JP2004163680A - 偏光変換素子及び液晶プロジェクター用投光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】直線偏光の振動方向を90°回転させる新規な1/2波長板を使用した広帯域において高性能な偏光変換素子、及び該偏光変換素子を備えた液晶プロジェクター用投光装置の提供。
【解決手段】入射した光を互いに直交する2つの直線偏光に分離する偏光分離部材と、分離した2の直線偏光のうち1の直線偏光の偏光方向を1/2波長板によって90°変換して2の直線偏光の偏光方向を一致させる偏光変換部材とを備えた偏光変換素子であって、前記1/2波長板が、固有複屈折値が正の樹脂からなるフィルムと固有複屈折値が負の樹脂からなるフィルムとの積層体である偏光変換素子及び該偏光変換素子を備えた液晶プロジェクター用投光装置である。
【選択図】 なし
【解決手段】入射した光を互いに直交する2つの直線偏光に分離する偏光分離部材と、分離した2の直線偏光のうち1の直線偏光の偏光方向を1/2波長板によって90°変換して2の直線偏光の偏光方向を一致させる偏光変換部材とを備えた偏光変換素子であって、前記1/2波長板が、固有複屈折値が正の樹脂からなるフィルムと固有複屈折値が負の樹脂からなるフィルムとの積層体である偏光変換素子及び該偏光変換素子を備えた液晶プロジェクター用投光装置である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直線偏光の振動方向を90°回転させる新規な1/2波長板を使用した偏光変換素子、及び該偏光変換素子を備えた液晶プロジェクター用投光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光源からの光(特に自然光)を単一の直線偏光(P偏光又はS偏光)に変換する偏光変換素子は、投射型表示装置等において種々利用されている。偏光変換素子は、光に含まれる直線偏光(P偏光とS偏光)のいずれかの偏光面を90°回転させることにより、双方の直線偏光の偏光面を一致させ、P偏光とS偏光の両成分を利用することにより、光の利用効率を上げるものである。
【0003】
前記偏光変換素子は、通常、プリズムアレイからなる偏光ビームスプリッタと、直線偏光の偏光面を90°変換する1/2波長板を積層して構成される。該偏光変換素子に、マイクロレンズアレイにより絞り込んだ入射光を入射すると、偏光ビームスプリッタのプリズムアレイでプリズムを透過するP偏光成分と、反射されるS偏光成分とに分離され、その後、P偏光のみが1/2波長板を通過して偏光面が90゜回転し、全体の偏光光の振動方向は一致した状態で出射する(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ところで、偏光変換素子を液晶プロジェクター等の投射型表示装置に利用する場合、偏光変換素子は、人間の目で認識できる可視光領域のいずれの波長においても、直線偏光の偏光面を略90°回転可能であることが要求される。従来、この様な広帯域の偏光変換素子には、複数枚(通常、3枚)の高分子延伸フィルムを、遅層軸を交差させて積層し、貼合した1/2波長板が用いられてきた。該1/2波長板は、ビームスプリッタのプリズムアレイの構造に従って、小さなチップに切断され、プリズムに貼り付けられる。遅層軸を交差させた延伸フィルム3枚の貼合品を得るためには、3回の粘着塗工と3回のチップカット及び2回の貼合が必要とされ、また工程数が多いことによるコストアップを招き、また、チップカット時の遅層軸方向のずれ、加工屑による汚染や、貼合時の光弾性による延伸フィルムの位相差のずれ、などが性能上にも悪影響を及ぼしていた。また、貼合後にはプリズムの構造に合わせた微小チップを形成し、それをプリズム上に貼り合わせるという煩雑な工程が必要となっていた。
【0005】
【非特許文献1】
「液晶」 第2巻 第2号 1998年、p.37〜38
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ、低コストで製造可能である広帯域の1/2波長板を用い、低コストで効率的に製造可能で、広帯域において高性能な偏光変換素子、及び該偏光変換素子を備え、低コストで効率的に製造可能で、広帯域において高性能な液晶プロジェクター用投光装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 入射した光を互いに直交する2方向の直線偏光に分離する偏光分離部材と、
1/2波長板を含み、分離された前記2方向の直線偏光のうち、1方向の直線偏光における偏光方向を該1/2波長板によって90°変換することにより、分離された直線偏光における偏光方向を一致させる偏光変換部材と、を備えた偏光変換素子であって、
前記1/2波長板が、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たすことを特徴とする偏光変換素子である。
<2> 2種以上の材料における固有複屈折値が正であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載の偏光変換素子である。
<3> 2種以上の材料における固有複屈折値が負であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載の偏光変換素子である。
<4> 2種以上の材料における固有複屈折値が正及び負であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載の偏光変換素子である。
<5> 各層における分子鎖の配向軸が互いに直交した前記<1>から<3>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<6> 各層における分子鎖の配向軸が互いに平行である前記<1>又は<4>に記載の偏光変換素子である。
<7> 1/2波長板が、更に接着層を有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<8> 材料が樹脂である前記<1>から<7>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<9> 材料のうちの少なくとも1種が、ノルボルネン系ポリマーである前記<1>から<8>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<10> 材料のうちの少なくとも1種が、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、及び、ポリアリーレン系ポリマーの少なくともいずれかである前記<1>から<9>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<11> 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、1/2波長板における各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値の差が互いに0.03以上である2種の層を含む前記<1>から<10>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<12> 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、1/2波長板における各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値が互いに異なる2種の層を含み、該2種の層のうち、Re(450)/Re(550)の値が小さい層におけるRe(550)の値が、Re(450)/Re(550)の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きい前記<1>から<11>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<13> 1/2波長板の光弾性が20ブルースター以下である前記<9>に記載の偏光変換素子である。
<14> 1/2波長板において、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーションRe(λ)と波長λとが、各々下記関係式を満たす前記<1>から<13>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
0.4≦Re(λ)/λ≦0.6
<15> 1/2波長板が、固有複屈折値が正の2種以上の材料を、延伸機を用いて同方向に搬送しつつ、少なくとも1種の材料を搬送方向と同方向に、少なくとも他の1種の材料を搬送方向と直交する方向に延伸し、貼り合わせて得られた前記<1>又は<2>に記載の偏光変換素子である。
<16> 1/2波長板が、固有複屈折値が負の2種以上の材料を、延伸機を用いて同方向に搬送しつつ、少なくとも1種の材料を搬送方向と同方向に、少なくとも他の1種の材料を搬送方向と直交する方向に延伸し、貼り合わせて得られた前記<1>又は<3>に記載の偏光変換素子である。
<17> 1/2波長板が、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、延伸機を用いて同方向に搬送しつつ、少なくとも、正の固有複屈折値を有する材料及び負の固有複屈折値を有する材料を、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸し、貼り合わせて得られた前記<1>又は<4>に記載の偏光変換素子である。
<18> 前記<1>から<17>のいずれかに記載の偏光変換素子と、該偏光変換素子に光を入射する照射手段と、を少なくとも備えたことを特徴とする液晶プロジェクター用投光装置である。
【0008】
前記<1>から<17>のいずれかに記載の偏光変換素子においては、先ず、入射した光が、偏光分離部材によって、互いに直交する2方向の直線偏光に分離される。即ち、光(特に自然光)に含まれる2方向の直線偏光のうち、一方向の直線偏光(例えば、P偏光)を透過させ、他方向の直線偏光(例えば、S偏光)を反射させることにより、直線偏光の進路が分離される。分離された2方向の直線偏光のうち、1方向の直線偏光(例えば、S偏光)における偏光方向を、偏光変換部材に含まれる1/2波長板によって90°変換することにより、他方の直線偏光(例えば、P偏光)における偏光方向と一致させ、分離された直線偏光における偏光方向を一致させることができる。これにより、双方の直線偏光を有効に利用することができる。
また、前記<1>に記載の偏光変換素子における1/2波長板は、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能な広帯域の1/2波長板である。従って、低コストで効率的に製造され、広帯域における性能特性が高い。
【0009】
前記<18>に記載の液晶プロジェクター用投光装置においては、前記<1>から<17>のいずれかに記載の偏光変換素子と、該偏光変換素子に光を入射する照射手段と、を少なくとも備える。該照射手段によって、前記偏光変換素子に光が入射されると、偏光分離部材によって、光が互いに直交する2方向の直線偏光に分離される。即ち、光(特に自然光)に含まれる2方向の直線偏光のうち、一方向の直線偏光(例えば、P偏光)を透過させ、他方向の直線偏光(例えば、S偏光)を反射させることにより、直線偏光の進路が分離される。分離された2方向の直線偏光のうち、1方向の直線偏光(例えば、S偏光)における偏光方向を、偏光変換部材に含まれる1/2波長板によって90°変換することにより、他方の直線偏光(例えば、P偏光)における偏光方向と一致させ、分離された直線偏光における偏光方向を一致させて直線偏光を出射する。出射した直線偏光は、その後、例えば、液晶用プロジェクターの画像形成素子に入射し、合成されて投影画像が形成される。このとき、光に含まれる2方向の直線偏光が有効に利用されるため、投影画像は明るい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について更に詳しく説明する。
(偏光変換素子)
本発明の偏光変換素子は、偏光分離部材と、偏光変換部材とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0011】
[偏光分離部材]
前記偏光分離部材としては、入射した光(特に自然光)を、互いに直交する2方向の直線偏光に分離する機能を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、偏光ビームスプリッタ等の公知のもの等が好適に挙げられる。
【0012】
[偏光変換部材]
前記偏光変換部材は、所定の1/2波長板を含み、更に必要に応じてその他の部材等を有する。該偏光変換部材は、前記偏光分離部材によって分離された前記2方向の直線偏光のうち、1方向の直線偏光における偏光方向を1/2波長板によって90°変換することにより、分離された直線偏光における偏光方向を一致させる機能を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知のものを好適に使用することができる。
【0013】
−1/2波長板−
前記1/2波長板は、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たす。また、該1/2波長板において、入射光は、前記固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層した層によって位相差特性が与えられる。
【0014】
前記1/2波長板においては、固有複屈折値が正同士の2種以上の材料を積層した第1の態様、固有複屈折値が負同士の2種以上の材料を積層した第2の態様、及び、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を積層した第3の態様、の3種類の態様が含まれる。
【0015】
−−第1の態様の1/2波長板−−
前記第1の態様の1/2波長板は、2種以上の固有複屈折値が正の材料を積層した態様である。第1の態様においては、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに直交させることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0016】
なお、前記第1の態様において、固有複屈折値が正の3種類以上の材料を各々積層させる場合、これらの各層における分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸を互いに直交させるには、これら固有複屈折値が正の材料のうち、Re(λ)/λの値が近い材料を1種類の材料と見なすことにより、Re(λ)/λの値によって概ね2種類の材料に分類し、これらの2種類の材料同士が、その分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸が互いに直交するように各層を材料毎に積層するのが好ましい。
【0017】
前記第1の態様においては、このように1/2波長板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第1の態様の1/2波長板においては、共に固有複屈折値が正の異なる値である2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な1/2波長板特性が与えられる。
【0018】
<第1の態様における材料>
前記第1の態様における材料としては、前記固有複屈折値が正である材料(以下、単に「正の材料」と称することがある。)のほか、所望により含有可能なその他の成分等が挙げられる。前記、「固有複屈折値が正である材料」とは、分子が一軸性の秩序をもって配向した際に、光学的に正の一軸性を示す特性を有する材料をいう。
例えば、前記正の材料が樹脂である場合、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より大きくなる樹脂をいう。
前記正の材料としては、樹脂、棒状液晶、棒状液晶ポリマー等種々のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの中でも樹脂が好ましい。
【0019】
前記樹脂としては、例えば、オレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマーなど)、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー(例えば、ポリフェニレンサルファイドなど)、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、セルロースエステル系ポリマー(前記固有複屈折値が負であるものもある)、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリアリルサルホン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明においては、これらの中でも、(Re(450)/Re(550))の値が低い方の層に用いる材料としては、オレフィン系ポリマーが好ましく、オレフィン系ポリマーの中でも、光透過率特性、耐熱性、寸度安定性、光弾性特性等の観点から、ノルボルネン系ポリマーが特に好ましい。前記オレフィン系ポリマーとしては、日本合成ゴム社製の「アートソー」、日本ゼオン社製の「ゼオネックス」及び「ゼオノア」、三井石油化学製の「APO」等が好適に利用される。
【0021】
前記ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有してなり、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好適に利用できるが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0023】
【化1】
【0024】
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0025】
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)又は(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
【0026】
【化2】
【0027】
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0028】
前記ノルボルネン系ポリマーの質量平均分子量としては、5,000〜1,000,000程度であり、8,000〜200,000が好ましい。
【0029】
前記第1の態様における材料として、含有可能なその他の成分としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記材料(固有複屈折値が正の材料又は負の材料)が樹脂である場合のガラス転移点としては、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
【0030】
<第1の態様における1/2波長板の構成等>
前記第1の態様における1/2波長板は、前述したように、固有複屈折値が正で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第1の態様においては、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、使用しても、発現されるレターデーションの波長分散性に影響を与えないのが好ましく、特に、可視光全域の入射光に対して、影響を与えない材料が好ましい。
【0031】
前記接着層の材料としては、各層における材料と親和性がある材料が好適に使用される。具体的には、前記固有複屈折値が正の樹脂としてノルボルネン系ポリマーを使用した場合、接着層の材料としては、オレフィン系ポリマー及びポリスチレン(又はスチレン系ポリマー)のいずれかを用いるのが好ましい。接着層の材料としては、延伸温度より低温の溶融軟化温度を有する樹脂が好ましい。具体的には、それらのガラス転移点が、前記各層における材料のガラス転移点と比較し、5℃以上低いのが好ましく、10℃以上低いのがより好ましく、20℃以上低いのが更に好ましい。但し、これらに何ら限定されるものではない。
【0032】
前記第1の態様における1/2波長板の厚みとしては、30〜300μmが好ましく、50〜250μmがより好ましい。前記各層の厚みとしては、10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましい。前記接着層の厚みとしては、該接着層の複屈折と厚みとの積が小さくなる程好ましく、具体的には、0.2〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。
【0033】
<第1の態様における1/2波長板の製造方法等>
前記1/2波長板の製造方法のうち、第1の態様における1/2波長板の製造方法では、固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料を、延伸機を用いて、同方向に搬送しつつ延伸し、貼り合わせる。第1の態様における1/2波長板の製造方法においては、少なくとも1種の材料を搬送方向と同方向に延伸し、少なくとも他の1種の材料を搬送方向と直交する方向に延伸する。
【0034】
前記延伸の方法としては、一軸延伸でもよく、厚み方向を制御する目的から、二軸延伸を行ってもよい。
なお、二軸延伸を行う場合には、得られる1/2波長板において、縦及び横のいずれかの方向に主に分子鎖を配向させ、各層における配向軸同士が互いに直交するように延伸することが必要である。
前記貼り合わせの方法としては、特に制限はないが、接着剤を塗布して貼り合わせる方法、接着フィルムを各層間に挟んで貼り合わせる方法、接着剤を利用してドライラミネート法により貼り合わせる方法、などが挙げられる。
【0035】
前記接着剤、接着フィルムの材料としては、前述した接着層の材料と同様である。接着剤の塗布量としては、固形分の質量で1〜10g/cm2程度が好ましい。また、接着フィルムの厚みとしては、0.5〜10μm程度が好ましい。
【0036】
前記ドライラミネート法は、一般的に、接着剤を溶剤に溶解させた接着剤溶液を、一方の接着対象物に均一に塗布し、乾燥させた後、他方の接着対象物に加圧条件で圧着して行われる。該ドライラミネート法においては、接着剤が貼り合わせ用のローラ等に付着しないよう、接着対象物の両側に接着剤を塗布しない部分を残して貼合せたり、ローラ間の押圧の解除が自動的に行われるのが好ましい。前記溶剤としては、トルオール酢酸エチレン、酢酸エチル等の芳香族系の溶剤が好ましい。前記接着剤溶液における固形分濃度としては、20〜40質量%程度が好ましい。前記加圧の圧力としては、1〜50kg/cm2程度が好ましい。また、該ドライラミネート法によって3種以上の材料を積層して3層以上の積層体からなる1/2波長板を作製する場合には、2種の層を貼り合わせて積層させた段階で、積層体の巻き取り工程を設けずに3層目の貼り合わせ工程に移す等の方法によって作業の効率化を図るのが好ましい。
【0037】
ここで、前記ドライラミネート法の一例を、図1を用いて具体的に説明する。図1に示すドライラミネート機200は、第一の延伸フィルム供給手段と、第二の延伸フィルム供給手段と、接着剤塗布手段と、搬送手段と、加熱乾燥手段と、貼り合わせ手段と、巻き取り手段とを有する。
【0038】
前記第一の延伸フィルム供給手段は、第一の延伸フィルム208aを供給する第一フィルム送り出し機203を有する。
前記第二の延伸フィルム供給手段は、第二の延伸フィルム208bを供給する第二フィルム送り出し機204を有する。
前記接着剤塗布手段は、接着剤を収容する接着剤収容器202と、接着剤塗布ローラ206a,206bと、ドクターブレード209とを有する。該接着剤塗布手段において、接着剤塗布ローラ206aは、その表面が、前記接着剤及び第一の延伸フィルム208aと当接するように配され、接着剤塗布ローラ206bは、その表面が、第一の延伸フィルム208aと当接するように配されている。該接着剤塗布手段においては、接着剤塗布ローラ206a表面に付着した接着剤が、ローラの矢印方向への回転に伴い、ドクターブレード209によって適宜掻き落とされて均一な厚みに調整され、第一の延伸フィルム208aに均一に塗布される。
前記搬送手段は、回転により第一の延伸フィルム208aを搬送可能な搬送ローラ207a、搬送ローラ207bを有する。
前記加熱乾燥手段は、第一の延伸フィルム208aに塗布された接着剤を乾燥可能な加熱乾燥器201を有する。
前記貼り合わせ手段は、第一の延伸フィルム208a及び第二の延伸フィルム208bを貼り合わせ可能な貼り合わせ・ニップローラ210a,210bを有する。
【0039】
前記ドライラミネート機200においては、先ず、矢印方向に回転する第一フィルム送り出し機203から、第一の延伸フィルム208aが供給され矢印方向に搬送される。接着剤塗布ローラ206a,206bまで搬送された第一の延伸フィルム208aは、接着剤塗布ローラ206a,206b間を、ロールに当接しつつ搬送される際に、接着剤塗布ローラ206a表面に付着した接着剤が均一に塗布される。その後、更に矢印方向に搬送されて搬送ローラ207a上を通って加熱乾燥器201まで搬送される。加熱乾燥器201まで搬送された第一の延伸フィルム208aにおいては、表面に均一に塗布された接着剤が加熱により乾燥される。更に、第一の延伸フィルム208aは矢印方向に搬送され、搬送ローラ207b上を通って、貼り合わせ・ニップローラ210a,210bまで搬送される。一方、矢印方向に回転する第二フィルム送り出し機204からは、第二の延伸フィルム208bが供給され、矢印方向に、貼り合わせ・ニップローラ210a,210bまで搬送される。貼り合わせ・ニップローラ210a,210bにおいては、ニップ部での加圧により、第一の延伸フィルム208a及び第二の延伸フィルム208bが貼り合わせられ、これらが積層された1/2波長板が製造される。製造された1/2波長板は、巻き取り機205まで搬送され、巻き取られる。
【0040】
前記固有複屈折値が正の材料としては、前述した通りであり、好ましい材料等も前述した通りである。
【0041】
次に、前記第1の態様における1/2波長板の製造方法の一実施態様について、図2を用いて概略的に説明する。
図2に示す延伸・貼り合わせ機10は、縦延伸部1と、貼り合わせ部2と、横延伸部3とを備えている。
前記縦延伸部1は、縦延伸低速ローラ1a,1bと、縦延伸高速ローラ1c,1dとからなる。
前記貼り合わせ部2は、貼り合わせ・ニップローラ2a,2b及び接着剤塗布ローラ2c,2dからなる。
前記横延伸部3は、搬送方向調整ローラ3a及び横延伸機3bからなる。
前記延伸・貼り合わせ機10において、縦延伸低速ローラ1a,1b、縦延伸高速ローラ1c,1d、貼合わせ・ニップローラ2a,2b、接着剤塗布ローラ2c,2d、及び、搬送方向調整ローラ3aは、各々不図示の駆動部により回転可能である。縦延伸低速ローラ1a,1b、縦延伸高速ローラ1c,1dは、上流から下流に向かってこの順に配されている。縦延伸低速ローラ1a,1b、縦延伸高速ローラ1c,1dの周辺及びその内部には、各々不図示の加熱手段が設置され、延伸対象物の延伸温度を適宜制御可能である。
【0042】
前記延伸・貼り合わせ機10においては、まず、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aと、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bとが、図2の矢印方向(搬送方向)に搬送されてくる。ここで、縦延伸高速ローラ1c及び縦延伸高速ローラ1dは、縦延伸低速ローラ1a及び縦延伸低速ローラ1bより高速で回転するように設定されており、また、縦延伸低速ローラ1a及び縦延伸高速1cは、縦延伸低速ローラ1b及び縦延伸高速ローラ1dと逆方向(図に示す矢印方向)に回転するように設定されている。
【0043】
前記延伸・貼り合わせ機10における縦延伸部1に搬送されてきた、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aは、各縦延伸低速ローラ1a,1b、縦延伸高速ローラ1c,1dに順次当接し、図示した搬送方向に搬送されつつ、縦延伸低速ローラ1a,1bと、縦延伸高速ローラ1c,1dとの回転速度差により張力を付与され、この回転速度差によって搬送方向(フィルムの長手方向)に延伸される。またこのとき、前記加熱手段により、材料Aの延伸時に温度制御が可能であるため、材料Aは、材質、延伸速度(ローラの速度差)等に応じて好適な延伸条件に容易に調整される。延伸後、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aは、図示した方向に回転する貼合せ・ニップローラ2a,2bにおいて、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bと貼り合わせられ、更に図示した搬送方向に搬送されていく。
【0044】
一方、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bは、搬送方向調整ローラ3a下を通って、図示した搬送方向に搬送されつつ、横延伸部3における横延伸機(テンター延伸機)3bにより横延伸(テンター延伸等)され、貼り合わせ部2における接着剤塗布ローラ2c,2dにより接着剤が塗布された後、貼り合わせ・ニップローラ2a,2bにおいて、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bと接着剤を介して貼り合わせられ、更に図示した搬送方向に搬送されていく。
延伸・貼り合わせ機10において、延伸倍率や延伸温度等を、各ロールの回転速度、加熱手段等によって適宜調整することにより、目的のレターデーションを有する第1の態様における1/2波長板を効率的に製造することができる。
【0045】
前記加熱手段としては、延伸対象物を適切な温度に加温することができれば特に制限はなく、公知の加熱手段を総て好適に用いることができるが、例えば、熱風、加熱ロール等のほか、近赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ等の赤外線ヒータ、などの各種熱源が挙げられる。これらの加熱手段としては、加熱のみならず、温度を制御可能な装置を備えているのが好ましい。これらの加熱手段は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
縦延伸部1におけるローラ数としては、特に制限はなく、延伸対象物の材質、延伸速度等により適宜選択可能である。
【0047】
また、図2に示す実施態様においては、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aの延伸、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bの延伸、及び、貼り合わせを連続的に行っているが、本発明においては、これに何ら限定されることはなく、例えば、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aの延伸と、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bの延伸とを、別途独立して行ってもよい。また各フィルムの延伸と貼り合わせとを別途独立して行ってもよい。これらの場合には、延伸した各フィルムを一時的に巻き取っておく等によって、省スペースの点で有利となる。
【0048】
また、前述の実施形態において、接着方法としてドライラミネート法を採用する場合には、接着剤塗布ローラ2c,2d及び貼り合わせ・ニップローラ2a,2bの間に、接着剤を乾燥させる乾燥手段を設けるのが好ましい。該乾燥手段としては、特に制限はなく、公知の乾燥方法、例えば、温風乃至熱風による乾燥、脱湿風による乾燥、等が挙げられる。
【0049】
また、前記延伸温度としては、特に制限はないが、各層における基本材料(固有複屈折値が正の材料)の最低ガラス転移温度をTg(mim)としたとき、(Tg(min)−30)℃〜(Tg(min)+30)℃に設定するのが好ましい。
【0050】
第1の態様における1/2波長板の製造方法においては、効率的に前記遅相軸を直交させて積層するには、各延伸フィルムの搬送方向を一致させると共に延伸方向を直交させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第1の態様の1/2波長板は、固有複屈折値が正の同符号である2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を直交させることにより、2層以上の積層体の遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型1/2波長板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に1/2波長板の製造が行われる。また、製造された1/2波長板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0051】
−−第2の態様の1/2波長板−−
前記第2の態様の1/2波長板は、2種以上の固有複屈折値が負の材料を積層した態様である。第2の態様においては、前記第1の態様の1/2波長板と同様に、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに直交させることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0052】
なお、前記第2の態様において、固有複屈折値が負の3種類以上の材料を各々積層させる場合、これらの各層における分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸を互いに直交させるには、これら固有複屈折値が負の材料のうち、Re(λ)/λの値が近い材料を1種類の材料と見なすことにより、Re(λ)/λの値によって概ね2種類の材料に分類し、これらの2種類の材料同士が、その分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸が互いに直交するように各層を材料毎に積層するのが好ましい。
【0053】
前記第2の態様においては、このように1/2波長板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第2の態様の1/2波長板においては、共に固有複屈折値が負の異なる値である2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な位相差特性が与えられる。
【0054】
<第2の態様における材料>
前記第2の態様における材料としては、前記固有複屈折値が負である材料(以下、単に「負の材料」と称することがある。)のほか、所望により含有可能なその他の成分等が挙げられる。前記「固有複屈折値が負である材料」とは、分子が一軸性の秩序をもって配向した際に、光学的に負の一軸性を示す特性を有する材料をいう。
例えば、前記負の材料が樹脂である場合、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より小さくなる樹脂をいう。
前記負の材料としては、樹脂、ディスコティック液晶、ディスコティック液晶ポリマー等種々のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの中でも樹脂が好ましい。
【0055】
前記樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリスチレン系ポリマー(スチレン及び/又はスチレン誘導体と他のモノマーとの共重合体)、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、セルロースエステル系ポリマー(前記固有複屈折値が正であるものもある)、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記ポリスチレン系ポリマーとしては、スチレン及び/又はスチレン誘導体と、アクリルニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート及びブタジエンから選ばれる少なくとも1種との共重合体が好ましい。本発明においては、これらの中でも、ポリスチレン、ポリスチレン系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー及びポリメチルメタクリレート系ポリマーの中から選択される少なくとも1種が好ましく、これらの中でも、複屈折発現性が高いという観点から、ポリスチレン及びポリスチレン系ポリマーがより好ましく、耐熱性が高い点で、スチレン及び/又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。
【0057】
<第2の態様における1/2波長板の構成等>
前記第2の態様における1/2波長板の構成としては、前述したように、固有複屈折値が負で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第2の態様においても、前記第1の態様と同様、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、前記第1の態様と同様である。
前記第2の態様における1/2波長板の厚み、各層の厚み、接着層の厚みとしては各々、前記第1の態様と同様である。
【0058】
<第2の態様における1/2波長板の製造方法等>
前記1/2波長板の製造方法のうち、第2の態様における1/2波長板の製造方法では、固有複屈折値が負で異なる2種以上の材料を、延伸機を用いて、同方向に搬送しつつ延伸し、貼り合わせる。第2の態様における1/2波長板の製造方法においては、少なくとも1種の材料を搬送方向と同方向に延伸し、少なくとも他の1種の材料を搬送方向と直交する方向に延伸する。
【0059】
前記延伸の方法、貼り合わせの方法としては、第1の態様における方法と同様である。また前記固有複屈折値が負の材料としては、前述した通りであり、好ましい材料等も前述した通りである。
【0060】
前記第2の態様における1/2波長板の製造は、前記第1の態様における1/2波長板の製造方法と同様に、例えば、図2に概略的に示した延伸機10を用い、固有複屈折値が負の各材料を、各層における遅相軸が互いに直交するように縦延伸及び横延伸を行うことにより、効率的に行うことができる。
【0061】
第2の態様における1/2波長板の製造方法においては、前記遅相軸を直交させて積層するには、各層の搬送方向を一致させると共に延伸方向を直交させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第2の態様の1/2波長板は、固有複屈折値が負の同符号である2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を直交させることにより、2層以上の積層体における遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型1/2波長板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に1/2波長板の製造が行われる。また、製造された1/2波長板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0062】
−−第3の態様の1/2波長板−−
前記第3の態様の1/2波長板は、2種以上の固有複屈折値が正及び負の材料を積層した態様である。第3の態様においては、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに平行にすることにより、各層の遅相軸を互いに直交にするのが好ましい。
【0063】
前記第3の態様においては、延伸条件等を調整することによってこのように1/2波長板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第3の態様の1/2波長板においては、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散特性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な位相差特性が与えられる。
【0064】
<第3の態様における材料>
前記固有複屈折値が正である材料及び負である材料は前述した通りである。
【0065】
<第3の態様における1/2波長板の構成等>
前記第3の態様における1/2波長板の構成としては、前述したように、固有複屈折値が正及び負で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第3の態様においても、前記第1の態様と同様、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、前記第1の態様と同様である。
前記第3の態様における1/2波長板の厚み、各層の厚み、接着層の厚みとしては各々、前記第1の態様と同様である。
【0066】
<第3の態様における1/2波長板の製造方法等>
本発明における1/2波長板の製造方法のうち、第3の態様における1/2波長板の製造方法では、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、延伸機を用いて同方向に搬送しつつ、少なくとも、正の固有複屈折値を有する材料及び負の固有複屈折値を有する材料を、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸し、貼り合わせる。このように延伸し貼り合わせることにより、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)が平行になり、各層の遅相軸が互いに直交する。延伸機としては、2種以上の材料を、同方向に搬送・延伸可能な公知の延伸機が総て好適に用いられる。延伸の方法、貼り合わせの方法、及び、延伸温度としては、前記第1の態様で述べたのと同様である。
【0067】
第3の態様における1/2波長板の製造方法において、前記遅相軸を直交させて積層するには、各層の搬送方向を一致させると共に延伸方向を一致させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第3の態様の1/2波長板は、固有複屈折値が正及び負の2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を平行にすることにより、2層以上の積層体における遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型1/2波長板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に1/2波長板の製造が行われる。また、製造された1/2波長板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0068】
−−1/2波長板の諸物性等−−
前記1/2波長板における光弾性としては、20ブルースター以下が好ましく、10ブルースター以下がより好ましく、5ブルースター以下が更に好ましい。これは、以下の理由による。
前記1/2波長板は、本発明の偏光変換素子に用いられる際に貼合される。貼合の際にかかる応力には偏りがあり、中央部と比較して端部においてより大きな応力がかかる。その結果、レターデーションに違いが生じ、端部は白っぽく光抜けし、表示素子においては表示特性を低下させる場合がある。1/2波長板の光弾性が前記数値範囲内にあると、貼合の際に応力の偏りがあっても、部分的にレターデーション(Re)に差が生じるのを抑制できる。
【0069】
前記1/2波長板としては、優れた1/2波長板特性を満たす観点から、波長450nm、550nm及び650nmにおいて、(レターデーション(Re)/λ(波長))の値が0.4〜0.6が好ましく、0.46〜0.54がより好ましく、0.48〜0.52が更に好ましい。
【0070】
−−1/2波長板における材料の好ましい組合せ−−
前記1/2波長板においては、可視光全域における波長分散特性の観点から、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていれば特に制限はないが、下記諸物性を具備するのが更に好ましい。
【0071】
前記1/2波長板においては、波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)値の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、各層が有する特性が好適に相殺された結果のレターデーションを得る観点から、積層された各層が、少なくとも、(Re(450)/Re(550))の値の差が、互いに0.03以上である2種の層の組合せを含むのがより好ましい。また、互いに0.05以上である2種の層の組合せを含むのが更に好ましい。また、波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、特に好適な1/2波長板特性を得る観点から、積層された各層が、少なくとも(Re(450)/Re(550))の値が互いに異なる2種の層の組み合せを含み、該2種の層のうち、(Re(450)/Re(550))の値が小さい層におけるRe(550)の値が、(Re(450)/Re(550))の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きいのが好ましい。
以上のように組み合わされる層の、1/2波長板における位置としては、特に制限はなく、上下で互いに接して積層された層でもよく、互いに接していなくてもよい。
前記材料の好ましい組合せとしては、波長450nm、550nm、650nmにおけるレターデーション(Re)の値を、各々、Re(450)、Re(550)、Re(650)としたとき、これらがRe(450)<Re(550)<Re(650)を効果的に満たす観点から、固有複屈折値が正又は負の樹脂として、その固有屈折値の波長分散が小さい材料を選択し、且つ、他の固有複屈折値が正又は負の樹脂として、その固有複屈折値の波長分散が大きい材料を選択して組合せるのが特に好ましい。
【0072】
例えば、前記第1の態様において、前記固有複屈折値が正で、かつレターデーション(Re)が高い材料として、前記ノルボルネン系ポリマーを使用する場合、前記他の固有複屈折値が正の材料(レターデーション(Re)が小さい材料)としては、その固有複屈折値の波長分散が大きいものが好ましく、具体的には、波長450nm、波長550nmの固有複屈折値(Δn)を、各々、Δn(450)、Δn(550)としたとき、下記関係式を満たす樹脂から選ばれるのが好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)| ≧ 1.02
さらに、下記関係式を満たす樹脂から選ばれるのがより好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)| ≧ 1.05
なお、|Δn(450)/Δn(550)|の値は大きい程好ましいが、樹脂の場合、一般的には2.0以下である。
【0073】
より具体的に、前記(Re(450)/Re(550))の値が大きい材料としては、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー(例えば、ポリフェニレンサルファイドなど)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリアリルサルホン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、などが好ましく、特に、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、及びポリアリレート系ポリマーなどが好ましい。
また、前記(Re(450)/Re(550))の値が小さい材料としては、オレフィン系ポリマー及びシクロオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等)、セルロースエステル系ポリマー、などが好ましく、オレフィン系ポリマーの中でもノルボルネン系ポリマーとの組合せが特に好ましい。
【0074】
また前記1/2波長板においては、各層に用いる材料の質量比、延伸温度及び延伸倍率等を調整することで、前記Re(450)<Re(550)<Re(650)の特性を満たすことができる。
例えば、前記1/2波長板が前記第1の態様であって、固有複屈折値が正の材料(樹脂)として、ノルボルネン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、及び、ポリカーボネートを各々用いる場合には、短波長側が大きくレターデーション減少し、結果としてRe(450)<Re(550)<Re(650)の特性が得られる。延伸温度を前述の範囲内に制御することで、特に可視光波長全域にわたってRe(λ)/λを一定とし、広帯域にわたって均一な位相差特性を示す1/2波長板が得られる。
【0075】
以上のように、前記1/2波長板は、広帯域(可視光域)の光に対して均一な位相差特性を与えることができると共に、積層体であるにもかかわらず、簡易な工程によって効率的、かつ、低コストで製造可能である。また、前記1/2波長板は、原材料を選択する際に材料の相溶性を考慮する必要がなく、更に、固有複屈折値が正同士、負同士、及び正及び負の組合せ、など、いずれの組合せでも製造可能であるため材料の選択の幅が広く好ましい。更に、コストが安い等の点でも有利である。
【0076】
−−1/2波長板の実施形態等−−
前記1/2波長板の実施形態の一例を図3に示す。
この1/2波長板15は、前記第1の態様の1/2波長板であり、固有複屈折値が正の樹脂からなる層101と、該樹脂とは異なる正の固有複屈折値を有する樹脂からなる層102とが積層されている。
前記層101及び層102は、各々複屈折を有し、その遅相軸を互いに直交させて積層されている。即ち、層101に含有される、前記固有複屈折値が正の樹脂における分子鎖の配向方向と、層102に含有される、前記固有複屈折値が正の樹脂における分子鎖の配向方向とは直交している。1/2波長板15のレターデーションは、層101及び層102における各レターデーションの和となるので、層101と層102とを遅相軸を互いに直交させて積層することによって、1/2波長板15の短波長側のレターデーションを小さく、且つ長波長側のレターデーションを大きくすることができる。その結果、1/2波長板15の波長λにおけるレターデーションRe(λ)と波長との比Re(λ)/λを、可視光全域において略一定にすることができる。
【0077】
なお、前記実施形態においては、固有複屈折値が正の異なる2種の樹脂からなる層を、各々1層有する構成の1/2波長板の具体例を示したが、前記1/2波長板はこれに限定されることはなく、更に、3層、4層と、3層以上が積層された構成であってもよい。3層以上の多層が積層された構成とすることにより、1/2波長板の物理的特性がより改良され好ましい。
【0078】
以上説明したように、本発明の1/2波長板は、簡易な工程により効率的に、連続的に、低コストで製造可能であり、固有複屈折値の正負に関わらず原材料を選択可能であるため製造時の原材料の選択性が大きく、且つ、可視光全域の入射光に対して広帯域で均一な位相差特性を与える。
【0079】
−本発明の偏光変換素子の好ましい態様−
本発明の前記偏光変換素子は、前記偏光変換部材によって偏光方向が一致された直線偏光が各々出射する領域を、同一平面内で互いに隣合って配置してなる出射面を備えていてもよい。該出射面を備えていることにより、偏光の振動方向が一致した直線偏光を同一方向に出射させることができ、光(特に自然光)をより有効利用できる。
前記出射面は、例えば、短冊状の旋光層を一定間隔で、同一平面内に互いに隣合って配置して形成してもよい。
【0080】
以上説明した本発明の偏光変換素子は、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ、低コストで製造可能である広帯域の1/2波長板を用いているため、低コストで効率的に製造可能で、広帯域において高性能である。
【0081】
(液晶プロジェクター用投光装置)
本発明の液晶プロジェクター用投光装置は、本発明の前記偏光変換素子と、該偏光変換素子に光を入射する照射手段と、を備え、必要に応じてその他の部材を有する。
【0082】
以下、本発明の液晶プロジェクター用投光装置の一例を、図4を用いて説明する。本発明の液晶プロジェクター用投光装置は、前記本発明の偏光変換素子を液晶プロジェクターにおけるPS変換素子に適用したものである。
なお、前記偏光変換素子においては、前記偏光分離部材として偏光ビームスプリッタ14を用い、前記偏光変換部材として前述した1/2波長板を用いている。
【0083】
図4に示すように、本発明の液晶プロジェクター用投光装置が適用される液晶プロジェクターの光学部50は、光源12を備えており、該光源12の出射側には、1/2波長板15と偏光ビームスプリッタ14(詳細は後述)とを有するPS変換素子13、及びハーフミラー16がこの順に設置されている。ハーフミラー16の透過側にはハーフミラー18が設置され、ハーフミラー18の反射側にはR色を担当する画像形成素子20が設置されている。ハーフミラー16の反射側にはハーフミラー24が設置され、ハーフミラー24の反射側にはG色を担当する画像形成素子26が設置されている。ハーフミラー24の透過側にはミラー28、30がこの順に設置され、ミラー30の反射側にはB色を担当する画像形成素子32が設置されている。画像形成素子20,26,32の出射側にはRGBの各色の光を合成して投影光学系34へ出射するためのプリズム22が設けられている。
画像形成素子20においては、光の入射側からガラス20G、1/2波長板20λ、偏光板20P、液晶セル20Lがこの順に積層されている。画像形成素子26においては、光の入射側からガラス26G、1/2波長板26λ、偏光板26P、PS変換用の1/2波長板26λ、液晶セル26Lがこの順に積層されている。画像形成素子32においては、光の入射側からガラス32G、1/2波長板32λ、偏光板32P、液晶セル32Lがこの順に積層されている。
【0084】
前記PS変換素子13は、図5に示すように、偏光ビームスプリッタ14上に1/2波長板15が取り付けられており、図4に示すように光源12側から、偏光ビームスプリッタ14、1/2波長板15の順に構成されている。また偏光ビームスプリッタ14においては、図6に示すように、厚みWのガラス板14Aが複数枚積層されており、所定角度θ方向に、厚みHに、カットされている。
【0085】
前記偏光ビームスプリッタ14には、光源12からの光iが入射される。図5の例では、ガラス14bに入射される。光iの内のP偏光ipは、偏光ビームスプリッタ14のガラス14bをそのまま通過し、積層されたガラス14aを通過する。一方、S偏光isは、ガラス14bと積層されたガラス14aの界面で反射し、更に、次のガラスとの界面でも反射を繰り返し、ガラス14bからS偏光isとして出射される。即ち、偏光ビームスプリッタ14からは、長尺状のP偏光ip及びS偏光isが出射される。
【0086】
なお、ここでは、偏光ビームスプリッタ14は、誘電体多層膜などがコートされたガラス板14Aにより構成されているが、これに限定されるものではない。
【0087】
前記偏光ビームスプリッタ14においては、図5に示すように、光の出射側に、1/2波長板15が設けられているが、1/2波長板15は、1/2波長板として機能する有効領域15Aと、そのまま光を通過させる通過領域15Bとから構成されており、ガラス14aの光の出射側に、1/2波長板として機能する有効領域15Aが設けられ、1/2波長板15の有効領域15AでP偏光ipがS偏光isに変換される。
【0088】
従って、ガラス14aからのP偏光ipは、1/2波長板15の有効領域15AでS偏光isに変換されて出射され、ガラス14bからのS偏光isは、1/2波長板15の通過領域15Bをそのまま通過して出射される。
【0089】
このとき、有効領域15Aと通過領域15Bとは、偏光ビームスプリッタ14から出射される光束形状に対応して一定幅にかつ交互に配置されており、出射面を1/2波長板の有効領域15Aと通過領域15Bとを交互に配置して構成しているので、偏光方向が一致した(ここではS偏光に一致した)同一方向に進行する直線偏光が出射面から得られる。即ち、ガラス14a、14bからの光は、1/2波長板15を介在させることで、共にS偏光isとして取り出される。このガラス14a、14bは繰り返されるので、光は、総てS偏光に変換され、光の50%ロスがなく有効に利用可能となる。
【0090】
前記1/2波長板15は、波長450nm、550nm及び650nmにおいて、直線偏光の旋光度が90°±7°である。従って、青、緑及び赤に各々対応する波長の直線偏光のいずれについても、その偏光面を約90°変換することができるので、画像変換素子20、26、32の各々に入射する光は、総てS偏光に変換され、光の50%ロスがなく有効に利用される。その結果、液晶用プロジェクターにおいて、明るい多色投影画像が形成される。
【0091】
以上説明した本発明の液晶プロジェクター用投光装置は、本発明の前記偏光変換素子を備えているため、低コストで効率的に製造可能であり、かつ広帯域において高性能である。
【0092】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
−偏光ビームスプリッタの作製−
偏光ビームスプリッタは、以下のようにして得た。即ち、厚み2.1mmのガラス板14Aを16枚積層し、角度45度方向にカットして、図6に示すような、厚みHが3.5mmの偏光ビームスプリッタ14を得た。
【0094】
−1/2波長板の作製−
図2に示したような延伸・貼り合わせ機10を用いて、以下のようにして1/2波長板15を作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を延伸倍率1.1倍、延伸温度135℃で縦延伸し、厚み92μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550)で表す。)は341.6nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が477.1nm、厚み60μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み155μmの積層フィルムを得た。なお、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合せ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=122.8nm、Re(550)=145.7nm、Re(650)=160.1nmであり、広帯域1/2波長板としての特性を有した積層フィルムが得られた。Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。また、得られた積層フィルムについて光弾性値を日本分光製「M−150」を用いて測定したところ、18.7ブルースターであった。
【0095】
−偏光変換素子の作製−
次に、プリズムアレイ、偏光ビームスプリッタ14、及び1/2波長板15を、図4に示した順序で積層した。更にその上に、透過軸がストライプに平行になるように偏光子を配置し、光の透過率を測定した結果、良好な特性が得られた。
【0096】
(実施例2)
−偏光ビームスプリッタの作製−
実施例1と同様にしてビームスプリッタを作製した。
【0097】
−1/2波長板の作製−
図2に示したような延伸・貼り合わせ機10を用いて、以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を延伸倍率1.1倍、延伸温度140℃で縦延伸し、厚み92μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550)で表す。)は316.4nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み142μmの積層フィルムを得た。
なお、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=121.1nm、Re(550)=147.0nm、Re(650)=160.3nmであり、広帯域λ/2フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。また、得られた積層フィルムについて光弾性率を日本分光製「M−150」を用いて測定したところ、17.8ブルースターであった。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0098】
−偏光変化素子の作製−
次に、プリズムアレイ、偏光ビームスプリッタ14、及び1/2波長板15を、図4に示した順序で積層した。更にその上に、透過軸がストライプに平行になるように偏光子を配置し、光の透過率を測定した結果、良好な特性が得られた。
【0099】
(実施例3)
−偏光ビームスプリッタの作製−
実施例1と同様にしてビームスプリッタを作製した。
−1/2波長板の作製−
図2に示したような延伸・貼り合わせ機延伸機10を用いて、以下のようにして1/2波長板を作製した。
先ず、ポリエチレンテレフタレートを290℃にてTダイにより溶融押し出しし、30℃のキャスティングドラム上にて冷却固化し、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:45μm)を作製した。該未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、延伸倍率1.15倍、延伸温度90℃で縦延伸し、厚み40μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550))は303.9nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み90μmの積層フィルムを得た。なお、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=124.4nm、Re(550)=154.1nm、Re(650)=165.1nmであり、広帯域λ/2フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。また、得られた積層フィルムについて光弾性率を日本分光製「M−150」を用いて測定したところ、8.7ブルースターであった。
Re(450)、Re(550)、Re(650)及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0100】
−偏光変化素子の作製−
次に、プリズムアレイ、偏光ビームスプリッタ14、及び1/2波長板15を、図4に示した順序で積層した。更にその上に、透過軸がストライプに平行になるように偏光子を配置し、光の透過率を測定した結果、良好な特性が得られた。
【0101】
(実施例4)
−偏光ビームスプリッタの作製−
実施例1と同様にしてビームスプリッタを作製した。
【0102】
−1/2波長板の作製−
図2に示したような延伸・貼り合わせ機10を用いて、以下のようにして1/2波長板を作製した。
先ず、ポリエチレンテレフタレートを290℃にてTダイにより溶融押し出しし、30℃のキャスティングドラム上にて冷却固化し、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:400μm)を作製した。該未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、延伸温度90℃で、縦延伸(延伸倍率:3.3倍)し、続いて延伸温度120℃で横延伸(テンター延伸、延伸倍率:3.3倍)し、厚み40μmの二軸延伸フィルムを得た。この二軸延伸フィルムは、主に縦方向に配向が進んでおり、波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550))は309.2nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み90μmの積層フィルムを得た。
なお、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=120.3nm、Re(550)=148.3nm、Re(650)=162.8nmであり、広帯域λ/2フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。また、得られた積層フィルムについて光弾性率を日本分光製「M−150」を用いて測定したところ、17.8ブルースターであった。
Re(450)、Re(550)、Re(650)及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
実施例4より、二軸に延伸して積層させても、縦又は横方向のいずれか一方に主に配向が進んでいる場合には、縦又は横の一軸に延伸した場合と同様の優れた特性が得られることが解った。
【0103】
−偏光変換素子の作製−
次に、プリズムアレイ、偏光ビームスプリッタ14、及び1/2波長板15を、図4に示した順序で積層した。更にその上に、透過軸がストライプに平行になるように偏光子を配置し、光の透過率を測定した結果、良好な特性が得られた。
【0104】
(実施例5)
−偏光ビームスプリッタの作製−
実施例1と同様にしてビームスプリッタを作製した。
【0105】
−1/2波長板の作製−
図2に示したような延伸・貼り合わせ機10を用いて、以下のようにして1/2波長板を作製した。
先ず、未延伸ポリスチレン(厚み:100μm)を延伸倍率2.1倍、延伸温度105℃で縦延伸し、厚み62μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション(Re(550))は453.2nmであった。
同時に、ポリメチレンアクリレートフィルム(厚み:100μm)を、同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.4倍、延伸温度110℃で横延伸(テンター延伸)し、厚み58μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション(Re(550))は602.8nmであった。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み123μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=121.3nm、Re(550)=149.8nm、Re(650)=169.7nmであり、広帯域λ/2フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。また、得られた積層フィルムについて光弾性率を日本分光製「M−150」を用いて測定したところ、4.8ブルースターであった。
Re(450)、Re(550)及びRe(650)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0106】
−偏光変換素子の作製−
次に、プリズムアレイ、偏光ビームスプリッタ14、及び1/2波長板15を、図4に示した順序で積層した。更にその上に、透過軸がストライプに平行になるように偏光子を配置し、光の透過率を測定した結果、良好な特性が得られた。
【0107】
【表1】
【0108】
【発明の効果】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決することができ、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ、低コストで製造可能である広帯域の1/2波長板を用い、低コストで効率的に製造可能で、広帯域において高性能な偏光変換素子、及び該偏光変換素子を備え、低コストで効率的に製造可能で、広帯域において高性能な液晶プロジェクター用投光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ドライラミネート法を具体的に説明するための説明図である。
【図2】図2は、本発明の1/2波長板の製造方法の一例を、概略的に説明するための図である。
【図3】図3は、本発明の1/2波長板の一実施形態を表す概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態にかかる液晶プロジェクターの光学部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態にかかるPS変換素子における偏光状態を示す線図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態にかかるPS変換素子の構成を示す線図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・縦延伸部
1a,1b・・・・・縦延伸低速ローラ
1c,1d・・・・・縦延伸高速ローラ
2・・・・・・・・・貼り合わせ部
2a,2b・・・・・貼り合わせ・ニップローラ
2c,2d・・・・・接着剤塗布ローラ
3・・・・・・・・・横延伸部
3a・・・・・・・・搬送方向調整ローラ
3b・・・・・・・・横延伸機
10・・・延伸・貼り合わせ機
12・・・光源
13・・・PS変換素子
14・・・偏光ビームスピリッタ
15・・・1/2波長板
15A・・・有効領域
15B・・・通過領域
16、24・・・ハーフミラー
20、26、32・・・画像形成素子
28、30・・・ミラー
50・・・液晶プロジェクター
101・・・固有複屈折値が正の樹脂からなる層
102・・・固有複屈折値が正の樹脂からなる層
200・・・ラミネート機
201・・・加熱乾燥器
202・・・接着剤収容器
203・・・第一フィルム送り出し機
204・・・第二フィルム送り出し機
205・・・巻き取り機
206a,206b・・・接着剤塗布ローラ
207a,207b・・・搬送ローラ
208a・・・第一の延伸フィルム
208b・・・第二の延伸フィルム
209・・・・ドクターブレード
210a・・・貼り合わせ・ニップローラ
210b・・・貼り合わせ・ニップローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、直線偏光の振動方向を90°回転させる新規な1/2波長板を使用した偏光変換素子、及び該偏光変換素子を備えた液晶プロジェクター用投光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光源からの光(特に自然光)を単一の直線偏光(P偏光又はS偏光)に変換する偏光変換素子は、投射型表示装置等において種々利用されている。偏光変換素子は、光に含まれる直線偏光(P偏光とS偏光)のいずれかの偏光面を90°回転させることにより、双方の直線偏光の偏光面を一致させ、P偏光とS偏光の両成分を利用することにより、光の利用効率を上げるものである。
【0003】
前記偏光変換素子は、通常、プリズムアレイからなる偏光ビームスプリッタと、直線偏光の偏光面を90°変換する1/2波長板を積層して構成される。該偏光変換素子に、マイクロレンズアレイにより絞り込んだ入射光を入射すると、偏光ビームスプリッタのプリズムアレイでプリズムを透過するP偏光成分と、反射されるS偏光成分とに分離され、その後、P偏光のみが1/2波長板を通過して偏光面が90゜回転し、全体の偏光光の振動方向は一致した状態で出射する(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ところで、偏光変換素子を液晶プロジェクター等の投射型表示装置に利用する場合、偏光変換素子は、人間の目で認識できる可視光領域のいずれの波長においても、直線偏光の偏光面を略90°回転可能であることが要求される。従来、この様な広帯域の偏光変換素子には、複数枚(通常、3枚)の高分子延伸フィルムを、遅層軸を交差させて積層し、貼合した1/2波長板が用いられてきた。該1/2波長板は、ビームスプリッタのプリズムアレイの構造に従って、小さなチップに切断され、プリズムに貼り付けられる。遅層軸を交差させた延伸フィルム3枚の貼合品を得るためには、3回の粘着塗工と3回のチップカット及び2回の貼合が必要とされ、また工程数が多いことによるコストアップを招き、また、チップカット時の遅層軸方向のずれ、加工屑による汚染や、貼合時の光弾性による延伸フィルムの位相差のずれ、などが性能上にも悪影響を及ぼしていた。また、貼合後にはプリズムの構造に合わせた微小チップを形成し、それをプリズム上に貼り合わせるという煩雑な工程が必要となっていた。
【0005】
【非特許文献1】
「液晶」 第2巻 第2号 1998年、p.37〜38
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ、低コストで製造可能である広帯域の1/2波長板を用い、低コストで効率的に製造可能で、広帯域において高性能な偏光変換素子、及び該偏光変換素子を備え、低コストで効率的に製造可能で、広帯域において高性能な液晶プロジェクター用投光装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 入射した光を互いに直交する2方向の直線偏光に分離する偏光分離部材と、
1/2波長板を含み、分離された前記2方向の直線偏光のうち、1方向の直線偏光における偏光方向を該1/2波長板によって90°変換することにより、分離された直線偏光における偏光方向を一致させる偏光変換部材と、を備えた偏光変換素子であって、
前記1/2波長板が、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たすことを特徴とする偏光変換素子である。
<2> 2種以上の材料における固有複屈折値が正であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載の偏光変換素子である。
<3> 2種以上の材料における固有複屈折値が負であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載の偏光変換素子である。
<4> 2種以上の材料における固有複屈折値が正及び負であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載の偏光変換素子である。
<5> 各層における分子鎖の配向軸が互いに直交した前記<1>から<3>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<6> 各層における分子鎖の配向軸が互いに平行である前記<1>又は<4>に記載の偏光変換素子である。
<7> 1/2波長板が、更に接着層を有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<8> 材料が樹脂である前記<1>から<7>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<9> 材料のうちの少なくとも1種が、ノルボルネン系ポリマーである前記<1>から<8>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<10> 材料のうちの少なくとも1種が、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、及び、ポリアリーレン系ポリマーの少なくともいずれかである前記<1>から<9>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<11> 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、1/2波長板における各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値の差が互いに0.03以上である2種の層を含む前記<1>から<10>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<12> 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、1/2波長板における各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値が互いに異なる2種の層を含み、該2種の層のうち、Re(450)/Re(550)の値が小さい層におけるRe(550)の値が、Re(450)/Re(550)の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きい前記<1>から<11>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
<13> 1/2波長板の光弾性が20ブルースター以下である前記<9>に記載の偏光変換素子である。
<14> 1/2波長板において、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーションRe(λ)と波長λとが、各々下記関係式を満たす前記<1>から<13>のいずれかに記載の偏光変換素子である。
0.4≦Re(λ)/λ≦0.6
<15> 1/2波長板が、固有複屈折値が正の2種以上の材料を、延伸機を用いて同方向に搬送しつつ、少なくとも1種の材料を搬送方向と同方向に、少なくとも他の1種の材料を搬送方向と直交する方向に延伸し、貼り合わせて得られた前記<1>又は<2>に記載の偏光変換素子である。
<16> 1/2波長板が、固有複屈折値が負の2種以上の材料を、延伸機を用いて同方向に搬送しつつ、少なくとも1種の材料を搬送方向と同方向に、少なくとも他の1種の材料を搬送方向と直交する方向に延伸し、貼り合わせて得られた前記<1>又は<3>に記載の偏光変換素子である。
<17> 1/2波長板が、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、延伸機を用いて同方向に搬送しつつ、少なくとも、正の固有複屈折値を有する材料及び負の固有複屈折値を有する材料を、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸し、貼り合わせて得られた前記<1>又は<4>に記載の偏光変換素子である。
<18> 前記<1>から<17>のいずれかに記載の偏光変換素子と、該偏光変換素子に光を入射する照射手段と、を少なくとも備えたことを特徴とする液晶プロジェクター用投光装置である。
【0008】
前記<1>から<17>のいずれかに記載の偏光変換素子においては、先ず、入射した光が、偏光分離部材によって、互いに直交する2方向の直線偏光に分離される。即ち、光(特に自然光)に含まれる2方向の直線偏光のうち、一方向の直線偏光(例えば、P偏光)を透過させ、他方向の直線偏光(例えば、S偏光)を反射させることにより、直線偏光の進路が分離される。分離された2方向の直線偏光のうち、1方向の直線偏光(例えば、S偏光)における偏光方向を、偏光変換部材に含まれる1/2波長板によって90°変換することにより、他方の直線偏光(例えば、P偏光)における偏光方向と一致させ、分離された直線偏光における偏光方向を一致させることができる。これにより、双方の直線偏光を有効に利用することができる。
また、前記<1>に記載の偏光変換素子における1/2波長板は、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能な広帯域の1/2波長板である。従って、低コストで効率的に製造され、広帯域における性能特性が高い。
【0009】
前記<18>に記載の液晶プロジェクター用投光装置においては、前記<1>から<17>のいずれかに記載の偏光変換素子と、該偏光変換素子に光を入射する照射手段と、を少なくとも備える。該照射手段によって、前記偏光変換素子に光が入射されると、偏光分離部材によって、光が互いに直交する2方向の直線偏光に分離される。即ち、光(特に自然光)に含まれる2方向の直線偏光のうち、一方向の直線偏光(例えば、P偏光)を透過させ、他方向の直線偏光(例えば、S偏光)を反射させることにより、直線偏光の進路が分離される。分離された2方向の直線偏光のうち、1方向の直線偏光(例えば、S偏光)における偏光方向を、偏光変換部材に含まれる1/2波長板によって90°変換することにより、他方の直線偏光(例えば、P偏光)における偏光方向と一致させ、分離された直線偏光における偏光方向を一致させて直線偏光を出射する。出射した直線偏光は、その後、例えば、液晶用プロジェクターの画像形成素子に入射し、合成されて投影画像が形成される。このとき、光に含まれる2方向の直線偏光が有効に利用されるため、投影画像は明るい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について更に詳しく説明する。
(偏光変換素子)
本発明の偏光変換素子は、偏光分離部材と、偏光変換部材とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0011】
[偏光分離部材]
前記偏光分離部材としては、入射した光(特に自然光)を、互いに直交する2方向の直線偏光に分離する機能を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、偏光ビームスプリッタ等の公知のもの等が好適に挙げられる。
【0012】
[偏光変換部材]
前記偏光変換部材は、所定の1/2波長板を含み、更に必要に応じてその他の部材等を有する。該偏光変換部材は、前記偏光分離部材によって分離された前記2方向の直線偏光のうち、1方向の直線偏光における偏光方向を1/2波長板によって90°変換することにより、分離された直線偏光における偏光方向を一致させる機能を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知のものを好適に使用することができる。
【0013】
−1/2波長板−
前記1/2波長板は、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たす。また、該1/2波長板において、入射光は、前記固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層した層によって位相差特性が与えられる。
【0014】
前記1/2波長板においては、固有複屈折値が正同士の2種以上の材料を積層した第1の態様、固有複屈折値が負同士の2種以上の材料を積層した第2の態様、及び、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を積層した第3の態様、の3種類の態様が含まれる。
【0015】
−−第1の態様の1/2波長板−−
前記第1の態様の1/2波長板は、2種以上の固有複屈折値が正の材料を積層した態様である。第1の態様においては、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに直交させることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0016】
なお、前記第1の態様において、固有複屈折値が正の3種類以上の材料を各々積層させる場合、これらの各層における分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸を互いに直交させるには、これら固有複屈折値が正の材料のうち、Re(λ)/λの値が近い材料を1種類の材料と見なすことにより、Re(λ)/λの値によって概ね2種類の材料に分類し、これらの2種類の材料同士が、その分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸が互いに直交するように各層を材料毎に積層するのが好ましい。
【0017】
前記第1の態様においては、このように1/2波長板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第1の態様の1/2波長板においては、共に固有複屈折値が正の異なる値である2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な1/2波長板特性が与えられる。
【0018】
<第1の態様における材料>
前記第1の態様における材料としては、前記固有複屈折値が正である材料(以下、単に「正の材料」と称することがある。)のほか、所望により含有可能なその他の成分等が挙げられる。前記、「固有複屈折値が正である材料」とは、分子が一軸性の秩序をもって配向した際に、光学的に正の一軸性を示す特性を有する材料をいう。
例えば、前記正の材料が樹脂である場合、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より大きくなる樹脂をいう。
前記正の材料としては、樹脂、棒状液晶、棒状液晶ポリマー等種々のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの中でも樹脂が好ましい。
【0019】
前記樹脂としては、例えば、オレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマーなど)、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー(例えば、ポリフェニレンサルファイドなど)、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、セルロースエステル系ポリマー(前記固有複屈折値が負であるものもある)、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリアリルサルホン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明においては、これらの中でも、(Re(450)/Re(550))の値が低い方の層に用いる材料としては、オレフィン系ポリマーが好ましく、オレフィン系ポリマーの中でも、光透過率特性、耐熱性、寸度安定性、光弾性特性等の観点から、ノルボルネン系ポリマーが特に好ましい。前記オレフィン系ポリマーとしては、日本合成ゴム社製の「アートソー」、日本ゼオン社製の「ゼオネックス」及び「ゼオノア」、三井石油化学製の「APO」等が好適に利用される。
【0021】
前記ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有してなり、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好適に利用できるが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0023】
【化1】
【0024】
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0025】
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)又は(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
【0026】
【化2】
【0027】
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0028】
前記ノルボルネン系ポリマーの質量平均分子量としては、5,000〜1,000,000程度であり、8,000〜200,000が好ましい。
【0029】
前記第1の態様における材料として、含有可能なその他の成分としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記材料(固有複屈折値が正の材料又は負の材料)が樹脂である場合のガラス転移点としては、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
【0030】
<第1の態様における1/2波長板の構成等>
前記第1の態様における1/2波長板は、前述したように、固有複屈折値が正で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第1の態様においては、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、使用しても、発現されるレターデーションの波長分散性に影響を与えないのが好ましく、特に、可視光全域の入射光に対して、影響を与えない材料が好ましい。
【0031】
前記接着層の材料としては、各層における材料と親和性がある材料が好適に使用される。具体的には、前記固有複屈折値が正の樹脂としてノルボルネン系ポリマーを使用した場合、接着層の材料としては、オレフィン系ポリマー及びポリスチレン(又はスチレン系ポリマー)のいずれかを用いるのが好ましい。接着層の材料としては、延伸温度より低温の溶融軟化温度を有する樹脂が好ましい。具体的には、それらのガラス転移点が、前記各層における材料のガラス転移点と比較し、5℃以上低いのが好ましく、10℃以上低いのがより好ましく、20℃以上低いのが更に好ましい。但し、これらに何ら限定されるものではない。
【0032】
前記第1の態様における1/2波長板の厚みとしては、30〜300μmが好ましく、50〜250μmがより好ましい。前記各層の厚みとしては、10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましい。前記接着層の厚みとしては、該接着層の複屈折と厚みとの積が小さくなる程好ましく、具体的には、0.2〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。
【0033】
<第1の態様における1/2波長板の製造方法等>
前記1/2波長板の製造方法のうち、第1の態様における1/2波長板の製造方法では、固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料を、延伸機を用いて、同方向に搬送しつつ延伸し、貼り合わせる。第1の態様における1/2波長板の製造方法においては、少なくとも1種の材料を搬送方向と同方向に延伸し、少なくとも他の1種の材料を搬送方向と直交する方向に延伸する。
【0034】
前記延伸の方法としては、一軸延伸でもよく、厚み方向を制御する目的から、二軸延伸を行ってもよい。
なお、二軸延伸を行う場合には、得られる1/2波長板において、縦及び横のいずれかの方向に主に分子鎖を配向させ、各層における配向軸同士が互いに直交するように延伸することが必要である。
前記貼り合わせの方法としては、特に制限はないが、接着剤を塗布して貼り合わせる方法、接着フィルムを各層間に挟んで貼り合わせる方法、接着剤を利用してドライラミネート法により貼り合わせる方法、などが挙げられる。
【0035】
前記接着剤、接着フィルムの材料としては、前述した接着層の材料と同様である。接着剤の塗布量としては、固形分の質量で1〜10g/cm2程度が好ましい。また、接着フィルムの厚みとしては、0.5〜10μm程度が好ましい。
【0036】
前記ドライラミネート法は、一般的に、接着剤を溶剤に溶解させた接着剤溶液を、一方の接着対象物に均一に塗布し、乾燥させた後、他方の接着対象物に加圧条件で圧着して行われる。該ドライラミネート法においては、接着剤が貼り合わせ用のローラ等に付着しないよう、接着対象物の両側に接着剤を塗布しない部分を残して貼合せたり、ローラ間の押圧の解除が自動的に行われるのが好ましい。前記溶剤としては、トルオール酢酸エチレン、酢酸エチル等の芳香族系の溶剤が好ましい。前記接着剤溶液における固形分濃度としては、20〜40質量%程度が好ましい。前記加圧の圧力としては、1〜50kg/cm2程度が好ましい。また、該ドライラミネート法によって3種以上の材料を積層して3層以上の積層体からなる1/2波長板を作製する場合には、2種の層を貼り合わせて積層させた段階で、積層体の巻き取り工程を設けずに3層目の貼り合わせ工程に移す等の方法によって作業の効率化を図るのが好ましい。
【0037】
ここで、前記ドライラミネート法の一例を、図1を用いて具体的に説明する。図1に示すドライラミネート機200は、第一の延伸フィルム供給手段と、第二の延伸フィルム供給手段と、接着剤塗布手段と、搬送手段と、加熱乾燥手段と、貼り合わせ手段と、巻き取り手段とを有する。
【0038】
前記第一の延伸フィルム供給手段は、第一の延伸フィルム208aを供給する第一フィルム送り出し機203を有する。
前記第二の延伸フィルム供給手段は、第二の延伸フィルム208bを供給する第二フィルム送り出し機204を有する。
前記接着剤塗布手段は、接着剤を収容する接着剤収容器202と、接着剤塗布ローラ206a,206bと、ドクターブレード209とを有する。該接着剤塗布手段において、接着剤塗布ローラ206aは、その表面が、前記接着剤及び第一の延伸フィルム208aと当接するように配され、接着剤塗布ローラ206bは、その表面が、第一の延伸フィルム208aと当接するように配されている。該接着剤塗布手段においては、接着剤塗布ローラ206a表面に付着した接着剤が、ローラの矢印方向への回転に伴い、ドクターブレード209によって適宜掻き落とされて均一な厚みに調整され、第一の延伸フィルム208aに均一に塗布される。
前記搬送手段は、回転により第一の延伸フィルム208aを搬送可能な搬送ローラ207a、搬送ローラ207bを有する。
前記加熱乾燥手段は、第一の延伸フィルム208aに塗布された接着剤を乾燥可能な加熱乾燥器201を有する。
前記貼り合わせ手段は、第一の延伸フィルム208a及び第二の延伸フィルム208bを貼り合わせ可能な貼り合わせ・ニップローラ210a,210bを有する。
【0039】
前記ドライラミネート機200においては、先ず、矢印方向に回転する第一フィルム送り出し機203から、第一の延伸フィルム208aが供給され矢印方向に搬送される。接着剤塗布ローラ206a,206bまで搬送された第一の延伸フィルム208aは、接着剤塗布ローラ206a,206b間を、ロールに当接しつつ搬送される際に、接着剤塗布ローラ206a表面に付着した接着剤が均一に塗布される。その後、更に矢印方向に搬送されて搬送ローラ207a上を通って加熱乾燥器201まで搬送される。加熱乾燥器201まで搬送された第一の延伸フィルム208aにおいては、表面に均一に塗布された接着剤が加熱により乾燥される。更に、第一の延伸フィルム208aは矢印方向に搬送され、搬送ローラ207b上を通って、貼り合わせ・ニップローラ210a,210bまで搬送される。一方、矢印方向に回転する第二フィルム送り出し機204からは、第二の延伸フィルム208bが供給され、矢印方向に、貼り合わせ・ニップローラ210a,210bまで搬送される。貼り合わせ・ニップローラ210a,210bにおいては、ニップ部での加圧により、第一の延伸フィルム208a及び第二の延伸フィルム208bが貼り合わせられ、これらが積層された1/2波長板が製造される。製造された1/2波長板は、巻き取り機205まで搬送され、巻き取られる。
【0040】
前記固有複屈折値が正の材料としては、前述した通りであり、好ましい材料等も前述した通りである。
【0041】
次に、前記第1の態様における1/2波長板の製造方法の一実施態様について、図2を用いて概略的に説明する。
図2に示す延伸・貼り合わせ機10は、縦延伸部1と、貼り合わせ部2と、横延伸部3とを備えている。
前記縦延伸部1は、縦延伸低速ローラ1a,1bと、縦延伸高速ローラ1c,1dとからなる。
前記貼り合わせ部2は、貼り合わせ・ニップローラ2a,2b及び接着剤塗布ローラ2c,2dからなる。
前記横延伸部3は、搬送方向調整ローラ3a及び横延伸機3bからなる。
前記延伸・貼り合わせ機10において、縦延伸低速ローラ1a,1b、縦延伸高速ローラ1c,1d、貼合わせ・ニップローラ2a,2b、接着剤塗布ローラ2c,2d、及び、搬送方向調整ローラ3aは、各々不図示の駆動部により回転可能である。縦延伸低速ローラ1a,1b、縦延伸高速ローラ1c,1dは、上流から下流に向かってこの順に配されている。縦延伸低速ローラ1a,1b、縦延伸高速ローラ1c,1dの周辺及びその内部には、各々不図示の加熱手段が設置され、延伸対象物の延伸温度を適宜制御可能である。
【0042】
前記延伸・貼り合わせ機10においては、まず、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aと、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bとが、図2の矢印方向(搬送方向)に搬送されてくる。ここで、縦延伸高速ローラ1c及び縦延伸高速ローラ1dは、縦延伸低速ローラ1a及び縦延伸低速ローラ1bより高速で回転するように設定されており、また、縦延伸低速ローラ1a及び縦延伸高速1cは、縦延伸低速ローラ1b及び縦延伸高速ローラ1dと逆方向(図に示す矢印方向)に回転するように設定されている。
【0043】
前記延伸・貼り合わせ機10における縦延伸部1に搬送されてきた、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aは、各縦延伸低速ローラ1a,1b、縦延伸高速ローラ1c,1dに順次当接し、図示した搬送方向に搬送されつつ、縦延伸低速ローラ1a,1bと、縦延伸高速ローラ1c,1dとの回転速度差により張力を付与され、この回転速度差によって搬送方向(フィルムの長手方向)に延伸される。またこのとき、前記加熱手段により、材料Aの延伸時に温度制御が可能であるため、材料Aは、材質、延伸速度(ローラの速度差)等に応じて好適な延伸条件に容易に調整される。延伸後、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aは、図示した方向に回転する貼合せ・ニップローラ2a,2bにおいて、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bと貼り合わせられ、更に図示した搬送方向に搬送されていく。
【0044】
一方、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bは、搬送方向調整ローラ3a下を通って、図示した搬送方向に搬送されつつ、横延伸部3における横延伸機(テンター延伸機)3bにより横延伸(テンター延伸等)され、貼り合わせ部2における接着剤塗布ローラ2c,2dにより接着剤が塗布された後、貼り合わせ・ニップローラ2a,2bにおいて、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bと接着剤を介して貼り合わせられ、更に図示した搬送方向に搬送されていく。
延伸・貼り合わせ機10において、延伸倍率や延伸温度等を、各ロールの回転速度、加熱手段等によって適宜調整することにより、目的のレターデーションを有する第1の態様における1/2波長板を効率的に製造することができる。
【0045】
前記加熱手段としては、延伸対象物を適切な温度に加温することができれば特に制限はなく、公知の加熱手段を総て好適に用いることができるが、例えば、熱風、加熱ロール等のほか、近赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ等の赤外線ヒータ、などの各種熱源が挙げられる。これらの加熱手段としては、加熱のみならず、温度を制御可能な装置を備えているのが好ましい。これらの加熱手段は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
縦延伸部1におけるローラ数としては、特に制限はなく、延伸対象物の材質、延伸速度等により適宜選択可能である。
【0047】
また、図2に示す実施態様においては、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aの延伸、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bの延伸、及び、貼り合わせを連続的に行っているが、本発明においては、これに何ら限定されることはなく、例えば、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aの延伸と、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bの延伸とを、別途独立して行ってもよい。また各フィルムの延伸と貼り合わせとを別途独立して行ってもよい。これらの場合には、延伸した各フィルムを一時的に巻き取っておく等によって、省スペースの点で有利となる。
【0048】
また、前述の実施形態において、接着方法としてドライラミネート法を採用する場合には、接着剤塗布ローラ2c,2d及び貼り合わせ・ニップローラ2a,2bの間に、接着剤を乾燥させる乾燥手段を設けるのが好ましい。該乾燥手段としては、特に制限はなく、公知の乾燥方法、例えば、温風乃至熱風による乾燥、脱湿風による乾燥、等が挙げられる。
【0049】
また、前記延伸温度としては、特に制限はないが、各層における基本材料(固有複屈折値が正の材料)の最低ガラス転移温度をTg(mim)としたとき、(Tg(min)−30)℃〜(Tg(min)+30)℃に設定するのが好ましい。
【0050】
第1の態様における1/2波長板の製造方法においては、効率的に前記遅相軸を直交させて積層するには、各延伸フィルムの搬送方向を一致させると共に延伸方向を直交させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第1の態様の1/2波長板は、固有複屈折値が正の同符号である2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を直交させることにより、2層以上の積層体の遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型1/2波長板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に1/2波長板の製造が行われる。また、製造された1/2波長板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0051】
−−第2の態様の1/2波長板−−
前記第2の態様の1/2波長板は、2種以上の固有複屈折値が負の材料を積層した態様である。第2の態様においては、前記第1の態様の1/2波長板と同様に、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに直交させることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0052】
なお、前記第2の態様において、固有複屈折値が負の3種類以上の材料を各々積層させる場合、これらの各層における分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸を互いに直交させるには、これら固有複屈折値が負の材料のうち、Re(λ)/λの値が近い材料を1種類の材料と見なすことにより、Re(λ)/λの値によって概ね2種類の材料に分類し、これらの2種類の材料同士が、その分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸が互いに直交するように各層を材料毎に積層するのが好ましい。
【0053】
前記第2の態様においては、このように1/2波長板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第2の態様の1/2波長板においては、共に固有複屈折値が負の異なる値である2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な位相差特性が与えられる。
【0054】
<第2の態様における材料>
前記第2の態様における材料としては、前記固有複屈折値が負である材料(以下、単に「負の材料」と称することがある。)のほか、所望により含有可能なその他の成分等が挙げられる。前記「固有複屈折値が負である材料」とは、分子が一軸性の秩序をもって配向した際に、光学的に負の一軸性を示す特性を有する材料をいう。
例えば、前記負の材料が樹脂である場合、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より小さくなる樹脂をいう。
前記負の材料としては、樹脂、ディスコティック液晶、ディスコティック液晶ポリマー等種々のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの中でも樹脂が好ましい。
【0055】
前記樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリスチレン系ポリマー(スチレン及び/又はスチレン誘導体と他のモノマーとの共重合体)、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、セルロースエステル系ポリマー(前記固有複屈折値が正であるものもある)、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記ポリスチレン系ポリマーとしては、スチレン及び/又はスチレン誘導体と、アクリルニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート及びブタジエンから選ばれる少なくとも1種との共重合体が好ましい。本発明においては、これらの中でも、ポリスチレン、ポリスチレン系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー及びポリメチルメタクリレート系ポリマーの中から選択される少なくとも1種が好ましく、これらの中でも、複屈折発現性が高いという観点から、ポリスチレン及びポリスチレン系ポリマーがより好ましく、耐熱性が高い点で、スチレン及び/又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。
【0057】
<第2の態様における1/2波長板の構成等>
前記第2の態様における1/2波長板の構成としては、前述したように、固有複屈折値が負で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第2の態様においても、前記第1の態様と同様、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、前記第1の態様と同様である。
前記第2の態様における1/2波長板の厚み、各層の厚み、接着層の厚みとしては各々、前記第1の態様と同様である。
【0058】
<第2の態様における1/2波長板の製造方法等>
前記1/2波長板の製造方法のうち、第2の態様における1/2波長板の製造方法では、固有複屈折値が負で異なる2種以上の材料を、延伸機を用いて、同方向に搬送しつつ延伸し、貼り合わせる。第2の態様における1/2波長板の製造方法においては、少なくとも1種の材料を搬送方向と同方向に延伸し、少なくとも他の1種の材料を搬送方向と直交する方向に延伸する。
【0059】
前記延伸の方法、貼り合わせの方法としては、第1の態様における方法と同様である。また前記固有複屈折値が負の材料としては、前述した通りであり、好ましい材料等も前述した通りである。
【0060】
前記第2の態様における1/2波長板の製造は、前記第1の態様における1/2波長板の製造方法と同様に、例えば、図2に概略的に示した延伸機10を用い、固有複屈折値が負の各材料を、各層における遅相軸が互いに直交するように縦延伸及び横延伸を行うことにより、効率的に行うことができる。
【0061】
第2の態様における1/2波長板の製造方法においては、前記遅相軸を直交させて積層するには、各層の搬送方向を一致させると共に延伸方向を直交させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第2の態様の1/2波長板は、固有複屈折値が負の同符号である2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を直交させることにより、2層以上の積層体における遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型1/2波長板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に1/2波長板の製造が行われる。また、製造された1/2波長板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0062】
−−第3の態様の1/2波長板−−
前記第3の態様の1/2波長板は、2種以上の固有複屈折値が正及び負の材料を積層した態様である。第3の態様においては、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに平行にすることにより、各層の遅相軸を互いに直交にするのが好ましい。
【0063】
前記第3の態様においては、延伸条件等を調整することによってこのように1/2波長板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第3の態様の1/2波長板においては、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散特性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な位相差特性が与えられる。
【0064】
<第3の態様における材料>
前記固有複屈折値が正である材料及び負である材料は前述した通りである。
【0065】
<第3の態様における1/2波長板の構成等>
前記第3の態様における1/2波長板の構成としては、前述したように、固有複屈折値が正及び負で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第3の態様においても、前記第1の態様と同様、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、前記第1の態様と同様である。
前記第3の態様における1/2波長板の厚み、各層の厚み、接着層の厚みとしては各々、前記第1の態様と同様である。
【0066】
<第3の態様における1/2波長板の製造方法等>
本発明における1/2波長板の製造方法のうち、第3の態様における1/2波長板の製造方法では、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、延伸機を用いて同方向に搬送しつつ、少なくとも、正の固有複屈折値を有する材料及び負の固有複屈折値を有する材料を、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸し、貼り合わせる。このように延伸し貼り合わせることにより、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)が平行になり、各層の遅相軸が互いに直交する。延伸機としては、2種以上の材料を、同方向に搬送・延伸可能な公知の延伸機が総て好適に用いられる。延伸の方法、貼り合わせの方法、及び、延伸温度としては、前記第1の態様で述べたのと同様である。
【0067】
第3の態様における1/2波長板の製造方法において、前記遅相軸を直交させて積層するには、各層の搬送方向を一致させると共に延伸方向を一致させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第3の態様の1/2波長板は、固有複屈折値が正及び負の2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を平行にすることにより、2層以上の積層体における遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型1/2波長板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に1/2波長板の製造が行われる。また、製造された1/2波長板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0068】
−−1/2波長板の諸物性等−−
前記1/2波長板における光弾性としては、20ブルースター以下が好ましく、10ブルースター以下がより好ましく、5ブルースター以下が更に好ましい。これは、以下の理由による。
前記1/2波長板は、本発明の偏光変換素子に用いられる際に貼合される。貼合の際にかかる応力には偏りがあり、中央部と比較して端部においてより大きな応力がかかる。その結果、レターデーションに違いが生じ、端部は白っぽく光抜けし、表示素子においては表示特性を低下させる場合がある。1/2波長板の光弾性が前記数値範囲内にあると、貼合の際に応力の偏りがあっても、部分的にレターデーション(Re)に差が生じるのを抑制できる。
【0069】
前記1/2波長板としては、優れた1/2波長板特性を満たす観点から、波長450nm、550nm及び650nmにおいて、(レターデーション(Re)/λ(波長))の値が0.4〜0.6が好ましく、0.46〜0.54がより好ましく、0.48〜0.52が更に好ましい。
【0070】
−−1/2波長板における材料の好ましい組合せ−−
前記1/2波長板においては、可視光全域における波長分散特性の観点から、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていれば特に制限はないが、下記諸物性を具備するのが更に好ましい。
【0071】
前記1/2波長板においては、波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)値の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、各層が有する特性が好適に相殺された結果のレターデーションを得る観点から、積層された各層が、少なくとも、(Re(450)/Re(550))の値の差が、互いに0.03以上である2種の層の組合せを含むのがより好ましい。また、互いに0.05以上である2種の層の組合せを含むのが更に好ましい。また、波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、特に好適な1/2波長板特性を得る観点から、積層された各層が、少なくとも(Re(450)/Re(550))の値が互いに異なる2種の層の組み合せを含み、該2種の層のうち、(Re(450)/Re(550))の値が小さい層におけるRe(550)の値が、(Re(450)/Re(550))の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きいのが好ましい。
以上のように組み合わされる層の、1/2波長板における位置としては、特に制限はなく、上下で互いに接して積層された層でもよく、互いに接していなくてもよい。
前記材料の好ましい組合せとしては、波長450nm、550nm、650nmにおけるレターデーション(Re)の値を、各々、Re(450)、Re(550)、Re(650)としたとき、これらがRe(450)<Re(550)<Re(650)を効果的に満たす観点から、固有複屈折値が正又は負の樹脂として、その固有屈折値の波長分散が小さい材料を選択し、且つ、他の固有複屈折値が正又は負の樹脂として、その固有複屈折値の波長分散が大きい材料を選択して組合せるのが特に好ましい。
【0072】
例えば、前記第1の態様において、前記固有複屈折値が正で、かつレターデーション(Re)が高い材料として、前記ノルボルネン系ポリマーを使用する場合、前記他の固有複屈折値が正の材料(レターデーション(Re)が小さい材料)としては、その固有複屈折値の波長分散が大きいものが好ましく、具体的には、波長450nm、波長550nmの固有複屈折値(Δn)を、各々、Δn(450)、Δn(550)としたとき、下記関係式を満たす樹脂から選ばれるのが好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)| ≧ 1.02
さらに、下記関係式を満たす樹脂から選ばれるのがより好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)| ≧ 1.05
なお、|Δn(450)/Δn(550)|の値は大きい程好ましいが、樹脂の場合、一般的には2.0以下である。
【0073】
より具体的に、前記(Re(450)/Re(550))の値が大きい材料としては、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー(例えば、ポリフェニレンサルファイドなど)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリアリルサルホン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、などが好ましく、特に、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、及びポリアリレート系ポリマーなどが好ましい。
また、前記(Re(450)/Re(550))の値が小さい材料としては、オレフィン系ポリマー及びシクロオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等)、セルロースエステル系ポリマー、などが好ましく、オレフィン系ポリマーの中でもノルボルネン系ポリマーとの組合せが特に好ましい。
【0074】
また前記1/2波長板においては、各層に用いる材料の質量比、延伸温度及び延伸倍率等を調整することで、前記Re(450)<Re(550)<Re(650)の特性を満たすことができる。
例えば、前記1/2波長板が前記第1の態様であって、固有複屈折値が正の材料(樹脂)として、ノルボルネン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、及び、ポリカーボネートを各々用いる場合には、短波長側が大きくレターデーション減少し、結果としてRe(450)<Re(550)<Re(650)の特性が得られる。延伸温度を前述の範囲内に制御することで、特に可視光波長全域にわたってRe(λ)/λを一定とし、広帯域にわたって均一な位相差特性を示す1/2波長板が得られる。
【0075】
以上のように、前記1/2波長板は、広帯域(可視光域)の光に対して均一な位相差特性を与えることができると共に、積層体であるにもかかわらず、簡易な工程によって効率的、かつ、低コストで製造可能である。また、前記1/2波長板は、原材料を選択する際に材料の相溶性を考慮する必要がなく、更に、固有複屈折値が正同士、負同士、及び正及び負の組合せ、など、いずれの組合せでも製造可能であるため材料の選択の幅が広く好ましい。更に、コストが安い等の点でも有利である。
【0076】
−−1/2波長板の実施形態等−−
前記1/2波長板の実施形態の一例を図3に示す。
この1/2波長板15は、前記第1の態様の1/2波長板であり、固有複屈折値が正の樹脂からなる層101と、該樹脂とは異なる正の固有複屈折値を有する樹脂からなる層102とが積層されている。
前記層101及び層102は、各々複屈折を有し、その遅相軸を互いに直交させて積層されている。即ち、層101に含有される、前記固有複屈折値が正の樹脂における分子鎖の配向方向と、層102に含有される、前記固有複屈折値が正の樹脂における分子鎖の配向方向とは直交している。1/2波長板15のレターデーションは、層101及び層102における各レターデーションの和となるので、層101と層102とを遅相軸を互いに直交させて積層することによって、1/2波長板15の短波長側のレターデーションを小さく、且つ長波長側のレターデーションを大きくすることができる。その結果、1/2波長板15の波長λにおけるレターデーションRe(λ)と波長との比Re(λ)/λを、可視光全域において略一定にすることができる。
【0077】
なお、前記実施形態においては、固有複屈折値が正の異なる2種の樹脂からなる層を、各々1層有する構成の1/2波長板の具体例を示したが、前記1/2波長板はこれに限定されることはなく、更に、3層、4層と、3層以上が積層された構成であってもよい。3層以上の多層が積層された構成とすることにより、1/2波長板の物理的特性がより改良され好ましい。
【0078】
以上説明したように、本発明の1/2波長板は、簡易な工程により効率的に、連続的に、低コストで製造可能であり、固有複屈折値の正負に関わらず原材料を選択可能であるため製造時の原材料の選択性が大きく、且つ、可視光全域の入射光に対して広帯域で均一な位相差特性を与える。
【0079】
−本発明の偏光変換素子の好ましい態様−
本発明の前記偏光変換素子は、前記偏光変換部材によって偏光方向が一致された直線偏光が各々出射する領域を、同一平面内で互いに隣合って配置してなる出射面を備えていてもよい。該出射面を備えていることにより、偏光の振動方向が一致した直線偏光を同一方向に出射させることができ、光(特に自然光)をより有効利用できる。
前記出射面は、例えば、短冊状の旋光層を一定間隔で、同一平面内に互いに隣合って配置して形成してもよい。
【0080】
以上説明した本発明の偏光変換素子は、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ、低コストで製造可能である広帯域の1/2波長板を用いているため、低コストで効率的に製造可能で、広帯域において高性能である。
【0081】
(液晶プロジェクター用投光装置)
本発明の液晶プロジェクター用投光装置は、本発明の前記偏光変換素子と、該偏光変換素子に光を入射する照射手段と、を備え、必要に応じてその他の部材を有する。
【0082】
以下、本発明の液晶プロジェクター用投光装置の一例を、図4を用いて説明する。本発明の液晶プロジェクター用投光装置は、前記本発明の偏光変換素子を液晶プロジェクターにおけるPS変換素子に適用したものである。
なお、前記偏光変換素子においては、前記偏光分離部材として偏光ビームスプリッタ14を用い、前記偏光変換部材として前述した1/2波長板を用いている。
【0083】
図4に示すように、本発明の液晶プロジェクター用投光装置が適用される液晶プロジェクターの光学部50は、光源12を備えており、該光源12の出射側には、1/2波長板15と偏光ビームスプリッタ14(詳細は後述)とを有するPS変換素子13、及びハーフミラー16がこの順に設置されている。ハーフミラー16の透過側にはハーフミラー18が設置され、ハーフミラー18の反射側にはR色を担当する画像形成素子20が設置されている。ハーフミラー16の反射側にはハーフミラー24が設置され、ハーフミラー24の反射側にはG色を担当する画像形成素子26が設置されている。ハーフミラー24の透過側にはミラー28、30がこの順に設置され、ミラー30の反射側にはB色を担当する画像形成素子32が設置されている。画像形成素子20,26,32の出射側にはRGBの各色の光を合成して投影光学系34へ出射するためのプリズム22が設けられている。
画像形成素子20においては、光の入射側からガラス20G、1/2波長板20λ、偏光板20P、液晶セル20Lがこの順に積層されている。画像形成素子26においては、光の入射側からガラス26G、1/2波長板26λ、偏光板26P、PS変換用の1/2波長板26λ、液晶セル26Lがこの順に積層されている。画像形成素子32においては、光の入射側からガラス32G、1/2波長板32λ、偏光板32P、液晶セル32Lがこの順に積層されている。
【0084】
前記PS変換素子13は、図5に示すように、偏光ビームスプリッタ14上に1/2波長板15が取り付けられており、図4に示すように光源12側から、偏光ビームスプリッタ14、1/2波長板15の順に構成されている。また偏光ビームスプリッタ14においては、図6に示すように、厚みWのガラス板14Aが複数枚積層されており、所定角度θ方向に、厚みHに、カットされている。
【0085】
前記偏光ビームスプリッタ14には、光源12からの光iが入射される。図5の例では、ガラス14bに入射される。光iの内のP偏光ipは、偏光ビームスプリッタ14のガラス14bをそのまま通過し、積層されたガラス14aを通過する。一方、S偏光isは、ガラス14bと積層されたガラス14aの界面で反射し、更に、次のガラスとの界面でも反射を繰り返し、ガラス14bからS偏光isとして出射される。即ち、偏光ビームスプリッタ14からは、長尺状のP偏光ip及びS偏光isが出射される。
【0086】
なお、ここでは、偏光ビームスプリッタ14は、誘電体多層膜などがコートされたガラス板14Aにより構成されているが、これに限定されるものではない。
【0087】
前記偏光ビームスプリッタ14においては、図5に示すように、光の出射側に、1/2波長板15が設けられているが、1/2波長板15は、1/2波長板として機能する有効領域15Aと、そのまま光を通過させる通過領域15Bとから構成されており、ガラス14aの光の出射側に、1/2波長板として機能する有効領域15Aが設けられ、1/2波長板15の有効領域15AでP偏光ipがS偏光isに変換される。
【0088】
従って、ガラス14aからのP偏光ipは、1/2波長板15の有効領域15AでS偏光isに変換されて出射され、ガラス14bからのS偏光isは、1/2波長板15の通過領域15Bをそのまま通過して出射される。
【0089】
このとき、有効領域15Aと通過領域15Bとは、偏光ビームスプリッタ14から出射される光束形状に対応して一定幅にかつ交互に配置されており、出射面を1/2波長板の有効領域15Aと通過領域15Bとを交互に配置して構成しているので、偏光方向が一致した(ここではS偏光に一致した)同一方向に進行する直線偏光が出射面から得られる。即ち、ガラス14a、14bからの光は、1/2波長板15を介在させることで、共にS偏光isとして取り出される。このガラス14a、14bは繰り返されるので、光は、総てS偏光に変換され、光の50%ロスがなく有効に利用可能となる。
【0090】
前記1/2波長板15は、波長450nm、550nm及び650nmにおいて、直線偏光の旋光度が90°±7°である。従って、青、緑及び赤に各々対応する波長の直線偏光のいずれについても、その偏光面を約90°変換することができるので、画像変換素子20、26、32の各々に入射する光は、総てS偏光に変換され、光の50%ロスがなく有効に利用される。その結果、液晶用プロジェクターにおいて、明るい多色投影画像が形成される。
【0091】
以上説明した本発明の液晶プロジェクター用投光装置は、本発明の前記偏光変換素子を備えているため、低コストで効率的に製造可能であり、かつ広帯域において高性能である。
【0092】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
−偏光ビームスプリッタの作製−
偏光ビームスプリッタは、以下のようにして得た。即ち、厚み2.1mmのガラス板14Aを16枚積層し、角度45度方向にカットして、図6に示すような、厚みHが3.5mmの偏光ビームスプリッタ14を得た。
【0094】
−1/2波長板の作製−
図2に示したような延伸・貼り合わせ機10を用いて、以下のようにして1/2波長板15を作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を延伸倍率1.1倍、延伸温度135℃で縦延伸し、厚み92μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550)で表す。)は341.6nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が477.1nm、厚み60μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み155μmの積層フィルムを得た。なお、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合せ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=122.8nm、Re(550)=145.7nm、Re(650)=160.1nmであり、広帯域1/2波長板としての特性を有した積層フィルムが得られた。Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。また、得られた積層フィルムについて光弾性値を日本分光製「M−150」を用いて測定したところ、18.7ブルースターであった。
【0095】
−偏光変換素子の作製−
次に、プリズムアレイ、偏光ビームスプリッタ14、及び1/2波長板15を、図4に示した順序で積層した。更にその上に、透過軸がストライプに平行になるように偏光子を配置し、光の透過率を測定した結果、良好な特性が得られた。
【0096】
(実施例2)
−偏光ビームスプリッタの作製−
実施例1と同様にしてビームスプリッタを作製した。
【0097】
−1/2波長板の作製−
図2に示したような延伸・貼り合わせ機10を用いて、以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を延伸倍率1.1倍、延伸温度140℃で縦延伸し、厚み92μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550)で表す。)は316.4nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み142μmの積層フィルムを得た。
なお、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=121.1nm、Re(550)=147.0nm、Re(650)=160.3nmであり、広帯域λ/2フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。また、得られた積層フィルムについて光弾性率を日本分光製「M−150」を用いて測定したところ、17.8ブルースターであった。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0098】
−偏光変化素子の作製−
次に、プリズムアレイ、偏光ビームスプリッタ14、及び1/2波長板15を、図4に示した順序で積層した。更にその上に、透過軸がストライプに平行になるように偏光子を配置し、光の透過率を測定した結果、良好な特性が得られた。
【0099】
(実施例3)
−偏光ビームスプリッタの作製−
実施例1と同様にしてビームスプリッタを作製した。
−1/2波長板の作製−
図2に示したような延伸・貼り合わせ機延伸機10を用いて、以下のようにして1/2波長板を作製した。
先ず、ポリエチレンテレフタレートを290℃にてTダイにより溶融押し出しし、30℃のキャスティングドラム上にて冷却固化し、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:45μm)を作製した。該未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、延伸倍率1.15倍、延伸温度90℃で縦延伸し、厚み40μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550))は303.9nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み90μmの積層フィルムを得た。なお、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=124.4nm、Re(550)=154.1nm、Re(650)=165.1nmであり、広帯域λ/2フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。また、得られた積層フィルムについて光弾性率を日本分光製「M−150」を用いて測定したところ、8.7ブルースターであった。
Re(450)、Re(550)、Re(650)及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0100】
−偏光変化素子の作製−
次に、プリズムアレイ、偏光ビームスプリッタ14、及び1/2波長板15を、図4に示した順序で積層した。更にその上に、透過軸がストライプに平行になるように偏光子を配置し、光の透過率を測定した結果、良好な特性が得られた。
【0101】
(実施例4)
−偏光ビームスプリッタの作製−
実施例1と同様にしてビームスプリッタを作製した。
【0102】
−1/2波長板の作製−
図2に示したような延伸・貼り合わせ機10を用いて、以下のようにして1/2波長板を作製した。
先ず、ポリエチレンテレフタレートを290℃にてTダイにより溶融押し出しし、30℃のキャスティングドラム上にて冷却固化し、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:400μm)を作製した。該未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、延伸温度90℃で、縦延伸(延伸倍率:3.3倍)し、続いて延伸温度120℃で横延伸(テンター延伸、延伸倍率:3.3倍)し、厚み40μmの二軸延伸フィルムを得た。この二軸延伸フィルムは、主に縦方向に配向が進んでおり、波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550))は309.2nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み90μmの積層フィルムを得た。
なお、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=120.3nm、Re(550)=148.3nm、Re(650)=162.8nmであり、広帯域λ/2フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。また、得られた積層フィルムについて光弾性率を日本分光製「M−150」を用いて測定したところ、17.8ブルースターであった。
Re(450)、Re(550)、Re(650)及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
実施例4より、二軸に延伸して積層させても、縦又は横方向のいずれか一方に主に配向が進んでいる場合には、縦又は横の一軸に延伸した場合と同様の優れた特性が得られることが解った。
【0103】
−偏光変換素子の作製−
次に、プリズムアレイ、偏光ビームスプリッタ14、及び1/2波長板15を、図4に示した順序で積層した。更にその上に、透過軸がストライプに平行になるように偏光子を配置し、光の透過率を測定した結果、良好な特性が得られた。
【0104】
(実施例5)
−偏光ビームスプリッタの作製−
実施例1と同様にしてビームスプリッタを作製した。
【0105】
−1/2波長板の作製−
図2に示したような延伸・貼り合わせ機10を用いて、以下のようにして1/2波長板を作製した。
先ず、未延伸ポリスチレン(厚み:100μm)を延伸倍率2.1倍、延伸温度105℃で縦延伸し、厚み62μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション(Re(550))は453.2nmであった。
同時に、ポリメチレンアクリレートフィルム(厚み:100μm)を、同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.4倍、延伸温度110℃で横延伸(テンター延伸)し、厚み58μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション(Re(550))は602.8nmであった。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m2)を用いて貼り合わせ、厚み123μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=121.3nm、Re(550)=149.8nm、Re(650)=169.7nmであり、広帯域λ/2フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。また、得られた積層フィルムについて光弾性率を日本分光製「M−150」を用いて測定したところ、4.8ブルースターであった。
Re(450)、Re(550)及びRe(650)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0106】
−偏光変換素子の作製−
次に、プリズムアレイ、偏光ビームスプリッタ14、及び1/2波長板15を、図4に示した順序で積層した。更にその上に、透過軸がストライプに平行になるように偏光子を配置し、光の透過率を測定した結果、良好な特性が得られた。
【0107】
【表1】
【0108】
【発明の効果】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決することができ、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与え、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ、低コストで製造可能である広帯域の1/2波長板を用い、低コストで効率的に製造可能で、広帯域において高性能な偏光変換素子、及び該偏光変換素子を備え、低コストで効率的に製造可能で、広帯域において高性能な液晶プロジェクター用投光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ドライラミネート法を具体的に説明するための説明図である。
【図2】図2は、本発明の1/2波長板の製造方法の一例を、概略的に説明するための図である。
【図3】図3は、本発明の1/2波長板の一実施形態を表す概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態にかかる液晶プロジェクターの光学部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態にかかるPS変換素子における偏光状態を示す線図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態にかかるPS変換素子の構成を示す線図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・縦延伸部
1a,1b・・・・・縦延伸低速ローラ
1c,1d・・・・・縦延伸高速ローラ
2・・・・・・・・・貼り合わせ部
2a,2b・・・・・貼り合わせ・ニップローラ
2c,2d・・・・・接着剤塗布ローラ
3・・・・・・・・・横延伸部
3a・・・・・・・・搬送方向調整ローラ
3b・・・・・・・・横延伸機
10・・・延伸・貼り合わせ機
12・・・光源
13・・・PS変換素子
14・・・偏光ビームスピリッタ
15・・・1/2波長板
15A・・・有効領域
15B・・・通過領域
16、24・・・ハーフミラー
20、26、32・・・画像形成素子
28、30・・・ミラー
50・・・液晶プロジェクター
101・・・固有複屈折値が正の樹脂からなる層
102・・・固有複屈折値が正の樹脂からなる層
200・・・ラミネート機
201・・・加熱乾燥器
202・・・接着剤収容器
203・・・第一フィルム送り出し機
204・・・第二フィルム送り出し機
205・・・巻き取り機
206a,206b・・・接着剤塗布ローラ
207a,207b・・・搬送ローラ
208a・・・第一の延伸フィルム
208b・・・第二の延伸フィルム
209・・・・ドクターブレード
210a・・・貼り合わせ・ニップローラ
210b・・・貼り合わせ・ニップローラ
Claims (18)
- 入射した光を互いに直交する2方向の直線偏光に分離する偏光分離部材と、
1/2波長板を含み、分離された前記2方向の直線偏光のうち、1方向の直線偏光における偏光方向を該1/2波長板によって90°変換することにより、分離された直線偏光における偏光方向を一致させる偏光変換部材と、を備えた偏光変換素子であって、
前記1/2波長板が、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たすことを特徴とする偏光変換素子。 - 2種以上の材料における固有複屈折値が正であり、各層における遅相軸が互いに直交した請求項1に記載の偏光変換素子。
- 2種以上の材料における固有複屈折値が負であり、各層における遅相軸が互いに直交した請求項1に記載の偏光変換素子。
- 2種以上の材料における固有複屈折値が正及び負であり、各層における遅相軸が互いに直交した請求項1に記載の偏光変換素子。
- 各層における分子鎖の配向軸が互いに直交した請求項1から3のいずれかに記載の偏光変換素子。
- 各層における分子鎖の配向軸が互いに平行である請求項1又は4に記載の偏光変換素子。
- 1/2波長板が、更に接着層を有する請求項1から6のいずれかに記載の偏光変換素子。
- 材料が樹脂である請求項1から7のいずれかに記載の偏光変換素子。
- 材料のうちの少なくとも1種が、ノルボルネン系ポリマーである請求項1から8のいずれかに記載の偏光変換素子。
- 材料のうちの少なくとも1種が、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、及び、ポリアリーレン系ポリマーの少なくともいずれかである請求項1から9のいずれかに記載の偏光変換素子。
- 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、1/2波長板における各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値の差が互いに0.03以上である2種の層を含む請求項1から10のいずれかに記載の偏光変換素子。
- 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、1/2波長板における各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値が互いに異なる2種の層を含み、該2種の層のうち、Re(450)/Re(550)の値が小さい層におけるRe(550)の値が、Re(450)/Re(550)の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きい請求項1から11のいずれかに記載の偏光変換素子。
- 1/2波長板の光弾性が20ブルースター以下である請求項9に記載の偏光変換素子。
- 1/2波長板において、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーションRe(λ)と波長λとが、各々下記関係式を満たす請求項1から13のいずれかに記載の偏光変換素子。
0.4≦Re(λ)/λ≦0.6 - 1/2波長板が、固有複屈折値が正の2種以上の材料を、延伸機を用いて同方向に搬送しつつ、少なくとも1種の材料を搬送方向と同方向に、少なくとも他の1種の材料を搬送方向と直交する方向に延伸し、貼り合わせて得られた請求項1又は2に記載の偏光変換素子
- 1/2波長板が、固有複屈折値が負の2種以上の材料を、延伸機を用いて同方向に搬送しつつ、少なくとも1種の材料を搬送方向と同方向に、少なくとも他の1種の材料を搬送方向と直交する方向に延伸し、貼り合わせて得られた請求項1又は3に記載の偏光変換素子。
- 1/2波長板が、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、延伸機を用いて同方向に搬送しつつ、少なくとも、正の固有複屈折値を有する材料及び負の固有複屈折値を有する材料を、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸し、貼り合わせて得られた請求項1又は4に記載の偏光変換素子。
- 請求項1から17のいずれかに記載の偏光変換素子と、該偏光変換素子に光を入射する照射手段と、を少なくとも備えたことを特徴とする液晶プロジェクター用投光装置。
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- 2002-11-13 JP JP2002329741A patent/JP2004163680A/ja active Pending
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