JP2004138540A - 廃棄物処分場の漏水位置検知方法 - Google Patents

廃棄物処分場の漏水位置検知方法 Download PDF

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Kunio Aoike
青池 邦夫
Tetsuma Toshioka
利岡 徹馬
Takeshi Kobayashi
小林 剛
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Abstract

【課題】測定電極を高密度で配置しなくても、廃棄物処分場における漏水位置を高精度で検知できるようにする。
【解決手段】遮水シートを挟んで通電すると共に多数の測定電極の隣り合う電位差を順次測定して平面電界分布を取得し、他方、4極法配置により見掛け比抵抗分布を求め、それらを用いて漏洩電流の強度分布を求めてピークを抽出し、その個数と位置を漏洩箇所の初期値とするピーク検出プロセス(A)と、求めたピークに点電流源があるものとして位置と電流値のパラメータで表現し、廃棄物処分場をモデル化して点電流源による測定電極間の電位差を理論的に予測し、予測電位差と測定電位差との残差二乗和が最小になるように点電流源の位置と電流値の修正を繰り返し、残差二乗和が十分に収束した時の位置を漏水位置と特定する逆解析プロセス(B)を具備している。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気絶縁性の遮水シートを敷設することで周辺地盤と隔絶している廃棄物処分場の漏水位置を電気的に検知する方法に関するものである。更に詳しく述べると本発明は、遮水シートに1箇所もしくは複数箇所の破損部が存在し、該破損部から漏水が生じている場合に、漏洩電流の強度分布のピークから漏水箇所の初期値を求め、それを利用して逆解析プロセスによって高精度で漏水位置を特定できるようにし、また漏水規模を推定できるようにした廃棄物処分場の漏水位置検知方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平7−146202号公報
【0003】
一般的な廃棄物処分場では、浸出水が流出するのを防ぐため遮水シートを敷設し、それによって周囲地盤と隔絶する構造になっている。しかし、万一遮水シートに損傷が生じた場合、損傷箇所から浸出水が漏洩することによって重大な地下水汚染や土壌汚染を引き起こす恐れがある。そこで、遮水工が十分な機能を果たすためには、施工完了時点で、敷設された遮水シートの溶着部などからの漏水の有無を検査し、遮水工の健全性を確認することが重要である。更に供用中においても、何らかの原因で遮水シートに損傷が発生することが考えられるので、常に漏水の有無を監視する必要がある。また漏水が発生している場合には、修復などのために漏水位置を特定する必要がある。これら漏水を調査する方法としては電気的な漏水検知方法が有効であり、これまで様々なシステムが開発されてきた。
【0004】
一般に遮水シートとして使用される高密度ポリエチレンシートなどは、1010Ωm以上の比抵抗を有しており、非常に高い電気絶縁性がある。このため図9のAに示すように、遮水シート10の内側と外側の電流電極12a,12bから通電したとき、もし漏水がある場合には電流は損傷部(漏水箇所)14を通じて流れる。損傷部14が非常に小さいときは、廃棄物側から地盤側への電流を正の向きとすると、地盤側に配設した多数の測定電極16の面での電位分布は図9のBに示すようになる。すなわち電流電極において電位が急激に立ち上がり、漏水箇所において電位の急激な落ち込みが発生する。電位の落ち込む位置は、ある基準電位電極からの相対電位を測定し、電位のコンター図を描くことで推定が可能である。
【0005】
特許文献1で提案されている方法は、廃棄物処分場に敷設された電気絶縁性の遮水シートを挟んで外側と内側との間で通電して、いずれか一方の側に格子状に分散配置した多数の測定電極の隣り合う電位差を順次測定して平面電界分布を取得し、他方、前記の多数の測定電極を用いて4極法配置により見掛け比抵抗分布を求め、前記平面電界分布と見掛け比抵抗分布を用いて漏洩電流の強度分布を求めてピークを抽出し、そのピークを漏水箇所と見なして個数と位置を求める方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
格子状に分散配置した多数の測定電極によって離散的にサンプリングしたデータをプロットすることで得られる電位分布の歪みから漏水箇所を特定する方法では、厳密には漏水箇所に最も近い測定電極の位置が分かるだけであり、そのため漏水位置決定の精度は測定電極間隔の50%程度である。測定電極がある位置での電位の値は分かるが、測定電極間のデータは得られないからである。例えば、10m間隔で測定電極を設置した場合には、5m程度の範囲でしか漏洩位置を推定し得ない。精度を上げるためには測定電極を高密度で配置する必要があり、そのため膨大な数の測定電極の設置に多大な費用がかかり、また測定に多くの手間と時間がかかるなどの問題があった。
【0007】
また、測定した電位分布の歪みから漏水の規模を特定しようとする場合、同じ規模の漏水であっても測定電極の近くに漏水がある場合と、測定電極から離れた場所に漏水がある場合とでは、前者の規模が大きく、後者の規模は小さく評価されやすく、漏水箇所と測定電極の位置関係が漏水規模の推定を困難にしている。
【0008】
更に、廃棄物層は起伏があるなど複雑な形状をしていることがあり、その影響で電位分布が歪むと、漏水による電位分布の歪みとの分離が困難である。更に廃棄物処分場には、砂層や地盤、コンクリート、不織布など、比抵抗の違う媒質が集まっており、比抵抗の違いからも電位分布が歪むことがあって、漏水による電位分布の歪みとの分離が困難となっている。
【0009】
本発明の目的は、測定電極を高密度で配置しなくても高精度で漏水位置を検知でき、そのため測定電極の設置に費用と時間がかからないような廃棄物処分場の漏水位置検知方法を提供することである。本発明の他の目的は、漏水箇所と測定電極の位置関係にかかわらず漏水規模を正確に推定できる方法を提供することである。本発明の更に他の目的は、廃棄物層が複雑な形状をしていても、比抵抗の違う媒質が集まっていても、それに対応できる廃棄物処分場の漏水位置検知方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電気絶縁性の遮水シートを敷設することで周辺地盤と隔絶している廃棄物処分場の漏水位置を電気的に検知する方法において、
(A)遮水シートを挟んで一方の側と他方の側との間で通電して、いずれか一方の側に格子状に分散配置した多数の測定電極の隣り合う電位差を順次測定して平面電界分布を取得し、他方、前記の多数の測定電極を用いて4極法配置により見掛け比抵抗分布を求め、前記平面電界分布と見掛け比抵抗分布を用いて漏洩電流の強度分布を求めてピークを抽出し、そのピークの個数とおおよその位置を漏洩箇所の初期値として求めるピーク検出プロセスと、
(B)上記のプロセスで求めたピークに点電流源があるものと見なして位置と電流値のパラメータで表現し、廃棄物処分場をモデル化して点電流源による測定電極間の電位差を理論的に予測し、予測電位差と実際の測定電位差との残差二乗和が最小になるように点電流源の位置と電流値の修正を繰り返し、残差二乗和が十分に収束した時の位置を漏水位置と特定する逆解析プロセスと、
を具備していることを特徴とする廃棄物処分場の漏水位置検知方法である。
【0011】
上記のピーク検出プロセスでは、遮水シートを挟んで一方の側と他方の側との間で通電する際に、一方の電流電極の位置を変えて繰り返し電位差測定を行って複数の平面電界分布を取得し、得られた複数の平面電界分布と見掛け比抵抗分布を用いて複数の漏洩電流の強度分布を求め、それらの平均値からピークを抽出するのが好ましい。次の逆解析プロセスでは連立方程式の未知数が与えられねばならない。最適な未知数を与えなければ良好な結果が得られないため、漏水箇所の個数を抽出されたピークの数で与えて未知数を決定する。
【0012】
逆解析プロセスにおける初期値は、初期値の精度が高いほど速く収束し良好な結果が得られるため、上記のピーク検出プロセスで得られた結果を用いる。漏水箇所の初期位置にはピーク位置を与え、初期電流値には通電電流値を与える。ピークが複数箇所ある場合には、初期電流値については、通電電流値をピーク位置の漏洩電流の強度比で分配した値を与える。これによって本発明では、残差二乗和が十分に収束した時点での点電流源の位置から漏水位置を特定できるばかりでなく、点電流源の電流値から各漏水箇所での漏水規模を推定することができる。
【0013】
廃棄物処分場は、原理的には一層の遮水構造があればよいが、安全性を考慮して遮水構造を二重化することが標準となっている。その場合、一方の遮水構造にのみ遮水シートを用いる一重シート型と両方の遮水構造に遮水シートを用いる二重シート型がある。二重シート型では、上層遮水シートと下層遮水シートの間に排水層を設ける。一重シート型の場合には多数の測定電極を廃棄物処分場の外側に配置するのが好ましく、二重シート型の場合には多数の測定電極を上層遮水シートと下層遮水シートの間の排水層に配置するのが好ましい。
【0014】
一重シート型の廃棄物処分場では、遮水シートを貫く汚水集排水管や外部からの雨水の流入が漏水箇所と同じ電気的漏洩箇所となり、漏水箇所からの電気的な信号を低下させる原因となる。一方、二重シート型の廃棄物処分場では、電位差を測定する電極を上層シートと下層シートの間に設置し袋状に閉じることができるため、漏水以外の電気の漏洩が構造的に発生し難い。漏水によって生じる電気的な信号を大きくするためには、測定電極の側と周辺地盤の間で、あるいは測定電極の側と廃棄物の間で電気的に繋がる経路を断つことが重要である。この点で二重シート型は、施工上、電気絶縁性が確保しやすく好ましい。それに加えて、上下のシート間に測定電極を設置することで、上層シートと下層シートを個別に検知できる利点もある。
【0015】
廃棄物処分場が単純な形状の場合に、位置と電流値のパラメータで表現された点電流源から理論的に電位差を予測する計算に鏡像法を使った直方体媒質中の電位の式を用いることで逆解析が行える。廃棄物処分場が複雑な形状もしくは比抵抗の異なる媒質が複数併存する構造の場合に、位置と電流値のパラメータで表現された点電流源から理論的に測定電位差を予測する計算に3次元の有限要素法を用いて逆解析を行うことが望ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
廃棄物処分場は、地盤上に電気絶縁性の遮水シートを敷設することで周辺地盤と隔絶した領域が形成され、その周囲から隔絶された領域に廃棄物が埋め立てられる。遮水シートの一方の側には、予め多数の測定電極が所定間隔で格子状に分散配置され、各測定電極に接続されたケーブルが漏水検知システムの設置場所まで導かれている。漏水検知システムは、所望の電極間で通電すると共に多数の電極間で電位を測定するための電気探査装置、及び通電電極や測定電極を切り換えるための電極切換装置などを具備している。
【0017】
本発明方法の手順を図1のフローチャートに示す。まず、廃棄物処分場に格子状に分散配置されている多数の測定電極を用いて、平面電界分布と見掛け比抵抗分布を測定する。多数の測定電極は、遮水シートが一重に敷設された構造の廃棄物処分場の場合には廃棄物処分場の外側に配置する。遮水シートが二重に敷設された構造の廃棄物処分場の場合には、上層遮水シートと下層遮水シートの間の排水層の部分に多数の測定電極24を配置する。
【0018】
平面電界分布の測定は図2に模式的に示すように行う。廃棄物処分場20に設置した多数の測定電極22の一つを電流電極22aとし、検知対象となる遮水シート24を挟んで反対側(ここでは地盤側)に外部電流電極26を設置する。まず、遮水シートを挟んだ電流電極間で一定電流を流したときにかかる電圧を測定電極で測定し、漏水の有無を判定する。漏水有りと判定された場合には(漏水箇所を符号28で示す)、遮水シート24を挟んだ電流電極間22a−26で通電し、残りの測定電極22を用いて隣り合う2点間の電位差を順次測定していく。実際には一度に複数の区間の電位差が同時に測定できるようになっている。測定電極を全て使用して電位差を測定したなら、次に別の測定電極を一方の電流電極に切り換えて、遮水シートを挟んで通電し、隣り合う2点の測定電極間の電位差を測定する。これを十数回繰り返して、データセットを十数セット取得する。
【0019】
二重遮水シートの場合は測定される電位差が非常に大きいため、通電時の電流は微小な値まで制御できるような電気探査装置を構成し、測定値が入力電圧範囲を越えない限り最大の電流を流すようにする。一重遮水シートの場合には、測定される電位差が非常に小さいため大電流を流せる電気探査装置とする。
【0020】
見掛け比抵抗分布の測定は図3に模式的に示すように、多数の測定電極22を用いて行う。各最小測定電極格子について4極法配置の測定を順次行い、4極法配置の係数から見掛け比抵抗に変換して、見掛け比抵抗分布を求める。
【0021】
次に、測定電極間の電位差分布と見掛け比抵抗分布から、電流密度の発散∇i∇i=∇σ∇φ+σ∇2 φ
を計算し、各データセットで平均する。全データセットで平均した電流密度の発散の分布(漏洩電流の強度分布)からピーク(極値)を抽出し、そのピークの個数とおおよその位置を漏水箇所の初期値として求める。以上がピーク検出プロセス(A)である。
【0022】
次に、上記のプロセスで求めたピークに点電流源が有るものと仮定し、位置と電流値のパラメータで表現する。各点電流源の初期電流値は、通常電流値を、ピーク点の漏洩電流密度の強度比(発散の比)で分配した値とする。
【0023】
廃棄物処分場をモデル化して、位置と電流値のパラメータで表現された点電流源による測定電極間の電位差を理論的に予測する。廃棄物処分場の形状が単純な場合には、例えば遮水シートで電気的に絶縁された領域(砂層など)の媒質の形状を直方体で表現し、鏡像法を用い境界条件を考慮することによって、直方体における電位の式を予測計算に用いる。廃棄物処分場の形状が複雑な場合には、解析領域を4面体要素に分割して3次元有限要素法を用い電位の予測計算を行う。
【0024】
ここで鏡像法を用いた直方体媒質中の電位の式について補足説明する。比抵抗ρが均質な無限媒体中のある点に電流Iを与えたとき、この点電流源から距離r離れた点の電位Vは、V=ρI/4πrで表せる。次に、地表面のように電流の流出がない平坦な境界がある場合、境界面に対して点電流源と対称な位置に仮想点電流源を置き、両方の点電流源からの電位の重ね合わせによって任意の点(点電流源から距離r、仮想点電流源からの距離r′)の電位Vは次式により計算することができる。
V=(ρI/4π)×{(1/r)+(1/r′)}
これが鏡像法である。直方体の場合には、境界面が前後・左右・上下の6つになり、6つの鏡による鏡像を考慮することで、理論的な電位が計算できる。廃棄物処分場では、前後上・左右及び下面が電気絶縁性の高い遮水シートで囲まれ、上面は大気であるため、これらの境界面からの電気の流出は無いと仮定することができ、前記の式を採用し電位の予測計算を行っている。
【0025】
そして最小二乗法から、繰り返し計算によって測定した電位差と予測計算した電位差の一致の度合いが高くなるように(予測電位差と実際の測定電位差との残差二乗和が最小になるように)点電流源の位置と電流値を繰り返し修正する。この最小二乗法による点電流源の修正を、電流電極の位置を変えて取得したデータセット全てに対して行い、十数セット分の解を得る。これらの解の平均値から漏水位置を決定し、標準偏差を推定精度とする。これが逆解析プロセス(B)である。また電流値の大きさの違いから漏水の規模が推定できる。
【0026】
【実施例】
二重シート型の廃棄物処分場の模型で取得した実験データを用いて漏洩位置決定精度を評価した。処分場模型は、底部が6m×12mの大きさであり、図4に示すように上層遮水シート30aと下層遮水シート30bの間の排水層32の部分に多数の測定電極34を配置した。遮水シート30a,30bは厚さ1.5mmの高密度ポリエチレンシートであり、排水層32として厚さ1cmの排水マットを用いた。下層遮水シート30bは地盤上に敷設され、上層遮水シート30aの上は貯水している。各測定電極34は、図5のAに示すように、1m間隔で正方格子状(7×13=91個)に配置し、上層遮水シートの2箇所に電気の漏洩箇所M1,M2を形成した。各測定電極の位置を黒丸で表し、漏水箇所M1,M2を×印で示す。この×印で表した位置が、実際の漏水箇所ということになる。
【0027】
次に図5のBに示す18箇所の蛇の目状の点のうちの一箇所を電流電極とし、それと遮水シートを挟んで反対側(地盤側)の外部電流電極との間で通電し、残る多数の測定電極で隣接する2点間の電位差を測定した。測定方法は、基本的には前述した図2に示す通りである。全て測定が終わった段階で、次の電流電極に切り換えて、同じ測定を18回繰り返した。このようにして18セットの平面電界分布を取得した。測定した平面電界データを視覚的に表示したい場合には、任意の測定電極(例えば図5のAで左上の電極)を基準とした相対電位に変換し、グリッド化するとコンター図が得られる。漏洩箇所の付近に電位の落ち込みが見られるが、この平面電界分布のみではそれらの位置を決めることはできない。
【0028】
次に、図5に示す多数の測定電極34を用いて、4極法配置による見掛け比抵抗分布を求めた。測定方法は、基本的には前述した図3に示すとおりである。
【0029】
初めに測定した18セットの平面電界分布と見掛け比抵抗分布から、漏洩電流の強度分布を求めた。そして18セットの漏洩電流の強度分布を平均して、漏洩電流の平均強度分布を求めた。それを図6のAに示す。図6のAに示す漏洩電流の平均強度分布(コンター図)から、漏洩箇所M1,M2付近に2箇所のピークが抽出された。抽出されたピークP1,P2(図6のB参照)を+印で表す。この例では、ピークP2は漏洩箇所M2にかなり近いが、ピークP1は漏洩箇所M1からかなり離れていることが分かる。従って、単にこのようにして得られるピークP1,P2を漏洩箇所と特定したのでは、かなりの誤差が含まれることが分かる。
【0030】
本発明では、これらのデータを元に逆解析を行う。そこで、まず、抽出された2つのピークに点電流源があるものと見なして、平面座標(x、y)と電流値で表す。各点電流源の座標には抽出されたピークの座標を与え、各点電流源の電流値としては通電電流値をピーク点の電流強度の比で分配した値を与える。これらが逆解析の初期値となる。
【0031】
ここでは理論的な電位差の予測計算には、図7に示すような直方体状の均質媒質を仮定した単純なモデルを用いて行った。廃棄物処分場に起伏が無く、単純な形状をなしている場合には、このようなモデルが適用できる。理論的に電位差を予測する計算に鏡像法を使った直方体媒質中の電位の式を用いる。そして、測定電位差と図7の直方体媒質から計算される予測電位差の残差二乗和が最小になるまで繰り返し計算を行い点電流源の位置を順次修正する。この計算を18セットのデータすべてについて行うことで、18個の解を得た。
【0032】
測定データと理論データの対比の一例を図8に示す。図8のAが電位分布に変換した測定データであり、図8のBが電位分布に変換した理論データである。同じ測定電極(星印で示す電極)を一方の電流電極としたものである。なお、図中のコンターラインの値の単位はmVである。
【0033】
このようにして得られた18個の解を平均することで点電流源の最終的な位置を特定した。漏洩箇所M1,M2についての位置決定精度の詳細を表1に示す。これらの結果から、本発明方法で特定された漏水箇所と実際の漏水箇所の位置の絶対誤差(逆解析解の平均値と真の位置のずれ)は非常に小さく、電極間隔の10%以内に入る良好な結果が得られた。
【0034】
【表1】
Figure 2004138540
【0035】
ところで、二重シート型の廃棄物処分場において、上層と下層の遮水シート間に測定電極を設置する場合、遮水シート間の厚さが薄ければ薄いほど電流密度が大きくなるので、電極間で測定される電位差は大きくなる。例えば、数mAの通電で数Vの電位差が観測される。従って、測定装置には微小電流制御と大きな入力電圧測定の機能が必要である。そこで、今回用いた測定装置では、通常の電気探査装置に対してこれらの機能を付加している。
【0036】
また、今回の測定装置には一定電流を通電するときに印加する電圧の測定回路を組み込んでいる。漏水がない場合には、遮水シートの電気絶縁性が高いために通電には大きな印加電圧が必要となる。一方、遮水シートの一部が破損し漏水が発生すると、電極間の抵抗が下がり印加電圧は低下する。そこで、この漏水検知システムでは、測定装置はパーソナルコンピュータからリモート制御され、漏水の有無を判定する情報の一つとして、通電時の印加電圧を記録できるように構成されている。
【0037】
なお、上記の実施例では廃棄物処分場の形状が単純な場合であったため、点電流源の位置も座標(x,y)で表せば十分であったが、廃棄物処分場が起伏を有するなど複雑な形状の場合には、点電流源の位置は座標(x,y,z)で表し、3次元有限要素法によって層厚や起伏の効果を計算し、層厚や起伏によって生じる電位の歪みと漏水による歪みとを区別することが可能となる。
【0038】
【発明の効果】
本発明は上記のように、平面電界分布と見掛け比抵抗分布を用いて漏洩電流の強度分布を求めてピークを抽出し、求めたピークを漏水箇所の初期値とし、そこに点電流源が有るものと見なして、逆解析法により実際の測定電位との残差二乗和が十分に収束するまで点電流源の位置と電流値を繰り返し修正する廃棄物処分場の漏水位置検知方法であるから、漏水位置の特定精度を著しく(電極間隔の10%程度以内まで)向上させることができる。
【0039】
従って、漏水位置の特定精度を高めるために測定電極の配置密度を過度に高くする必要が無くなり、電極設置の費用の削減と工期の短縮を図ることができる。推定された漏水位置の誤差範囲は、従来のような経験値ではなく、統計的に求められるので修復の際に掘削する範囲を明確に指定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る漏水位置検知方法の手順を示すフローチャート。
【図2】平面電界分布の測定法を示す模式図。
【図3】見掛け比抵抗分布の測定法を示す模式図。
【図4】測定電極の設置状況を示す断面図。
【図5】測定電極の配列状況と漏水位置を示す説明図。
【図6】漏洩電流の強度分布と抽出したピークを示す説明図。
【図7】モデル化した廃棄物処分場の説明図。
【図8】測定データと理論データを対比した一例を示すコンター図。
【図9】漏水によって生じる電位分布の説明図。
【符号の説明】
10 遮水シート
12a,12b 電流電極
14 損傷部(漏水箇所)
16 測定電極
20 廃棄物処分場
22 測定電極
24 遮水シート
26 外部電流電極
28 漏水箇所

Claims (6)

  1. 電気絶縁性の遮水シートを敷設することで周辺地盤と隔絶している廃棄物処分場の漏水位置を電気的に検知する方法において、
    遮水シートを挟んで一方の側と他方の側との間で通電して、いずれか一方の側に格子状に分散配置した多数の測定電極の隣り合う電位差を順次測定して平面電界分布を取得し、他方、前記の多数の測定電極を用いて4極法配置により見掛け比抵抗分布を求め、前記平面電界分布と見掛け比抵抗分布を用いて漏洩電流の強度分布を求めてピークを抽出し、そのピークの個数とおおよその位置を漏洩箇所の初期値として求めるピーク検出プロセスと、
    上記のプロセスで求めたピークに点電流源があるものと見なして位置と電流値のパラメータで表現し、廃棄物処分場をモデル化して点電流源による測定電極間の電位差を理論的に予測し、予測電位差と実際の測定電位差との残差二乗和が最小になるように点電流源の位置と電流値の修正を繰り返し、残差二乗和が十分に収束した時の位置を漏水位置と特定する逆解析プロセスと、
    を具備していることを特徴とする廃棄物処分場の漏水位置検知方法。
  2. ピーク検出プロセスでは、遮水シートを挟んで一方の側と他方の側との間で通電する際に、一方の電流電極の位置を変えて繰り返し電位差測定を行って複数の平面電界分布を取得し、得られた複数の平面電界分布と見掛け比抵抗分布を用いて複数の漏洩電流の強度分布を求め、それらの平均値からピークを抽出する請求項1記載の廃棄物処分場の漏水位置検知方法。
  3. ピークが複数箇所ある場合に、初期電流値については、通電電流値をピーク点の漏洩電流の強度比で分配した値を与え、残差二乗和が十分に収束した時点での点電流源の位置から漏水位置を特定し、点電流源の電流値から各漏水箇所での漏水規模を推定する請求項1又は2記載の廃棄物処分場の漏水位置検知方法。
  4. 上層遮水シートと下層遮水シートを重ねて二重にし、それらの間に排水層を介在させた二重シート型構造とし、多数の測定電極が排水層に配置され、その一つを一方の通電電極とし、他方の通電電極が地盤側に設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の廃棄物処分場の漏水位置検知方法。
  5. 廃棄物処分場が単純な形状の場合に、位置と電流値のパラメータで表現された点電流源から理論的に電位差を予測する計算に鏡像法を使った直方体媒質中の電位の式を用いる請求項1乃至4のいずれかに記載の廃棄物処分場の漏水位置検知方法。
  6. 廃棄物処分場が複雑な形状もしくは比抵抗の異なる媒質が複数併存する構造の場合に、位置と電流値のパラメータで表現された点電流源から理論的に測定電位差を予測する計算に3次元の有限要素法を用いる請求項1乃至4のいずれかに記載の廃棄物処分場の漏水位置検知方法。
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