発させ、これをこのまま最終焼成温度まで加熱するか、あるいは一旦引き剥がして、最終的に内径を規定するための別金型の外周にはめ込み、最終焼成温度まで加熱するといった方法を用いることができる。円筒状金型への樹脂溶液の塗布にあたっては、樹脂溶液の垂れによる厚みばらつきを緩和するため、金型を回転させることも有効である。最終焼成温度はポリイミド樹脂の構造や添加するフィラーの耐熱性により適宜選択する事が必要であるが、非熱可塑性ポリイミドでポリアミド酸状態から加熱・焼成する場合は概ね350℃〜450℃の間、熱可塑性ポリイミドの場合はポリイミドのガラス転位温度に対し−20℃〜+100℃の間が好適な範囲である。
【0073】
ポリイミド成形物が、定着用若しくは転写定着用管状物、特には定着用若しくは転写定着用ベルトに使用される場合、該ベルトは熱伝導性無機フィラーを含有するポリイミド樹脂組成物から形成される内層と、フッ素樹脂を含有する外層との少なくとも2層から構成されることが好ましい。なお、前記内層と外層との間には、接着層を設けてもよい。外層のフッ素樹脂含有層は、トナーの離型性や転写性およびトナーのクリーニング性を改善するために、導電性フィラーを含有させることが好ましい。さらに、外層に導電性フィラーを含有せしめると、外層に導電性を付与して、帯電によるオフセットを防止することができる。同様に、中間層となる接着層がある場合は、接着層に導電性フィラーを含有させることができる。
【0074】
外層に含有されるフッ素樹脂としては、定着用若しくは転写定着用ベルトとして用いた場合に、200℃前後の高温でも連続的に使用可能とするために、特に耐熱性に優れたものが好ましく、具体的には、例えば、四弗化エチレン樹脂(PTFE)、四弗化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、四弗化エチレン−六弗化プロピレン共重合体(FEP)等が挙げられる。
【0075】
前記導電性フィラーとしては、体積抵抗値が1×1010Ω・cm以下のものを指すが、特に限定されるものではない。例えば、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックやアルミニウム等の金属粉を挙げることができる。導電性フィラーの平均粒径は、安定した均一な導電性を得るために、0.5μm以下であることが好ましい。導電性フィラーの配合割合は、外層全体に対し、通常0.1〜20重量%程度である。導電性フィラーの配合量を多くすると、外層の導電性のレベルが高くなりすぎて、トナーの電荷が外層に流れ、記録紙とトナーとの間の吸引力が失われるおそれがある。外層の厚みは、通常1〜30μm、好ましくは5〜15μm程度であることが好ましい。
【0076】
上記外層と内層との間の接着性を向上させるために、中間層として接着層を設けることができる。接着層は、外層に含有されるフッ素樹脂と内層のポリイミド樹脂の両方に接着性を有する樹脂から構成される。接着層を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂とポリアミドイミドとの混合物、フッ素樹脂とポリエーテルスルホンとの混合物などが好ましく例示され得る。接着層に導電性フィラーを含有せしめると、ベルトとして用いた場合、内面の摩擦帯電に対するシールド効果と外面の帯電防止効果を高めて、オフセットを効果的に防止することができる。接着層の導電性フィラーとしては、外層に使用するのと同じものが使用できる。導電性フィラーの配合割合は、接着層全体に対して通常0.5〜20重量%、好ましくは1〜5重量%程度である。接着層の厚みは、通常0.1〜20μm、好ましくは1〜10μm程度である。
【0077】
前記外層の形成方法は、塗布やフィルムの貼り合わせ等が例示されるが、上記材料をディスパージョンとしてスプレー塗布、或いはデッピングにより形成する方法が一般的である。
【0078】
以上、本発明に係わる実施態様を説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではない。
【0079】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
(熱伝導率)京都電子工業(株)製の迅速熱伝導率計KemthermQTM−500を用いて測定した。
(成形性)ピン枠を用いたフィルム成形、径70mmの管状物成形のいずれにおいても成形途中で裂けが発生しなかったものを「○」、フィルム若しくは管状物の成形のいずれかにおいて裂けが発生したものを「×」とした。
(引裂強度)JIS K 7128「プラスチックフィルム及びシートの引裂試験方法(C法:直角形引裂法)」に従い、引張試験機を用いて測定した。試験速度は100mm/分とした。
(引張弾性率、引張伸び)フィルム状サンプルの引張弾性率、引張伸びの測定は、ASTM D882に準拠して実施した。
(線膨張係数)フィルム状サンプルの線膨張係数は、窒素気流下において理学電気製TMA−8140により測定した(100〜200℃における値)。
(吸湿膨張係数)フィルム状サンプルの吸湿膨張係数は、湿度を40%Rhから80%Rhまで変化させ、湿度変化量とサンプルの伸びを同時に測定して下記式により算出した(算出温度:50℃)。
吸湿膨張係数={(吸湿伸び量(d))÷(サンプル長さ+c)}÷(湿度変化量(b))×100
c=サンプルセット後室温から測定温度に上昇する際の熱膨張量
湿度は、40%Rhから80%Rhまで変化させた。
(吸水率)フィルム状サンプルの吸水率は、JISK7209に基づいて測定した。より具体的には、試験片のフィルムを50℃±2℃に保った恒温槽内で24±1時間乾燥し、デシケーターで放冷したものの重量をW1とし、24時間蒸留水に浸した後、表面の水滴を拭き取ったものの重量をW2とし、
吸水率(%)=(W2 −W1 )÷W1 ×100
の式により算出した。以下、本発明において吸水率というときはこの測定および計算法を用いる。
(体積抵抗値)フィルム状サンプル、及びフィラーの抵抗値の測定は、次のように実施した。サンプルを、▲1▼温度23℃・湿度55%Rhの環境(NN)に24時間放置し、該環境下にてアドバンテスト(株)製デジタル超高抵抗/微小電流計R8340と三菱化学(株)製HRプローブを用い100Vにおける体積抵抗値を測定した。
(絶縁性)フィルム状サンプルの厚み方向の絶縁性測定は、次のように実施した。このフィルムを温度23℃・湿度55%Rhの環境(NN)に24時間放置し、該環境下にて安田精機製作所製のYSS式耐電破壊試験機における絶縁性を測定した。
【0080】
次に、実施例と比較例について説明する。
【0081】
(実施例1)
芳香族ジアミンとして4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを、芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物を用いて得られたポリアミド酸のジメチルホルムアミド(以下、DMF)溶液(固形分濃度18.5%、溶液粘度3,000poise)を75g準備した。一方、炭化ケイ素(昭和電工(株)製:GC#4000)12.7gをフィラーの3倍量のDMF38.1gに分散させて分散液を調製した。
【0082】
上記のポリアミド酸溶液に炭化ケイ素の分散液を添加し、攪拌機により混練した。得られたドープをフィルム状および管状にキャストする前に、無水酢酸/イソキノリン/DMF(9.03g/11.4g/15.6g)からなる溶液を添加混合した。次いでフィルムとして得る場合にはアルミ箔、管状物として得る場合には筒状SUSにキャストし、140℃/360秒、275℃/40秒、400℃/93秒の条件で熱処理し、約50μm厚のポリイミドフィルムおよび管状物を得た。なお、フィルムとして成形する場合には、140℃の加熱のあとにアルミ箔から引き剥がしピン枠に移した。フィルムおよび管状物中のフィラー量は、ポリイミド固形分100重量部に対して100重量部である。
【0083】
得られたフィルムおよび管状物の物性値を表1に示す。なお、熱伝導率および引裂強度は、フィルムおよび管状物について成形したサンプルのうち、低い方の値を表1に記載した。
【0084】
上記と同様の方法にて重合したポリイミドフィルム単体(フィラーを含まない)の線膨張係数は21ppm、吸湿膨張係数は16ppm、引張弾性率は2.9GPa、伸びは70%、引裂伝播強度は45kg/mm、吸水率は2.5%であった。
【0085】
(実施例2〜11)
炭化ケイ素の代わりに表1に示した配合部数で無機フィラーを配合した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム及び管状物を得た。物性値を表1に示す。なお、表1に記載のフィラーの詳細は次の通りである。酸化錫は日本化学産業(株)製SH−S、窒化チタンは大塚化学(株)製、窒化ホウ素は昭和電工(株)製UHP−S1、酸化チタンは石原産業(株)製FTL300、炭化チタンは大塚化学(株)製、ITO(インジウムチンオキサイド)は三井金属(株)製パストランITO、アンチモンドープ酸化錫は石原産業(株)製FS10P、カーボン被覆チタン酸カリウムは大塚化学(株)製BK400HR(Lot.9C00)、酸化錫系被覆ホウ酸アルミニウムは三井金属(株)製パストラン−TYPEV−KK006のことを指し、これら無機フィラーのイオン溶出量は全て50ppm以下である。
【0086】
なお、針状フィラーを用いた場合には、フィラーの8倍重量のDMFにフィラーを分散させて、分散溶液を調製した。
【0087】
(実施例12)
実施例11におけるポリアミド酸のDMF溶液を、芳香族ジアミンとして4,4′−ジアミノジフェニルエーテル3当量をDMFに溶解し、次にPMDA4当量を加え、さらに、パラフェニレンジアミン1当量を加えて重合したポリアミド酸のDMF溶液(固形分濃度18.5%、溶液粘度3,000poise)に変更した以外は、実施例11と同様にしてポリイミドフィルム及び管状物を得た。物性値を表1に示す。
【0088】
このようにして重合したポリイミドフィルム単体の線膨張係数は8ppm、吸湿膨張係数は9ppm、引張弾性率は4GPa、伸びは70%、引裂強度は45kg/mm、吸水率は2.1%であった。
【0089】
(実施例13)
実施例11におけるポリアミド酸のDMF溶液を、芳香族ジアミンとして4,4′−ジアミノジフェニルエーテル5当量、パラフェニレンジアミン5当量をDMFに溶解し、次にTMHQ5当量を加え、さらにPMDA5当量を加えて重合したポリアミド酸のDMF溶液(固形分濃度18.5%、溶液粘度3,000poise)に変更した以外は、実施例11と同様にしてポリイミドフィルム及び管状物を得た。物性値を表1に示す。
【0090】
このようにして重合したポリイミドフィルム単体の線膨張係数は9ppm、吸湿膨張係数は5ppm、引張弾性率は6GPa、伸びは40%、引裂強度は35kg/mm、吸水率は1.2%であった。
【0091】
(実施例14)
実施例11の方法にて得たポリイミド層の上に、導電性カーボンブラック(ライオン(株)製、ケッチェンブラックEC600JD)を3重量%配合した接着層をスプレー塗布により形成した。接着層を形成する樹脂は、ポリアミドイミド、PTFE、PFA等の混合物からなるディスパージョン(デュポンジャパンリミテッド製、品番855−003)であった。次いで、接着層の上に、フッ素樹脂ディスパージョン(デュポンジャパンリミテッド製、品番855−405)に導電性カーボンブラック(ライオン(株)製、ケッチェンブラックEC600JD)を0.7重量%配合したものをスプレー塗布により付着させて、外層となるフッ素樹脂含有層を形成した。各層の厚みは、内層が50μm、接着層が5μm、外層が10μmであった。
【0092】
以上のようにして得られた実施例1〜14のポリイミドフィルムおよび管状物の熱伝導率は、全て0.40W/m・Kと非常に熱伝導性に優れていた。また、実施例4、6を除いては使用したフィラーが中抵抗値であるため、得られた樹脂の23℃・55%での体積抵抗値も1×109〜1×1013Ω・cmと中抵抗領域に調整されており、帯電の問題を回避することができた。また全ての実施例において、絶縁性は10kV/mm以上と優れていて、絶縁破壊の問題を回避することができた。
【0093】
また全てのフィルムの引裂強度は15kg/mmを有しており、成形後の引き裂きに対して優れていた。また成形中にも裂けることがなく、成形性にも優れていた。また、実施例5、8〜14では針状フィラーのみ、或いは針状フィラーが無機フィラー中の30vol%以上を占めるため、引裂強度が高く、成形中や成形後の裂けに対してより強いものとなった。また、針状フィラーを含むと引張強度も高くなり、実施例5、8〜10では5GPa以上を示した。
【0094】
また無機フィラーを含むことで、線膨張係数、吸湿膨張係数もフィラー未添加品よりも数ppm低下していた。
【0095】
更に実施例1、実施例12、実施例13の順に引張弾性率は増加していた。これは、ベース樹脂の引張弾性率がこの順に高くなっているためである。実施例13では7GPa以上を示した。
【0096】
また、実施例14ではフッ素樹脂含有層が外層に形成されているために、転写性に優れ、トナーの離型性も非常に優れていた。
【0097】
(比較例1)
無機フィラーを配合しない以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム及び管状物を得た。物性値を表1に示す。以上により得られた比較例1は、実施例1〜13と比較すると、熱伝導性が非常に劣った。
【0098】
(比較例2)
イミド化条件をケミカルキュアではなく、熱キュア(140℃/15分、200℃/30分、250℃/30分、300℃/30分、350℃/30分熱処理)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム及び管状物を得た。物性値を表1に示す。以上により得られた比較例2は、熱伝導性は優れていたが、成形中の引裂強度が弱く、成形中にフィルムが裂けた。裂けがない部分を用いて定着ベルト、若しくは転写定着ベルトとして走行テストを実施すると、成形後の引裂強度が弱いため、すぐに破損した。また、比較例2は熱キュアで成形をおこなっているために、実施例1に比べると非常に時間がかかり、生産性に劣っていた。
【0099】
【表1】
【0100】
【発明の効果】
生産安定性と生産効率を改善できるように成形中も高い引裂強度を有し、搬送運転中の端面からの割れやつぶれを抑制できるように十分な剛性、可撓性、引裂強度を備え、高転写性と高速印刷にも十分対応できる高い熱伝導性を有する定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイミド樹脂が本来有する優れた機械特性、耐熱性等の特性に加え、高熱伝導性も有する、定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐熱性樹脂、なかでもポリイミド樹脂は、その優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性等の特性を活かし、フィルム、チューブ若しくはベルト等の管状体、又は各種成形物等として幅広く利用されている。例えば、フィルム状としてフレキシブルプリント配線板(以下、FPC)やTAB(Tape Automated Bonding)のベース基材、電線の絶縁被膜、チューブ若しくはベルト状の管状物として電子写真記録装置やインクジェットといったOA機器のパーツ等、様々な用途に用いられている。また、近年では半導体周辺でも用いられており、その特性を活かして、例えば、接着剤等にも用いられつつある。
【0003】
しかしながら、FPCや半導体周辺では、近年の高密度実装に伴って、ベース基材や絶縁膜として用いられる樹脂の放熱性の問題が顕在化してきている。具体的には、放熱性に乏しい樹脂フィルムを使用するために蓄熱が起こり、電子機器そのものの信頼性が低下するといったことである。
【0004】
また、電子写真装置周辺では、フィルム状のエンドレスベルトを介して、ヒータにより記録紙上のトナーを直接加熱溶融させる定着方式が採用されてきている。この定着方式において、ベルト等の管状物材料は樹脂であるために、熱伝導性が低く、定着速度の高速化に十分に対応することが困難であった。また、例えば、前記ベルトの熱伝導性を改善するために、厚みを薄くすると、その剛性が低下するため、定着時の回転によりベルトにしわやつぶれが発生し易くなる。
【0005】
以上のような問題を解決するために、樹脂表面に、アルミニウムなどの熱伝導性に優れる金属薄膜を形成する手段が講じられている。この方法は、大幅な製造コストアップを招くという問題がある。また、カーボンブラック、セラミック等の熱伝導性に優れたフィラーを混合させるなどの提案がされているが、樹脂組成物の機械特性が大幅に低下する問題が生じる。
【0006】
また特に定着ベルトの分野においては、高熱伝導性無機フィラーを配合したポリイミド樹脂組成物を用いて定着用ベルトを作製することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。ところが、無機フィラーを含有するポリイミド樹脂製ベルトは、ポリイミド樹脂単体からなるベルトに比べて、可撓性が著しく低下する。また、ポリイミド樹脂製ベルトの熱伝導性と可撓性を両立させるために、特定のポリマーブレンド物またはポリイミド共重合体から選ばれる少なくとも一種のポリイミド樹脂と無機フィラーからなるベルトが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、このような構成の定着用ベルトは、成形後の可撓性は高いが、無機フィラーを多く含むために成形中の強度が著しく劣り、成形が非常に困難になるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−25478号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平8−80580号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、生産安定性と生産効率を改善できるように成形中も高い引裂強度を有し、搬送運転中の端面からの割れやつぶれを抑制できるように十分な剛性、可撓性、引裂強度を備え、高転写性と高速印刷にも十分対応できる高い熱伝導性を有する、定着若しくは転写定着用に好適なポリイミド成形物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、このような課題を解決すべく、成形条件、フィラーの効果等を種々比較検討した結果、イミド化促進剤を添加後加熱焼成して得られるポリイミド樹脂に無機フィラーを配合したポリイミド樹脂組成物を用いた定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明の第一は、イミド化促進剤を添加後加熱焼成して得られるポリイミド樹脂100重量部に対して無機フィラーを30〜250重量部含有し、熱伝導率が0.30W/m・K以上であることを特徴とする、定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物を内容とする。
【0012】
本発明の第二は、イミド化促進剤を添加後加熱焼成して得られるポリイミド樹脂100重量部に対して無機フィラーを30〜250重量部含有し、熱伝導率が0.30W/m・K以上である内層と、フッ素樹脂を含有する外層とを有することを特徴とする、定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物を内容とする。
【0013】
好ましい実施態様は、無機フィラーの含有量が50〜200重量部であることを特徴とする、前記いずれかに記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物に関する。
【0014】
更に好ましい実施態様は、無機フィラーが、針状または鱗片状のフィラーを無機フィラー中に30vol%以上含むものであることを特徴とする、前記いずれかに記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物に関する。
【0015】
更に好ましい実施態様は、イミド化促進剤が酸無水物および/または三級アミンであることを特徴とする、前記いずれかに記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物に関する。
【0016】
更に好ましい実施態様は、熱伝導率が0.40W/m・K以上であることを特徴とする、前記いずれかに記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物に関する。
【0017】
更に好ましい実施態様は、引裂強度が15kg/mm以上であることを特徴とする、前記いずれかに記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物に関する。
【0018】
更に好ましい実施態様は、フィルム状または管状に成形されていることを特徴とする、前記いずれかに記載のポリイミド成形物に関する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリイミド樹脂とは、その構造中にイミド結合を有する樹脂全般を意味し、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミドなどの一般名称で呼ばれる樹脂はもちろん、他樹脂との共重合系やブレンド物も含むものである。なお、他樹脂との共重合系やブレンド物の場合は、全樹脂中にポリイミド樹脂成分が50重量%以上、好ましくは80重量%以上含まれていればよい。
【0020】
中でも、無機フィラーの表面活性基と強く結合することができる反応硬化型の直鎖状ポリイミド樹脂が好ましい。ここで、反応硬化型の直鎖状ポリイミド樹脂とは、その前駆体である直鎖状ポリアミド酸を経由し、アミド酸部位が脱水閉環することで得られるポリイミド樹脂のことを意味し、例えば、ピロメリット酸二無水物と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルとの反応で得られる直鎖状のポリアミド酸を、加熱及び/又は触媒添加等することで得られるポリイミド樹脂が代表例として挙げられる。反応硬化型の直鎖状ポリアミド酸は、カルボン酸基やアミノ基等の官能基を有しており、これら官能基は無機フィラーと強く相互作用する。このため、無機フィラーと強固な結合を形成することができる点から、好ましく用いられ得る。
【0021】
さらに、イミド化促進剤として酸無水物および/または三級アミンを添加後加熱焼成(以下、ケミカルキュアとも言う。)すると、熱キュアする場合と比較して、成形初期の段階から強度の高いものが得られる傾向があるため好ましい。この場合、成形中に乾燥や脱水反応により樹脂が収縮したとしても、樹脂が裂けることが少ないため、収率改善すなわち生産性の改善に繋がる。
【0022】
例えば、フィルム状で成形する場合、端部をピン枠で固定して成形を行うが、この場合、成形中に樹脂に強いテンションがかかりフィルムが裂ける場合がある。ところが、ケミカルキュア法を用いればこのような事態は発生しにくくなる。特に樹脂中に無機フィラーを含む場合、特に30重量部以上の高充填をした場合、フィルム等が非常に裂けやすくなるが、ケミカルキュア法を用いればこのような問題を回避することができる。
【0023】
また、管状に成形する方法として、例えば、円筒状の金型に原料樹脂溶液を塗布後、乾燥させる方法が例示され得るが、この乾燥中に樹脂は収縮する。このため、熱キュア法では成形中の強度が弱いことが原因で、管状物等が裂けることがよくある。しかし、ケミカルキュア法を用いれば、このような裂けを抑制することができる。また、無機フィラーを含む場合、或いは管状物の径が30mm以上さらには50mm以上となる場合には、樹脂の収縮による裂けが顕著になるが、ケミカルキュア法を用いればこのような問題を回避することができる。
【0024】
また、フィルムや管状物のように厚みが200μm以下、特に100μm以下の薄い成形体を作成する場合、裂けやすくなる傾向があるが、ケミカルキュア法を用いた場合はこのような問題を回避することが可能となり得る。
【0025】
ケミカルキュア法を用いた場合は、成形後においても引裂強度の高い成形物が得られるため、例えば、冷却による収縮によりフィルムや管状物が裂けることを抑制することができる。特に管状物として成形した場合、管状物を金型から引き抜く必要があるが、熱キュア法により作成したものやフィラーを高充填したものは引裂強度が弱く、引き抜く過程で管状物が破損する場合がある。ところが、ケミカルキュア法で作成した場合は、このような破損を大幅に抑制することができる。
【0026】
また、ケミカルキュア法で作成した管状物は、例えば、定着ベルト若しくは転写定着ベルトとして長時間回転させた場合でも、端部からの裂けやつぶれが発生することなく安定的に使用することができる。
【0027】
前記イミド化促進剤である酸無水物としては、例えば、無水酢酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸無水物や無水安息香酸等の芳香族酸無水物などが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられ得る。また三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン等の脂肪族第三級アミン類、N,N−ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリン、キノリン等の複素環式第三級アミン類などが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられ得る。
【0028】
次に、本発明で用いられるポリイミド樹脂の具体的な構造について説明する。
【0029】
一般的なポリイミド樹脂としては、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物をモノマーとして用いて形成するのが通常である。ジアミン化合物としては、例えば、
【0030】
【化1】
(式中、Xは同一または異なって、ハロゲン、−CH3、−OCH3、−O(CH2)nCH3、−(CH2)nCH3、−CF3、−OCF3からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を表す。また、Aは同一または異なって、O、S、C=O、(CH2)n、SO2、N=Nからなる群から選ばれる少なくとも一種の基を表す。mは1以上の整数。nは1以上の整数。)
に示す種々のモノマーを用いる事ができる。
【0031】
またテトラカルボン酸二無水物としては、
【0032】
【化2】
(式中、nは1以上の整数。)
に示す種々のモノマーを用いる事ができる。
【0033】
上記の組み合わせにより様々な特徴を出す事が可能であり、用途や加工法などの状況に応じて適宜選択することができる。
【0034】
例えば、屈曲鎖を多く(好ましくは2以上)含む、および/またはアミノ基をメタ位に有する芳香族ジアミンを用い、2環以上のテトラカルボン酸二無水物を用いる事で、熱可塑性のポリイミドとすることができ、加熱溶融成形が可能な樹脂組成物を提供することが可能である。例えば、2、2´−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンと、オキシジフタル酸二無水物の組み合わせや、ビス(2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ)エタンと3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の組み合わせ等を例示することができる。
【0035】
また、ポリイミド樹脂はイミド基の存在により通常高吸水率を有するが、特定のモノマーの組み合わせにより比較的低吸水率とすることもできる。例えば、テトラカルボン酸二無水物として2以上のエステル結合を有し複数のベンゼン核が結合された構造を有するものを使用して得られたポリイミド樹脂が挙げられる。具体的には、
【0036】
【化3】
(式中、nは1以上の整数。)
【0037】
【化4】
【0038】
【化5】
に示されるような酸二無水物が挙げられる。
【0039】
この場合、用いられるジアミン化合物としては、イミド基含有率を調整するために比較的長鎖のモノマーを用いることが好ましい。例えば、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンやその結合位置異性体、2,2´−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。ただし、酸二無水物についてもジアミン化合物についても、長鎖でかつ屈曲鎖を多数有する構造は、同時に前述の熱可塑性発現の条件でもあり、十分な耐熱性が要求される場合には不適当である。この場合は長鎖でありかつ直線的構造を全体的または部分的に有するモノマーが好適である。例えばテトラカルボン酸二無水物としては、
【0040】
【化6】
で示す構造のモノマー(以下、TMHQ)が例として挙げられる。このモノマーは、屈曲鎖を含むものの全体としては概ね直線的なコンフォメーションを取りうる構造であり、その結合数の多さのわりには比較的剛直なポリイミドを形成する。この原料を用いれば、例えば、線膨張係数15ppm以下、吸水率1.5%以下、吸湿膨張係数10ppm以下といった加熱や吸湿による寸法変化が少ないポリイミド樹脂を容易に得ることも可能になる。
【0041】
一方、ジアミン化合物としても、例えば、ビフェニル構造やナフタレン構造をエーテル結合でつなぐような構造が、長鎖でありながら比較的剛直な構造として選択できる。例えば4,4´−ビスアミノフェノキシビフェニルなどがあげられる。これら酸二無水物とジアミン化合物の組み合わせにより、比較的低吸水率であり、かつ顕著な熱軟化性を有さないポリイミド樹脂を得ることができる。またこれらモノマーのみではなく、汎用のピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、パラフェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル等を適宜共重合する事により、任意の特性のポリイミド樹脂を設計可能である。
【0042】
また、ポリイミドの線膨張係数は、銅といった金属と比べて一般に大きいのが通常である。しかし、モノマーの種類や組成比が同じ場合でも、モノマーの組み合わせを制御(シーケンスコントロール)することにより、比較的小さな線膨張係数を有するポリイミド樹脂を得ることができる。例えば、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミン、ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAとも言う。)をランダム共重合する場合に比べて、4,4´−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物を予め反応させておき、その後パラフェニレンジアミンを添加する手順を取ると低線膨張係数のポリイミド樹脂を得ることができる。
【0043】
本発明においては、ポリイミド樹脂に無機フィラーを配合するため、ポリイミド樹脂に対し、ポリイミド樹脂単体で用いる場合に比較して、より高い靭性が求められる。ポリイミド樹脂自身の靭性が十分でないと、無機フィラーの配合により必然的に靭性が低下するため、実用に供する事ができなくなる場合がある。その点で最も好ましいのは、ピロメリット酸二無水物と4,4´−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリイミド樹脂である。本構造は、十分な耐熱性と高い靭性を兼ね備え、なおかつ広い範囲の加工条件でその特性を維持できるバランスの取れた構造である。
【0044】
本発明において、ポリイミド樹脂の熱伝導性を向上させる無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、タングステンカーバイト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、マイカ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、インジウムチンオキサイド、タルク、導電性物質で被覆された半導電性フィラー等があげられる。
【0045】
ここで上記半導電性フィラーの体積抵抗値は、1×103〜1×1010Ω・cmの範囲であり、より好ましくは1×103〜1×108Ω・cm、特に好ましくは1×103〜1×107Ω・cmの範囲である。上記導電性物質で被覆された半導電性フィラーとしては、例えば、炭素、黒鉛等の黒色導電性物質、又はインジウム−錫複合酸化物(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、ニオブドープ酸化錫(NTO)、タンタルドープ酸化錫(TTO)、フッ素化物ドープ酸化錫(FTO)、酸化錫(TO)等の酸化錫系導電性物質で被覆された半導電性フィラーが挙げられる。
【0046】
これら材料は、前記導電性物質の種類、量、形成方法によって熱伝導性や抵抗値を調整することができる。黒色導電性物質や酸化錫系導電性物質は、電子伝導性を有するため、電子移動による熱移動に優れ、熱伝導性に優れる。
【0047】
具体的な導電性物質の調整方法としては次のような方法がある。例えば、炭素や黒鉛等の黒色導電性物質で被覆された材料では、空気中で、50〜750℃の温度で加熱すると、抵抗が上がり、熱伝導性が下がる。また、酸化錫やドーピングを施した酸化錫で被覆された材料では、そのドーピング量、酸化錫層を形成した後、加熱雰囲気を酸化性若しくは非酸化性のどちらかに選択すること、又は加熱温度を変更することでも熱伝導性と抵抗を制御することができる。
【0048】
本発明に用いられる導電性物質で被覆された半導電性フィラーの無機芯材としては、金属、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物といったセラミック材料や金属塩といったものが挙げられる。例えば、亜鉛、酸化亜鉛、アルミニウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、カルシウム、炭酸カルシウム、銀、酸化クロム、ケイ素、ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、シリカ、ガラス、酸化チタン、チタン酸金属塩、ホウ酸アルミニウム、酸化錫、鉄、酸化鉄、銅、酸化銅、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化バリウム、マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ゲルマニウム、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ホウ素、マイカ、タルク、ウォラストナイト、タルク、カオリン、粘土鉱物等が挙げられる。
【0049】
本発明における無機フィラーとしては、上記のフィラーの中でも優れた熱伝導性を有する点から、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、インジウムチンオキサイド、導電性物質で被覆された半導電性フィラーから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0050】
また、ポリイミド樹脂及び上記の熱伝導性無機フィラーを含有する樹脂組成物が、定着ベルト若しくは転写定着ベルトとして使用される場合は、該ベルトは、使用時の電圧で破損しないように高絶縁で、かつ樹脂の帯電を防止するために、中抵抗(1×106〜1×1013Ω・cm、好ましくは1×108〜1×1013Ω・cm)である必要がある。特に、転写定着ベルトに使用される場合には、中抵抗の特性も非常に重要となる。そのためには、上記の熱伝導性無機フィラーも高絶縁性で中抵抗値(1×103〜1×1013Ω・cm)の特性を有する必要がある。このような特性を有する熱伝導性無機フィラーとしては、炭化ケイ素、炭化チタン、チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化錫、導電性物質で被覆された半導電性フィラーから選ばれる1種又は2種以上であることが特に好ましい。
【0051】
本発明に用いる無機フィラーの形状としては、粒状、針状、鱗片状等、特に限定されるものではないが、針状または鱗片状のフィラーが、全無機フィラー中に体積分率で30vol%以上含まれることが、以下の点からより好ましい。粒状フィラーのみを用いて成形する場合、成形中のテンションや成形後の長期使用により裂けやすくなることがあり、またフィラー間の接触も起こりにくい場合があるため熱伝導性が低くなることもある。しかし、針状または鱗片状のフィラーを30vol%以上含む場合は、フィラー間の接触が起こりやすくなることより、フィラーを少量添加する場合でも熱伝導性が改善できる傾向がある。また、成形中および成形後の引裂強度が高くなるため、断裂や張力による寸法変化や破損を抑制することが可能で、高耐久かつ高寸法安定性で長期の搬送特性が実現できる機械強度に優れたフィルムや管状物を得ることができる。また線膨張係数、吸湿膨張係数の小さい樹脂組成物を得ることもできる。
【0052】
このような針状または鱗片状の熱伝導性無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、チタン酸カリウム、酸化チタンが挙げられる。導電性物質で被覆された半導電性フィラーを用いる場合、その針状または鱗片状の無機芯材としては、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ケイ素、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムが用いられ得る。
【0053】
前記無機フィラーが粒状である場合、粒径は10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。100μm以下といった厚みが薄い成形物においては、無機フィラーが10μmよりも大きい場合、分散不良による局部の凝集によって絶縁破壊が起こる場合があるため、好ましくない。これに対し、無機フィラーが10μm以下であれば、多少の凝集があっても絶縁性の悪化に至りにくいために好ましい。
【0054】
無機フィラーが針状や鱗片状である場合、その短軸径は5μm以下、好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。100μm以下といった厚みが薄い成形物において、前記無機フィラーの短軸径が10μmよりも大きい場合、絶縁破壊が起こりやすくなるため好ましくない。これに対し、短軸径が10μm以下であれば、多少の凝集があっても絶縁性の悪化に至りにくいために好ましい。
【0055】
これらの熱伝導性無機フィラーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
次にポリイミド樹脂に対する無機フィラーの配合量は、ポリイミド樹脂100重量部に対し30〜250重量部であることが好ましく、更には50〜200重量部であることがより好ましく、特には50〜180重量部であることが最も好ましい。無機フィラーの配合部数が250重量部よりも多いと、成形中及び成形後においてフィルム若しくは管状物等の成形物が脆くなる傾向がある。逆に、30重量部よりも少ないと、熱伝導性の改良効果が小さく目的の熱伝導性を有するポリイミド成形物を得ることができないために好ましくない。
【0057】
得られるフィルム若しくは管状物等の成形物の熱伝導率は、0.30W/m・K以上であると好ましく、0.40W/m・K以上であるとさらに好ましい。0.30W/m・Kを下回る場合は定着性に劣る傾向があり、未定着のトナーが紙から剥がれる場合がある。また、定着に時間がかかり、印刷速度の高速度化を妨げる場合がある。なお、本発明における熱伝導率は、京都電子工業(株)製の迅速熱伝導率計KemthermQTM−500により測定することができる。
【0058】
次に、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸と熱伝導性無機フィラーを混合する方法について説明する。例えば、主に二つの方法があげられる。一つ目としては、ポリアミド酸の重合溶媒に予め無機フィラーを添加して無機フィラーの分散溶液を調製しておき、その後ポリアミド酸の原料であるジアミン化合物と酸二無水物とを添加してポリアミド酸を重合する方法がある。二つ目としては、予め重合して得たポリアミド酸溶液と上記の無機フィラーの分散溶液を混合する方法がある。
【0059】
前記無機フィラーの分散溶液を調製するに際し、分散剤を配合しても良い。分散剤としては、金属塩や界面活性剤といったものが挙げられる。特に金属塩が好ましく、Li塩、Na塩、K塩、Rb塩、Cs塩、Be塩、Mg塩、Ca塩、Sr塩、Ba塩からなる群より選択される1種又は2種以上の組み合わせが好ましい。中でも、Li塩、Na塩、K塩がより好ましい。Li塩としては格子エネルギーが1100kJmol−1以下のLi塩が好ましく、具体的には LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSCN、LiCF3SO3といったものが挙げられる。Na塩としては格子エネルギーが800kJmol−1以下のNa塩が好ましく、具体的にはNaF、 NaCl、 NaBr、 NaI、 NaSCN、 NaCF3SO3といったものが挙げられる。K塩としては格子エネルギーが800kJmol−1以下のK塩が好ましく、具体的にはKF、 KCl、 KBr、 KI、 KSCN、 KCF3SO3といったものが挙げられる。これらの金属塩は、常温でイオンが解離しやすく、前記無機フィラーと相互作用が強くなるために好ましい。ただし、格子エネルギーが小さすぎると、添加量の影響が大きくなりすぎる傾向がある。これら金属塩は有機物を含まないために、成形中に高温乾燥される場合でも樹脂が焼け付くようなことがない。
【0060】
分散剤の配合量はポリイミド樹脂100重量部に対して1重量部以下の所定の量を配合すれば良く、0.01〜0.1重量部以下でも十分効果はある。一般に電線被覆の用途では、金属塩が添加されると絶縁性が悪化し、特に誘電率が4以上の材料に添加した場合にはイオン伝導性が高まり、絶縁性が悪化するため好ましくないが、ポリイミド樹脂と熱伝導性無機フィラーの組み合わせにおいては、ポリイミド樹脂が絶縁性に優れ、誘電率が4以下であるため、上記で示した配合範囲では特に絶縁性が悪化することはない。
【0061】
添加する熱伝導性無機フィラーをポリイミド樹脂に分散させるための方法としては、種々の方法がとられ得る。
【0062】
ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸溶液中に、フィラーを溶媒に予備分散した分散液を加え、攪拌翼で混合する方法、或いは3本ロールなどの混練り機を用いて混合する方法を用いることができる。また、逆に予めフィラーを溶媒に予備分散した物に対し、ポリアミド酸溶液を加えて良く混合するという方法も可能である。前記予備分散の方法としては、フィラーを溶剤に加えて超音波分散機によって十分に分散を進めておくといった方法が有効である。特に針状フィラーは過剰な剪断力を受けると形状が破壊される可能性があるため、過剰な剪断力を受けにくい分散方法を用いることがより好ましい。
【0063】
予備分散を行うに際し、フィラーの分散性を補助するための分散剤を併用することも、ポリイミド樹脂の特性劣化を顕著に起こさない範囲で可能である。予備分散液に分散剤として金属塩を添加した場合には、分散状態が非常に均一になるため、手による攪拌でも十分均一な分散状態を実現することができる。また、予備分散液に、ポリアミド酸溶液を少量ずつ攪拌しながら添加していく方法は、上記の逆手順よりも分散性がより向上する。
【0064】
また、特に良好な分散性が得られる別の方法として、まず溶剤中にフィラーを加え超音波分散機等により十分に分散させておき、これにポリイミド樹脂(ポリアミド酸)の原料であるジアミン化合物と酸二無水物化合物を加えて重合反応を行うという方法がある。この方法によれば超音波分散等によりミクロなレベルでの分散が良好に保たれると同時に、初期のフィラー分散後から重合中にかけて常に攪拌がなされるために、マクロなレベルの分散性も非常に良好となる。
【0065】
ポリアミド酸溶液からイミド化させてポリイミド樹脂を得る方法としては、下記のような方法が挙げられる。
【0066】
ポリアミド酸溶液を任意の形状に加工した後、加熱、場合によっては減圧を併用する加熱により溶剤を揮発せしめ、ポリイミド成形物を得ることができる。この場合、加熱に先立ち、イミド化促進のため、脱水剤として無水酢酸などの酸無水物や触媒として三級アミンを単独または併用して用いるとよい。ただし、酸無水物はイミド化反応の促進だけでなく、ポリアミド酸の分子主鎖の切断も引き起こし得るため、ポリイミド成形物の機械的特性のためには、酸無水物及び三級アミンの併用、または三級アミンのみの添加がより好ましい。
【0067】
このようなイミド化促進剤の添加によるケミカルキュアをおこなえば、熱のみによりイミド化する場合に比べて、成形中及び成形後の成形物の引裂強度が強くなるため、裂けの少ない成形物を得ることができる。特に無機フィラーを高充填した場合にはより顕著になる。具体的には、成形後における成形物の引裂強度が15kg/mm以上となることが好ましく、更には20kg/mm以上となることが好ましく、特には25kg/mm以上となることが最も好ましい。また、ケミカルキュアを実施することで、加熱時間を減らすことが可能で、熱伝導性無機フィラーが熱劣化することを抑制することができる。更に加熱時間が短いために、樹脂の熱劣化や樹脂と熱伝導性無機フィラーの反応による劣化を抑制することもできるために好ましい。
【0068】
また、イミド化促進剤を添加する製法においては、樹脂の面内配向が進むため、針状や鱗片状の熱伝導性無機フィラーを用いた場合、熱伝導性無機フィラーも平面状に配向しやすくなる。その結果、厚みが100μm以下といった薄い成形物の場合、厚み方向に配向する熱伝導性無機フィラーが減少し、電気絶縁性を改善できる。またフィラーの吸湿により厚み方向の電気特性が劣化した部分を減らすことができる点からも好ましい。また、成形時間が短くて済むため、生産性が飛躍的に向上し、製造中に成形物の強度が出やすく製造中に脆くなることが抑制できる。
【0069】
フィルム又は管状物への具体的な成形法として、下記の方法が例示され得る。
【0070】
上記無機フィラーを分散させた樹脂溶液をエンドレスベルト上に、例えば、Tダイ、コンマコーター、ドクターブレードなどを用いて厚みを制御した上で塗布する。樹脂溶液を熱風などによって自己支持性が発現するまで加熱乾燥し、そののちエンドレスベルトより引き剥がす。引き剥がした半乾燥状態のフィルムの幅両端をピンやクリップによって固定し、幅方向の長さを規制しながら順次高温の加熱炉内を通すことにより、フィルム状成形物を得ることができる。または金属などの連続したシート状の支持体上に同様の方法で塗布し、これを加熱炉内へ通過せしめることによってシート状に固定されたフィルム若しくはシート形状のポリイミド成形物を得、そののち支持体シートより引き剥がす、若しくは支持体シートをエッチングなどの手段により除去する方法も取られ得る。
【0071】
このようにして得たフィルムまたはシート状の成形物を所定の長さと幅に切り、ベルト状またはチューブ状につなぎ合わせて目的の管状物を得る方法が最も容易である。つなぎ合わせには接着剤や接着テープ等を用いることができるが、この方法は不可避的につなぎ目で段差や切れ目が存在する。このため、用途によっては不都合が生じる場合がある。
【0072】
管状物を得る方法としては、円筒状金型の内面または外面に樹脂溶液を塗布し、加熱乾燥あるいは減圧乾燥などにより溶媒を揮発させ、これをこのまま最終焼成温度まで加熱するか、あるいは一旦引き剥がして、最終的に内径を規定するための別金型の外周にはめ込み、最終焼成温度まで加熱するといった方法を用いることができる。円筒状金型への樹脂溶液の塗布にあたっては、樹脂溶液の垂れによる厚みばらつきを緩和するため、金型を回転させることも有効である。最終焼成温度はポリイミド樹脂の構造や添加するフィラーの耐熱性により適宜選択する事が必要であるが、非熱可塑性ポリイミドでポリアミド酸状態から加熱・焼成する場合は概ね350℃〜450℃の間、熱可塑性ポリイミドの場合はポリイミドのガラス転位温度に対し−20℃〜+100℃の間が好適な範囲である。
【0073】
ポリイミド成形物が、定着用若しくは転写定着用管状物、特には定着用若しくは転写定着用ベルトに使用される場合、該ベルトは熱伝導性無機フィラーを含有するポリイミド樹脂組成物から形成される内層と、フッ素樹脂を含有する外層との少なくとも2層から構成されることが好ましい。なお、前記内層と外層との間には、接着層を設けてもよい。外層のフッ素樹脂含有層は、トナーの離型性や転写性およびトナーのクリーニング性を改善するために、導電性フィラーを含有させることが好ましい。さらに、外層に導電性フィラーを含有せしめると、外層に導電性を付与して、帯電によるオフセットを防止することができる。同様に、中間層となる接着層がある場合は、接着層に導電性フィラーを含有させることができる。
【0074】
外層に含有されるフッ素樹脂としては、定着用若しくは転写定着用ベルトとして用いた場合に、200℃前後の高温でも連続的に使用可能とするために、特に耐熱性に優れたものが好ましく、具体的には、例えば、四弗化エチレン樹脂(PTFE)、四弗化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、四弗化エチレン−六弗化プロピレン共重合体(FEP)等が挙げられる。
【0075】
前記導電性フィラーとしては、体積抵抗値が1×1010Ω・cm以下のものを指すが、特に限定されるものではない。例えば、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックやアルミニウム等の金属粉を挙げることができる。導電性フィラーの平均粒径は、安定した均一な導電性を得るために、0.5μm以下であることが好ましい。導電性フィラーの配合割合は、外層全体に対し、通常0.1〜20重量%程度である。導電性フィラーの配合量を多くすると、外層の導電性のレベルが高くなりすぎて、トナーの電荷が外層に流れ、記録紙とトナーとの間の吸引力が失われるおそれがある。外層の厚みは、通常1〜30μm、好ましくは5〜15μm程度であることが好ましい。
【0076】
上記外層と内層との間の接着性を向上させるために、中間層として接着層を設けることができる。接着層は、外層に含有されるフッ素樹脂と内層のポリイミド樹脂の両方に接着性を有する樹脂から構成される。接着層を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂とポリアミドイミドとの混合物、フッ素樹脂とポリエーテルスルホンとの混合物などが好ましく例示され得る。接着層に導電性フィラーを含有せしめると、ベルトとして用いた場合、内面の摩擦帯電に対するシールド効果と外面の帯電防止効果を高めて、オフセットを効果的に防止することができる。接着層の導電性フィラーとしては、外層に使用するのと同じものが使用できる。導電性フィラーの配合割合は、接着層全体に対して通常0.5〜20重量%、好ましくは1〜5重量%程度である。接着層の厚みは、通常0.1〜20μm、好ましくは1〜10μm程度である。
【0077】
前記外層の形成方法は、塗布やフィルムの貼り合わせ等が例示されるが、上記材料をディスパージョンとしてスプレー塗布、或いはデッピングにより形成する方法が一般的である。
【0078】
以上、本発明に係わる実施態様を説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではない。
【0079】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
(熱伝導率)京都電子工業(株)製の迅速熱伝導率計KemthermQTM−500を用いて測定した。
(成形性)ピン枠を用いたフィルム成形、径70mmの管状物成形のいずれにおいても成形途中で裂けが発生しなかったものを「○」、フィルム若しくは管状物の成形のいずれかにおいて裂けが発生したものを「×」とした。
(引裂強度)JIS K 7128「プラスチックフィルム及びシートの引裂試験方法(C法:直角形引裂法)」に従い、引張試験機を用いて測定した。試験速度は100mm/分とした。
(引張弾性率、引張伸び)フィルム状サンプルの引張弾性率、引張伸びの測定は、ASTM D882に準拠して実施した。
(線膨張係数)フィルム状サンプルの線膨張係数は、窒素気流下において理学電気製TMA−8140により測定した(100〜200℃における値)。
(吸湿膨張係数)フィルム状サンプルの吸湿膨張係数は、湿度を40%Rhから80%Rhまで変化させ、湿度変化量とサンプルの伸びを同時に測定して下記式により算出した(算出温度:50℃)。
吸湿膨張係数={(吸湿伸び量(d))÷(サンプル長さ+c)}÷(湿度変化量(b))×100
c=サンプルセット後室温から測定温度に上昇する際の熱膨張量
湿度は、40%Rhから80%Rhまで変化させた。
(吸水率)フィルム状サンプルの吸水率は、JISK7209に基づいて測定した。より具体的には、試験片のフィルムを50℃±2℃に保った恒温槽内で24±1時間乾燥し、デシケーターで放冷したものの重量をW1とし、24時間蒸留水に浸した後、表面の水滴を拭き取ったものの重量をW2とし、
吸水率(%)=(W2 −W1 )÷W1 ×100
の式により算出した。以下、本発明において吸水率というときはこの測定および計算法を用いる。
(体積抵抗値)フィルム状サンプル、及びフィラーの抵抗値の測定は、次のように実施した。サンプルを、▲1▼温度23℃・湿度55%Rhの環境(NN)に24時間放置し、該環境下にてアドバンテスト(株)製デジタル超高抵抗/微小電流計R8340と三菱化学(株)製HRプローブを用い100Vにおける体積抵抗値を測定した。
(絶縁性)フィルム状サンプルの厚み方向の絶縁性測定は、次のように実施した。このフィルムを温度23℃・湿度55%Rhの環境(NN)に24時間放置し、該環境下にて安田精機製作所製のYSS式耐電破壊試験機における絶縁性を測定した。
【0080】
次に、実施例と比較例について説明する。
【0081】
(実施例1)
芳香族ジアミンとして4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを、芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物を用いて得られたポリアミド酸のジメチルホルムアミド(以下、DMF)溶液(固形分濃度18.5%、溶液粘度3,000poise)を75g準備した。一方、炭化ケイ素(昭和電工(株)製:GC#4000)12.7gをフィラーの3倍量のDMF38.1gに分散させて分散液を調製した。
【0082】
上記のポリアミド酸溶液に炭化ケイ素の分散液を添加し、攪拌機により混練した。得られたドープをフィルム状および管状にキャストする前に、無水酢酸/イソキノリン/DMF(9.03g/11.4g/15.6g)からなる溶液を添加混合した。次いでフィルムとして得る場合にはアルミ箔、管状物として得る場合には筒状SUSにキャストし、140℃/360秒、275℃/40秒、400℃/93秒の条件で熱処理し、約50μm厚のポリイミドフィルムおよび管状物を得た。なお、フィルムとして成形する場合には、140℃の加熱のあとにアルミ箔から引き剥がしピン枠に移した。フィルムおよび管状物中のフィラー量は、ポリイミド固形分100重量部に対して100重量部である。
【0083】
得られたフィルムおよび管状物の物性値を表1に示す。なお、熱伝導率および引裂強度は、フィルムおよび管状物について成形したサンプルのうち、低い方の値を表1に記載した。
【0084】
上記と同様の方法にて重合したポリイミドフィルム単体(フィラーを含まない)の線膨張係数は21ppm、吸湿膨張係数は16ppm、引張弾性率は2.9GPa、伸びは70%、引裂伝播強度は45kg/mm、吸水率は2.5%であった。
【0085】
(実施例2〜11)
炭化ケイ素の代わりに表1に示した配合部数で無機フィラーを配合した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム及び管状物を得た。物性値を表1に示す。なお、表1に記載のフィラーの詳細は次の通りである。酸化錫は日本化学産業(株)製SH−S、窒化チタンは大塚化学(株)製、窒化ホウ素は昭和電工(株)製UHP−S1、酸化チタンは石原産業(株)製FTL300、炭化チタンは大塚化学(株)製、ITO(インジウムチンオキサイド)は三井金属(株)製パストランITO、アンチモンドープ酸化錫は石原産業(株)製FS10P、カーボン被覆チタン酸カリウムは大塚化学(株)製BK400HR(Lot.9C00)、酸化錫系被覆ホウ酸アルミニウムは三井金属(株)製パストラン−TYPEV−KK006のことを指し、これら無機フィラーのイオン溶出量は全て50ppm以下である。
【0086】
なお、針状フィラーを用いた場合には、フィラーの8倍重量のDMFにフィラーを分散させて、分散溶液を調製した。
【0087】
(実施例12)
実施例11におけるポリアミド酸のDMF溶液を、芳香族ジアミンとして4,4′−ジアミノジフェニルエーテル3当量をDMFに溶解し、次にPMDA4当量を加え、さらに、パラフェニレンジアミン1当量を加えて重合したポリアミド酸のDMF溶液(固形分濃度18.5%、溶液粘度3,000poise)に変更した以外は、実施例11と同様にしてポリイミドフィルム及び管状物を得た。物性値を表1に示す。
【0088】
このようにして重合したポリイミドフィルム単体の線膨張係数は8ppm、吸湿膨張係数は9ppm、引張弾性率は4GPa、伸びは70%、引裂強度は45kg/mm、吸水率は2.1%であった。
【0089】
(実施例13)
実施例11におけるポリアミド酸のDMF溶液を、芳香族ジアミンとして4,4′−ジアミノジフェニルエーテル5当量、パラフェニレンジアミン5当量をDMFに溶解し、次にTMHQ5当量を加え、さらにPMDA5当量を加えて重合したポリアミド酸のDMF溶液(固形分濃度18.5%、溶液粘度3,000poise)に変更した以外は、実施例11と同様にしてポリイミドフィルム及び管状物を得た。物性値を表1に示す。
【0090】
このようにして重合したポリイミドフィルム単体の線膨張係数は9ppm、吸湿膨張係数は5ppm、引張弾性率は6GPa、伸びは40%、引裂強度は35kg/mm、吸水率は1.2%であった。
【0091】
(実施例14)
実施例11の方法にて得たポリイミド層の上に、導電性カーボンブラック(ライオン(株)製、ケッチェンブラックEC600JD)を3重量%配合した接着層をスプレー塗布により形成した。接着層を形成する樹脂は、ポリアミドイミド、PTFE、PFA等の混合物からなるディスパージョン(デュポンジャパンリミテッド製、品番855−003)であった。次いで、接着層の上に、フッ素樹脂ディスパージョン(デュポンジャパンリミテッド製、品番855−405)に導電性カーボンブラック(ライオン(株)製、ケッチェンブラックEC600JD)を0.7重量%配合したものをスプレー塗布により付着させて、外層となるフッ素樹脂含有層を形成した。各層の厚みは、内層が50μm、接着層が5μm、外層が10μmであった。
【0092】
以上のようにして得られた実施例1〜14のポリイミドフィルムおよび管状物の熱伝導率は、全て0.40W/m・Kと非常に熱伝導性に優れていた。また、実施例4、6を除いては使用したフィラーが中抵抗値であるため、得られた樹脂の23℃・55%での体積抵抗値も1×109〜1×1013Ω・cmと中抵抗領域に調整されており、帯電の問題を回避することができた。また全ての実施例において、絶縁性は10kV/mm以上と優れていて、絶縁破壊の問題を回避することができた。
【0093】
また全てのフィルムの引裂強度は15kg/mmを有しており、成形後の引き裂きに対して優れていた。また成形中にも裂けることがなく、成形性にも優れていた。また、実施例5、8〜14では針状フィラーのみ、或いは針状フィラーが無機フィラー中の30vol%以上を占めるため、引裂強度が高く、成形中や成形後の裂けに対してより強いものとなった。また、針状フィラーを含むと引張強度も高くなり、実施例5、8〜10では5GPa以上を示した。
【0094】
また無機フィラーを含むことで、線膨張係数、吸湿膨張係数もフィラー未添加品よりも数ppm低下していた。
【0095】
更に実施例1、実施例12、実施例13の順に引張弾性率は増加していた。これは、ベース樹脂の引張弾性率がこの順に高くなっているためである。実施例13では7GPa以上を示した。
【0096】
また、実施例14ではフッ素樹脂含有層が外層に形成されているために、転写性に優れ、トナーの離型性も非常に優れていた。
【0097】
(比較例1)
無機フィラーを配合しない以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム及び管状物を得た。物性値を表1に示す。以上により得られた比較例1は、実施例1〜13と比較すると、熱伝導性が非常に劣った。
【0098】
(比較例2)
イミド化条件をケミカルキュアではなく、熱キュア(140℃/15分、200℃/30分、250℃/30分、300℃/30分、350℃/30分熱処理)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルム及び管状物を得た。物性値を表1に示す。以上により得られた比較例2は、熱伝導性は優れていたが、成形中の引裂強度が弱く、成形中にフィルムが裂けた。裂けがない部分を用いて定着ベルト、若しくは転写定着ベルトとして走行テストを実施すると、成形後の引裂強度が弱いため、すぐに破損した。また、比較例2は熱キュアで成形をおこなっているために、実施例1に比べると非常に時間がかかり、生産性に劣っていた。
【0099】
【表1】
【0100】
【発明の効果】
生産安定性と生産効率を改善できるように成形中も高い引裂強度を有し、搬送運転中の端面からの割れやつぶれを抑制できるように十分な剛性、可撓性、引裂強度を備え、高転写性と高速印刷にも十分対応できる高い熱伝導性を有する定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物を得ることができる。
Claims (8)
- イミド化促進剤を添加後加熱焼成して得られるポリイミド樹脂100重量部に対して無機フィラーを30〜250重量部含有し、熱伝導率が0.30W/m・K以上であることを特徴とする、定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物。
- イミド化促進剤を添加後加熱焼成して得られるポリイミド樹脂100重量部に対して無機フィラーを30〜250重量部含有し、熱伝導率が0.30W/m・K以上である内層と、フッ素樹脂を含有する外層とを有することを特徴とする、定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物。
- 前記無機フィラーの含有量が50〜200重量部であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物。
- 前記無機フィラーが、針状または鱗片状のフィラーを無機フィラー中に30vol%以上含むものであることを特徴とする、請求項1〜3に記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物。
- 前記イミド化促進剤が、酸無水物および/または三級アミンであることを特徴とする、請求項1〜4に記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物。
- 前記熱伝導率が、0.40W/m・K以上であることを特徴とする、請求項1〜5に記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物。
- 引裂強度が15kg/mm以上であることを特徴とする、請求項1〜6に記載の定着若しくは転写定着用ポリイミド成形物。
- フィルム状または管状に成形されていることを特徴とする、請求項1〜7に記載のポリイミド成形物。
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