JP2004135428A - 電気式産業車両の走行制御装置及び走行制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コントローラは旋回制御として、先ず、その時点のアクセル開度THに対する運転席速度Vseの目標値を設定する。次に、運転席速度Vseの目標値に対する、その時点の操舵角θにおける左輪速度Vl及び右輪速度Vrの目標値を求める。そして、左輪速度Vl及び右輪速度Vrの各検出値と各目標値とを用いて左側駆動モータ及び右側駆動モータの回転数を制御し、左輪速度Vl及び右輪速度Vrを目標値に制御する。従って、旋回時にも、操舵角θに関係なくアクセル開度THに応じて運転席速度Vseが制御される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気式産業車両の走行制御装置及び走行制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、一対の左右駆動輪と1つの操舵輪とを備えた三輪型のカウンタバランスフォークリフトには、旋回時に、操舵輪の操舵角に基づいて左側駆動輪及び右側駆動輪を駆動する各駆動モータの回転数を個々に制御するものがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0003】
このとき、車速をアクセル開度に応じて制御するために、例えば、旋回時に外側となる外輪の移動速度、又は、操舵輪の移動速度をアクセル開度に応じた目標値に速度制御するように左右駆動輪の各駆動モータを制御する方法が採用されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−069613号公報
【特許文献2】
米国特許第5487437号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、運転席は、左右駆動輪及び操舵輪上から離れた位置に設けられているため、旋回中の運転席の移動速度である運転席速度は、その時点の外輪又は操舵輪の移動速度と異なることになる。そして、外輪又は操舵輪の移動速度に対する運転席速度の速度差は、操舵角に応じて変化する。
【0006】
旋回時に外輪の移動速度を制御した場合には、例えば図8に示すように、運転席速度Vseが、操舵角θが約−90°又は90°のときに、外輪速度(右輪速度Vr又は左輪速度Vl)の約2倍まで大きくなる。これは、操舵角θが−90°又は90°のときには、機台の旋回中心が左右駆動輪の中央位置付近となり、旋回中心から外輪までの旋回半径に比較して運転席までの同半径の方が大きくなるためである。
【0007】
従って、アクセル開度を一定としたまま直進状態から操舵していったときに操舵角が−90°又は90°に近づくにつれて、運転席で運転者が体感する車速が急激に高くなる。このため、外輪速度がアクセル開度に応じて制御されているにも拘らず、運転者がアクセルを戻して運転席速度Vseを下げる運転操作を行うことになり、旋回時の機台操作性が悪かった。
【0008】
また、操舵輪の移動速度を制御した場合には、例えば図9に示すように、操舵角θが−90°又は90°のときの運転席速度Vseが、操舵輪速度Vstの約0.7倍まで小さくなる。これは、操舵角θが−90°又は90°のときには、機台の旋回中心から操舵輪までの旋回半径に比較して運転席までの同半径の方が小さくなるためである。
【0009】
従って、操舵角θが−90°又は90°に近づくにつれて、運転席で運転者が体感する車速が次第に低くなる。このため、操舵輪速度Vstがアクセル開度に応じて制御されているにも拘らず、運転者がアクセルを踏み込んで運転席速度Vseを上げる運転操作を行うことになり、同様に旋回時の機台操作性が悪かった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、旋回時の機台操作性を向上することができる電気式産業車両の走行制御装置及び走行制御方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、駆動輪を回転駆動する駆動モータの回転数をアクセル開度に基づいて制御する電気式産業車両の走行制御装置である。前記アクセル開度と、操舵輪の操舵角とを用いて前記駆動モータの回転数を制御し、旋回中の運転席の位置における運転席速度を、前記アクセル開度に対して設定する目標値とする速度制御を行う旋回制御手段を備えている。なお、「運転席速度」とは、運転者が体感する車速が、アクセル開度に対して設定する速度目標値となるものであればよく、座席の中央位置、座席の前方位置、あるいは、座席の背もたれ部の位置における速度を含む。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、走行中に機台を旋回させているときに、そのときの操舵輪の操舵角に関係なく、運転席の位置の速度である運転席速度が、アクセル開度に応じて設定する目標値に制御される。このため、直進状態から操舵輪を操舵していっても、アクセル開度を変えない限り運転席速度が殆ど変化しないので、操舵角に応じてアクセル開度を調節する必要がない。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、左右一対の左側固定輪及び右側固定輪と、該両固定輪の中間に対応する位置に配置された1つの操舵輪とを備えた三輪型の産業車両に用いられるものである。ここで、「両固定輪の中間に対応する位置」とは、両固定輪の中央位置と、両固定輪の間において中央位置から外れた位置とを含み、中央に限定されるものではない。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、操舵角が例えば90°まで大きく操舵されて旋回中心が左右両固定輪の中間に位置するようになり、駆動輪の移動速度と運転席速度との速度比が著しく大きくなっても、アクセル開度が変わらなければ運転席速度が直進時から殆ど変化しない。従って、請求項1の効果が顕著となる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記左側固定輪及び右側固定輪は共に駆動輪であり、前記駆動モータは、左側固定輪を駆動する左側駆動モータと、右側固定輪を駆動する右側駆動モータとからなる産業車両に用いられるものである。前記旋回制御手段は、前記左側駆動モータ及び右側駆動モータの各回転数を操舵角に基づいて別々に制御し、旋回中の左側駆動輪及び右側駆動輪の旋回中心に対する各角速度を等しくする。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の作用に加えて、旋回時に、外輪及び内輪の一方がスリップしても他方がグリップするので、機台が確実に旋回する。また、外輪又は内輪にブレーキ作用が発生しないので、機台が円滑に旋回する。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記運転席は、機台前後方向において前記左右一対の固定輪と前記操舵輪との間に位置する産業車両に用いられるものである。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は請求項3に記載の発明の作用に加えて、操舵角が例えば90°まで大きく操舵されたとき、旋回中心が左右両固定輪の中間に位置するようになり、駆動輪の移動速度と運転席速度との速度比が著しく大きくなる産業車両において、請求項1の効果が顕著となる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、駆動輪を回転駆動する駆動モータの回転数をアクセル開度に基づいて制御する電気式産業車両の走行制御方法であって、その時点のアクセル開度に対する運転席速度の目標値を設定する第1処理と、運転席速度の目標値に対する、その時点の操舵角における駆動輪速度の目標値を求める第2処理と、前記駆動輪速度の検出値と前記目標値とを用いて前記駆動モータの回転数を制御し、駆動輪速度を目標値に制御する第3処理とを行う。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、先ず、その時点のアクセル開度に対する運転席速度の目標値が設定される。次に、その時点の操舵角に応じて、運転席速度の目標値に対応する駆動輪速度の目標値が求められる。そして、駆動輪速度の検出値と目標値とに基づいて、駆動輪速度が目標値に制御される。その結果、運転席速度が、アクセル開度に応じて制御される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を電気式産業車両としての三輪型カウンタバランス式フォークリフトの走行制御装置に具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
【0022】
図2及び図3に示すように、電気式の三輪型カウンタバランス式フォークリフト(以下、単にフォークリフトという。)10は、その車体11の前部に左側駆動輪(左側固定輪)12及び右側駆動輪(右側固定輪)13を備え、車体11の後部に操舵輪14を備えている。また、車体11の前側にはマスト装置15を備え、車体11における両駆動輪12,13と操舵輪14との間には運転席16を備えている。運転席16には、座席17が備えられている。
【0023】
左側駆動輪12及び右側駆動輪13は、共通の固定軸線上に配置されている。
操舵輪14は、左側駆動輪12及び右側駆動輪13との中央(中間)に対応する位置に配置されている。
【0024】
運転席16には、アクセルペダル18、ブレーキペダル19、ディレクションレバー20、ステアリングホイール21、荷役レバー22が設けられている。
次に、本実施形態の電気的構成を図4に従って説明する。
【0025】
フォークリフト10は、アクセル開度センサ23、操舵角センサ24、左輪速度センサ25、右輪速度センサ26及びディレクションスイッチ27を備えている。また、フォークリフト10は、コントローラ28、左モータ駆動回路29、右モータ駆動回路30、左側駆動モータ31及び右側駆動モータ32を備えている。本実施形態では、コントローラ28が旋回制御手段である。
【0026】
アクセル開度センサ23は、アクセルペダル18の踏み込み量に対応したアクセル開度THを検出し、その検出信号をコントローラ28に出力する。
操舵角センサ24は操舵輪14の操舵角θを検出し、その検出信号をコントローラ28に出力する。なお、操舵輪14は、車両が直進するときの操舵角θ=0°から、右操舵時には操舵角θ=90°まで、また、左操舵時には操舵角θ=−90°まで操舵される。
【0027】
左輪速度センサ25は、左側駆動輪12の移動速度である左輪速度(駆動輪速度)Vlを検出し、その検出信号をコントローラ28に出力する。同様に、右輪速度センサ26は、右側駆動輪13の移動速度である右輪速度(駆動輪速度)Vrを検出し、その検出信号をコントローラ28に出力する。
【0028】
ディレクションスイッチ27は、ディレクションレバー20が中立位置から前進位置又は後退位置のいずれかに切り換えられたことを検出し、その検出信号をコントローラ28に出力する。
【0029】
コントローラ28は、図示しないマイクロコンピュータを用いて構成されている。コントローラ28は、アクセル開度センサ23が出力する検出信号からアクセル開度THを取得する。また、操舵角センサ24が出力する検出信号から操舵角θを取得する。また、左輪速度センサ25が出力する検出信号から左輪速度Vlを取得し、右輪速度センサ26が出力する検出信号から右輪速度Vrを取得する。さらに、ディレクションスイッチ27が出力する検出信号から、運転者が選択した車両の進行方向を取得する。
【0030】
コントローラ28は、アクセル開度TH及び操舵角θに基づいて左側駆動モータ31及び右側駆動モータ32の各回転数を個々に制御する。そして、運転席16の座席17の中央位置における移動速度である運転席速度Vseを、アクセル開度THに対して設定する運転席速度Vseの目標値とする旋回制御を行う。なお、運転席速度Vseは、運転者が体感する車速が、アクセル開度THに対して設定する速度となるものであればよく、座席17の中央位置における移動速度に限らない。その他例えば、運転席16内で座席17より前方の位置における移動速度であってもよく、あるいは、座席17の背もたれ部の位置における移動速度であってもよい。
【0031】
旋回制御として、コントローラ28は、図1のフローチャートに示すように、先ず、その時点のアクセル開度TH及び操舵角θを取得する(ステップ100)。
【0032】
次に、図5に示すマップM1を用い、取得したアクセル開度THに対応する運転席速度Vseの目標値を設定する(ステップ101、第1処理。)。
運転席速度Vseは、操舵角θ=0°の車両直進時には、左輪速度Vl及び右輪速度Vrと等しいが、操舵角θが「0°」でない旋回時には、そのときの操舵角θに応じた速度差だけ左輪速度Vl及び右輪速度Vrとそれぞれ異なる。
【0033】
次に、図6に示すマップM2を用いて、設定した運転席速度Vseの目標値から、取得された操舵角θにおける左輪速度Vl及び右輪速度Vrの各目標値をそれぞれ求める(ステップ102、第2処理。)。
【0034】
このマップM2は、操舵角θを変化させたときの運転席速度Vseに対する左輪速度Vl及び右輪速度Vrの各速度比の変化を、複数に分割された操舵角θの領域毎に直線近似で示している。
【0035】
運転席速度Vseに対する左輪速度Vl及び右輪速度Vrの各速度比は、実際には、図6に2点鎖線で表される変化特性となる。
この変化特性は、次の各関係式(1),(2)によって表される。
【0036】
Vl/Vse= sinα*(a* cosθ+h* sinθ)/(d* sinθ) … (1)
Vr/Vse= sinα*(a* cosθ−h* sinθ)/(d* sinθ) … (2)
次に、この両関係式(1),(2)について説明する。
【0037】
図7は、フォークリフト10における左側駆動輪12、右側駆動輪13及び操舵輪14の位置関係を示している。図7に示すように、hは、左側駆動輪12と右側駆動輪13との車輪間距離を等分した距離である。また、dは、左側駆動輪12及び右側駆動輪13の固定軸線から、座席17の中央位置までの距離である。また、aは、同じく固定軸線から操舵輪14の操舵中心軸までの距離である。さらに、αは、左側駆動輪12及び右側駆動輪13の固定軸線と、旋回中心点と座席17の中央点とを結ぶ直線とがなす角度である。なお、距離h,d,aは、いずれも機種毎に固有な値である。
【0038】
前記関係式(1),(2)は、次のようにして求められる。
旋回時の左側駆動輪12及び右側駆動輪13は、共に操舵輪14と角速度が等しいように制御されることから、左輪速度Vl及び右輪速度Vrと操舵輪速度Vstとの間には、次の各関係式(3),(4)が成立する。
【0039】
Vl=Vst*Ll/Lst … (3)
Vr=Vst*Lr/Lst … (4)
ここで、Llは、機台の旋回中心位置から左側駆動輪12までの距離であり、Lrは、同じく旋回中心位置から右側駆動輪13までの距離である。また、Lstは、同じく旋回中心位置から操舵輪14までの距離である。
【0040】
ここで、a,h,Ll,Lr,Lst,θの間には、次の各関係式(5),(6),(7),(8)が成立する。
Lst=a/ sinθ … (5)
M=a/ tanθ … (6)
Ll=M+h … (7)
Lr=M−h … (8)
ここで、Mは、左側駆動輪12と右側駆動輪13との中央位置から、機台の旋回中心位置までの距離である。
【0041】
この各関係式(3)〜(8)から、次の各関係式(9),(10)が得られる。
Vl=Vst*(a* cosθ+h* sinθ)/a … (9)
Vr=Vst*(a* cosθ−h* sinθ)/a … (10)
また、操舵輪14と座席17の位置とは、旋回時の角速度が等しいことから、操舵輪速度Vstと運転席速度Vseとの間には次の関係式(11)が成立する。
【0042】
Vst=Vse*Lst/Lse … (11)
ここで、Lseは、機台の旋回中心位置から座席17の中央位置までの距離である。
【0043】
また、Lstとa、Lseとdとの間には、それぞれ次の各関係式(12),(13)が成立する。
Lst=a/ sinθ … (12)
Lse=d/ sinθ … (13)
前記各関係式(9)〜(13)から上記両関係式(1),(2)が得られる。
【0044】
なお、車両直進時には操舵角θ=0°であることから、
Vl=Vr=Vse
となる。
【0045】
次に、コントローラ28は、旋回制御として、左輪速度Vlの目標値に対応する左指令信号を生成して左モータ駆動回路29に出力し、また、右輪速度Vrの目標値に対応する右指令信号を生成して右モータ駆動回路30に出力する。
【0046】
そして、左モータ駆動回路29は、左指令信号に基づいて左側駆動モータ31を運転し、左輪速度Vlの目標値に対応する回転数で左側駆動輪12を回転させる。同様に、右モータ駆動回路30は、右指令信号に基づいて右側駆動モータ32を運転し、右輪速度Vrの目標値に対応する回転数で右側駆動輪13を回転させる。
【0047】
また、コントローラ28は、旋回制御として、左輪速度センサ25が検出する左輪速度Vlの検出値と、アクセル開度TH及び操舵角θから設定する左輪速度Vlの目標値との偏差に基づき、検出値を目標値に近づける公知のフィードバック制御を行う。同様に、右輪速度センサ26が検出する右輪速度Vrの検出値と、アクセル開度TH及び操舵角θから設定する右輪速度Vrの目標値との偏差に基づき、検出値を目標値に近づける公知のフィードバック制御を行う(ステップ103、第3処理。)。
【0048】
次に、以上のように構成された本実施形態の作用について説明する。
車両を旋回させているときに、そのときの操舵角θに関係なく、運転席速度Vseが、アクセル開度THに応じて設定する目標値に制御される。このため、直進状態からステアリングホイール21を操舵していったときに、アクセル開度THを変えない限り運転席速度Vseが殆ど変化しないので、運転者が操舵角θに応じてアクセル開度THを調節する必要がない。
【0049】
次に、以上詳述した本実施形態が有する効果を列記する。
(1) コントローラ28は、旋回制御において、アクセル開度THと、操舵輪14の操舵角θとに基づいて左側駆動モータ31及び右側駆動モータ32の回転数をそれぞれ制御し、旋回中の運転席速度Vseを、アクセル開度THに対して設定する目標値とする。このため、旋回時にも操舵角θに関係なくアクセル開度THに応じた目標値に運転席速度Vseが制御されるので、旋回時の機台操作性が向上する。
【0050】
(2) 共通の固定軸線上に配置された左側駆動輪12及び右側駆動輪13と、両駆動輪12,13の中央(中間)に対応する位置に配置された操舵輪14とを備えた三輪型カウンタバランス式フォークリフト10に実施した。この場合、操舵角θ=−90°又はθ=90°近くまで操舵され、旋回中心が左右両駆動輪12,13の中間位置となっても、アクセル開度THが変わらなければ、運転席速度Vseが直進時から殆ど変化しない。従って、上記(1)の効果が顕著となる。
【0051】
(3) コントローラ28は、旋回制御において、左側駆動モータ31及び右側駆動モータ32の各回転数を操舵角θに基づいて別々に制御し、旋回中の左側駆動輪12及び右側駆動輪13の旋回中心に対する角速度が等しくなるようにする。このため、旋回時に、外輪及び内輪の一方がスリップしても他方がグリップするので、機台が確実に旋回する。また、外輪又は内輪にブレーキ作用が発生しないので、機台が円滑に旋回する。
【0052】
(4) 左輪速度Vl及び右輪速度Vrの運転席速度Vseに対する速度比と、操舵角θとの関係を直線近似したマップM2を用いて、運転席速度Vseの目標値から左輪速度Vl及び右輪速度Vrの各目標値を設定している。このため、それほど処理速度が高くないマイクロコンピュータを用いたコントローラ28であっても左輪速度Vl及び右輪速度Vrの各目標値を迅速に設定することができ、旋回時の運転席速度Vseに対する良好な制御精度を確保できる。
【0053】
次に、上記一実施形態以外の実施形態を列記する。
○ 前記一実施形態の旋回制御で、運転席速度Vseの目標値から、前記関係式(1),(2)を用いて左輪速度Vl及び右輪速度Vrの各目標値を設定する構成とすることもできる。この場合には、操舵角θに対する左輪速度Vl及び右輪速度Vrの各目標値がより高い精度で設定されるので、制御精度の向上が可能となる。
【0054】
○ 前記一実施形態の旋回制御で、旋回時に、内輪の駆動モータへの電力供給を停止して内輪を一時的に従動輪とし、外輪のみを駆動する構成とすることもできる。
【0055】
○ 前記一実施形態で、運転席速度Vseの目標値から操舵輪速度Vstの目標値を求めるとともに操舵輪速度Vstを検出する構成とする。そして、操舵輪速度Vstの検出値を目標値とするように左側駆動モータ31及び右側駆動モータ32を制御する。なお、操舵輪速度Vstに対する左輪速度Vl及び右輪速度Vrの各速度比は、前記関係式(11)〜(13)から得られる次の関係式(14)と、前記関係式(9),(10)とから求めることができる。
【0056】
Vst/Vse=(a* sinα)/(d* sinθ) … (14)
○ 本発明は、前記一実施形態のように、一対の左側駆動輪及び右側駆動輪と、1つの操舵輪とを備えた三輪型のカウンタバランス式フォークリフトに限らず、一対の左側固定輪及び右側固定輪と、1つの操舵駆動輪とを備えたカウンタバランス式フォークリフトに実施することもできる。この場合、運転席速度Vseの目標値から操舵輪速度Vstの目標値を設定する。このような構成には、前記一実施形態の(1),(2)に記載の各効果がある。
【0057】
さらに、一対の左側駆動輪及び右側駆動輪と、1つの操舵駆動輪とを備えたカウンタバランス式フォークリフトに実施することもできる。
○ 前記実施形態で、フォークリフト10の操舵輪14は、所謂ダブルタイヤであってもよい。
【0058】
○ 本発明は、三輪型カウンタバランス式フォークリフトに限らず、1つの操舵駆動輪が、左右一対の左側固定輪及び右側固定輪の中間であって、かつ、中央位置からオフセットした位置に対応する位置に配置された三輪型リーチ式フォークリフトに実施することもできる。
【0059】
○ 本発明は、三輪型のフォークリフトに限らず、四輪型のフォークリフトに実施することもできる。
○ 本発明は、フォークリフトに限らず、その他の電気式産業車両、例えばトーイングトラクタ、搬送車等に実施することもできる。
【0060】
以下、前記各実施形態から把握される技術的思想をその効果とともに列記する。
(1) 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記運転席速度は、前記運転席に設けられた座席(17)の中央位置における移動速度である電気式産業車両の走行制御装置。このような構成によれば、機台の運転席位置で操作するオペレータにとって、旋回時の機台操作性が向上する。
【0061】
(2) 請求項5に記載の発明において、前記運転席速度は、運転席に設けられた座席(17)の中央位置における移動速度である電気式産業車両の走行制御方法。このような構成によれば、機台の運転席位置で操作するオペレータにとって、旋回時の機台操作性が向上する。
【0062】
(3) 請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記操舵輪は、前記左側固定輪と右側固定輪との中央に対応する位置に配置されている産業車両に用いられるものである電気式産業車両の走行制御装置。
【0063】
(4) 請求項1〜請求項4のいずれか一項、又は、上記技術的思想(1)又は(2)に記載の電気式産業車両の走行制御装置を備えた産業車両。
【0064】
【発明の効果】
請求項1〜請求項5に記載の発明によれば、旋回時にも運転席速度が操舵角に関係なくアクセル開度に応じて制御されるので、旋回時の機台操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のフォークリフトにおける旋回制御を示すフローチャート。
【図2】カウンタバランス式フォークリフトを示す模式平面図。
【図3】同じく模式側面図。
【図4】電気的構成を示す模式ブロック図。
【図5】運転席速度に対する左輪速度及び右輪速度の各目標値を設定するマップ。
【図6】スロットル開度に対する運転席速度の目標値を設定するマップ。
【図7】左右駆動輪及び操舵輪の位置関係を示す平面図。
【図8】従来の外輪を基準としたときの運転席速度の操舵角に対する変化状態を示すグラフ。
【図9】同じく操舵輪速度を基準としたときの運転席速度の操舵角に対する変化状態を示すグラフ。
【符号の説明】
10…電気式産業車両としての三輪型カウンタバランス式フォークリフト、12…左側固定輪としての左側駆動輪、13…右側固定輪としての右側駆動輪、14…操舵輪、16…運転席、17…座席、28…旋回制御手段としてのコントローラ、31…左側駆動モータ、32…右側駆動モータ、θ…操舵角、TH…アクセル開度、Vl…駆動輪速度としての左輪速度、Vr…同じく右輪速度、Vse…運転席速度、Vst…操舵輪速度。
Claims (5)
- 駆動輪を回転駆動する駆動モータの回転数をアクセル開度に基づいて制御する電気式産業車両の走行制御装置において、
前記アクセル開度と、操舵輪の操舵角とを用いて前記駆動モータの回転数を制御し、旋回中の運転席の位置における運転席速度を、前記アクセル開度に対して設定する目標値とする速度制御を行う旋回制御手段を備えた電気式産業車両の走行制御装置。 - 左右一対の左側固定輪及び右側固定輪と、該両固定輪の中間に対応する位置に配置された1つの操舵輪とを備えた三輪型の産業車両に用いられるものである請求項1に記載の電気式産業車両の走行制御装置。
- 前記左側固定輪及び右側固定輪は共に駆動輪であり、前記駆動モータは、左側固定輪を駆動する左側駆動モータと、右側固定輪を駆動する右側駆動モータとからなる産業車両に用いられるものであって、
前記旋回制御手段は、前記左側駆動モータ及び右側駆動モータの各回転数を操舵角に基づいて別々に制御し、旋回中の左側駆動輪及び右側駆動輪の旋回中心に対する各角速度を等しくする請求項2に記載の電気式産業車両の走行制御装置。 - 前記運転席は、機台前後方向において、前記左右一対の固定輪と、前記操舵輪との間に位置する請求項2又は請求項3に記載の電気式産業車両の走行制御装置。
- 駆動輪を回転駆動する駆動モータの回転数をアクセル開度に基づいて制御する電気式産業車両の走行制御方法であって、
その時点のアクセル開度に対する運転席速度の目標値を設定する第1処理と、
運転席速度の目標値に対する、その時点の操舵角における駆動輪速度の目標値を求める第2処理と、
前記駆動輪速度の検出値と前記目標値とを用いて前記駆動モータの回転数を制御し、駆動輪速度を目標値に制御する第3処理とを行う電気式産業車両の走行制御方法。
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