JP2004138179A - 駒式ボールねじ - Google Patents
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Abstract
【課題】ナットのねじ溝と駒部材の連結溝との接合部の段差を抑制し、作動時に生じる騒音や振動を低減させた駒式ボールねじを提供する。
【解決手段】外周面に螺旋状のねじ溝52を形成したねじ軸51と、このねじ軸51に外嵌し、内周面に螺旋状のねじ溝54を形成したナット53と、対向する両ねじ溝52、54により形成された転動路に収容した複数のボール55と、ナット53の外周面から装着され、このナット53のねじ溝を連結する連結溝2を有する駒部材1とを備えた駒式ボールねじにおいて、ナット53のねじ溝54せ接合する駒部材1の両端部に別体の弾性部材からなる緩衝部材3を装着し、接合部における段差をボール55が通過することによって発生する騒音および振動を低減させた。
【選択図】 図2
【解決手段】外周面に螺旋状のねじ溝52を形成したねじ軸51と、このねじ軸51に外嵌し、内周面に螺旋状のねじ溝54を形成したナット53と、対向する両ねじ溝52、54により形成された転動路に収容した複数のボール55と、ナット53の外周面から装着され、このナット53のねじ溝を連結する連結溝2を有する駒部材1とを備えた駒式ボールねじにおいて、ナット53のねじ溝54せ接合する駒部材1の両端部に別体の弾性部材からなる緩衝部材3を装着し、接合部における段差をボール55が通過することによって発生する騒音および振動を低減させた。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールねじ、特に自動車の電動パワーステアリング装置等に用いられる駒式ボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にボールねじは、ボールの循環機構が異なる種々の形式のものがあり、その一つに駒式と呼ばれるものがある。この駒式ボールねじは、転動路を周回経路とする循環用の駒部材を使用し、ねじ溝の連結路を有する駒部材をナットに装着している。駒式ボールねじは、構成が比較的簡素で、かつコンパクトに構成できる利点がある。
【0003】
図3は、従来の駒式ボールねじの一例を示している。(a)は従来の駒式ボールねじの平面図、(b)は縦断面図、そして(c)は駒部材の斜視図をそれぞれ示している。ねじ軸51は、螺旋状のねじ溝52を外周に有し、回転するナット53は、このねじ溝52に対応する螺旋状のねじ溝54を内周に有していて、両ねじ溝52、54の間に収容した多数のボール55を介してねじ軸51に螺合している。
【0004】
円筒状のナット53の胴部には、内外の周面に貫通してねじ溝54の一部を切欠く楕円状の駒窓56を穿設し、この駒窓56に楕円状の駒部材57を嵌合させている。駒部材57の内方には、ねじ溝54の隣合う1周分同士を連結する連結溝58を形成し、この連結溝58とねじ溝54の略1周の部分とでボール55の転動路を構成している。転動路内の内外のねじ溝52、54間に介在した多数のボール55は、ねじ溝52、54に沿って転動し、駒部材57の連結溝58に案内され、ねじ軸51のねじ山を乗り越えて隣接するねじ溝54に戻って再びねじ溝52、54に沿って転動する。
【0005】
このように、駒部材57の連結溝58は、ナット53の隣接するねじ溝54間を滑らかに接続するように、S字状に湾曲して形成されており、このため、その両端開口縁58aを、ナット53の隣接するねじ溝54の窓開口縁部56aに合致するようにして、駒部材57の連結溝58をねじ溝54に接続することは、製造上および組付上容易ではない。したがって、ねじ溝54と連結溝58との間に段差が生じ、ボール55がこの段差上を転動して通過する時、引っ掛りを生じて騒音と振動を発生する。
【0006】
こうした不具合を解決するため、駒部材57の連結溝58とナット53のねじ溝54とを滑らかに接続し、ボール55がこれらの接合部を通過する時、引っ掛りを生じて騒音と振動が発生するのを抑制したボールねじが知られている。
【0007】
このボールねじは、図4に示すように、図示しない治具にナット53をセットし、このナット53の駒窓56における窓開口縁部56aの形状に最も適した形状の砥石59を使用し、その回転軸をナット53の中心軸に対しα(約10°)だけ傾斜させて砥石59をX方向に送り込む。こうして、ナット53の駒窓56に駒部材57を組み込む前に、ナット53の駒窓56に駒部材57を組み込んだ時、駒部材57の連結溝58の開口縁部58a相当位置から所定量残す一時面取りを行う。
【0008】
さらに、ナット53の駒窓56に駒部材57を組み込んだ後に、残存量を除去する二次面取りにより形成されている。この二次面取りは、ナット53のねじ溝54と駒部材57の連結溝58とが滑らかに接続されるように、面合わせを行うものであって、手作業もしくは機械研削によって行われる。
【0009】
二次面取りの加工量は、この二次面取りに先だって一時面取りが行われているので、必要最小限となり、全体として面取り加工作業を能率的に行うことができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−270648号公報(第4、5頁、第11図)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした従来の駒式ボールねじにおいて、ボール55の軌道空間が、ねじ溝54の軌道空間mより駒部材57における連結溝58の軌道空間nの方が狭いと引っ掛りが発生して作動不能の原因となる。これを防止するため、従来は、連結溝58の開口縁部58aを径方向外方に僅かにシフトさせ、製作上寸法がばらついても開口縁部58aがねじ溝54から出っ張らないようにしている。このため、連結溝58とねじ溝54との接合部に必然的に段差δが生じ、ボール55がこの段差δを通過する場合には騒音および振動が発生する(図5参照)。
【0012】
また、このような段差δを前述した従来の第1の面取りと第2の面取りによって完全に除去することは難しい。したがって、この微小な段差δ上をボール55が転動して通過することにより発生する騒音および振動を防止するには限界があった。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ナットのねじ溝と駒部材の連結溝との接合部の段差を抑制し、作動時に生じる騒音や振動を低減させた駒式ボールねじを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1記載の発明は、外周面に螺旋状のねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸に外嵌し、内周面に螺旋状のねじ溝を形成したナットと、対向する両ねじ溝により形成された転動路に収容した複数のボールと、前記ナットの外周面から装着され、このナットのねじ溝を連結する連結溝を有する駒部材とを備えた駒式ボールねじにおいて、前記ナットのねじ溝と駒部材の連結溝との接合部を弾性部材で形成した。
【0015】
このように、ナットと駒部材の接合部を合成樹脂や硬質ゴム等の弾性部材で形成することにより、両者間に製作上、あるいは組立上および組付上から発生する寸法バラツキによる段差があっても接合部が弾性変形し、ボール通過時の騒音および振動を低減させることができる。したがって、従来のように連結溝の開口縁部をナットのねじ溝に対して径方向外方にシフトさせ段差を設けなくとも段差ゼロを狙って製作することができ、可及的に段差を低減さえることができる。さらに、従来実施していた駒部材の厳しい形状寸法管理や面合せ等の面倒な手作業が不要となり、低コストな駒式ボールねじを提供することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、前記ナットのねじ溝と接合する前記駒部材の両端部を弾性部材で形成した。このように、駒部材の両端部を合成樹脂や硬質ゴム等の弾性部材で形成することにより、その弾性変形によって緩衝することができるため、ボール通過時の騒音および振動を低減させることができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明のように、前記駒部材の両端部に別体の緩衝部材を装着しても良い。
【0018】
また、請求項4に記載の発明のように、前記駒部材を弾性部材で形成しても良い。好ましくは、請求項5に記載の発明のように、前記弾性部材が射出成形可能な合成樹脂であれば、機械加工でなく射出成形で形成することができ、量産に好適で低コスト化が実現できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は、本発明に係る駒式ボールねじを示す平面図、(b)は縦断面図である。この駒式ボールねじは、ねじ軸51と、このねじ軸51に外嵌したナット53と、ねじ軸51の外周に形成した螺旋状のねじ溝52と、このねじ溝52に対応しナット53の内周に形成した螺旋状のねじ溝54により形成される転動路内に収容した複数のボール55と、ナット53のねじ溝54を連結する連結溝2を有する駒部材1とで構成している。なお、基本構造に関しては従来の駒式ボールねじと同様であるので、同一部品同一部位には同じ符号を付してその重複説明を省略する。
【0020】
図2は駒部材1をナット53に装着した部位を示す要部断面図である。ここで、駒部材1の連結溝2の深さは、ナット53の駒窓56に駒部材1を装着した時、ボール55がこの連結溝2内で、ねじ軸51におけるねじ溝52のランド部を乗り越えることができる深さに形成されている。さらに、駒部材1内でのボール軌道空間を確保して駒部材1内を無負荷領域とするため、開口縁部2aの溝深さよりも中央部2bの溝深さは深く形成されている。すなわち、ねじ溝54のリードに沿った横断面における連結溝2の溝底形状は図示のように単一な円弧ではなく、楕円あるいは双曲線に形成されている。
【0021】
一方、ナット53のねじ溝54に接合する駒部材1の両端部を別体の緩衝部材3で形成している。この緩衝部材3は弾性部材からなり、ボール55通過時の騒音および振動をその弾性変形によって緩衝することができる。したがって、駒部材1の両端部を弾性変形可能な緩衝部材3で形成しているため、従来のように連結溝2の開口縁部2aをナット53のねじ溝54に対して径方向外方にシフトさせ、あえて接合部に段差δを設けなくとも、段差ゼロを狙って製作することができ、可及的に段差を低減させることができる。さらに、従来実施していた駒部材の厳しい形状寸法管理や面合せ等の面倒な手作業が不要となり、低コストな駒式ボールねじを提供することができる。
弾性部材としては、ウレタンゴム等の硬質ゴム、あるいは合成樹脂等を例示することができる。なお、本実施例では、緩衝部材3は駒部材1に嵌合されて一体化されているが、これに限らず、緩衝部材3を接着や焼付け溶着、あるいは、射出成形等によって一体化するようにしても良い。
【0022】
駒部材1の連結溝2はエンドミル等の切削加工により形成することも可能であるが、本実施例における駒部材1は燒結合金で形成されている。これは、金属粉末を可塑状に調整し、射出成形機で成形することにより行われる。射出成形に際しては、まず、金属粉と、プラスチックおよびワックスからなるバインダとを混練機で混練し、その混練物をペレット状に造粒する。造粒したペレットは射出成形機のホッパに供給し、金型内に加熱溶融状態で押し込むことにより成形する。金属粉としては、後に浸炭焼入れ等による硬化処理が可能な材質が好ましく、例えば、炭素(C)が0.3%wt%、ニッケル(Ni)が1〜2wt%、残部が鉄(Fe)等で構成されるものとする。この種の燒結合金で駒部材1を形成することにより、複雑な溝形状であっても容易に対応することができ、量産に好適である。なお、駒部材1の連結溝2の表面粗さを向上させるためにラップ加工を行っても良い。
【0023】
前述した駒部材1は、両端部に別体の緩衝部材3を装着したものであるが、これに限らず、本発明に係る駒部材は、ナット53のねじ溝54と接合する駒部材1における連結溝2の開口縁部2aが弾性変形可能なら良く、したがって、駒部材1自体を弾性部材、例えば、PA66等の熱可塑性合成樹脂によって射出成形で形成しても良い。
【0024】
また、駒部材1の少なくとも両端部を弾性部材で形成したものを例示したが、これに限らず、ナット53のねじ溝54と駒部材1の連結溝2の接合部に弾性変形可能な部材が介在していれば良く、例えば、ナット53におけるねじ溝54の窓開口縁部56aを弾性部材で形成しても良い。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【0026】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係る駒式ボールねじは、外周面に螺旋状のねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸に外嵌し、内周面に螺旋状のねじ溝を形成したナットと、対向する両ねじ溝により形成された転動路に収容した複数のボールと、前記ナットの外周面から装着され、このナットのねじ溝を連結する連結溝を有する駒部材とを備えた駒式ボールねじにおいて、前記ナットのねじ溝と駒部材の連結溝との接合部を弾性部材で形成したので、両者間に製作上、あるいは組立上および組付上から発生する寸法バラツキによる段差があっても接合部が弾性変形し、ボール通過時の騒音および振動を低減させることができる。したがって、従来のように連結溝の開口縁部をナットのねじ溝に対して径方向外方にシフトさせ段差を設けなくとも段差ゼロを狙って製作することができ、可及的に段差を低減させることができる。さらに、従来実施していた駒部材の厳しい形状寸法管理や面合せ等の面倒な手作業が不要となり、低コストな駒式ボールねじを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明に係る駒式ボールねじを示す平面図である。
(b)は、同上、縦断面図である。
【図2】本発明に係る駒式ボールねじの実施形態を示す要部断面図である。
【図3】(a)は、従来の駒式ボールねじを示す平面図である。
(b)は、同上、縦断面図である。
(c)は、従来の駒式ボールねじの駒部材を示す斜視図である。
【図4】従来の駒式ボールねじの加工状態を示す説明図である。
【図5】従来の駒式ボールねじを示す要部断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・・駒部材
2・・・・・・・・・・連結溝
3・・・・・・・・・・緩衝部材
2a・・・・・・・・・開口縁部
2b・・・・・・・・・中央部
51・・・・・・・・・ねじ軸
52、54・・・・・・ねじ溝
53・・・・・・・・・ナット
55・・・・・・・・・ボール
56・・・・・・・・・駒窓
56a・・・・・・・・窓開口縁部
57・・・・・・・・・駒部材
58・・・・・・・・・連結溝
58a・・・・・・・・開口縁部
59・・・・・・・・・砥石
m・・・・・・・・・・ねじ溝の軌道空間
n・・・・・・・・・・連結溝の軌道空間
α・・・・・・・・・・砥石傾斜角
δ・・・・・・・・・・段差
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールねじ、特に自動車の電動パワーステアリング装置等に用いられる駒式ボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にボールねじは、ボールの循環機構が異なる種々の形式のものがあり、その一つに駒式と呼ばれるものがある。この駒式ボールねじは、転動路を周回経路とする循環用の駒部材を使用し、ねじ溝の連結路を有する駒部材をナットに装着している。駒式ボールねじは、構成が比較的簡素で、かつコンパクトに構成できる利点がある。
【0003】
図3は、従来の駒式ボールねじの一例を示している。(a)は従来の駒式ボールねじの平面図、(b)は縦断面図、そして(c)は駒部材の斜視図をそれぞれ示している。ねじ軸51は、螺旋状のねじ溝52を外周に有し、回転するナット53は、このねじ溝52に対応する螺旋状のねじ溝54を内周に有していて、両ねじ溝52、54の間に収容した多数のボール55を介してねじ軸51に螺合している。
【0004】
円筒状のナット53の胴部には、内外の周面に貫通してねじ溝54の一部を切欠く楕円状の駒窓56を穿設し、この駒窓56に楕円状の駒部材57を嵌合させている。駒部材57の内方には、ねじ溝54の隣合う1周分同士を連結する連結溝58を形成し、この連結溝58とねじ溝54の略1周の部分とでボール55の転動路を構成している。転動路内の内外のねじ溝52、54間に介在した多数のボール55は、ねじ溝52、54に沿って転動し、駒部材57の連結溝58に案内され、ねじ軸51のねじ山を乗り越えて隣接するねじ溝54に戻って再びねじ溝52、54に沿って転動する。
【0005】
このように、駒部材57の連結溝58は、ナット53の隣接するねじ溝54間を滑らかに接続するように、S字状に湾曲して形成されており、このため、その両端開口縁58aを、ナット53の隣接するねじ溝54の窓開口縁部56aに合致するようにして、駒部材57の連結溝58をねじ溝54に接続することは、製造上および組付上容易ではない。したがって、ねじ溝54と連結溝58との間に段差が生じ、ボール55がこの段差上を転動して通過する時、引っ掛りを生じて騒音と振動を発生する。
【0006】
こうした不具合を解決するため、駒部材57の連結溝58とナット53のねじ溝54とを滑らかに接続し、ボール55がこれらの接合部を通過する時、引っ掛りを生じて騒音と振動が発生するのを抑制したボールねじが知られている。
【0007】
このボールねじは、図4に示すように、図示しない治具にナット53をセットし、このナット53の駒窓56における窓開口縁部56aの形状に最も適した形状の砥石59を使用し、その回転軸をナット53の中心軸に対しα(約10°)だけ傾斜させて砥石59をX方向に送り込む。こうして、ナット53の駒窓56に駒部材57を組み込む前に、ナット53の駒窓56に駒部材57を組み込んだ時、駒部材57の連結溝58の開口縁部58a相当位置から所定量残す一時面取りを行う。
【0008】
さらに、ナット53の駒窓56に駒部材57を組み込んだ後に、残存量を除去する二次面取りにより形成されている。この二次面取りは、ナット53のねじ溝54と駒部材57の連結溝58とが滑らかに接続されるように、面合わせを行うものであって、手作業もしくは機械研削によって行われる。
【0009】
二次面取りの加工量は、この二次面取りに先だって一時面取りが行われているので、必要最小限となり、全体として面取り加工作業を能率的に行うことができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−270648号公報(第4、5頁、第11図)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした従来の駒式ボールねじにおいて、ボール55の軌道空間が、ねじ溝54の軌道空間mより駒部材57における連結溝58の軌道空間nの方が狭いと引っ掛りが発生して作動不能の原因となる。これを防止するため、従来は、連結溝58の開口縁部58aを径方向外方に僅かにシフトさせ、製作上寸法がばらついても開口縁部58aがねじ溝54から出っ張らないようにしている。このため、連結溝58とねじ溝54との接合部に必然的に段差δが生じ、ボール55がこの段差δを通過する場合には騒音および振動が発生する(図5参照)。
【0012】
また、このような段差δを前述した従来の第1の面取りと第2の面取りによって完全に除去することは難しい。したがって、この微小な段差δ上をボール55が転動して通過することにより発生する騒音および振動を防止するには限界があった。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ナットのねじ溝と駒部材の連結溝との接合部の段差を抑制し、作動時に生じる騒音や振動を低減させた駒式ボールねじを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1記載の発明は、外周面に螺旋状のねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸に外嵌し、内周面に螺旋状のねじ溝を形成したナットと、対向する両ねじ溝により形成された転動路に収容した複数のボールと、前記ナットの外周面から装着され、このナットのねじ溝を連結する連結溝を有する駒部材とを備えた駒式ボールねじにおいて、前記ナットのねじ溝と駒部材の連結溝との接合部を弾性部材で形成した。
【0015】
このように、ナットと駒部材の接合部を合成樹脂や硬質ゴム等の弾性部材で形成することにより、両者間に製作上、あるいは組立上および組付上から発生する寸法バラツキによる段差があっても接合部が弾性変形し、ボール通過時の騒音および振動を低減させることができる。したがって、従来のように連結溝の開口縁部をナットのねじ溝に対して径方向外方にシフトさせ段差を設けなくとも段差ゼロを狙って製作することができ、可及的に段差を低減さえることができる。さらに、従来実施していた駒部材の厳しい形状寸法管理や面合せ等の面倒な手作業が不要となり、低コストな駒式ボールねじを提供することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、前記ナットのねじ溝と接合する前記駒部材の両端部を弾性部材で形成した。このように、駒部材の両端部を合成樹脂や硬質ゴム等の弾性部材で形成することにより、その弾性変形によって緩衝することができるため、ボール通過時の騒音および振動を低減させることができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明のように、前記駒部材の両端部に別体の緩衝部材を装着しても良い。
【0018】
また、請求項4に記載の発明のように、前記駒部材を弾性部材で形成しても良い。好ましくは、請求項5に記載の発明のように、前記弾性部材が射出成形可能な合成樹脂であれば、機械加工でなく射出成形で形成することができ、量産に好適で低コスト化が実現できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は、本発明に係る駒式ボールねじを示す平面図、(b)は縦断面図である。この駒式ボールねじは、ねじ軸51と、このねじ軸51に外嵌したナット53と、ねじ軸51の外周に形成した螺旋状のねじ溝52と、このねじ溝52に対応しナット53の内周に形成した螺旋状のねじ溝54により形成される転動路内に収容した複数のボール55と、ナット53のねじ溝54を連結する連結溝2を有する駒部材1とで構成している。なお、基本構造に関しては従来の駒式ボールねじと同様であるので、同一部品同一部位には同じ符号を付してその重複説明を省略する。
【0020】
図2は駒部材1をナット53に装着した部位を示す要部断面図である。ここで、駒部材1の連結溝2の深さは、ナット53の駒窓56に駒部材1を装着した時、ボール55がこの連結溝2内で、ねじ軸51におけるねじ溝52のランド部を乗り越えることができる深さに形成されている。さらに、駒部材1内でのボール軌道空間を確保して駒部材1内を無負荷領域とするため、開口縁部2aの溝深さよりも中央部2bの溝深さは深く形成されている。すなわち、ねじ溝54のリードに沿った横断面における連結溝2の溝底形状は図示のように単一な円弧ではなく、楕円あるいは双曲線に形成されている。
【0021】
一方、ナット53のねじ溝54に接合する駒部材1の両端部を別体の緩衝部材3で形成している。この緩衝部材3は弾性部材からなり、ボール55通過時の騒音および振動をその弾性変形によって緩衝することができる。したがって、駒部材1の両端部を弾性変形可能な緩衝部材3で形成しているため、従来のように連結溝2の開口縁部2aをナット53のねじ溝54に対して径方向外方にシフトさせ、あえて接合部に段差δを設けなくとも、段差ゼロを狙って製作することができ、可及的に段差を低減させることができる。さらに、従来実施していた駒部材の厳しい形状寸法管理や面合せ等の面倒な手作業が不要となり、低コストな駒式ボールねじを提供することができる。
弾性部材としては、ウレタンゴム等の硬質ゴム、あるいは合成樹脂等を例示することができる。なお、本実施例では、緩衝部材3は駒部材1に嵌合されて一体化されているが、これに限らず、緩衝部材3を接着や焼付け溶着、あるいは、射出成形等によって一体化するようにしても良い。
【0022】
駒部材1の連結溝2はエンドミル等の切削加工により形成することも可能であるが、本実施例における駒部材1は燒結合金で形成されている。これは、金属粉末を可塑状に調整し、射出成形機で成形することにより行われる。射出成形に際しては、まず、金属粉と、プラスチックおよびワックスからなるバインダとを混練機で混練し、その混練物をペレット状に造粒する。造粒したペレットは射出成形機のホッパに供給し、金型内に加熱溶融状態で押し込むことにより成形する。金属粉としては、後に浸炭焼入れ等による硬化処理が可能な材質が好ましく、例えば、炭素(C)が0.3%wt%、ニッケル(Ni)が1〜2wt%、残部が鉄(Fe)等で構成されるものとする。この種の燒結合金で駒部材1を形成することにより、複雑な溝形状であっても容易に対応することができ、量産に好適である。なお、駒部材1の連結溝2の表面粗さを向上させるためにラップ加工を行っても良い。
【0023】
前述した駒部材1は、両端部に別体の緩衝部材3を装着したものであるが、これに限らず、本発明に係る駒部材は、ナット53のねじ溝54と接合する駒部材1における連結溝2の開口縁部2aが弾性変形可能なら良く、したがって、駒部材1自体を弾性部材、例えば、PA66等の熱可塑性合成樹脂によって射出成形で形成しても良い。
【0024】
また、駒部材1の少なくとも両端部を弾性部材で形成したものを例示したが、これに限らず、ナット53のねじ溝54と駒部材1の連結溝2の接合部に弾性変形可能な部材が介在していれば良く、例えば、ナット53におけるねじ溝54の窓開口縁部56aを弾性部材で形成しても良い。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【0026】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係る駒式ボールねじは、外周面に螺旋状のねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸に外嵌し、内周面に螺旋状のねじ溝を形成したナットと、対向する両ねじ溝により形成された転動路に収容した複数のボールと、前記ナットの外周面から装着され、このナットのねじ溝を連結する連結溝を有する駒部材とを備えた駒式ボールねじにおいて、前記ナットのねじ溝と駒部材の連結溝との接合部を弾性部材で形成したので、両者間に製作上、あるいは組立上および組付上から発生する寸法バラツキによる段差があっても接合部が弾性変形し、ボール通過時の騒音および振動を低減させることができる。したがって、従来のように連結溝の開口縁部をナットのねじ溝に対して径方向外方にシフトさせ段差を設けなくとも段差ゼロを狙って製作することができ、可及的に段差を低減させることができる。さらに、従来実施していた駒部材の厳しい形状寸法管理や面合せ等の面倒な手作業が不要となり、低コストな駒式ボールねじを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明に係る駒式ボールねじを示す平面図である。
(b)は、同上、縦断面図である。
【図2】本発明に係る駒式ボールねじの実施形態を示す要部断面図である。
【図3】(a)は、従来の駒式ボールねじを示す平面図である。
(b)は、同上、縦断面図である。
(c)は、従来の駒式ボールねじの駒部材を示す斜視図である。
【図4】従来の駒式ボールねじの加工状態を示す説明図である。
【図5】従来の駒式ボールねじを示す要部断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・・駒部材
2・・・・・・・・・・連結溝
3・・・・・・・・・・緩衝部材
2a・・・・・・・・・開口縁部
2b・・・・・・・・・中央部
51・・・・・・・・・ねじ軸
52、54・・・・・・ねじ溝
53・・・・・・・・・ナット
55・・・・・・・・・ボール
56・・・・・・・・・駒窓
56a・・・・・・・・窓開口縁部
57・・・・・・・・・駒部材
58・・・・・・・・・連結溝
58a・・・・・・・・開口縁部
59・・・・・・・・・砥石
m・・・・・・・・・・ねじ溝の軌道空間
n・・・・・・・・・・連結溝の軌道空間
α・・・・・・・・・・砥石傾斜角
δ・・・・・・・・・・段差
Claims (5)
- 外周面に螺旋状のねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸に外嵌し、内周面に螺旋状のねじ溝を形成したナットと、対向する両ねじ溝により形成された転動路に収容した複数のボールと、前記ナットの外周面から装着され、このナットのねじ溝を連結する連結溝を有する駒部材とを備えた駒式ボールねじにおいて、
前記ナットのねじ溝と駒部材の連結溝との接合部を弾性部材で形成したことを特徴とする駒式ボールねじ。 - 前記ナットのねじ溝と接合する前記駒部材の両端部を弾性部材で形成した請求項1に記載の駒式ボールねじ。
- 前記駒部材の両端部に別体の緩衝部材を装着した請求項2に記載の駒式ボールねじ。
- 前記駒部材を弾性部材で形成した請求項1に記載の駒式ボールねじ。
- 前記弾性部材が射出成形可能な合成樹脂である請求項1乃至4いずれかに記載の駒式ボールねじ。
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JP2002304220A JP2004138179A (ja) | 2002-10-18 | 2002-10-18 | 駒式ボールねじ |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007177950A (ja) * | 2005-12-28 | 2007-07-12 | Nsk Ltd | ボールねじ装置 |
JP2019210995A (ja) * | 2018-06-04 | 2019-12-12 | 日本精工株式会社 | コマ及びボールねじ |
-
2002
- 2002-10-18 JP JP2002304220A patent/JP2004138179A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
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JP2019210995A (ja) * | 2018-06-04 | 2019-12-12 | 日本精工株式会社 | コマ及びボールねじ |
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