JP2004131770A - 金属捕集材からの金属溶離方法 - Google Patents

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瀬古 典明
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山崎 和彦
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Abstract

【課題】金属捕集材の性能を劣化せずに効率よく金属を溶離する方法を提供する。
【解決手段】金属を捕集した捕集材に有機錯化剤を含む溶離液を接触させて金属錯体を溶離させた後、この金属錯体を含む溶離液を吸着材に接触させて金属錯体を吸着させ、金属錯体濃度が低下した溶離液を上記捕集材に接触させて循環使用することを特徴とし、あるいは溶離液に金属錯体を溶離させた後、この溶離液を透析して有機錯化剤を含む溶液を分離して金属錯体を濃縮させ、分離した有機錯化剤を含む溶液を溶離液として使用する一方、濃縮した金属錯体を含む溶液を吸着材に接触させて金属錯体を吸着させ、金属錯体濃度が低下した溶液を透析工程に戻して使用することを特徴とする金属溶離方法。
【選択図】  図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属を強固に吸着した金属捕集材から捕集された金属を効率よく溶離する技術に関する。より詳しくは、捕集材の性能劣化を引き起こさずに繰り返し使用によっても安定に金属を溶離することができる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、キレート樹脂などを用いた金属捕集材においては、捕集材中の官能基と捕集金属が結びついた極めて安定な金属キレートが形成される。このような金属捕集材に取り込まれた金属を溶離する場合、従来の技術では、金属捕集材を例えば高濃度の鉱酸に接触させて金属イオンなどの形で離脱させている(特開2000−313925等)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
金属捕集材に高濃度の鉱酸を通液すると、捕集材中の官能基が酸化等の化学反応によって変質し、捕集性能が劣化するなどの問題がある。これは金属捕集材を繰り返し利用する場合に運転コストに係わる重大な問題となる。特に金属捕集材中の金属濃度が希薄な場合に、高い溶離率を得るためには高濃度の鉱酸を用いる必要があるが、このような使用条件下では金属捕集材の性能劣化が著しくなる。また、濃度が低くても官能基の種類によっては鉱酸等による劣化を比較的受けやすいものがあり、このような金属捕集材についても性能劣化を引き起こさずに金属を溶離することは困難である。
【0004】
本発明は、金属捕集材から金属を溶離する技術において、従来の上記問題を解決したものであり、捕集材を繰り返し使用する場合でも、その性能劣化を引き起こさずに安定に効率よく金属を溶離することができる技術を提供する。
【0005】
【課題を解決する手段】
本発明は、(1)金属を捕集した捕集材に有機錯化剤を含む溶離液を接触させて金属錯体を溶離させた後、この金属錯体を含む溶離液を吸着材に接触させて金属錯体を吸着させ、金属錯体濃度が低下した溶離液を上記捕集材に接触させて循環使用することを特徴とする金属捕集材からの金属溶離方法に関する。従来の塩酸や硫酸に代えて、有機酸からなる錯化剤を用いて金属錯体を形成させることによって捕集材を劣化させずに金属を溶離させる。さらにこの溶離液を吸着材に接触させて金属錯体を吸着させ、金属錯体濃度を低下させることによって溶離液を上記捕集材に接触させて循環使用できるので、高い溶離効果と優れた経済性を有することができる。
【0006】
本発明の上記金属溶離方法は、(2)有機錯化剤として、シュウ酸、クエン酸、ギ酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸、フタル酸、プロピオン酸、、エチレンジアミン4酢酸、カテコール、カテコールスルホン酸類、スルホサリチル酸、クロモトローブ酸、キノリノール類、キシレノールオレンジを用いる方法、(3)吸着材として金属錯体を吸着するイオン交換体を用いる方法を含む。これらの有機酸を溶離液として用いることによって捕集材から金属錯体を効率よく溶離させることができる。さらに金属錯体を含む溶離液をイオン交換体に接触させて金属錯体を吸着させることによって液中の金属錯体濃度が低下し、これを再び溶離液として用いることができる。
【0007】
さらに本発明は、(4)金属を捕集した捕集材に有機錯化剤を含む溶離液を接触させて金属錯体を溶離させた後、この金属錯体を含む溶離液を透析して有機錯化剤を含む溶液を分離して金属錯体を濃縮させ、分離した有機錯化剤を含む溶液を溶離液として使用する一方、濃縮した金属錯体を含む溶液を吸着材に接触させて金属錯体を吸着させ、金属錯体濃度が低下した溶液を透析工程に戻して使用することを特徴とする金属捕集材からの金属溶離方法に関する。捕集材から金属錯体を溶離させた後に、この金属錯体を含む溶離液を透析して金属錯体を濃縮し、この高濃度の金属錯体をイオン交換体に吸着させることによって金属錯体の回収効率を高めることができる。また、透析工程で分離した有機酸溶液は金属錯体濃度が大幅に低下しているので、これを捕集材の溶離工程に戻し、溶離液として利用することができる。一方、イオン交換体の接触部分から抜き出した溶液は金属錯体濃度が低いのでこれを透析工程に戻して利用することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
〔溶離工程〕
本発明の方法は、第一工程(溶離工程)として、金属を捕集した捕集材に有機錯化剤を含む溶離液を接触させて金属錯体を溶離させる。捕集された金属と強固に配位する有機錯化剤を含む水溶液を溶離液として用い、これを金属捕集材に接触させて金属錯体として溶離させることにより、従来の鉱酸を用いた方法よりも穏和な条件下で捕集材中の金属を離脱させることができる。従って、捕集材を損傷せず、捕集性能の劣化を防止することができる。
【0009】
有機錯化剤としては、シュウ酸、クエン酸、ギ酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸、フタル酸、プロピオン酸、、エチレンジアミン4酢酸、カテコール、カテコールスルホン酸類、スルホサリチル酸、クロモトローブ酸、キノリノール類、キシレノー ルオレンジ等の有機酸を用いることができる。なお、十分に高い溶解度を得るには、形成した金属錯体が高い水溶性を持つことが必要である。スルホン基などの顕著な親水性官能基を錯形成に関係せずに有するものを用いれば溶解度は著しく高くなる。
【0010】
〔イオン吸着工程〕
本発明の回収方法は、第二工程(イオン吸着工程)として、金属錯体を含む溶離液をイオン交換樹脂、例えばキレート樹脂などの吸着材に接触させて金属錯体を吸着させ、金属錯体濃度が低下した溶離液を上記捕集材に接触させて循環使用する。従って高い溶離効果と優れた経済性を有することができる。一般に、溶離率を高めるに金属錯体を含まない溶離液を連続的に通液する場合があるが、この方法では多量の溶離液を必要とする。また、捕集材の形状等によっては溶液と捕集材の接触効率が劣るため、十分な溶離率を得るには大量の溶離液を要する場合もある。本発明の方法は、金属錯体を含む溶離液を吸着材に接触して金属錯体濃度を低下させることによって、捕集材と吸着材との間で溶離液の循環使用を可能にしており、コストを下げながら限られた量の溶離液を繰り返し利用することによって高い溶離効果と優れた経済性を達成している。
【0011】
上記第一工程(溶離工程)と第二工程(イオン吸着工程)の概略を図1に示す。図示するように、溶離液は金属捕集材とイオン交換樹脂との間で循環使用される。すなわち、錯化剤である有機酸を含む溶離液は金属捕集材に通液され、金属錯体を溶離した後にイオン交換樹脂に通液され、液中の金属錯体がイオン交換樹脂に吸着される。このイオン交換樹脂との接触部から抜き出された溶液は溶離工程に戻され、溶離液として再び使用される。一方、イオン交換樹脂に吸着された金属錯体は第三工程(キレート吸着工程)に送られる。
【0012】
〔透析工程〕
本発明の回収方法は、第一工程(溶離工程)と第二工程(イオン吸着工程)の間に透析工程を有する方法を含む。この態様を図2に示す。図示するように、捕集材に有機錯化剤を含む溶離液を接触させて金属錯体を溶離させた後、この金属錯体を含む溶離液を透析して有機錯化剤を含む溶液を分離して金属錯体を濃縮させる。透析方法は限定されない。濃度差を駆動力とする拡散透析、電位差を駆動力とする電解透析などが知られているが、何れの方法も適用することができる。
【0013】
透析工程で濃縮した金属錯体をイオン交換樹脂に吸着させることによって金属錯体の回収効率を高めることができる。また、透析工程で分離した有機酸溶液は金属錯体濃度が大幅に低下しているので、これを溶離工程に戻し溶離液として利用する。さらに、イオン交換樹脂との接触部分から抜き出した溶液は金属錯体濃度が低いのでこれを透析工程に戻して使用する。また、この方法によれば、金属錯体を形成しない遊離の有機酸は大部分が透析によって分離されるので、イオン交換樹脂に送られる溶液中の遊離の有機酸濃度を低減することができる。これによって一般にイオン交換樹脂中の金属錯体濃度が向上する。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に示す。
〔実施例1〕
ウランおよびバナジウムをそれぞれ捕集材1kgあたり0.5g吸着したアミドキシム基重合不織布型捕集材25cmを、表1に示す錯化剤水溶液50ml中に24時間浸漬し、恒温槽中で振とうした。各錯化剤についてウランおよびバナジウムの溶離率を表1に示す。また、比較として塩酸を用いて溶離したときの溶離率を併せて示した。塩酸はウランの溶離率は高いがバナジウムの溶離率は低い。一方、表示する有機酸はウランとバナジウムの何れに対して高い溶離率を示す。なお、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、リンゴ酸、カテコールは塩酸よりは溶離率が低いが、塩酸よりも穏和な条件で溶離することができる利点がある。また、マロン酸および酒石酸はウランに対して選択的な溶離性を示し、カテコールはバナジウムに対して選択的な溶離性を示すので、ウランとバナジウムを選択溶離することができる。
【0015】
【表1】
Figure 2004131770
【0016】
〔実施例2〕
アミドキシム基重合不織布型捕集材1cmを、80℃の2.5wt%KOH50mLに1時間浸漬した後に、30℃の1gU/L、0.1MKHCO50mLに1時間浸漬してウランを吸着させた。その後、表2に示す溶離液を用いて1時間30℃の条件でウランを溶離した。以上の操作を繰り返した際の、吸着操作終了時の単位重量あたりの捕集材中ウラン濃度と、溶離回数との関係を表2に示した。この結果から明らかなように、溶離液として塩酸を用いた場合には処理回数が多くなると捕集材の劣化によって飽和吸着量が大幅に減少するが、シュウ酸やスルホサリチル酸を用いたものは飽和吸着量の減少が塩酸の場合より少なく、溶離操作による捕集材の劣化に伴う吸着量の減少が抑制された。
【0017】
【表2】
Figure 2004131770
【0018】
〔実施例3〕
ウランとバナジウムを吸着したアミドキシム基重合不織布型捕集材(280mm×155mm×l16枚/カセット)を装荷したカセットを、50℃のシュウ酸1M20L中に浸漬した。溶液は槽内を循環させて捕集材と十分に接触させた。次いで溶液の一部を1.5L/minの流量でキレート樹脂1L(三菱化学株式会社製CR・20)に通液してイオン交換を行わせ、液中の金属錯体を吸着させた。この排出液を再び捕集材の槽内に戻して循環使用した場合(循環操作)と、この操作を行わなかった場合(回分操作)の溶離率を表3に示す。溶離液をイオン交換して循環使用したものは溶離率が著しく向上した。
【0019】
【表3】
Figure 2004131770
【0020】
〔実施例4〕
実施例3と同一の捕集材を同様に50℃のシュウ酸1M中に浸漬した。溶液は槽内を循環させて捕集材と十分に接触させた。次いで溶液の一部を1.5L/minの流量で拡散透析装置に通液し、遊離の有機酸の大半を回収した。拡散透析装置を通過した後の溶液中の遊離の有機酸濃度は最大で通過前の10%程度まで低下した。これを実施例3と同一のキレート樹脂中に通液し、主として金属錯体を吸着させた。この方法によって得られた溶離率を表4に示す。実施例3に比べて溶離率がさらに向上している。
【0021】
【表4】
Figure 2004131770
【0022】
【発明の効果】
本発明の溶離方法によれば、劣化しやすいキレート基を有する金属捕集材の繰り返し利用回数が増すことができる。また、溶離液の使用量を低減することができる。さらに、吸着材を再生して使用することができるので廃棄物の発生量が少ない。有機酸等の錯化剤を含む溶離液を透析して金属錯体を濃縮することによって比較的少ない試薬使用量で金属イオンを効率よく分離することができる。従って、金属溶離プロセスの処理コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶離工程とイオン吸着工程を示す工程図
【図2】本発明の溶離工程、イオン吸着工程、透析工程を示す工程図

Claims (4)

  1. 金属を捕集した捕集材に有機錯化剤を含む溶離液を接触させて金属錯体を溶離させた後、この金属錯体を含む溶離液を吸着材に接触させて金属錯体を吸着させ、金属錯体濃度が低下した溶離液を上記捕集材に接触させて循環使用することを特徴とする金属捕集材からの金属溶離方法。
  2. 有機錯化剤として、シュウ酸、クエン酸、ギ酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸、フタル酸、プロピオン酸、、エチレンジアミン4酢酸、カテコール、カテコールスルホン酸類、スルホサリチル酸、クロモトローブ酸、キノリノール類、キシレノールオレンジを用いる請求項1の金属溶離方法。
  3. 吸着材として金属錯体を吸着するイオン交換体を用いる請求項1または2の金属溶離方法。
  4. 金属を捕集した捕集材に有機錯化剤を含む溶離液を接触させて金属錯体を溶離させた後、この金属錯体を含む溶離液を透析して有機錯化剤を含む溶液を分離して金属錯体を濃縮させ、分離した有機錯化剤を含む溶液を溶離液として使用する一方、濃縮した金属錯体を含む溶液を吸着材に接触させて金属錯体を吸着させ、金属錯体濃度が低下した溶液を透析工程に戻して使用することを特徴とする金属捕集材からの金属溶離方法。
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