JP2004136657A - 液体吐出装置及びその製造方法 - Google Patents

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樋口 馨
Kazuhiro Murata
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Hiroshi Yokoyama
横山 浩
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Abstract

【課題】 本発明は、従来にない微小液滴を形成することを目的とする。
【解決手段】 帯電した溶液の液滴を基材に吐出する液体吐出機構26であって、液滴の吐出を受ける受け面を有する基材Kにその先端部を対向させて配置されると共に当該先端部から液滴を吐出する先端部の内部直径が30[μm]以下のノズル21と、このノズル21内に溶液を供給する溶液流路27と、ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電極28と、を備え、ノズル21を絶縁破壊強度3[kV/mm]以上の材料で形成した。
【選択図】   図11

Description

 本発明は、基材に液体を吐出する液体吐出装置及びその製造方法に関する。
 従来のインクジェット記録方式としては、圧電素子の振動によりインク流路を変形させることによりインク液滴を吐出させるピエゾ方式、インク流路ないに発熱体を設け、その発熱体を発熱させて気泡を発生させ、気泡によるインク流路内の圧力変化に応じてインク液滴を吐出させるサーマル方式、インク流路内のインクを帯電させてインクの静電吸引力によりインク液滴を吐出させる静電吸引方式が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
 また、従来例としての特許文献3には、平面上に設けられた貫通穴を液滴の吐出ノズルとし、その周囲に撥水膜を設けるインクジェットヘッド及びその製造方法が記載されている。
特開平8−238774号公報(第1図) 特開2000−127410号公報(第1図) 特開平11−277747号公報 (第2図及び第3図)
 しかしながら、上記各従来例には以下の問題あった。
(1)微小液滴形成の限界と安定性
 ノズル径が大きいため、ノズルから吐出される液滴の形状が安定しなく、且つ液面の微小化に限界がある。
(2)高印加電圧
 微小液滴の吐出のためには、ノズルの吐出口の微細化を図ることが重要因子となってくるが、従来の静電吸引方式の原理では、ノズル径が大きいことにより、ノズル先端部の電界強度が弱く、液滴を吐出するのに必要な電界強度を得るために、高い吐出電圧(例えば2000[V]に近い非常に高い電圧)を印加する必要があった。従って、高い電圧を印加するために、電圧の駆動制御が高価になり、さらに、安全性の面からも問題があった。
 そこで、微小液滴を吐出可能な液体吐出装置を提供することを第一の目的とする。また同時に、安定した液滴を吐出することが可能な液体吐出装置を提供することを第二の目的とする。さらに、印加電圧を低減することが可能な液体吐出装置を提供することを第三の目的とする。
 また、従来例としての特許文献3には、平面上に並んで複数設けられた貫通穴を液滴の吐出ノズルとしており、液滴の微小化を実現するための構成ではなかった。従って、液滴の微小化を図ること、及びそのような液体吐出装置の製造を行うことができなかった。
 そこで、本発明は、前述した目的に加えて、微小液滴の吐出を行うことが可能な液体吐出装置の円滑な製造を図ることを、第四の目的とする。
 請求項1記載の発明は、帯電した溶液の液滴を基材に吐出する液体吐出装置であって、溶液を収容する溶液室と、先端部から溶液室に収容されている溶液を吐出する先端部の内部直径が30[μm]以下のノズルと、ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段と、を備え、ノズルの絶縁破壊強度が10[kV/mm]以上である、という構成を採っている。
 また、請求項4記載の発明は、帯電した溶液の液滴を基材に吐出する液体吐出装置であって、溶液を収容する溶液室と、先端部から溶液室に収容されている溶液を吐出する先端部の内部直径が30[μm]以下のノズルと、ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段と、を備え、ノズルを絶縁破壊強度が10[kV/mm]以上の材料で形成した、という構成を採っている。
 以下、ノズル径という場合には、液滴を吐出する先端部におけるノズルの内部直径(ノズルの先端部の内部直径)を示すものとする。なお、ノズル内の液体吐出穴の断面形状は円形に限定されるものではない。例えば、液体吐出穴の断面形状が多角形、星形その他の形状である場合にはその断面形状の外接円が30[μm]以下となることを示すものとする。以下、ノズル径或いはノズルの先端部の内部直径という場合において、他の数値限定を行っている場合にも同様とする。また、ノズル半径という場合には、このノズル径(ノズルの先端部の内部直径)の1/2の長さを示すものとする。
 本発明において、「基材」とは吐出された溶液の液滴の着弾を受ける対象物をいい材質的には特に限定されない。従って、例えば、上記構成をインクジェットプリンタに適応した場合には、用紙やシート等の記録媒体が基材に相当し、導電性ペーストを用いて回路の形成を行う場合には回路が形成されるべきベースが基材に相当することとなる。
 また、上記各構成において、「絶縁破壊強度」とは、JIS-C2110で記載されている「絶縁破壊の強さ」と同義であり、同JISに記載されている測定方法により測定される値をいう。
 上記各構成にあっては、ノズルの先端部に基材の液滴の受け面が対向するように、ノズル又は基材が配置される。これら相互の位置関係を実現するための配置作業は、ノズルの移動又は基材の移動のいずれにより行っても良い。
 そして、溶液供給手段により液体吐出ヘッド内に溶液が供給される。ノズル内の溶液は吐出を行うために帯電した状態にあることが要求される。なお、溶液の帯電に必要な電圧印加を行う帯電専用の電極を設けても良い。
 そして、ノズル内において溶液が帯電することにより電界が集中し、溶液はノズル先端部側への静電力を受け、ノズル先端部において溶液が盛り上がった状態(凸状メニスカス)が形成される。このとき、ノズルは絶縁破壊強度10[kV/mm]以上の材料で形成されているので、当該先端部からの放電が効果的に抑制され、溶液の電荷のチャージが効果的に行われる。そして、溶液の静電力が凸状メニスカスにおける表面張力を上回ることにより、凸状メニスカスの突出先端部から溶液の液滴が基材の受け面に対して飛翔し、基材の受け面上には溶液のドットが形成される。
 上記構成にあっては、ノズルを従来にない超微細径とすることでノズル先端部に電界を集中させて電界強度を高めることに特徴がある。ノズルの小径化に関しては後の記載により詳述する。かかる場合、ノズルの先端部に対向する対向電極がなくとも液滴の吐出を行うことが可能である。例えば、対向電極が存在しない状態で、ノズル先端部に対向させて基材を配置した場合、当該基材が導体である場合には、基材の受け面を規準としてノズル先端部の面対称となる位置に逆極性の鏡像電荷が誘導され、基材が絶縁体である場合には、基材の受け面を規準として基材の誘電率により定まる対称位置に逆極性の映像電荷が誘導される。そして、ノズル先端部に誘起される電荷と鏡像電荷又は映像電荷間での静電力により液滴の飛翔が行われる。
 但し、本発明の構成は、対向電極を不要とする場合には、当該対向電極の対向面に沿わせた状態で基材を配置すると共に対向電極の対向面がノズルからの液滴吐出方向に垂直に配置されることが望ましく、これにより、ノズル−対向電極間での電界による静電力を飛翔電極の誘導のために併用することも可能となるし、対向電極を接地すれば、帯電した液滴の電荷を空気中への放電に加え、対向電極を介して逃がすことができ、電荷の蓄積を低減する効果も得られるので、むしろ併用することが望ましい構成といえる。
 請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、ノズルの絶縁破壊強度が21[kV/mm]以上である、という構成を採っている。
 また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明と同様の構成を備えると共に、絶縁膜を絶縁破壊強度21 [kV/mm]以上の材料で形成した、という構成を採っている。
 上記各構成では、請求項1又は4記載の発明と同様の動作が行われると共に、ノズルがより高い絶縁破壊強度となるので、電界の集中時において、より効果的に電荷がチャージされ、迅速に液滴の吐出が行われる。
 また、請求項3のように、ノズルの絶縁破壊強度を30 [kV/mm]以上、請求項6のように、ノズルを絶縁破壊強度を30 [kV/mm]以上の材料で形成することが好ましい。
 請求項13記載の発明は、請求項1から12いずれかに記載の発明と同様の構成を備えると共に、ノズルを形成するノズル形成部と、溶液室を形成する溶液室形成部と、略平板状のベース部とがその順番で積層状態で並んで配置されると共に、吐出電極が、溶液室形成部とノズル形成部又は溶液室形成部とベースのいずれかの間に介挿されていることをという構成を採っている。
 なお、各上記構成において、ノズル径を20[μm]未満とすることにより、電界強度分布が狭くなる。このことにより、電界を集中させることができる。その結果、形成される液滴を微小で且つ形状の安定化したものとすることができる。また、液滴は、ノズルから吐出された直後、電界と電荷の間に働く静電力により加速されるが、ノズルから離れると電界は急激に低下するので、その後は、空気抵抗により減速する。しかしながら、微小液滴でかつ電界が集中した液滴は、対向電極に近づくにつれ、鏡像力により加速される。この空気抵抗による減速と鏡像力による加速とのバランスをとることにより、微小液滴を安定に飛翔させ、着弾精度を向上させることが可能となる。
 また、ノズルの内部直径は、10[μm]以下であることが好ましい。
 この構成により、さらに電界を集中させることが可能となり、さらなる液滴の微小化と、飛翔時に対向電極の距離の変動が電界強度分布に影響することを低減させることができるので、対向電極の位置精度や基材の特性や厚さの液滴形状への影響や着弾精度への影響を低減することができる。
 また、ノズルの内部直径が8[μm]以下であることが好ましい。ノズル径を8[μm]以下とすることにより、さらに電界を集中させることが可能となり、さらなる液滴の微小化と、飛翔時に対向電極の距離の変動が電界強度分布に影響することを低減させることができるので、対向電極の位置精度や基材の特性や厚さの液滴形状への影響や着弾精度への影響を低減することができる。
 さらに、電界集中の度合いが高まることにより、多ノズル化時のノズルの高密度化で課題となる電界クロストークの影響が軽減し、一層の高密度化が可能となる。
 さらに、ノズルの内部直径が4[μm]以下とすることにより、顕著な電界の集中を図ることができ、最大電界強度を高くすることができ、形状の安定な液滴の超微小化と、液滴の初期吐出速度を大きくすることができる。これにより、飛翔安定性が向上することにより、着弾精度をさらに向上させ、吐出応答性を向上することができる。
 さらに、電界集中の度合いが高まることにより、多ノズル化時のノズルの高密度化で課題となる電界クロストークの影響が受けにくくなり、より一層の高密度化が可能となる。
 また、上記構成において、ノズルの内部直径は0.2[μm]より大きい方が望ましい。ノズルの内径を0.2[μm]より大きくすることで、液滴の帯電効率を向上させることができるので、液滴の吐出安定性を向上させることができる。
 請求項11記載の発明は、請求項1から10のいずれかに記載の発明と同様の構成を備えると共に、ノズルはその表面に撥水膜を有する、という構成を採っている。
 上記構成では、請求項1から10のいずれかに記載の発明と同様の動作が行われると共に、液滴の吐出に際してノズル先端面で溶液が撥水膜にはじかれることで凸状メニスカスの形成が良好に行われる。また、吐出後にあっては溶液がノズル先端部に残留することを回避し、次の吐出の妨げとならない。
 請求項12記載の発明は、請求項11記載の液体吐出装置において、撥水膜が導電性である、という構成を採っている。
 上記構成によれば、エレクトロウェッティング効果により、吐出安定性を向上させることができる。
 請求項14記載の発明は、請求項13記載の液体吐出装置の製造方法であって、 平板状のベース部の一平面上に、溶解可能なフォトレジスト材に対する露光・現像により形成された溶液室のパターン及び吐出電極を設け、パターン及び吐出電極を、ノズル形成部を形成する絶縁性を有するフォトレジスト材により被覆し、ノズル形成部を露光・現像により形成すると共にパターンを溶解により除去することで当該溶液流路を形成する、という構成を採っている。
 上記各液体吐出装置の製造方法にあっては、まず、ベース部の平面上に溶解可能なフォトレジスト材からなる溶液室パターンと吐出電極とが形成される。そして、ノズル形成部のフォトレジスト材とにより溶液室パターンと吐出電極とが被覆される。ノズル形成部のレジスト材料は露光・現像によりノズル形状に成形される。そして、溶液室パターンを溶解させて溶解可能なレジスト材を除去すると溶液室がノズル内に残り、請求項13記載の液体吐出装置が完成する。
 請求項15記載の発明は、請求項13記載の液体吐出装置の製造方法であって、平板状のベース部の一平面上に、溶解可能なフォトレジスト材に対する露光・現像により形成された溶液流路のパターン及び吐出電極を設け、パターン及び吐出電極を、溶液室形成部を形成する材料及びノズル形成部を形成するフォトレジスト材により被覆し、ノズル形成部の外形を露光・現像により形成すると共にノズルに相当する部分を絶縁性を有する絶縁膜で被覆し、パターンを溶解により除去することで当該溶液室を形成する、という構成を採っている。
 上記各液体吐出装置の製造方法にあっては、まず、ベース部の平面上に溶解可能なフォトレジスト材からなる溶液室パターンと吐出電極とが形成される。そして、ノズル形成部のフォトレジスト材により溶液室パターンと吐出電極とが被覆される。ノズル形成部のレジスト材料は露光・現像によりノズル形状に成形される。そして、ノズルに相当する部分を絶縁性を有する絶縁膜で被覆し、溶液室パターンを溶解させて溶解可能なレジスト材を除去すると溶液室がノズル内に残り、請求項13記載の液体吐出装置が完成する。なお、絶縁膜の被覆と溶解可能なレジスト材の除去とはいずれを先に行って良い。
 さらに、上記各請求項の構成において、
(1)ノズルを電気絶縁材で形成し、ノズル内に吐出電圧印加用の電極を挿入あるいは当該電極として機能するメッキ形成を行うことが好ましい。
(2)上記各請求項の構成又は上記(1)の構成において、ノズルを電気絶縁材で形成し、ノズル内に電極を挿入或いは電極としてのメッキを形成すると共にノズルの外側にも吐出用の電極を設けることが好ましい。
 ノズルの外側の吐出用電極は、例えば、ノズルの先端側端面或いは、ノズルの先端部側の側面の全周若しくは一部に設けられる。
(3)上記各請求項の構成、上記(1)又は(2)の構成において、基材を導電性材料または絶縁性材料により形成することが好ましい。
(4)上記各請求項の構成、上記(1)、(2)又は(3)の構成において、ノズルに印加する電圧Vを
Figure 2004136657
で表される領域において駆動することが好ましい。
ただし、γ:溶液の表面張力(N/m)、ε0:真空の誘電率(F/m)、d:ノズル直径(m)、h:ノズル−基材間距離(m)、k:ノズル形状に依存する比例定数(1.5<k<8.5)とする。
(5)上記各請求項の構成、上記(1)、(2)、(3)又は(4)の構成において、印加する任意波形電圧が1000V以下であることが好ましい。
 吐出電圧の上限値をこのように設定することにより、吐出制御を容易とすると共に装置の耐久性の向上及び安全対策の実行により確実性の向上を容易に図ることが可能となる。
(6)上記各請求項の構成、上記(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の構成において、印加する吐出電圧が500V以下であることが好ましい。
 吐出電圧の上限値をこのように設定することにより、吐出制御をより容易とすると共に装置の耐久性のさらなる向上及び安全対策の実行により確実性のさらなる向上を容易に図ることが可能となる。
(7)上記各請求項の構成、上記(1)〜(6)いずれかの構成において、ノズルと基板との距離が500[μm]以下とすることが、ノズル径を微細にした場合でも高い着弾精度を得ることができるので好ましい。
(8)上記各請求項の構成、上記(1)〜(7)いずれかの構成において、ノズル内の溶液に圧力を印加するように構成することが好ましい。
(9)上記各請求項の構成、上記(1)〜(8)いずれかの構成において、単一パルスによって吐出する場合、
Figure 2004136657
により決まる時定数τ以上のパルス幅Δtを印加する構成としても良い。ただし、ε:溶液の誘電率(F/m)、σ:溶液の導電率(S/m)とする。
 本発明は、ノズルを従来にない超微細径とすることでノズル先端部に電界を集中させて電界強度を高めると共にその際に誘導される基材側の鏡像電荷或いは映像電荷までの間に生じる電界の静電力により液滴の飛翔を行っている。
 従って、基材が導電体であっても絶縁体であっても良好に液滴の吐出を行うことが可能となる。また、対向電極の存在を不要とすることが可能となる。さらに、これにより、装置構成における備品点数の低減を図ることが可能となる。従って、本発明を業務用インクジェットシステムに適用した場合、システム全体の生産性の向上に貢献し、コスト低減をも図ることが可能となる。
 さらに、本発明は、ノズル又はその材料を絶縁破壊強度10[kV/mm]以上としているので、いずれも、当該先端部からの放電が効果的に抑制され、溶液の電荷のチャージが効果的に行われる。その結果、液滴の吐出の応答性が向上される。
 以下の各実施形態で説明する液体吐出装置のノズル径(内部直径)は、30[μm]以下であることが好ましく、さらに好ましくは20[μm]未満、さらに好ましくは10[μm]以下、さらに好ましくは8[μm]以下、さらに好ましくは4[μm]以下とすることが好ましい。また、ノズル径は、0.2[μm]より大きいことが好ましい。以下、ノズル径と電界強度との関係について、図1〜図6を参照しながら以下に説明する。図1〜図6に対応して、ノズル径をφ0.2,0.4,1,8,20[μm]及び参考として従来にて使用されているノズル径φ50[μm]の場合の電界強度分布を示す。
 ここで、各図において、ノズル中心位置とは、ノズルの液体吐出孔の液体吐出面の中心位置を示す。また、各々の図の(a)は、ノズルと対向電極との距離が2000[μm]に設定されたときの電界強度分布を示し、(b)は、ノズルと対向電極との距離が100[μm]に設定されたときの電界強度分布を示す。なお、印加電圧は、各条件とも200[V]と一定にした。図中の分布線は、電荷強度が1×106[V/m]から1×107[V/m]までの範囲を示している。
 図7に、各条件下での最大電界強度を示す図表を示す。
 図1〜図6から、ノズル径がφ20[μm](図5)以上だと電界強度分布は広い面積に広がっていることが分かった。また、図7の図表から、ノズルと対向電極の距離が電界強度に影響していることも分かった。
 これらのことから、ノズル径がφ8[μm](図4)以下であると電界強度は集中すると共に、対向電極の距離の変動が電界強度分布にほとんど影響することがなくなる。従って、ノズル径がφ8[μm]以下であれば、対向電極の位置精度及び基材の材料特性のバラ付きや厚さのバラツキの影響を受けずに安定した吐出が可能となる。
 次に、上記ノズルのノズル径とノズルの先端位置に液面があるとした時の最大電界強度と強電界領域の関係を図8に示す。
 図8に示すグラフから、ノズル径がφ4[μm]以下になると、電界集中が極端に大きくなり最大電界強度を高くすることができるのが分かった。これによって、溶液の初期吐出速度を大きくすることができるので、液滴の飛翔安定性が増すと共に、ノズル先端部での電荷の移動速度が増すために吐出応答性が向上する。
 続いて、吐出した液滴における帯電可能な最大電荷量について、以下に説明する。液滴に帯電可能な電荷量は、液滴のレイリー分裂(レイリー限界)を考慮した以下の(3)式で示される。
Figure 2004136657
 ここで、qはレイリー限界を与える電荷量(C)、ε0は真空の誘電率(F/m)、γは溶液の表面張力(N/m)、d0は液滴の直径(m)である。
 上記(3)式で求められる電荷量qがレイリー限界値に近いほど、同じ電界強度でも静電力が強く、吐出の安定性が向上するが、レイリー限界値に近すぎると、逆にノズルの液体吐出孔で溶液の霧散が発生してしまい、吐出安定性に欠けてしまう。
 ここで、ノズルのノズル径とノズル先端部で吐出する液滴が飛翔を開始する吐出開始電圧、該初期吐出液滴のレイリー限界での電圧値及び吐出開始電圧とレイリー限界電圧値の比との関係を示すグラフを図9に示す。
 図9に示すグラフから、ノズル径がφ0.2[μm]からφ4[μm]の範囲において、吐出開始電圧とレイリー限界電圧値の比が0.6を超え、液滴の退園効率が良い結果となっており、該範囲において安定した吐出が行えることが分かった。
 例えば、図10に示すノズル径とノズル先端部の強電界(1×106[V/m]以上)の領域の関係で表されるグラフでは、ノズル径がφ0.2[μm]以下になると電界集中の領域が極端に狭くなることが示されている。このことから、吐出する液滴は、加速するためのエネルギーを十分に受けることができず飛翔安定性が低下することを示す。よって、ノズル径はφ0.2[μm]より大きく設定することが好ましい。
[実施形態]
 (液体吐出装置の全体構成)
 以下、本発明の第一の実施形態である液体吐出装置20について図11乃至図14に基づいて説明する。図11(A)は液体吐出装置20の平面図を示し、図11(B)は正面図を示す。
 この液体吐出装置20は、液体吐出機構としての液体吐出ヘッド26と、液体吐出ヘッド26に設けられたノズル21の先端部に対向する対向面を有すると共にその対向面で液滴の着弾を受ける基材Kを支持する対向電極23と、液体吐出ヘッド26に設けられた溶液供給口32を介して液体吐出ヘッド26内に溶液を供給する図示しない溶液供給手段と、液体吐出ヘッド26に設けられた吐出電極28を介して液体吐出ヘッド26内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段25とを備えている。なお、図11では、説明の便宜上、ノズル21の先端部が上方を向き、ノズル21の上方に対向電極23が配設されている状態で図示されているが、実際上は、ノズル21が水平方向か或いはそれよりも下方、より望ましくは垂直下方に向けた状態で使用される。
 (溶液)
 上記液体吐出装置20による吐出を行う溶液の例としては、無機液体としては、水、COCl2、HBr、HNO3、H3PO4、H2SO4、SOCl2、SO2Cl2、FSO3Hなどが挙げられる。有機液体としては、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのアルコール類;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、などのフェノール類;ジオキサン、フルフラール、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エピクロロヒドリンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−4−ペンタノン、アセトフェノンなどのケトン類;ギ酸、酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸などの脂肪酸類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−3−メトキシブチル、酢酸−n−ペンチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、セロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、アセト酢酸エチル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチルなどのエステル類;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、o−トルイジン、p−トルイジン、ピペリジン、ピリジン、α−ピコリン、2,6−ルチジン、キノリン、プロピレンジアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N',N'−テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどの含窒素化合物類;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄化合物類;ベンゼン、p−シメン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキセンなどの炭化水素類;1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン(cis−)、テトラクロロエチレン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、2−クロロ−2−メチルプロパン、ブロモメタン、トリブロモメタン、1−ブロモプロパンなどのハロゲン化炭化水素類、などが挙げられる。また、上記各液体を二種以上混合して溶液として用いても良い。
 さらに、高電気伝導率の物質(銀粉等)が多く含まれるような導電性ペーストを溶液として使用し、吐出を行う場合には、上述した液体に溶解又は分散させる目的物質としては、ノズルで目詰まりを発生するような粗大粒子を除けば、特に制限されない。PDP、CRT、FEDなどの蛍光体としては、従来より知られているものを特に制限なく用いることができる。例えば、赤色蛍光体として、(Y,Gd)BO3:Eu、YO3:Euなど、緑色蛍光体として、Zn2SiO4:Mn、BaAl1219:Mn、(Ba,Sr,Mg)O・α−Al23:Mnなど、青色蛍光体として、BaMgAl1423:Eu、BaMgAl1017:Euなどが挙げられる。上記の目的物質を記録媒体上に強固に接着させるために、各種バインダーを添加するのが好ましい。用いられるバインダーとしては、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースおよびその誘導体;アルキッド樹脂;ポリメタクリタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート・メタクリル酸共重合体、ラウリルメタクリレート・2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体などの(メタ)アクリル樹脂およびその金属塩;ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリN,N−ジメチルアクリルアミドなどのポリ(メタ)アクリルアミド樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・イソプレン共重合体などのスチレン系樹脂;スチレン・n−ブチルメタクリレート共重合体などのスチレン・アクリル樹脂;飽和、不飽和の各種ポリエステル樹脂;ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー;ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;エポキシ系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のポリアセタール樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合樹脂などのポリエチレン系樹脂;ベンゾグアナミン等のアミド樹脂;尿素樹脂;メラミン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂及びそのアニオンカチオン変性;ポリビニルピロリドンおよびその共重合体;ポリエチレンオキサイド、カルボキシル化ポリエチレンオキサイド等のアルキレンオキシド単独重合体、共重合体及び架橋体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール;ポリエーテルポリオール;SBR、NBRラテックス;デキストリン;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン及びその誘導体、カゼイン、トロロアオイ、トラガントガム、プルラン、アラビアゴム、ローカストビーンガム、グアガム、ペクチン、カラギニン、にかわ、アルブミン、各種澱粉類、コーンスターチ、こんにゃく、ふのり、寒天、大豆蛋白等の天然或いは半合成樹脂;テルペン樹脂;ケトン樹脂;ロジン及びロジンエステル;ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルフォン酸、ポリビニルスルフォン酸などを用いることができる。これらの樹脂は、ホモポリマーとしてだけでなく、相溶する範囲でブレンドして用いても良い。
 液体吐出装置20をパターンニング方法として使用する場合には、代表的なものとしてはディスプレイ用途に使用することができる。具体的には、プラズマディスプレイの蛍光体の形成、プラズマディスプレイのリブの形成、プラズマディスプレイの電極の形成、CRTの蛍光体の形成、FED(フィールドエミッション型ディスプレイ)の蛍光体の形成、FEDのリブの形成、液晶ディスプレイ用カラーフィルター(RGB着色層、ブラックマトリクス層)、液晶ディスプレイ用スペーサー(ブラックマトリクスに対応したパターン、ドットパターン等)などが挙げることができる。ここでいうリブとは一般的に障壁を意味し、プラズマディスプレイを例に取ると各色のプラズマ領域を分離するために用いられる。その他の用途としては、マイクロレンズ、半導体用途として磁性体、強誘電体、導電性ペースト(配線、アンテナ)などのパターンニング塗布、グラフィック用途としては、通常印刷、特殊媒体(フィルム、布、鋼板など)への印刷、曲面印刷、各種印刷版の刷版、加工用途としては粘着材、封止材などの本発明を用いた塗布、バイオ、医療用途としては医薬品(微量の成分を複数混合するような)、遺伝子診断用試料等の塗布等に応用することができる。
 (溶液供給手段)
 上記溶液供給手段は、図示しない外部の溶液タンクと、この溶液タンクから液体吐出ヘッド26の溶液供給口32までを溶液を導く図示しない管路と、溶液供給口32に供給される溶液に対して所定の供給圧力を付与する図示しない供給ポンプとを備えている。上記供給ポンプは、液体吐出ヘッド26のノズル21の先端部まで溶液を供給し、当該先端部からこぼれ出さない範囲の供給圧力を維持して溶液の供給を行う。
 供給ポンプとは、液体吐出ヘッドと供給タンクの配置位置による差圧を利用する場合も含み、別途、溶液供給手段を設けなくとも溶液供給路のみで構成しても良い。ポンプシステムの設計にもよるが、基本的にはスタート時に液体吐出ヘッドに溶液を供給するときに稼動し、液体吐出ヘッドから液体を吐出し、それに応じた溶液の供給は、キャピラリ及び凸状メニスカス形成手段による液体吐出ヘッド内の容積変化及び供給ポンプの各圧力の最適化を図って溶液の供給が実施される。
 (吐出電圧印加手段)
 吐出電圧印加手段25は、吐出電極28に常時,直流のバイアス電圧を印加するバイアス電源30と、吐出電極28にバイアス電圧に重畳して吐出に要する電位とする吐出パルス電圧を印加する吐出電圧電源31と、を備えている。そして、これら二つの電源30,31による重畳電圧の印加により、ノズル21内の溶液を帯電させると共に超微細径ノズル21により生じる集中電界から受ける静電力を利用して液滴の吐出を行うこととなる。
 上記バイアス電源30によるバイアス電圧は、溶液の吐出が行われない範囲で常時電圧印加を行うことにより、吐出時に印加すべき電圧の幅を予め低減し、これによる吐出時の反応性の向上を図っている。
 吐出電圧電源31は、バイアス電圧と重畳させた場合に、ノズル21の先端部に形成される溶液の凸状のメニスカスの先端部においてその表面張力に抗して液滴の吐出を可能とする電圧値で吐出パルス電圧の印加を行う。
 吐出電圧電源31は、溶液の吐出を行う際にのみパルス電圧をバイアス電圧に重畳させて印加する。このときの重畳電圧Vは次式(1)の条件を満たすようにパルス電圧の値が設定されている。
Figure 2004136657
 ただし、γ:溶液の表面張力(N/m)、ε0:真空の誘電率(F/m)、d:ノズル直径(m)、h:ノズル−基材間距離(m)、k:ノズル形状に依存する比例定数(1.5<k<8.5)とする。
 なお、上記条件は理論値であり、実際上は、凸状メニスカスの形成時と非形成時における試験を行い、適宜な電圧値を求めても良い。一例を挙げると、バイアス電圧はDC300[V]で印加され、吐出パルス電圧は100[V]で印加される。従って、吐出の際の重畳電圧は400[V]となる。
 (対向電極)
 対向電極23は、ノズル21に垂直な対向面を備えており、かかる対向面に沿うように基材Kの支持を行う。ノズル21の先端部から対向電極23の対向面までの距離は、一例としては100[μm]に設定される。
 また、この対向電極23は接地されているため、常時,接地電位を維持している。従って、ノズル21の先端部と対向面との間に生じる電界による静電力により吐出された液滴を対向電極23側に誘導する。
 なお、液体吐出装置20は、ノズル21の超微細化による当該ノズル21の先端部での電界集中により電界強度を高めることで液滴の吐出を行うことから、対向電極23による誘導がなくとも液滴の吐出を行うことは可能ではあるが、ノズル21と対向電極23との間での静電力による誘導が行われた方が望ましい。また、帯電した液滴の電荷を対向電極23の接地により逃がすことも可能である。
 (液体吐出ヘッド)
 液体吐出ヘッド26は、帯電可能な溶液の液滴をその先端部から吐出する超微細径のノズル21と、ノズル21内の流路22に連通する溶液室24と、溶液供給手段29からの溶液を溶液室24を介してノズル内流路22に供給する溶液流路27と、ノズル21内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電極28とを備えている。
 また、液体吐出ヘッド26は、ノズル形成部としてのノズル21と、溶液流路27及び溶液室24を形成する溶液室形成部26bと、略平板状のベース部26aとが21,26b,26aの順番で積層状態で並んで配置されると共に、吐出電極28が、溶液室形成部26bとベース26aの間に介挿されている。
 また、ノズル21は、ベース部26aの一平面(図11(B)における上面)に対して垂直に立設されると共に、ノズル21と溶液室形成部26bとは同一材料により一体的に形成されている。また、液滴の吐出時においては、ノズル21は、基材Kの受け面(液滴が着弾する面)に対して垂直に向けて使用される。
 なお、本実施形態では、ノズル形成部とノズル21とが全く同一となる構成だが、後述する図6の例のようにノズル形成部がプレート部とノズルとから構成されていても良い。
 上記ノズル21は、その先端部からノズル21の中心線に沿って貫通するノズル内流路22が形成されている。従って、かかるノズル内流路22もノズル21と同様にベース部26aの一平面に対して垂直に形成されている。
 ノズル21についてさらに詳説する。ノズル21は、、その先端部における開口径とノズル内流路22とが均一であって、前述の通り、これらが超微細径で形成されている。ノズル内流路22の内部直径は、30[μm]以下、さらに20[μm]未満、さらに10[μm]以下、さらに8[μm]以下、さらに4[μm]以下が好ましい。また、ノズルの内部直径は0.2[μm]より大きい方が好ましい。具体的な各部の寸法の一例を挙げると、ノズル内流路22の内部直径が1[μm]に設定されている。そして、ノズル21の先端部における外部直径は2[μm]、ノズル21の根元の直径は5[μm]、ノズル21の高さは100[μm]に設定されており、その形状は限りなく円錐形に近い円錐台形に形成されている。なお、ノズル51の高さは、0[μm]でも構わない。
 そして、ノズル21は、絶縁性を有する樹脂により形成されると共に先端面を含むその表面には金属膜21aを介して撥水膜21bが形成されている(図14(F)参照)。
 なお、ノズル内流路52の形状は、図14に示すような、内径一定の直線状に形成しなくとも良い。例えば、図14(A)に示すように、ノズル内流路52の後述する溶液室54側の端部における断面形状が丸みを帯びて形成されていても良い。また、図14(B)に示すように、ノズル内流路52の後述する溶液室54側の端部における内径が吐出側端部における内径と比して大きく設定され、ノズル内流路52の内面がテーパ周面形状に形成されていても良い。さらに、図14(C)に示すように、ノズル内流路52の後述する溶液室54側の端部のみがテーパ周面形状に形成されると共に当該テーパ周面よりも吐出端部側は内径一定の直線状に形成されていても良い。
 ノズル21の後端部(図11(B)における下端部)側には、ノズル21と同一素材で形成された溶液室形成部26bより溶液室24とこれを溶液供給口32に接続する溶液流路27が設けられている。そして、ベース部26aの一平面上には吐出電極28が短冊型の膜状に形成されると共にその一端部が溶液室24内におけるノズル内流路22の延長線上に位置し、他端部は溶液室形成部26bを貫通して外部に露出されている。この吐出電極28の外部に露出された端部において吐出電圧印加手段25に配線接続され、溶液室24内の端部において溶液にバイアス電圧及び吐出パルス電圧を印加する。
 (液体吐出ヘッドの製造方法)
 ここで、上述した液体吐出ヘッド26の製造方法について説明する。図13は、液体吐出ヘッド26の製造工程を示した説明図であり、図13(A)〜図2(D)の順番で工程が進行する。図14は、図13の工程に続く液体吐出装置の製造工程を示した説明図であり、図14(E)〜図14(G)の順番で製造工程が進行する。
 まず、図13(A)に示すように、ベース部26aであるシリコンウェハの上面にニッケルリン(NiP)めっきにより吐出電極28を形成する。
 次に、図13(B)に示すように、吐出電極28を覆った状態でベース部26aの上面に溶解可能なレジスト樹脂層R1を形成する。
 次に、図13(C)に示すように、フォトレジスト法を用いて、溶液室24及び溶液流路27のパターンに相当する箇所を残して溶解可能なレジスト樹脂層R1を除去する。
 次に、図13(D)に示すように、溶液室24及び溶液流路27のパターンに従って残存する溶解可能なレジスト樹脂層を覆ってノズル21の先端部に到達する厚さで絶縁性のポジ型レジスト樹脂材R2の層を形成する。ここでは絶縁破壊強度が20[kV/mm]以上のレジスト樹脂が使用される。例えば、エポキシ系レジストのSU-8(MICRO CHEM社製[絶縁破壊強度25〜30[kV/mm]])が使用される。また、より好ましい例としては上述の絶縁破壊強度が20[kV/mm]以上のレジスト樹脂ではあるが、絶縁破壊強度が10[kV/mm]以上のレジスト樹脂としてPMMA(MICRO CHEM社製[絶縁破壊強度12〜20[kV/mm]])の使用も可能ではある。
 次に、図14(E)に示すように、上記絶縁性のレジスト樹脂層R2を、電子ビーム法,フェムト秒レーザ等により露光して現像し、ノズル21及び溶液室形成部26bの形状に形成し、残りの部分を除去する。このとき、同時にノズル内流路22の形成も行う。
 次に、図14(F)に示すように、共析めっきを行うための金属膜21aをノズル21及び溶液室形成部26bの形状の樹脂材R2の表面に例えば蒸着法等により形成する。金属膜21aの素材について特に限定はないが導電性が良いことが望ましい。さらに、その上から撥水膜21bで被覆を行う。例えば、Niとフッ素樹脂との共析めっき処理により撥水膜21bを形成する。
 次に、図14(G)に示すように、ノズル21及び溶液室形成部26bの形状のレジスト樹脂材R2に側方から電子ビーム法,フェムト秒レーザ等により露光して現像し、溶液流路27を開通させる。そして、その内側にある溶解可能なレジスト樹脂層R1の残存部を溶出させる。これにより液体吐出ヘッド26が完成する。
 なお、溶液流路27の開通の妨げとなる場合には、撥水膜21bの形成前に両駅流路27に相当する部位について金属膜21aをエッチング等により除去しても良い。
 また、ノズル内流路22の形成は、絶縁性のレジスト樹脂層R2をノズル21及び溶液室形成部26bの形状に形成する際に同時に行わず、後に行っても良い。この場合、金属膜21aの形成後、ノズル21の先端位置におけるノズル内流路22に相当する位置についてのみエッチング等により除去を行い、その後のいずれかの工程で電子ビーム法,フェムト秒レーザ等による露光,現像を行い、ノズル21及び溶液室形成部26bの形状のレジスト樹脂材R2にノズル内流路22を形成しても良い。これにより、金属膜21a又は撥水膜21bの形成によるノズル内流路22のつまりの発生の可能性を効果的に低減できる。
 (液体吐出装置による微小液滴の吐出動作)
 図11により液体吐出装置20の動作説明を行う。
 溶液供給手段の供給ポンプにより溶液流路27及び溶液室24を介してノズル内流路22には溶液が供給された状態にあり、かかる状態でバイアス電源30により吐出電極28を介してバイアス電圧が溶液に印加されている。かかる状態で、溶液は帯電すると共に、ノズル21の先端部において溶液による凹状に窪んだメニスカスが形成される。
 そして、吐出電圧電源31により吐出パルス電圧が印加されると、ノズル21の先端部では集中された電界の電界強度による静電力により溶液がノズル21の先端側に誘導され、外部に突出した凸状メニスカスが形成されると共に、かかる凸状メニスカスの頂点により電界が集中し、ついには溶液の表面張力に抗して微小液滴が対向電極側に吐出される。
 (液体吐出装置の効果)
 上記液体吐出装置20は、従来にない微細径のノズル21により液滴の吐出を行うので、ノズル内流路22内で帯電した状態の溶液により電界が集中され、電界強度が高められる。このため、従来のように電界の集中化が行われない構造のノズル(例えば内径100[μm])では吐出に要する電圧が高くなり過ぎて事実上吐出不可能とされていた微細径でのノズルによる溶液の吐出を従来よりも低電圧で行うことを可能としている。
 そして、微細径であるがために、ノズルコンダクタンスの低さによりその単位時間あたりの吐出流量を低減する制御を容易に行うことができると共に、パルス幅を狭めることなく十分に小さな液滴径(上記各条件によれば0.8[μm])による溶液の吐出を実現している。
 さらに、吐出される液滴は帯電されているので、微小の液滴であっても蒸気圧が低減され、蒸発を抑制することから液滴の質量の損失を低減し、飛翔の安定化を図り、液滴の着弾精度の低下を防止する。
 また、上記液体吐出ヘッド26のノズル21は、絶縁破壊強度10[kV/mm]以上の絶縁材料で形成されているので、ノズル21の先端部からのチャージされた電荷の放電を有効に抑制し、その結果、高い応答性で安定して液滴の吐出を行うことが可能となる。
 さらに、ノズル21は撥水膜21bにより被覆されているので、溶液の吐出の際にノズル21の先端部において溶液が広がることなく円滑に凸状メニスカスを形成するので良好な応答性で吐出を行うことが可能となる。また、ノズル21の先端部に溶液が残存することが無く、これにより溶液の吐出を妨げられたり液だれを生じたりすることがなく、さらなる良好な吐出を行うことが可能となる。
 (その他)
 なお、ノズル21にエレクトロウェッティング効果を得るために、ノズル21の外周に電極を設けるか、また或いは、ノズル内流路22の内面に電極を設け、その上から絶縁膜で被覆しても良い。そして、この電極に電圧を印加することで、吐出電極28により電圧が印加されている溶液に対して、エレクトロウェッティング効果によりノズル内流路22の内面のぬれ性を高めることができ、ノズル内流路22への溶液の供給を円滑に行うことができ、良好に吐出を行うと共に、吐出の応答性の向上を図ることが可能となる。
 また、吐出電圧印加手段25ではバイアス電圧を常時印加すると共にパルス電圧をトリガーとして液滴の吐出を行っているが、吐出に要する振幅で常時交流又は連続する矩形波を印加すると共にその周波数の高低を切り替えることで吐出を行う構成としても良い。液滴の吐出を行うためには溶液の帯電が必須であり、溶液の帯電する速度を上回る周波数で吐出電圧を印加していても吐出が行われず、溶液の帯電が十分に図れる周波数に替えると吐出が行われる。従って、吐出を行わないときには吐出可能な周波数より大きな周波数で吐出電圧を印加し、吐出を行う場合にのみ吐出可能な周波数帯域まで周波数を低減させる制御を行うことで、溶液の吐出を制御することが可能となる。かかる場合、溶液に印加される電位自体に変化はないので、より時間応答性を向上させると共に、これにより液滴の着弾精度を向上させることが可能となる。
 また、上述した液体吐出ヘッド26は、そのノズル21の材料自体が絶縁性を有するものであったが、形成されたノズルの絶縁破壊強度が10[kV/mm]以上、好ましくは21[kV/mm]以上、さらに好ましくは30[kV/mm]以上であれば良い。かかる場合もノズル21とほぼ同様の効果を得ることが可能である。
 (他の液体吐出ヘッドの例)
 液体吐出ヘッドの他の例を図15及び図16に基づいて説明する。図15は、液体吐出ヘッドの製造工程を示した説明図であり、図15(A)〜図15(C)の順番で工程が進行する。図16は、図15の工程に続く液体吐出ヘッドの製造工程を示した説明図であり、図16(D)〜図16(F)の順番で製造工程が進行する。
 この液体吐出ヘッド46は、図16(F)に示すように、帯電可能な溶液の液滴をその先端部から吐出する超微細径のノズル41と、ノズル41内の流路42に連通する溶液室44と、溶液供給手段29(図示略)からの溶液を溶液室44を介してノズル内流路42に供給する溶液流路47と、ノズル41内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電極48とを備えている。
 また、液体吐出ヘッド46は、ノズル形成部としてのノズル41と、溶液流路47及び溶液室44を形成する溶液室形成部46bと、略平板状のベース部46aとが41,46b,46aの順番で積層状態で並んで配置されると共に、吐出電極48が、溶液室形成部46bとベース46aの間に介挿されている。
 また、ノズル41は、ベース部46aの一平面(図11(B)における上面)に対して垂直に立設されると共に、ノズル41と溶液室形成部46bとは同一材料により一体的に形成されている。
 上記ノズル41は、その先端部からその中心線に沿って貫通するノズル内流路42が形成されている。ここで、ノズル41の具体的な各部の寸法の一例を挙げると、ノズル内流路42の内部直径は、1[μm]、ノズル41の先端部における外部直径は2[μm]、ノズル41の高さは100[μm]に設定されており、その形状は円筒状である。
 なお、ノズル41の好適な内径の例については、前述のノズル21の場合と同様である。
 また、この液体吐出ヘッド46は、ノズル41が撥水性及び絶縁性を有する樹脂により形成されている点が前述した液体吐出ヘッド26と大きく異なっている。
 また、溶液室44,溶液流路47,吐出電極48の構造や配置については、前述した液体吐出ヘッド26と同一である。
 (液体吐出ヘッドの製造方法)
 ここで、上述した液体吐出ヘッド46の製造方法について説明する。
 まず、図15(A)に示すように、ベース部46aであるシリコンウェハの上面にニッケルリン(NiP)めっきにより吐出電極48を形成する。
 次に、図15(B)に示すように、吐出電極48を覆った状態でベース部46aの上面に溶解可能なレジスト樹脂層R3を形成する。
 次に、図15(C)に示すように、フォトレジスト法を用いて、溶液室44及び溶液流路47のパターンに相当する箇所を残して溶解可能なレジスト樹脂層R3を除去する。
 次に、図16(D)に示すように、溶液室44及び溶液流路47のパターンに従って残存する溶解可能なレジスト樹脂層R3を覆ってノズル41の先端部に到達する厚さで撥水性及び絶縁性のポジ型レジスト樹脂材R4の層を形成する。ここでは絶縁破壊強度が10[kV/mm]以上、好ましくは21[kV/mm]、より好ましくは30[kV/mm]以上のフッ素含有レジスト樹脂が使用される。例えば、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素化ポリアミド樹脂、フッ素化アクリル樹脂、フッ素化ポリウレタン樹脂、フッ素化シロキサン樹脂又はこれらの変性樹脂等が挙げられ、これらは30〜40[kV/mm]程度の絶縁破壊強度を有している。
 次に、図16(E)に示すように、上記レジスト樹脂層R4を、電子ビーム法,フェムト秒レーザ等により露光して現像し、ノズル41及び溶液室形成部46bの形状に形成し、残りの部分を除去する。このとき、同時にノズル内流路42の形成も行う。
 次に、図16(F)に示すように、ノズル41及び溶液室形成部46bの形状のレジスト樹脂材R4に側方から電子ビーム法,フェムト秒レーザ等により露光して現像し、溶液流路47を開通させる。そして、その内側にある溶解可能なレジスト樹脂層R3の残存部を溶出させる。これにより液体吐出ヘッド46が完成する。
 上記液体吐出ヘッド46は、液体吐出ヘッド26と同様の効果を具備すると共に、金属膜21a,撥水膜21bを形成する工程が不要であるため、その生産性に優れるという利点がある。
[比較試験]
 導電性を有する素材を三種類の異なる絶縁破壊強度の絶縁性素材からなる絶縁膜で被覆した各ノズルと絶縁性素材からなるノズルの各々を備える四つの液体吐出ヘッドについて吐出応答性の比較試験を行った結果を以下に説明する。本試験は図17に示す液体吐出装置を基本形として、ノズルの絶縁処理構造のみを異ならせて比較を行った。ここで、この基本形となる液体吐出装置50の説明を行う。但し、実施形態たる液体吐出装置20と同一の構成は同符号を付して重複する説明は省略する
 液体吐出装置50は、液体吐出ヘッド56の吐出電極58の配置及びこれに伴って溶液室形成部56bとノズル形成部56cとが別体で構成されている点及びノズル形成部56cの構造について異なっているので、これらの点を説明する。即ち、液体吐出ヘッド56は、ベース部56aと溶液室形成部56bとノズル形成部56cとの三層構造を採り、溶液室形成部56bとノズル形成部56cとの間に吐出電極58が介挿されている。また、ノズル形成部56cはノズル単体ではなくノズル51とこれが垂直に立設されるプレート部56dとが一体的に形成されている。
 その他の点は液体吐出装置20と同様である。ノズル51の寸法については、ノズル内流路22の内部直径は1[μm]、先端部外部直径は2[μm]、ノズル51の根元(ノズル形成部56cのプレート部のノズル側平面における直径)は5[μm]、ノズル高さ(ノズル形成部56cのプレート部56dのノズル側平面からノズル先端までの高さ)は100[μm]であり、ノズル51の先端部から対向電極23までの距離は100[μm]、また、バイアス電圧は300[V]、吐出パルス電圧は100[V]の条件で吐出周波数は1[kHz]として吐出を行った。
 図18は、比較試験結果を示す図表である。比較試験の対象はNo.1)〜4)の四種のものである。1)はガラス材の表面にフッ素系の共析めっきを形成し、ガラスとフッ素系の共めっきの比率をコントロールすることで複合材として絶縁破壊強度を8[kV/mm]に調整したノズルである。2)はPMMA感光性樹脂材料にフッ素系の共析めっきを形成した複合材で絶縁破壊強度を12[kV/mm]に調整したノズルである。3)はエポキシ樹脂系の感光性樹脂材料:SU-8にフッ素系の共析めっきを形成した複合材で絶縁破壊強度を23[kV/mm]に調整したノズルである。4)は35[kV/mm]のフッ素を含有する感光性樹脂材料により形成したノズルである。
 吐出を行う溶液は水であり、その物性は粘性:8[cP](8×10-2[Pa・S]),比抵抗:108[Ωcm],表面張力30×10-3[N/m]である。
 また、応答性の評価は、0.1[mm]のガラス基板に上記吐出周波数により連続して20回の吐出を行うという方法を採用した。評価は最も結果が良好だったものを5とする五段階で行っている。
 評価の結果によれば、最も高い応答性を示しているのは4)のガラス製のノズルであり、最も絶縁破壊強度も大きいものである。
[液体吐出装置の理論説明]
 以下に、本発明による液体吐出の理論説明及びこれに基づく基本例の説明を行う。なお、以下に説明する理論及び基本例におけるノズルの構造、各部の素材及び吐出液体の特性、ノズル周囲に付加する構成、吐出動作に関する制御条件等全ての内容は、可能な限り上述した各実施形態中に適用しても良いことはいうまでもない。
(印加電圧低下および微少液滴量の安定吐出実現の方策)
 従前は以下の条件式により定まる範囲を超えて液滴の吐出は不可能と考えられていた。
Figure 2004136657
 λCは静電吸引力によりノズル先端部からの液滴の吐出を可能とするための溶液液面における成長波長(m)であり、λC=2πγh20V2で求められる。
Figure 2004136657
Figure 2004136657
 本発明では、静電吸引型インクジェット方式において果たすノズルの役割を再考察し、従来吐出不可能として試みられていなかった領域において、マクスウェル力などを利用することで、微小液滴を形成することができる。
 このような駆動電圧低下および微少量吐出実現の方策のための吐出条件等を近似的に表す式を導出したので以下に述べる。
 以下の説明は、上記各本発明の実施形態で説明した液体吐出装置に適用可能である。
 いま、内径dのノズルに導電性溶液を注入し、基材としての無限平板導体からhの高さに垂直に位置させたと仮定する。この様子を図19に示す。このとき、ノズル先端部に誘起される電荷は、ノズル先端の半球部に集中すると仮定し、以下の式で近似的に表される。
Figure 2004136657
 ここで、Q:ノズル先端部に誘起される電荷(C)、ε0:真空の誘電率(F/m)、ε:基材の誘電率(F/m)、h:ノズル−基材間距離(m)、d:ノズル内部の直径(m)、V:ノズルに印加する総電圧(V)である。α:ノズル形状などに依存する比例定数で、1〜1.5程度の値を取り、特にd<<hのときほぼ1程度となる。
 また、基材としての基板が導体基板の場合、基板内の対称位置に反対の符号を持つ鏡像電荷Q’が誘導されると考えられる。基板が絶縁体の場合は、誘電率によって定まる対称位置に同様に反対符号の映像電荷Q’が誘導される。
 ところで、ノズル先端部に於ける凸状メニスカスの先端部の電界強度Eloc.[V/m]は、凸状メニスカス先端部の曲率半径をR[m]と仮定すると、
Figure 2004136657
で与えられる。ここでk:比例定数で、ノズル形状などにより異なるが、1.5〜8.5程度の値をとり、多くの場合5程度と考えられる。(P. J. Birdseye and D.A. Smith, Surface Science, 23 (1970) 198-210)。
 今簡単のため、d/2=Rとする。これは、ノズル先端部に表面張力で導電性溶液がノズルの半径と同じ半径を持つ半球形状に盛り上がっている状態に相当する。
 ノズル先端の液体に働く圧力のバランスを考える。まず、静電的な圧力は、ノズル先端部の液面積をS[m2]とするとすると、
Figure 2004136657
(7)、(8)、(9)式よりα=1とおいて、
Figure 2004136657
と表される。
 一方、ノズル先端部に於ける液体の表面張力をPsとすると、
Figure 2004136657
 ここで、γ:表面張力(N/m)、である。
静電的な力により流体の吐出が起こる条件は、静電的な力が表面張力を上回る条件なので、
Figure 2004136657
となる。十分に小さいノズル直径dをもちいることで、静電的な圧力が、表面張力を上回らせる事が可能である。
この関係式より、Vとdの関係を求めると、
Figure 2004136657
が吐出の最低電圧を与える。すなわち、式(6)および式(13)より、
Figure 2004136657
が、本発明の動作電圧となる。
 ある内径dのノズルに対し、吐出限界電圧Vcの依存性を前述した図9に示す。この図より、微細ノズルによる電界の集中効果を考慮すると、吐出開始電圧は、ノズル径の減少に伴い低下する事が明らかになった。
 従来の電界に対する考え方、すなわちノズルに印加する電圧と対向電極間の距離によって定義される電界のみを考慮した場合では、微細ノズルになるに従い、吐出に必要な電圧は増加する。一方、局所電界強度に注目すれば、微細ノズル化により吐出電圧の低下が可能となる。
 静電吸引による吐出は、ノズル端部における流体の帯電が基本である。帯電の速度は誘電緩和によって決まる時定数程度と考えられる。
Figure 2004136657
 ここで、ε:溶液の誘電率(F/m)、σ:溶液の導電率(S/m)である。溶液の比誘電率を10、導電率を10-6 S/m を仮定すると、τ=1.854×10-5secとなる。あるいは、臨界周波数をfc[Hz]とすると、
Figure 2004136657
となる。このfcよりも早い周波数の電界の変化に対しては、応答できず吐出は不可能になると考えられる。上記の例について見積もると、周波数としては10 kHz程度となる。このとき、ノズル半径2μm、電圧500V弱の場合、ノズル内流量Gは10-13m3/sと見積もることができるが、上記の例の液体の場合、10kHzでの吐出が可能なので、1周期での最小吐出量は10fl(フェムトリットル、1fl:10-15 l)程度を達成できる。
 なお、各上記本実施の形態においては、図19に示したようにノズル先端部に於ける電界の集中効果と、対向基板に誘起される鏡像力の作用を特徴とする。このため、先行技術のように基板または基板支持体を導電性にすることや、これら基板または基板支持体への電圧の印加は必ずしも必要はない。すなわち、基板として絶縁性のガラス基板、ポリイミドなどのプラスチック基板、セラミックス基板、半導体基板などを用いることが可能である。
 また、上記各実施形態において電極への印加電圧はプラス、マイナスのどちらでも良い。
 さらに、ノズルと基材との距離は、500[μm]以下に保つことにより、溶液の吐出を容易にすることができる。また、図示しないが、ノズル位置検出によるフィードバック制御を行い、ノズルを基材に対し一定に保つようにする。
 また、基材を、導電性または絶縁性の基材ホルダーに裁置して保持するようにしても良い。
 図20は、本発明の他の基本例の一例としての液体吐出装置のノズル部分の側面断面図を示したものである。ノズル1の側面部には電極15が設けられており、ノズル内溶液3との間に制御された電圧が引加される。この電極15の目的は、Electrowetting 効果を制御するための電極である。十分な電場がノズルを構成する絶縁体にかかる場合この電極がなくともElectrowetting効果は起こると期待される。しかし、本基本例では、より積極的にこの電極を用いて制御することで、吐出制御の役割も果たすようにしたものである。ノズル1を絶縁体で構成し、先端部におけるノズルの管厚が1μm、ノズル内径が2μm、印加電圧が300Vの場合、約30気圧のElectrowetting効果になる。この圧力は、吐出のためには、不十分であるが溶液のノズル先端部への供給の点からは意味があり、この制御電極により吐出の制御が可能と考えられる。
 前述した図9は、本発明における吐出開始電圧のノズル径依存性を示したものである。液体吐出装置として、図17に示すものを用いた。微細ノズルになるに従い吐出開始電圧が低下し、従来より低電圧で吐出可能なことが明らかになった。
 上記各実施形態において、溶液吐出の条件は、ノズル基材間距離(h)、印加電圧の振幅(V)、印加電圧振動数(f)のそれぞれの関数になり、それぞれにある一定の条件を満たすことが吐出条件として必要になる。逆にどれか一つの条件を満たさない場合他のパラメーターを変更する必要がある。
 この様子を図21を用いて説明する。
 まず吐出のためには、それ以上の電界でないと吐出しないというある一定の臨界電界Ecが存在する。この臨界電界は、ノズル径、溶液の表面張力、粘性などによって変わってくる値で、Ec以下での吐出は困難である。臨界電界Ec以上すなわち吐出可能電界強度において、ノズル基材間距離(h)と印加電圧の振幅(V)の間には、おおむね比例の関係が生じ、ノズル間距離を縮めた場合、臨界印加電圧Vを小さくする事が出来る。
 逆に、ノズル基材間距離(h)を極端に離し、印加電圧Vを大きくした場合、仮に同じ電界強度を保ったとしても、コロナ放電による作用などによって、流体液滴の破裂すなわちバーストが生じてしまう。
ノズル径をφ0.2 [μm]とした場合の電界強度分布を示し、図1(a)はノズルと対向電極との距離が2000[μm]に設定されたときの電界強度分布を示し、図1(b)は、ノズルと対向電極との距離が100[μm]に設定されたときの電界強度分布を示す。 ノズル径をφ0.4 [μm]とした場合の電界強度分布を示し、図2(a)はノズルと対向電極との距離が2000[μm]に設定されたときの電界強度分布を示し、図2(b)は、ノズルと対向電極との距離が100[μm]に設定されたときの電界強度分布を示す。 ノズル径をφ1 [μm]とした場合の電界強度分布を示し、図3(a)はノズルと対向電極との距離が2000[μm]に設定されたときの電界強度分布を示し、図3(b)は、ノズルと対向電極との距離が100[μm]に設定されたときの電界強度分布を示す。 ノズル径をφ8 [μm]とした場合の電界強度分布を示し、図4(a)はノズルと対向電極との距離が2000[μm]に設定されたときの電界強度分布を示し、図4(b)は、ノズルと対向電極との距離が100[μm]に設定されたときの電界強度分布を示す。 ノズル径をφ20 [μm]とした場合の電界強度分布を示し、図5(a)はノズルと対向電極との距離が2000[μm]に設定されたときの電界強度分布を示し、図5(b)は、ノズルと対向電極との距離が100[μm]に設定されたときの電界強度分布を示す。 ノズル径をφ50 [μm]とした場合の電界強度分布を示し、図6(a)はノズルと対向電極との距離が2000[μm]に設定されたときの電界強度分布を示し、図6(b)は、ノズルと対向電極との距離が100[μm]に設定されたときの電界強度分布を示す。 図1〜図6の各条件下での最大電界強度を示す図表を示す。 ノズルのノズル径のメニスカス部の最大電界強度と強電界領域の関係を示す線図である。 ノズルのノズル径とメニスカス部で吐出する液滴が飛翔を開始する吐出開始電圧、該初期吐出液滴のレイリー限界での電圧値及び吐出開始電圧とレイリー限界電圧値の比との関係を示す線図である。 本発明の実施の形態における印字ドット径のノズル径依存性を示したものである。 図11(A)は液体吐出機構の平面図を示し、図11(B)は正面図を示す。 ノズル内流路の他の形状の例を示す一部切り欠いた斜視図であり、図12(A)は溶液室側に丸みを設けた例であり、図12(B)は流路内壁面をテーパ周面とした例であり、図12(C)はテーパ周面と直線状の流路とを組み合わせた例を示す。 液体吐出ヘッドの製造工程を示した説明図であり、図13(A)〜図13(D)の順番で工程が進行する。 図13の工程に続く液体吐出ヘッドの製造工程を示した説明図であり、図14(E)〜図14(G)の順番で製造工程が進行する。 他の液体吐出ヘッドの製造工程を示した説明図であり、図15(A)〜図15(C)の順番で工程が進行する。 図15の工程に続く液体吐出ヘッドの製造工程を示した説明図であり、図16(D)〜図16(F)の順番で製造工程が進行する。 比較試験における液体吐出装置の基本例を示す断面図である。 比較試験結果を示す図表である。 本発明の実施の形態として、ノズルの電界強度の計算を説明するために示したものである。 本発明の一例としての液体吐出装置の側面断面図を示したものである。 本発明の液体吐出装置における距離−電圧の関係による吐出条件を説明した図である。
符号の説明
 1 ノズル
 3 流体(溶液)
 13 基板
 15 ノズル外側の電極
 20,50 液体吐出装置
 21,41,51 ノズル
 21b 撥水膜
 26,46,56 液体吐出ヘッド(液体吐出機構)
 26a,46a,56a ベース部
 26b,46b,56b 溶液室形成部
 27,47,57 溶液流路
 28,48,58 吐出電極
 56c ノズル形成部
 K 基材

Claims (15)

  1. 帯電した溶液の液滴を基材に吐出する液体吐出装置であって、
     溶液を収容する溶液室と、
     先端部から前記溶液室に収容されている溶液を吐出する先端部の内部直径が30[μm]以下のノズルと、
     前記ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段と、を備え、
     前記ノズルの絶縁破壊強度が10[kV/mm]以上であることを特徴とする液体吐出装置。
  2. 前記ノズルの絶縁破壊強度が21[kV/mm]以上であることを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
  3. 前記ノズルの絶縁破壊強度が30[kV/mm]以上であることを特徴とする請求項2記載の液体吐出装置。
  4. 帯電した溶液の液滴を基材に吐出する液体吐出装置であって、
     溶液を収容する溶液室と、
     先端部から前記溶液室に収容されている溶液を吐出する先端部の内部直径が30[μm]以下のノズルと、
     前記ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段と、を備え、
     前記ノズルを絶縁破壊強度10[kV/mm]以上の材料で形成したことを特徴とする液体吐出装置。
  5. 前記ノズルを絶縁破壊強度21[kV/mm]以上の材料で形成したことを特徴とする請求項4記載の液体吐出装置。
  6. 前記ノズルを絶縁破壊強度30[kV/mm]以上の材料で形成したことを特徴とする請求項5記載の液体吐出装置。
  7. 前記ノズルの内部直径が20[μm]未満であることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の液体吐出装置。
  8. 前記ノズルの内部直径が10[μm]以下であることを特徴とする請求項7記載の液体吐出装置。
  9. 前記ノズルの内部直径が8[μm]以下であることを特徴とする請求項8記載の液体吐出装置。
  10. 前記ノズルの内部直径が4[μm]以下であることを特徴とする請求項9記載の液体吐出装置。
  11. 前記ノズルはその表面に撥水膜を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の液体吐出装置。
  12. 前記撥水膜が導電性であることを特徴とする請求項11記載の液体吐出装置。
  13. 前記ノズルを形成するノズル形成部と、前記溶液室を形成する溶液室形成部と、略平板状のベース部とがその順番で積層状態で並んで配置されると共に、
     前記吐出電極が、前記溶液室形成部とノズル形成部又は前記溶液室形成部とベースのいずれかの間に介挿されていることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の液体吐出装置。
  14. 請求項13記載の液体吐出装置の製造方法であって、
     前記平板状のベース部の一平面上に、溶解可能なフォトレジスト材に対する露光・現像により形成された前記溶液室のパターン及び前記吐出電極を設け、
     前記パターン及び前記吐出電極を、前記ノズル形成部を形成する絶縁性を有するフォトレジスト材により被覆し、
     前記ノズル形成部を露光・現像により形成すると共に前記パターンを溶解により除去することで当該溶液流路を形成することを特徴とする液体吐出装置の製造方法。
  15. 請求項13記載の液体吐出装置の製造方法であって、
    前記平板状のベース部の一平面上に、溶解可能なフォトレジスト材に対する露光・現像により形成された前記溶液流路のパターン及び前記吐出電極を設け、
     前記パターン及び前記吐出電極を、前記溶液室形成部を形成する材料及びノズル形成部を形成するフォトレジスト材により被覆し、
     前記ノズル形成部の外形を露光・現像により形成すると共に前記ノズルに相当する部分を絶縁性を有する絶縁膜で被覆し、
     前記パターンを溶解により除去することで当該溶液室を形成することを特徴とする液体吐出装置の製造方法。
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