JP2004134310A - 耐食導電性皮膜を有する金属材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属基材の表面状態を最適化し、この金属基材の表面に例えば貴金属元素皮膜の場合その膜厚が5μm以下と従来よりも非常に薄く、しかも、ピンホールや表面欠陥のない導電性皮膜を形成せしめた安価で耐久性に優れた耐食導電性皮膜を有する金属材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属基材の表面に耐食導電性皮膜を形成してなる耐食導電性皮膜を有し、上記金属基材の表面に観察される当該金属基材の第二相化合物の長径の最大値Lが上記耐食導電性皮膜の膜厚Tの5/6倍以下(L≦5/6T)であるような耐食導電性皮膜を有する金属材であり、また、金属基材に対して、酸洗後に亜鉛浸漬を行う亜鉛浸漬処理を4回以上繰り返し、次いで金属基材の表面に耐食導電性皮膜を形成せしめる耐食導電性皮膜を有する金属材の製造方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】金属基材の表面に耐食導電性皮膜を形成してなる耐食導電性皮膜を有し、上記金属基材の表面に観察される当該金属基材の第二相化合物の長径の最大値Lが上記耐食導電性皮膜の膜厚Tの5/6倍以下(L≦5/6T)であるような耐食導電性皮膜を有する金属材であり、また、金属基材に対して、酸洗後に亜鉛浸漬を行う亜鉛浸漬処理を4回以上繰り返し、次いで金属基材の表面に耐食導電性皮膜を形成せしめる耐食導電性皮膜を有する金属材の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、基材がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材、チタン又はチタン合金からなるチタン材、ステンレス鋼材、Ni−Fe合金材等の金属材料で形成され、この金属基材の表面に耐食導電性皮膜を有し、例えば、複数の単位電池を積層して燃料電池を構成する際に各単位電池間に介装される燃料電池用セパレータ、携帯機器の一次電池の電極、金属の電解採取や電解メッキ等において用いられる電極材料等の多くの用途に有用な耐食導電性皮膜を有する金属材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平10−228,914号公報
【特許文献2】特開平11−162,478号公報
【特許文献3】特開2000−106,197号公報
【特許文献4】特開2001−15,126号公報
【特許文献5】特開2001−345,109号公報
【特許文献6】特開2001−357,859号公報
【0003】
例えば、燃料電池は、アノード及びカソードからなる一対の電極とこれらの電極間に介装されるプロトン伝導体の電解質膜とで構成された複数の単位電池を、耐酸性、導電性に優れたガス不浸透性の黒鉛材料等で形成されたセパレータで仕切ると共に、これら各単位電池の電極とこの電極に接触する各セパレータの電極接触面との間にはそのいずれか一方に反応ガス流路を形成して構成されており、そして、上記各単位電池のアノード側に水素等の燃料ガスを、また、カソード側に酸素や空気等の酸化剤ガスをそれぞれ供給し、アノード側で燃料ガスの酸化反応をさせてプロトンと電子とを生成せしめ、プロトンについては電解質膜中を移動させてカソード側に供給すると共に、電子については外部回路に取り出し、また、カソード側では電解質膜中を移動してきたプロトン、外部回路から供給される電子、及び酸化剤ガスを反応させるもので、アノード側で外部回路に取り出した電子が電流として仕事をするようになっている。
【0004】
そして、このような燃料電池に用いられるセパレータについては、これまで主として黒鉛材料が用いられていたが、材料自体が高価であり、靭性に乏しくて精密な機械加工が必要な場合に加工コストが高くなり、耐衝撃性や耐振動性等にも乏しく、しかも、リサイクルも困難であることから、近年においては、アルミニウム材、チタン材、ステンレス鋼材、Ni−Fe合金等の金属材料でセパレータ基材を形成し、その少なくとも電極接触面に金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属や、銀、窒化クロム、白金族の複合酸化物あるいは炭化ホウ素とニッケルの複合物から選ばれた材料等の導電性皮膜をメッキにより形成せしめた金属製セパレータが提案されている(例えば、特開平10−228,914号、特開平11−162,478号、特開2000−106,197号、特開2001−15,126号等の各公報)。
【0005】
しかしながら、このような金属製セパレータにおいても、バルク電気抵抗が低い、高い気密性及び機械的強度を有して加工コストの低減が図れる、薄型化が可能で小型化や軽量化が容易である、アルミニウム材を用いた場合には一層の軽量化が可能である等の利点がある反面、基材の金属が腐食し易く、特にアルミニウム材の場合にはその腐食速度が大きいという腐食の問題があり、しかも、この腐食の問題を解決するために導電性皮膜の膜厚を厚くするとコストが高くなり、反対に、コストを抑えるために膜厚を薄くするとピンホール又は表面欠陥が発生して腐食の問題を解決することが困難になる。
【0006】
そこで、従来においても、金属製セパレータにおける上述した種々の問題を解決するために、例えば、セパレータが電極と接触する電極接触面に金メッキ処理により部分的に厚肉の金メッキ皮膜を設けたり(特開2001−345,109号公報)、あるいは、セパレータが電極と接触する電極接触面に電気メッキによりAu−Ni組成が連続的に変化するAu−Ni傾斜組成皮膜を設けること(特開2001−357,859号公報)が提案されている。
【0007】
しかしながら、前者の部分的に厚肉の金メッキ皮膜を設けることには、メッキ工程間にマスキング工程を必要として工程数が増加するという問題があり、また、後者のAu−Ni傾斜組成皮膜を設けることにはNiイオンの溶出が1ppmでも発生すると電池性能が低下してしまうという問題があって、いずれの場合も、例えば次世代の電気自動車用発電装置等の用途において特に要求される高発電性能、長期耐久性、軽量化、及び低コスト化を必ずしも同時に満足できるものとはいえない。
【0008】
このような問題は、上記燃料電池用セパレータの場合に限らず、携帯機器の一次電池の電極、金属の電解採取や電解メッキ等において用いられる電極材料等においても全く同様であり、金属基材の表面に耐食導電性皮膜を形成してなる金属材を用いる分野で共通する問題になっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、金属基材の表面に、例えば貴金属元素皮膜の場合その膜厚が5μm以下であって従来よりも膜厚が非常に薄く、しかも、ピンホールや表面欠陥のない導電性皮膜を形成せしめ、これによって腐食の問題とコストの問題とを同時に解決することができる金属材について鋭意検討した結果、金属基材の表面状態を最適化することにより解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明の目的は、金属基材の表面状態を最適化し、この金属基材の表面に例えば貴金属元素皮膜の場合その膜厚が5μm以下と従来よりも非常に薄く、しかも、ピンホールや表面欠陥のない導電性皮膜を形成せしめた安価で耐久性に優れた耐食導電性皮膜を有する金属材を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、このような耐食導電性皮膜を有する金属材を製造するための方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、金属基材の表面に耐食導電性皮膜を形成してなる耐食導電性皮膜を有する金属材であり、上記金属基材の表面に観察される当該金属基材の第二相化合物は、その長径の最大値Lが上記耐食導電性皮膜の膜厚Tの5/6倍以下(L≦5/6T)である、耐食導電性皮膜を有する金属材である。
【0012】
また、本発明は、このような耐食導電性皮膜を有する金属材を製造するに際し、金属基材に対して、酸洗後に亜鉛浸漬を行う亜鉛浸漬処理を4回以上繰り返し、次いで金属基材の表面に耐食導電性皮膜を形成せしめる、耐食導電性皮膜を有する金属材の製造方法である。
【0013】
本発明において、金属材を構成する金属基材は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材、チタン又はチタン合金からなるチタン材、ステンレス鋼材、Ni−Fe合金材等の金属材料で形成され、電気抵抗が低くて軽量であることから、好ましくはアルミニウム材で形成される。この目的で用いられるアルミニウム材については、特に制限されるものではなく、例えば、高純度アルミニウム(JIS H4170; 1N99)や、A1100、A5052、A6063等の種々のアルミニウム合金を挙げることができる。
【0014】
そして、この金属基材の第二相化合物とは、金属基材中においてその素材金属以外の物質により相を形成している物質(化合物)を意味し、この第二相化合物については、走査型電子顕微鏡(SEM)の反射電子像を利用してその大きさや分布状態を調べることができ、また、X線回折によって化合物を同定することもできる。
【0015】
この金属基材の第二相化合物としては、具体的には、例えば金属基材がアルミニウム材で形成されている場合には、その素材金属のアルミニウム(Al)以外の物質(Fe, Si, Cu, Mg, Znその他の不純物)を含む、例えばAl3Fe、αAlFeSi、Al3Mg2、Mg2Si、Al−Mg−Zn化合物等の化合物を挙げることができ、また、金属基材がチタン材で形成されている場合には、その素材金属のチタン(Ti)以外の物質(Al, Mn, Mo, Ta, Fe, Sn, Zrその他の不純物)を含む、例えばTi3Al、TiMn、TiFe、Ti3Sn等の化合物を挙げることができ、更に、金属基材がステンレス鋼材で形成されている場合には、その素材金属の鉄(Fe)以外の物質(Cr, Ni, Mo, Nb, Ti, Cその他の不純物)を含む、例えばFeCr、Cr23C6、Fe3C、MoC、NbC等の化合物を挙げることができる。
【0016】
そして、本発明で用いる金属基材は、その表面に観察される当該金属基材の第二相化合物の長径の最大値Lが上記耐食導電性皮膜の膜厚Tの5/6倍以下(L≦5/6T)、好ましくは2/3倍以下(L≦2/3T)である必要があり、また、金属基材表層にある第二相化合物は耐食導電性皮膜のピンホール等の欠陥が生じる起点となることから、金属基材の表面下5μmの深さまでの間に観察される第二相化合物の長径の最大値Lが耐食導電性皮膜の膜厚の5/6倍以下(L≦5/6T)、好ましくは2/3倍以下(L≦2/3T)であるのがよく、更に、より好ましくは、その表面に観察される当該金属基材の第二相化合物が実質的に存在しないのがよく、また同様に、金属基材の表面下5μmの深さまでの間に観察される第二相化合物が実質的に存在しないのがよい。
【0017】
ここで、上記の観察される第二相化合物の長径の最大値Lが上記耐食導電性皮膜の膜厚Tの5/6倍以下(L≦5/6T)であるとは、例えば、金属基材の表面に形成される耐食導電性皮膜の膜厚が1.2μmである場合にはこの金属基材の表面に観察される第二相化合物の長径の最大値Lが1.0μm以下であることを意味し、本発明において耐食導電性皮膜が貴金属元素皮膜の場合にはその膜厚の目標が5μm以下であるので、結果として金属基材の表面に観察される第二相化合物の長径の最大値Lも4.2μm以下である必要がある。この金属基材の表面に観察される第二相化合物の長径の最大値Lが耐食導電性皮膜の膜厚Tの5/6倍を超えると、この第二相化合物が耐食導電性皮膜のピンホール等の欠陥が生じる起点となり、結果としてピンホール等の表面欠陥が生じる。
また、上記の観察される当該金属基材の第二相化合物が実質的に存在しないとは、1mm2の範囲を1000倍の拡大倍率で顕微鏡観察をした場合に第二相化合物を肉眼で確認できないという意味で、これは、実質的に第二相化合物の長径0.05μmを最低の大きさとし、これ以下の第二相化合物は無視できることを意味する。
【0018】
本発明において、金属基材の表面に第二相化合物が観察される場合、この第二相化合物の数については好ましくは20個/mm2以下であるのがよく、より好ましくは10個/mm2以下である。金属基材の表面に観察される第二相化合物の数が20個/mm2を超えると、耐食導電性皮膜の付着力が不足し、当該部分の皮膜が浮き上がり易くなる。
【0019】
本発明において、金属基材がアルミニウム材である場合、その化学組成については、好ましくは、マグネシウム(Mg)が7質量%未満、亜鉛(Zn)が3質量%未満、ケイ素(Si)が0.01質量%未満、鉄(Fe)が0.01質量%未満、及び銅(Cu)が0.01質量%未満であって、残部がアルミニウム(Al)及び不可避不純物元素であるのがよい。これは、通常のDC(Direct chilling)法により圧延用スラブを製造すると、その鋳造時の凝固速度が大きくて非平衡状態で固化するため、不可避不純物は強制固溶されるが、上記のMg、Zn、Si、Fe、Cuはその含有量が上記の規制値を超えると粗大な第二相化合物として晶出する場合があるからである。
【0020】
また、本発明において、上記金属基材の表面に形成される耐食導電性皮膜については、好ましくは、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)又はこれらの貴金属の合金を用いて形成される貴金属元素皮膜や、ニッケル皮膜、又は銅皮膜を挙げることができる。そして、このような耐食導電性皮膜を形成する方法については、特に制限されず、スパッタリング、メッキ等の種々の方法が挙げられるが、皮膜の物理的強度が高い、脱ガス工程の有無等の観点から、好ましくはメッキ方法である。
【0021】
そして、この耐食導電性皮膜の膜厚については、それが貴金属元素皮膜である場合、金属材の用途や皮膜を形成する金属の種類等によっても異なるが、通常0.01μm以上5μm以下、好ましくは0.05μm以上5μm以下であるのがよい。この膜厚が、0.01μmより薄いと、第二相化合物が存在しない表面であってもピンホールが生じ易くなり、反対に、5μmより厚くなると、その耐食特性は変わらないが、低コスト化を達成することが困難になる。この耐食導電性皮膜については、ピンホールや表面欠陥の無い完全無欠陥である必要があり、少しでもピンホールや表面欠陥が存在すると、これらピンホールや表面欠陥から腐食が始まり、ひいては皮膜の剥離という問題を生じる。
【0022】
本発明において、耐食導電性皮膜を有する金属材を製造するに際しては、先ず、表面に観察される第二相化合物の長径の最大値Lが可及的に小さいか、あるいは、表面に観察される第二相化合物が実質的に存在しない金属基材を調製する必要がある。
【0023】
このような金属基材を製造する方法については、例えば、高純度アルミニウム地金を溶解し、必要により合金元素を添加して成分調整をした後に所望の成分組成のアルミニウム合金を溶製し、更にDC鋳造して鋳塊を製造した後、熱間圧延と冷間圧延により所定の板厚に圧延し、更に制御された条件で焼鈍し、必要によりグラインディング加工を行う等の方法(例えば、特開平9−235,640号公報や特開平4−341,536号公報参照)が挙げられる。
【0024】
本発明においては、このようにして製造された金属基材の表面に、この金属基材の表面に観察される当該金属基材の第二相化合物の長径の最大値Lよりも1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上の膜厚Tを有する耐食導電性皮膜を形成するが、好ましくは、耐食導電性皮膜を形成するのに先駆けて、表面研磨処理、エッチング処理、酸洗後に亜鉛浸漬を行う亜鉛浸漬処理等を行うのがよい。
【0025】
この目的で行う上記表面研磨処理においては、表面粗さ{JIS B 0601(2001)}を好ましくは0.02〜0.3μm、より好ましくは0.03〜0.2μmの範囲に調整するのがよい。この際の金属基材の表面粗さが0.3μmより大きいと形成された耐食導電性皮膜にこの金属基材の表面の凹部に起因してピンホールや表面欠陥が発生し易くなり、結果として耐食性が低下し、また、0.02μmより小さくなると、形成された耐食導電性皮膜と金属基材の表面との間の密着性が低下し、製造された金属材の使用時に局部的に皮膜剥離が生じる場合がある。
【0026】
ここで、金属基材の表面粗さを0.02〜0.3μmの範囲に表面研磨処理するための方法については、特に制限されるものではないが、通常は電解研磨、機械研磨、バフ研磨、ブラスト研磨、バレル研磨等の方法が採用され、好ましくは電解研磨処理である。金属基材の表面研磨処理は、金属基材の材質等を考慮し、上記のいずれか1種の処理方法のみで行ってもよいほか、2種以上の処理方法を組み合わせて行ってもよい。
【0027】
また、上記エッチング処理については、通常、脱脂処理された金属基材をエッチング処理液に浸漬して行われる。この目的で用いられるエッチング処理液としては、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液、又は、硫酸−リン酸混合水溶液等の酸水溶液が用いられる。そして、アルカリ水溶液を用いる場合には、その濃度は20g/L以上200g/L以下、好ましくは50g/L以上150g/L以下であって、処理条件としては、通常、浸漬温度が30℃以上70℃以下、好ましくは40℃以上60℃以下であって、浸漬時間が0.5分以上5分以下、好ましくは1分以上3分以下である。また、酸水溶液として硫酸−リン酸混合水溶液を用いる場合には、その濃度は硫酸濃度が10g/L以上500g/L以下、好ましくは30g/L以上300g/L以下でリン酸濃度が10g/L以上1200g/L以下、好ましくは30g/L以上500g/L以下であり、処理条件としては、通常、浸漬温度が30℃以上110℃以下、好ましくは55℃以上75℃以下であって、浸漬時間が0.5分以上15分以下、好ましくは1分以上6分以下である。
【0028】
更に、上記亜鉛置換処理については、その酸洗工程では、その酸洗浴として、酸が硝酸、硫酸、塩酸等であって、濃度が5wt%以上50wt%以下の酸水溶液、好ましくは酸が硝酸であって濃度が10wt%以上40wt%以下の酸水溶液、より好ましくは25wt%以上30wt%以下の濃度の硝酸水溶液を用い、浸漬温度が15℃以上30℃以下、好ましくは20℃以上25℃以下であって、浸漬時間が5秒以上120秒以下、好ましくは15秒以上60秒以下の条件で行うのがよい。このような酸洗浴を用いてこのような条件で酸洗を行うことにより、置換亜鉛層を効果的に除去できる。
【0029】
また、亜鉛置換処理の亜鉛浸漬工程では、その亜鉛浸漬浴として、酸化亜鉛濃度1.5g/L以上60g/L以下、好ましくは3.5g/L以上50g/L以下、及び、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリのアルカリ濃度40g/L以上400g/L以下、好ましくは80g/L以上200g/L以下の酸化亜鉛アルカリ水溶液を用い、浸漬温度が15℃以上30℃以下、好ましくは20℃以上25℃以下であって、浸漬時間が5秒以上120秒以下、好ましくは15秒以上50秒以下の条件で行うのがよい。亜鉛浸漬浴の酸化亜鉛濃度が1.5g/Lより低いと置換亜鉛層が不均一になるという問題があり、反対に、60g/Lより高いと金メッキ皮膜が不均一になるという問題が生じ、また、アルカリ濃度が40g/Lより低いと置換亜鉛層の密着性が低下するという問題があり、反対に、400g/Lより高いと金属基材の表面の粗さが増大するという問題が生じる。
【0030】
本発明においては、好ましくは上記の酸洗後に亜鉛浸漬を行う亜鉛置換処理を少なくとも4回以上繰り返して行うのがよい。この亜鉛置換処理が3回までであると、耐食導電性皮膜にピンホールや表面欠陥が発生する虞があり、ピンホールや表面欠陥の無い完全無欠陥の貴金属メッキ皮膜を形成することが困難になる。
【0031】
このようにして金属基材を表面研磨処理し、次いでエッチング処理し、更に4回以上の亜鉛置換処理を行った後、金属基材の表面に所定の膜厚、例えば貴金属元素皮膜の場合には膜厚0.01〜5μmの耐食導電性皮膜を形成する。
【0032】
この耐食導電性皮膜を形成する方法については、メッキ処理やスパッタリング処理等の方法を挙げることができるが、好ましくはメッキ処理であり、例えば無電解メッキ(Me−ELP)、置換メッキ(Me−SP)、電解メッキ(Me−EP)、電解ストライクメッキ(Me−EPS)等のメッキ処理法を挙げることができ、また、そのメッキ浴についても従来と同様の浴組成のものを用いることができる。また、このメッキ処理における処理条件についても従来と同様の処理条件を採用することができ、採用するメッキ金属の種類によっても異なるが、例えば電解金メッキ処理の場合には浴温度が50〜75℃程度で、電流密度が0.1〜0.5A/dm2程度である。
【0033】
上述した本発明の方法によれば、金属基材の表面に、可及的に薄膜であるにもかかわらず、ピンホールや表面欠陥のない完全無欠陥の耐食導電性皮膜を形成せしめることができるので、高価な貴金属製の耐食導電性皮膜を形成した場合であってもその膜厚を可及的に薄くすることができ、安価でしかも耐久性に優れており、燃料電池用セパレータ、携帯機器の一次電池の電極、金属の電解採取や電解メッキ等において用いられる電極材料等の多くの用途に有用な耐食導電性皮膜を有する金属材を容易に製造することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、実験例、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
【0035】
実験例1
〔アルミニウム基材の調製〕
アルミニウム(IN99)を溶解し、添加元素を溶解した後、DC鋳造し、アルミニウム鋳塊(スラブ塊)を製造した。次にこのアルミニウム鋳塊を300〜550℃で均熱処理し、熱間圧延したのち、更に冷間圧延して板厚5.5mmのアルミニウム板を調製した。このアルミニウム板を100mm×100mmの大きさに切り出し、研削砥石によりグラインディング加工を行い、5mm×100mm×100mmの大きさのアルミニウム基材を調製した。
【0036】
このようにして得られたアルミニウム基材について、その表面に観察される第二相化合物をSEMの反射電子像を利用して観察した結果、8個/mm2の第二相化合物が観察され、その長径の最大値(表面の第二相化合物の長径最大値)Lは2.5μmであった。また、深さ方向の第二相化合物について、アルミニウム基材を50g/L水酸化ナトリウム水溶液中に温度50℃の条件で浸漬し、段階的にエッチングすることによって表面下5μmまでの深さにある第二相化合物の長径の最大値を調べた結果、最大値は3.0μmであった。
【0037】
〔燃料電池用のアルミ製セパレータの調製〕
上で得られた板厚5mmの各アルミニウム基材の両面にプレス加工により深さ0.8mm及び幅0.8mmの反応ガス流路をそれぞれ形成し、次いで水酸化ナトリウム25g/L、炭酸ナトリウム25g/L、燐酸ナトリウム25g/L、及び界面活性剤1.5g/Lの組成を有する脱脂浴中に、浸漬温度60℃及び浸漬時間5分の条件で脱脂処理し、次いで水洗した後、50g/L−水酸化ナトリウム水溶液をエッチング処理液として浸漬温度50℃及び浸漬時間3分の条件でエッチング処理した。
【0038】
このようにして得られたエッチング処理済のアルミニウム基材について、30wt%−硝酸水溶液を酸洗浴とし、また、水酸化ナトリウム100g/L、酸化亜鉛50g/L、塩化第二鉄1g/L、及びロッシェル塩10g/Lの組成を有する亜鉛浸漬浴を用い、室温下に30秒浸漬する酸洗後に室温下に30秒浸漬する亜鉛浸漬を行う亜鉛置換処理を4回行い、次いで電解金メッキ浴(テ゛ク゛サ社製アウルナ591)を用いて、温度50℃、電流密度0.5A/dm2及び金析出量2mg/クーロンの条件で処理時間を制御して電解金メッキ処理を行い、電解金メッキ皮膜の膜厚Tと第二相化合物の長径の最大値Lとの比(T/L)がそれぞれ0.5、1.0、1.2、1.5及び2.0である5種類のアルミ製セパレータの試作品を作製した。
【0039】
また、上記と同じ4回の亜鉛置換処理をしたセパレータ基材について、電解銀メッキ浴(テ゛ク゛サ社製アルク゛ナCF)を用いて温度70℃、電流密度50A/dm2の条件で電解銀メッキ処理を行い、電解銀メッキ皮膜の膜厚Tと第二相化合物の長径の最大値Lとの比(T/L)がそれぞれ0.5、1.0、1.2、1.5及び2.0である5種類のアルミ製セパレータの試作品を作製した。
【0040】
更に、上記と同じ4回の亜鉛置換処理をしたセパレータ基材について、電解白金メッキ浴(テ゛ク゛サ社製フ゜ラチナK)を用いて温度40℃、電流密度1.0A/dm2の条件で電解白金メッキ処理を行い、電解白金メッキ皮膜の膜厚Tと第二相化合物の長径の最大値Lとの比(T/L)がそれぞれ0.5、1.0、1.2、1.5及び2.0である5種類のアルミ製セパレータの試作品を作製した。
【0041】
〔皮膜ピンホール数の測定〕
このようにして作製した各セパレータ試作品について、硫酸銅20g/Lの水溶液中に室温下で5分間浸漬し、銅の析出部分をカウントし、ピンホールの個数(個/cm2)を測定した。
結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
また、上記各セパレータ試作品について、試験液としてpH3の酢酸水溶液を用い、参照極として銀塩化銀電極を用い、走査電位を0〜1000mV vs Ag/AgClとし、電気化学的分極特性評価法により分極電流(μA/cm2)を測定した。
結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
更に、上記各セパレータ試作品について、膜電極接合体を用いて単位電池を組み立て、セパレータ試作品の反応ガス流路に水素ガス及び空気を供給して電池発電試験を連続して行い、発電試験時の電池起電力が発電開始時の起電力と比較して10%低下する時間を測定し、セパレータ寿命(hrs.)とした。
結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
この実験例1によれば、表1の結果から明らかなように、メッキ皮膜の膜厚Tとアルミニウム基材の表面に観察される第二相化合物の長径の最大値Lとの比(T/L)が1.2以上の時にメッキ皮膜のピンホールが観測されなくなり、また、表2に示す分極電流でみてもT/Lの値が1.2以上で略完全に飽和し、表面欠陥の無い無欠陥のメッキ皮膜が得られており、更に、表3に示すセパレータ寿命をみても、T/Lの値が1.2以上で3000時間以上に到達し、アルミ製セパレータとしての性能が充分に引き出されることが判明した。
【0048】
実施例1〜12及び比較例1〜4
上記実験例1と同様にして、表面の第二相化合物の長径最大値L及び表面下5μmの第二相化合物の長径最大値Lが表4に示す値を有するアルミニウム基材を調製し、次いで表4に示す貴金属メッキ処理を行って貴金属メッキ皮膜の膜厚Tと表面の第二相化合物の長径最大値L又は表面下5μmの第二相化合物の長径最大値Lとの比(T/L)を有する貴金属メッキ皮膜を形成した以外は、上記実験例1と同様にして、アルミ製セパレータの試作品を作製した。
得られた各セパレータ試作品について、上記実験例1の場合と同様にして分極電流(μA/cm2)とセパレータ寿命(hrs.)とを測定した。
結果を表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、金属基材の表面状態を最適化し、この金属基材の表面に例えば貴金属元素皮膜の場合その膜厚が5μm以下と従来よりも非常に薄く、しかも、ピンホールや表面欠陥のない導電性皮膜を形成せしめた安価で耐久性に優れた耐食導電性皮膜を有する金属材を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
この発明は、基材がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材、チタン又はチタン合金からなるチタン材、ステンレス鋼材、Ni−Fe合金材等の金属材料で形成され、この金属基材の表面に耐食導電性皮膜を有し、例えば、複数の単位電池を積層して燃料電池を構成する際に各単位電池間に介装される燃料電池用セパレータ、携帯機器の一次電池の電極、金属の電解採取や電解メッキ等において用いられる電極材料等の多くの用途に有用な耐食導電性皮膜を有する金属材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平10−228,914号公報
【特許文献2】特開平11−162,478号公報
【特許文献3】特開2000−106,197号公報
【特許文献4】特開2001−15,126号公報
【特許文献5】特開2001−345,109号公報
【特許文献6】特開2001−357,859号公報
【0003】
例えば、燃料電池は、アノード及びカソードからなる一対の電極とこれらの電極間に介装されるプロトン伝導体の電解質膜とで構成された複数の単位電池を、耐酸性、導電性に優れたガス不浸透性の黒鉛材料等で形成されたセパレータで仕切ると共に、これら各単位電池の電極とこの電極に接触する各セパレータの電極接触面との間にはそのいずれか一方に反応ガス流路を形成して構成されており、そして、上記各単位電池のアノード側に水素等の燃料ガスを、また、カソード側に酸素や空気等の酸化剤ガスをそれぞれ供給し、アノード側で燃料ガスの酸化反応をさせてプロトンと電子とを生成せしめ、プロトンについては電解質膜中を移動させてカソード側に供給すると共に、電子については外部回路に取り出し、また、カソード側では電解質膜中を移動してきたプロトン、外部回路から供給される電子、及び酸化剤ガスを反応させるもので、アノード側で外部回路に取り出した電子が電流として仕事をするようになっている。
【0004】
そして、このような燃料電池に用いられるセパレータについては、これまで主として黒鉛材料が用いられていたが、材料自体が高価であり、靭性に乏しくて精密な機械加工が必要な場合に加工コストが高くなり、耐衝撃性や耐振動性等にも乏しく、しかも、リサイクルも困難であることから、近年においては、アルミニウム材、チタン材、ステンレス鋼材、Ni−Fe合金等の金属材料でセパレータ基材を形成し、その少なくとも電極接触面に金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属や、銀、窒化クロム、白金族の複合酸化物あるいは炭化ホウ素とニッケルの複合物から選ばれた材料等の導電性皮膜をメッキにより形成せしめた金属製セパレータが提案されている(例えば、特開平10−228,914号、特開平11−162,478号、特開2000−106,197号、特開2001−15,126号等の各公報)。
【0005】
しかしながら、このような金属製セパレータにおいても、バルク電気抵抗が低い、高い気密性及び機械的強度を有して加工コストの低減が図れる、薄型化が可能で小型化や軽量化が容易である、アルミニウム材を用いた場合には一層の軽量化が可能である等の利点がある反面、基材の金属が腐食し易く、特にアルミニウム材の場合にはその腐食速度が大きいという腐食の問題があり、しかも、この腐食の問題を解決するために導電性皮膜の膜厚を厚くするとコストが高くなり、反対に、コストを抑えるために膜厚を薄くするとピンホール又は表面欠陥が発生して腐食の問題を解決することが困難になる。
【0006】
そこで、従来においても、金属製セパレータにおける上述した種々の問題を解決するために、例えば、セパレータが電極と接触する電極接触面に金メッキ処理により部分的に厚肉の金メッキ皮膜を設けたり(特開2001−345,109号公報)、あるいは、セパレータが電極と接触する電極接触面に電気メッキによりAu−Ni組成が連続的に変化するAu−Ni傾斜組成皮膜を設けること(特開2001−357,859号公報)が提案されている。
【0007】
しかしながら、前者の部分的に厚肉の金メッキ皮膜を設けることには、メッキ工程間にマスキング工程を必要として工程数が増加するという問題があり、また、後者のAu−Ni傾斜組成皮膜を設けることにはNiイオンの溶出が1ppmでも発生すると電池性能が低下してしまうという問題があって、いずれの場合も、例えば次世代の電気自動車用発電装置等の用途において特に要求される高発電性能、長期耐久性、軽量化、及び低コスト化を必ずしも同時に満足できるものとはいえない。
【0008】
このような問題は、上記燃料電池用セパレータの場合に限らず、携帯機器の一次電池の電極、金属の電解採取や電解メッキ等において用いられる電極材料等においても全く同様であり、金属基材の表面に耐食導電性皮膜を形成してなる金属材を用いる分野で共通する問題になっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、金属基材の表面に、例えば貴金属元素皮膜の場合その膜厚が5μm以下であって従来よりも膜厚が非常に薄く、しかも、ピンホールや表面欠陥のない導電性皮膜を形成せしめ、これによって腐食の問題とコストの問題とを同時に解決することができる金属材について鋭意検討した結果、金属基材の表面状態を最適化することにより解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明の目的は、金属基材の表面状態を最適化し、この金属基材の表面に例えば貴金属元素皮膜の場合その膜厚が5μm以下と従来よりも非常に薄く、しかも、ピンホールや表面欠陥のない導電性皮膜を形成せしめた安価で耐久性に優れた耐食導電性皮膜を有する金属材を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、このような耐食導電性皮膜を有する金属材を製造するための方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、金属基材の表面に耐食導電性皮膜を形成してなる耐食導電性皮膜を有する金属材であり、上記金属基材の表面に観察される当該金属基材の第二相化合物は、その長径の最大値Lが上記耐食導電性皮膜の膜厚Tの5/6倍以下(L≦5/6T)である、耐食導電性皮膜を有する金属材である。
【0012】
また、本発明は、このような耐食導電性皮膜を有する金属材を製造するに際し、金属基材に対して、酸洗後に亜鉛浸漬を行う亜鉛浸漬処理を4回以上繰り返し、次いで金属基材の表面に耐食導電性皮膜を形成せしめる、耐食導電性皮膜を有する金属材の製造方法である。
【0013】
本発明において、金属材を構成する金属基材は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材、チタン又はチタン合金からなるチタン材、ステンレス鋼材、Ni−Fe合金材等の金属材料で形成され、電気抵抗が低くて軽量であることから、好ましくはアルミニウム材で形成される。この目的で用いられるアルミニウム材については、特に制限されるものではなく、例えば、高純度アルミニウム(JIS H4170; 1N99)や、A1100、A5052、A6063等の種々のアルミニウム合金を挙げることができる。
【0014】
そして、この金属基材の第二相化合物とは、金属基材中においてその素材金属以外の物質により相を形成している物質(化合物)を意味し、この第二相化合物については、走査型電子顕微鏡(SEM)の反射電子像を利用してその大きさや分布状態を調べることができ、また、X線回折によって化合物を同定することもできる。
【0015】
この金属基材の第二相化合物としては、具体的には、例えば金属基材がアルミニウム材で形成されている場合には、その素材金属のアルミニウム(Al)以外の物質(Fe, Si, Cu, Mg, Znその他の不純物)を含む、例えばAl3Fe、αAlFeSi、Al3Mg2、Mg2Si、Al−Mg−Zn化合物等の化合物を挙げることができ、また、金属基材がチタン材で形成されている場合には、その素材金属のチタン(Ti)以外の物質(Al, Mn, Mo, Ta, Fe, Sn, Zrその他の不純物)を含む、例えばTi3Al、TiMn、TiFe、Ti3Sn等の化合物を挙げることができ、更に、金属基材がステンレス鋼材で形成されている場合には、その素材金属の鉄(Fe)以外の物質(Cr, Ni, Mo, Nb, Ti, Cその他の不純物)を含む、例えばFeCr、Cr23C6、Fe3C、MoC、NbC等の化合物を挙げることができる。
【0016】
そして、本発明で用いる金属基材は、その表面に観察される当該金属基材の第二相化合物の長径の最大値Lが上記耐食導電性皮膜の膜厚Tの5/6倍以下(L≦5/6T)、好ましくは2/3倍以下(L≦2/3T)である必要があり、また、金属基材表層にある第二相化合物は耐食導電性皮膜のピンホール等の欠陥が生じる起点となることから、金属基材の表面下5μmの深さまでの間に観察される第二相化合物の長径の最大値Lが耐食導電性皮膜の膜厚の5/6倍以下(L≦5/6T)、好ましくは2/3倍以下(L≦2/3T)であるのがよく、更に、より好ましくは、その表面に観察される当該金属基材の第二相化合物が実質的に存在しないのがよく、また同様に、金属基材の表面下5μmの深さまでの間に観察される第二相化合物が実質的に存在しないのがよい。
【0017】
ここで、上記の観察される第二相化合物の長径の最大値Lが上記耐食導電性皮膜の膜厚Tの5/6倍以下(L≦5/6T)であるとは、例えば、金属基材の表面に形成される耐食導電性皮膜の膜厚が1.2μmである場合にはこの金属基材の表面に観察される第二相化合物の長径の最大値Lが1.0μm以下であることを意味し、本発明において耐食導電性皮膜が貴金属元素皮膜の場合にはその膜厚の目標が5μm以下であるので、結果として金属基材の表面に観察される第二相化合物の長径の最大値Lも4.2μm以下である必要がある。この金属基材の表面に観察される第二相化合物の長径の最大値Lが耐食導電性皮膜の膜厚Tの5/6倍を超えると、この第二相化合物が耐食導電性皮膜のピンホール等の欠陥が生じる起点となり、結果としてピンホール等の表面欠陥が生じる。
また、上記の観察される当該金属基材の第二相化合物が実質的に存在しないとは、1mm2の範囲を1000倍の拡大倍率で顕微鏡観察をした場合に第二相化合物を肉眼で確認できないという意味で、これは、実質的に第二相化合物の長径0.05μmを最低の大きさとし、これ以下の第二相化合物は無視できることを意味する。
【0018】
本発明において、金属基材の表面に第二相化合物が観察される場合、この第二相化合物の数については好ましくは20個/mm2以下であるのがよく、より好ましくは10個/mm2以下である。金属基材の表面に観察される第二相化合物の数が20個/mm2を超えると、耐食導電性皮膜の付着力が不足し、当該部分の皮膜が浮き上がり易くなる。
【0019】
本発明において、金属基材がアルミニウム材である場合、その化学組成については、好ましくは、マグネシウム(Mg)が7質量%未満、亜鉛(Zn)が3質量%未満、ケイ素(Si)が0.01質量%未満、鉄(Fe)が0.01質量%未満、及び銅(Cu)が0.01質量%未満であって、残部がアルミニウム(Al)及び不可避不純物元素であるのがよい。これは、通常のDC(Direct chilling)法により圧延用スラブを製造すると、その鋳造時の凝固速度が大きくて非平衡状態で固化するため、不可避不純物は強制固溶されるが、上記のMg、Zn、Si、Fe、Cuはその含有量が上記の規制値を超えると粗大な第二相化合物として晶出する場合があるからである。
【0020】
また、本発明において、上記金属基材の表面に形成される耐食導電性皮膜については、好ましくは、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)又はこれらの貴金属の合金を用いて形成される貴金属元素皮膜や、ニッケル皮膜、又は銅皮膜を挙げることができる。そして、このような耐食導電性皮膜を形成する方法については、特に制限されず、スパッタリング、メッキ等の種々の方法が挙げられるが、皮膜の物理的強度が高い、脱ガス工程の有無等の観点から、好ましくはメッキ方法である。
【0021】
そして、この耐食導電性皮膜の膜厚については、それが貴金属元素皮膜である場合、金属材の用途や皮膜を形成する金属の種類等によっても異なるが、通常0.01μm以上5μm以下、好ましくは0.05μm以上5μm以下であるのがよい。この膜厚が、0.01μmより薄いと、第二相化合物が存在しない表面であってもピンホールが生じ易くなり、反対に、5μmより厚くなると、その耐食特性は変わらないが、低コスト化を達成することが困難になる。この耐食導電性皮膜については、ピンホールや表面欠陥の無い完全無欠陥である必要があり、少しでもピンホールや表面欠陥が存在すると、これらピンホールや表面欠陥から腐食が始まり、ひいては皮膜の剥離という問題を生じる。
【0022】
本発明において、耐食導電性皮膜を有する金属材を製造するに際しては、先ず、表面に観察される第二相化合物の長径の最大値Lが可及的に小さいか、あるいは、表面に観察される第二相化合物が実質的に存在しない金属基材を調製する必要がある。
【0023】
このような金属基材を製造する方法については、例えば、高純度アルミニウム地金を溶解し、必要により合金元素を添加して成分調整をした後に所望の成分組成のアルミニウム合金を溶製し、更にDC鋳造して鋳塊を製造した後、熱間圧延と冷間圧延により所定の板厚に圧延し、更に制御された条件で焼鈍し、必要によりグラインディング加工を行う等の方法(例えば、特開平9−235,640号公報や特開平4−341,536号公報参照)が挙げられる。
【0024】
本発明においては、このようにして製造された金属基材の表面に、この金属基材の表面に観察される当該金属基材の第二相化合物の長径の最大値Lよりも1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上の膜厚Tを有する耐食導電性皮膜を形成するが、好ましくは、耐食導電性皮膜を形成するのに先駆けて、表面研磨処理、エッチング処理、酸洗後に亜鉛浸漬を行う亜鉛浸漬処理等を行うのがよい。
【0025】
この目的で行う上記表面研磨処理においては、表面粗さ{JIS B 0601(2001)}を好ましくは0.02〜0.3μm、より好ましくは0.03〜0.2μmの範囲に調整するのがよい。この際の金属基材の表面粗さが0.3μmより大きいと形成された耐食導電性皮膜にこの金属基材の表面の凹部に起因してピンホールや表面欠陥が発生し易くなり、結果として耐食性が低下し、また、0.02μmより小さくなると、形成された耐食導電性皮膜と金属基材の表面との間の密着性が低下し、製造された金属材の使用時に局部的に皮膜剥離が生じる場合がある。
【0026】
ここで、金属基材の表面粗さを0.02〜0.3μmの範囲に表面研磨処理するための方法については、特に制限されるものではないが、通常は電解研磨、機械研磨、バフ研磨、ブラスト研磨、バレル研磨等の方法が採用され、好ましくは電解研磨処理である。金属基材の表面研磨処理は、金属基材の材質等を考慮し、上記のいずれか1種の処理方法のみで行ってもよいほか、2種以上の処理方法を組み合わせて行ってもよい。
【0027】
また、上記エッチング処理については、通常、脱脂処理された金属基材をエッチング処理液に浸漬して行われる。この目的で用いられるエッチング処理液としては、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液、又は、硫酸−リン酸混合水溶液等の酸水溶液が用いられる。そして、アルカリ水溶液を用いる場合には、その濃度は20g/L以上200g/L以下、好ましくは50g/L以上150g/L以下であって、処理条件としては、通常、浸漬温度が30℃以上70℃以下、好ましくは40℃以上60℃以下であって、浸漬時間が0.5分以上5分以下、好ましくは1分以上3分以下である。また、酸水溶液として硫酸−リン酸混合水溶液を用いる場合には、その濃度は硫酸濃度が10g/L以上500g/L以下、好ましくは30g/L以上300g/L以下でリン酸濃度が10g/L以上1200g/L以下、好ましくは30g/L以上500g/L以下であり、処理条件としては、通常、浸漬温度が30℃以上110℃以下、好ましくは55℃以上75℃以下であって、浸漬時間が0.5分以上15分以下、好ましくは1分以上6分以下である。
【0028】
更に、上記亜鉛置換処理については、その酸洗工程では、その酸洗浴として、酸が硝酸、硫酸、塩酸等であって、濃度が5wt%以上50wt%以下の酸水溶液、好ましくは酸が硝酸であって濃度が10wt%以上40wt%以下の酸水溶液、より好ましくは25wt%以上30wt%以下の濃度の硝酸水溶液を用い、浸漬温度が15℃以上30℃以下、好ましくは20℃以上25℃以下であって、浸漬時間が5秒以上120秒以下、好ましくは15秒以上60秒以下の条件で行うのがよい。このような酸洗浴を用いてこのような条件で酸洗を行うことにより、置換亜鉛層を効果的に除去できる。
【0029】
また、亜鉛置換処理の亜鉛浸漬工程では、その亜鉛浸漬浴として、酸化亜鉛濃度1.5g/L以上60g/L以下、好ましくは3.5g/L以上50g/L以下、及び、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリのアルカリ濃度40g/L以上400g/L以下、好ましくは80g/L以上200g/L以下の酸化亜鉛アルカリ水溶液を用い、浸漬温度が15℃以上30℃以下、好ましくは20℃以上25℃以下であって、浸漬時間が5秒以上120秒以下、好ましくは15秒以上50秒以下の条件で行うのがよい。亜鉛浸漬浴の酸化亜鉛濃度が1.5g/Lより低いと置換亜鉛層が不均一になるという問題があり、反対に、60g/Lより高いと金メッキ皮膜が不均一になるという問題が生じ、また、アルカリ濃度が40g/Lより低いと置換亜鉛層の密着性が低下するという問題があり、反対に、400g/Lより高いと金属基材の表面の粗さが増大するという問題が生じる。
【0030】
本発明においては、好ましくは上記の酸洗後に亜鉛浸漬を行う亜鉛置換処理を少なくとも4回以上繰り返して行うのがよい。この亜鉛置換処理が3回までであると、耐食導電性皮膜にピンホールや表面欠陥が発生する虞があり、ピンホールや表面欠陥の無い完全無欠陥の貴金属メッキ皮膜を形成することが困難になる。
【0031】
このようにして金属基材を表面研磨処理し、次いでエッチング処理し、更に4回以上の亜鉛置換処理を行った後、金属基材の表面に所定の膜厚、例えば貴金属元素皮膜の場合には膜厚0.01〜5μmの耐食導電性皮膜を形成する。
【0032】
この耐食導電性皮膜を形成する方法については、メッキ処理やスパッタリング処理等の方法を挙げることができるが、好ましくはメッキ処理であり、例えば無電解メッキ(Me−ELP)、置換メッキ(Me−SP)、電解メッキ(Me−EP)、電解ストライクメッキ(Me−EPS)等のメッキ処理法を挙げることができ、また、そのメッキ浴についても従来と同様の浴組成のものを用いることができる。また、このメッキ処理における処理条件についても従来と同様の処理条件を採用することができ、採用するメッキ金属の種類によっても異なるが、例えば電解金メッキ処理の場合には浴温度が50〜75℃程度で、電流密度が0.1〜0.5A/dm2程度である。
【0033】
上述した本発明の方法によれば、金属基材の表面に、可及的に薄膜であるにもかかわらず、ピンホールや表面欠陥のない完全無欠陥の耐食導電性皮膜を形成せしめることができるので、高価な貴金属製の耐食導電性皮膜を形成した場合であってもその膜厚を可及的に薄くすることができ、安価でしかも耐久性に優れており、燃料電池用セパレータ、携帯機器の一次電池の電極、金属の電解採取や電解メッキ等において用いられる電極材料等の多くの用途に有用な耐食導電性皮膜を有する金属材を容易に製造することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、実験例、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
【0035】
実験例1
〔アルミニウム基材の調製〕
アルミニウム(IN99)を溶解し、添加元素を溶解した後、DC鋳造し、アルミニウム鋳塊(スラブ塊)を製造した。次にこのアルミニウム鋳塊を300〜550℃で均熱処理し、熱間圧延したのち、更に冷間圧延して板厚5.5mmのアルミニウム板を調製した。このアルミニウム板を100mm×100mmの大きさに切り出し、研削砥石によりグラインディング加工を行い、5mm×100mm×100mmの大きさのアルミニウム基材を調製した。
【0036】
このようにして得られたアルミニウム基材について、その表面に観察される第二相化合物をSEMの反射電子像を利用して観察した結果、8個/mm2の第二相化合物が観察され、その長径の最大値(表面の第二相化合物の長径最大値)Lは2.5μmであった。また、深さ方向の第二相化合物について、アルミニウム基材を50g/L水酸化ナトリウム水溶液中に温度50℃の条件で浸漬し、段階的にエッチングすることによって表面下5μmまでの深さにある第二相化合物の長径の最大値を調べた結果、最大値は3.0μmであった。
【0037】
〔燃料電池用のアルミ製セパレータの調製〕
上で得られた板厚5mmの各アルミニウム基材の両面にプレス加工により深さ0.8mm及び幅0.8mmの反応ガス流路をそれぞれ形成し、次いで水酸化ナトリウム25g/L、炭酸ナトリウム25g/L、燐酸ナトリウム25g/L、及び界面活性剤1.5g/Lの組成を有する脱脂浴中に、浸漬温度60℃及び浸漬時間5分の条件で脱脂処理し、次いで水洗した後、50g/L−水酸化ナトリウム水溶液をエッチング処理液として浸漬温度50℃及び浸漬時間3分の条件でエッチング処理した。
【0038】
このようにして得られたエッチング処理済のアルミニウム基材について、30wt%−硝酸水溶液を酸洗浴とし、また、水酸化ナトリウム100g/L、酸化亜鉛50g/L、塩化第二鉄1g/L、及びロッシェル塩10g/Lの組成を有する亜鉛浸漬浴を用い、室温下に30秒浸漬する酸洗後に室温下に30秒浸漬する亜鉛浸漬を行う亜鉛置換処理を4回行い、次いで電解金メッキ浴(テ゛ク゛サ社製アウルナ591)を用いて、温度50℃、電流密度0.5A/dm2及び金析出量2mg/クーロンの条件で処理時間を制御して電解金メッキ処理を行い、電解金メッキ皮膜の膜厚Tと第二相化合物の長径の最大値Lとの比(T/L)がそれぞれ0.5、1.0、1.2、1.5及び2.0である5種類のアルミ製セパレータの試作品を作製した。
【0039】
また、上記と同じ4回の亜鉛置換処理をしたセパレータ基材について、電解銀メッキ浴(テ゛ク゛サ社製アルク゛ナCF)を用いて温度70℃、電流密度50A/dm2の条件で電解銀メッキ処理を行い、電解銀メッキ皮膜の膜厚Tと第二相化合物の長径の最大値Lとの比(T/L)がそれぞれ0.5、1.0、1.2、1.5及び2.0である5種類のアルミ製セパレータの試作品を作製した。
【0040】
更に、上記と同じ4回の亜鉛置換処理をしたセパレータ基材について、電解白金メッキ浴(テ゛ク゛サ社製フ゜ラチナK)を用いて温度40℃、電流密度1.0A/dm2の条件で電解白金メッキ処理を行い、電解白金メッキ皮膜の膜厚Tと第二相化合物の長径の最大値Lとの比(T/L)がそれぞれ0.5、1.0、1.2、1.5及び2.0である5種類のアルミ製セパレータの試作品を作製した。
【0041】
〔皮膜ピンホール数の測定〕
このようにして作製した各セパレータ試作品について、硫酸銅20g/Lの水溶液中に室温下で5分間浸漬し、銅の析出部分をカウントし、ピンホールの個数(個/cm2)を測定した。
結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
また、上記各セパレータ試作品について、試験液としてpH3の酢酸水溶液を用い、参照極として銀塩化銀電極を用い、走査電位を0〜1000mV vs Ag/AgClとし、電気化学的分極特性評価法により分極電流(μA/cm2)を測定した。
結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
更に、上記各セパレータ試作品について、膜電極接合体を用いて単位電池を組み立て、セパレータ試作品の反応ガス流路に水素ガス及び空気を供給して電池発電試験を連続して行い、発電試験時の電池起電力が発電開始時の起電力と比較して10%低下する時間を測定し、セパレータ寿命(hrs.)とした。
結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
この実験例1によれば、表1の結果から明らかなように、メッキ皮膜の膜厚Tとアルミニウム基材の表面に観察される第二相化合物の長径の最大値Lとの比(T/L)が1.2以上の時にメッキ皮膜のピンホールが観測されなくなり、また、表2に示す分極電流でみてもT/Lの値が1.2以上で略完全に飽和し、表面欠陥の無い無欠陥のメッキ皮膜が得られており、更に、表3に示すセパレータ寿命をみても、T/Lの値が1.2以上で3000時間以上に到達し、アルミ製セパレータとしての性能が充分に引き出されることが判明した。
【0048】
実施例1〜12及び比較例1〜4
上記実験例1と同様にして、表面の第二相化合物の長径最大値L及び表面下5μmの第二相化合物の長径最大値Lが表4に示す値を有するアルミニウム基材を調製し、次いで表4に示す貴金属メッキ処理を行って貴金属メッキ皮膜の膜厚Tと表面の第二相化合物の長径最大値L又は表面下5μmの第二相化合物の長径最大値Lとの比(T/L)を有する貴金属メッキ皮膜を形成した以外は、上記実験例1と同様にして、アルミ製セパレータの試作品を作製した。
得られた各セパレータ試作品について、上記実験例1の場合と同様にして分極電流(μA/cm2)とセパレータ寿命(hrs.)とを測定した。
結果を表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、金属基材の表面状態を最適化し、この金属基材の表面に例えば貴金属元素皮膜の場合その膜厚が5μm以下と従来よりも非常に薄く、しかも、ピンホールや表面欠陥のない導電性皮膜を形成せしめた安価で耐久性に優れた耐食導電性皮膜を有する金属材を提供することができる。
Claims (13)
- 金属基材の表面に耐食導電性皮膜を形成してなる耐食導電性皮膜を有する金属材であり、上記金属基材の表面に観察される当該金属基材の第二相化合物は、その長径の最大値Lが上記耐食導電性皮膜の膜厚Tの5/6倍以下(L≦5/6T)であることを特徴とする耐食導電性皮膜を有する金属材。
- 金属基材の表面に観察される当該金属基材の第二相化合物が実質的に存在しない請求項1に記載の耐食導電性皮膜を有する金属材。
- 金属基材の表面下5μmの深さまでの間に観察される第二相化合物は、その長径の最大値Lが耐食導電性皮膜の膜厚Tの5/6倍以下(L≦5/6T)である請求項1又は2に記載の耐食導電性皮膜を有する金属材。
- 金属基材の表面下5μmの深さまでの間に観察される第二相化合物が実質的に存在しない請求項1〜3のいずれかに記載の耐食導電性皮膜を有する金属材。
- 金属基材の表面で観察される第二相化合物の数が20個/mm2以下である請求項1又は3に記載の耐食導電性皮膜を有する金属材。
- 金属基材が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材である請求項1〜5のいずれかに記載の耐食導電性皮膜を有する金属材。
- アルミニウム材の化学組成が、マグネシウム(Mg)が7質量%未満、亜鉛(Zn)が3質量%未満、ケイ素(Si)が0.01質量%未満、鉄(Fe)が0.01質量%未満、及び銅(Cu)が0.01質量%未満であって、残部がアルミニウム(Al)及び不可避不純物元素である請求項6に記載の耐食導電性皮膜を有する金属材。
- 耐食導電性皮膜が、貴金属元素皮膜、ニッケル皮膜又は銅皮膜である請求項1〜7のいずれかに記載の耐食導電性皮膜を有する金属材。
- 耐食導電性皮膜の膜厚が、0.01μm以上5μm以下の貴金属元素皮膜である請求項8に記載の耐食導電性皮膜を有する金属材。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の耐食導電性皮膜を有する金属材を製造するに際し、金属基材に対して、酸洗後に亜鉛浸漬を行う亜鉛浸漬処理を4回以上繰り返し、次いで金属基材の表面に耐食導電性皮膜を形成せしめることを特徴とする耐食導電性皮膜を有する金属材の製造方法。
- 金属基材に対して、亜鉛浸漬処理の前にエッチング処理を行う請求項10に記載の耐食導電性皮膜を有する金属材の製造方法。
- 金属基材がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材であり、また、耐食導電性皮膜が貴金属メッキ処理により形成された膜厚0.01〜5μmの貴金属メッキ皮膜である請求項10又は11に記載の耐食導電性皮膜を有する金属材の製造方法。
- エッチング処理前の金属基材が、表面研磨処理によりその表面粗さが0.02〜0.3μmの範囲に調整されている請求項11又は12に記載の耐食導電性皮膜を有する金属材の製造方法。
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