JP2004138153A - ブレーキディスク - Google Patents
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Abstract
【課題】摺動部における熱引けを促進し、表面温度の上昇を抑える。
【解決手段】摺動部22の厚さ方向から見た場合のフィン部26の断面積を、当該摺動部22の径方向の外周側より内周側(ハブ取付部21側)を大きく形成した。
【選択図】 図2
【解決手段】摺動部22の厚さ方向から見た場合のフィン部26の断面積を、当該摺動部22の径方向の外周側より内周側(ハブ取付部21側)を大きく形成した。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばアルミニウム合金製のベンチレーテッドブレーキディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車部品の1つであるブレーキディスクをアルミニウム合金で鋳造する際には、予備成形体としてセラミック多孔体等を金型内に配置して溶湯を含浸させて複合化することにより、ブレーキディスクロータ摺動面の耐熱性や耐摩耗性を強化している(特許文献1参照)。
【0003】
また、摺動板内部の冷却フィンのうち、一部の冷却フィンの肉厚を内周側より外周側を厚くしたものがある(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−96141号公報
【特許文献2】
特開平11−63044号公報
【発明が解決しようとする課題】
従来のベンチレーテッドブレーキディスクは、図2(a)に示すように、摺動部22’の一方がハブ取付部21に直接接続され、他方が冷却フィン26’を介して一方の摺動部22’に接続されている構成であって、フィン形状が外周側と内周側とで同形状のものが一般的である。
【0005】
このような構造のブレーキディスクでは、ハブ取付部21への熱引け(逃げ)をより積極的に行うことができず、過酷な使用条件では摺動部の表面温度が高くなりすぎ、ブレーキフェード現象を引き起こす要因となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、摺動部におけるハブ取付部側への熱引け(逃げ)を促進し、表面温度の上昇を抑えるブレーキディスクを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明のブレーキディスクは、両側に摺動面を有する摺動部と、これら摺動面間にベンチレーション孔を形成するフィン部とを有するベンチレーテッドブレーキディスクにおいて、前記摺動部の厚さ方向から見た前記フィン部の断面積を、当該摺動部の径方向の外周側より内周側を大きく形成した。
【0008】
また、好ましくは、上記構成において、前記ブレーキディスクは軽合金製であって、前記摺動面には耐摩耗性材料が複合化されている。
【0009】
また、好ましくは、上記構成において、前記ブレーキディスクはアルミニウム合金製である。
【0010】
また、好ましくは、上記構成において、前記耐摩耗性材料は、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有する。
【0011】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、摺動部の厚さ方向から見たフィン部の断面積を、摺動部の径方向の外周側より内周側を大きく形成したことにより、摺動面の熱がハブ取付部へより積極的に逃げて熱引け性が促進され、摺動面の温度を効果的に低減することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ブレーキディスクは軽合金製であって、摺動面には耐摩耗性材料が複合化されていることにより、摺動面の熱引け性が良くなり、摺動面の温度低下の効果が大きくなる。
【0013】
請求項3の発明によれば、ブレーキディスクはアルミニウム合金製であることにより、鋳鉄材などに比べて温度低下効果が優れたものとなる。
【0014】
請求項4の発明によれば、耐摩耗性材料は、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有することにより、母材のみに比べて複合強化材で形成した場合の方が温度低下効果が優れたものとなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0017】
[ベンチレーテッドブレーキディスクの構造]
図1は、本発明に係る実施形態のベンチレーテッドブレーキディスクの構造を示す斜視図である。図2は、従来のディスク構造(a)と本実施形態のディスク構造(b)とを比較して示す部分図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のベンチレーテッドブレーキディスクを構成するロータ20は後述する鋳造用金型を用いてアルミニウム合金などの軽合金材料から高圧鋳造され、その中央部が凸状のハブ取付部21と、不図示のブレーキパッドに対して摺動するリング状の摺動部22とを備える。
【0019】
上記摺動部22の両側(表面部と背面部)には、ハブ取付部21から径方向外側に延び、不図示のブレーキパッドに対する一方の摺動面23を有する第1摺動部22aと、第1摺動部22aの非摺動面側にフィン部26を介して接続され、この接続部分とは反対側に不図示のブレーキパッドに対する他方の摺動面24を有する第2摺動部22bとを備える。
【0020】
上記第1及び第2摺動部22a,22bの各摺動面23,24は、不図示のブレーキパッドに挟み込まれて摺動して車輪の回転力を低減し、各摺動面23,24には鋳造時において耐摩耗性材料である複合強化材が一体的に複合化されている。
【0021】
上記耐摩耗性の複合強化材は、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有する素材からなる。
【0022】
また、第1摺動部22aと第2摺動部2bの非摺動面側が対向する部位(ロータの肉圧部分)には径方向に放射状に複数の冷却通風孔(ベンチレーション孔)25を形成するフィン部26が形成されている。また、ハブ取付部21には4つのネジ取付孔27が穿設される。
【0023】
上記各摺動面23、24は、多孔質のセラミック粒子/繊維成形体から構成された複合強化材を金型内に配置してアルミニウム合金溶湯を含浸(溶浸)させて凝固させることにより形成されている。
【0024】
図2(a)に示す従来の構造では摺動部22’のフィン部26’の形状が外周側と内周側(ハブ取付部21側)とで同形状であるのに対して、図2(b)に示す本実施形態の構造では、摺動部22の厚さ方向から見た場合のフィン部26の断面積を、当該摺動部22の径方向の外周側より内周側(ハブ取付部21側)を大きく形成している。換言すると、フィン部26の円周方向の肉厚及び体積を、当該摺動部22の径方向の外周側より内周側を大きく形成している。尚、摺動部22の径方向から見たフィン部26の肉厚は外周側と内周側とで略同等に形成されている。
【0025】
図3は、摺動面を鋳鉄材(a)とアルミニウム合金及び複合強化材(b)で形成した場合の、ブレーキディスクにおけるフィン部の内周側と外周側の各断面積と摺動部温度との関係を示す図である。
【0026】
図3からわかるように、摺動面を鋳鉄材とアルミニウム合金及び複合強化材で形成した場合のいずれにおいても、ハブ取付部に近いフィン部の内周側断面積を大きくすることで、摺動面の熱がハブ取付部へ逃げ(熱引け性が促進され)、第1及び第2摺動部のいずれの温度も効果的に低減することができる。
【0027】
また、温度低下効果は、鋳鉄材よりアルミニウム合金及び複合強化材で形成した場合の方が優れたものとなる。
【0028】
尚、図3において、外周側断面積/(外周側断面積+内周側断面積)は、フィン部の体積は一定として、この数値が小さいほど内周側断面積が外周側断面積より大きくなり、この数値が大きいほど外周側断面積が内周側断面積より大きくなることを意味する。但し、本実施形態のフィン部の形状は体積がを一定のものに限られず、フィン部の断面積を上記のように設定しつつ体積を変化させたものでもよいことは言うまでもない。
【0029】
図4は、複合化の有無による摺動部の温度低下を比較して示す図である。
【0030】
図4に示すように、摺動面を母材のみで形成した場合と複合強化材で複合化した場合とでは、複合化した方が摺動面の熱引け性が良くなり、摺動面の温度低下の効果が大きくなる。
【0031】
また、上記熱引け性を良くする上では、ブレーキディスクをアルミニウム合金などの軽合金材料で構成し、複合強化材はセラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有する素材から構成したものが好ましい。
【0032】
[ブレーキディスクの製造方法]
図5は、本発明に係る実施形態として例示するブレーキディスクの製造方法を説明する図である。
【0033】
本実施形態では、図5に例示する鋳造用金型を用いてアルミニウム合金製のベンチレーテッドブレーキディスクを高圧鋳造(若しくは溶湯鍛造)する。
【0034】
鋳造用金型は、一対の上型1と下型2とを閉じることにより内部にキャビティ3が形成され、下型2には溶湯を充填するための湯口4と、この湯口4に連通する溶湯通路を形成するスリーブ5と、スリーブ5の内壁に摺接して溶湯を湯口4まで圧入する可動プランジャ6とを備える。溶湯は可動プランジャ6に押し上げられて湯口4からキャビティ3内に高圧で導入される。
【0035】
キャビティ3内には、冷却通風孔25を形成するための砂中子7が配置されている。
【0036】
砂中子7はディスク回転軸とスリーブ5の軸中心とが線Rに一致するようにキャビティ3内に配置され、線Rと同心の円盤状に形成されている。また、砂中子7の外周面と内周面との間には、ベンチレーション孔を形成するための複数のスリットが線Rを中心として放射状に円周方向に沿って等間隔に形成されている。
【0037】
下型2と上型1には、溶湯と複合化するために予備成形された複合強化材11が夫々配置され、各摺動面が複合化される。
【0038】
[鋳造条件]
本実施形態では、高圧鋳造法を用いて、約30.4MPaで加圧し、充填速度40mm/secで充填し、溶湯はJIS規格のAC4Cのアルミニウム合金、注湯温度約780℃、複合強化材温度700℃である。複合強化材には、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有するものを用いる。
【0039】
本実施例に用いる砂中子は、レジン量2.1〜2.3質量%、抗折力約6.5MPa、粒度指数(AFS)65〜75、平均粒径0.15mmのレジンコートシェル中子を一例とし、300〜320℃で焼成、3秒ブロー、40秒キュアして形成される。
【0040】
尚、複合強化材は、アルミナ短繊維やホウ酸アルミニウム−ウィスカの少なくともいずれかと、セラミックのSiC、TiO2,CaCO3粒子と、焼失性粉末と、水等の溶媒を撹拌して均一に混合してスラリー状とし、場合によっては、無機バインダとしてアルミナゾル等を添加し、その後、ろ過器でスラリー中の水等の液体成分を真空ポンプなどにより、吸引脱水した後、乾燥・焼結させて成形される。
【0041】
以上が本発明に係る実施の形態の説明であるが、本発明により製造されるアルミニウム合金鋳物は、上述した実施形態のような高圧鋳造法によるベンチレーテッドブレーキディスクに限られず、他の耐摩耗性及び軽量化を必要とする部品にも適用できる。また、本発明によれば、アルミニウム合金以外に、例えばマグネシウム合金等の他の軽合金鋳物にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施形態のベンチレーテッドブレーキディスクの構造を示す斜視図である。
【図2】従来のディスク構造(a)と本実施形態のディスク構造(b)とを比較して示す部分図である。
【図3】摺動面を鋳鉄材(a)とアルミニウム合金及び複合強化材(b)で形成した場合の、ブレーキディスクにおけるフィン部の内周側と外周側の各断面積と摺動部温度との関係を示す図である。
【図4】複合化の有無による摺動部の温度低下を比較して示す図である。
【図5】本発明に係る実施形態として例示するブレーキディスクの製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
1…上型
2…下型
3…キャビティ
4…湯口
5…スリーブ
6…プランジャ
7…砂中子
11…複合強化材
20…ベンチレーテッドブレーキディスク
21 ハブ取付部
22 摺動部
22a 第1摺動部
22b 第2摺動部
23、24 摺動面
25 冷却通風孔
26 フィン部
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばアルミニウム合金製のベンチレーテッドブレーキディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車部品の1つであるブレーキディスクをアルミニウム合金で鋳造する際には、予備成形体としてセラミック多孔体等を金型内に配置して溶湯を含浸させて複合化することにより、ブレーキディスクロータ摺動面の耐熱性や耐摩耗性を強化している(特許文献1参照)。
【0003】
また、摺動板内部の冷却フィンのうち、一部の冷却フィンの肉厚を内周側より外周側を厚くしたものがある(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−96141号公報
【特許文献2】
特開平11−63044号公報
【発明が解決しようとする課題】
従来のベンチレーテッドブレーキディスクは、図2(a)に示すように、摺動部22’の一方がハブ取付部21に直接接続され、他方が冷却フィン26’を介して一方の摺動部22’に接続されている構成であって、フィン形状が外周側と内周側とで同形状のものが一般的である。
【0005】
このような構造のブレーキディスクでは、ハブ取付部21への熱引け(逃げ)をより積極的に行うことができず、過酷な使用条件では摺動部の表面温度が高くなりすぎ、ブレーキフェード現象を引き起こす要因となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、摺動部におけるハブ取付部側への熱引け(逃げ)を促進し、表面温度の上昇を抑えるブレーキディスクを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明のブレーキディスクは、両側に摺動面を有する摺動部と、これら摺動面間にベンチレーション孔を形成するフィン部とを有するベンチレーテッドブレーキディスクにおいて、前記摺動部の厚さ方向から見た前記フィン部の断面積を、当該摺動部の径方向の外周側より内周側を大きく形成した。
【0008】
また、好ましくは、上記構成において、前記ブレーキディスクは軽合金製であって、前記摺動面には耐摩耗性材料が複合化されている。
【0009】
また、好ましくは、上記構成において、前記ブレーキディスクはアルミニウム合金製である。
【0010】
また、好ましくは、上記構成において、前記耐摩耗性材料は、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有する。
【0011】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、摺動部の厚さ方向から見たフィン部の断面積を、摺動部の径方向の外周側より内周側を大きく形成したことにより、摺動面の熱がハブ取付部へより積極的に逃げて熱引け性が促進され、摺動面の温度を効果的に低減することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ブレーキディスクは軽合金製であって、摺動面には耐摩耗性材料が複合化されていることにより、摺動面の熱引け性が良くなり、摺動面の温度低下の効果が大きくなる。
【0013】
請求項3の発明によれば、ブレーキディスクはアルミニウム合金製であることにより、鋳鉄材などに比べて温度低下効果が優れたものとなる。
【0014】
請求項4の発明によれば、耐摩耗性材料は、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有することにより、母材のみに比べて複合強化材で形成した場合の方が温度低下効果が優れたものとなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0017】
[ベンチレーテッドブレーキディスクの構造]
図1は、本発明に係る実施形態のベンチレーテッドブレーキディスクの構造を示す斜視図である。図2は、従来のディスク構造(a)と本実施形態のディスク構造(b)とを比較して示す部分図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のベンチレーテッドブレーキディスクを構成するロータ20は後述する鋳造用金型を用いてアルミニウム合金などの軽合金材料から高圧鋳造され、その中央部が凸状のハブ取付部21と、不図示のブレーキパッドに対して摺動するリング状の摺動部22とを備える。
【0019】
上記摺動部22の両側(表面部と背面部)には、ハブ取付部21から径方向外側に延び、不図示のブレーキパッドに対する一方の摺動面23を有する第1摺動部22aと、第1摺動部22aの非摺動面側にフィン部26を介して接続され、この接続部分とは反対側に不図示のブレーキパッドに対する他方の摺動面24を有する第2摺動部22bとを備える。
【0020】
上記第1及び第2摺動部22a,22bの各摺動面23,24は、不図示のブレーキパッドに挟み込まれて摺動して車輪の回転力を低減し、各摺動面23,24には鋳造時において耐摩耗性材料である複合強化材が一体的に複合化されている。
【0021】
上記耐摩耗性の複合強化材は、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有する素材からなる。
【0022】
また、第1摺動部22aと第2摺動部2bの非摺動面側が対向する部位(ロータの肉圧部分)には径方向に放射状に複数の冷却通風孔(ベンチレーション孔)25を形成するフィン部26が形成されている。また、ハブ取付部21には4つのネジ取付孔27が穿設される。
【0023】
上記各摺動面23、24は、多孔質のセラミック粒子/繊維成形体から構成された複合強化材を金型内に配置してアルミニウム合金溶湯を含浸(溶浸)させて凝固させることにより形成されている。
【0024】
図2(a)に示す従来の構造では摺動部22’のフィン部26’の形状が外周側と内周側(ハブ取付部21側)とで同形状であるのに対して、図2(b)に示す本実施形態の構造では、摺動部22の厚さ方向から見た場合のフィン部26の断面積を、当該摺動部22の径方向の外周側より内周側(ハブ取付部21側)を大きく形成している。換言すると、フィン部26の円周方向の肉厚及び体積を、当該摺動部22の径方向の外周側より内周側を大きく形成している。尚、摺動部22の径方向から見たフィン部26の肉厚は外周側と内周側とで略同等に形成されている。
【0025】
図3は、摺動面を鋳鉄材(a)とアルミニウム合金及び複合強化材(b)で形成した場合の、ブレーキディスクにおけるフィン部の内周側と外周側の各断面積と摺動部温度との関係を示す図である。
【0026】
図3からわかるように、摺動面を鋳鉄材とアルミニウム合金及び複合強化材で形成した場合のいずれにおいても、ハブ取付部に近いフィン部の内周側断面積を大きくすることで、摺動面の熱がハブ取付部へ逃げ(熱引け性が促進され)、第1及び第2摺動部のいずれの温度も効果的に低減することができる。
【0027】
また、温度低下効果は、鋳鉄材よりアルミニウム合金及び複合強化材で形成した場合の方が優れたものとなる。
【0028】
尚、図3において、外周側断面積/(外周側断面積+内周側断面積)は、フィン部の体積は一定として、この数値が小さいほど内周側断面積が外周側断面積より大きくなり、この数値が大きいほど外周側断面積が内周側断面積より大きくなることを意味する。但し、本実施形態のフィン部の形状は体積がを一定のものに限られず、フィン部の断面積を上記のように設定しつつ体積を変化させたものでもよいことは言うまでもない。
【0029】
図4は、複合化の有無による摺動部の温度低下を比較して示す図である。
【0030】
図4に示すように、摺動面を母材のみで形成した場合と複合強化材で複合化した場合とでは、複合化した方が摺動面の熱引け性が良くなり、摺動面の温度低下の効果が大きくなる。
【0031】
また、上記熱引け性を良くする上では、ブレーキディスクをアルミニウム合金などの軽合金材料で構成し、複合強化材はセラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有する素材から構成したものが好ましい。
【0032】
[ブレーキディスクの製造方法]
図5は、本発明に係る実施形態として例示するブレーキディスクの製造方法を説明する図である。
【0033】
本実施形態では、図5に例示する鋳造用金型を用いてアルミニウム合金製のベンチレーテッドブレーキディスクを高圧鋳造(若しくは溶湯鍛造)する。
【0034】
鋳造用金型は、一対の上型1と下型2とを閉じることにより内部にキャビティ3が形成され、下型2には溶湯を充填するための湯口4と、この湯口4に連通する溶湯通路を形成するスリーブ5と、スリーブ5の内壁に摺接して溶湯を湯口4まで圧入する可動プランジャ6とを備える。溶湯は可動プランジャ6に押し上げられて湯口4からキャビティ3内に高圧で導入される。
【0035】
キャビティ3内には、冷却通風孔25を形成するための砂中子7が配置されている。
【0036】
砂中子7はディスク回転軸とスリーブ5の軸中心とが線Rに一致するようにキャビティ3内に配置され、線Rと同心の円盤状に形成されている。また、砂中子7の外周面と内周面との間には、ベンチレーション孔を形成するための複数のスリットが線Rを中心として放射状に円周方向に沿って等間隔に形成されている。
【0037】
下型2と上型1には、溶湯と複合化するために予備成形された複合強化材11が夫々配置され、各摺動面が複合化される。
【0038】
[鋳造条件]
本実施形態では、高圧鋳造法を用いて、約30.4MPaで加圧し、充填速度40mm/secで充填し、溶湯はJIS規格のAC4Cのアルミニウム合金、注湯温度約780℃、複合強化材温度700℃である。複合強化材には、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有するものを用いる。
【0039】
本実施例に用いる砂中子は、レジン量2.1〜2.3質量%、抗折力約6.5MPa、粒度指数(AFS)65〜75、平均粒径0.15mmのレジンコートシェル中子を一例とし、300〜320℃で焼成、3秒ブロー、40秒キュアして形成される。
【0040】
尚、複合強化材は、アルミナ短繊維やホウ酸アルミニウム−ウィスカの少なくともいずれかと、セラミックのSiC、TiO2,CaCO3粒子と、焼失性粉末と、水等の溶媒を撹拌して均一に混合してスラリー状とし、場合によっては、無機バインダとしてアルミナゾル等を添加し、その後、ろ過器でスラリー中の水等の液体成分を真空ポンプなどにより、吸引脱水した後、乾燥・焼結させて成形される。
【0041】
以上が本発明に係る実施の形態の説明であるが、本発明により製造されるアルミニウム合金鋳物は、上述した実施形態のような高圧鋳造法によるベンチレーテッドブレーキディスクに限られず、他の耐摩耗性及び軽量化を必要とする部品にも適用できる。また、本発明によれば、アルミニウム合金以外に、例えばマグネシウム合金等の他の軽合金鋳物にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施形態のベンチレーテッドブレーキディスクの構造を示す斜視図である。
【図2】従来のディスク構造(a)と本実施形態のディスク構造(b)とを比較して示す部分図である。
【図3】摺動面を鋳鉄材(a)とアルミニウム合金及び複合強化材(b)で形成した場合の、ブレーキディスクにおけるフィン部の内周側と外周側の各断面積と摺動部温度との関係を示す図である。
【図4】複合化の有無による摺動部の温度低下を比較して示す図である。
【図5】本発明に係る実施形態として例示するブレーキディスクの製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
1…上型
2…下型
3…キャビティ
4…湯口
5…スリーブ
6…プランジャ
7…砂中子
11…複合強化材
20…ベンチレーテッドブレーキディスク
21 ハブ取付部
22 摺動部
22a 第1摺動部
22b 第2摺動部
23、24 摺動面
25 冷却通風孔
26 フィン部
Claims (4)
- ハブ取付部と、両側に摺動面を有する摺動部と、これら摺動面間にベンチレーション孔を形成するフィン部とを有するベンチレーテッドブレーキディスクにおいて、
前記摺動部の厚さ方向から見た前記フィン部の断面積を、当該摺動部の径方向の外周側より内周側を大きく形成したことを特徴とするブレーキディスク。 - 前記ブレーキディスクは軽合金製であって、前記摺動面には耐摩耗性材料が複合化されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキディスク。
- 前記ブレーキディスクはアルミニウム合金製であることを特徴とする請求項2に記載のブレーキディスク。
- 前記耐摩耗性材料は、セラミック短繊維及びウィスカの少なくともいずれかと、セラミック粒子とを含有することを特徴とする請求項2に記載のブレーキディスク。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002303104A JP2004138153A (ja) | 2002-10-17 | 2002-10-17 | ブレーキディスク |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002303104A JP2004138153A (ja) | 2002-10-17 | 2002-10-17 | ブレーキディスク |
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---|---|
JP2004138153A true JP2004138153A (ja) | 2004-05-13 |
Family
ID=32450992
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2002303104A Withdrawn JP2004138153A (ja) | 2002-10-17 | 2002-10-17 | ブレーキディスク |
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JP (1) | JP2004138153A (ja) |
-
2002
- 2002-10-17 JP JP2002303104A patent/JP2004138153A/ja not_active Withdrawn
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