JP2004134306A - エレクトロルミネッセンスディスプレイ - Google Patents
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Abstract
【課題】可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能である広帯域の1/4波長板を用い、背景の映り込みが抑制され、高性能で、低コストで製造可能であり、量産性に優れたエレクトロルミネッセンスディスプレイの提供。
【解決手段】光反射電極と、発光層と、透明電極と、1/4波長板及び直線偏光膜を有する円偏光板とがこの順に配置されたエレクトロルミネッセンスディスプレイであって、前記1/4波長板が、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たすエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
【選択図】 なし
【解決手段】光反射電極と、発光層と、透明電極と、1/4波長板及び直線偏光膜を有する円偏光板とがこの順に配置されたエレクトロルミネッセンスディスプレイであって、前記1/4波長板が、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たすエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエレクトロルミネッセンスディスプレイに関し、特に、1/4波長板及び直線偏光膜からなる円偏光板を発光面側に備えたエレクトロルミネッセンスディスプレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、平面ディスプレイとして、背面電極、発光層、そして透明電極からなるエレクトロルミネッセンスディスプレイが提案されている。前記エレクトロルミネッセンスディスプレイでは、背面電極として反射性の高い金属電極が使用されている。反射性の高い金属電極を用いることにより、発光層からの発光輝度を向上させることができる一方、外部の背景が映り込み、画像表示特性を低下させるという問題があった。
これを解決するため、従来、エレクトロルミネッセンスディスプレイでは、低屈折率層を用い、屈折率による通常の反射防止膜ではなく、より強力な反射防止手段を使用することが提案されている。例えば、特許文献1には、様々な反射防止手段を設けた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイが開示されている。前記反射防止手段の一つとして、1/4波長板と偏光板(直線偏光膜)とを積層した円偏光板が提案されている。また、特許文献2には、光出射面に円偏光手段が設けられている発光素子(主に有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ)が開示されている。前記円偏光手段は、具体的には1/4波長板と直線偏光板とが積層されて構成されている。一方、特許文献3には、波長補正板(1/4波長板)、平面型直線偏光ビームスプリッタ(反射偏光板)及び偏光板(直線偏光膜)からなる反射防止手段を備えた表示装置(主に有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ)が開示されている。
【0003】
ここで、円偏光板を反対防止手段として備えたエレクトロルミネッセンスディスプレイでは、円偏光板を構成する1/4波長板の性能が非常に重要である。従来の1/4波長板は、「1/4波長板」と称していても、ある特定波長でのみλ/4を達成しているものが大部分である。λ/4を達成できる波長領域が狭いと、充分な反射防止機能を得ることができない。
【0004】
広帯域を達成している1/4波長板としては、例えば、特許文献4〜7には、二枚のポリマーフィルムを積層して広い波長領域で(広帯域)λ/4を達成している。前記公報に提案された1/4波長板は、光学異方性の異なるポリマーフィルムを2枚積層して形成したものである。通常は、延伸したポリマーフィルムを互いの延伸軸を一致させずに、所定の角度でずらして積層して作製する。具体的には、積層するポリマーフィルム各々について、延伸ポリマーフィルムの表面に粘着材を塗工し粘着面を形成し、この粘着面に離型フィルムを貼付した後、延伸軸に対して所定の角度でチップを切り出し、その後、切り出された各々のチップを貼合して作製する。
【0005】
しかし、この方法は、積層するチップ状のポリマーフィルム2枚を各々独立に作製する必要があり、さらに、各々のフィルムの作製工程が煩雑であるとともに、各工程に種々の材料(粘着材、離型フィルム等)を必要とし、製造コストが高くなることは避けられない。また、チップを切り出した際に生じるカットくずを完全にチップから除去することはできず、チップを貼合する際に不具合が生じたり、また、チップの切り出しの際及びチップの貼合の際に、軸ずれ等が生じ、製造物の性能不良も生じ易いという問題があった。このような1/4波長板についての問題は、ひいてはこれを備えたエレクトロルミネッセンスディスプレイの性能を低下させたり、製造コストを増大させるという問題を引き起こしていた。
【0006】
【特許文献1】
WO96/34514号公報
【特許文献2】
特開平9−127885号公報
【特許文献3】
特開平11−45058号公報
【特許文献4】
特開平5−27118号公報
【特許文献5】
特開平5−27119号公報
【特許文献6】
特開平10−68816号公報
【特許文献7】
特開平10−90521号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能である広帯域の1/4波長板を用い、背景の映り込みが抑制され、高性能で、低コストで製造可能であり、量産性に優れたエレクトロルミネッセンスディスプレイを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> 光反射電極と、発光層と、透明電極と、1/4波長板及び直線偏光膜を有する円偏光板とがこの順に配置されたエレクトロルミネッセンスディスプレイであって、
前記1/4波長板が、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たすことを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<2> 2種以上の材料における固有複屈折値が正であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<3> 2種以上の材料における固有複屈折値が負であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<4> 2種以上の材料における固有複屈折値が正及び負であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<5> 各層における分子鎖の配向軸が互いに直交した前記<1>から<3>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<6> 各層における分子鎖の配向軸が互いに平行である前記<1>又は<4>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<7> 1/4波長板が、更に接着層を有する前記<1>から<6>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<8> 材料が樹脂である前記<1>から<7>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<9> 材料のうちの少なくとも1種が、ノルボルネン系ポリマーである前記<1>から<8>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<10> 材料のうちの少なくとも1種が、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、ポリアリーレン系ポリマー、及び、ポリカーボネート系ポリマーの少なくともいずれかである前記<1>から<9>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<11> 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、1/4波長板における各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値の差が互いに0.03以上である2種の層を含む前記<1>から<10>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<12> 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、1/4波長板における各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値が互いに異なる2種の層を含み、該2種の層のうち、Re(450)/Re(550)の値が小さい層におけるRe(550)の値が、Re(450)/Re(550)の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きい前記<1>から<11>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<13> 1/4波長板の光弾性が20ブルースター以下である前記<9>に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<14> 1/4波長板において、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーションRe(λ)と波長λとが、各々下記関係式を満たす前記<1>から<13>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
0.2≦Re(λ)/λ≦0.3
<15> 1/4波長板が、少なくとも、固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料のうち材料Aを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムとし、前記2種以上の材料のうち材料Bを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムとし得られた前記<1>又は<2>に記載のエレクロトルミネッセンスディスプレイである。
<16> 1/4波長板が、少なくとも、固有複屈折値が負で異なる2種以上の材料のうち材料Cを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムとし、前記2種以上の材料のうち材料Dを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムとし得られた前記<1>又は<3>に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<17> 1/4波長板が、少なくとも、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、搬送しつつ、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸し縦延伸フィルム又は横延伸フィルムとし得られた前記<1>又は<4>に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<18> 1/4波長板が、延伸フィルムを共に同方向に搬送し得られた前記<15>から<17>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<19> 1/4波長板が、延伸フィルムの遅相軸を互いに直交させて貼り合わされた前記<15>から<18>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のエレクトロルミネッセンスディスプレイ(以下、「ELディスプレイ」と称することがある。)は、光反射電極と、発光層と、透明電極と、1/4波長板及び直線偏光膜を有する円偏光板とがこの順に配置されたエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
図1に、本発明のELディスプレイの基本的構成を説明するための断面模式図を示す。図1に示すELディスプレイは、光反射電極(RE)、発光層(L)、透明電極(TE)、透明基板(S)、1/4波長板(λ/4)、及び、直線偏光膜(P)がこの順に積層された構造を有する。1/4波長板(λ/4)及び直線偏光膜(P)が円偏光板を構成している。
【0010】
次に、図2を用いて、本発明のELディスプレイにおける反射防止機能及び表示機能について説明する。但し、図2では、図1に示すELディスプレイ中、円偏光板のみが模式的に示されており、他の部材は省略されている。図2に示す円偏光板は、直線偏光膜(P)及び1/4波長板(λ/4)を有する。前記円偏光板は、発光層(不図示)からの光の出射側に配置され、直線偏光膜(P)側(上側)をELディスプレイの外側にし、1/4波長板(λ/4)側をELディスプレイの内側にして配置される。
【0011】
図2に示すELディスプレイに、外部から光(1a及びlbを含む)が入射すると、直線偏光膜(P)の偏光軸方向に一致する直線偏光成分(lb)のみが直線偏光膜(P)を通過する。他の成分(la)は、直線偏光膜(P)に吸収される。直線偏光膜(P)を通過した直線偏光(2b)は、1/4波長板(λ/4)を通過することにより円偏光(2c)に変換される。円偏光(2c)は、ELディスプレイの光反射電極(図示せず)に反射されると、逆回りの円偏光(3c)になる。逆回りの円偏光(3c)は、1/4波長板(λ/4)を通過することにより直線偏光膜(P)の偏光軸方向とは90°異なる方向の直線偏光(3b)に変換される。この直線偏光(3b)は、直線偏光膜(P)を通過できずに吸収される。このようにして、ELディスプレイへ外部から入射する光(la及びlb)は、すべて直線偏光膜(P)に吸収され、反射は防止される。従って、背景部が映り込むことによる画像表示特性の低下を防止することができる。
【0012】
ELディスプレイ内部からの光、即ち、発光層(図示せず)からの発光は、二種類の円偏光成分(3c及び4c)を含んでいる。一方の円偏光(3c)は、上記のように1/4波長板(λ/4)を通過することにより、直線偏光膜(P)の偏光軸方向とは90°異なる方向の直線偏光(3b)に変換される。そして、直線偏光(3b)は直線偏光膜(P)を通過できずに直線偏光膜(P)に吸収される。他方の円偏光(4c)は1/4波長板(λ/4)を通過することにより直線偏光膜(P)の偏光軸方向と一致する直線偏光(4b)に変換される。そして、直線偏光(4b)は直線偏光膜(P)を通過し(4a)、画像として認識される。
【0013】
尚、直線偏光膜(P)と1/4波長板(λ/4)との間に、直線偏光膜(P)の偏光軸方向とは90°異なる方向の直線偏光(3b)を反射する機能を有する反射偏光板を設けると、直線偏光(3b)を吸収することなく反射させ、それを反射電極で再反射させることにより、直線偏光膜(P)の偏光軸方向と一致する直線偏光(4b)に変換することができる。即ち、反射偏光板を用いることで、発光層が発光した光の全て(3c及び4c)を外側に出射させることもできる。
【0014】
以下、本発明のELディスプレイを構成している各部材について説明する。
[1/4波長板]
前記1/4波長板は、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たす。また、該1/4波長板において、入射光は、前記固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層した層によって位相差特性が与えられる。
【0015】
前記1/4波長板においては、固有複屈折値が正同士の2種以上の材料を積層した第1の態様、固有複屈折値が負同士の2種以上の材料を積層した第2の態様、及び、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を積層した第3の態様、の3種類の態様が含まれる。
【0016】
−第1の態様の1/4波長板−
前記第1の態様の1/4波長板は、2種以上の固有複屈折値が正の材料を積層した態様である。第1の態様においては、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに直交させることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0017】
尚、前記第1の態様において、固有複屈折値が正の3種類以上の材料を各々積層させる場合、これらの各層における分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸を互いに直交させるには、これら固有複屈折値が正の材料のうち、Re(450)/Re(550)の値が近い材料を1種類の材料と見なすことにより、Re(450)/Re(550)の値によって概ね2種類の材料に分類し、これらの2種類の材料同士が、その分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸が互いに直交するように各層を材料毎に積層するのが好ましい。
【0018】
前記第1の態様においては、このように1/4波長板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第1の態様の1/4波長板においては、共に固有複屈折値が正の異なる値である2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な1/4波長板特性が与えられる。
【0019】
<第1の態様における材料>
前記第1の態様における材料としては、前記固有複屈折値が正である材料(以下、単に「正の材料」と称することがある。)のほか、所望により含有可能なその他の成分等が挙げられる。前記、「固有複屈折値が正である材料」とは、分子が一軸性の秩序をもって配向した際に、光学的に正の一軸性を示す特性を有する材料をいう。
例えば、前記正の材料が樹脂である場合、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より大きくなる樹脂をいう。
前記正の材料としては、樹脂、棒状液晶、棒状液晶ポリマー等種々のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの中でも樹脂が好ましい。
【0020】
前記樹脂としては、例えば、オレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマーなど)、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー(例えば、ポリフェニレンサルファイドなど)、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、セルロースエステル系ポリマー(前記固有複屈折値が負であるものもある)、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリアリルサルホン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明においては、これらの中でも、(Re(450)/Re(550))の値が低い方の層に用いる材料としては、オレフィン系ポリマーが好ましく、オレフィン系ポリマーの中でも、光透過率特性、耐熱性、寸度安定性、光弾性特性等の観点から、ノルボルネン系ポリマーが特に好ましい。前記オレフィン系ポリマーとしては、日本合成ゴム社製の「アートソー」、日本ゼオン社製の「ゼオネックス」及び「ゼオノア」、三井石油化学製の「APO」等が好適に利用される。
【0022】
前記ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有してなり、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好適に利用できるが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0024】
【化1】
【0025】
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0026】
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)又は(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
【0027】
【化2】
【0028】
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0029】
前記ノルボルネン系ポリマーの重量平均分子量としては、5,000〜1,000,000程度であり、8,000〜200,000が好ましい。
【0030】
前記第1の態様における材料として、含有可能なその他の成分としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
前記材料(固有複屈折値が正の材料又は負の材料)が樹脂である場合のガラス転移点としては、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
【0032】
<第1の態様における1/4波長板の構成等>
前記第1の態様における1/4波長板は、前述したように、固有複屈折値が正で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第1の態様においては、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、使用しても、発現されるレターデーションの波長分散性に影響を与えないのが好ましく、特に、可視光全域の入射光に対して、影響を与えない材料が好ましい。
【0033】
前記接着層の材料としては、各層における材料と親和性がある材料が好適に使用される。具体的には、前記固有複屈折値が正の樹脂としてノルボルネン系ポリマーを使用した場合、接着層の材料としては、脂肪族エステル系、脂肪族エステルウレタン系、芳香族エステル系、芳香族エステルウレタン系、及び、エーテル系等のポリマーを含む接着剤等が挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記第1の態様における1/4波長板の厚みとしては、30〜300μmが好ましく、50〜250μmがより好ましい。前記各層の厚みとしては、10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましい。前記接着層の厚みとしては、該接着層の複屈折と厚みとの積が小さくなる程好ましく、具体的には、0.2〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。
【0035】
<第1の態様における1/4波長板の製造方法等>
前記1/4波長板の製造方法のうち、第1の態様における1/4波長板の製造方法においては、固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料のうち材料Aを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムとし、前記2種以上の材料のうち材料Bを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムとする。
【0036】
尚、前記「材料A」及び「材料B」は、互いに固有複屈折値が異なる材料である。第1の態様における1/4波長板の製造方法において、固有複屈折値が正の3種類以上の材料を各々積層させる場合、固有複屈折値が正の材料のうち、Re(450)/Re(550)の値が近い材料によって2種類に分け、各々の材料を「材料A」、「材料B」として延伸する。
【0037】
前記延伸の方法としては、一軸延伸でもよく、厚み方向を制御する目的から、二軸延伸を行ってもよい。
尚、二軸延伸を行う場合には、得られる1/4波長板において、縦及び横のいずれかの方向に主に分子鎖を配向させ、各層における配向軸同士が互いに直交するように延伸することが必要である。
【0038】
これら延伸により得られた延伸フィルムは、効率及び省スペース化の点で、共に同方向に搬送されるのが好ましい。前記延伸の後、得られた縦延伸フィルムと横延伸フィルムとを積層させるのが好ましい。該積層の方法としては、各延伸フィルムを貼り合わせるのが好ましく、各延伸フィルムの遅相軸を互いに直交させて貼り合わせるのが特に好ましい。このようにして1/4波長板を得ることにより、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与える広帯域の1/4波長板を、固有複屈折値が正同士の材料を用いて、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能である。
【0039】
前記貼り合わせの方法としては、特に制限はないが、接着剤を塗布して貼り合わせる方法、接着フィルムを各層間に挟んで貼り合わせる方法、接着剤を利用してドライラミネート法により貼り合わせる方法、などが挙げられる。
【0040】
前記接着剤、接着フィルムの材料としては、前述した接着層の材料と同様である。接着剤の塗布量としては、固形分の質量で1〜10g/cm2程度が好ましい。また接着フィルムの厚みとしては、0.5〜10μm程度が好ましい。
【0041】
前記ドライラミネート法は、一般的に、接着剤を一方の接着対象物に均一に塗布し、乾燥させた後、他方の接着対象物に加圧条件で圧着して行われる。該ドライラミネート法においては、接着剤が貼り合わせ用のロール等に付着しないよう、接着対象物の両側に接着剤を塗布しない部分を残して貼り合わせたり、ロール間の押圧の解除が自動的に行われるのが好ましい。該ドライラミネート法に用いられる接着剤としては、例えば、ウレタン樹脂系の接着剤が好ましく、特に、主剤(OH基含有化合物)及び硬化剤(NCO基含有化合物)を混合して反応させる二液硬化型の接着剤が好ましい。該接着剤は、溶剤に溶解して接着剤溶液として使用してもよく、溶剤を使用しない無溶剤型の接着剤であってもよいが、省エネルギー化、残留溶剤量の低減、及び高速化の観点からは、無溶剤型が好ましい。溶剤を用いる場合、該溶剤としては、例えば、トルオール酢酸エチレン、酢酸エチル等の溶剤が好ましい。この場合、接着剤溶液における固形分濃度としては、20〜40質量%程度が好ましい。前記加圧の圧力としては、1〜50kg/cm2程度が好ましい。また、該ドライラミネート法によって3種以上の材料を積層して3層以上の積層体からなる1/4波長板を作製する場合には、2種の層を貼り合わせて積層させた段階で、積層体の巻き取り工程を設けずに3層目の貼り合わせ工程に移す等の方法によって作業の効率化を図るのが好ましい。
【0042】
ここで、前記ドライラミネート法の一例を、図3を用いて説明する。図3に示すドライラミネート機200は、第一の延伸フィルム供給手段と、第二の延伸フィルム供給手段と、接着剤塗布手段と、搬送手段と、加熱乾燥手段と、貼り合わせ手段と、巻き取り手段とを有する。
【0043】
第一の延伸フィルム供給手段は、第一の延伸フィルム208aを供給する第一フィルム供給ローラ203を有する。
第二の延伸フィルム供給手段は、第二の延伸フィルム208bを供給する第二フィルム供給ローラ204を有する。
接着剤塗布手段は、接着剤を収容する接着剤収容器202と、接着剤塗布ローラ206a,206bと、ドクターブレード209とを有する。該接着剤塗布手段において、接着剤塗布ローラ206aは、その表面が、前記接着剤及び第一の延伸フィルム208aと当接するように配され、接着剤塗布ローラ206bは、その表面が、第一の延伸フィルム208aと当接するように配されている。該接着剤塗布手段においては、接着剤塗布ローラ206a表面に付着した接着剤が、ローラの矢印方向への回転に伴い、ドクターブレード209によって適宜掻き落とされて均一な厚みに調整され、第一の延伸フィルム208aに均一に塗布される。
前記搬送手段は、回転により第一の延伸フィルム208aを搬送可能な搬送ローラ207a、搬送ローラ207bを有する。
前記加熱乾燥手段は、第一の延伸フィルム208aに塗布された接着剤を乾燥可能な加熱乾燥器201を有する。
前記貼り合わせ手段は、第一の延伸フィルム208a及び第二の延伸フィルム208bを貼り合わせ可能な貼り合わせ・ニップローラ210a,210bを有する。
【0044】
ドライラミネート機200においては、先ず、矢印方向に回転する第一フィルム供給ローラ203から、第一の延伸フィルム208aが供給され矢印方向に搬送される。接着剤塗布ローラ206a,206bまで搬送された第一の延伸フィルム208aは、接着剤塗布ローラ206a,206b間を、ロールに当接しつつ搬送される際に、接着剤塗布ローラ206a表面に付着した接着剤が均一に塗布される。その後、更に矢印方向に搬送されて搬送ローラ207a上を通って加熱乾燥器201まで搬送される。加熱乾燥器201まで搬送された第一の延伸フィルム208aにおいては、表面に均一に塗布された接着剤が加熱により乾燥される。更に、第一の延伸フィルム208aは矢印方向に搬送され、搬送ローラ207b上を通って、貼り合わせ・ニップローラ210a,210bまで搬送される。一方、矢印方向に回転する第二フィルム供給ローラ204からは、第二の延伸フィルム208bが供給され、矢印方向に、貼り合わせ・ニップローラ210a,210bまで搬送される。貼り合わせ・ニップローラ210a,210bにおいては、ニップ部での加圧により、第一の延伸フィルム208a及び第二の延伸フィルム208bが貼り合わせられ、これらが積層された1/4波長板が製造される。製造された1/4波長板は、巻き取りローラ205まで搬送され、巻き取られる。
【0045】
前記固有複屈折値が正の材料としては、前述した通りであり、好ましい材料等も前述した通りである。
【0046】
前記第1の態様における1/4波長板の製造方法の一実施態様を、図4を用いて概略的に説明する。
図4に示す延伸・貼り合わせ機20は、縦延伸部21と、貼り合わせ部22と、横延伸部23とを備えている。
縦延伸部21は、縦延伸低速ローラ21a,21bと、縦延伸高速ローラ21c,21dとからなる。
貼り合わせ部22は、貼り合わせ・ニップローラ22a,22b及び接着剤塗布ローラ22c,22dからなる。
横延伸部23は、搬送方向調整ローラ23a及び横延伸機23bからなる。
延伸・貼り合わせ機20において、縦延伸低速ローラ21a,21b、縦延伸高速ローラ21c,21d、貼合わせ・ニップローラ22a,22b、接着剤塗布ローラ22c,22d、及び、搬送方向調整ローラ23aは、各々不図示の駆動部により回転可能である。縦延伸低速ローラ21a,21b、縦延伸高速ローラ21c,21dは、上流から下流に向かってこの順に配されている。縦延伸低速ローラ21a,21b、縦延伸高速ローラ21c,21dの周辺及びその内部には、各々不図示の加熱手段が設置され、延伸対象物の延伸温度を適宜制御可能である。
【0047】
延伸・貼り合わせ機20においては、まず、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aと、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bとが、図4の矢印方向(搬送方向)に搬送されてくる。ここで、縦延伸高速ローラ21c及び縦延伸高速ローラ21dは、縦延伸低速ローラ21a及び縦延伸低速ローラ21bより高速で回転するように設定されており、また、縦延伸低速ローラ21a及び縦延伸高速21cは、縦延伸低速ローラ21b及び縦延伸高速ローラ21dと逆方向(図に示す矢印方向)に回転するように設定されている。
【0048】
延伸・貼り合わせ機20における縦延伸部21に搬送されてきた、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aは、各縦延伸低速ローラ21a,21b、縦延伸高速ローラ21c,21dに順次当接し、図示した搬送方向に搬送されつつ、縦延伸低速ローラ21a,21bと、縦延伸高速ローラ21c,21dとの回転速度差により張力を付与され、この回転速度差によって搬送方向(フィルムの長手方向)に延伸される。またこのとき、前記加熱手段により、材料Aの延伸時に温度制御が可能であるため、材料Aは、材質、延伸速度(ローラの速度差)等に応じて好適な延伸条件に容易に調整される。延伸後、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aは、図示した方向に回転する貼合せ・ニップローラ22a,22bにおいて、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bと貼り合わせられ、更に図示した搬送方向に搬送されていく。
【0049】
一方、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bは、搬送方向調整ローラ23a下を通って、図示した搬送方向に搬送されつつ、横延伸部23における横延伸機(テンター延伸機)23bにより横延伸(テンター延伸等)され、貼り合わせ部22における接着剤塗布ローラ22c,22dにより接着剤が塗布された後、貼り合わせ・ニップローラ22a,22bにおいて、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bと接着剤を介して貼り合わせられ、更に図示した搬送方向に搬送されていく。
延伸・貼り合わせ機20において、延伸倍率や延伸温度等を、各ロールの回転速度、加熱手段等によって適宜調整することにより、目的のレターデーションを有する第1の態様における1/4波長板を効率的に製造することができる。
【0050】
前記加熱手段としては、延伸対象物を適切な温度に加温することができれば特に制限はなく、公知の加熱手段を総て好適に用いることができるが、例えば、熱風、加熱ロール等のほか、近赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ等の赤外線ヒータ、などの各種熱源が挙げられる。これらの加熱手段としては、加熱のみならず、温度を制御可能な装置を備えているのが好ましい。これらの加熱手段は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
縦延伸部21におけるローラ数としては、特に制限はなく、延伸対象物の材質、延伸速度等により適宜選択可能である。
【0052】
また、図4に示す実施態様においては、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aの延伸、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bの延伸、及び、貼り合わせを連続的に行っているが、本発明においては、これに何ら限定されることはなく、例えば、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aの延伸と、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bの延伸とを、別途独立して行ってもよい。また各フィルムの延伸と貼り合わせとを別途独立して行ってもよい。これらの場合には、延伸した各フィルムを一時的に巻き取っておく等によって、省スペースの点で有利となる。
【0053】
また、前述の実施形態において、接着方法としてドライラミネート法を採用する場合には、接着剤塗布ローラ22c,22d及び貼り合わせ・ニップローラ22a,22bの間に、接着剤を乾燥させる乾燥手段を設けるのが好ましい。該乾燥手段としては、特に制限はなく、公知の乾燥方法、例えば、温風乃至熱風による乾燥、等が挙げられる。
【0054】
また、前記延伸温度としては、特に制限はないが、各層における基本材料(固有複屈折値が正の材料)の最低ガラス転移温度をTg(min)としたとき、(Tg(min)−30)℃〜(Tg(min)+30)℃に設定するのが好ましい。
【0055】
第1の態様における1/4波長板の製造方法においては、効率的に前記遅相軸を直交させて積層するには、各層の搬送方向を一致させると共に延伸方向を直交させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第1の態様の1/4波長板は、固有複屈折値が正の同符号である2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を直交させることにより、2層以上の積層体の遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型1/4波長板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に1/4波長板の製造が行われる。また、製造された1/4波長板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0056】
−第2の態様の1/4波長板−
前記第2の態様の1/4波長板は、2種以上の固有複屈折値が負の材料を積層した態様である。第2の態様においては、前記第1の態様の1/4波長板と同様に、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに直交させることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0057】
尚、前記第2の態様において、固有複屈折値が負の3種類以上の材料を各々積層させる場合、これらの各層における分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸を互いに直交させるには、これら固有複屈折値が負の材料のうち、Re(450)/Re(550)の値が近い材料を1種類の材料と見なすことにより、Re(450)/Re(550)の値によって概ね2種類の材料に分類し、これらの2種類の材料同士が、その分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸が互いに直交するように各層を材料毎に積層するのが好ましい。
【0058】
前記第2の態様においては、このように1/4波長板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第2の態様の1/4波長板においては、共に固有複屈折値が負の異なる値である2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な位相差特性が与えられる。
【0059】
<第2の態様における材料>
前記第2の態様における材料としては、前記固有複屈折値が負である材料(以下、単に「負の材料」と称することがある。)のほか、所望により含有可能なその他の成分等が挙げられる。前記「固有複屈折値が負である材料」とは、分子が一軸性の秩序をもって配向した際に、光学的に負の一軸性を示す特性を有する材料をいう。
例えば、前記負の材料が樹脂である場合、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より小さくなる樹脂をいう。
前記負の材料としては、樹脂、ディスコティック液晶、ディスコティック液晶ポリマー等種々のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの中でも樹脂が好ましい。
【0060】
前記樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリスチレン系ポリマー(スチレン及び/又はスチレン誘導体と他のモノマーとの共重合体)、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、セルロースエステル系ポリマー(前記固有複屈折値が正であるものもある)、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記ポリスチレン系ポリマーとしては、スチレン及び/又はスチレン誘導体と、アクリルニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート及びブタジエンから選ばれる少なくとも1種との共重合体が好ましい。本発明においては、これらの中でも、ポリスチレン、ポリスチレン系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー及びポリメチルメタクリレート系ポリマーの中から選択される少なくとも1種が好ましく、これらの中でも、複屈折発現性が高いという観点から、ポリスチレン及びポリスチレン系ポリマーがより好ましく、耐熱性が高い点で、スチレン及び/又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。
【0062】
<第2の態様における1/4波長板の構成等>
前記第2の態様における1/4波長板の構成としては、前述したように、固有複屈折値が負で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第2の態様においても、前記第1の態様と同様、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、前記第1の態様と同様である。
前記第2の態様における1/4波長板の厚み、各層の厚み、接着層の厚みとしては各々、前記第1の態様と同様である。
【0063】
<第2の態様における1/4波長板の製造方法等>
前記1/4波長板の製造方法のうち、第2の態様における1/4波長板の製造方法では、固有複屈折値が負で異なる2種以上の材料のうち材料Cを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムとし、前記2種以上の材料のうち材料Dを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムとする。
【0064】
尚、前記「材料C」及び「材料D」は、互いに固有複屈折値が異なる材料である。第2の態様における1/4波長板の製造方法において、固有複屈折値が負の3種類以上の材料を各々積層させる場合、固有複屈折値が負の材料のうちRe(450)/Re(550の値が近い材料によって2種類に分け、各々の材料を、「材料C」、「材料D」として延伸する。
【0065】
前記第2の態様における1/4波長板の製造方法において、延伸の方法や、積層等の好ましい態様は、第1の態様における1/4波長板の製造方法と総て同様である。また、前記固有複屈折値が負の材料としては、前述した通りであり、好ましい態様等も前述した通りである。
【0066】
前記第2の態様における1/4波長板の製造は、前記第1の態様における1/4波長板の製造方法と同様に、例えば、図4に概略的に示した延伸・貼り合わせ機20を用い、固有複屈折値が負の各材料を、各層における遅相軸が互いに直交するように縦延伸及び横延伸を行うことにより、効率的に行うことができる。
【0067】
第2の態様における1/4波長板の製造方法において、効率的に前記遅相軸を直交させて積層するには、各延伸フィルムの搬送方向を一致させると共に延伸方向を直交させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第2の態様の1/4波長板は、固有複屈折値が負の同符号である2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を直交させることにより、2層以上の積層体における遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型1/4波長板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に1/4波長板の製造が行われる。また、製造された1/4波長板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0068】
−第3の態様の1/4波長板−
前記第3の態様の1/4波長板は、2種以上の固有複屈折値が正及び負の材料を積層した態様である。第3の態様においては、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに平行にすることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0069】
前記第3の態様においては、延伸条件等を調整することによってこのように1/4波長板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第3の態様の1/4波長板においては、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散特性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な位相差特性が与えられる。
【0070】
<第3の態様における材料>
前記固有複屈折値が正である材料及び負である材料は前述した通りである。
【0071】
<第3の態様における1/4波長板の構成等>
前記第3の態様における1/4波長板の構成としては、前述したように、固有複屈折値が正及び負で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第3の態様においても、前記第1の態様と同様、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、前記第1の態様と同様である。
前記第3の態様における1/4波長板の厚み、各層の厚み、接着層の厚みとしては各々、前記第1の態様と同様である。
【0072】
<第3の態様における1/4波長板の製造方法等>
本発明における1/4波長板の製造方法のうち、第3の態様における1/4波長板の製造方法では、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、搬送しつつ、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸して縦延伸フィルム又は横延伸フィルムを得る。
前記延伸の方法、積層等の好ましい態様は、第1の態様における方法と総て同様である。また、前記固有複屈折値が正及び負の材料としては、前述した通りであり、好ましい材料等も前述した通りである。このように延伸フィルムを作製し、各遅相軸を直交させて積層させることにより、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)が平行になり、各層の遅相軸が互いに直交する。延伸機としては、2種以上の材料を、同方向に搬送・延伸可能な公知の延伸機が総て好適に用いられる。延伸の方法、積層の方法、及び、延伸温度等としては、前記第1の態様で述べたのと総て同様である。
【0073】
第3の態様における1/4波長板の製造方法において、効率的に前記遅相軸を直交させて積層するには、各延伸フィルムの搬送方向を一致させると共に延伸方向を一致させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第3の態様の1/4波長板は、固有複屈折値が正及び負の2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を平行にすることにより、2層以上の積層体における遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型1/4波長板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に1/4波長板の製造が行われる。また、製造された1/4波長板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0074】
−1/4波長板の諸物性等−
前記1/4波長板における光弾性としては、20ブルースター以下が好ましく、10ブルースター以下がより好ましく、5ブルースター以下が更に好ましい。これは、以下の理由による。
前記1/4波長板は、本発明のエレクトロルミネッセンスディスプレイに用いられる際に、貼り合わせにより積層されて形成されるのが好ましい。しかし、貼り合わせの際にかかる応力には偏りがあり、中央部と比較して端部においてより大きな応力がかかる。その結果、レターデーションに違いが生じ、端部は白っぽく光抜けし、表示素子においては表示特性を低下させる場合がある。1/4波長板の光弾性が前記数値範囲内にあると、貼合の際に応力の偏りがあっても、部分的にレターデーション(Re)に差が生じるのを抑制できる。
【0075】
前記1/4波長板としては、優れた1/4波長板特性を満たす観点から、波長450nm、550nm及び650nmにおいて、(レターデーション(Re)/λ(波長))の値が0.2〜0.3であるのが好ましく、0.23〜0.27であるのがより好ましく、0.24〜0.26が更に好ましい。
【0076】
−1/4波長板における材料の好ましい組合せ−
前記1/4波長板においては、可視光全域における波長分散特性の観点から、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていれば特に制限はないが、下記諸物性を具備するのが更に好ましい。
【0077】
前記1/4波長板においては、波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)値の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、各層が有する特性が好適に相殺された結果のレターデーションを得る観点から、積層された各層が、少なくとも、(Re(450)/Re(550))の値の差が、互いに0.03以上である2種の層の組合せを含むのがより好ましい。また、互いに0.05以上である2種の層の組合せを含むのが更に好ましい。
また、波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、特に好適な1/4波長板特性を得る観点から、積層された各層が、少なくとも(Re(450)/Re(550))の値が互いに異なる2種の層の組み合せを含み、該2種の層のうち、(Re(450)/Re(550))の値が小さい層におけるRe(550)の値が、(Re(450)/Re(550))の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きいのが好ましい。
以上のように組み合わされる層の、1/4波長板における位置としては、特に制限はなく、上下で互いに接して積層された層でもよく、互いに接していなくてもよい。
前記材料の好ましい組合せとしては、波長450nm、550nm、650nmにおけるレターデーション(Re)の値を、各々、Re(450)、Re(550)、Re(650)としたとき、これらがRe(450)<Re(550)<Re(650)を効果的に満たす観点から、固有複屈折値が正又は負の樹脂として、その固有屈折値の波長分散が小さい材料を選択し、且つ、他の固有複屈折値が正又は負の樹脂として、その固有複屈折値の波長分散が大きい材料を選択して組み合わせるのが特に好ましい。
【0078】
例えば、前記第1の態様において、前記固有複屈折値が正で、かつレターデーション(Re)が高い材料として、前記ノルボルネン系ポリマーを使用する場合、前記他の固有複屈折値が正の材料(レターデーション(Re)が小さい材料)としては、その固有複屈折値の波長分散が大きいものが好ましく、具体的には、波長450nm、波長550nmの固有複屈折値(Δn)を、各々、Δn(450)、Δn(550)としたとき、下記関係式を満たす樹脂から選ばれるのが好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)|≧1.02
さらに、下記関係式を満たす樹脂から選ばれるのがより好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)|≧1.05
尚、|Δn(450)/Δn(550)|の値は大きい程好ましいが、樹脂の場合、一般的には2.0以下である。
【0079】
より具体的に、前記(Re(450)/Re(550))の値が大きい材料としては、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー(例えば、ポリフェニレンサルファイドなど)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリアリルサルホン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、などが好ましく、特に、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、及びポリアリレート系ポリマーなどが好ましい。
また、前記(Re(450)/Re(550))の値が小さい材料としては、オレフィン系ポリマー及びシクロオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等)、セルロースエステル系ポリマー、などが好ましく、オレフィン系ポリマーの中でもノルボルネン系ポリマーとの組合せが特に好ましい。
【0080】
また前記1/4波長板においては、各層に用いる材料の質量比、延伸温度及び延伸倍率等を調整することで、前記Re(450)<Re(550)<Re(650)の特性を満たすことができる。
例えば、前記1/4波長板が前記第1の態様であって、固有複屈折値が正の材料(樹脂)として、ノルボルネン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、及び、ポリカーボネートを各々用いる場合には、短波長側が大きくレターデーション減少し、結果としてRe(450)<Re(550)<Re(650)の特性が得られる。延伸温度を前述の範囲内に制御することで、特に可視光波長全域にわたってRe(λ)/λを一定とし、広帯域にわたって均一な位相差特性を示す1/4波長板が得られる。
【0081】
以上のように、前記1/4波長板は、広帯域(可視光域)の光に対して均一な位相差特性を与えることができると共に、積層体であるにもかかわらず、簡易な工程によって効率的、かつ、低コストで製造可能である。また前記1/4波長板は、原材料を選択する際に材料の相溶性を考慮する必要がなく、更に、固有複屈折値が正同士、負同士、及び正及び負の組合せ、など、いずれの組合せでも製造可能であるため材料の選択の幅が広く好ましい。更に、コストが安い等の点でも有利である。
【0082】
−1/4波長板の実施形態等−
前記1/4波長板の実施形態の一例を図5に示す。
1/4波長板100は、前記第1の態様の1/4波長板であり、固有複屈折値が正の樹脂からなる層101と、該樹脂とは異なる正の固有複屈折値を有する樹脂からなる層102とが積層されている。
層101及び層102は、各々複屈折を有し、その遅相軸を互いに直交させて積層されている。即ち、層101に含有される、前記固有複屈折値が正の樹脂における分子鎖の配向方向と、層102に含有される、前記固有複屈折値が正の樹脂における分子鎖の配向方向とは直交している。1/4波長板100のレターデーションは、層101及び層102における各レターデーションの和となるので、層101と層102とを遅相軸を互いに直交させて積層することによって、1/4波長板100の短波長側のレターデーションを小さく、且つ長波長側のレターデーションを大きくすることができる。その結果、1/4波長板100の波長λにおけるレターデーションRe(λ)と波長との比Re(λ)/λを、可視光全域において略一定にすることができる。
【0083】
尚、前記実施形態においては、固有複屈折値が正の異なる2種の樹脂からなる層を、各々1層有する構成の1/4波長板の具体例を示したが、前記1/4波長板はこれに限定されることはなく、更に、3層、4層と、3層以上が積層された構成であってもよい。3層以上の多層が積層された構成とすることにより、1/4波長板の物理的特性がより改良され好ましい。
【0084】
以上説明した前記1/4波長板は、簡易な工程により効率的に、連続的に、低コストで製造可能であり、固有複屈折値の正負に関わらず原材料を選択可能であるため製造時の原材料の選択性が大きく、且つ、可視光全域の入射光に対して広帯域で均一な位相差特性を与える。
【0085】
[直線偏光膜]
本発明のELディスプレイにおいて、直線偏光膜は前記1/4波長板と組み合せられて、円偏光板として機能する。本発明において、直線偏光膜にはヨウ素系偏光膜、二色染料を用いる染料系偏光膜及びポリエン系偏光膜等が利用できる。前記ヨウ素系偏光膜及び前記染料系偏光膜は、一般的に、ポリビニルアルコール系フィルムに延伸処理等を施して製造することができる。偏光膜の偏光軸(透過軸)は、フィルムの延伸方向に相当する。
【0086】
前述した様に、1/4波長板と直線偏光膜との間に、反射偏光板を設けると、発光層が発光した光をより多く、外側に出射させることができる。前記反射偏光板は、併用する直線偏光膜の偏光軸方向と一致する直線偏光を透過し、偏光軸方向とは異なる方向の直線偏光を反射する機能を有する。具体的には、一方向において屈折率の異なる高分子薄膜を交互に積層した複屈折光偏光子(特表平8−503312号公報に記載)や、コレステリック構造を有する偏光分離膜(特開平11−44816号公報に記載)を好ましく用いることができる。また、直線偏光膜の表面に保護膜を形成してもよい。
【0087】
[発光層]
本発明のELディスプレイにおいて、前記発光層に含まれる発光材料は特に限定されず、発光材料は無機材料であっても、有機材料であってもよい。中でも、発光材料として有機材料を用いた有機ELディスプレイが好ましい。前記発光層は、発光材料を蒸着等することによって形成することができる。
尚、前記発光層に、電荷輸送材料を含有させて電荷輸送層としての機能を付加してもよいし、ホール輸送材料を含有させてホール輸送層としての機能を付加してもよい。また、発光層とは別に、電荷輸送層及び/又はホール輸送層を設けてもよい。
【0088】
[透明電極]
本発明のELディスプレイにおいて、前記透明電極としては、一般的にはITO電極が利用される。前記透明電極は、パターニングされていてもよい。前記透明電極は、スパッタリング等により形成することができ、パターニングにはエッチングを利用することができる。
【0089】
[光反射電極]
本発明のELディスプレイにおいて、前記光反射電極としては、光反射率の高い金属材料を用いて形成するのが好ましい。前記金属材料としては、Mg、MgAg、MgIn、Al、LiAl等が挙げられる。前記光反射電極の表面が平坦である程、光の乱反射が防止できるので好ましい。また、前記光反射電極は、パターニングされていてもよい。前記光反射電極は、スパッタリング等により形成することができ、前記パターニングにはエッチング等を利用することができる。
【0090】
[その他の部材]
その他、本発明のELディスプレイには、所望により、前記透明電極と前記円偏光板との間に透明基板を設けることができる。前記透明基板としては、ガラス基板及び光透過性プラスチックフィルムが利用できる。
【0091】
[本発明のELディスプレイの好ましい実施態様]
本発明のELディスプレイは、前記透明電極及び前記反射電極に通電部を設け、通電することにより、発光層を発光させ、画像として表示させることができる。また、本発明のELディスプレイは、R(レッド)発光層、G(グリーン)発光層及びB(ブルー)発光層を、フォトマスク等を用いて各々パターニング形成し、パターニング形成された各発光層を個々に通電可能に構成することにより、フルカラー画像用の表示素子とすることができる。
【0092】
本発明のELディスプレイには、その他、WO96/34514号公報、特開平9−127885号公報及び同11−45058号公報に記載の有機ELディスプレイの構成を適用できる。その場合は、前記有機ELディスプレイが備える前記反射防止手段に代えて、又は併用して前記円偏光板を組込んだ構成とすることができる。また、本発明のELディスプレイとしては、例えば、「エレクトロルミネッセンスディスプレイ」(猪口敏夫著、産業図書株式会社、1991年発行)に記載のある無機ELディスプレイに前記円偏光板を組込んだ構成にすることもできる。
【0093】
以上説明した本発明のELディスプレイは、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能である広帯域の1/4波長板を用い、背景の映り込みが抑制され、高性能で、低コストで製造可能であり、量産性に優れる。
【0094】
【実施例】
(実施例1)
−1/4波長板の作製−
図4に示した延伸・貼り合わせ機20を用いて以下のようにして1/4波長板を作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を延伸倍率1.1倍、延伸温度135℃で横延伸(テンター延伸)し、厚み92μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550)で表す。)は341.6であった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で縦延伸しレターデーション(Re(550))が477.1nm、厚みが60μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み155μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=122.8nm、Re(550)=145.7nm、Re(650)=160.1nmであり、広帯域1/4波長板としての特性を有した積層フィルムが得られた。Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0095】
−円偏光板の作製−
直線偏光膜及び保護膜からなる偏光板と、前記1/4波長板とを、偏光板の吸収軸と1/4波長板の延伸軸とを45°交差させて積層し、円偏光板を作製した。
【0096】
−ELディスプレイの作製−
厚さ1.1mmの透明のガラス基板上に、ITOからなる透明電極をスパッタリング法により作製した。形成した透明電極をエッチング処理し、ストライプ状にパターニングした。このパターニングされた透明電極上に、トリフェニルアミン誘導体からなる厚さ30nmの正孔注入層を形成した。前記正孔注入層上に、真空マスク蒸着法によりアルミキレート錯体を蒸着させ、有機発光層を形成した。前記有機発光層上に、Mg−Ag合金(質量比:Mg/Ag=95/5)を100nmの厚さに多元蒸着して、光反射性電極を形成した。次に、前記ガラス基板の反対側の面に、作製した前記円偏光板(1/4波長板側)を、接着剤を介して貼り合わせ、有機ELディスプレイを作製した。作製した有機ELディスプレイに通電して画像を表示させた。表示された画像を正面やや斜め方向から観察したが、背景の映り込みは全く認められず、コントラストの高い画像を確認できた。
【0097】
(実施例2)
−1/4波長板の作製−
図4に示した延伸・貼り合わせ機20を用いて以下のようにして1/4波長板を作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を延伸倍率1.1倍、延伸温度140℃で縦延伸し、厚み92μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550)で表す。)は316.4nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み142μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=121.1nm、Re(550)=147.0nm、Re(650)=160.3nmであり、広帯域1/4波長板としての特性を有した積層フィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0098】
−円偏光板の作製・ELディスプレイの作製−
得られた1/4波長板を用い、実施例1と同様にして円偏光板を作製し、有機ELディスプレイを作製した。該有機ELディスプレイに通電して画像を表示させた。表示された画像を正面やや斜め方向から観察したが、背景の映り込みは全く認められず、コントラストの高い画像を確認できた。
【0099】
(実施例3)
−1/4波長板の作製−
図4に示した延伸・貼り合わせ機20を用いて以下のようにして1/4波長板を作製した。
先ず、ポリエチレンテレフタレートを290℃にてTダイにより溶融押し出しし、30℃のキャスティングドラム上にて冷却固化し、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:45μm)を作製した。該未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、延伸倍率1.15倍、延伸温度90℃で縦延伸し、厚み40μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550))は303.9nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み90μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=124.4nm、Re(550)=154.1nm、Re(650)=165.1nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0100】
−円偏光板の作製・ELディスプレイの作製−
得られた1/4波長板を用い、実施例1と同様にして円偏光板を作製し、有機ELディスプレイを作製した。該有機ELディスプレイに通電して画像を表示させた。表示された画像を正面やや斜め方向から観察したが、背景の映り込みは全く認められず、コントラストの高い画像を確認できた。
【0101】
(実施例4)
−1/4波長板の作製−
図4に示した延伸・貼り合わせ機20を用いて以下のようにして1/4波長板を作製した。
先ず、ポリエチレンテレフタレートを290℃にてTダイにより溶融押し出しし、30℃のキャスティングドラム上にて冷却固化し、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:400μm)を作製した。該未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、延伸温度90℃で、縦延伸(延伸倍率:3.3倍)し、続いて延伸温度120℃で横延伸(テンター延伸、延伸倍率:3.3倍)し、厚み40μmの二軸延伸延伸フィルムを得た。この二軸延伸フィルムは、主に縦方向に配向が進んでおり、波長550nmにおけるレターデーション(Re(550))は309.2nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
【0102】
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み90μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=120.3nm、Re(550)=148.3nm、Re(650)=162.8nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
二軸に延伸して積層させても、縦又は横方向のいずれか一方に主に配向が進んでいる場合には、縦又は横の一軸に延伸した場合と同様の優れた特性が得られることが解った。
【0103】
−円偏光板の作製・ELディスプレイの作製−
得られた1/4波長板を用い、実施例1と同様にして円偏光板を作製し、有機ELディスプレイを作製した。該有機ELディスプレイに通電して画像を表示させた。表示された画像を正面やや斜め方向から観察したが、背景の映り込みは全く認められず、コントラストの高い画像を確認できた。
【0104】
(実施例5)
−1/4波長板の作製−
図4に示した延伸・貼り合わせ機20を用いて以下のようにして1/4波長板を作製した。
先ず、未延伸ポリスチレン(厚み:100μm)を延伸倍率2.1倍、延伸温度105℃で縦延伸し、厚み62μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション(Re(550))は453.2nmであった。
同時に、ポリメチレンアクリレートフィルム(厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.4倍、延伸温度110℃で横延伸(テンター延伸)し、厚み58μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション(Re(550))は602.8nmであった。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み123μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=121.3nm、Re(550)=149.8nm、Re(650)=169.7nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)及びRe(650)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0105】
−円偏光板の作製・ELディスプレイの作製−
得られた1/4波長板を用い、実施例1と同様にして円偏光板を作製し、有機ELディスプレイを作製した。該有機ELディスプレイに通電して画像を表示させた。表示された画像を正面やや斜め方向から観察したが、背景の映り込みは全く認められず、コントラストの高い画像を確認できた。
【0106】
【表1】
【0107】
【発明の効果】
本発明によれば、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能である広帯域の1/4波長板を用い、背景の映り込みが抑制され、高性能で、低コストで製造可能であり、量産性に優れたエレクトロルミネッセンスディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のELディスプレイの基本的構成を説明するための断面模式図である。
【図2】図2は、本発明のELディスプレイにおける反射防止機能及び表示機能を説明するための図である。
【図3】図3は、ドライラミネート法を具体的に説明するための図である。
【図4】図4は、本発明のELディスプレイに用いる1/4波長板の製造方法を概略的に説明するための図である。
【図5】図5は、本発明のELディスプレイに用いる1/4波長板の一実施形態を表す概略断面図である。
【符号の説明】
21・・・・・・・・・・縦延伸部
21a,21b・・・・・縦延伸低速ローラ
21c,21d・・・・・縦延伸高速ローラ
22・・・・・・・・・・貼り合わせ部
22a,22b・・・・・貼り合わせ・ニップローラ
22c,22d・・・・・接着剤塗布ローラ
23・・・・・・・・・・横延伸部
23a・・・・・・・・・搬送方向調整ローラ
23b・・・・・・・・・横延伸機
100・・・・・・・・・1/4波長板
101・・・・・・・・・固有複屈折値が正の樹脂からなる層
102・・・・・・・・・固有複屈折値が正の樹脂からなる層
200・・・・・・・・・ラミネート機
201・・・・・・・・・加熱乾燥機
202・・・・・・・・・接着剤収容器
203・・・・・・・・・第一フィルム供給ローラ
204・・・・・・・・・第二フィルム供給ローラ
205・・・・・・・・・巻き取りローラ
206a,206b・・・接着剤塗布ローラ
207a,207b・・・搬送ローラ
208a・・・・・・・・第一の延伸フィルム
208b・・・・・・・・第二の延伸フィルム
209・・・・・・・・・ドクターブレード
210a・・・・・・・・貼り合わせ・ニップローラ
210b・・・・・・・・貼り合わせ・ニップローラ
【発明の属する技術分野】
本発明はエレクトロルミネッセンスディスプレイに関し、特に、1/4波長板及び直線偏光膜からなる円偏光板を発光面側に備えたエレクトロルミネッセンスディスプレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、平面ディスプレイとして、背面電極、発光層、そして透明電極からなるエレクトロルミネッセンスディスプレイが提案されている。前記エレクトロルミネッセンスディスプレイでは、背面電極として反射性の高い金属電極が使用されている。反射性の高い金属電極を用いることにより、発光層からの発光輝度を向上させることができる一方、外部の背景が映り込み、画像表示特性を低下させるという問題があった。
これを解決するため、従来、エレクトロルミネッセンスディスプレイでは、低屈折率層を用い、屈折率による通常の反射防止膜ではなく、より強力な反射防止手段を使用することが提案されている。例えば、特許文献1には、様々な反射防止手段を設けた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイが開示されている。前記反射防止手段の一つとして、1/4波長板と偏光板(直線偏光膜)とを積層した円偏光板が提案されている。また、特許文献2には、光出射面に円偏光手段が設けられている発光素子(主に有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ)が開示されている。前記円偏光手段は、具体的には1/4波長板と直線偏光板とが積層されて構成されている。一方、特許文献3には、波長補正板(1/4波長板)、平面型直線偏光ビームスプリッタ(反射偏光板)及び偏光板(直線偏光膜)からなる反射防止手段を備えた表示装置(主に有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ)が開示されている。
【0003】
ここで、円偏光板を反対防止手段として備えたエレクトロルミネッセンスディスプレイでは、円偏光板を構成する1/4波長板の性能が非常に重要である。従来の1/4波長板は、「1/4波長板」と称していても、ある特定波長でのみλ/4を達成しているものが大部分である。λ/4を達成できる波長領域が狭いと、充分な反射防止機能を得ることができない。
【0004】
広帯域を達成している1/4波長板としては、例えば、特許文献4〜7には、二枚のポリマーフィルムを積層して広い波長領域で(広帯域)λ/4を達成している。前記公報に提案された1/4波長板は、光学異方性の異なるポリマーフィルムを2枚積層して形成したものである。通常は、延伸したポリマーフィルムを互いの延伸軸を一致させずに、所定の角度でずらして積層して作製する。具体的には、積層するポリマーフィルム各々について、延伸ポリマーフィルムの表面に粘着材を塗工し粘着面を形成し、この粘着面に離型フィルムを貼付した後、延伸軸に対して所定の角度でチップを切り出し、その後、切り出された各々のチップを貼合して作製する。
【0005】
しかし、この方法は、積層するチップ状のポリマーフィルム2枚を各々独立に作製する必要があり、さらに、各々のフィルムの作製工程が煩雑であるとともに、各工程に種々の材料(粘着材、離型フィルム等)を必要とし、製造コストが高くなることは避けられない。また、チップを切り出した際に生じるカットくずを完全にチップから除去することはできず、チップを貼合する際に不具合が生じたり、また、チップの切り出しの際及びチップの貼合の際に、軸ずれ等が生じ、製造物の性能不良も生じ易いという問題があった。このような1/4波長板についての問題は、ひいてはこれを備えたエレクトロルミネッセンスディスプレイの性能を低下させたり、製造コストを増大させるという問題を引き起こしていた。
【0006】
【特許文献1】
WO96/34514号公報
【特許文献2】
特開平9−127885号公報
【特許文献3】
特開平11−45058号公報
【特許文献4】
特開平5−27118号公報
【特許文献5】
特開平5−27119号公報
【特許文献6】
特開平10−68816号公報
【特許文献7】
特開平10−90521号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能である広帯域の1/4波長板を用い、背景の映り込みが抑制され、高性能で、低コストで製造可能であり、量産性に優れたエレクトロルミネッセンスディスプレイを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> 光反射電極と、発光層と、透明電極と、1/4波長板及び直線偏光膜を有する円偏光板とがこの順に配置されたエレクトロルミネッセンスディスプレイであって、
前記1/4波長板が、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たすことを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<2> 2種以上の材料における固有複屈折値が正であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<3> 2種以上の材料における固有複屈折値が負であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<4> 2種以上の材料における固有複屈折値が正及び負であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<5> 各層における分子鎖の配向軸が互いに直交した前記<1>から<3>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<6> 各層における分子鎖の配向軸が互いに平行である前記<1>又は<4>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<7> 1/4波長板が、更に接着層を有する前記<1>から<6>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<8> 材料が樹脂である前記<1>から<7>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<9> 材料のうちの少なくとも1種が、ノルボルネン系ポリマーである前記<1>から<8>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<10> 材料のうちの少なくとも1種が、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、ポリアリーレン系ポリマー、及び、ポリカーボネート系ポリマーの少なくともいずれかである前記<1>から<9>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<11> 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、1/4波長板における各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値の差が互いに0.03以上である2種の層を含む前記<1>から<10>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<12> 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、1/4波長板における各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値が互いに異なる2種の層を含み、該2種の層のうち、Re(450)/Re(550)の値が小さい層におけるRe(550)の値が、Re(450)/Re(550)の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きい前記<1>から<11>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<13> 1/4波長板の光弾性が20ブルースター以下である前記<9>に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<14> 1/4波長板において、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーションRe(λ)と波長λとが、各々下記関係式を満たす前記<1>から<13>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
0.2≦Re(λ)/λ≦0.3
<15> 1/4波長板が、少なくとも、固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料のうち材料Aを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムとし、前記2種以上の材料のうち材料Bを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムとし得られた前記<1>又は<2>に記載のエレクロトルミネッセンスディスプレイである。
<16> 1/4波長板が、少なくとも、固有複屈折値が負で異なる2種以上の材料のうち材料Cを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムとし、前記2種以上の材料のうち材料Dを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムとし得られた前記<1>又は<3>に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<17> 1/4波長板が、少なくとも、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、搬送しつつ、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸し縦延伸フィルム又は横延伸フィルムとし得られた前記<1>又は<4>に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<18> 1/4波長板が、延伸フィルムを共に同方向に搬送し得られた前記<15>から<17>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
<19> 1/4波長板が、延伸フィルムの遅相軸を互いに直交させて貼り合わされた前記<15>から<18>のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のエレクトロルミネッセンスディスプレイ(以下、「ELディスプレイ」と称することがある。)は、光反射電極と、発光層と、透明電極と、1/4波長板及び直線偏光膜を有する円偏光板とがこの順に配置されたエレクトロルミネッセンスディスプレイである。
図1に、本発明のELディスプレイの基本的構成を説明するための断面模式図を示す。図1に示すELディスプレイは、光反射電極(RE)、発光層(L)、透明電極(TE)、透明基板(S)、1/4波長板(λ/4)、及び、直線偏光膜(P)がこの順に積層された構造を有する。1/4波長板(λ/4)及び直線偏光膜(P)が円偏光板を構成している。
【0010】
次に、図2を用いて、本発明のELディスプレイにおける反射防止機能及び表示機能について説明する。但し、図2では、図1に示すELディスプレイ中、円偏光板のみが模式的に示されており、他の部材は省略されている。図2に示す円偏光板は、直線偏光膜(P)及び1/4波長板(λ/4)を有する。前記円偏光板は、発光層(不図示)からの光の出射側に配置され、直線偏光膜(P)側(上側)をELディスプレイの外側にし、1/4波長板(λ/4)側をELディスプレイの内側にして配置される。
【0011】
図2に示すELディスプレイに、外部から光(1a及びlbを含む)が入射すると、直線偏光膜(P)の偏光軸方向に一致する直線偏光成分(lb)のみが直線偏光膜(P)を通過する。他の成分(la)は、直線偏光膜(P)に吸収される。直線偏光膜(P)を通過した直線偏光(2b)は、1/4波長板(λ/4)を通過することにより円偏光(2c)に変換される。円偏光(2c)は、ELディスプレイの光反射電極(図示せず)に反射されると、逆回りの円偏光(3c)になる。逆回りの円偏光(3c)は、1/4波長板(λ/4)を通過することにより直線偏光膜(P)の偏光軸方向とは90°異なる方向の直線偏光(3b)に変換される。この直線偏光(3b)は、直線偏光膜(P)を通過できずに吸収される。このようにして、ELディスプレイへ外部から入射する光(la及びlb)は、すべて直線偏光膜(P)に吸収され、反射は防止される。従って、背景部が映り込むことによる画像表示特性の低下を防止することができる。
【0012】
ELディスプレイ内部からの光、即ち、発光層(図示せず)からの発光は、二種類の円偏光成分(3c及び4c)を含んでいる。一方の円偏光(3c)は、上記のように1/4波長板(λ/4)を通過することにより、直線偏光膜(P)の偏光軸方向とは90°異なる方向の直線偏光(3b)に変換される。そして、直線偏光(3b)は直線偏光膜(P)を通過できずに直線偏光膜(P)に吸収される。他方の円偏光(4c)は1/4波長板(λ/4)を通過することにより直線偏光膜(P)の偏光軸方向と一致する直線偏光(4b)に変換される。そして、直線偏光(4b)は直線偏光膜(P)を通過し(4a)、画像として認識される。
【0013】
尚、直線偏光膜(P)と1/4波長板(λ/4)との間に、直線偏光膜(P)の偏光軸方向とは90°異なる方向の直線偏光(3b)を反射する機能を有する反射偏光板を設けると、直線偏光(3b)を吸収することなく反射させ、それを反射電極で再反射させることにより、直線偏光膜(P)の偏光軸方向と一致する直線偏光(4b)に変換することができる。即ち、反射偏光板を用いることで、発光層が発光した光の全て(3c及び4c)を外側に出射させることもできる。
【0014】
以下、本発明のELディスプレイを構成している各部材について説明する。
[1/4波長板]
前記1/4波長板は、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たす。また、該1/4波長板において、入射光は、前記固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層した層によって位相差特性が与えられる。
【0015】
前記1/4波長板においては、固有複屈折値が正同士の2種以上の材料を積層した第1の態様、固有複屈折値が負同士の2種以上の材料を積層した第2の態様、及び、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を積層した第3の態様、の3種類の態様が含まれる。
【0016】
−第1の態様の1/4波長板−
前記第1の態様の1/4波長板は、2種以上の固有複屈折値が正の材料を積層した態様である。第1の態様においては、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに直交させることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0017】
尚、前記第1の態様において、固有複屈折値が正の3種類以上の材料を各々積層させる場合、これらの各層における分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸を互いに直交させるには、これら固有複屈折値が正の材料のうち、Re(450)/Re(550)の値が近い材料を1種類の材料と見なすことにより、Re(450)/Re(550)の値によって概ね2種類の材料に分類し、これらの2種類の材料同士が、その分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸が互いに直交するように各層を材料毎に積層するのが好ましい。
【0018】
前記第1の態様においては、このように1/4波長板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第1の態様の1/4波長板においては、共に固有複屈折値が正の異なる値である2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な1/4波長板特性が与えられる。
【0019】
<第1の態様における材料>
前記第1の態様における材料としては、前記固有複屈折値が正である材料(以下、単に「正の材料」と称することがある。)のほか、所望により含有可能なその他の成分等が挙げられる。前記、「固有複屈折値が正である材料」とは、分子が一軸性の秩序をもって配向した際に、光学的に正の一軸性を示す特性を有する材料をいう。
例えば、前記正の材料が樹脂である場合、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より大きくなる樹脂をいう。
前記正の材料としては、樹脂、棒状液晶、棒状液晶ポリマー等種々のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの中でも樹脂が好ましい。
【0020】
前記樹脂としては、例えば、オレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマーなど)、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー(例えば、ポリフェニレンサルファイドなど)、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、セルロースエステル系ポリマー(前記固有複屈折値が負であるものもある)、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリアリルサルホン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明においては、これらの中でも、(Re(450)/Re(550))の値が低い方の層に用いる材料としては、オレフィン系ポリマーが好ましく、オレフィン系ポリマーの中でも、光透過率特性、耐熱性、寸度安定性、光弾性特性等の観点から、ノルボルネン系ポリマーが特に好ましい。前記オレフィン系ポリマーとしては、日本合成ゴム社製の「アートソー」、日本ゼオン社製の「ゼオネックス」及び「ゼオノア」、三井石油化学製の「APO」等が好適に利用される。
【0022】
前記ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有してなり、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好適に利用できるが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0024】
【化1】
【0025】
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0026】
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)又は(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
【0027】
【化2】
【0028】
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0029】
前記ノルボルネン系ポリマーの重量平均分子量としては、5,000〜1,000,000程度であり、8,000〜200,000が好ましい。
【0030】
前記第1の態様における材料として、含有可能なその他の成分としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
前記材料(固有複屈折値が正の材料又は負の材料)が樹脂である場合のガラス転移点としては、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
【0032】
<第1の態様における1/4波長板の構成等>
前記第1の態様における1/4波長板は、前述したように、固有複屈折値が正で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第1の態様においては、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、使用しても、発現されるレターデーションの波長分散性に影響を与えないのが好ましく、特に、可視光全域の入射光に対して、影響を与えない材料が好ましい。
【0033】
前記接着層の材料としては、各層における材料と親和性がある材料が好適に使用される。具体的には、前記固有複屈折値が正の樹脂としてノルボルネン系ポリマーを使用した場合、接着層の材料としては、脂肪族エステル系、脂肪族エステルウレタン系、芳香族エステル系、芳香族エステルウレタン系、及び、エーテル系等のポリマーを含む接着剤等が挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記第1の態様における1/4波長板の厚みとしては、30〜300μmが好ましく、50〜250μmがより好ましい。前記各層の厚みとしては、10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましい。前記接着層の厚みとしては、該接着層の複屈折と厚みとの積が小さくなる程好ましく、具体的には、0.2〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。
【0035】
<第1の態様における1/4波長板の製造方法等>
前記1/4波長板の製造方法のうち、第1の態様における1/4波長板の製造方法においては、固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料のうち材料Aを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムとし、前記2種以上の材料のうち材料Bを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムとする。
【0036】
尚、前記「材料A」及び「材料B」は、互いに固有複屈折値が異なる材料である。第1の態様における1/4波長板の製造方法において、固有複屈折値が正の3種類以上の材料を各々積層させる場合、固有複屈折値が正の材料のうち、Re(450)/Re(550)の値が近い材料によって2種類に分け、各々の材料を「材料A」、「材料B」として延伸する。
【0037】
前記延伸の方法としては、一軸延伸でもよく、厚み方向を制御する目的から、二軸延伸を行ってもよい。
尚、二軸延伸を行う場合には、得られる1/4波長板において、縦及び横のいずれかの方向に主に分子鎖を配向させ、各層における配向軸同士が互いに直交するように延伸することが必要である。
【0038】
これら延伸により得られた延伸フィルムは、効率及び省スペース化の点で、共に同方向に搬送されるのが好ましい。前記延伸の後、得られた縦延伸フィルムと横延伸フィルムとを積層させるのが好ましい。該積層の方法としては、各延伸フィルムを貼り合わせるのが好ましく、各延伸フィルムの遅相軸を互いに直交させて貼り合わせるのが特に好ましい。このようにして1/4波長板を得ることにより、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与える広帯域の1/4波長板を、固有複屈折値が正同士の材料を用いて、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能である。
【0039】
前記貼り合わせの方法としては、特に制限はないが、接着剤を塗布して貼り合わせる方法、接着フィルムを各層間に挟んで貼り合わせる方法、接着剤を利用してドライラミネート法により貼り合わせる方法、などが挙げられる。
【0040】
前記接着剤、接着フィルムの材料としては、前述した接着層の材料と同様である。接着剤の塗布量としては、固形分の質量で1〜10g/cm2程度が好ましい。また接着フィルムの厚みとしては、0.5〜10μm程度が好ましい。
【0041】
前記ドライラミネート法は、一般的に、接着剤を一方の接着対象物に均一に塗布し、乾燥させた後、他方の接着対象物に加圧条件で圧着して行われる。該ドライラミネート法においては、接着剤が貼り合わせ用のロール等に付着しないよう、接着対象物の両側に接着剤を塗布しない部分を残して貼り合わせたり、ロール間の押圧の解除が自動的に行われるのが好ましい。該ドライラミネート法に用いられる接着剤としては、例えば、ウレタン樹脂系の接着剤が好ましく、特に、主剤(OH基含有化合物)及び硬化剤(NCO基含有化合物)を混合して反応させる二液硬化型の接着剤が好ましい。該接着剤は、溶剤に溶解して接着剤溶液として使用してもよく、溶剤を使用しない無溶剤型の接着剤であってもよいが、省エネルギー化、残留溶剤量の低減、及び高速化の観点からは、無溶剤型が好ましい。溶剤を用いる場合、該溶剤としては、例えば、トルオール酢酸エチレン、酢酸エチル等の溶剤が好ましい。この場合、接着剤溶液における固形分濃度としては、20〜40質量%程度が好ましい。前記加圧の圧力としては、1〜50kg/cm2程度が好ましい。また、該ドライラミネート法によって3種以上の材料を積層して3層以上の積層体からなる1/4波長板を作製する場合には、2種の層を貼り合わせて積層させた段階で、積層体の巻き取り工程を設けずに3層目の貼り合わせ工程に移す等の方法によって作業の効率化を図るのが好ましい。
【0042】
ここで、前記ドライラミネート法の一例を、図3を用いて説明する。図3に示すドライラミネート機200は、第一の延伸フィルム供給手段と、第二の延伸フィルム供給手段と、接着剤塗布手段と、搬送手段と、加熱乾燥手段と、貼り合わせ手段と、巻き取り手段とを有する。
【0043】
第一の延伸フィルム供給手段は、第一の延伸フィルム208aを供給する第一フィルム供給ローラ203を有する。
第二の延伸フィルム供給手段は、第二の延伸フィルム208bを供給する第二フィルム供給ローラ204を有する。
接着剤塗布手段は、接着剤を収容する接着剤収容器202と、接着剤塗布ローラ206a,206bと、ドクターブレード209とを有する。該接着剤塗布手段において、接着剤塗布ローラ206aは、その表面が、前記接着剤及び第一の延伸フィルム208aと当接するように配され、接着剤塗布ローラ206bは、その表面が、第一の延伸フィルム208aと当接するように配されている。該接着剤塗布手段においては、接着剤塗布ローラ206a表面に付着した接着剤が、ローラの矢印方向への回転に伴い、ドクターブレード209によって適宜掻き落とされて均一な厚みに調整され、第一の延伸フィルム208aに均一に塗布される。
前記搬送手段は、回転により第一の延伸フィルム208aを搬送可能な搬送ローラ207a、搬送ローラ207bを有する。
前記加熱乾燥手段は、第一の延伸フィルム208aに塗布された接着剤を乾燥可能な加熱乾燥器201を有する。
前記貼り合わせ手段は、第一の延伸フィルム208a及び第二の延伸フィルム208bを貼り合わせ可能な貼り合わせ・ニップローラ210a,210bを有する。
【0044】
ドライラミネート機200においては、先ず、矢印方向に回転する第一フィルム供給ローラ203から、第一の延伸フィルム208aが供給され矢印方向に搬送される。接着剤塗布ローラ206a,206bまで搬送された第一の延伸フィルム208aは、接着剤塗布ローラ206a,206b間を、ロールに当接しつつ搬送される際に、接着剤塗布ローラ206a表面に付着した接着剤が均一に塗布される。その後、更に矢印方向に搬送されて搬送ローラ207a上を通って加熱乾燥器201まで搬送される。加熱乾燥器201まで搬送された第一の延伸フィルム208aにおいては、表面に均一に塗布された接着剤が加熱により乾燥される。更に、第一の延伸フィルム208aは矢印方向に搬送され、搬送ローラ207b上を通って、貼り合わせ・ニップローラ210a,210bまで搬送される。一方、矢印方向に回転する第二フィルム供給ローラ204からは、第二の延伸フィルム208bが供給され、矢印方向に、貼り合わせ・ニップローラ210a,210bまで搬送される。貼り合わせ・ニップローラ210a,210bにおいては、ニップ部での加圧により、第一の延伸フィルム208a及び第二の延伸フィルム208bが貼り合わせられ、これらが積層された1/4波長板が製造される。製造された1/4波長板は、巻き取りローラ205まで搬送され、巻き取られる。
【0045】
前記固有複屈折値が正の材料としては、前述した通りであり、好ましい材料等も前述した通りである。
【0046】
前記第1の態様における1/4波長板の製造方法の一実施態様を、図4を用いて概略的に説明する。
図4に示す延伸・貼り合わせ機20は、縦延伸部21と、貼り合わせ部22と、横延伸部23とを備えている。
縦延伸部21は、縦延伸低速ローラ21a,21bと、縦延伸高速ローラ21c,21dとからなる。
貼り合わせ部22は、貼り合わせ・ニップローラ22a,22b及び接着剤塗布ローラ22c,22dからなる。
横延伸部23は、搬送方向調整ローラ23a及び横延伸機23bからなる。
延伸・貼り合わせ機20において、縦延伸低速ローラ21a,21b、縦延伸高速ローラ21c,21d、貼合わせ・ニップローラ22a,22b、接着剤塗布ローラ22c,22d、及び、搬送方向調整ローラ23aは、各々不図示の駆動部により回転可能である。縦延伸低速ローラ21a,21b、縦延伸高速ローラ21c,21dは、上流から下流に向かってこの順に配されている。縦延伸低速ローラ21a,21b、縦延伸高速ローラ21c,21dの周辺及びその内部には、各々不図示の加熱手段が設置され、延伸対象物の延伸温度を適宜制御可能である。
【0047】
延伸・貼り合わせ機20においては、まず、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aと、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bとが、図4の矢印方向(搬送方向)に搬送されてくる。ここで、縦延伸高速ローラ21c及び縦延伸高速ローラ21dは、縦延伸低速ローラ21a及び縦延伸低速ローラ21bより高速で回転するように設定されており、また、縦延伸低速ローラ21a及び縦延伸高速21cは、縦延伸低速ローラ21b及び縦延伸高速ローラ21dと逆方向(図に示す矢印方向)に回転するように設定されている。
【0048】
延伸・貼り合わせ機20における縦延伸部21に搬送されてきた、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aは、各縦延伸低速ローラ21a,21b、縦延伸高速ローラ21c,21dに順次当接し、図示した搬送方向に搬送されつつ、縦延伸低速ローラ21a,21bと、縦延伸高速ローラ21c,21dとの回転速度差により張力を付与され、この回転速度差によって搬送方向(フィルムの長手方向)に延伸される。またこのとき、前記加熱手段により、材料Aの延伸時に温度制御が可能であるため、材料Aは、材質、延伸速度(ローラの速度差)等に応じて好適な延伸条件に容易に調整される。延伸後、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aは、図示した方向に回転する貼合せ・ニップローラ22a,22bにおいて、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bと貼り合わせられ、更に図示した搬送方向に搬送されていく。
【0049】
一方、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bは、搬送方向調整ローラ23a下を通って、図示した搬送方向に搬送されつつ、横延伸部23における横延伸機(テンター延伸機)23bにより横延伸(テンター延伸等)され、貼り合わせ部22における接着剤塗布ローラ22c,22dにより接着剤が塗布された後、貼り合わせ・ニップローラ22a,22bにおいて、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bと接着剤を介して貼り合わせられ、更に図示した搬送方向に搬送されていく。
延伸・貼り合わせ機20において、延伸倍率や延伸温度等を、各ロールの回転速度、加熱手段等によって適宜調整することにより、目的のレターデーションを有する第1の態様における1/4波長板を効率的に製造することができる。
【0050】
前記加熱手段としては、延伸対象物を適切な温度に加温することができれば特に制限はなく、公知の加熱手段を総て好適に用いることができるが、例えば、熱風、加熱ロール等のほか、近赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ等の赤外線ヒータ、などの各種熱源が挙げられる。これらの加熱手段としては、加熱のみならず、温度を制御可能な装置を備えているのが好ましい。これらの加熱手段は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
縦延伸部21におけるローラ数としては、特に制限はなく、延伸対象物の材質、延伸速度等により適宜選択可能である。
【0052】
また、図4に示す実施態様においては、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aの延伸、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bの延伸、及び、貼り合わせを連続的に行っているが、本発明においては、これに何ら限定されることはなく、例えば、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aの延伸と、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bの延伸とを、別途独立して行ってもよい。また各フィルムの延伸と貼り合わせとを別途独立して行ってもよい。これらの場合には、延伸した各フィルムを一時的に巻き取っておく等によって、省スペースの点で有利となる。
【0053】
また、前述の実施形態において、接着方法としてドライラミネート法を採用する場合には、接着剤塗布ローラ22c,22d及び貼り合わせ・ニップローラ22a,22bの間に、接着剤を乾燥させる乾燥手段を設けるのが好ましい。該乾燥手段としては、特に制限はなく、公知の乾燥方法、例えば、温風乃至熱風による乾燥、等が挙げられる。
【0054】
また、前記延伸温度としては、特に制限はないが、各層における基本材料(固有複屈折値が正の材料)の最低ガラス転移温度をTg(min)としたとき、(Tg(min)−30)℃〜(Tg(min)+30)℃に設定するのが好ましい。
【0055】
第1の態様における1/4波長板の製造方法においては、効率的に前記遅相軸を直交させて積層するには、各層の搬送方向を一致させると共に延伸方向を直交させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第1の態様の1/4波長板は、固有複屈折値が正の同符号である2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を直交させることにより、2層以上の積層体の遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型1/4波長板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に1/4波長板の製造が行われる。また、製造された1/4波長板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0056】
−第2の態様の1/4波長板−
前記第2の態様の1/4波長板は、2種以上の固有複屈折値が負の材料を積層した態様である。第2の態様においては、前記第1の態様の1/4波長板と同様に、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに直交させることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0057】
尚、前記第2の態様において、固有複屈折値が負の3種類以上の材料を各々積層させる場合、これらの各層における分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸を互いに直交させるには、これら固有複屈折値が負の材料のうち、Re(450)/Re(550)の値が近い材料を1種類の材料と見なすことにより、Re(450)/Re(550)の値によって概ね2種類の材料に分類し、これらの2種類の材料同士が、その分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸が互いに直交するように各層を材料毎に積層するのが好ましい。
【0058】
前記第2の態様においては、このように1/4波長板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第2の態様の1/4波長板においては、共に固有複屈折値が負の異なる値である2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な位相差特性が与えられる。
【0059】
<第2の態様における材料>
前記第2の態様における材料としては、前記固有複屈折値が負である材料(以下、単に「負の材料」と称することがある。)のほか、所望により含有可能なその他の成分等が挙げられる。前記「固有複屈折値が負である材料」とは、分子が一軸性の秩序をもって配向した際に、光学的に負の一軸性を示す特性を有する材料をいう。
例えば、前記負の材料が樹脂である場合、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より小さくなる樹脂をいう。
前記負の材料としては、樹脂、ディスコティック液晶、ディスコティック液晶ポリマー等種々のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの中でも樹脂が好ましい。
【0060】
前記樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリスチレン系ポリマー(スチレン及び/又はスチレン誘導体と他のモノマーとの共重合体)、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、セルロースエステル系ポリマー(前記固有複屈折値が正であるものもある)、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記ポリスチレン系ポリマーとしては、スチレン及び/又はスチレン誘導体と、アクリルニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート及びブタジエンから選ばれる少なくとも1種との共重合体が好ましい。本発明においては、これらの中でも、ポリスチレン、ポリスチレン系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー及びポリメチルメタクリレート系ポリマーの中から選択される少なくとも1種が好ましく、これらの中でも、複屈折発現性が高いという観点から、ポリスチレン及びポリスチレン系ポリマーがより好ましく、耐熱性が高い点で、スチレン及び/又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。
【0062】
<第2の態様における1/4波長板の構成等>
前記第2の態様における1/4波長板の構成としては、前述したように、固有複屈折値が負で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第2の態様においても、前記第1の態様と同様、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、前記第1の態様と同様である。
前記第2の態様における1/4波長板の厚み、各層の厚み、接着層の厚みとしては各々、前記第1の態様と同様である。
【0063】
<第2の態様における1/4波長板の製造方法等>
前記1/4波長板の製造方法のうち、第2の態様における1/4波長板の製造方法では、固有複屈折値が負で異なる2種以上の材料のうち材料Cを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムとし、前記2種以上の材料のうち材料Dを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムとする。
【0064】
尚、前記「材料C」及び「材料D」は、互いに固有複屈折値が異なる材料である。第2の態様における1/4波長板の製造方法において、固有複屈折値が負の3種類以上の材料を各々積層させる場合、固有複屈折値が負の材料のうちRe(450)/Re(550の値が近い材料によって2種類に分け、各々の材料を、「材料C」、「材料D」として延伸する。
【0065】
前記第2の態様における1/4波長板の製造方法において、延伸の方法や、積層等の好ましい態様は、第1の態様における1/4波長板の製造方法と総て同様である。また、前記固有複屈折値が負の材料としては、前述した通りであり、好ましい態様等も前述した通りである。
【0066】
前記第2の態様における1/4波長板の製造は、前記第1の態様における1/4波長板の製造方法と同様に、例えば、図4に概略的に示した延伸・貼り合わせ機20を用い、固有複屈折値が負の各材料を、各層における遅相軸が互いに直交するように縦延伸及び横延伸を行うことにより、効率的に行うことができる。
【0067】
第2の態様における1/4波長板の製造方法において、効率的に前記遅相軸を直交させて積層するには、各延伸フィルムの搬送方向を一致させると共に延伸方向を直交させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第2の態様の1/4波長板は、固有複屈折値が負の同符号である2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を直交させることにより、2層以上の積層体における遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型1/4波長板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に1/4波長板の製造が行われる。また、製造された1/4波長板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0068】
−第3の態様の1/4波長板−
前記第3の態様の1/4波長板は、2種以上の固有複屈折値が正及び負の材料を積層した態様である。第3の態様においては、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに平行にすることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0069】
前記第3の態様においては、延伸条件等を調整することによってこのように1/4波長板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第3の態様の1/4波長板においては、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散特性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な位相差特性が与えられる。
【0070】
<第3の態様における材料>
前記固有複屈折値が正である材料及び負である材料は前述した通りである。
【0071】
<第3の態様における1/4波長板の構成等>
前記第3の態様における1/4波長板の構成としては、前述したように、固有複屈折値が正及び負で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第3の態様においても、前記第1の態様と同様、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、前記第1の態様と同様である。
前記第3の態様における1/4波長板の厚み、各層の厚み、接着層の厚みとしては各々、前記第1の態様と同様である。
【0072】
<第3の態様における1/4波長板の製造方法等>
本発明における1/4波長板の製造方法のうち、第3の態様における1/4波長板の製造方法では、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、搬送しつつ、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸して縦延伸フィルム又は横延伸フィルムを得る。
前記延伸の方法、積層等の好ましい態様は、第1の態様における方法と総て同様である。また、前記固有複屈折値が正及び負の材料としては、前述した通りであり、好ましい材料等も前述した通りである。このように延伸フィルムを作製し、各遅相軸を直交させて積層させることにより、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)が平行になり、各層の遅相軸が互いに直交する。延伸機としては、2種以上の材料を、同方向に搬送・延伸可能な公知の延伸機が総て好適に用いられる。延伸の方法、積層の方法、及び、延伸温度等としては、前記第1の態様で述べたのと総て同様である。
【0073】
第3の態様における1/4波長板の製造方法において、効率的に前記遅相軸を直交させて積層するには、各延伸フィルムの搬送方向を一致させると共に延伸方向を一致させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第3の態様の1/4波長板は、固有複屈折値が正及び負の2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を平行にすることにより、2層以上の積層体における遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型1/4波長板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に1/4波長板の製造が行われる。また、製造された1/4波長板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0074】
−1/4波長板の諸物性等−
前記1/4波長板における光弾性としては、20ブルースター以下が好ましく、10ブルースター以下がより好ましく、5ブルースター以下が更に好ましい。これは、以下の理由による。
前記1/4波長板は、本発明のエレクトロルミネッセンスディスプレイに用いられる際に、貼り合わせにより積層されて形成されるのが好ましい。しかし、貼り合わせの際にかかる応力には偏りがあり、中央部と比較して端部においてより大きな応力がかかる。その結果、レターデーションに違いが生じ、端部は白っぽく光抜けし、表示素子においては表示特性を低下させる場合がある。1/4波長板の光弾性が前記数値範囲内にあると、貼合の際に応力の偏りがあっても、部分的にレターデーション(Re)に差が生じるのを抑制できる。
【0075】
前記1/4波長板としては、優れた1/4波長板特性を満たす観点から、波長450nm、550nm及び650nmにおいて、(レターデーション(Re)/λ(波長))の値が0.2〜0.3であるのが好ましく、0.23〜0.27であるのがより好ましく、0.24〜0.26が更に好ましい。
【0076】
−1/4波長板における材料の好ましい組合せ−
前記1/4波長板においては、可視光全域における波長分散特性の観点から、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていれば特に制限はないが、下記諸物性を具備するのが更に好ましい。
【0077】
前記1/4波長板においては、波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)値の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、各層が有する特性が好適に相殺された結果のレターデーションを得る観点から、積層された各層が、少なくとも、(Re(450)/Re(550))の値の差が、互いに0.03以上である2種の層の組合せを含むのがより好ましい。また、互いに0.05以上である2種の層の組合せを含むのが更に好ましい。
また、波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、特に好適な1/4波長板特性を得る観点から、積層された各層が、少なくとも(Re(450)/Re(550))の値が互いに異なる2種の層の組み合せを含み、該2種の層のうち、(Re(450)/Re(550))の値が小さい層におけるRe(550)の値が、(Re(450)/Re(550))の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きいのが好ましい。
以上のように組み合わされる層の、1/4波長板における位置としては、特に制限はなく、上下で互いに接して積層された層でもよく、互いに接していなくてもよい。
前記材料の好ましい組合せとしては、波長450nm、550nm、650nmにおけるレターデーション(Re)の値を、各々、Re(450)、Re(550)、Re(650)としたとき、これらがRe(450)<Re(550)<Re(650)を効果的に満たす観点から、固有複屈折値が正又は負の樹脂として、その固有屈折値の波長分散が小さい材料を選択し、且つ、他の固有複屈折値が正又は負の樹脂として、その固有複屈折値の波長分散が大きい材料を選択して組み合わせるのが特に好ましい。
【0078】
例えば、前記第1の態様において、前記固有複屈折値が正で、かつレターデーション(Re)が高い材料として、前記ノルボルネン系ポリマーを使用する場合、前記他の固有複屈折値が正の材料(レターデーション(Re)が小さい材料)としては、その固有複屈折値の波長分散が大きいものが好ましく、具体的には、波長450nm、波長550nmの固有複屈折値(Δn)を、各々、Δn(450)、Δn(550)としたとき、下記関係式を満たす樹脂から選ばれるのが好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)|≧1.02
さらに、下記関係式を満たす樹脂から選ばれるのがより好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)|≧1.05
尚、|Δn(450)/Δn(550)|の値は大きい程好ましいが、樹脂の場合、一般的には2.0以下である。
【0079】
より具体的に、前記(Re(450)/Re(550))の値が大きい材料としては、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー(例えば、ポリフェニレンサルファイドなど)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリアリルサルホン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、などが好ましく、特に、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、及びポリアリレート系ポリマーなどが好ましい。
また、前記(Re(450)/Re(550))の値が小さい材料としては、オレフィン系ポリマー及びシクロオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等)、セルロースエステル系ポリマー、などが好ましく、オレフィン系ポリマーの中でもノルボルネン系ポリマーとの組合せが特に好ましい。
【0080】
また前記1/4波長板においては、各層に用いる材料の質量比、延伸温度及び延伸倍率等を調整することで、前記Re(450)<Re(550)<Re(650)の特性を満たすことができる。
例えば、前記1/4波長板が前記第1の態様であって、固有複屈折値が正の材料(樹脂)として、ノルボルネン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、及び、ポリカーボネートを各々用いる場合には、短波長側が大きくレターデーション減少し、結果としてRe(450)<Re(550)<Re(650)の特性が得られる。延伸温度を前述の範囲内に制御することで、特に可視光波長全域にわたってRe(λ)/λを一定とし、広帯域にわたって均一な位相差特性を示す1/4波長板が得られる。
【0081】
以上のように、前記1/4波長板は、広帯域(可視光域)の光に対して均一な位相差特性を与えることができると共に、積層体であるにもかかわらず、簡易な工程によって効率的、かつ、低コストで製造可能である。また前記1/4波長板は、原材料を選択する際に材料の相溶性を考慮する必要がなく、更に、固有複屈折値が正同士、負同士、及び正及び負の組合せ、など、いずれの組合せでも製造可能であるため材料の選択の幅が広く好ましい。更に、コストが安い等の点でも有利である。
【0082】
−1/4波長板の実施形態等−
前記1/4波長板の実施形態の一例を図5に示す。
1/4波長板100は、前記第1の態様の1/4波長板であり、固有複屈折値が正の樹脂からなる層101と、該樹脂とは異なる正の固有複屈折値を有する樹脂からなる層102とが積層されている。
層101及び層102は、各々複屈折を有し、その遅相軸を互いに直交させて積層されている。即ち、層101に含有される、前記固有複屈折値が正の樹脂における分子鎖の配向方向と、層102に含有される、前記固有複屈折値が正の樹脂における分子鎖の配向方向とは直交している。1/4波長板100のレターデーションは、層101及び層102における各レターデーションの和となるので、層101と層102とを遅相軸を互いに直交させて積層することによって、1/4波長板100の短波長側のレターデーションを小さく、且つ長波長側のレターデーションを大きくすることができる。その結果、1/4波長板100の波長λにおけるレターデーションRe(λ)と波長との比Re(λ)/λを、可視光全域において略一定にすることができる。
【0083】
尚、前記実施形態においては、固有複屈折値が正の異なる2種の樹脂からなる層を、各々1層有する構成の1/4波長板の具体例を示したが、前記1/4波長板はこれに限定されることはなく、更に、3層、4層と、3層以上が積層された構成であってもよい。3層以上の多層が積層された構成とすることにより、1/4波長板の物理的特性がより改良され好ましい。
【0084】
以上説明した前記1/4波長板は、簡易な工程により効率的に、連続的に、低コストで製造可能であり、固有複屈折値の正負に関わらず原材料を選択可能であるため製造時の原材料の選択性が大きく、且つ、可視光全域の入射光に対して広帯域で均一な位相差特性を与える。
【0085】
[直線偏光膜]
本発明のELディスプレイにおいて、直線偏光膜は前記1/4波長板と組み合せられて、円偏光板として機能する。本発明において、直線偏光膜にはヨウ素系偏光膜、二色染料を用いる染料系偏光膜及びポリエン系偏光膜等が利用できる。前記ヨウ素系偏光膜及び前記染料系偏光膜は、一般的に、ポリビニルアルコール系フィルムに延伸処理等を施して製造することができる。偏光膜の偏光軸(透過軸)は、フィルムの延伸方向に相当する。
【0086】
前述した様に、1/4波長板と直線偏光膜との間に、反射偏光板を設けると、発光層が発光した光をより多く、外側に出射させることができる。前記反射偏光板は、併用する直線偏光膜の偏光軸方向と一致する直線偏光を透過し、偏光軸方向とは異なる方向の直線偏光を反射する機能を有する。具体的には、一方向において屈折率の異なる高分子薄膜を交互に積層した複屈折光偏光子(特表平8−503312号公報に記載)や、コレステリック構造を有する偏光分離膜(特開平11−44816号公報に記載)を好ましく用いることができる。また、直線偏光膜の表面に保護膜を形成してもよい。
【0087】
[発光層]
本発明のELディスプレイにおいて、前記発光層に含まれる発光材料は特に限定されず、発光材料は無機材料であっても、有機材料であってもよい。中でも、発光材料として有機材料を用いた有機ELディスプレイが好ましい。前記発光層は、発光材料を蒸着等することによって形成することができる。
尚、前記発光層に、電荷輸送材料を含有させて電荷輸送層としての機能を付加してもよいし、ホール輸送材料を含有させてホール輸送層としての機能を付加してもよい。また、発光層とは別に、電荷輸送層及び/又はホール輸送層を設けてもよい。
【0088】
[透明電極]
本発明のELディスプレイにおいて、前記透明電極としては、一般的にはITO電極が利用される。前記透明電極は、パターニングされていてもよい。前記透明電極は、スパッタリング等により形成することができ、パターニングにはエッチングを利用することができる。
【0089】
[光反射電極]
本発明のELディスプレイにおいて、前記光反射電極としては、光反射率の高い金属材料を用いて形成するのが好ましい。前記金属材料としては、Mg、MgAg、MgIn、Al、LiAl等が挙げられる。前記光反射電極の表面が平坦である程、光の乱反射が防止できるので好ましい。また、前記光反射電極は、パターニングされていてもよい。前記光反射電極は、スパッタリング等により形成することができ、前記パターニングにはエッチング等を利用することができる。
【0090】
[その他の部材]
その他、本発明のELディスプレイには、所望により、前記透明電極と前記円偏光板との間に透明基板を設けることができる。前記透明基板としては、ガラス基板及び光透過性プラスチックフィルムが利用できる。
【0091】
[本発明のELディスプレイの好ましい実施態様]
本発明のELディスプレイは、前記透明電極及び前記反射電極に通電部を設け、通電することにより、発光層を発光させ、画像として表示させることができる。また、本発明のELディスプレイは、R(レッド)発光層、G(グリーン)発光層及びB(ブルー)発光層を、フォトマスク等を用いて各々パターニング形成し、パターニング形成された各発光層を個々に通電可能に構成することにより、フルカラー画像用の表示素子とすることができる。
【0092】
本発明のELディスプレイには、その他、WO96/34514号公報、特開平9−127885号公報及び同11−45058号公報に記載の有機ELディスプレイの構成を適用できる。その場合は、前記有機ELディスプレイが備える前記反射防止手段に代えて、又は併用して前記円偏光板を組込んだ構成とすることができる。また、本発明のELディスプレイとしては、例えば、「エレクトロルミネッセンスディスプレイ」(猪口敏夫著、産業図書株式会社、1991年発行)に記載のある無機ELディスプレイに前記円偏光板を組込んだ構成にすることもできる。
【0093】
以上説明した本発明のELディスプレイは、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能である広帯域の1/4波長板を用い、背景の映り込みが抑制され、高性能で、低コストで製造可能であり、量産性に優れる。
【0094】
【実施例】
(実施例1)
−1/4波長板の作製−
図4に示した延伸・貼り合わせ機20を用いて以下のようにして1/4波長板を作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を延伸倍率1.1倍、延伸温度135℃で横延伸(テンター延伸)し、厚み92μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550)で表す。)は341.6であった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で縦延伸しレターデーション(Re(550))が477.1nm、厚みが60μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み155μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=122.8nm、Re(550)=145.7nm、Re(650)=160.1nmであり、広帯域1/4波長板としての特性を有した積層フィルムが得られた。Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0095】
−円偏光板の作製−
直線偏光膜及び保護膜からなる偏光板と、前記1/4波長板とを、偏光板の吸収軸と1/4波長板の延伸軸とを45°交差させて積層し、円偏光板を作製した。
【0096】
−ELディスプレイの作製−
厚さ1.1mmの透明のガラス基板上に、ITOからなる透明電極をスパッタリング法により作製した。形成した透明電極をエッチング処理し、ストライプ状にパターニングした。このパターニングされた透明電極上に、トリフェニルアミン誘導体からなる厚さ30nmの正孔注入層を形成した。前記正孔注入層上に、真空マスク蒸着法によりアルミキレート錯体を蒸着させ、有機発光層を形成した。前記有機発光層上に、Mg−Ag合金(質量比:Mg/Ag=95/5)を100nmの厚さに多元蒸着して、光反射性電極を形成した。次に、前記ガラス基板の反対側の面に、作製した前記円偏光板(1/4波長板側)を、接着剤を介して貼り合わせ、有機ELディスプレイを作製した。作製した有機ELディスプレイに通電して画像を表示させた。表示された画像を正面やや斜め方向から観察したが、背景の映り込みは全く認められず、コントラストの高い画像を確認できた。
【0097】
(実施例2)
−1/4波長板の作製−
図4に示した延伸・貼り合わせ機20を用いて以下のようにして1/4波長板を作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を延伸倍率1.1倍、延伸温度140℃で縦延伸し、厚み92μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550)で表す。)は316.4nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み142μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=121.1nm、Re(550)=147.0nm、Re(650)=160.3nmであり、広帯域1/4波長板としての特性を有した積層フィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0098】
−円偏光板の作製・ELディスプレイの作製−
得られた1/4波長板を用い、実施例1と同様にして円偏光板を作製し、有機ELディスプレイを作製した。該有機ELディスプレイに通電して画像を表示させた。表示された画像を正面やや斜め方向から観察したが、背景の映り込みは全く認められず、コントラストの高い画像を確認できた。
【0099】
(実施例3)
−1/4波長板の作製−
図4に示した延伸・貼り合わせ機20を用いて以下のようにして1/4波長板を作製した。
先ず、ポリエチレンテレフタレートを290℃にてTダイにより溶融押し出しし、30℃のキャスティングドラム上にて冷却固化し、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:45μm)を作製した。該未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、延伸倍率1.15倍、延伸温度90℃で縦延伸し、厚み40μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550))は303.9nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み90μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=124.4nm、Re(550)=154.1nm、Re(650)=165.1nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0100】
−円偏光板の作製・ELディスプレイの作製−
得られた1/4波長板を用い、実施例1と同様にして円偏光板を作製し、有機ELディスプレイを作製した。該有機ELディスプレイに通電して画像を表示させた。表示された画像を正面やや斜め方向から観察したが、背景の映り込みは全く認められず、コントラストの高い画像を確認できた。
【0101】
(実施例4)
−1/4波長板の作製−
図4に示した延伸・貼り合わせ機20を用いて以下のようにして1/4波長板を作製した。
先ず、ポリエチレンテレフタレートを290℃にてTダイにより溶融押し出しし、30℃のキャスティングドラム上にて冷却固化し、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:400μm)を作製した。該未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、延伸温度90℃で、縦延伸(延伸倍率:3.3倍)し、続いて延伸温度120℃で横延伸(テンター延伸、延伸倍率:3.3倍)し、厚み40μmの二軸延伸延伸フィルムを得た。この二軸延伸フィルムは、主に縦方向に配向が進んでおり、波長550nmにおけるレターデーション(Re(550))は309.2nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
【0102】
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み90μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=120.3nm、Re(550)=148.3nm、Re(650)=162.8nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
二軸に延伸して積層させても、縦又は横方向のいずれか一方に主に配向が進んでいる場合には、縦又は横の一軸に延伸した場合と同様の優れた特性が得られることが解った。
【0103】
−円偏光板の作製・ELディスプレイの作製−
得られた1/4波長板を用い、実施例1と同様にして円偏光板を作製し、有機ELディスプレイを作製した。該有機ELディスプレイに通電して画像を表示させた。表示された画像を正面やや斜め方向から観察したが、背景の映り込みは全く認められず、コントラストの高い画像を確認できた。
【0104】
(実施例5)
−1/4波長板の作製−
図4に示した延伸・貼り合わせ機20を用いて以下のようにして1/4波長板を作製した。
先ず、未延伸ポリスチレン(厚み:100μm)を延伸倍率2.1倍、延伸温度105℃で縦延伸し、厚み62μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション(Re(550))は453.2nmであった。
同時に、ポリメチレンアクリレートフィルム(厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.4倍、延伸温度110℃で横延伸(テンター延伸)し、厚み58μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション(Re(550))は602.8nmであった。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み123μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=121.3nm、Re(550)=149.8nm、Re(650)=169.7nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)及びRe(650)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0105】
−円偏光板の作製・ELディスプレイの作製−
得られた1/4波長板を用い、実施例1と同様にして円偏光板を作製し、有機ELディスプレイを作製した。該有機ELディスプレイに通電して画像を表示させた。表示された画像を正面やや斜め方向から観察したが、背景の映り込みは全く認められず、コントラストの高い画像を確認できた。
【0106】
【表1】
【0107】
【発明の効果】
本発明によれば、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能である広帯域の1/4波長板を用い、背景の映り込みが抑制され、高性能で、低コストで製造可能であり、量産性に優れたエレクトロルミネッセンスディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のELディスプレイの基本的構成を説明するための断面模式図である。
【図2】図2は、本発明のELディスプレイにおける反射防止機能及び表示機能を説明するための図である。
【図3】図3は、ドライラミネート法を具体的に説明するための図である。
【図4】図4は、本発明のELディスプレイに用いる1/4波長板の製造方法を概略的に説明するための図である。
【図5】図5は、本発明のELディスプレイに用いる1/4波長板の一実施形態を表す概略断面図である。
【符号の説明】
21・・・・・・・・・・縦延伸部
21a,21b・・・・・縦延伸低速ローラ
21c,21d・・・・・縦延伸高速ローラ
22・・・・・・・・・・貼り合わせ部
22a,22b・・・・・貼り合わせ・ニップローラ
22c,22d・・・・・接着剤塗布ローラ
23・・・・・・・・・・横延伸部
23a・・・・・・・・・搬送方向調整ローラ
23b・・・・・・・・・横延伸機
100・・・・・・・・・1/4波長板
101・・・・・・・・・固有複屈折値が正の樹脂からなる層
102・・・・・・・・・固有複屈折値が正の樹脂からなる層
200・・・・・・・・・ラミネート機
201・・・・・・・・・加熱乾燥機
202・・・・・・・・・接着剤収容器
203・・・・・・・・・第一フィルム供給ローラ
204・・・・・・・・・第二フィルム供給ローラ
205・・・・・・・・・巻き取りローラ
206a,206b・・・接着剤塗布ローラ
207a,207b・・・搬送ローラ
208a・・・・・・・・第一の延伸フィルム
208b・・・・・・・・第二の延伸フィルム
209・・・・・・・・・ドクターブレード
210a・・・・・・・・貼り合わせ・ニップローラ
210b・・・・・・・・貼り合わせ・ニップローラ
Claims (19)
- 光反射電極と、発光層と、透明電極と、1/4波長板及び直線偏光膜を有する円偏光板とがこの順に配置されたエレクトロルミネッセンスディスプレイであって、
前記1/4波長板が、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たすことを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイ。 - 2種以上の材料における固有複屈折値が正であり、各層における遅相軸が互いに直交した請求項1に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 2種以上の材料における固有複屈折値が負であり、各層における遅相軸が互いに直交した請求項1に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 2種以上の材料における固有複屈折値が正及び負であり、各層における遅相軸が互いに直交した請求項1に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 各層における分子鎖の配向軸が互いに直交した請求項1から3のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 各層における分子鎖の配向軸が互いに平行である請求項1又は4のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 1/4波長板が、更に接着層を有する請求項1から6のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 材料が樹脂である請求項1から7のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 材料のうちの少なくとも1種が、ノルボルネン系ポリマーである請求項1から8のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 材料のうちの少なくとも1種が、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、ポリアリーレン系ポリマー、及び、ポリカーボネート系ポリマーの少なくともいずれかである請求項1から9のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、1/4波長板における各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値の差が互いに0.03以上である2種の層を含む請求項1から10のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、1/4波長板における各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値が互いに異なる2種の層を含み、該2種の層のうち、Re(450)/Re(550)の値が小さい層におけるRe(550)の値が、Re(450)/Re(550)の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きい請求項1から11のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 1/4波長板の光弾性が20ブルースター以下である請求項9に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 1/4波長板において、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーションRe(λ)と波長λとが、各々下記関係式を満たす請求項1から13のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
0.2≦Re(λ)/λ≦0.3 - 1/4波長板が、少なくとも、固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料のうち材料Aを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムとし、前記2種以上の材料のうち材料Bを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムとし得られた請求項1又は2に記載のエレクロトルミネッセンスディスプレイ。
- 1/4波長板が、少なくとも、固有複屈折値が負で異なる2種以上の材料のうち材料Cを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムとし、前記2種以上の材料のうち材料Dを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムとし得られた請求項1又は3に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 1/4波長板が、少なくとも、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、搬送しつつ、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸し縦延伸フィルム又は横延伸フィルムとし得られた請求項1又は4に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 1/4波長板が、延伸フィルムを共に同方向に搬送し得られた請求項15から17のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
- 1/4波長板が、延伸フィルムの遅相軸を互いに直交させて貼り合わされた請求項15から18のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
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