JP6888708B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は電動パワーステアリング装置に関する。
自動車のラックピニオン式ステアリング装置においては、運転者の操舵によるステアリング軸の回転がピニオン軸に伝達され、このピニオン軸の回転がラックアンドピニオンギヤによりラック軸の軸方向直線運動に変換され、このラック軸の軸方向直線運動が転舵輪に伝達されて、転舵輪が転舵される。
運転者の操舵トルクに応じて電動モータを駆動し、この電動モータの回転力を軸方向直動力に変換してラック軸に伝達することによって運転者の操舵を補助する方式の電動パワーステアリング装置(以下、「ラックアシスト式電動パワーステアリング装置」と記すこともある)が知られている。ラックアシスト式電動パワーステアリング装置においては、電動モータの回転力をラック軸の軸方向直動力に変換するために、ボールねじを用いる場合がある。
電動モータをラック軸に対してオフセットさせる方式のラックアシスト式電動パワーステアリング装置には、電動モータの回転をボールねじに伝達するベルト減速機等の伝達機構が設けられている。
例えばベルト減速機は、電動モータの回転軸に取り付けられた入力プーリと、ボールねじのナットに取り付けられた出力プーリと、入力プーリと出力プーリとに掛け渡されて入力プーリの回転を出力プーリに伝達する無端ベルトと、を備えている。そして、電動モータの回転がベルト減速機によって減速されつつボールねじのナットに伝達され、ボールねじによって軸方向直線運動に変換されてラック軸に伝達されるようになっている。
出力プーリはナットの外周部に取り付けられるが、出力プーリとナットの結合方法として以下のようなものが提案されている。例えば特許文献1には、出力プーリの内周面とナットの外周面とにそれぞれ複数の溝を形成して両溝を対向させることにより複数の空隙部を設け、それら空隙部にそれぞれピン状部材を挿入することにより出力プーリとナットとを結合する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示の方法は、溝の高い加工精度が必要であり、組み立てに複数のピンを挿入しなければならない等の問題があった。
また、特許文献2には、出力プーリの内周面とナットの外周面とを結合させる方法が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示の方法は、円柱面での結合となるため、出力プーリに伝達される回転力が大きい場合には出力プーリとナットが相対回転し、結合面が滑って出力プーリとナットの位相(周方向位置)がずれるおそれがあった。なお、これ以降においては、出力プーリとナットが相対回転し出力プーリとナットの位相(周方向位置)がずれることを、「位相ズレ」と記すこともある。
独国特許第102014201600号明細書 米国特許第8789648号明細書
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、出力プーリとナットの結合に関係する部分の加工精度を緩和することができ、且つ、出力プーリとナットの位相ズレが生じにくくするとともに路面からの衝撃を緩和できる電動パワーステアリング装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、第一の発明に係る電動パワーステアリング装置は、運転者の操舵に応じて回転するピニオン軸に噛み合い前記ピニオン軸の回転に応じて直動するラック軸と、前記運転者の操舵トルクに応じて回転駆動される電動モータと、前記電動モータの回転力を前記ラック軸の軸方向に沿う方向の直動力に変換して前記ラック軸に伝達するボールねじと、前記電動モータの回転を前記ボールねじに伝達する伝達機構と、を備え、前記ボールねじは、螺旋状のねじ溝を外周面に有し且つ前記ラック軸と同軸に連結されたねじ軸と、前記ねじ軸のねじ溝に対向するねじ溝を内周面に有し且つ前記電動モータの回転が前記伝達機構を介して入力されて回転するナットと、前記両ねじ溝により形成される螺旋状のボール転動路に転動自在に装填される複数のボールと、前記ボールを前記ボール転動路の終点から始点へ戻し循環させるボール循環路と、を備え、前記電動モータによって前記ナットを回転させることにより、前記ボール転動路内での前記ボールの転動を介して、前記ねじ軸が前記ラック軸の軸方向に直動可能とされており、前記伝達機構は、前記電動モータの回転が伝達される入力プーリと、前記ナットに連結され前記ナットに回転を伝達する出力プーリと、前記入力プーリ及び前記出力プーリに掛け渡されて前記入力プーリの回転を前記出力プーリに伝達する無端ベルトと、を備え、前記出力プーリは前記ナットの外周面を覆うように配置され、前記ナットと前記出力プーリとが弾性部材を介して嵌め合わされ前記ナットと前記出力プーリとが結合されていることを特徴とする。
第二の発明は、第一の発明において、前記ナットの外周面には、第1接触面が設けられ、前記出力プーリの内周面には、前記第1接触面に対向する第2接触面が設けられ、前記弾性部材は、前記第1接触面と前記第2接触面との間に介在し、前記第1接触面と前記第2接触面とのそれぞれに当接し、前記ナットと前記出力プーリとの相対移動の際、前記弾性部材は、前記第1接触面との当接位置が変化することを特徴とする。
第三の発明は、前記第1接触面は、第1平面を有し、前記第2接触面は、第2平面を有していることを特徴とする。
第四の発明は、前記第2平面は、前記第2平面の径方向内端と、前記ねじ軸の中心と、を通る仮想経線に対して傾いており、前記第2平面に対して直交する直交方向に前記ねじ軸の中心が配置されていないことを特徴とする。
本発明の電動パワーステアリング装置は、出力プーリとナットの結合に関係する部分の加工精度を緩和することができ、且つ、出力プーリとナットの位相ズレが生じにくくするとともに路面からの衝撃を緩和できる。
本発明の第一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を示す平面図である。 図1の電動パワーステアリング装置の要部断面図である。 ナットに出力プーリが結合されたボールねじの正面図である。 図3の一部を拡大した拡大図である。 ナットの斜視図である。 (a)は、出力プーリの斜視図で、(b)は弾性部材の斜視図である。 ナットに出力プーリが結合されたボールねじの分解斜視図である。 (a)は、ナットに出力プーリが結合されたボールねじの斜視図で、(b)は、図1の電動パワーステアリング装置におけるボールねじ及び出力プーリの断面図である。 第二実施形態の電動パワーステアリング装置におけるボールねじの正面図である。 第三実施形態の電動パワーステアリング装置におけるボールねじの正面図である。
[第一実施形態]
本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態の電動パワーステアリング装置は、後述するラック軸7と電動モータ12の回転軸12aとを平行に配置してオフセットさせる方式のラックアシスト式電動パワーステアリング装置であり、ピニオン機構2とラック機構3を備える例えば車両用の操舵ギヤ機構1に対して好適に適用されるものである。
操舵ギヤ機構1のピニオン機構2は、ピニオンハウジング4内に回転自在に支持されたピニオン軸5を備えている。このピニオン軸5は、ステアリング軸(図示せず)等を介してステアリングホイール(図示せず)に結合されており、運転者の操舵に応じて回転する。
操舵ギヤ機構1のラック機構3は、ラックハウジング6内に摺動可能に支持されたラック軸7を備えている。ラック軸7はピニオン軸5と噛み合っており、ピニオン軸5の回転に応じてラック軸7の軸方向(長手方向)に直動するようになっている。すなわち、ピニオン軸5に伝達された回転が、ラックアンドピニオンギヤによってラック軸7の直線運動に変換される。
本実施形態の電動パワーステアリング装置は、上記のラック軸7と、運転者の操舵トルクに応じて回転駆動される操舵補助用の電動モータ12と、電動モータ12の回転力をラック軸7の軸方向に沿う方向の直動力に変換してラック軸7に伝達するボールねじ11と、電動モータ12の回転をボールねじ11に伝達する伝達機構13と、を備えている。
電動モータ12は、ラックハウジング6の軸受収容部16の径方向外方に一体に形成されたモータ支持部18のピニオン機構2側に固定され、その回転軸12aが、モータ支持部18に形成された貫通孔18aを通じてピニオン機構2とは軸方向反対側に突出している。
この電動モータ12は、モータ制御装置30によって回転駆動される。このモータ制御装置30は、運転者の操舵によりステアリングホイールに入力される操舵トルクを検出するトルクセンサ30aを有する。そして、モータ制御装置30は、トルクセンサ30aで検出した操舵トルクと車両に搭載された車速センサ30bで検出した車速とに基づいて操舵補助トルク指令値を算出し、電動モータ12で必要な操舵補助トルクを発生させるモータ駆動電流を操舵補助トルク指令値に基づいて求め、このモータ駆動電流を電動モータ12に出力する。
ボールねじ11は、螺旋状のねじ溝9aを外周面に有するねじ軸9と、ねじ軸9のねじ溝9aに対向するねじ溝15aを内周面に有するナット15と、両ねじ溝9a、15aにより形成される螺旋状のボール転動路に転動自在に装填される複数のボール14と、ボール14をボール転動路の終点から始点へ戻し循環させるボール循環路22(図3を参照)と、を備えている。ボール14の循環方式は特に限定されるものではないが、例えば、エンドデフレクタを用いてナット15の内部においてボール14を循環させる内部循環方式を用いることができる。
そして、ねじ軸9はラック軸7と同軸(すなわち一直線状をなすように)に結合されており、ナット15は電動モータ12の回転が伝達機構13を介して入力されて回転するようになっている。よって、電動モータ12によってナット15を回転させることにより、ボール転動路内でのボール14の転動を介して、ねじ軸9がラック軸7の軸方向に直動可能とされている。
なお、ナット15は、ラックハウジング6の軸受収容部16に収容された転がり軸受17によって、ラックハウジング6に回転自在に支持されている。この転がり軸受17は、ナット15と一体に形成された内輪17aと、軸受収容部16に支持された外輪17cと、内輪17aと外輪17cとの間に転動自在に配された複数のボール17bと、で構成されている。ナット15と内輪17aは、図2に示すように、一体に形成されていてもよいが、別体のものを止め輪等で結合してもよい。
伝達機構13としては、例えば、図2に示すようなベルト減速機等の減速機構を用いることができる。図2に示すベルト減速機は、電動モータ12の回転軸12aの先端に取付けられ電動モータ12の回転が伝達される入力プーリ19と、ナット15に結合されナット15に回転を伝達する出力プーリ20と、入力プーリ19及び出力プーリ20に掛け渡されて入力プーリ19の回転を出力プーリ20に伝達する無端ベルト21と、を備えている。ナット15に出力プーリ20が結合されたボールねじ11を図8に示し、出力プーリ20を図6(a)に示す。
運転者が操舵を行うと、運転者の操舵トルクに応じて電動モータ12が回転駆動され、電動モータ12の回転が伝達機構13を介してボールねじ11のナット15に伝達される。ナット15の回転はボールねじ11によってねじ軸9の直線運動に変換されるので、ねじ軸9及びラック軸7が軸方向に直動する。そして、ねじ軸9及びラック軸7の直動によって、ラック軸7の端部(図1の例においては左端部)とねじ軸9の端部(図1の例においては右端部)とにタイロッド23、23を介してそれぞれ結合されている転舵輪(図示せず)が転舵される。
ここで、ナット15と出力プーリ20の結合構造について詳細に説明する。ナット15は、環状の出力プーリ20の内側に弾性部材25を介して嵌め込まれることにより結合されている。すなわち、出力プーリ20はナット15の外周面を覆うように配置されている。
ナット15の外周面には、ナット15の軸方向に延びる複数の凸部41がナット15の径方向外方に突出するように形成されている。本実施形態においては、図3に示すように、ナット15の外周面に2つの凸部41、41が形成され、2つの凸部41、41をボールねじ11の正面側から見た形状は略台形である。よって、図5に示すように、凸部41Aの左右には、1対の第1接触面41A(a)、41A(b)が設けられている。また、凸部41Bの左右には、1対の第1接触面41B(a)、41B(b)が設けられている(第1接触面41B(b)については図3参照)。2つの凸部41、41は周方向に等配に配置されている。
また、2つの凸部41、41のうち一方の凸部41Aの内部には、ナット15の軸方向に延びる貫通孔が形成されていて、この貫通孔によりボール循環路22が構成されるエンドデフレクタタイプを用いている。
この貫通孔は、図3に示すように、凸部41Aの周方向中央に形成されていてもよいし、凸部41Aの周方向端部近傍に形成されていてもよい。2つの凸部41、41のうち他方の凸部41Bには貫通孔(ボール循環路22)は形成されていない。
図5に示すように、第1接触面41A(a)、41A(b)、41B(a)、及び41B(b)のそれぞれは、第1平面44aと、隅R部44bと、角R部44cと、を有している。第1平面44aは、平面状に形成されている。隅R部44bは、ナット15の外周面(嵌合面15a)と、第1平面44aと、の間に配置され、断面形状が円弧状となっている。角R部44cは、凸部41の外向面46と、第1平面44aと、の間に配置され、断面形状が円弧状となっている。
そして、ナット15の重心をナット15の回転軸上に位置させるために、ボール循環路22が形成されていない凸部41Bよりもボール循環路22が形成されている凸部41Aの方を大きく形成している。すなわち、ボール循環路22が形成されていると凸部41の質量が小さくなるので、その分を補ってバランスを取りナット15の重心がナット15の回転軸上に位置するように、凸部41Bよりも凸部41Aの方を大きく形成する。
一方、図6(a)に示すように、出力プーリ20の内周面には、ナット15の芯出し用の嵌合面20aと、ナット15の凸部41に対応する形状の凹部43が形成されている。本実施形態においては、ナット15の凸部41と出力プーリ20の凹部43とが弾性部材25を介して嵌め合わされている。
この構成は、弾性部材25を介在した結合となるため、ナット15と出力プーリ20とが直接接触する結合で無くなり、接触に関係する部分の加工精度を緩和することができる。また、出力プーリ20とナット15の結合に関係する部分の加工精度を緩和することができ、且つ、出力プーリ20とナット15の位相ズレが生じにくい。
また、出力プーリ20の内周面の2つの凹部43A、43Bに弾性部材25を保持させている。凹部43A、43Bには、図3及び図6(a)に示すように、弾性部材25の全体を収容する収容領域43dを相対向して備えている。図4に示すように、収容領域43dは、第1接触面41A(a)、41A(b)、41B(a)、及び41B(b)と対向する第2接触面43eと、第2接触面43eの両端に設けられ、弾性部材25の端部25bを保持するための保持部43Cと、を備える。具体的には、保持部43Cは、凹部43A、43Bの外径方向の両端左右で、出力プーリ20の軸方向幅と略同等の長さで切り欠かれて形成されている。そして、その窪んだ切り欠き形状には、弾性部材25の端部25bが接触する。第2接触面43eは、平面状に形成されている。以下、第2接触面43eを第2平面43fという。
第2平面43fは、断面視で径方向に延在している。第2平面43fは、第2平面43fの径方向内端43gと、ねじ軸の中心O1と、を通過する仮想径線L1に対して傾斜している。言い換えると、第2平面43fと仮想径線L1とのが成す角度はθ°となっている。そして、第2平面43fに対して直交する直交方向(図4の矢印L2で指す範囲)には、ねじ軸9の中心O1が配置されていない。
なお、出力プーリ20の材質は特に限定されるものではないが、樹脂製とすれば、出力プーリ20が結合されたナット15の回転における慣性モーメントを低減することができ、アシスト機構の摩擦力低減、制御性の向上に繋がる。
また、樹脂の種類は特に限定されるものではなく、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。
弾性部材25は、図6(b)に示すように、所定の厚みを持った帯板で中央部25aが凸な曲線にアーチ形状させた略長方形の弓形板バネである。弾性部材25は、凸部41A、41Bの第1接触面41A(a)、41A(b)、41B(a)、及び41B(b)と、収容領域43dの第2接触面43e(第2平面43f)と、の間に介在している。この弓形板バネの中央部25aが対向するナット15の2つの凸部41A、41Bの第1接触面41A(a)、41A(b)、41B(a)、41B(b)の第1平面44aに接触させ、湾曲させることで板バネの弾性体として機能する。その略長方形の長手方向の長さは、保持部43Cの中に収まるように、略同等の長さとしている。長手方向の端部25bは内側に丸められ棒状になっている。これは、出力プーリ20が樹脂製の場合、端部を丸めることで、端部25bと保持部43Cにおける応力が低くなることから樹脂のクリープ変形が抑えられ、弾性部材25の保持力を維持することができる。
また、弾性部材25の素材は、例えば、ばね鋼、ステンレス鋼、黄銅、りん青銅、ベリリウム銅等の一般的な材料が用いられる。
以上のとおり、帯板の端部25bは凹部43に形成された保持部43Cに保持され、帯板の中央部25aは凸部41に形成された第1接触面41A(a)、41A(b)、41B(a)、41B(b)に接触している。
さらに、詳細に説明すると、弾性部材25は、端部25bがナット15の2つの凸部41A、41Bとの圧縮によりズレずに端部25bが凹部43に形成された保持部43cに保持されるとともに、弾性部材の中央部25aが凸部41A、41Bの接触面に接触している。その接触面は、図5に示すように、出力プーリ20の芯出し用に設けている嵌合面15aから凸部41A、41Bの先端に向けて形成された凸部41、41Bの両側面(図では正面からみて左右の両側面)である。すなわち、凸部41Aの左右に1対の第1接触面41A(a)、41A(b)と、凸部41Bの左右に1対の第1接触面41B(a)、41B(b)である。なお、弾性部材25の端部25bは、収容領域43dの第2接触面43e(第2平面43f)に当接している。よって、凸部41A、41Bとの圧縮により第1接触面41A(a)、41A(b)、41B(a)、41B(b)から離隔しないようになっている。言い換えると、弾性部材25は、第1接触面41A(a)、41A(b)、41B(a)、41B(b)と、第2接触面43e(第2平面43f)とのそれぞれに当接している。
これら接触面の対を持った凸部41A、41Bは、それぞれ2対以上で構成され、ナット15の回転バランスが良好に保たれるべく、ナット15の重心がナット15の回転軸上に位置するように等配置される。
この1対の内の凸部41Aの第1接触面41A(a)、41A(b)は循環路22を挟み込む構成となっている。
また、ナット15の外周形状は、ナット15の軽量化と低イナーシャ化を図るため、接触面以外の駄肉(不要部分)を取り除いた形状とされるが、ここでは、その外周面の駄肉(不要部分)を低減したナット15の外側形状を利用する実施形態としている。
このように、出力プーリ20に弾性部材25を組み込んでいるため、ナット15に出力プーリ20を組んだ後に弾性部材25を組み込む場合に比べ、ナット15との結合工程における時間が短縮できる。
また、オフセットさせる方式のラックアシスト式電動パワーステアリング装置ではナット15と出力プーリ20から構成される減速機構における慣性が大きいため、路面からタイヤへの逆入力(衝撃荷重)があった場合にボールねじに荷重が集中してしまうが、弾性部材25を介することで衝撃荷重を緩和する効果がある。
また、それぞれ嵌め合わせつつナット15を出力プーリ20の内側に嵌め込むことで、ナット15と出力プーリ20とを弾性部材を介して、結合し一体的に回転可能とすることができる。ナット15に設けられた止め輪溝40に止め輪45(図7を参照。)を嵌め込めば、この止め輪45とナット15の軸方向端面とによって出力プーリ20の軸方向位置を規制することができる。
上記のように、本実施形態の電動パワーステアリング装置においては、弾性部材25を介して、ナット15の2つの凸部41、41を出力プーリ20の2つの凹部43、43との位置決めを行うことで、凸部41Aの左右に1対の第1接触面41A(a)、41A(b)、凸部41Bの左右に1対の第1接触面41B(a)、41B(b)及び出力プーリ20の保持部43Cに過度な加工精度を要求される必要がない。
また、ナット15の凸部41を出力プーリ20の凹部43に嵌め合わせ、ナット15と出力プーリ20を(弾性部材25を介して)結合しているので、出力プーリ20に大きな回転力が伝達されたとしても、ナット15と出力プーリ20の位相ズレが生じにくい。なお、ナット15と出力プーリ20との位相ズレ、言い換えると、ナット15と出力プーリ20との相対移動(相対回転)の際、第1接触面41A(a)、41A(b)、41B(a)、41B(b)の第1平面と、第2平面43fと、の間で弾性部材25が圧縮される。このため、弾性部材25の中央部25aと、第1接触面41A(a)、41A(b)、41B(a)、41B(b)における第1平面44aとの、当接位置が変化する。
また、位相ズレを防ぐための部材(例えばねじ)が不要であるため、本実施形態の電動パワーステアリング装置は部品点数を少なくすることができる。さらに、このような結合方法であれば、出力プーリ20のナット15に対する結合(組み立て)に時間や手間を要することがなく、結合(組み立て)が容易である。さらに、ナット15と出力プーリ20を結合するための部材が不要であるため、本実施形態の電動パワーステアリング装置は部品点数が少ない。
さらに、複数の凸部の形状が、全て同一で且つナットの外周面上に周方向に等配に配置されている場合は、各凸部はいずれの凹部にも嵌め合わせることが可能であるため、間違った位相で出力プーリをナットに結合してしまう組み付けミスが生じやすい。
これに対して、本実施形態のように、凸部41はそれぞれ特定の凹部43にしか嵌め合わせることができないため、間違った位相で出力プーリ20をナット15に結合してしまう組み付けミスが生じることがない。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。例えば、本実施形態の電動パワーステアリング装置においては、凸部41の個数は2つであったが、凸部41の個数は複数であれば特に限定されるものではない。
また、本実施形態の電動パワーステアリング装置においては、凸部の大きさ(形状)は同じで、凸部41Aと同様に凸部41Bにもボール循環路のような穴を開けて(肉抜きをして)バランスを取ってもよく、この場合、各凸部をいずれの凹にも嵌め合わせることが可能となり、組み付け時に間違った位相で出力プーリをナットに結合してしまうことがない。
さらに、凸部41をボールねじ11の正面側から見た形状は略台形であったが、凸部41をボールねじ11の正面側から見た形状は略台形に限定されるものではなく、接触面が形成できれば他の形状でもよい。例えば、半円形、半楕円形、三角形、矩形等があげられる。
[第二実施形態]
本実施形態は、図9に示すように、弾性部材25の内側と出力プーリ20の凹部43の収容領域43dとの空間に減衰部材26を設けている。また、弾性部材25は、所定の厚みを持った帯板を中央部25aで内向きに湾曲(アーチ形状)させた略長方形の弓形板バネであることは第一実施形態と同じであるが、端部25bについては内側に丸められておらず第一実施形態と異なる。
このような減衰部材26を設けることで、樹脂のクリープ変形が抑えられ、弾性部材25の保持力を維持することができ、かつ、衝撃力の緩和の効果がある。
また、減衰部材26は、ゴムや樹脂等として、弾性部材25と一体成形してもよい。これにより、さらに、衝撃力の緩和の効果が奏される。
なお、第一実施形態の図3の構成と同じ構成の説明にあっては、説明内容が重複するため省略する。
[第三実施形態]
本実施形態は、図10に示すように、第一実施形態及び第二実施形態において、弾性部材25を出力プーリ20とは別部材として構成していたが、出力プーリ20の凹部43に一体成形した弾性形状27を設けている。第一実施形態及び第二実施形態における弾性部材25に相当する弾性形状27は、出力プーリ20の内周面の凹部43A、43Bのそれぞれに弓形(アーチ)の半円弧形状に成形されている。
このように、出力プーリ20に弾性形状27を成形し、弾性部材25を保持する保持部が無い構成としているため、ナット15に出力プーリ20を組んだ後に弾性部材25を組み込む場合に比べ、さらに、ナット15との結合工程における時間が短縮できる。また、出力プーリ20を軽量化することができる。
なお、第一実施形態及び第二実施形態の構成と同じ構成の図の説明にあっては、説明内容が重複するため省略する。
これにより、弾性部材25の製作コスト削減及び弾性部材25の組み付け工数の削減ができる。
1 操舵ギヤ機構
2 ピニオン機構
3 ラック機構
4 ピニオンハウジング
5 ピニオン軸
6 ラックハウジング
7 ラック軸
9 ねじ軸
11 ボールねじ
12 電動モータ
13 伝達機構
14 ボール
15 ナット
19 入力プーリ
20 出力プーリ
21 無端ベルト
22 ボール循環路
25 弾性部材
26 減衰部材
41 凸部
43 凹部
41A(a)、41A(b)、41B(a)、41B(b) 第1接触面
44a 第1平面
43e 第2接触面
43f 第2平面

Claims (3)

  1. 運転者の操舵に応じて回転するピニオン軸に噛み合い前記ピニオン軸の回転に応じて直動するラック軸と、前記運転者の操舵トルクに応じて回転駆動される電動モータと、前記電動モータの回転力を前記ラック軸の軸方向に沿う方向の直動力に変換して前記ラック軸に伝達するボールねじと、前記電動モータの回転を前記ボールねじに伝達する伝達機構と、を備え、
    前記ボールねじは、螺旋状のねじ溝を外周面に有し且つ前記ラック軸と同軸に連結されたねじ軸と、前記ねじ軸のねじ溝に対向するねじ溝を内周面に有し且つ前記電動モータの回転が前記伝達機構を介して入力されて回転するナットと、前記両ねじ溝により形成される螺旋状のボール転動路に転動自在に装填される複数のボールと、前記ボールを前記ボール転動路の終点から始点へ戻し循環させるボール循環路と、を備え、前記電動モータによって前記ナットを回転させることにより、前記ボール転動路内での前記ボールの転動を介して、前記ねじ軸が前記ラック軸の軸方向に直動可能とされており、
    前記伝達機構は、前記電動モータの回転が伝達される入力プーリと、前記ナットに連結され前記ナットに回転を伝達する出力プーリと、前記入力プーリ及び前記出力プーリに掛け渡されて前記入力プーリの回転を前記出力プーリに伝達する無端ベルトと、を備え、
    前記出力プーリは前記ナットの外周面を覆うように配置され、
    前記ナットと前記出力プーリとが弾性部材を介して嵌め合わされ前記ナットと前記出力プーリとが結合され
    前記ナットの外周面には、第1接触面が設けられ、
    前記出力プーリの内周面には、前記第1接触面に対向する第2接触面が設けられ、
    前記弾性部材は、前記第1接触面と前記第2接触面との間に介在し、前記第1接触面と前記第2接触面とのそれぞれに当接し、
    前記ナットと前記出力プーリとの相対移動の際、前記弾性部材は、前記第1接触面との当接位置が変化することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記第1接触面は、第1平面を有し、
    前記第2接触面は、第2平面を有している
    請求項に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記第2平面は、前記第2平面の径方向内端と、前記ねじ軸の中心と、を通る仮想経線に対して傾いており、前記第2平面に対して直交する直交方向に前記ねじ軸の中心が配置されていない
    請求項に記載の電動パワーステアリング装置。
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