JP6164477B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
ウォームとウォームホイールとの噛み合いには、バックラッシが必要であるが、走行時に、バックラッシに起因した歯打ち音(ラトル音)が発生するおそれがある。
逆に、付勢部材の付勢荷重を小さくすると、微小操舵時にウォームが軸方向に移動を開始するときの摩擦抵抗を低減して微小操舵時の操舵フィーリングが向上するものの、歯打ち音を抑制できなくなる。
また、請求項2のように、前記付勢部材の付勢荷重をFとし、前記付勢部材と前記第2軸受の外輪との軸方向に関する摩擦係数をμeとし、前記第1軸受の内輪と前記ウォームとの軸方向に関する摩擦係数をμtとし、前記ウォームの軸方向に関して前記第1軸受の軸受中心と前記噛み合い領域との距離をL1とし、前記ウォームの軸方向に関して前記第2軸受の軸受中心と前記噛み合い領域との距離をL2とし、前記ウォームホイールのピッチ円半径をRとし、前記第1軸受の内輪と前記ウォームとの軸方向の摩擦抵抗により生ずる第1摩擦トルクをT1とし、前記付勢部材と前記第2軸受の外輪の外周との軸方向の摩擦抵抗により生ずる第2摩擦トルクをT2とし、前記噛み合い領域での噛み合い摩擦抵抗により生ずる噛み合い摩擦トルクTmとして、下記式(1)、(2)、(3)を満足していてもよい。
T2=F・μe・R …(2)
(T1+T2)<Tm …(3)
また、請求項3のように、前記第2軸受の内輪(50K)の軌道面(91)および外輪(54K)の軌道面(92)の曲率半径(K1,K2)が、転動体(93)の直径(S)の60%以上とされていてもよい。
また、請求項6のように、前記第1弾性部材は、当該第1弾性部材の内周の周方向に等間隔で配置されて前記ウォームの外周に嵌合する複数の弾性突起(76)、または当該第1弾性部材の内周の全周に連続して配置されて前記ウォームの外周に嵌合する環状の弾性突起(76A)を含み、前記第2弾性部材は、当該第2弾性部材の内周の周方向に等間隔で配置されて前記ボスの外周に嵌合する複数の弾性突起(86)、または当該第2弾性部材の内周の全周に連続して配置されて前記ボスの外周に嵌合する環状の弾性突起(86A)を含んでいてもよい。
また、請求項8のように、前記第1弾性部材の弾性突起は、当該第1弾性部材の第2端面に近接して配置され、前記第2弾性部材の弾性突起は、当該第2弾性部材の第2端面に近接して配置されていてもよい。
また、請求項4の発明によれば、第1弾性部材および第2弾性部材の第1端面側のみに、受け板を配置するので、構造を簡素化することができる。
また、請求項7の発明によれば、各弾性部材を、対応するウォームおよび第1回転要素に対して確実に芯合わせすることができる。これにより、各弾性部材の偏摩耗の発生を抑制することができる。
図1は、本発明の一実施形態の電動パワーステアリング装置の概略構成図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、一端にステアリングホイール等の操舵部材2が連結されたステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ピニオン軸7の端部近傍に設けられたピニオン7aに噛み合うラック8aを有して自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラックバー8とを有している。ピニオン軸7およびラックバー8により、ラックアンドピニオン機構からなる転舵機構Aが構成されている。
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン7aおよびラック8aによって、自動車の左右方向に沿ってのラックバー8の直線運動に変換される。これにより、転舵輪11の転舵が達成される。
トーションバー12を介する第1操舵軸3aと第2操舵軸3bとの間の相対回転変位量に基づいて操舵トルクを検出するトルクセンサ13が設けられている。トルクセンサ13のトルク検出結果は、ECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)14に与えられる。ECU14では、トルク検出結果や図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、駆動回路15を介して操舵補助用の電動モータ16を駆動制御する。
ウォームホイール19は、ステアリングシャフト3の第2操舵軸3bの軸方向中間部に一体回転可能に且つ軸方向移動不能に連結されている。ウォームホイール19は、第2操舵軸3bに一体回転可能に結合された環状の芯金19aと、芯金19aの周囲を取り囲み外周に歯部19cを形成した合成樹脂部材19bとを備える。芯金19aは、例えば合成樹脂部材19bの樹脂成形時に金型内にインサートされる。
第2回転要素23は、電動モータ16の回転軸20(図2参照)が圧入される嵌合孔27aが形成されて第1回転要素23のフランジ26に軸方向Xに対向する本体27を備えている。
図2を参照して、ウォーム18の第1端部18aは、第1軸受30を介して減速機17のハウジング17aに回転可能に支持されている。ウォーム18の第2端部18bは、第2軸受31を介して減速機17のハウジング17aに回転可能に支持されている。継手21の弾性部材24が弾性変形することで、第1軸受30の軸受中心を中心として回転軸20に対するウォーム18の揺動が許容されている。
第1軸受30は、ウォーム18の第1端部18aに、一体回転可能に嵌合された内輪34と、減速機17のハウジング17aに設けられた軸受孔35にブッシュ36を介して保持された外輪37とを備えている。
第1軸受30の内輪34は、ウォーム18の第1端部18aの外周に一体回転可能に嵌合されている。第1弾性部材32および第2弾性部材33は、内輪34を軸方向Xに挟んだ両側に配置されており、ウォーム18を軸方向Xの中立位置に弾性的に付勢している。各弾性部材32,33は、例えばゴム、熱可塑性エラストマーなどの弾性材料で形成されたブッシュである。
ボス25の外周25bには、第2弾性部材33が嵌合され保持されている。第1部分45と第2部分46(内輪嵌合部)との間には、位置決め段部48が形成されている。位置決め段部48は、内輪34の第2端面34bに当接した第1受け板41に対して、所定の間隙を設けて対向している。
また、第1弾性部材32は、外周73と第2端面72との間に、例えばR面取り部(C面取り部でもよい)からなる面取り部75を有している。これにより、第1弾性部材32の第1端面71の外径E1よりも、第2端面72の外径E2が小さくされている(E2<E1)。
また、第2弾性部材33は、外周83と第2端面82との間に、例えばR面取り部(C面取り部でもよい)からなる面取り部85を有している。これにより、第2弾性部材33の第1端面81の外径H1よりも、第2端面82の外径H2が小さくされている(H2<H1)。
再び、図2および図4を参照して、第2軸受31の内輪50は、ウォーム18の第2端部18bの外周に設けられた嵌合凹部51に一体回転可能に嵌合されている。内輪50の一方の端面が、第2端部18bの外周に設けられた位置決め段部52に当接しており、これにより、ウォーム18に対する内輪50の軸方向移動が規制されている。
付勢部材60は、例えば板金により形成される薄板状の部材である。図2のV−V線に沿う断面図である図10および斜視図である図11を参照して、付勢部材60は、第2軸受31の外輪54の外周54aを包囲する有端環状をなす主体部61と、主体部61の周方向の端部である第1端部61aおよび第2端部61bからそれぞれ折り曲げ状に延設された一対の回転規制部62と、各回転規制部62からそれぞれ折り曲げ状に延びる一対の片持ち状の弾性舌片63とを含む。
再び図10を参照して、ハウジング17aの軸受孔53は、その内周の一部に、第2軸受31に対してウォームホイール19側(中心間距離が減少する方向Y2)とは反対の方向(中心間距離が増加する方向Y1)に窪む受け凹部64を形成している。付勢部材60の各弾性舌片63の先端は、軸受孔53の受け凹部64の底64cによって受けられ、各弾性舌片63の付勢力が、第2軸受31を介してウォーム18の第2端部18bを、上記中心間距離D1が減少する方向Y2に付勢している。
次いで、図12は、ウォーム支持構造の模式図である。付勢部材60の付勢荷重をFとし、付勢部材60と第2軸受31の外輪54の外周54aとの軸方向Xに関する摩擦係数をμeとする。ウォーム18と共に軸方向Xに移動する第2軸受31の外輪54の外周54aと付勢部材60との間の摩擦抵抗G2は、付勢荷重Fと摩擦係数μeとの積となり、下記の式(4)で表される。
第2軸受31を介してウォーム18の第2端部18bに負荷される付勢荷重Fは、噛み合い領域Bを支点として図12において、反時計回りのモーメントを生ずる。したがって、ウォーム18の第1端部18aには、前記反時計回りのモーメントに釣り合う時計回りのモーメントが生じさせる反力Jが、付勢荷重Fと平行な方向に負荷される。
F・L2=J・L1 …(5)
J=F・(L2/L1) …(6)
第1軸受30の内輪34とウォーム18との軸方向Xに関する摩擦係数をμtとして、第1軸受30の内輪34とウォーム18との軸方向Xに関する摩擦抵抗G1は、下記の式(7)で表される。すなわち、式(8)が成立する。
G1=F・(L2/L1)・μt …(8)
一方、噛み合い領域Bにおける噛み合い摩擦トルクをTmとすると、ウォーム18の軸方向Xに関しての噛み合い摩擦抵抗Gmは、ウォームホイール19のピッチ円半径をRとして、下記の式(9)で表される。
本実施形態では、第1軸受30の内輪34とウォーム18との軸方向Xに関する摩擦抵抗G1と、付勢部材60と第2軸受31の外輪54の外周54aとの軸方向Xに関する摩擦抵抗G2との和(G1+G2)が、ウォーム18の軸方向Xに関する噛み合い摩擦抵抗Gmよりも小さくされている。すなわち、下記の式(10)が成立する。
一方、ウォーム18の軸方向Xに関する第1摩擦抵抗G1により生ずる第1摩擦抵抗トルクT1は、下記の式(1)で表される。
T1=F・(L1/L2)・μt・R …(1)
また、ウォーム18の軸方向に関する第2摩擦抵抗G2により生ずる第2摩擦抵抗トルクT2は、下記の式(2)で表される。
本実施形態では、第1摩擦トルクT1と第2摩擦トルクT2との和(T1+T2)が、噛み合いBでの噛み合い摩擦抵抗Gmにより生ずる噛み合い摩擦トルクTmよりも小さくされている。すなわち、下記の式(3)が成立する。
(T1+T2)<Tm …(3)
本実施形態によれば、付勢部材60が第2軸受31の外輪54を付勢する付勢荷重Fに起因して、付勢部材60と第2軸受31の外輪54の外周54aとの間に軸方向Xに関する第2摩擦抵抗G2が生じ、また、第1軸受30の内輪34とウォーム18との間に軸方向Xに関する第1摩擦抵抗G1が生ずる。これらの摩擦抵抗の和(G1+G2)がウォーム18の軸方向Xに関する噛み合い摩擦抵抗Gmより小さいので[(G1+G2)<Gm]、微小操舵時に、ウォームホイール19を回転させることなく、ウォーム18を軸方向Xに微小変位させることができる。したがって、付勢部材60によって歯打ち音を防止しつつ、微小操舵時の操舵フィーリングを向上することができる。
また、第1弾性部材32および第2弾性部材33のそれぞれが、外周73,83と第2端面72,82との間に、面取り部75,85を形成することにより、第2端面72,82の外径E2,H2を第1端面71,81の外径E1,H1よりも小さくしているので(E2<E1,H2<H1)、下記の利点がある。
第1弾性部材32の弾性突起76が、第1弾性部材32においてウォーム18(の第1部分45)への組み込み側となる第2端面72に近接して配置されているので、ウォーム18への第1弾性部材32の組み込みが一層容易になる。同じく、第2弾性部材33の弾性突起86が、第2弾性部材33において第1回転要素22のボス25への組み込み側となる第2端面82に近接して配置されているので、第1回転要素22のボス25への第2弾性部材33の組み込みが一層容易になる。
Claims (8)
- 第1端部および第2端部を有するウォームと当該ウォームと噛み合い領域で噛み合うウォームホイールとを含み、電動モータの回転を減速する減速機と、
前記減速機を収容するハウジングと、
前記ハウジングにより固定された外輪と、前記ウォームの第1端部にルーズフィットされた内輪とを含み、前記ウォームの第1端部を回転可能に且つ軸方向移動可能に支持する第1軸受と、
外輪と、前記ウォームの第2端部にプレスフィットされた内輪と、を含み、前記ハウジングにより前記ウォームと前記ウォームホイールとの中心間距離が増減する方向に変位可能に支持されて、前記ウォームの第2端部を回転可能に支持する第2軸受と、
前記第1軸受の内輪の軸方向の両側に配置され前記第1軸受の内輪に対して前記ウォームを軸方向に弾性支持する第1弾性部材および第2弾性部材と、
前記第2軸受の外輪の外周を前記中心間距離が減少する方向に付勢する付勢部材と、を備え、
前記第1軸受の内輪と前記ウォームとの軸方向に関する第1摩擦抵抗と、前記付勢部材と前記第2軸受の外輪の外周との軸方向に関する第2摩擦抵抗との和が、前記ウォームの軸方向に関する噛み合い摩擦抵抗よりも小さくされている電動パワーステアリング装置。 - 請求項1において、前記付勢部材の付勢荷重をFとし、前記付勢部材と前記第2軸受の外輪との軸方向に関する摩擦係数をμeとし、前記第1軸受の内輪と前記ウォームとの軸方向に関する摩擦係数をμtとし、前記ウォームの軸方向に関して前記第1軸受の軸受中心と前記噛み合い領域との距離をL1とし、前記ウォームの軸方向に関して前記第2軸受の軸受中心と前記噛み合い領域との距離をL2とし、前記ウォームホイールのピッチ円半径をRとし、前記第1軸受の内輪と前記ウォームとの軸方向の摩擦抵抗により生ずる第1摩擦トルクをT1とし、前記付勢部材と前記第2軸受の外輪の外周との軸方向の摩擦抵抗により生ずる第2摩擦トルクをT2とし、前記噛み合い領域での噛み合い摩擦抵抗により生ずる噛み合い摩擦トルクTmとして、下記式(1)、(2)、(3)を満足する電動パワーステアリング装置。
T1=F・(L1/L2)・μt・R …(1)
T2=F・μe・R …(2)
(T1+T2)<Tm …(3) - 請求項1または2において、前記第2軸受の内輪の軌道面および外輪の軌道面の曲率半径が、転動体の直径の60%以上とされている電動パワーステアリング装置。
- 請求項1から3の何れか1項において、
前記ウォームの第1端部に固定されたボスと前記ボスから延設されたフランジとを有する第1回転要素と、前記電動モータの回転軸に固定された第2回転要素とを含み、前記ウォームと前記回転軸とをトルク伝達可能に連結する継手と、
前記第1軸受の内輪の第1端面と前記第1弾性部材との間に介在する環状の第1受け板と、
前記第1軸受の内輪の第2端面と前記第2弾性部材との間に介在する環状の第2受け板と、を備え、
前記第1弾性部材は、前記第1受け板に固着された第1端面と、前記ウォームの外周に形成された環状段部に摩擦係合する第2端面と、外周と、前記ウォームの外周を取り囲む内周と、を有して環状をなし、
前記第2弾性部材は、前記第2受け板に固着された第1端面と、前記第1回転要素のフランジに摩擦係合する第2端面と、外周と、前記第1回転要素のボスの外周を取り囲む内周と、を有して環状をなしている電動パワーステアリング装置。 - 請求項4において、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材のそれぞれは、外周と第2端面との間に面取り部を有し、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材のそれぞれにおいて、前記第2端面の外径が、前記第1端面の外径よりも小さくされている電動パワーステアリング装置。 - 請求項4または5において、前記第1弾性部材は、当該第1弾性部材の内周の周方向に等間隔で配置されて前記ウォームの外周に嵌合する複数の弾性突起、または当該第1弾性部材の内周の全周に連続して配置されて前記ウォームの外周に嵌合する環状の弾性突起を含み、
前記第2弾性部材は、当該第2弾性部材の内周の周方向に等間隔で配置されて前記ボスの外周に嵌合する複数の弾性突起、または当該第2弾性部材の内周の全周に連続して配置されて前記ボスの外周に嵌合する環状の弾性突起を含む電動パワーステアリング装置。 - 請求項6において、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材のそれぞれの内周において、前記弾性突起のみに締め代が設けられている電動パワーステアリング装置。
- 請求項6または7において、前記第1弾性部材の弾性突起は、当該第1弾性部材の第2端面に近接して配置され、前記第2弾性部材の弾性突起は、当該第2弾性部材の第2端面に近接して配置されている電動パワーステアリング装置。
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