JP2004136324A - 複合化用予備成形体及びそれを備えた砂型の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】砂型成形時に砂が予備成形体内に混入することを防止する。
【解決手段】砂中子6におけるシリンダボア内壁部を画定する円筒部6aの外周面には、アルミニウム合金からなる溶湯が含浸されて母材と複合化される円筒状の複合化用予備成形体7が嵌合・保持されている。また、複合化用予備成形体7の内壁部であって、砂中子6に設置される部位には、通気性を有すると共に複合化用予備成形体7の気孔内への鋳型砂の混入を防止する防止層7aが形成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】砂中子6におけるシリンダボア内壁部を画定する円筒部6aの外周面には、アルミニウム合金からなる溶湯が含浸されて母材と複合化される円筒状の複合化用予備成形体7が嵌合・保持されている。また、複合化用予備成形体7の内壁部であって、砂中子6に設置される部位には、通気性を有すると共に複合化用予備成形体7の気孔内への鋳型砂の混入を防止する防止層7aが形成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばアルミニウム合金製シリンダブロックのシリンダボア部に複合化される複合化用予備成形体及びそれを備えた砂型の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金製シリンダブロックにおけるピストン及びピストンリングが摺動するシリンダボア部には、耐摩耗性を確保するために鋳鉄製のライナ部材が鋳包み或いは圧入されている。
【0003】
しかしながら、鋳鉄製のライナ部材を鋳包み或いは圧入する方法ではシリンダブロックの軽量化やアルミニウム合金の高い熱伝導性を生かすことができない。
【0004】
シリンダブロックの軽量化が十分達成されないのは、ライナ部材自体が鋳鉄製であることによる重量増に加え、シリンダブロック本体側にライナ部材を保持するための鋳包み代、或いは圧入代が必要となるためシリンダボア間に厚みが必要となり、シリンダボア間のピッチを縮小させることができず、シリンダブロックのコンパクト化を阻害するためである。
【0005】
また、高い熱伝導性を生かしきれないのは、鋳包みや圧入は冶金的な接合ではなく機械的嵌合であり、シリンダブロック本体とライナ部材との間に熱伝達上のギャップが生じるためである。
【0006】
そこで、シリンダブロックの軽量化を促進し、高い熱伝導性を生かしてエンジン性能を向上させるために、鋳鉄製ライナ部材を廃したアルミニウム合金製シリンダブロックが開発され実用化されている。
【0007】
特に、アルミニウム合金母材に予備成形体を複合化することによって材料特性(主に耐摩耗性)を向上させる手法における当該予備成形体の材料として、セラミック短繊維(アルミナ短繊維等)やカーボン短繊維等が知られている。
【0008】
従来の複合化方法として、シリンダブロックのウォータジャケット部の形状に対応する表面を有する砂中子を純Alとアルミナ短繊維からなる被覆材料で被覆し、砂中子を鋳型にセットして溶湯を注湯することでウォータジェケットの壁面に上記被覆材料を実質的にそのままの状態にて残留させてシリンダブロックを製造する、所謂転写法と呼ばれる鋳造法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−245615号公報
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記複合化方法では、例えば、シリンダボア中子を成形する際には、多孔質の予備成形体を中子金型にセットし、中子砂を所定圧力でブローすることでシリンダボア中子に予備成形体を支持させる構造となるが、採用され得る予備成形体の気孔径が比較的大きいためこの中子砂のブロー時に中子砂が予備成形体の気孔部に入り込んだ状態となり、鋳造後(複合化後)のシリンダボア内面にも砂中子が残存してしまうことになる。
【0010】
このため、鋳造後の後工程であるシリンダボア面の機械加工において、ブロー時に混入した砂と刃物が接触して摩耗が促進され、工具寿命が低下するといった課題がある。
【0011】
また、一般に、砂中子の成形後に予備成形体を当該砂中子の所定部位に嵌め込んで保持させようとした場合には、砂中子と予備成形体との嵌め合い寸法のバラツキによって砂中子が崩壊したり、クラックが入って溶湯が砂中子表面に差し込む原因となる。また、中子が複雑な形状の場合には予備成形体を嵌め込むことができないという問題もある。
【0012】
また、アルミニウム合金母材と予備成形体の複合性を改善するため予備成形体を注湯直前に予熱する際には、金属質の予備成形体であればシリンダボア中子を介して電磁誘導で加熱することができるが、採用され得る予備成形体の体積率が小さいため、熱効率が悪い上、温度低下も大きいことから、予備成形体の予熱温度を十分に上昇させることができず、複合性の改善が十分行えないといった課題がある。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、砂型成形時に当該砂型を構成する砂が予備成形体内に混入することを防止できる複合化用予備成形体及びそれを備えた砂型の製造方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明の複合化用予備成形体は、砂に圧力を付与して砂型を成形することにより当該砂型に設置される複合化用予備成形体であって、前記砂型に設置される部位に、通気性を有すると共に、前記砂型を構成する砂の混入を防止する防止層を形成した。
【0015】
また、好ましくは、上記複合化用予備成形体において、前記防止層は、前記予備成形体に溶湯を含浸する際の熱により焼失する素材からなる。
【0016】
また、好ましくは、上記複合化用予備成形体において、前記防止層は、磁性材料を含有してなる。
【0017】
本発明の複合化用予備成形体を備えた砂型の製造方法は、砂に圧力を付与して砂型を成形することにより当該砂型に設置される複合化用予備成形体を備えた砂型の製造方法であって、前記複合化用予備成形体の前記砂型に設置される部位に、通気性を有すると共に、前記砂型を構成する砂の混入を防止する防止層を形成し、前記防止層が形成された予備成形体を砂型成形用の型内の保持位置に設置し、前記予備成形体と砂型との間に前記防止層が介在するように砂型を成形する。
【0018】
【発明の効果】
以上のように、請求項1及び4の発明によれば、複合化用予備成形体の砂型に設置される部位に、通気性を有すると共に、前記砂型を構成する砂の混入を防止する防止層を形成し、防止層が形成された予備成形体を砂型の型内の保持位置に設置し、予備成形体と砂型との間に防止層が介在するように砂型を成形することにより、砂型成形時に砂が予備成形体内に混入することを防止でき、例えば、鋳造後の後工程であるシリンダボア面の機械加工において、砂中子の造型時に混入した砂と刃物が接触することによる工具寿命の低下を防止できる。また、防止層が通気性を有することで、予備成形体中で溶湯と置換されるエアやレジンが燃焼して発生するガスの排出を阻害することもなくなる。
【0019】
請求項2の発明によれば、防止層は、予備成形体に溶湯を含浸する際の熱により焼失する素材からなることにより、後工程にて除去する手間が省け、生産性を向上させることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、防止層は、磁性材料を含有してなることにより、予備成形体の熱容量が小さく、また、その材料が非磁性材料であったとしても、溶湯含浸時前に効率よく電磁加熱することができ、予備成形体への砂の混入を防止しつつ、溶湯の含浸性をよくできる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。また、本発明の砂型には、溶湯を注入する鋳造用砂型のほか、この鋳造用砂型内部に設置される砂中子を含むものである。
【0023】
[鋳造用砂型]
図1は、本実施形態として例示する鋳造用砂中子が配置されたシリンダブロック鋳造用砂型の断面図である。図2は、本実施形態として例示する鋳造用砂中子を製造するための中子型の断面図である。図3は、本実施形態の鋳造用砂型により成形されたシリンダブロックの断面図である。
【0024】
図1に例示する鋳造用砂型は、自動車用エンジンにおけるアルミニウム合金製のシリンダブロックの低圧鋳造に用いられる。鋳造用砂型は、一対の上型1及び下型2とを有し、型内部に形成されたキャビティ3には砂中子6が配置される。
【0025】
図3に示すように、本実施形態の低圧鋳造法により製造されるシリンダブロック20は、シリンダボア内壁部に複合化層21が形成された、所謂ライナレスシリンダブロックであり、ライナを無くしたことでシリンダボア間が短縮され、シリンダボア径の拡大やシリンダブロックの軽量化、小型化を図ることができる。
【0026】
上型1及び下型2により形成されるキャビティ3はシリンダボア及びクランクケースの外壁部に対応する転写形状3aを有し、キャビティ3に配置される砂中子6はシリンダボア及びクランクケースの内壁部に対応する転写形状6aを有し、上型1がクランクケースとシリンダボアを画定し、下型2がシリンダボア上端部を画定するように実際のエンジンの配置とは上下が反対になってキャビティ3が形成されている。
【0027】
下型2にはキャビティ3に連通して溶湯を充填するための湯口4と、この湯口4に連通する溶湯通路5とが設けられ、不図示の圧縮空気や電磁ポンプなどの低圧鋳造に用いられる装置を用いて溶湯を湯口4まで圧入させ、湯口4からキャビティ3内に導入させる。
【0028】
砂中子6におけるシリンダボア内壁部(シリンダライナ)を画定する円筒部6aの外周面には、軽合金材料としてのアルミニウム合金からなる溶湯が含浸(溶浸)されて母材と複合化される円筒状の複合化用予備成形体7が嵌合・保持されている。また、複合化用予備成形体7の内壁部であって、砂中子6に設置(保持)される部位には、通気性を有すると共に複合化用予備成形体7の気孔内への鋳型砂の混入を防止する防止層7aが形成されている。
【0029】
本実施形態の鋳造では、上記防止層7aが形成された複合化用予備成形体7を外嵌・保持させた砂中子6を上下型1,2におけるキャビティ3内の所定位置に設置し、下記鋳造条件に従い、溶湯を電磁ポンプにより0.1−0.5kgf/cm2に加圧・保持して複合化用予備成形体7に溶湯を含浸させる。また、防止層7aが通気性を持つことで、複合化用予備成形体7中で溶湯と置換されるエアやレジンが燃焼して発生するガスの排出が阻害されることなく複合化及び鋳造が行われる。
【0030】
<鋳造条件>
鋳造法:砂型低圧鋳造(電磁ポンプにより加圧)
材質(母材):JISAC2B相当(Al−3Cu−6Si)のアルミニウム合金
鋳込み温度:750℃
シリンダボア部における溶湯の加圧力:0.07−0.35kgf/cm2
<複合化用予備成形体>
材質:金属多孔体(Fe−18Cr−8Ni)
セル径:0.38mm以上
[中子型]
図2に例示する中子型は、一対の上型11及び下型12とを有し、型内部に形成されたキャビティ13には複合化用予備成形体7が配置される。
【0031】
上型11及び下型12により形成されるキャビティ13は砂中子6の外壁部に対応する転写形状13aを有し、キャビティ13内に配置される中子16は砂中子6の空洞部6bに対応する転写形状を有している。
【0032】
上下型11,12にはキャビティ13に連通して砂を充填するための充填口14が設けられ、砂を充填口14からアミンガスと共に圧入して複合化用予備成形体7を外嵌・保持する。
【0033】
上述したように、複合化用予備成形体7としての金属多孔体の内壁部には、図4に示すように、砂中子6を成形する前に、鋳型砂の粒径よりも小さな孔が開いた通気性のある防止層(膜)7aが形成されており、砂中子6の成形時において複合化用予備成形体7と砂中子6との間に防止層7aを介在させることで中子砂が金属多孔体の気孔内に混入するのを防止している。
【0034】
この防止層7aは、例えば、エアは通すが砂は通さない粒子保持能が10〜20μm程度の紙や布などを貼り付けるか、若しくは塗型剤を塗布することにより金属多孔体の内壁部に予め形成されており、鋳造時の溶湯の熱によって燃焼ガス化するか、離型後に複合化層から容易に剥離できる素材からなる。
【0035】
燃焼ガス化することにより、後工程にて除去する手間が省け、生産性を向上させることができる。
【0036】
防止層7aは、具体的には、SiO2、Al2O3、ZrO2、MgOなどを成分とするアルミニウム合金鋳造用塗型剤であって、通気性を持たせるために、粒度50〜200μmにしたものを水又はエタノールで希釈した溶液を金属多孔体の内壁部にスプレーによる吹き付けや刷毛で塗布し、その後自然乾燥又は加熱乾燥して通気性のある防止層が形成される。
【0037】
更に、防止層7aに強磁性体の金属(例えば、鉄粉)を含有させてもよく、これにより、溶湯を注入する直前の金属多孔体の電磁誘導による加熱効率を高められ、金属多孔体の温度を高くして溶湯の含浸性をよくして強固に複合化することができる。
【0038】
強磁性体を含有させることで、複合化用予備成形体7の熱容量が小さく、また、その材料が非磁性材料であったとしても、溶湯含浸時前に効率よく電磁加熱することができ、複合化用予備成形体への砂の混入を防止しつつ、溶湯の含浸性をよくできる。
【0039】
防止層7aに強磁性体の金属(例えば、鉄)を含有させるためには、具体的には、上記塗型剤に同等粒度の鉄粉を混合し、同様に塗布して乾燥させればよい。
【0040】
また、金属多孔体の電磁誘導による加熱は、図5に示すように、砂中子6の内部に外部に通じる中空状の空洞部6bを形成し、溶湯の注入直前に空洞部6bに電磁誘導コイル8を挿入して砂中子6を介して電磁誘導により加熱すればよい。上記実施形態によれば、砂中子造型時における複合化用予備成形体7の気孔内への鋳型砂の混入を防止でき、鋳造後の後工程であるシリンダボア面の機械加工において、砂中子の造型時に混入した砂と刃物が接触することによる工具寿命の低下を防止できる。また、防止層7aが通気性を有することで、複合化用予備成形体中で溶湯と置換されるエアやレジンが燃焼して発生するガスの排出を阻害することもない。
【0041】
本実施形態の砂中子6は、下記造型条件に従い、複合化用予備成形体7の砂中子6に保持される部位に防止層7aを形成した後、防止層7aが形成された複合化用予備成形体7を砂中子の型内の保持位置に設置し、アミンガスに反応して硬化する硬化剤を混ぜ込んだ砂を充填口14から圧入してアミンガスを吹き付けることにより複合化用予備成形体7を外嵌・保持した状態で硬化させて造型される。
【0042】
[造型条件]
造型法:コールドボックス(アミンガスにより硬化)
砂種:シリカサンド
粒度:AFS65〜73(平均径0.2〜0.3mm)
多孔体としては、金属多孔体以外に、セラミック多孔体、ステンレス等からなる金属繊維材等も適用できる。金属繊維材としてはステンレス以外に、タングステン、モリブデン、炭素鋼等もあるが、ステンレス繊維材が最も強度が高くしかも安価なので実用的である。
【0043】
以上が本発明の実施の形態の説明であるが、本発明により製造されるアルミニウム合金鋳物は、上述した実施形態のような低圧鋳造法によるシリンダブロックに限られず、他の耐摩耗性及び軽量化を必要とする部品にも適用できる。また、本発明によれば、アルミニウム合金以外に、例えばマグネシウム合金等の他の軽合金鋳物にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態として例示する鋳造用砂中子が配置されたシリンダブロック鋳造用砂型の断面図である。
【図2】本実施形態として例示する鋳造用砂中子を製造するための中子型の断面図である。
【図3】本実施形態の鋳造用砂型により成形されたシリンダブロックの断面図である。
【図4】本実施形態の砂中子の保持される複合化用予備成形体を示す図である。
【図5】本実施形態において金属多孔体を電磁誘導により加熱するための装置及び方法を示す図である。
【符号の説明】
1 上型
2 下型
3 キャビティ
4 湯口
6 砂中子
7 複合化用予備成形体
7a 防止層
11 上型
12 下型
13 キャビティ
14 充填口
20 シリンダブロック
21 複合化層
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばアルミニウム合金製シリンダブロックのシリンダボア部に複合化される複合化用予備成形体及びそれを備えた砂型の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金製シリンダブロックにおけるピストン及びピストンリングが摺動するシリンダボア部には、耐摩耗性を確保するために鋳鉄製のライナ部材が鋳包み或いは圧入されている。
【0003】
しかしながら、鋳鉄製のライナ部材を鋳包み或いは圧入する方法ではシリンダブロックの軽量化やアルミニウム合金の高い熱伝導性を生かすことができない。
【0004】
シリンダブロックの軽量化が十分達成されないのは、ライナ部材自体が鋳鉄製であることによる重量増に加え、シリンダブロック本体側にライナ部材を保持するための鋳包み代、或いは圧入代が必要となるためシリンダボア間に厚みが必要となり、シリンダボア間のピッチを縮小させることができず、シリンダブロックのコンパクト化を阻害するためである。
【0005】
また、高い熱伝導性を生かしきれないのは、鋳包みや圧入は冶金的な接合ではなく機械的嵌合であり、シリンダブロック本体とライナ部材との間に熱伝達上のギャップが生じるためである。
【0006】
そこで、シリンダブロックの軽量化を促進し、高い熱伝導性を生かしてエンジン性能を向上させるために、鋳鉄製ライナ部材を廃したアルミニウム合金製シリンダブロックが開発され実用化されている。
【0007】
特に、アルミニウム合金母材に予備成形体を複合化することによって材料特性(主に耐摩耗性)を向上させる手法における当該予備成形体の材料として、セラミック短繊維(アルミナ短繊維等)やカーボン短繊維等が知られている。
【0008】
従来の複合化方法として、シリンダブロックのウォータジャケット部の形状に対応する表面を有する砂中子を純Alとアルミナ短繊維からなる被覆材料で被覆し、砂中子を鋳型にセットして溶湯を注湯することでウォータジェケットの壁面に上記被覆材料を実質的にそのままの状態にて残留させてシリンダブロックを製造する、所謂転写法と呼ばれる鋳造法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−245615号公報
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記複合化方法では、例えば、シリンダボア中子を成形する際には、多孔質の予備成形体を中子金型にセットし、中子砂を所定圧力でブローすることでシリンダボア中子に予備成形体を支持させる構造となるが、採用され得る予備成形体の気孔径が比較的大きいためこの中子砂のブロー時に中子砂が予備成形体の気孔部に入り込んだ状態となり、鋳造後(複合化後)のシリンダボア内面にも砂中子が残存してしまうことになる。
【0010】
このため、鋳造後の後工程であるシリンダボア面の機械加工において、ブロー時に混入した砂と刃物が接触して摩耗が促進され、工具寿命が低下するといった課題がある。
【0011】
また、一般に、砂中子の成形後に予備成形体を当該砂中子の所定部位に嵌め込んで保持させようとした場合には、砂中子と予備成形体との嵌め合い寸法のバラツキによって砂中子が崩壊したり、クラックが入って溶湯が砂中子表面に差し込む原因となる。また、中子が複雑な形状の場合には予備成形体を嵌め込むことができないという問題もある。
【0012】
また、アルミニウム合金母材と予備成形体の複合性を改善するため予備成形体を注湯直前に予熱する際には、金属質の予備成形体であればシリンダボア中子を介して電磁誘導で加熱することができるが、採用され得る予備成形体の体積率が小さいため、熱効率が悪い上、温度低下も大きいことから、予備成形体の予熱温度を十分に上昇させることができず、複合性の改善が十分行えないといった課題がある。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、砂型成形時に当該砂型を構成する砂が予備成形体内に混入することを防止できる複合化用予備成形体及びそれを備えた砂型の製造方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明の複合化用予備成形体は、砂に圧力を付与して砂型を成形することにより当該砂型に設置される複合化用予備成形体であって、前記砂型に設置される部位に、通気性を有すると共に、前記砂型を構成する砂の混入を防止する防止層を形成した。
【0015】
また、好ましくは、上記複合化用予備成形体において、前記防止層は、前記予備成形体に溶湯を含浸する際の熱により焼失する素材からなる。
【0016】
また、好ましくは、上記複合化用予備成形体において、前記防止層は、磁性材料を含有してなる。
【0017】
本発明の複合化用予備成形体を備えた砂型の製造方法は、砂に圧力を付与して砂型を成形することにより当該砂型に設置される複合化用予備成形体を備えた砂型の製造方法であって、前記複合化用予備成形体の前記砂型に設置される部位に、通気性を有すると共に、前記砂型を構成する砂の混入を防止する防止層を形成し、前記防止層が形成された予備成形体を砂型成形用の型内の保持位置に設置し、前記予備成形体と砂型との間に前記防止層が介在するように砂型を成形する。
【0018】
【発明の効果】
以上のように、請求項1及び4の発明によれば、複合化用予備成形体の砂型に設置される部位に、通気性を有すると共に、前記砂型を構成する砂の混入を防止する防止層を形成し、防止層が形成された予備成形体を砂型の型内の保持位置に設置し、予備成形体と砂型との間に防止層が介在するように砂型を成形することにより、砂型成形時に砂が予備成形体内に混入することを防止でき、例えば、鋳造後の後工程であるシリンダボア面の機械加工において、砂中子の造型時に混入した砂と刃物が接触することによる工具寿命の低下を防止できる。また、防止層が通気性を有することで、予備成形体中で溶湯と置換されるエアやレジンが燃焼して発生するガスの排出を阻害することもなくなる。
【0019】
請求項2の発明によれば、防止層は、予備成形体に溶湯を含浸する際の熱により焼失する素材からなることにより、後工程にて除去する手間が省け、生産性を向上させることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、防止層は、磁性材料を含有してなることにより、予備成形体の熱容量が小さく、また、その材料が非磁性材料であったとしても、溶湯含浸時前に効率よく電磁加熱することができ、予備成形体への砂の混入を防止しつつ、溶湯の含浸性をよくできる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。また、本発明の砂型には、溶湯を注入する鋳造用砂型のほか、この鋳造用砂型内部に設置される砂中子を含むものである。
【0023】
[鋳造用砂型]
図1は、本実施形態として例示する鋳造用砂中子が配置されたシリンダブロック鋳造用砂型の断面図である。図2は、本実施形態として例示する鋳造用砂中子を製造するための中子型の断面図である。図3は、本実施形態の鋳造用砂型により成形されたシリンダブロックの断面図である。
【0024】
図1に例示する鋳造用砂型は、自動車用エンジンにおけるアルミニウム合金製のシリンダブロックの低圧鋳造に用いられる。鋳造用砂型は、一対の上型1及び下型2とを有し、型内部に形成されたキャビティ3には砂中子6が配置される。
【0025】
図3に示すように、本実施形態の低圧鋳造法により製造されるシリンダブロック20は、シリンダボア内壁部に複合化層21が形成された、所謂ライナレスシリンダブロックであり、ライナを無くしたことでシリンダボア間が短縮され、シリンダボア径の拡大やシリンダブロックの軽量化、小型化を図ることができる。
【0026】
上型1及び下型2により形成されるキャビティ3はシリンダボア及びクランクケースの外壁部に対応する転写形状3aを有し、キャビティ3に配置される砂中子6はシリンダボア及びクランクケースの内壁部に対応する転写形状6aを有し、上型1がクランクケースとシリンダボアを画定し、下型2がシリンダボア上端部を画定するように実際のエンジンの配置とは上下が反対になってキャビティ3が形成されている。
【0027】
下型2にはキャビティ3に連通して溶湯を充填するための湯口4と、この湯口4に連通する溶湯通路5とが設けられ、不図示の圧縮空気や電磁ポンプなどの低圧鋳造に用いられる装置を用いて溶湯を湯口4まで圧入させ、湯口4からキャビティ3内に導入させる。
【0028】
砂中子6におけるシリンダボア内壁部(シリンダライナ)を画定する円筒部6aの外周面には、軽合金材料としてのアルミニウム合金からなる溶湯が含浸(溶浸)されて母材と複合化される円筒状の複合化用予備成形体7が嵌合・保持されている。また、複合化用予備成形体7の内壁部であって、砂中子6に設置(保持)される部位には、通気性を有すると共に複合化用予備成形体7の気孔内への鋳型砂の混入を防止する防止層7aが形成されている。
【0029】
本実施形態の鋳造では、上記防止層7aが形成された複合化用予備成形体7を外嵌・保持させた砂中子6を上下型1,2におけるキャビティ3内の所定位置に設置し、下記鋳造条件に従い、溶湯を電磁ポンプにより0.1−0.5kgf/cm2に加圧・保持して複合化用予備成形体7に溶湯を含浸させる。また、防止層7aが通気性を持つことで、複合化用予備成形体7中で溶湯と置換されるエアやレジンが燃焼して発生するガスの排出が阻害されることなく複合化及び鋳造が行われる。
【0030】
<鋳造条件>
鋳造法:砂型低圧鋳造(電磁ポンプにより加圧)
材質(母材):JISAC2B相当(Al−3Cu−6Si)のアルミニウム合金
鋳込み温度:750℃
シリンダボア部における溶湯の加圧力:0.07−0.35kgf/cm2
<複合化用予備成形体>
材質:金属多孔体(Fe−18Cr−8Ni)
セル径:0.38mm以上
[中子型]
図2に例示する中子型は、一対の上型11及び下型12とを有し、型内部に形成されたキャビティ13には複合化用予備成形体7が配置される。
【0031】
上型11及び下型12により形成されるキャビティ13は砂中子6の外壁部に対応する転写形状13aを有し、キャビティ13内に配置される中子16は砂中子6の空洞部6bに対応する転写形状を有している。
【0032】
上下型11,12にはキャビティ13に連通して砂を充填するための充填口14が設けられ、砂を充填口14からアミンガスと共に圧入して複合化用予備成形体7を外嵌・保持する。
【0033】
上述したように、複合化用予備成形体7としての金属多孔体の内壁部には、図4に示すように、砂中子6を成形する前に、鋳型砂の粒径よりも小さな孔が開いた通気性のある防止層(膜)7aが形成されており、砂中子6の成形時において複合化用予備成形体7と砂中子6との間に防止層7aを介在させることで中子砂が金属多孔体の気孔内に混入するのを防止している。
【0034】
この防止層7aは、例えば、エアは通すが砂は通さない粒子保持能が10〜20μm程度の紙や布などを貼り付けるか、若しくは塗型剤を塗布することにより金属多孔体の内壁部に予め形成されており、鋳造時の溶湯の熱によって燃焼ガス化するか、離型後に複合化層から容易に剥離できる素材からなる。
【0035】
燃焼ガス化することにより、後工程にて除去する手間が省け、生産性を向上させることができる。
【0036】
防止層7aは、具体的には、SiO2、Al2O3、ZrO2、MgOなどを成分とするアルミニウム合金鋳造用塗型剤であって、通気性を持たせるために、粒度50〜200μmにしたものを水又はエタノールで希釈した溶液を金属多孔体の内壁部にスプレーによる吹き付けや刷毛で塗布し、その後自然乾燥又は加熱乾燥して通気性のある防止層が形成される。
【0037】
更に、防止層7aに強磁性体の金属(例えば、鉄粉)を含有させてもよく、これにより、溶湯を注入する直前の金属多孔体の電磁誘導による加熱効率を高められ、金属多孔体の温度を高くして溶湯の含浸性をよくして強固に複合化することができる。
【0038】
強磁性体を含有させることで、複合化用予備成形体7の熱容量が小さく、また、その材料が非磁性材料であったとしても、溶湯含浸時前に効率よく電磁加熱することができ、複合化用予備成形体への砂の混入を防止しつつ、溶湯の含浸性をよくできる。
【0039】
防止層7aに強磁性体の金属(例えば、鉄)を含有させるためには、具体的には、上記塗型剤に同等粒度の鉄粉を混合し、同様に塗布して乾燥させればよい。
【0040】
また、金属多孔体の電磁誘導による加熱は、図5に示すように、砂中子6の内部に外部に通じる中空状の空洞部6bを形成し、溶湯の注入直前に空洞部6bに電磁誘導コイル8を挿入して砂中子6を介して電磁誘導により加熱すればよい。上記実施形態によれば、砂中子造型時における複合化用予備成形体7の気孔内への鋳型砂の混入を防止でき、鋳造後の後工程であるシリンダボア面の機械加工において、砂中子の造型時に混入した砂と刃物が接触することによる工具寿命の低下を防止できる。また、防止層7aが通気性を有することで、複合化用予備成形体中で溶湯と置換されるエアやレジンが燃焼して発生するガスの排出を阻害することもない。
【0041】
本実施形態の砂中子6は、下記造型条件に従い、複合化用予備成形体7の砂中子6に保持される部位に防止層7aを形成した後、防止層7aが形成された複合化用予備成形体7を砂中子の型内の保持位置に設置し、アミンガスに反応して硬化する硬化剤を混ぜ込んだ砂を充填口14から圧入してアミンガスを吹き付けることにより複合化用予備成形体7を外嵌・保持した状態で硬化させて造型される。
【0042】
[造型条件]
造型法:コールドボックス(アミンガスにより硬化)
砂種:シリカサンド
粒度:AFS65〜73(平均径0.2〜0.3mm)
多孔体としては、金属多孔体以外に、セラミック多孔体、ステンレス等からなる金属繊維材等も適用できる。金属繊維材としてはステンレス以外に、タングステン、モリブデン、炭素鋼等もあるが、ステンレス繊維材が最も強度が高くしかも安価なので実用的である。
【0043】
以上が本発明の実施の形態の説明であるが、本発明により製造されるアルミニウム合金鋳物は、上述した実施形態のような低圧鋳造法によるシリンダブロックに限られず、他の耐摩耗性及び軽量化を必要とする部品にも適用できる。また、本発明によれば、アルミニウム合金以外に、例えばマグネシウム合金等の他の軽合金鋳物にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態として例示する鋳造用砂中子が配置されたシリンダブロック鋳造用砂型の断面図である。
【図2】本実施形態として例示する鋳造用砂中子を製造するための中子型の断面図である。
【図3】本実施形態の鋳造用砂型により成形されたシリンダブロックの断面図である。
【図4】本実施形態の砂中子の保持される複合化用予備成形体を示す図である。
【図5】本実施形態において金属多孔体を電磁誘導により加熱するための装置及び方法を示す図である。
【符号の説明】
1 上型
2 下型
3 キャビティ
4 湯口
6 砂中子
7 複合化用予備成形体
7a 防止層
11 上型
12 下型
13 キャビティ
14 充填口
20 シリンダブロック
21 複合化層
Claims (4)
- 砂に圧力を付与して砂型を成形することにより当該砂型に設置される複合化用予備成形体であって、
前記砂型に設置される部位に、通気性を有すると共に、前記砂型を構成する砂の混入を防止する防止層を形成したことを特徴とする複合化用予備成形体。 - 前記防止層は、前記予備成形体に溶湯を含浸する際の熱により焼失する素材からなることを特徴とする請求項1に記載の複合化用予備成形体。
- 前記防止層は、磁性材料を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の複合化用予備成形体。
- 砂に圧力を付与して砂型を成形することにより当該砂型に設置される複合化用予備成形体を備えた砂型の製造方法であって、
前記複合化用予備成形体の前記砂型に設置される部位に、通気性を有すると共に、前記砂型を構成する砂の混入を防止する防止層を形成し、
前記防止層が形成された予備成形体を砂型成形用の型内の保持位置に設置し、
前記予備成形体と砂型との間に前記防止層が介在するように砂型を成形することを特徴とする複合化用予備成形体を備えた砂型の製造方法。
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CN100381230C (zh) * | 2003-11-19 | 2008-04-16 | 马自达汽车株式会社 | 轻合金制铸件的制造方法 |
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- 2002-10-17 JP JP2002303103A patent/JP2004136324A/ja not_active Abandoned
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