JP2004137408A - Oh基含有含フッ素共重合体からなる組成物 - Google Patents

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津田 暢彦
Ryoichi Fukagawa
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Abstract

【課題】OH基含有含フッ素共重合体を特定の重合開始剤を用いて製造して得られるOH基含有含フッ素共重合体を用いる組成物およびその組成物を硬化して得られる硬化物を提供する。
【解決手段】式:R−C(CH−O−O−CO−R(式中、Rは炭素数が3以上の炭化水素基;Rは炭素数が3〜12の炭化水素基であり、分岐構造、環状構造をとってもよい)で示される有機過酸化物を重合開始剤として用い、含フッ素オレフィンおよびOH基を含有する単量体をラジカル重合して得られるOH基含有含フッ素共重合体からなる組成物、およびその硬化物。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、OH基含有含フッ素共重合体を特定のパーオキシカルボン酸エステルを開始剤として用いて製造して得られるOH基含有含フッ素共重合体を用いる組成物およびその組成物を硬化して得られる硬化物に関する。本発明の組成物は、たとえば溶剤型塗料や粉体塗料などの塗料用またはフィルムまたはシートの成形用の組成物として有用である。
【0002】
【従来の技術】
OH基などの官能基を有する含フッ素共重合体は、優れた耐候性に加え、架橋により強固な塗膜を形成できるためコーティング用途に広く使用されている。官能基を有する含フッ素共重合体は、通常含フッ素オレフィンと官能基含有単量体のラジカル共重合によって得られ、AIBNなどのアゾ化合物、ジアシルパーオキサイド、ジカーボネート、パーオキシカルボン酸アルキルエステルなどの有機過酸化物が開始剤として使用されている。しかし、いずれも重合速度、得られた樹脂の熱安定性の点で必ずしも満足できるものではない。
【0003】
パーオキシカルボン酸アルキルエステル開始剤として、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテートが例示されている(たとえば特許文献1参照)。また、t−アミルパーピバレート(特許文献2参照)、t−ブチルパーオキシピバレート(特許文献3参照)、t−ブチルパーオキシオクタノエート(特許文献4参照)、t−ブチルパーオキシネオデカネート(特許文献5参照)が例示されている。しかし、パーオキシカルボン酸のt−ブチルエステル、t−アミルエステルを使用して得られた樹脂は、得られた樹脂溶液の安定性が低く、安定剤の添加、脱酸などの処理がなければ、樹脂溶液の粘度上昇などが生じる。
【0004】
また、開始剤としてジアシルパーオキサイドを使用する方法もある(特許文献6参照)が、反応速度が遅く生産性がわるい。
【0005】
【特許文献1】
特公昭60−21686号公報
【特許文献2】
特開平6−279549号公報
【特許文献3】
特開平3−243674号公報
【特許文献4】
特開平3−167243号公報
【特許文献5】
特開平10−158574号公報
【特許文献6】
国際公開第99/57165号パンフレット
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特定の重合開始剤を用いることにより、重合を速やかに開始させ、かつ得られる共重合体を含む塗料の安定性を高め、しかも表面特性、耐候性などに優れる塗膜を与えるOH基含有含フッ素共重合体を製造し、この共重合体を用いて各種の組成物、さらには硬化物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、式(1):
−C(CH−O−O−CO−R        (1)
(式中、Rは炭素数が3以上の炭化水素基;Rは炭素数が3〜12の炭化水素基であり、分岐構造、環状構造をとってもよい)で示される有機過酸化物を重合開始剤として用い、含フッ素オレフィンおよびOH基を含有する単量体をラジカル重合して得られるOH基含有含フッ素共重合体からなる組成物に関する。
【0008】
式(1)におけるRが、CHCHCH−または(CHC−CH−であること、また、式(1)におけるRが、−C(CH−R(式中、Rは炭素数1〜9の直鎖状、分岐鎖状または環状構造を含んでいてもよい脂肪族飽和炭化水素基)であること、さらにはRが、ネオデカニルまたは2,2−ジメチルエチルであることが好ましい。
【0009】
本発明の組成物は溶剤型でも粉体型でもよく、塗料用にまたは成形用に用いてもよい。また硬化剤を含んでも含んでいなくてもよい。
【0010】
本発明は前記組成物を硬化させて得られる硬化物または、電子線硬化させて得られる硬化物、たとえば塗膜、フィルムまたはシートにも関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の組成物におけるOH基含有含フッ素共重合体の製造法について説明する。この製造に使用する有機過酸化物は、式(1):
−C(CH−O−O−CO−R        (1)
(式中、Rは炭素数3以上の炭化水素基;Rは炭素数が3〜12の炭化水素基であり、分岐構造、環状構造をとってもよい)で示されるパーオキシカルボン酸のエステルである。
【0012】
としては、CHおよびCHCH、すなわちR−C(CH−部分がt−ブチルおよびt−アミル以外の炭素数3以上の炭化水素基であればよいが、特に脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基、さらには炭素数3〜12の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素基または置換されていてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素基が重合速度が速く、得られた樹脂の分子量分布がシャープになる点で好ましい。
【0013】
具体的には、たとえば、CHCHCH−、(CHC−CH−などの直鎖または分岐鎖状脂肪族炭化水素基;シクロヘキシルなどの環状脂肪族炭化水素基;フェニルなどの芳香族炭化水素基などが例示できる。R−C(CH−部分としては、t−ヘキシル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、1−シクロヘキシルー1−メチルエチル基、クミル基となる。
【0014】
特にRとしてはCHCHCH−または(CHC−CH−が経済面で有利な重合温度に設定できること、および得られた樹脂から作製された塗膜の耐候性の点で優れることから好ましい。
【0015】
他方のパーオキシカルボン酸を構成するRは、炭素数が3〜12の炭化水素基であり、分岐構造、環状構造をとってもよいが、特に−C(CH−R(Rは炭素数1〜9の直鎖状、分岐鎖状または環状構造を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基)の構造をもつものが特別な樹脂洗浄工程を経なくても、光沢、平滑性、耐候性に優れた塗膜を形成しうる塗料組成物を調製できる点で好ましい。
【0016】
パーオキシカルボン酸の具体的としては、パーオキシ2−エチルヘキサン酸(R:2−エチルヘキシル基)、パーオキシネオデカン酸(R:ネオデカニル基)、パーオキシイソブタン酸(R:2,2−ジメチルエチル基)、パーオキシピバリン酸(R:2,2−ジメチルプロピル基)、パーオキシラウリン酸(R:ラウリル基)、パーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサン酸(R:3,5,5−トリメチルヘキシル基)などのパーオキシ脂肪族カルボン酸;パーオキシ安息香酸(R:ベンジル基)などのパーオキシ芳香族カルボン酸があげられる。
【0017】
これらのうち得られた樹脂溶液を直接乾燥して回収された樹脂を用いて粉体塗料を調製した場合に、平滑で、光沢が高く、耐候性に優れた塗膜が得られることから、パーオキシネオデカン酸(R:ネオデカニル基)、パーオキシイソブタン酸(R:2,2−ジメチルエチル基)が好ましい。
【0018】
有機過酸化物の具体例としては、クミルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネートなどのパーオキシネオデカン酸エステル;クミルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシピバレート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレートなどのパーオキシピバリン酸エステル;クミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエートなどのパーオキシ2−エチルヘキサン酸エステル;クミルパーオキシイソブチレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソブチレート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソブチレートなどのパーオキシイソブタン酸エステル;クミルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエートなどのパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサン酸エステル;クミルパーオキシラウレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシラウレート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシラウレートなどのパーオキシラウリン酸エステル;クミルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシベンゾエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシ安息香酸エステルなどがあげられる。
【0019】
これらのうち特に、クミルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、クミルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシピバレート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、クミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエートが、10時間半減期が40℃から80℃の範囲であり、反応熱の制御および取扱いの安全面から好ましい。これらの化合物のうち、特に1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシピバレート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエートなどが得られた樹脂の熱安定性の面から好ましい。
【0020】
なお、前記10時間半減期温度とは、ベンゼン中0.1モル/リットルの濃度で10時間後に有機過酸化物濃度が半分となる温度であり、熱的特性を表わす指標の1つである。
【0021】
本発明における製造法は、式(1)で示される特定の有機過酸化物を重合開始剤として用いて、含フッ素オレフィン(a)およびOH基を含有する単量体(b)、さらに目的に応じてこれらと共重合可能な共単量体(c)をラジカル共重合する方法である。
【0022】
本発明において共重合すべき含フッ素オレフィン(a)としては、式(2):
CX=CX      (2)
(式中、X、XおよびXは同じかまたは異なり、いずれも水素原子、ハロゲン原子、CHまたはCF;Xは水素原子、ハロゲン原子、CH、CFまたは−OR(Rは炭素数1〜8のフッ素原子で置換されていてもよい炭化水素基;ただしX、X、XおよびXのいずれか1つはフッ素原子またはフッ素原子を含む基である)で示される単量体があげられる。
【0023】
より具体的には、たとえばテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)などのパーフルオロオレフィンのほか、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ペンタフルオロプロピレンなどが例示され、これら含フッ素オレフィンは2種以上を併用することもできる。
【0024】
OH基を有する単量体(b)としては、たとえばヒドロキシアルキルビニルエーテル類、ヒドロキシカルボン酸ビニルエステル類、ヒドロキシアリルエーテル類、ヒドロキシアリルエステル類、さらにはこれらの部分的にフッ素置換された単量体などの1種または2種以上があげられる。
【0025】
より具体的には、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類としては、たとえばヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテルなど;ヒドロキシカルボン酸ビニルエステル類としては、たとえばヒドロキシ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピオイン酸ビニル、ヒドロキシ酪酸ビニル、ヒドロキシ吉草酸ビニル、ヒドロキシイソ酪酸ビニル、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸ビニルなど;ヒドロキシアリルエーテル類としては、たとえばヒドロキシエチルアリルエーテル、ヒドロキシプロピルアリルエーテル、ヒドロキシブチルアリルエーテル、ヒドロキシイソブチルアリルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルアリルエーテルなど;ヒドロキシアリルエステル類としては、たとえばヒドロキシエチルアリルエステル、ヒドロキシプロピルアリルエステル、ヒドロキシブチルアリルエステル、ヒドロキシイソブチルアリルエステル、ヒドロキシシクロヘキシルアリルエステルなど;さらにはこれらの部分的にフッ素置換された単量体などがあげられ、これらの2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、本発明に用いる含フッ素共重合体に、本発明の目的を損なわない範囲で、上記必須単量体のほかにこれらと共重合可能な共単量体(c)を共重合させることができる。かかる共単量体(c)としては、含フッ素オレフィンと共重合可能な程度に活性な不飽和基を有し、塗膜の耐候性を著しく損わないエチレン性不飽和化合物が例示できる。
【0027】
共単量体(c)の具体例としては、たとえばエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、吉草酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;エチルアリルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテルなどのアリルエーテル類;エチルアリルエステル、プロピルアリルエステル、ブチルアリルエステル、イソブチルアリルエステル、シクロヘキシルアリルエステルなどのアリルエステル類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのオレフィン類;エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル類;これらの部分的にフッ素置換された単量体などがあげられる。
【0028】
また、カルボキシル基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基などのOH基以外の官能基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合することもできる。
【0029】
カルボキシル基を有する単量体としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、コハク酸、無水コハク酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのα,β−不飽和カルボン酸などのほか、パーフルオロブテン酸などのフッ素置換単量体などがあげられる。
【0030】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、たとえばグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテルなどがあげられる。
【0031】
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、たとえばアミノアルキルビニルエーテル、アミノアルキルアリルエーテルなどがあげられる。
【0032】
アミド基を有するエチレン性不飽和単量体としては、たとえば(メタ)アクリルアミド、メチロールアクリルアミドなどがあげられる。
【0033】
ニトリル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、たとえば(メタ)アクリロニトリルなどがあげられる。
【0034】
かかる共単量体(c)は、1種または2種以上を選択して使用してもよい。
【0035】
より好ましい共単量体(c)としては、フルオロオレフィンとの共重合性に優れるビニル系単量体、アリル系単量体またはオレフィン類が使用できる。また、ビニル系またはアリル系のアルキルエステル類あるいはアルキルエーテル類を使用する場合、アルキル基としては炭素数2〜10程度の直鎖状、分岐鎖状または脂環状のアルキル基を好適に使用することができる。
【0036】
かかる製造法は、上記重合開始剤を用いて、単量体(a)および(b)、さらに要すれば共単量体(c)を乳化重合、懸濁重合、溶液重合などの公知の重合方法で実施することができる。
【0037】
重合溶媒としては、たとえばトルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール系溶剤などを単独であるいは混合物として使用することができる。また、フッ素系溶剤としては、炭素数が1〜4の炭化水素の一部をフッ素で置換された溶剤を使用することができる。これらの溶剤は、重合系に応じて適宜選択して単独であるいは必要に応じて混合物として使用すればよい。
【0038】
重合温度は、重合開始剤の種類によって最適な温度が決定されるが、通常0〜100℃、特に40〜80℃程度にすることが好ましい。
【0039】
反応圧力も選択する単量体の組み合わせによって最適な圧力が設定されるが、通常0.1〜5MPa、特に0.5〜3MPa程度に設定することが好ましい。
【0040】
また本発明の重合法は、回分式、連続式いずれの方法にも適用することができる。
【0041】
そのほか、連鎖移動剤、分散安定剤、乳化剤、受酸剤などのラジカル重合に通常使用される添加剤も使用でき、また通常のラジカル重合に採用される重合条件も採用できる。
【0042】
含フッ素オレフィン(a)、OH基含有含フッ素単量体(b)、要すれば共単量体(c)の組合せ、組成割合は、単量体の共重合性や目的とする特性などによって適宜選定することができる。
【0043】
かくして得られるOH基含有含フッ素共重合体(A)の分子量は、重量平均分子量で1,000〜5,000,000、好ましくは5,000〜100,000である。好ましい含フッ素オレフィン(a)単位、OH基含有単量体(b)単位およびその他の共単量体(c)単位の共重合比は、(a)/(b)/(c)(モル%比)で5〜95/0.1〜50/0〜70、好ましくは10〜60/1〜30/0〜60である。
【0044】
またOH基含有含フッ素共重合体(A)の非限定的な例としては、クロロトリフルオロエチレン/エチルビニルエーテル/ヒドロキシブチルビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン/シクロヘキシルビニルエーテル/ヒドロキシブチルビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン/エチルビニルエーテル/シクロヘキシルビニルエーテル/ヒドロキシブチルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/バーサティック酸ビニル/イソブチレン/安息香酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/イソブチレン/安息香酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/エチレン/p−t−ブチル安息香酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン/p−t−ブチル安息香酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/エチレン/p−t−ブチル安息香酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル共重合体などが例示される。
【0045】
本発明における製造法で得られるOH基含有含フッ素共重合体(A)は、OH基を含有しているので公知の硬化剤と組み合わせて架橋構造を形成することができ、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性などの点で優れた特性を発揮でき、またフッ素原子を有しているので耐候性、耐薬品性、耐熱性などの優れた特性を有しており、これらの特性を生かしてたとえば各種の塗料用組成物や成形用組成物の樹脂成分や表面保護フィルムなどのフィルムまたはシート、さらには各種の構造材料として有用である。
【0046】
すなわち本発明は、前記製造法で得られたOH基含有含フッ素共重合体(A)を含む組成物、特に溶剤型組成物、粉体型組成物、さらには塗料用組成物および成形用組成物にも関する。
【0047】
OH基含有含フッ素共重合体(A)を組成物の樹脂成分として使用する場合、耐候性や汚染付着防止性、耐薬品性などを向上させる点から、共重合体(A)におけるフッ素含有量は5重量%以上、好ましくは10重量%以上とすることが望ましい。なお、上限は個別の共重合体によって決まる。
【0048】
また、OH基を硬化部位として使用し硬化型の組成物とする場合は、OH基の含有量を0.1〜50モル%、好ましくは1〜30モル%とすることが望ましい。
【0049】
本発明の溶剤型組成物は、OH基含有含フッ素共重合体(A)と溶剤(B)とを含む。
【0050】
溶剤(B)としては、たとえばフッ素系樹脂の塗料組成物で使用される従来公知の溶剤が使用できる。具体的には、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール系などを単独であるいは混合物として使用することができる。
【0051】
塗料組成物中の共重合体(A)の濃度は、1〜85重量%、好ましくは10〜80重量%である。
【0052】
硬化型の溶剤型組成物とする場合は、さらに硬化剤(C)を配合してもよい。硬化剤としては、フッ素系樹脂の組成物、たとえば塗料用組成物で使用される従来公知の硬化剤、たとえばメラミン系硬化剤またはイソシアネート系硬化剤が使用できる。具体的には、メチルエーテル化、ブチルエーテル化、イソブチルエーテル化などのアルキルエーテル化されたメラミン樹脂のほか尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのメラミン系硬化剤;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどのビューレットタイプ付加物、イソシアヌル環タイプ付加物、多価アルコール付加物などのイソシアネート化合物、さらにはこれらイソシアネート化合物のブロック化物などのイソシアネート系硬化剤があげられる。ブロック化剤としては、フェノール系、アルコール系、オキシム系、ラクタム系、活性メチレン系などの通常用いられるものがあげられる。
【0053】
硬化剤(C)の配合量は、通常、共重合体(A)100重量部に対し、2〜150重量部、好ましくは3〜100重量部である。
【0054】
さらに、溶剤型組成物、たとえば溶剤型塗料組成物で配合される公知の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合してもよい。そうした添加剤としては、たとえば顔料、顔料分散剤、レベリング剤、充填剤、紫外線防止剤、消泡剤、硬化促進剤などがあげられる。
【0055】
本発明の溶剤型組成物の調製法は特に限定されず、上記成分を溶剤に混合すればよいが、重合を溶液重合法で行なう場合、得られた共重合体(A)を含む重合反応液について濃度調整を行ない、ついで各種の添加剤を添加して塗料を調製することもできる。また、乳化あるいは懸濁重合で行なう場合、得られる重合反応液から、重合溶媒の除去、ついで洗浄、乾燥工程を経て共重合体を粉末として分離し、再度溶剤中に共重合体粉末を溶解あるいは分散することによっても、同様に溶剤型組成物を調製することができる。
【0056】
塗布方法としては、ロールコート法、スプレー法、ディッピング法、スピンコート法などの従来公知の方法が採用できる。また、フィルムやシートの成形法としては、従来公知のフィルムやシートの成形法、たとえばキャスティング法などが採用される。
【0057】
本発明の溶剤型組成物は、貯蔵時の安定性、特に粘度変化が少ないという点で優れている。
【0058】
本発明の組成物を粉体型とする場合は、OH基含有含フッ素共重合体(A)の粉末と、必要に応じて配合される硬化剤(C)、さらには公知の各種添加剤とからなる。硬化剤(C)としては、たとえばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどのビューレットタイプ付加物、イソシアヌル環タイプ付加物、多価アルコール付加物などのイソシアネート化合物をフェノール系、アルコール系、オキシム系、ラクタム系、活性メチレン系などの公知のブロック化剤でブロックした公知のイソシアネート系硬化剤が使用できる。
【0059】
硬化剤(C)の配合量は、通常、共重合体(A)100重量部に対し、2〜150重量部、好ましくは3〜100重量部である。
【0060】
その他の添加剤としては、たとえば顔料、顔料分散剤、レベリング剤、充填剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、消泡剤、ガス抜き剤、硬化促進剤、電荷調整剤、流動性調整剤などがあげられ、本発明の効果を損なわない範囲で使用してもよい。
【0061】
粉体型組成物の調製は、共重合体(A)の製造法として溶液重合法を採用している場合、得られた重合反応液から重合溶媒を除去した後、必要に応じて共重合体を洗浄し、乾燥後、要すれば硬化剤や各種添加剤を加え、さらに必要に応じて粉砕などを施して粒度を調整して粉体型組成物を調製することができる。また、共重合体(A)の製造法を乳化あるいは懸濁重合で行なう場合、得られる重合反応液から、重合溶媒の除去、ついで洗浄、乾燥工程を経て共重合体を粉末として分離し、必要に応じて硬化剤や各種添加剤を加え、さらに粉砕などにより粒度を調整して粉体型組成物とすることができる。
【0062】
粉体型組成物における共重合体(A)の粒径は、数平均粒子径で10〜400μm、通常30〜200μmの範囲から選択すればよい。
【0063】
塗料用組成物の場合の塗装方法は、静電塗装法、流動床などの公知の塗装方法が採用できるが静電塗装が好ましい。また成形用組成物の場合、公知の粉体成形法、たとえば圧縮成形法などが採用される。
【0064】
本発明の粉体型組成物は、保存安定性という点で優れている。
【0065】
なお、本発明で使用する硬化剤(C)には、光の作用により反応して酸を発生し硬化反応を開始させる光酸発生剤は含まない。
【0066】
本発明はさらに上記組成物を硬化して得られる硬化物にも関する。硬化は、通常の方法、たとえば硬化剤を含む場合は塗布または成形後放置することにより、または加熱することにより行なうことができる。また、硬化剤を配合しない場合は電子線を照射する方法により硬化させることもできる。本発明の硬化物は、耐候性、耐薬品性、汚染付着防止性、表面平滑性、硬度、表面光沢、耐衝撃性などに優れている。
【0067】
硬化物の非限定的な例示としては、組成物が塗料用組成物の場合は塗膜であり、成形用組成物の場合はフィルムまたはシートなどである。これらフィルムまたはシートは各種物品のカバーフィルムやシートとして、あるいはライニングとして有用である。
【0068】
【実施例】
つぎに本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお実施例中の「%」は特記しない限り、重量%である。
【0069】
製造例1(本発明)
容量4Lのステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水760g、炭酸カリウム7gを仕込んだ後、窒素加圧、脱気を3回繰り返し、溶存酸素を除いた。減圧下に、HFC245faを594g、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)を318g、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)を3.7g、p−t−ブチル安息香酸ビニル(tBVBz)を7.3g仕込み内温を35℃にした。さらにTFE/エチレン(Et)の82/18モル%比の単量体混合物を圧力が1.0MPa・Gになるまで供給し、ついで日本油脂(株)製のパーオクタND(商品名。1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネートの70%トルエン溶液)14.0gを仕込み反応を開始した。反応と共に圧力の低下が起こるので、槽内圧力を1.0MPa・Gに保ちつつ、TFE/Et/HFPの45/39/16モル%比の単量体混合物65g、およびHBVE13.3g、tBVBz27.6gを6時間かけて連続供給した。6時間後に槽内を常温、常圧に戻し、反応を終了とした。得られた固形分を洗浄、乾燥し、含フッ素共重合体130gの白色粉末を得た。
【0070】
得られた共重合体は、TFE/Et/HFP/HBVE/tBVBz=32/34/12/9/13(モル%比)の共重合体であった。また、GPCによって測定したスチレン換算数平均分子量は17000であり、水酸基価は53mgKOH/g、ガラス転移温度は54℃であった。
【0071】
以上の測定はつぎの方法で行なった(他の実施例および比較例も同じ)。
組成分析:
H−NMR分析、19F−NMR分析、元素分析で得られたデータを解析する。
【0072】
分子量分析:
トーソー社製TSK−GEL G4000HXL、G3000HXLを装着したトーソー社製HLC8010を使用し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量を求めた。
測定条件
キャリアー;テトラヒドロフラン
流速;1ml/min
カラム温度;40℃
試料;測定する樹脂の0.2%THF溶液数平均分子量
【0073】
水酸基価:
上記で求めた組成より計算した。
【0074】
ガラス転移温度:
ASTM E1356−98に従い、パーキンエルマー製のDSC測定装置7シリーズを使用して中点法によってTgを決定した。
測定条件
昇温速度;10℃/min
試料量;10mg
ヒートサイクル;25℃〜150℃、昇温、冷却、昇温
【0075】
製造例2〜3(比較用)
製造例2では重合開始剤として日本油脂(株)製のパーロイルIB(商品名。イソブチルパーオキサイドの70%トルエン溶液)を、製造例3では重合開始剤として日本油脂(株)製のパーロイルNPP(n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%トルエン溶液を表1に示す量用い、また表1に示す重合温度、TFE/ET/HFP混合モノマーの供給量、HBVEおよびtBVBzの連続仕込みの量に変更したほかは製造例1と同様にして、OH基含有含フッ素共重合体を得た。重合時間および得られた共重合体の組成と得量、分子量、水酸基価、ガラス転移温度を表1に示す。
【0076】
【表1】
Figure 2004137408
【0077】
表1から明らかなとおり、本発明の開始剤構造をもつパーオクタND(製造例1)と比較して、ジアシル構造のパーロイルIB(製造例2)は重合速度が遅く、パーオキシジカーボネート構造のパーロイルNPP(製造例3)では重合の過程で溶剤に不溶性となってしまった。
【0078】
製造例4(本発明)
容量3Lのステンレススチール製オートクレーブに窒素加圧、真空引きを3回繰り返したのち、減圧下にアセトン660gを仕込み、さらにHFP653g、HBVE6.8g、tBVBz10.4g、TFE346g、エチレン(Et)19gを圧入した。槽内温度は75℃に保ち、このときの槽内圧力は2.5MPa・Gであった。引き続き重合開始剤として日本油脂(株)製のパーヘキシルO(商品名。t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)を6.9g窒素で圧入して反応を開始した。反応の進行に伴い、内圧の低下が見られるので、TFE/ET/HFPの50/35/15モル%比の単量体混合物を槽内圧力を2.5MPa・Gに保つように連続供給した。さらに、HBVE23g、tBVBz50gを2時間かけて連続供給した。2時間後に、単量体の供給を停止し、未反応単量体を排気して槽内を常圧にもどした。得られた共重合体溶液を5Lのメタノールで再沈後、濾過によって上澄みを除き、さらに2Lの水で洗浄、脱水後、55℃で12時間乾燥して、白色の共重合体粉末220gを得た。得られた共重合体の組成、水酸基価、ガラス転移温度、分子量を表2に示す。
【0079】
製造例5〜8(本発明)および製造例9、10(比較用)
製造例4の重合開始剤と重合温度を表2に示すように変更した以外は製造例4と同様にして製造例5〜10のOH基含有含フッ素共重合体を製造した。得られた共重合体の組成、水酸基価、ガラス転移温度、分子量を表2に示す。
【0080】
使用した重合開始剤は以下のとおりである。
製造例5:パーオクタO(商品名。日本油脂(株)製の1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート(純度90%))
製造例6:パーヘキシルPV(商品名。日本油脂(株)製のt−ヘキシルパーオキシピバレートの70%トルエン溶液)
製造例7:パーヘキシルND(商品名。日本油脂(株)製のt−ヘキシルパーオキシネオデカネートの70%トルエン溶液)
製造例8:パークミルND(商品名。日本油脂(株)製のクミルパーオキシネオデカネートの70%トルエン溶液)
製造例9:パーブチルO(商品名。日本油脂(株)製のt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)
製造例10:トリゴノックス121(商品名。化薬アクゾ社製のt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)
【0081】
【表2】
Figure 2004137408
【0082】
表2の結果から明らかなとおり、製造例9で使用したパーブチルO、製造例10で使用したトリゴノックス121は、式(1)の本発明の重合開始剤を使用した場合と比較して重合速度が遅く、さらに得られた樹脂の重量平均分子量が増加していることが判る。
【0083】
実施例1(溶剤型塗料組成物)
製造例4〜10でそれぞれ得られた共重合体50gを50gの酢酸ブチルに溶解し、透明な共重合体溶液を得た。この共重合体溶液26gに顔料として酸化チタン26g、さらに酢酸ブチル10gを加え、50gのガラスビーズとともに分散し、濾過してガラスビーズを除きミルベースを調製した。得られたミルベース63gにさらに共重合体溶液37gを添加し、オーバーヘッド攪拌機で均一になるまで混合し、塗料組成物1−1〜1−7(組成物1−6および1−7は比較用)を調製した。
【0084】
得られた各塗料組成物を50℃の恒温槽中に2週間静置し、性状の変化を目視にて確認した。製造例9、製造例10(比較用)の共重合体を用いて調製した塗料組成物1−6、1−7は、ゲル状になっており、塗布できない状態であった。
【0085】
ついで、塗料組成物1−6および1−7以外の塗料組成物(1−1〜1−5)50gに硬化剤としてタケネートD−140N(武田薬品工業(株)製のイソシアネート系硬化剤)10gを加え、均一になるまで攪拌後、10ミルのドクターブレードを用いて、リン酸亜鉛処理アルミ板上に塗布し、室温で2週間乾燥して試験板を作製した。この試験板について以下の項目を測定した。結果を表3に示す。
【0086】
膜厚:
ケット社製、渦巻き電流式膜厚測定器LZ−330を使用して測定。
【0087】
表面光沢:
ASTM D523−89に従い、60度の反射角を測定する。
【0088】
耐候性:
岩崎電気(株)製アイスパーUVテスターW−13型(Light/Dew/Rest=11/11/1HRを1サイクルとする)にて促進耐候性試験を1000時間行なったのち、白塗料(顔料入り)の塗板については、光沢保持率(初期光沢に対する試験後の光沢の割合%)、および色彩色差計(ミノルタ(株)製のCR300)で試験前後の色差(ΔE)を測定する。
【0089】
【表3】
Figure 2004137408
【0090】
表3の結果から明らかなとおり、本発明の開始剤を用いた樹脂溶液は、貯蔵安定性に優れていることがわかる。
【0091】
実施例2(粉体塗料組成物)
製造例4〜10で得られた共重合体50gおよび、硬化剤として(ベスタゴンB−1530(商品名。ヒュルス社製のカプロラクタムブロックイソシアネート)9.5g、顔料としてタイピュアR−960(商品名。デュポン社製の酸化チタン)25.5g、表面調整剤として(モダフロー(商品名。モンサント社製の低分子量アクリル共重合体)1.2g、および脱泡剤としてベンゾイン0.3gをヘンシェルミキサー((株)愛工舎製作所製)により、3分間かけて均一に混合した。ついで、組成物を120℃で二軸溶融混練機(プリズム社製の16mmツインエクストルーダー)を使用して溶融混練し、冷却後、万能粉砕機(IKA社製)で室温で3分間粉砕し、得られた粉体を140メッシュのスクリーンを通して分級し、粉体塗料組成物2−1〜2−7を得た(組成物2−6、2−7は比較用)。さらに、得られた粉体塗料組成物をリン酸亜鉛処理アルミ基材(厚さ1mm)上にコロナ式粉体塗装ガン(小野田セメント(株)製のGX3300)を用い、印加電圧40kVで塗装し、直後に200℃で15分間焼き付けを行ない、塗装板を得た。この塗装板に対して以下の試験を行なった。特に記載のない場合、試験板は塗装後、25℃にて24時間以上静置した後、25℃で試験を行なった。結果を表4に示す。
【0092】
膜厚、表面光沢および耐候性については、実施例1と同様に測定した。また、鉛筆硬度、表面平滑性および耐衝撃性はつぎの方法で測定し、評価をした。
【0093】
鉛筆硬度:
ASTM D3363−00に従って測定する。
【0094】
表面平滑性:
蛍光灯を塗膜に写して見たとき、塗膜表面に映る蛍光灯の形(ゆがみなど)を目視で評価する。
A:ゆがみがない。
B:若干ゆがみがある。
C:ゆがみがある。
D:大きくゆがんでいる。
【0095】
耐衝撃性:
ガードナー社製の耐衝撃性評価装置(Impact Tester)を用い、塗膜表面に、1.6mm径の鉄製のシリンダーを所定の高さから落とし、衝撃部位の周囲にクラックの生じたときのエネルギー(J)で示す。
【0096】
【表4】
Figure 2004137408
【0097】
表4の結果から明らかなとおり、本発明の開始剤を使用して得られた樹脂より調製された塗膜は、表面平滑性、表面光沢、耐衝撃性にすぐれていることがわかる。
【0098】
実施例3(粉体塗料組成物)
製造例4〜10において、得られた共重合体溶液を、メタノール再沈を行わず、直接、アルミトレー上に入れ、送風乾燥機中で150℃で30分間乾燥して、板状の樹脂を得た。この樹脂を冷却後、万能粉砕機(IKA社製)で室温で3分間粉砕し、粉末状の樹脂を得た。この樹脂を用いて実施例2と同様に、粉体塗料組成物3−1〜3−7を調製し、塗布し、得られた塗板の塗膜特性を測定した。結果を表5に示す。
【0099】
【表5】
Figure 2004137408
【0100】
表5の結果から明らかなとおり、比較用樹脂を用いた系では、表面平滑性がさらに低下していることがわかる。また、−C(CH−Rなる構造をRに有する開始剤を使用した系では、メタノール洗浄の工程を入れない場合には、より光沢の高い塗膜が得られることが判る。
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、重合を速やかに開始させ、かつ得られる共重合体を含む塗料の安定性を高め、しかも表面特性、耐候性などに優れる塗膜を与えるOH基含有含フッ素共重合体を製造する方法、および該OH基含有含フッ素共重合体を用いた溶剤型塗料、粉体塗料を提供するという効果が奏される。

Claims (12)

  1. 式(1):
    −C(CH−O−O−CO−R        (1)
    (式中、Rは炭素数が3以上の炭化水素基;Rは炭素数が3〜12の炭化水素基であり、分岐構造、環状構造をとってもよい)で示される有機過酸化物を重合開始剤として用い、含フッ素オレフィンおよびOH基を含有する単量体をラジカル重合して得られるOH基含有含フッ素共重合体からなる組成物。
  2. 式(1)におけるRが、CHCHCH−または(CHC−CH−である請求項1記載の組成物。
  3. 式(1)におけるRが、−C(CH−R(式中、Rは炭素数1〜9の直鎖状、分岐鎖状または環状構造を含んでいてもよい脂肪族飽和炭化水素基)である請求項1または2記載の組成物。
  4. 式(1)におけるRが、ネオデカニルまたは2,2−ジメチルエチルである請求項3記載の組成物。
  5. 溶剤型である請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. 粉体型である請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  7. 塗料用である請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
  8. 成形用である請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
  9. 硬化剤を含む請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の組成物を硬化させて得られる硬化物。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載の組成物を電子線硬化させて得られる硬化物。
  12. 塗膜、フィルムまたはシートである請求項10または11記載の硬化物。
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