JP2004138154A - 軽合金製ブレーキディスク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1摺動部22aの摺動面23における複合強化部11aの厚さt1より第2摺動部22bの摺動面24における複合強化部11bの厚さt2を小さく(薄く)形成した。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばアルミニウム合金製ベンチレーテッドブレーキディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車部品の1つであるブレーキディスクをアルミニウム合金で鋳造する際に、ブレーキディスクロータの摺動面にセラミック粒子などの強化粒子を複合化してロータ摺動面の耐熱性や耐摩耗性を強化したものがある(特許文献1参照)。
【0003】
また、ブレーキディスクの摺動面に耐摩耗性金属のめっき層を形成し、このめっき層全域に微細な網目状クラックを形成して熱応力の発生を防止するものがある(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−11358号公報
【特許文献2】
特開2000−170804号公報
【発明が解決しようとする課題】
ベンチレーテッドブレーキディスクは、図2(a)に示すように、一方の摺動部22aがハブ取付部21に直接接続され、他方が冷却フィン26を介して一方の摺動部22aに接続されている構成であって、両摺動部22a,22bの複合強化部11a’,11b’の厚さt1,t2を略同等(t1≒t2)としたものが一般的である。
【0005】
このようなブレーキディスクでは、摺動部22a,22b間での熱引け(逃げ)性が異なり、即ち、ハブ取付部21側へ熱が逃げるためにハブ取付部21に直接接続された摺動部22aの熱引け性が他方の摺動部22bより良くなり、他方のハブ取付部21に直接接続されていない摺動部22bの表面温度が高くなって、両摺動部間に熱膨張差が発生してディスクが変形し、ブレーキ性能の低下を引き起こす要因となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、熱膨張差の要因となる摺動部間の発熱による温度差を小さくし、ディスクの熱変形を抑える軽合金製ブレーキディスクを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明の軽合金製ブレーキディスクは、ハブ取付部から径方向外側に延び、ブレーキパッドとの一方の摺動面を有する第1摺動部と、当該第1摺動部の非摺動面側に接続され、この接続部分とは反対側にブレーキパッドとの他方の摺動面を有する第2摺動部とを備え、これらの摺動面が耐摩耗性材料により複合化されてなる軽合金製ブレーキディスクにおいて、前記第2摺動部の摺動面における複合化部の厚さを、前記第1摺動部の摺動面における複合化部の厚さより小さく形成した。
【0008】
また、好ましくは、上記構成において、前記第1摺動部と前記第2摺動部との間には、径方向に開口するベンチレーション孔が形成されている。
【0009】
また、好ましくは、上記構成において、前記ディスクはアルミニウム合金製である。
【0010】
また、好ましくは、上記構成において、前記耐摩耗性材料は、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有する。
【0011】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、ハブ取付部から径方向外側に延び、ブレーキパッドとの一方の摺動面を有する第1摺動部と、第1摺動部の非摺動面側に接続され、この接続部分とは反対側にブレーキパッドとの他方の摺動面を有する第2摺動部とを備え、これらの摺動面が耐摩耗性材料により複合化されてなる軽合金製ブレーキディスクにおいて、第2摺動部の摺動面における複合化部の厚さを、第1摺動部の摺動面における複合化部の厚さより小さく形成したことにより、複合化部の熱伝導率が母材より低く、第1摺動部側はハブ取付部への熱逃げが起こりやすいために発生する、熱膨張差の要因となる摺動部間の発熱による温度差を小さくし、ディスクの熱変形を抑えることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、第1摺動部と第2摺動部との間には、径方向に開口するベンチレーション孔が形成されていることにより、両摺動部の冷却が促進され、請求項1における温度差を小さくする効果を助長し得る。
【0013】
請求項3の発明によれば、ディスクはアルミニウム合金製であることにより、鋳鉄材などの他の母材に比べて熱伝導性が良く、温度差を小さくする効果を助長し得る。
【0014】
請求項4の発明によれば、耐摩耗性材料は、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有することにより、母材部と複合化部の熱伝導率の差が大きい場合でも、熱膨張差の要因となる摺動部間の発熱による温度差を小さくできる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0017】
[ベンチレーテッドブレーキディスクの構造]
図1は、本発明に係る実施形態のベンチレーテッドブレーキディスクの構造を示す斜視図である。図2は、従来のディスク構造(a)と本実施形態のディスク構造(b)とを比較して示す部分断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のベンチレーテッドブレーキディスクを構成するロータ20は後述する鋳造用金型を用いてアルミニウム合金などの軽合金材料から高圧鋳造され、その中央部が凸状のハブ取付部21と、不図示のブレーキパッドに対して摺動するリング状の摺動部22とを備える。
【0019】
上記摺動部22の両側(表面部と背面部)には、ハブ取付部21から径方向外側に延び、不図示のブレーキパッドに対する一方の摺動面23を有する第1摺動部22aと、第1摺動部22aの非摺動面側にフィン部26を介して接続され、この接続部分とは反対側に不図示のブレーキパッドに対する他方の摺動面24を有する第2摺動部22bとを備える。
【0020】
上記第1及び第2摺動部22a,22bの各摺動面23,24は、不図示のブレーキパッドに挟み込まれて摺動して車輪の回転力を低減し、各摺動面23,24には鋳造時において耐摩耗性材料である複合強化材が一体的に複合化されている。
【0021】
上記耐摩耗性の複合強化材は、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有する素材からなる。
【0022】
また、第1摺動部22aと第2摺動部22bの非摺動面側が対向する部位(ロータの肉圧部分)には径方向に放射状に複数の冷却通風孔(ベンチレーション孔)25を形成するフィン部26が形成されている。また、ハブ取付部21には4つのネジ取付孔27が穿設される。
【0023】
上記各摺動面23、24は、多孔質のセラミック粒子/繊維成形体から構成された複合強化材を金型内に配置してアルミニウム合金溶湯を含浸(溶浸)させて凝固させることにより形成されている。
【0024】
図2(a)に示す従来の構造では、第1摺動部22aの複合強化部11a’の厚さt1と第2摺動部22bの複合強化部11b’の厚さt2とが略同等(t1≒t2)であるのに対して、図2(b)に示す本実施形態の構造では、第1摺動部22aの摺動面23における複合強化部11aの厚さt1より第2摺動部22bの摺動面24における複合強化部11bの厚さt2を小さく(薄く)形成している(a<b)。複合強化材11aと11bは、鋳造時において複合化する前に予め所望の厚さに形成されたものを用いた方がよい。複合化後の後工程で摺動面を削ることによって所望の厚さにすると、摺動面の硬度が増しているため削る量が多いほど工具寿命が短くなるからである。
【0025】
尚、第1及び第2摺動部22a,22bの径方向から見た複合強化部11a,11bの厚さは外周側と内周側とで略同等に形成されている。
【0026】
図3は、第1及び第2摺動部の複合強化部の厚さの相違による摺動部間の温度差を示す図である。
【0027】
例えば、250℃での母材部の熱伝導率は190W/m・K、複合強化部の熱伝導率は105W/m・Kで両者の熱伝導率には大きく差があり、更に、第1摺動部22aは直接ハブ取付部21に接続されているため第2摺動部22bに比して熱伝導性が良いのに対して、第1摺動部22aの摺動面23における複合強化部11aの厚さt1より第2摺動部22bの摺動面24における複合強化部11bの厚さt2を小さく(薄く)形成することで、第2摺動部22bの複合化された摺動面23及びその近傍部位の熱伝導性を良くし、図3に示すように、熱膨張差の要因となる第1摺動部22aと第2摺動部22bの間の発熱による温度差を小さくすることができ、ブレーキディスクの熱変形などを防止できる。
【0028】
尚、両摺動部22a,22bの温度差が±1.0℃程度に収束するように、例えば、第2摺動部22bの複合強化部11bの厚さt2は、第1摺動部22aの複合強化部11aの厚さt1の1/2以上で0.8以下となる範囲に設定すればよい(0.5≦a/b≦0.8)。
【0029】
更に、図4は、冷却通風孔を設けたベンチレーテッド型ディスクと冷却通風孔を設けないソリッド型ディスクについて第1及び第2摺動部の複合強化部の厚さの相違による摺動部間の温度差を比較して示す図である。
【0030】
図4に示すように、フロントに比べて発熱量の少ないリヤブレーキにソリッド型ディスクを用いた場合では複合強化部の厚さを略同等にした場合でも温度差は小さく、逆に一方の複合強化部の厚さを他方の複合強化部の厚さより小さくした場合には温度差は大きくなっていくのに対して、リヤに比べて発熱量の大きいフロントブレーキにベンチレーテッド型ディスクを用いた場合では第1摺動部22aの複合強化部11aの厚さt1より第2摺動部22bの複合強化部11bの厚さt2を小さく(薄く)形成することによって両摺動部の冷却が促進され、温度差を縮小する効果を助長し得ることがわかる。ブレーキディスクの発熱量は、車両の前後の重量配分や想定される車速などによるところが大きく、本実施形態のベンチレーテッド型ディスクも車両の前後の重量配分が略同等の場合などにはフロントブレーキだけでなく、リヤブレーキにも適用できることは言うまでもない。
【0031】
また、母材をアルミニウム合金としたことにより、鋳鉄材などの他の母材に比べて熱伝導性が良く、温度差を小さくする効果を助長し得る。
【0032】
更に、母材をアルミニウム合金とし、複合強化材を骨格となるセラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有する素材としたことで、母材部と複合化部の熱伝導率の差が大きくなる場合でも、熱膨張差の要因となる摺動部間の発熱による温度差を小さくできる。
【0033】
[ブレーキディスクの製造方法]
図5は、本発明に係る実施形態として例示するブレーキディスクの製造方法を説明する図である。
【0034】
本実施形態では、図5に例示する鋳造用金型を用いてアルミニウム合金製のベンチレーテッドブレーキディスクを高圧鋳造(若しくは溶湯鍛造)する。
【0035】
鋳造用金型は、一対の上型1と下型2とを閉じることにより内部にキャビティ3が形成され、下型2には溶湯を充填するための湯口4と、この湯口4に連通する溶湯通路を形成するスリーブ5と、スリーブ5の内壁に摺接して溶湯を湯口4まで圧入する可動プランジャ6とを備える。溶湯は可動プランジャ6に押し上げられて湯口4からキャビティ3内に高圧で導入される。
【0036】
キャビティ3内には、冷却通風孔25を形成するための砂中子7が配置されている。
【0037】
砂中子7はディスク回転軸とスリーブ5の軸中心とが線Rに一致するようにキャビティ3内に配置され、線Rと同心の円盤状に形成されている。また、砂中子7の外周面と内周面との間には、ベンチレーション孔を形成するための複数のスリットが線Rを中心として放射状に円周方向に沿って等間隔に形成されている。
【0038】
下型2と上型1には、溶湯と複合化するために予備成形された複合強化材11a,11bが夫々配置され、摺動面23,24となる部分が複合化される。
【0039】
[鋳造条件]
本実施形態では、高圧鋳造法を用いて、約30.4MPaで加圧し、充填速度40mm/secで充填し、溶湯はJIS規格のAC4Cのアルミニウム合金、注湯温度約780℃、複合強化材温度700℃である。複合強化材には、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有するものを用いる。
【0040】
本実施例に用いる砂中子は、レジン量2.1〜2.3質量%、抗折力約6.5MPa、粒度指数(AFS)65〜75、平均粒径0.15mmのレジンコートシェル中子を一例とし、300〜320℃で焼成、3秒ブロー、40秒キュアして形成される。
【0041】
尚、複合強化材は、アルミナ短繊維やホウ酸アルミニウム−ウィスカの少なくともいずれかと、セラミックのSiC、TiO2,CaCO3粒子と、焼失性粉末と、水等の溶媒を撹拌して均一に混合してスラリー状とし、場合によっては、無機バインダとしてアルミナゾル等を添加し、その後、ろ過器でスラリー中の水等の液体成分を真空ポンプなどにより、吸引脱水した後、乾燥・焼結させて成形される。
【0042】
以上が本発明に係る実施の形態の説明であるが、本発明により製造されるアルミニウム合金鋳物は、上述した実施形態のような高圧鋳造法によるベンチレーテッドブレーキディスクに限られず、他の耐摩耗性及び軽量化を必要とする部品にも適用できる。また、本発明によれば、アルミニウム合金以外に、例えばマグネシウム合金等の他の軽合金鋳物にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施形態のベンチレーテッドブレーキディスクの構造を示す斜視図である。
【図2】従来のディスク構造(a)と本実施形態のディスク構造(b)とを比較して示す部分断面図である。
【図3】第1及び第2摺動部の複合強化部の厚さの相違による摺動部間の温度差を示す図である。
【図4】冷却通風孔を設けたベンチレーテッド型ディスクと冷却通風孔を設けないソリッド型ディスクについて第1及び第2摺動部の複合強化部の厚さの相違による摺動部間の温度差を比較して示す図である。
【図5】本発明に係る実施形態として例示するブレーキディスクの製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 上型
2 下型
3 キャビティ
4 湯口
5 スリーブ
6 プランジャ
7 砂中子
11a,11b 複合強化材
20 ベンチレーテッドブレーキディスク
21 ハブ取付部
22 摺動部
22a 第1摺動部
22b 第2摺動部
23、24 摺動面
25 冷却通風孔
26 フィン部
Claims (4)
- ハブ取付部から径方向外側に延び、ブレーキパッドとの一方の摺動面を有する第1摺動部と、当該第1摺動部の非摺動面側に接続され、この接続部分とは反対側にブレーキパッドとの他方の摺動面を有する第2摺動部とを備え、これらの摺動面が耐摩耗性材料により複合化されてなる軽合金製ブレーキディスクにおいて、
前記第2摺動部の摺動面における複合化部の厚さを、前記第1摺動部の摺動面における複合化部の厚さより小さく形成したことを特徴とする軽合金製ブレーキディスク。 - 前記第1摺動部と前記第2摺動部との間には、径方向に開口するベンチレーション孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軽合金製ブレーキディスク。
- 前記ディスクはアルミニウム合金製であることを特徴とする請求項1又は2に記載の軽合金製ブレーキディスク。
- 前記耐摩耗性材料は、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有することを特徴とする請求項3に記載の軽合金製ブレーキディスク。
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JP2002303105A JP2004138154A (ja) | 2002-10-17 | 2002-10-17 | 軽合金製ブレーキディスク |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002303105A JP2004138154A (ja) | 2002-10-17 | 2002-10-17 | 軽合金製ブレーキディスク |
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JP2004138154A true JP2004138154A (ja) | 2004-05-13 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006057843A (ja) * | 2004-08-19 | 2006-03-02 | Shimano Inc | 自転車用ディスクブレーキロータ |
-
2002
- 2002-10-17 JP JP2002303105A patent/JP2004138154A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006057843A (ja) * | 2004-08-19 | 2006-03-02 | Shimano Inc | 自転車用ディスクブレーキロータ |
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