JP2004128847A - アンテナアレイを備えた携帯通信装置及びその方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境が変化しても有効に動作できる移動通信用のアンテナアレイを備える携帯情報端末装置を提供する。
【解決手段】表示部1aとキーパッド部1bを含む携帯情報端末装置1。表示部1bは4つのアンテナ素子21乃至24を含むアンテナアレイを備える。アンテナアレイは少なくとも2つのアンテナ素子を用いて信号を受信し、受信信号の到達方向を推定する。推定された到達方向に基づいてアンテナアレイの指向性パターンが設定される。
【選択図】 図2
【解決手段】表示部1aとキーパッド部1bを含む携帯情報端末装置1。表示部1bは4つのアンテナ素子21乃至24を含むアンテナアレイを備える。アンテナアレイは少なくとも2つのアンテナ素子を用いて信号を受信し、受信信号の到達方向を推定する。推定された到達方向に基づいてアンテナアレイの指向性パターンが設定される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は通信用携帯情報端末に関し、特に無線通信に使用する携帯情報端末のアンテナアレイおよびそのアンテナアレイの利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のセルラー無線システムはその移動携帯情報端末に無指向性アンテナを使用するが、これは特定のセルにサービス提供する単一基地局への良好なリンクが存在する場合、基地局へのアクセス容易性の点で有利と考えられるからである。最新のセルラーシステムの容量を制約しその性能に影響を及ぼす最も重要な要因の一つは多重アクセス干渉(MAI: multi access interference)である。このMAI成分を解消する方法の一つは適応型アンテナアレイと干渉キャンセラを使用することである。
【0003】
適応型アレイアンテナに使用される適応ビーム形成技術はそれぞれの利用者に対してより高い信号対干渉+雑音比(SINR:signal to interference plus noiseratio)を得る助けとなる。適応ビーム形成器用の重みベクトルを見出す幾つかのアルゴリズムが提案されている(Liberti, J.C. and T.S. Rappaport, ”Smart Antenna for Wireless Communications”: IS−95およびThird Generation CDMA Applications, Prentice Hall, 1999; Kang, Y.G., H−R, Park, B−Y. Ahn andK−J. Lee, ”The performance comparison of beamforming algorithms for CDMA system”, in Proceedings of ITC−CSCC, vol. 2, July 1998, pp.1505−1508)。
【0004】
無線通信チャンネルの角度特性がスマートアンテナシステムの設計選択および性能決定に重要でなる(Liberti, J.C. and T.S. Rappaport, ”Smart Antenna for Wireless Communications”; IS−95 and Third Generation CDMA Applications, Prentice Hall, 1999)。
【0005】
無線チャンネルの時間変化特性はそのチャンネル内における対象物の移動により生じる。セルラーシステムにおける到達信号方向(DOA: direction of arrival)の分布はセル内の加入者の分布と各加入者周辺の拡散要素の分布とに依存すること (Rooyen, P. v., M. Loetter, D. v. Wyk, ”Space−Time Processing for CDMA Mobile Communications”, Kluwer Academic Publishers, 2000)。
【0006】
完全適応型ビーム形成法を用いれば各利用者の方向に指向されたビームを送出しあるいは特定方向から到達する信号の直接受信が可能になり、よって無指向型方法に対してリンク経済性が改善される。目標受信部に指向された信号を最大化することに加えて、また前記システムは他の信号源からの干渉を減衰する。そのアレイがヌルステアリング可能に設計されていれば共用チャンネル干渉あるいはチャンネル間干渉を効率的に解消できる。無駄なエネルギを放射する代わりに特定の利用者に向けてビームを制御、送出させることにより、前記システムは使用可能な無線帯域のより効率的でノイズの少ない利用を創出する。
【0007】
受信信号の角度伝播が比較的小さい場合にはビーム形成法とヌルステアリング法の両者が有効である。多数の散乱オブジェクトと広域角度伝播を有するチャンネルの場合には、例えばSINR強調法のようなその他の方法が使用できる。これらの方法においては、通常の独立マルチパスフェ‐ディングチャンネルを想定したアンテナダイバーシティが採用され、幾つかのアーキテクチャやスキームが既に提案されている (Chan, P. W. C., R. S. Cheng. and C. C. Ling, ”Low−complexity antenna diversity receivers for WCDMA handsets”, Proceedings of the Vehicular Technology Conference, Vol. 3, 1999, pp.1901−1905; Braun, C., G. Engblom and C. Beekman, ”Antenna diversity for mobile telephones”,in Proceedings of the IEEE International Symposium of Antenna and Propagation Society, Vol. 4, 1998, pp. 2220−2223)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように従来技術において各種方法が開示されているが、携帯情報端末装置用にアンテナアレイはいまだ実用化されていない。アンテナアレイの実用化を妨げる理由の一つは移動通信応用における携帯情報端末装置の移動により発生する環境変化の問題である。このような環境変化には信号の到達方向に対するアンテナアレイの位置変化が含まれる。例えば、利用者が携帯情報端末装置を通信に用いるかあるいは携帯情報端末装置の表示部に表示された情報を閲覧するために用いるかによってそのアンテナアレイは異なる位置(姿勢)をとる。
【0009】
本発明は上述した従来技術に係わる課題に鑑みてなされたものであり、環境が変化しても有効に作用する移動通信用のアンテナアレイを備えた携帯情報端末装置、および携帯情報端末装置のアンテナアレイ設定および制御方法を提供することが望ましい。
【0010】
さらに、通信性能の改善のために携帯情報端末アレイに採用すべきアンテナアレイ制御スキーム(条件)の選択を可能にする移動通信用アンテナアレイを備えた携帯情報端末装置と、その携帯情報端末装置に採用すべきアンテナアレイ制御スキームの選択方法を提供することが望ましい。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の実施形態によれば、アンテナ部、受信部および送信部を含む無線通信用の装置が提供される。前記アンテナ部は少なくとも2つのアンテナ素子を含むアンテナアレイと、前記少なくとも2つのアンテナ素子からの信号を受けて到達信号の方向を推定し、前記到達信号の推定方向を用いて前記アンテナアレイの指向性パターンを設定するアレイ制御器とを備える。
【0012】
上記実施形態において、前記アレイ制御器が前記アンテナ素子に接続する複数の移相器を備え、前記移相器においてシフトされるべき位相量を決定することにより前記アンテナアレイの指向性パターンを設定するよう構成されていても良い。
【0013】
また、前記アレイ制御器がアンテナアレイの指向性パターン設定のために前記アンテナアレイに適用できる複数のパターン設定条件を記憶するデータ記憶部をさらに備え、前記アレイ制御器が受信信号の品質情報を受けて、前記品質情報に基づき前記パターン設定条件の一つを選択しても良い。
【0014】
また、前記データ記憶部が複数の位相組み合わせをさらに記憶し、前記各位相組み合わせが前記複数の移相器のそれぞれにおいてシフトされるべき位相の集合であり、前記パターン設定条件のそれぞれに対して与えられるものであって、前記アレイ制御器が前記品質情報に基づいて選択されたパターン設定条件に対して前記複数の位相組み合わせの一つを選択するよう構成されていても良い。
さらにまた、前記アンテナ部がアンテナアレイ面が垂直方向および水平方向のいずれか一方により近いかを検出する検出器をさらに具備し、前記アレイ制御器が前記品質情報と前記検出結果とに基づき、前記パターン設定条件の一つを選択しても良い。
【0015】
また、前記パターン設定条件にビーム形成条件およびヌルステアリング条件のいずれか一方を前記アンテナアレイにおいて実現するためのプログラムが含まれているよう構成されていても良い。
【0016】
またさらに、前記アレイ制御器により決定された到達信号の推定方角を示す情報を表示する表示部をさらに具備してもよい。
【0017】
また、前記通信装置が携帯電話装置である場合には、前記アンテナ素子が前記携帯電話装置で通話時に利用者が面する側とは異なる側に配置されることがより望ましい。
【0018】
本発明の他の実施形態によれば、アンテナ部、受信部および送信部を含む通信装置が提供される。本通信装置の前記アンテナ部は、N個のアンテナ素子(Nは2以上の整数)と、前記アンテナ素子により受信された信号の位相をシフトさせるためのN−1個の移相器を含む位相部と、前記N−1個の移相器のそれぞれにおいてシフトされるべきN−1個の値を含む位相値の組み合わせを複数組記憶するメモリと、通信の品質を検出する品質検出器と、前記アンテナアレイに対して設定すべき位相値の組み合わせを順次設定し、前回と異なる位相値の組み合わせが適用される度に通信品質をチェックし、前記通信品質が最大となる位相値の組み合わせを用いて前記アンテナアレイの指向性パターンを設定するコントローラとを具備することを特徴とする。
【0019】
本発明のさらに他の実施形態によれば、少なくとも2つのアンテナ素子を含むアンテナアレイの指向性パターンを設定する方法が提供される。本方法においては、(イ)前記アンテナアレイの指向性パターンを設定するための前記アンテナアレイに適用可能な複数のパターン設定条件を記憶し、(ロ)前記記憶されたパターン設定条件の一つを採用した場合の通信品質を検出し、(ハ)前記記憶されたパターン設定条件のうち他の条件が採用された場合の通信品を検出し、(二)前記検出された2つの通信品質を比較し、(ホ)前記比較により、通信品質がよい方のパターン設定条件を選択して前記アンテナアレの指向性パターンを設定する。
【0020】
また、上記方法においては、前記アンテナアレイの面が垂直方向および水平方向のいずれか一方により近いかをさらに検出し、前記パターン設定条件が前記品質比較結果と前記アンテナアレイ面の位置検出結果に基づき選択される構成としても良い。
【0021】
さらにまた、前記パターン設定条件はビーム形成条件およびヌルステアリング条件のいずれか一方を前記アンテナアレイにおいて設定するための条件を含む構成としても良い。
【0022】
本発明のさらに他の実施形態によれば、限定された数のアンテナ素子からなるアンテナアレイを有する携帯情報端末装置が提供される。その環境状況に基づき、ビーム形成、ヌル(null)ステアリングあるいは信号対干渉および雑音比(SINR)改善強化のようなアレイ制御スキーム(諸条件)の一つを達成するために2つ、3つあるいは4つのアンテナ(素子)が採用される。ビーム形成あるいはヌル
(null)生成に必要な移相器や数値処理部の設計を単純化するために、複数の移相器で設定されるべき位相の組み合わせの予め複数組用意しておき、これらを順次切替えていくことで、ビーム形成あるいはヌル位置の設定を行う、ビームあるいはヌル切り替えが使用される。更に、出力信号強度に基づき、予め用意された指向性に関するオプションから最良のビーム方位あるいはヌル方位が選択される。これらオプションの何れによっても改善が達成されない場合には、2つのアンテナ素子を用いた従来のダイバーシティ法を適用してもよい。
【0023】
【発明の実施の形態】
(A)携帯情報端末装置の構成
本発明の一実施形態による移動通信用携帯情報端末装置を以下に説明する。
【0024】
従来の携帯情報端末用アンテナの多くは無指向性である単一素子を使用している。図1は単一アンテナ素子を有する、携帯電話機に代表される一般的な携帯情報端末を示す。携帯情報端末の面積が限られ且つアンテナが人間の指でできるだけ覆われてはならないとの制約から、多数のアンテナ素子を採用するのが難しく且つ不可能でさえあったりする。更に、いわゆる第3世代移動通信システム用の現状の信号周波数帯、例えば約2GHz帯と、1/2波長の定格アンテナ間隔、即ち約7.5cmとがアンテナ素子の数を制約する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、例えば図2に示すような限定された数の素子を有するアンテナアレイを備えた携帯情報端末装置1が提供される。以下に、図2乃至図4を参照してその携帯情報端末装置1の詳細を説明する。
【0026】
本実施形態において、その携帯情報端末装置1は折り畳み式(開閉型)構造を有しており、表示部1aとキーパッド部1bとからなる。その表示部1aは表示装置390(図3)とアンテナ素子21乃至24を含むアンテナアレイ20とを具備する。そのアンテナ素子21乃至24は長方形構造の表示部1aの裏側隅部に配置されている。そのキーパッド部1bはキーパッド360を具備する。一般的に、ユーザはキーパッド部1bの裏側を保持しながら携帯情報端末装置1を操作する。
【0027】
携帯情報端末装置の形態は図2に示す折り畳み式構成に限られないことに留意すべきである。全てのアンテナ素子が同様な装置部材に配置されていれば開放型(棒状)あるいはその他の構成を備える携帯情報端末でも使用できる。
【0028】
図3は携帯情報端末装置1の概略ブロック図を示す。携帯情報端末装置1は更に送信処理部320、受信処理部330、送信/受信処理部へのアンテナ素子21乃至24接続を制御するアレイ制御器310、メモリ340、主制御器350、スピーカ371、マイクロホン372、スピーカ371から出力する音声を生成しマイクロホン372で検出した音声信号を受ける音声データ処理部370、および表示装置390上に表示する画像イメージを生成する画像データ処理部380とからなる。
【0029】
アレイ制御器310はアンテナ素子21乃至24の次段の送信/受信処理部への接続を制御する。アレイ制御器310はアンテナ素子21乃至24からの信号間に位相差を生じさせることのできる複数の移相器からなる。アレイ制御器310の詳細を以下に述べる。
【0030】
メモリ340はアレイ制御器310の機能制御に必要となる多様なデータを記憶する。記憶されるデータには移相器のそれぞれが利用できる位相値の集合が含まれる。メモリ340に記憶されるデータの詳細を以下に述べる。
【0031】
表示装置390はLCD(液晶)パネルあるいはその他の携帯情報端末装置に適切な表示装置からなる。図4はLCDパネル390a上に表示される画像の例を示す。その画像は受信信号強度を示すシンボル391、通信中に受信したデータ393、および到達信号の推定DOA(到達方角)を示すシンボル(記号等)392を含んでもよい。本実施形態においてDOAはコンパス矢印で示されているが、そのようなシンボルあるいは画像が表示パネル390a上に単一方角を示すことができれば、いかなる任意のシンボルあるいは画像イメージを採用してもよい。
【0032】
主制御器350は携帯情報端末装置の通信機能を制御するためのシステムコントローラ353と、信号対干渉比(SIR)検出用のSIR検出器352と、セレクタ351とからなる。そのセレクタはSIR値のような検波信号品質値に基づき、利用できるオプションから一つのアレイ制御スキームと信号処理アルゴリズムを選択して、アレイ制御器310に命令信号を送りその機能を制御する。その命令信号にはアレイ制御器310の移相器においてシフトすべき位相値を設定する命令信号が含まれる。
【0033】
システム内に用意された信号処理アルゴリズムはその携帯情報端末装置の利用形態により実行される。本実施形態においては、通話時および閲覧時において2種類のアプリケーションが適用される。
【0034】
図5に示すような通話時の通話姿勢においては、通常は携帯情報端末装置1に備えられたボタン・キーパッドのいずれも押されていない。更に、通話姿勢においては、表示部1bはほぼ垂直でありキーパッド部1bがユーザに把持された状態である。図5に概略的に示すように、4つのアンテナ素子21乃至24は同一のほぼ垂直面内にある。到達信号および・あるいは送信信号は3次元角座標系で処理することができる。本実施形態においては、3次元ビーム形成と3次元DOA推定がこの状況において利用できる基本機能となる。
【0035】
閲覧時の閲覧姿勢では、データ入力中あるいは表示パネルスクリーン上のデータの読み出し中が行われ、一般に表示装置390はほぼ水平に保持される。この状態を図6に示す。この時アンテナ素子21乃至24はほぼ水平姿勢あるいは通話中に比べてより水平方向に近い姿勢に置かれる。この状況に対して利用できる基本的な機能は方位角ビーム形成あるいはヌルステアリングとなる。4つのアンテナ素子21乃至24は図4に示すコンパス表示392に対する有効な2次元DOA推定値を提供できる。
【0036】
ビーム形成、ヌルステアリングおよびDOA推定の詳細な処理は以下に説明する。
【0037】
本実施形態によれば、4つのアンテナ素子21乃至24を図2に示す長方形構造内に設置することにより次の利点がある。
(1)アンテナ素子21乃至24の位置が表示部1aの裏面隅部である点。通常、携帯情報端末装置1のユーザは装置のこの部分には触れない。仮にユーザが表示部のこの部分に触れることがあってもユーザの指がアンテナ素子全体を覆うことはなくいくつかの素子は触れられずに残る。
(2)図2に示すように、アンテナ素子21乃至24間の距離7センチおよび4センチは上述した第3世代標準周波数帯のおよそ1/2および1/4波長である。
(3)全方向性単一アンテナを有する従来の携帯情報端末装置とは反対に、本実施形態のアンテナアレイ20は無線波を人間の身体から遠ざかるように送信することができる。よってユーザの頭部を通過する電磁波を大幅に削減する。
(4)受信信号の到来方角(DOA)が推定され表示装置390上に表示される。この情報を知ることにより、ユーザは推定されたDOAに向けて携帯情報端末装置1を保持できそのビーム形成をおよそ面垂直(broadside)にできるばかりでなく、比較的強力で、一説では危険性があると言われている送信信号が頭部を通過するのも防止できる。
(B)閲覧姿勢に対するビーム形成条件(スキーム)
図7に示すように、アレイ制御器310はアンテナ素子21乃至24からの信号に位相シフトを生成できる複数の移相器311乃至314からなる。シフトされる位相量は主制御器350のセレクタ351により制御される。移相器311乃至314からの出力は加算装置315で加算されて次段の送信・受信処理部に出力される。
【0038】
図7は4つのアンテナ素子21乃至24とアンテナアレイの主軸に対し角度θで到達する入信信号を示す。本例において携帯情報端末装置1は図6に示すような閲覧姿勢にある。即ち、携帯情報端末装置1の縦方向は図6の矢印で示す入信信号に対し凡そ平行に位置される。よって、4つのアンテナ素子21乃至24全てが配置される面に対する仰角成分は考慮せず、方位角成分(2次元成分)だけを到来信号のDOA決定とビーム形成およびヌルステアリング条件(後述)実施のために考慮する。
【0039】
素子間の距離はd1とd2で、本実施形態ではそれぞれ7センチと4センチに等しい。信号は移相器311乃至314においてそれぞれc1, c2, c3およびc4だけ位相されるものとする。ベースバンドの場合それはデジタルあるいはアナログ回路により実施できる。図において又M2, M3, M4で示されるアンテナ素子22乃至24での、M1で示されるアンテナ素子21に対する相対的な信号遅れはそれぞれ以下のように表現できる。
【0040】
【数1】
【0041】
【数2】
【0042】
【数3】
【0043】
ここで、cは伝播速度である。ビーム形成器の伝達関数はθに関して次のように表現できる。
【0044】
【数4】
【0045】
ここで、k0=−j2πf0/c、f0は動作周波数である。各係数が以下のように選択されると、
【0046】
【数5】
【0047】
【数6】
【0048】
【数7】
【0049】
【数8】
【0050】
θ=θ0でのアレイのゲインはH(θ0)=4となる。ここでθ0 はビーム形成器の設計角である。本実施形態においては、c1は位相遅れが無い場合に相当する。これは4アンテナ素子の応用による12デシベルの信号ゲインあるいは等価的に6デシベルの信号対雑音比のゲインとなる。c2、c3およびc4に対応する3つの位相シフトは無線周波数(RF)、中間周波数(IF)あるいはベースバンドのいずれでもより簡便な方で行うことができる。理想的にはこのビーム形成器は360度全ての方位角で動作できるものとする。図8(A)および8(B)は極座標および直交座標の両座標においてθ=70度に対するアンテナアレイのビームパターンをそれぞれ示す。このパターンは携帯情報端末装置に到達する干渉のDOAについては取り扱わない。
【0051】
さて、θiのDOA(到来方位)を持つ干渉信号が端末に到達していると仮定する。図8の例において、明らかにアンテナアレイ20の減衰領域は比較的大きい。これは比較的広い角度伝播を有するクラスタからなる幾つかの干渉信号がアンテナアレイ20によって抑制できることを意味している。これは所望の信号のエンハンスメントに対しても成り立つ。従って、簡単なビーム切り替え法を用いて実用上適切な位相集合を見出すことが可能になる。即ち、位相シフト係数c2, c3およびc4の組み合わせが、例えば次のようなある不連続値の各々に対して事前に計算される。
【0052】
【数9】
【0053】
計算された位相シフト係数の集合はメモリ340に記憶される。
【0054】
本実施形態においては、位相シフト係数は10度毎に計算される。然しながら、本発明は本実施形態に限定されずそのような位相シフト係数の組み合わせ集合を計算するためのθ0として、その他のいかなる不連続値を用いてもよい。そして、所望の信号品質あるいは信号対干渉比(SIR)に基づき、37の選択可能な集合から最良の位相集合が選択される。その選択はセレクタ351により行われる。
【0055】
数値例として、θ0=120°およびθi=−20°とし、動作周波数f0=2GHzとする。図9はSIRを可能な限り増強するために選択されたビーム形成器のビームパターンを示す。
【0056】
上記のビーム形成器を用いたSIR増強のもう一つの改善指数として、その一例として、アンテナアレイ20に3つの干渉信号が到達しているとする。中心干渉の方位角はシミュレーションの計数値で−180から180度まで変化する。他の2つの干渉信号は中心干渉の+10度および−10度である。所望の信号角度は120度である。図10はSIR改善に対する中心干渉角を示す。明らかに最小ゲインはθ周辺でなければならず最大改善はθ+/−180°周辺となる。最大SIR改善は約30デシベルである。干渉信号の角度伝播が比較的小さい場合に対してはSIR改善が優れている。図11は2つの干渉信号が中心干渉信号の+5および−5であること以外は図10と同様にして得られた。ここで、最大改善は約34デシベルである。
(C)閲覧姿勢に対するヌルステアリング条件
個々のサイドローブレベルの制御を可能にする遠フィールドパターン合成に対しては、線形プログラミング法や摂動法を含む多数の最適化法がある (Streit, R., A. Nuttal, ”A general Chebyshev complex function approximation procedure and application to beamforming”, J. Acoust. Soc. America, vol. 72, no. 1, 1982, pp. 180−190; Su, C−W., ”Synthesis of linear arrays yielding a deep null pattern”, Proceedings of the IEEE International Symposiumof Antenna and Propagation Society, 1987, pp. 141−144)。
【0057】
これらの方法には多数のアンテナ素子が必要になるため制約がある。所望の角度θ0に深いヌルポイント(deep null)を割り当てるためにはそのアレイの指向性パターンがその方角でゼロゲインになる必要がある。本実施形態による4素子を有するアンテナアレイに対し、式(4)から以下の数式が導き出せる。
【0058】
【数10】
【0059】
そして所望の角度θ0に対しては、
【0060】
【数11】
【0061】
そしてθ≠θOに対しては、
【0062】
【数12】
【0063】
必ずしも未知の位相パラメータc1, c2, c3 およびc4集合が見出されて、数式(10)乃至(12)が満足されるとの保証は無い。しかしながら、切り替えヌルストラテジー(switched null strategy)が用いられるので、使用する角度の数を限定するのが望ましく、以下のようなより単純なアルゴリズムが提案される。
(1) −180度から+180度の全ての有意ペア (θ0,θn)について、
(2) C4の実部−1<Re(c4)<1の全ての有意値について、ここでその虚部はIm(c4)=A1/2、A=1−Re[c4]2 、
(3) C3の実部−1<Re(c3)<1の全ての有意値について、ここでその虚部はIm(c3)=B1/2、B=1−Re[c3]2、
(4) C2の実部−1<Re(c2)<1の全ての有意値について、ここでその虚部はIm(c2)=C1/2、C=1−Re[c2]2、
(5) 次式を計算
【0064】
【数13】
【0065】
(6) |H(θ)|の最大値および対応するθmaxを計算する、
(7) |θmax−θ0|が最小になるc1, c2, c3, c4の最適集合を見出す、
(8) その結果を6桁のマトリックスとして記憶する。これらの桁はθ0,θn, c1, c2, c3, c4である。
【0066】
このアルゴリズムにおけるパラメータ変化のステップ幅は必要とされる解像度に大きく依存する。更に、プログラミングを工夫すれば計算規模を大幅に削減することが可能である。一度これらの係数を計算しておけば、最適パターン選択のために、係数の組み合わせを順次呼び出すことで、各角度毎のヌルステアリングを切替えていくことができる。
【0067】
本実施形態においては、計算した係数の組合わせ集合が予めメモリ340に記憶される。セレクタ351は係数の組み合わせを一組づつ切り替えて採用し、その通信品質をチェックする。セレクタ351は利用できる組合わせ集合全体を一つづつチェックして、ヌルステアリングの最適パターンを選択することができる。
【0068】
C1は複素数であり位相シフトおよびゲイン調整を必要とするが、c2, c3, c4は純然たる位相であることを上記のプロセスは示している。ここで再度、360度切り替えヌルステアリングが実施される。ヌル間同士の距離はシステムに要求される解像度に依存する。SIRの推定あるいは所望の信号電力により最適ビーム形成が実現される。
【0069】
数値事例として、所望の角度がθ0= 120°であり、干渉信号がθi= −20°から到達するものとする。提案されたアルゴリズムに従い、θn= −20°と図12に示す指向性パターンが求められる。干渉角での増幅度は丁度ゼロであるがそのヌル幅は約20度だけである。
【0070】
同様にして、SIR改善度を調べた。3つの干渉信号がアレイに到達しているものと仮定する。中心干渉信号の方位角はシュミレーションの計数値であり−180度から180度まで変化する。その他の2つの干渉信号は中心干渉の+10度および−10度である。所望の信号角度は120度である。図13はSIR改善に対する中心干渉角度を示す。ヌルステアリングによる改善は、図13と図10とを比較した場合、ビーム形成の場合より多少低くなっており、この傾向は干渉の角度伝播が増大すると更に悪化する。図14はこの事実をより明瞭に示している。なお、干渉のDOAが狭い領域に限定されている場合、その方角で生成される深いヌル(deep null)は極めて高いSIR改善を提供する。
【0071】
以上説明したビーム形成とヌルステアリングの両者の場合において、選択された係数には所望のDOAの情報が含まれる、よって図4で示した表示パネル390a上に正しく与えられるコンパス矢印はユーザがその携帯情報端末装置1に到達する最善の信号の方角を知る手助けとなる。
(D)通話姿勢に対する3次元ビーム形成およびDOA推定スキーム
図6に示す通話姿勢においては、携帯情報端末装置1の表示部1aは到達信号に対しほぼ垂直位置になる。アンテナ素子の4つの組み合わせ (M1, M2, M3), (M1,M2, M4), (M3, M4, M1), (M3, M4, M2)のそれぞれが方位角と仰角ビーム形成あるいはDOA推定に使用できる。本実施形態においては、4つのアンテナ素子21乃至24の中3つのアンテナ素子だけを携帯情報端末装置1の柔軟性改善のために使用する。各方角に対して2つのアンテナ素子だけが提供されるので干渉信号角でのヌル生成は困難である。
【0072】
一般的に、アンテナアレイ20は最強信号の性能だけを改善できる。これら3つのアクティブなアンテナ素子を選択するための異なるオプションを備えておけば、一つのアンテナ素子がユーザの手で覆われたりあるいは有効信号電力を受信できない場合にもアンテナアレイ20が機能を維持できる柔軟性を提供できる。
【0073】
最強信号の方位角と仰角とから得られた知識から、その選択された3つの素子で受信された信号の位相調整用に必要な位相値が与えられる。従って、無線周波数あるいはベースバンドでの適切な位相を施すことによって、元の信号の3倍の増幅度に等しい振幅を有する所望の信号が得られる。これは3つの信号の加算後のノイズ電力が約4.8デシベル増幅されたのに対しその所望信号電力は9.6デシベル改善したことを意味する。したがって、4.8デシベルのSIR改善が達成されたことになる。
【0074】
この3次元DOA推定とビーム形成法は2つの2次元のケースに分解できる。図15は回路例であり、2つのアンテナ素子20a, 20bで受信された信号のI成分とQ成分とからそのDOAを与えるものである。アンテナ素子20a, 20bはアンテナ素子21乃至24のどの組み合わせでもよい。次にDOAの計算された値は図16の位相回路に用いられる。両図面は回路シミュレーションソフトSimulink (米国MathWorks社商標)を使用して設計された。回路の基本解析法を以下に説明する。
【0075】
2つのアンテナ素子に到達するr(t)とr(t−τ)で示される信号は以下のように表せる。
【0076】
【数14】
【0077】
【数15】
【0078】
ここで、ωc=2πfcで、fcは搬送周波数である。この一般的な表現の到達信号は変調タイプではない。r1(t)およびr2(t)のI成分およびQ成分は次のように定義される。
【0079】
【数16】
【0080】
【数17】
【0081】
【数18】
【0082】
【数19】
【0083】
ここで、信号のバンド幅が搬送周波数よりはるかに小さいので、
φ(t−τ)=φ(t)およびA(t−τ)=A(t)と仮定する。遅延τは次のように表すことができる。
【0084】
【数20】
【0085】
ここで、dは素子間間隔(d1, d2)である。式(16)乃至(19)から容易に次式が証明される。
【0086】
【数21】
【0087】
ωcτ=2πfc(d/c)sinθであるから、θは次のように計算できる。
【0088】
【数22】
【0089】
もしそのアンテナ素子にマルチバンド機能があれば、式(22)の結果は複数の周波数バンドにも使用できる。
【0090】
図15は多様な機能性を有するシュミレーションブロックにより式(21)、(22)をシミュレートするためのブロック図を示す。図15のシミュレーションブロック図において、I−Q復調器ブロック1501、1502は式(14)、(15)で定義されるシミュレートされたアンテナ信号と、発振器ブロック1503からの基準発振信号とを受けて受信信号をI成分信号とQ成分信号とに検波復調する。復調器ブロック1501,1502(式(16)乃至(19))からのIおよびQ成分信号は乗積ブロック1504−1507、1510と、加算ブロック1508乃至1509と、逆cosine計算用のアークコサインブロック1511とで構成される回路に供給されて、式(21)により位相cが求められる。
【0091】
更に、位相ωcτはゲインブロック1512、乗積ブロック1513および逆サイン計算用のアークサインブロック1516に与えられて、式(22)による到達信号の方向であるθの暫定値が求められる。平均値ブロック1519はθの平均値を計算し、そのθの平均値は推定DOAとして出力される。
【0092】
次に、ビーム形成達成のために必要な位相ωcτが図16のブロック回路図に挿入される。図16のブロック図において、アンテナ素子20aからの信号のI、Q成分の位相をシフトするために推定位相ωcτ1601(本実施形態では数値0.937が用いられる) が位相ブロック1602、1603に与えられる。位相がシフトされたI, Q成分の信号は加算ブロック1604、1605でアンテナ素子20bからの信号の対応する成分にそれぞれ加算される。
(E)アンテナアレイ制御と信号処理の戦略
本発明の一実施形態においては、DOA推定、ビーム形成およびヌルステアリングはアンテナアレイ20の機能を制御し、予め設定された信号処理を施すことにより実現される。アンテナアレイ20の機能はアンテナ素子21乃至24から受けた信号の位相をシフトすることおよび/またはそのアンテナ素子の送信・受信処理部への接続を変更することにより制御される。位相量は、例えば図3のセレクタ351によりアレイコントローラ310を介し、位相に対応してメモリ340に予め記憶された値あるいは値郡を選択することにより制御される。
【0093】
図17はアンテナアレイ制御と信号処理戦略(strategy)の一例を示すフローチャートである。その戦略は上記検討結果に基づき準備された。即ち、ヌルステアリングは干渉信号の伝播角度が小さいときに優れた性能を発揮し、ビーム形成がより容易に実施可能である。
【0094】
先ず、ステップ1700において携帯情報端末装置1の位置が通話姿勢か閲覧姿勢にあるかが決定される。その位置決定のためには任意の方法を用いてもよい。例えば、音声通信が検出されれば通話姿勢として、あるいは表示機能を開始するボタンあるいはスイッチが操作されれば閲覧姿勢としてその位置が決定される。あるいは、携帯情報端末装置1の姿勢は重力の方向に関して決定してもよい。即ち、全てのアンテナ素子が置かれているアンテナアレイ面が重力方向に平行であるかないかによりその位置を決定する。
【0095】
携帯情報端末装置1が通話位置であると決定されると、アンテナ素子21乃至24のいずれか3つの素子を用いて上記の三次元DOA推定とビーム形成がステップ1710、1711で行われる。ステップ1712においては、通信品質が改善されたかどうかを見るために通信の品質がチェックされる。現在のスキームの採用後に品質改善が検出されれば現在のスキームが維持される(ステップ1730)。品質改善が見られなければ、ステップ1740において、通信品質を改善するための別の信号処理スキームが採用される。
【0096】
ステップ1700、1720において携帯情報端末装置1の位置が閲覧姿勢であると検出されると、ステップ1710、1711において4つのアンテナ素子21乃至24を用いた上記の方位角ビーム形成が行われる。次に、ステップ1722において通信品質が改善されたかどうかを調べるため通信の品質がチェックされる。現在のスキームの採用後に品質改善が検出されれば、現在のスキームが維持される(ステップ1730)。品質改善が見られなければ、ステップ1723において4つのアンテナ素子21乃至24を用いた上記の方位角ヌルステアリングが実行されて、ステップ1724において通信品質の改善がチェックされる。品質改善が見られれば、現状のスキームが維持される(ステップ1730)。品質改善が見られなければ、ステップ1740において通信品質改善のために別の信号処理スキームが採用される。
【0097】
通話および閲覧姿勢の両者の場合で、ステップ1740における最後の代替案はアンテナダイバーシティーあるいはSIR/SINR増強法である。2乃至4アンテナ素子を使ったアンテナダイバーシティの一例がDinnis et alにより開示されている (Dinnis, A. K., J. S. Thompson, ”Effect of handset antenna diversity on a high data rate packet CDMA wireless system”, Proceedings of the VehicularTechnology Conference, vol. 1, Fall 2001, pp. 348−352; Colburn, J. S.,Y. Rahmat−Samii, M. A. Jensen and G. J. Pottie, ”Diversity performanceof dual antenna personal communications handset”, Proceedings of the IEEE International Symposium of antenna and Propagation Society, vol. 1, 1996, pp. 730−733)。SIR/SINR増強法の一例がChan, et alにより開示されている(Chan, P. W. C., R.S. Cheng. and C. C. Ling, ”Low−complexity antennadiversity receivers with SINR enhancement for WCDMA handsets”, Proceedings IEEE Wireless Communications and Networking Conference, vol. 1, 1999, pp. 276−280)。これらの手法は複雑な信号処理技術を要しかつ適切なチャンネル推定に依存する。
【0098】
図17に記載したこれらスキームの選択は携帯情報端末端末の電源がオンであれば何時実行してもよい。採用するアンテナアレイ制御と信号処理スキームの選択は音声通信が発生していない間に完了することが好ましい。
【0099】
上記の本実施形態によれば、小型携帯情報端末端末用の適応型アンテナアレイの制御方法が提供される。複数のアンテナ素子を用いて到達信号をより優れて処理するために、携帯情報端末姿勢と環境特性のいくつかの条件を検討した。本実施形態の利点は以下のようにまとめられる。
(1)アンテナ間隔が一般的な送受器携帯情報端末(携帯電話機等)サイズに適している。
(2)切り替えビーム形成あるいはヌルステアリングの採用により、計算速度が向上しその複雑性が軽減される。
(3)携帯情報端末の二つの異なる姿勢が別個独立してに処理される。
(4)通話姿勢において送信電波が利用者の頭部を通過しない。
(5)ビーム形成には3つの移相器だけが必要であり、閲覧姿勢でのヌルステアリングには前記3つの移相器と複素数ゲイン調整とが必要とされる。
(6)無線周波数(RF)とベースバンドの移相器の両方が採用できる。
(7)新規なヌルステアリングアルゴリズムにより、狭帯域角度伝播干渉信号に対してヌルポイント(deep null)を提供する。
(8)通話姿勢において、異なる素子の組み合わせの選択が可能なである。これにより利用者の手で覆われた一つ乃至二つのアンテナ素子システムの性能劣化の影響を小さくできる。
【0100】
本発明の説明では以上の具体的な望ましい実施形態について述べたが、その範囲内でその他の変更、修正、組み合わせ等が可能である。従って本発明の範囲内で上記具体的な事例以外のどのような変更も可能であると理解されるべきである。
【0101】
上記の実施形態においては、アンテナアレイは2つないし4つの素子を有すると想定された。そのアンテナアレイに含まれるアンテナ素子の数はそれに限定されず異なる数のアンテナ素子であってもよい。
【0102】
上記の実施形態において通信の品質はSIRで測定される。しかし、通信品質は信号対雑音比SNR、信号対干渉プラス雑音比SINRあるいはその他の通信品質を評価できる如何なる指標を用いて測定してもよい。
【0103】
本発明の上述の実施形態においては携帯情報端末装置が携帯電話機である場合について応用されたものだが、その他、PDA、パソコン等のような無線通信機能を備える様々な装置に応用してもよい。
【0104】
【発明の効果】
本発明によれば、環境が変化しても効果的に動作できる移動通信用のアンテナアレイを備える携帯情報端末装置と、携帯情報端末装置のアンテナアレイの設定および動作方法とが提供される。
【0105】
更に、本発明によれば、通信性能を改善するために携帯情報端末アレイにおいて採用すべきアンテナアレイ制御スキームの選択が可能な移動通信用アンテナアレイを備えた携帯情報端末装置と、その携帯情報端末アレイにおいて採用すべきアンテナアレイ制御スキームを選択する方法とが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】単一無指向性アンテナを有する従来の携帯情報端末装置である。
【図2】本発明の一実施形態による四素子長方形アレイに対するアンテナ配置である。
【図3】本発明の一実施形態による携帯情報端末装置の概略ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による携帯情報端末装置上に表示された表示画像例を説明する概略図である。
【図5】携帯情報端末装置の通話姿勢を示す図である。
【図6】携帯情報端末装置の閲覧姿勢を示す図である。
【図7】図3の携帯情報端末装置のアンテナアレイとアレイ制御器の構成例を示す概要図である。
【図8】θ=70°に対するビーム形成の指向性パターンを示す図であり、(A)は直交座標の場合であり、(B)は極座標の場合を表現されたものである。
【図9】アレイ出力時のSIRを最大にするために37の可能な選択肢から選択されたビーム形成器のビームパターンを示す図である。
【図10】他の2つの干渉信号が中心干渉信号の+/−10°である中心干渉信号のDOAの関数としてのビーム形成器のSIR改善を示す図である。
【図11】他の2つの干渉信号が中心干渉信号の+/−5°である中心干渉信号のDOAの関数としてのビーム形成器のSIR改善を示す図である。
【図12】深いヌルポイントを有するヌル生成器のSIR指向性パターンを示す図である。
【図13】他の2つの干渉信号が中心干渉信号のである中心干渉信号のDOA関数としてのヌル生成器のSIR改善を示す図である。
【図14】他の2つの干渉信号が中心干渉信号の+/−5°である中心干渉信号のDOA関数としてのヌル生成器のSIR改善を示す図である。
【図15】DOA推定用の回路例を示す回路構成図である。
【図16】ビーム形成用の回路例を示す回路構成図である。
【図17】本発明の実施形態による4つのアンテナ素子を持つ携帯情報端末装置を使用するための総合戦略構想を示すフローチャート概要図である。
【符号の説明】
1:携帯情報端末装置、1a:表示部、1b:キーボード部、20:アンテナアレイ、21乃至24:アンテナ素子、310:アレイ制御器、311乃至314:移相器、390:表示パネル、351:セレクタ。
【発明の属する技術分野】
本発明は通信用携帯情報端末に関し、特に無線通信に使用する携帯情報端末のアンテナアレイおよびそのアンテナアレイの利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のセルラー無線システムはその移動携帯情報端末に無指向性アンテナを使用するが、これは特定のセルにサービス提供する単一基地局への良好なリンクが存在する場合、基地局へのアクセス容易性の点で有利と考えられるからである。最新のセルラーシステムの容量を制約しその性能に影響を及ぼす最も重要な要因の一つは多重アクセス干渉(MAI: multi access interference)である。このMAI成分を解消する方法の一つは適応型アンテナアレイと干渉キャンセラを使用することである。
【0003】
適応型アレイアンテナに使用される適応ビーム形成技術はそれぞれの利用者に対してより高い信号対干渉+雑音比(SINR:signal to interference plus noiseratio)を得る助けとなる。適応ビーム形成器用の重みベクトルを見出す幾つかのアルゴリズムが提案されている(Liberti, J.C. and T.S. Rappaport, ”Smart Antenna for Wireless Communications”: IS−95およびThird Generation CDMA Applications, Prentice Hall, 1999; Kang, Y.G., H−R, Park, B−Y. Ahn andK−J. Lee, ”The performance comparison of beamforming algorithms for CDMA system”, in Proceedings of ITC−CSCC, vol. 2, July 1998, pp.1505−1508)。
【0004】
無線通信チャンネルの角度特性がスマートアンテナシステムの設計選択および性能決定に重要でなる(Liberti, J.C. and T.S. Rappaport, ”Smart Antenna for Wireless Communications”; IS−95 and Third Generation CDMA Applications, Prentice Hall, 1999)。
【0005】
無線チャンネルの時間変化特性はそのチャンネル内における対象物の移動により生じる。セルラーシステムにおける到達信号方向(DOA: direction of arrival)の分布はセル内の加入者の分布と各加入者周辺の拡散要素の分布とに依存すること (Rooyen, P. v., M. Loetter, D. v. Wyk, ”Space−Time Processing for CDMA Mobile Communications”, Kluwer Academic Publishers, 2000)。
【0006】
完全適応型ビーム形成法を用いれば各利用者の方向に指向されたビームを送出しあるいは特定方向から到達する信号の直接受信が可能になり、よって無指向型方法に対してリンク経済性が改善される。目標受信部に指向された信号を最大化することに加えて、また前記システムは他の信号源からの干渉を減衰する。そのアレイがヌルステアリング可能に設計されていれば共用チャンネル干渉あるいはチャンネル間干渉を効率的に解消できる。無駄なエネルギを放射する代わりに特定の利用者に向けてビームを制御、送出させることにより、前記システムは使用可能な無線帯域のより効率的でノイズの少ない利用を創出する。
【0007】
受信信号の角度伝播が比較的小さい場合にはビーム形成法とヌルステアリング法の両者が有効である。多数の散乱オブジェクトと広域角度伝播を有するチャンネルの場合には、例えばSINR強調法のようなその他の方法が使用できる。これらの方法においては、通常の独立マルチパスフェ‐ディングチャンネルを想定したアンテナダイバーシティが採用され、幾つかのアーキテクチャやスキームが既に提案されている (Chan, P. W. C., R. S. Cheng. and C. C. Ling, ”Low−complexity antenna diversity receivers for WCDMA handsets”, Proceedings of the Vehicular Technology Conference, Vol. 3, 1999, pp.1901−1905; Braun, C., G. Engblom and C. Beekman, ”Antenna diversity for mobile telephones”,in Proceedings of the IEEE International Symposium of Antenna and Propagation Society, Vol. 4, 1998, pp. 2220−2223)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように従来技術において各種方法が開示されているが、携帯情報端末装置用にアンテナアレイはいまだ実用化されていない。アンテナアレイの実用化を妨げる理由の一つは移動通信応用における携帯情報端末装置の移動により発生する環境変化の問題である。このような環境変化には信号の到達方向に対するアンテナアレイの位置変化が含まれる。例えば、利用者が携帯情報端末装置を通信に用いるかあるいは携帯情報端末装置の表示部に表示された情報を閲覧するために用いるかによってそのアンテナアレイは異なる位置(姿勢)をとる。
【0009】
本発明は上述した従来技術に係わる課題に鑑みてなされたものであり、環境が変化しても有効に作用する移動通信用のアンテナアレイを備えた携帯情報端末装置、および携帯情報端末装置のアンテナアレイ設定および制御方法を提供することが望ましい。
【0010】
さらに、通信性能の改善のために携帯情報端末アレイに採用すべきアンテナアレイ制御スキーム(条件)の選択を可能にする移動通信用アンテナアレイを備えた携帯情報端末装置と、その携帯情報端末装置に採用すべきアンテナアレイ制御スキームの選択方法を提供することが望ましい。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の実施形態によれば、アンテナ部、受信部および送信部を含む無線通信用の装置が提供される。前記アンテナ部は少なくとも2つのアンテナ素子を含むアンテナアレイと、前記少なくとも2つのアンテナ素子からの信号を受けて到達信号の方向を推定し、前記到達信号の推定方向を用いて前記アンテナアレイの指向性パターンを設定するアレイ制御器とを備える。
【0012】
上記実施形態において、前記アレイ制御器が前記アンテナ素子に接続する複数の移相器を備え、前記移相器においてシフトされるべき位相量を決定することにより前記アンテナアレイの指向性パターンを設定するよう構成されていても良い。
【0013】
また、前記アレイ制御器がアンテナアレイの指向性パターン設定のために前記アンテナアレイに適用できる複数のパターン設定条件を記憶するデータ記憶部をさらに備え、前記アレイ制御器が受信信号の品質情報を受けて、前記品質情報に基づき前記パターン設定条件の一つを選択しても良い。
【0014】
また、前記データ記憶部が複数の位相組み合わせをさらに記憶し、前記各位相組み合わせが前記複数の移相器のそれぞれにおいてシフトされるべき位相の集合であり、前記パターン設定条件のそれぞれに対して与えられるものであって、前記アレイ制御器が前記品質情報に基づいて選択されたパターン設定条件に対して前記複数の位相組み合わせの一つを選択するよう構成されていても良い。
さらにまた、前記アンテナ部がアンテナアレイ面が垂直方向および水平方向のいずれか一方により近いかを検出する検出器をさらに具備し、前記アレイ制御器が前記品質情報と前記検出結果とに基づき、前記パターン設定条件の一つを選択しても良い。
【0015】
また、前記パターン設定条件にビーム形成条件およびヌルステアリング条件のいずれか一方を前記アンテナアレイにおいて実現するためのプログラムが含まれているよう構成されていても良い。
【0016】
またさらに、前記アレイ制御器により決定された到達信号の推定方角を示す情報を表示する表示部をさらに具備してもよい。
【0017】
また、前記通信装置が携帯電話装置である場合には、前記アンテナ素子が前記携帯電話装置で通話時に利用者が面する側とは異なる側に配置されることがより望ましい。
【0018】
本発明の他の実施形態によれば、アンテナ部、受信部および送信部を含む通信装置が提供される。本通信装置の前記アンテナ部は、N個のアンテナ素子(Nは2以上の整数)と、前記アンテナ素子により受信された信号の位相をシフトさせるためのN−1個の移相器を含む位相部と、前記N−1個の移相器のそれぞれにおいてシフトされるべきN−1個の値を含む位相値の組み合わせを複数組記憶するメモリと、通信の品質を検出する品質検出器と、前記アンテナアレイに対して設定すべき位相値の組み合わせを順次設定し、前回と異なる位相値の組み合わせが適用される度に通信品質をチェックし、前記通信品質が最大となる位相値の組み合わせを用いて前記アンテナアレイの指向性パターンを設定するコントローラとを具備することを特徴とする。
【0019】
本発明のさらに他の実施形態によれば、少なくとも2つのアンテナ素子を含むアンテナアレイの指向性パターンを設定する方法が提供される。本方法においては、(イ)前記アンテナアレイの指向性パターンを設定するための前記アンテナアレイに適用可能な複数のパターン設定条件を記憶し、(ロ)前記記憶されたパターン設定条件の一つを採用した場合の通信品質を検出し、(ハ)前記記憶されたパターン設定条件のうち他の条件が採用された場合の通信品を検出し、(二)前記検出された2つの通信品質を比較し、(ホ)前記比較により、通信品質がよい方のパターン設定条件を選択して前記アンテナアレの指向性パターンを設定する。
【0020】
また、上記方法においては、前記アンテナアレイの面が垂直方向および水平方向のいずれか一方により近いかをさらに検出し、前記パターン設定条件が前記品質比較結果と前記アンテナアレイ面の位置検出結果に基づき選択される構成としても良い。
【0021】
さらにまた、前記パターン設定条件はビーム形成条件およびヌルステアリング条件のいずれか一方を前記アンテナアレイにおいて設定するための条件を含む構成としても良い。
【0022】
本発明のさらに他の実施形態によれば、限定された数のアンテナ素子からなるアンテナアレイを有する携帯情報端末装置が提供される。その環境状況に基づき、ビーム形成、ヌル(null)ステアリングあるいは信号対干渉および雑音比(SINR)改善強化のようなアレイ制御スキーム(諸条件)の一つを達成するために2つ、3つあるいは4つのアンテナ(素子)が採用される。ビーム形成あるいはヌル
(null)生成に必要な移相器や数値処理部の設計を単純化するために、複数の移相器で設定されるべき位相の組み合わせの予め複数組用意しておき、これらを順次切替えていくことで、ビーム形成あるいはヌル位置の設定を行う、ビームあるいはヌル切り替えが使用される。更に、出力信号強度に基づき、予め用意された指向性に関するオプションから最良のビーム方位あるいはヌル方位が選択される。これらオプションの何れによっても改善が達成されない場合には、2つのアンテナ素子を用いた従来のダイバーシティ法を適用してもよい。
【0023】
【発明の実施の形態】
(A)携帯情報端末装置の構成
本発明の一実施形態による移動通信用携帯情報端末装置を以下に説明する。
【0024】
従来の携帯情報端末用アンテナの多くは無指向性である単一素子を使用している。図1は単一アンテナ素子を有する、携帯電話機に代表される一般的な携帯情報端末を示す。携帯情報端末の面積が限られ且つアンテナが人間の指でできるだけ覆われてはならないとの制約から、多数のアンテナ素子を採用するのが難しく且つ不可能でさえあったりする。更に、いわゆる第3世代移動通信システム用の現状の信号周波数帯、例えば約2GHz帯と、1/2波長の定格アンテナ間隔、即ち約7.5cmとがアンテナ素子の数を制約する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、例えば図2に示すような限定された数の素子を有するアンテナアレイを備えた携帯情報端末装置1が提供される。以下に、図2乃至図4を参照してその携帯情報端末装置1の詳細を説明する。
【0026】
本実施形態において、その携帯情報端末装置1は折り畳み式(開閉型)構造を有しており、表示部1aとキーパッド部1bとからなる。その表示部1aは表示装置390(図3)とアンテナ素子21乃至24を含むアンテナアレイ20とを具備する。そのアンテナ素子21乃至24は長方形構造の表示部1aの裏側隅部に配置されている。そのキーパッド部1bはキーパッド360を具備する。一般的に、ユーザはキーパッド部1bの裏側を保持しながら携帯情報端末装置1を操作する。
【0027】
携帯情報端末装置の形態は図2に示す折り畳み式構成に限られないことに留意すべきである。全てのアンテナ素子が同様な装置部材に配置されていれば開放型(棒状)あるいはその他の構成を備える携帯情報端末でも使用できる。
【0028】
図3は携帯情報端末装置1の概略ブロック図を示す。携帯情報端末装置1は更に送信処理部320、受信処理部330、送信/受信処理部へのアンテナ素子21乃至24接続を制御するアレイ制御器310、メモリ340、主制御器350、スピーカ371、マイクロホン372、スピーカ371から出力する音声を生成しマイクロホン372で検出した音声信号を受ける音声データ処理部370、および表示装置390上に表示する画像イメージを生成する画像データ処理部380とからなる。
【0029】
アレイ制御器310はアンテナ素子21乃至24の次段の送信/受信処理部への接続を制御する。アレイ制御器310はアンテナ素子21乃至24からの信号間に位相差を生じさせることのできる複数の移相器からなる。アレイ制御器310の詳細を以下に述べる。
【0030】
メモリ340はアレイ制御器310の機能制御に必要となる多様なデータを記憶する。記憶されるデータには移相器のそれぞれが利用できる位相値の集合が含まれる。メモリ340に記憶されるデータの詳細を以下に述べる。
【0031】
表示装置390はLCD(液晶)パネルあるいはその他の携帯情報端末装置に適切な表示装置からなる。図4はLCDパネル390a上に表示される画像の例を示す。その画像は受信信号強度を示すシンボル391、通信中に受信したデータ393、および到達信号の推定DOA(到達方角)を示すシンボル(記号等)392を含んでもよい。本実施形態においてDOAはコンパス矢印で示されているが、そのようなシンボルあるいは画像が表示パネル390a上に単一方角を示すことができれば、いかなる任意のシンボルあるいは画像イメージを採用してもよい。
【0032】
主制御器350は携帯情報端末装置の通信機能を制御するためのシステムコントローラ353と、信号対干渉比(SIR)検出用のSIR検出器352と、セレクタ351とからなる。そのセレクタはSIR値のような検波信号品質値に基づき、利用できるオプションから一つのアレイ制御スキームと信号処理アルゴリズムを選択して、アレイ制御器310に命令信号を送りその機能を制御する。その命令信号にはアレイ制御器310の移相器においてシフトすべき位相値を設定する命令信号が含まれる。
【0033】
システム内に用意された信号処理アルゴリズムはその携帯情報端末装置の利用形態により実行される。本実施形態においては、通話時および閲覧時において2種類のアプリケーションが適用される。
【0034】
図5に示すような通話時の通話姿勢においては、通常は携帯情報端末装置1に備えられたボタン・キーパッドのいずれも押されていない。更に、通話姿勢においては、表示部1bはほぼ垂直でありキーパッド部1bがユーザに把持された状態である。図5に概略的に示すように、4つのアンテナ素子21乃至24は同一のほぼ垂直面内にある。到達信号および・あるいは送信信号は3次元角座標系で処理することができる。本実施形態においては、3次元ビーム形成と3次元DOA推定がこの状況において利用できる基本機能となる。
【0035】
閲覧時の閲覧姿勢では、データ入力中あるいは表示パネルスクリーン上のデータの読み出し中が行われ、一般に表示装置390はほぼ水平に保持される。この状態を図6に示す。この時アンテナ素子21乃至24はほぼ水平姿勢あるいは通話中に比べてより水平方向に近い姿勢に置かれる。この状況に対して利用できる基本的な機能は方位角ビーム形成あるいはヌルステアリングとなる。4つのアンテナ素子21乃至24は図4に示すコンパス表示392に対する有効な2次元DOA推定値を提供できる。
【0036】
ビーム形成、ヌルステアリングおよびDOA推定の詳細な処理は以下に説明する。
【0037】
本実施形態によれば、4つのアンテナ素子21乃至24を図2に示す長方形構造内に設置することにより次の利点がある。
(1)アンテナ素子21乃至24の位置が表示部1aの裏面隅部である点。通常、携帯情報端末装置1のユーザは装置のこの部分には触れない。仮にユーザが表示部のこの部分に触れることがあってもユーザの指がアンテナ素子全体を覆うことはなくいくつかの素子は触れられずに残る。
(2)図2に示すように、アンテナ素子21乃至24間の距離7センチおよび4センチは上述した第3世代標準周波数帯のおよそ1/2および1/4波長である。
(3)全方向性単一アンテナを有する従来の携帯情報端末装置とは反対に、本実施形態のアンテナアレイ20は無線波を人間の身体から遠ざかるように送信することができる。よってユーザの頭部を通過する電磁波を大幅に削減する。
(4)受信信号の到来方角(DOA)が推定され表示装置390上に表示される。この情報を知ることにより、ユーザは推定されたDOAに向けて携帯情報端末装置1を保持できそのビーム形成をおよそ面垂直(broadside)にできるばかりでなく、比較的強力で、一説では危険性があると言われている送信信号が頭部を通過するのも防止できる。
(B)閲覧姿勢に対するビーム形成条件(スキーム)
図7に示すように、アレイ制御器310はアンテナ素子21乃至24からの信号に位相シフトを生成できる複数の移相器311乃至314からなる。シフトされる位相量は主制御器350のセレクタ351により制御される。移相器311乃至314からの出力は加算装置315で加算されて次段の送信・受信処理部に出力される。
【0038】
図7は4つのアンテナ素子21乃至24とアンテナアレイの主軸に対し角度θで到達する入信信号を示す。本例において携帯情報端末装置1は図6に示すような閲覧姿勢にある。即ち、携帯情報端末装置1の縦方向は図6の矢印で示す入信信号に対し凡そ平行に位置される。よって、4つのアンテナ素子21乃至24全てが配置される面に対する仰角成分は考慮せず、方位角成分(2次元成分)だけを到来信号のDOA決定とビーム形成およびヌルステアリング条件(後述)実施のために考慮する。
【0039】
素子間の距離はd1とd2で、本実施形態ではそれぞれ7センチと4センチに等しい。信号は移相器311乃至314においてそれぞれc1, c2, c3およびc4だけ位相されるものとする。ベースバンドの場合それはデジタルあるいはアナログ回路により実施できる。図において又M2, M3, M4で示されるアンテナ素子22乃至24での、M1で示されるアンテナ素子21に対する相対的な信号遅れはそれぞれ以下のように表現できる。
【0040】
【数1】
【0041】
【数2】
【0042】
【数3】
【0043】
ここで、cは伝播速度である。ビーム形成器の伝達関数はθに関して次のように表現できる。
【0044】
【数4】
【0045】
ここで、k0=−j2πf0/c、f0は動作周波数である。各係数が以下のように選択されると、
【0046】
【数5】
【0047】
【数6】
【0048】
【数7】
【0049】
【数8】
【0050】
θ=θ0でのアレイのゲインはH(θ0)=4となる。ここでθ0 はビーム形成器の設計角である。本実施形態においては、c1は位相遅れが無い場合に相当する。これは4アンテナ素子の応用による12デシベルの信号ゲインあるいは等価的に6デシベルの信号対雑音比のゲインとなる。c2、c3およびc4に対応する3つの位相シフトは無線周波数(RF)、中間周波数(IF)あるいはベースバンドのいずれでもより簡便な方で行うことができる。理想的にはこのビーム形成器は360度全ての方位角で動作できるものとする。図8(A)および8(B)は極座標および直交座標の両座標においてθ=70度に対するアンテナアレイのビームパターンをそれぞれ示す。このパターンは携帯情報端末装置に到達する干渉のDOAについては取り扱わない。
【0051】
さて、θiのDOA(到来方位)を持つ干渉信号が端末に到達していると仮定する。図8の例において、明らかにアンテナアレイ20の減衰領域は比較的大きい。これは比較的広い角度伝播を有するクラスタからなる幾つかの干渉信号がアンテナアレイ20によって抑制できることを意味している。これは所望の信号のエンハンスメントに対しても成り立つ。従って、簡単なビーム切り替え法を用いて実用上適切な位相集合を見出すことが可能になる。即ち、位相シフト係数c2, c3およびc4の組み合わせが、例えば次のようなある不連続値の各々に対して事前に計算される。
【0052】
【数9】
【0053】
計算された位相シフト係数の集合はメモリ340に記憶される。
【0054】
本実施形態においては、位相シフト係数は10度毎に計算される。然しながら、本発明は本実施形態に限定されずそのような位相シフト係数の組み合わせ集合を計算するためのθ0として、その他のいかなる不連続値を用いてもよい。そして、所望の信号品質あるいは信号対干渉比(SIR)に基づき、37の選択可能な集合から最良の位相集合が選択される。その選択はセレクタ351により行われる。
【0055】
数値例として、θ0=120°およびθi=−20°とし、動作周波数f0=2GHzとする。図9はSIRを可能な限り増強するために選択されたビーム形成器のビームパターンを示す。
【0056】
上記のビーム形成器を用いたSIR増強のもう一つの改善指数として、その一例として、アンテナアレイ20に3つの干渉信号が到達しているとする。中心干渉の方位角はシミュレーションの計数値で−180から180度まで変化する。他の2つの干渉信号は中心干渉の+10度および−10度である。所望の信号角度は120度である。図10はSIR改善に対する中心干渉角を示す。明らかに最小ゲインはθ周辺でなければならず最大改善はθ+/−180°周辺となる。最大SIR改善は約30デシベルである。干渉信号の角度伝播が比較的小さい場合に対してはSIR改善が優れている。図11は2つの干渉信号が中心干渉信号の+5および−5であること以外は図10と同様にして得られた。ここで、最大改善は約34デシベルである。
(C)閲覧姿勢に対するヌルステアリング条件
個々のサイドローブレベルの制御を可能にする遠フィールドパターン合成に対しては、線形プログラミング法や摂動法を含む多数の最適化法がある (Streit, R., A. Nuttal, ”A general Chebyshev complex function approximation procedure and application to beamforming”, J. Acoust. Soc. America, vol. 72, no. 1, 1982, pp. 180−190; Su, C−W., ”Synthesis of linear arrays yielding a deep null pattern”, Proceedings of the IEEE International Symposiumof Antenna and Propagation Society, 1987, pp. 141−144)。
【0057】
これらの方法には多数のアンテナ素子が必要になるため制約がある。所望の角度θ0に深いヌルポイント(deep null)を割り当てるためにはそのアレイの指向性パターンがその方角でゼロゲインになる必要がある。本実施形態による4素子を有するアンテナアレイに対し、式(4)から以下の数式が導き出せる。
【0058】
【数10】
【0059】
そして所望の角度θ0に対しては、
【0060】
【数11】
【0061】
そしてθ≠θOに対しては、
【0062】
【数12】
【0063】
必ずしも未知の位相パラメータc1, c2, c3 およびc4集合が見出されて、数式(10)乃至(12)が満足されるとの保証は無い。しかしながら、切り替えヌルストラテジー(switched null strategy)が用いられるので、使用する角度の数を限定するのが望ましく、以下のようなより単純なアルゴリズムが提案される。
(1) −180度から+180度の全ての有意ペア (θ0,θn)について、
(2) C4の実部−1<Re(c4)<1の全ての有意値について、ここでその虚部はIm(c4)=A1/2、A=1−Re[c4]2 、
(3) C3の実部−1<Re(c3)<1の全ての有意値について、ここでその虚部はIm(c3)=B1/2、B=1−Re[c3]2、
(4) C2の実部−1<Re(c2)<1の全ての有意値について、ここでその虚部はIm(c2)=C1/2、C=1−Re[c2]2、
(5) 次式を計算
【0064】
【数13】
【0065】
(6) |H(θ)|の最大値および対応するθmaxを計算する、
(7) |θmax−θ0|が最小になるc1, c2, c3, c4の最適集合を見出す、
(8) その結果を6桁のマトリックスとして記憶する。これらの桁はθ0,θn, c1, c2, c3, c4である。
【0066】
このアルゴリズムにおけるパラメータ変化のステップ幅は必要とされる解像度に大きく依存する。更に、プログラミングを工夫すれば計算規模を大幅に削減することが可能である。一度これらの係数を計算しておけば、最適パターン選択のために、係数の組み合わせを順次呼び出すことで、各角度毎のヌルステアリングを切替えていくことができる。
【0067】
本実施形態においては、計算した係数の組合わせ集合が予めメモリ340に記憶される。セレクタ351は係数の組み合わせを一組づつ切り替えて採用し、その通信品質をチェックする。セレクタ351は利用できる組合わせ集合全体を一つづつチェックして、ヌルステアリングの最適パターンを選択することができる。
【0068】
C1は複素数であり位相シフトおよびゲイン調整を必要とするが、c2, c3, c4は純然たる位相であることを上記のプロセスは示している。ここで再度、360度切り替えヌルステアリングが実施される。ヌル間同士の距離はシステムに要求される解像度に依存する。SIRの推定あるいは所望の信号電力により最適ビーム形成が実現される。
【0069】
数値事例として、所望の角度がθ0= 120°であり、干渉信号がθi= −20°から到達するものとする。提案されたアルゴリズムに従い、θn= −20°と図12に示す指向性パターンが求められる。干渉角での増幅度は丁度ゼロであるがそのヌル幅は約20度だけである。
【0070】
同様にして、SIR改善度を調べた。3つの干渉信号がアレイに到達しているものと仮定する。中心干渉信号の方位角はシュミレーションの計数値であり−180度から180度まで変化する。その他の2つの干渉信号は中心干渉の+10度および−10度である。所望の信号角度は120度である。図13はSIR改善に対する中心干渉角度を示す。ヌルステアリングによる改善は、図13と図10とを比較した場合、ビーム形成の場合より多少低くなっており、この傾向は干渉の角度伝播が増大すると更に悪化する。図14はこの事実をより明瞭に示している。なお、干渉のDOAが狭い領域に限定されている場合、その方角で生成される深いヌル(deep null)は極めて高いSIR改善を提供する。
【0071】
以上説明したビーム形成とヌルステアリングの両者の場合において、選択された係数には所望のDOAの情報が含まれる、よって図4で示した表示パネル390a上に正しく与えられるコンパス矢印はユーザがその携帯情報端末装置1に到達する最善の信号の方角を知る手助けとなる。
(D)通話姿勢に対する3次元ビーム形成およびDOA推定スキーム
図6に示す通話姿勢においては、携帯情報端末装置1の表示部1aは到達信号に対しほぼ垂直位置になる。アンテナ素子の4つの組み合わせ (M1, M2, M3), (M1,M2, M4), (M3, M4, M1), (M3, M4, M2)のそれぞれが方位角と仰角ビーム形成あるいはDOA推定に使用できる。本実施形態においては、4つのアンテナ素子21乃至24の中3つのアンテナ素子だけを携帯情報端末装置1の柔軟性改善のために使用する。各方角に対して2つのアンテナ素子だけが提供されるので干渉信号角でのヌル生成は困難である。
【0072】
一般的に、アンテナアレイ20は最強信号の性能だけを改善できる。これら3つのアクティブなアンテナ素子を選択するための異なるオプションを備えておけば、一つのアンテナ素子がユーザの手で覆われたりあるいは有効信号電力を受信できない場合にもアンテナアレイ20が機能を維持できる柔軟性を提供できる。
【0073】
最強信号の方位角と仰角とから得られた知識から、その選択された3つの素子で受信された信号の位相調整用に必要な位相値が与えられる。従って、無線周波数あるいはベースバンドでの適切な位相を施すことによって、元の信号の3倍の増幅度に等しい振幅を有する所望の信号が得られる。これは3つの信号の加算後のノイズ電力が約4.8デシベル増幅されたのに対しその所望信号電力は9.6デシベル改善したことを意味する。したがって、4.8デシベルのSIR改善が達成されたことになる。
【0074】
この3次元DOA推定とビーム形成法は2つの2次元のケースに分解できる。図15は回路例であり、2つのアンテナ素子20a, 20bで受信された信号のI成分とQ成分とからそのDOAを与えるものである。アンテナ素子20a, 20bはアンテナ素子21乃至24のどの組み合わせでもよい。次にDOAの計算された値は図16の位相回路に用いられる。両図面は回路シミュレーションソフトSimulink (米国MathWorks社商標)を使用して設計された。回路の基本解析法を以下に説明する。
【0075】
2つのアンテナ素子に到達するr(t)とr(t−τ)で示される信号は以下のように表せる。
【0076】
【数14】
【0077】
【数15】
【0078】
ここで、ωc=2πfcで、fcは搬送周波数である。この一般的な表現の到達信号は変調タイプではない。r1(t)およびr2(t)のI成分およびQ成分は次のように定義される。
【0079】
【数16】
【0080】
【数17】
【0081】
【数18】
【0082】
【数19】
【0083】
ここで、信号のバンド幅が搬送周波数よりはるかに小さいので、
φ(t−τ)=φ(t)およびA(t−τ)=A(t)と仮定する。遅延τは次のように表すことができる。
【0084】
【数20】
【0085】
ここで、dは素子間間隔(d1, d2)である。式(16)乃至(19)から容易に次式が証明される。
【0086】
【数21】
【0087】
ωcτ=2πfc(d/c)sinθであるから、θは次のように計算できる。
【0088】
【数22】
【0089】
もしそのアンテナ素子にマルチバンド機能があれば、式(22)の結果は複数の周波数バンドにも使用できる。
【0090】
図15は多様な機能性を有するシュミレーションブロックにより式(21)、(22)をシミュレートするためのブロック図を示す。図15のシミュレーションブロック図において、I−Q復調器ブロック1501、1502は式(14)、(15)で定義されるシミュレートされたアンテナ信号と、発振器ブロック1503からの基準発振信号とを受けて受信信号をI成分信号とQ成分信号とに検波復調する。復調器ブロック1501,1502(式(16)乃至(19))からのIおよびQ成分信号は乗積ブロック1504−1507、1510と、加算ブロック1508乃至1509と、逆cosine計算用のアークコサインブロック1511とで構成される回路に供給されて、式(21)により位相cが求められる。
【0091】
更に、位相ωcτはゲインブロック1512、乗積ブロック1513および逆サイン計算用のアークサインブロック1516に与えられて、式(22)による到達信号の方向であるθの暫定値が求められる。平均値ブロック1519はθの平均値を計算し、そのθの平均値は推定DOAとして出力される。
【0092】
次に、ビーム形成達成のために必要な位相ωcτが図16のブロック回路図に挿入される。図16のブロック図において、アンテナ素子20aからの信号のI、Q成分の位相をシフトするために推定位相ωcτ1601(本実施形態では数値0.937が用いられる) が位相ブロック1602、1603に与えられる。位相がシフトされたI, Q成分の信号は加算ブロック1604、1605でアンテナ素子20bからの信号の対応する成分にそれぞれ加算される。
(E)アンテナアレイ制御と信号処理の戦略
本発明の一実施形態においては、DOA推定、ビーム形成およびヌルステアリングはアンテナアレイ20の機能を制御し、予め設定された信号処理を施すことにより実現される。アンテナアレイ20の機能はアンテナ素子21乃至24から受けた信号の位相をシフトすることおよび/またはそのアンテナ素子の送信・受信処理部への接続を変更することにより制御される。位相量は、例えば図3のセレクタ351によりアレイコントローラ310を介し、位相に対応してメモリ340に予め記憶された値あるいは値郡を選択することにより制御される。
【0093】
図17はアンテナアレイ制御と信号処理戦略(strategy)の一例を示すフローチャートである。その戦略は上記検討結果に基づき準備された。即ち、ヌルステアリングは干渉信号の伝播角度が小さいときに優れた性能を発揮し、ビーム形成がより容易に実施可能である。
【0094】
先ず、ステップ1700において携帯情報端末装置1の位置が通話姿勢か閲覧姿勢にあるかが決定される。その位置決定のためには任意の方法を用いてもよい。例えば、音声通信が検出されれば通話姿勢として、あるいは表示機能を開始するボタンあるいはスイッチが操作されれば閲覧姿勢としてその位置が決定される。あるいは、携帯情報端末装置1の姿勢は重力の方向に関して決定してもよい。即ち、全てのアンテナ素子が置かれているアンテナアレイ面が重力方向に平行であるかないかによりその位置を決定する。
【0095】
携帯情報端末装置1が通話位置であると決定されると、アンテナ素子21乃至24のいずれか3つの素子を用いて上記の三次元DOA推定とビーム形成がステップ1710、1711で行われる。ステップ1712においては、通信品質が改善されたかどうかを見るために通信の品質がチェックされる。現在のスキームの採用後に品質改善が検出されれば現在のスキームが維持される(ステップ1730)。品質改善が見られなければ、ステップ1740において、通信品質を改善するための別の信号処理スキームが採用される。
【0096】
ステップ1700、1720において携帯情報端末装置1の位置が閲覧姿勢であると検出されると、ステップ1710、1711において4つのアンテナ素子21乃至24を用いた上記の方位角ビーム形成が行われる。次に、ステップ1722において通信品質が改善されたかどうかを調べるため通信の品質がチェックされる。現在のスキームの採用後に品質改善が検出されれば、現在のスキームが維持される(ステップ1730)。品質改善が見られなければ、ステップ1723において4つのアンテナ素子21乃至24を用いた上記の方位角ヌルステアリングが実行されて、ステップ1724において通信品質の改善がチェックされる。品質改善が見られれば、現状のスキームが維持される(ステップ1730)。品質改善が見られなければ、ステップ1740において通信品質改善のために別の信号処理スキームが採用される。
【0097】
通話および閲覧姿勢の両者の場合で、ステップ1740における最後の代替案はアンテナダイバーシティーあるいはSIR/SINR増強法である。2乃至4アンテナ素子を使ったアンテナダイバーシティの一例がDinnis et alにより開示されている (Dinnis, A. K., J. S. Thompson, ”Effect of handset antenna diversity on a high data rate packet CDMA wireless system”, Proceedings of the VehicularTechnology Conference, vol. 1, Fall 2001, pp. 348−352; Colburn, J. S.,Y. Rahmat−Samii, M. A. Jensen and G. J. Pottie, ”Diversity performanceof dual antenna personal communications handset”, Proceedings of the IEEE International Symposium of antenna and Propagation Society, vol. 1, 1996, pp. 730−733)。SIR/SINR増強法の一例がChan, et alにより開示されている(Chan, P. W. C., R.S. Cheng. and C. C. Ling, ”Low−complexity antennadiversity receivers with SINR enhancement for WCDMA handsets”, Proceedings IEEE Wireless Communications and Networking Conference, vol. 1, 1999, pp. 276−280)。これらの手法は複雑な信号処理技術を要しかつ適切なチャンネル推定に依存する。
【0098】
図17に記載したこれらスキームの選択は携帯情報端末端末の電源がオンであれば何時実行してもよい。採用するアンテナアレイ制御と信号処理スキームの選択は音声通信が発生していない間に完了することが好ましい。
【0099】
上記の本実施形態によれば、小型携帯情報端末端末用の適応型アンテナアレイの制御方法が提供される。複数のアンテナ素子を用いて到達信号をより優れて処理するために、携帯情報端末姿勢と環境特性のいくつかの条件を検討した。本実施形態の利点は以下のようにまとめられる。
(1)アンテナ間隔が一般的な送受器携帯情報端末(携帯電話機等)サイズに適している。
(2)切り替えビーム形成あるいはヌルステアリングの採用により、計算速度が向上しその複雑性が軽減される。
(3)携帯情報端末の二つの異なる姿勢が別個独立してに処理される。
(4)通話姿勢において送信電波が利用者の頭部を通過しない。
(5)ビーム形成には3つの移相器だけが必要であり、閲覧姿勢でのヌルステアリングには前記3つの移相器と複素数ゲイン調整とが必要とされる。
(6)無線周波数(RF)とベースバンドの移相器の両方が採用できる。
(7)新規なヌルステアリングアルゴリズムにより、狭帯域角度伝播干渉信号に対してヌルポイント(deep null)を提供する。
(8)通話姿勢において、異なる素子の組み合わせの選択が可能なである。これにより利用者の手で覆われた一つ乃至二つのアンテナ素子システムの性能劣化の影響を小さくできる。
【0100】
本発明の説明では以上の具体的な望ましい実施形態について述べたが、その範囲内でその他の変更、修正、組み合わせ等が可能である。従って本発明の範囲内で上記具体的な事例以外のどのような変更も可能であると理解されるべきである。
【0101】
上記の実施形態においては、アンテナアレイは2つないし4つの素子を有すると想定された。そのアンテナアレイに含まれるアンテナ素子の数はそれに限定されず異なる数のアンテナ素子であってもよい。
【0102】
上記の実施形態において通信の品質はSIRで測定される。しかし、通信品質は信号対雑音比SNR、信号対干渉プラス雑音比SINRあるいはその他の通信品質を評価できる如何なる指標を用いて測定してもよい。
【0103】
本発明の上述の実施形態においては携帯情報端末装置が携帯電話機である場合について応用されたものだが、その他、PDA、パソコン等のような無線通信機能を備える様々な装置に応用してもよい。
【0104】
【発明の効果】
本発明によれば、環境が変化しても効果的に動作できる移動通信用のアンテナアレイを備える携帯情報端末装置と、携帯情報端末装置のアンテナアレイの設定および動作方法とが提供される。
【0105】
更に、本発明によれば、通信性能を改善するために携帯情報端末アレイにおいて採用すべきアンテナアレイ制御スキームの選択が可能な移動通信用アンテナアレイを備えた携帯情報端末装置と、その携帯情報端末アレイにおいて採用すべきアンテナアレイ制御スキームを選択する方法とが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】単一無指向性アンテナを有する従来の携帯情報端末装置である。
【図2】本発明の一実施形態による四素子長方形アレイに対するアンテナ配置である。
【図3】本発明の一実施形態による携帯情報端末装置の概略ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による携帯情報端末装置上に表示された表示画像例を説明する概略図である。
【図5】携帯情報端末装置の通話姿勢を示す図である。
【図6】携帯情報端末装置の閲覧姿勢を示す図である。
【図7】図3の携帯情報端末装置のアンテナアレイとアレイ制御器の構成例を示す概要図である。
【図8】θ=70°に対するビーム形成の指向性パターンを示す図であり、(A)は直交座標の場合であり、(B)は極座標の場合を表現されたものである。
【図9】アレイ出力時のSIRを最大にするために37の可能な選択肢から選択されたビーム形成器のビームパターンを示す図である。
【図10】他の2つの干渉信号が中心干渉信号の+/−10°である中心干渉信号のDOAの関数としてのビーム形成器のSIR改善を示す図である。
【図11】他の2つの干渉信号が中心干渉信号の+/−5°である中心干渉信号のDOAの関数としてのビーム形成器のSIR改善を示す図である。
【図12】深いヌルポイントを有するヌル生成器のSIR指向性パターンを示す図である。
【図13】他の2つの干渉信号が中心干渉信号のである中心干渉信号のDOA関数としてのヌル生成器のSIR改善を示す図である。
【図14】他の2つの干渉信号が中心干渉信号の+/−5°である中心干渉信号のDOA関数としてのヌル生成器のSIR改善を示す図である。
【図15】DOA推定用の回路例を示す回路構成図である。
【図16】ビーム形成用の回路例を示す回路構成図である。
【図17】本発明の実施形態による4つのアンテナ素子を持つ携帯情報端末装置を使用するための総合戦略構想を示すフローチャート概要図である。
【符号の説明】
1:携帯情報端末装置、1a:表示部、1b:キーボード部、20:アンテナアレイ、21乃至24:アンテナ素子、310:アレイ制御器、311乃至314:移相器、390:表示パネル、351:セレクタ。
Claims (13)
- アンテナ部、受信部および送信部を含む通信装置において、
前記アンテナ部は少なくとも2つのアンテナ素子を含むアンテナアレイと、
前記少なくとも2つのアンテナ素子からの信号を受けて到達信号の方向を推定し、前記到達信号の推定方向を用いて前記アンテナアレイの指向性パターンを設定するアレイ制御器とを備えることを特徴とする通信装置。 - 前記アレイ制御器は、前記アンテナ素子に接続する複数の移相器を備え、
前記移相器においてシフトされるべき位相量を決定することにより前記アンテナアレイの指向性パターンを設定することを特徴とする請求項1記載の通信装置。 - 前記アレイ制御器は、アンテナアレイの指向性パターン設定のために前記アンテナアレイに適用できる複数のパターン設定条件を記憶するデータ記憶部をさらに備え、
前記アレイ制御器は、受信信号の品質情報を受けて、前記品質情報に基づき前記パターン設定条件の一つを選択することを特徴とする請求項2記載の通信装置。 - 前記データ記憶部は複数の位相組み合わせをさらに記憶し、
前記各位相組み合わせは、前記複数の移相器のそれぞれにおいてシフトされるべき位相の集合であり、前記パターン設定条件のそれぞれに対して与えられるものであって、
前記アレイ制御器は、前記品質情報に基づいて選択されたパターン設定条件に対して前記複数の位相組み合わせの一つを選択することを特徴とする請求項3記載の通信装置。 - 前記アンテナ部はアンテナアレイ面が垂直方向および水平方向のいずれか一方により近いかを検出する検出器をさらに具備し、
前記アレイ制御器は前記品質情報と前記検出結果とに基づき、前記パターン設定条件の一つを選択することを特徴とする請求項3記載の通信装置。 - 前記パターン設定条件には、ビーム形成条件およびヌルステアリング条件のいずれか一方を前記アンテナアレイにおいて実現するためのプログラムが含まれていることを特徴とする請求項3記載の通信装置。
- 前記アレイ制御器により決定された到達信号の推定方角を示す情報を表示する表示部をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
- 前記通信装置は携帯電話装置であり、
前記アンテナ素子は前記携帯電話装置で通話時に利用者が面する側とは異なる側に配置されることを特徴とする請求項1記載の通信装置。 - 前記アレイ制御器で決定された到達信号の推定方角を示す画像記号を表示する表示部をさらに具備することを特徴とする請求項8記載の通信装置。
- アンテナ部、受信部および送信部を含む通信装置において、前記アンテナ部は
N個のアンテナ素子(Nは2以上の整数)と、
前記アンテナ素子により受信された信号の位相をシフトさせるためのN−1個の移相器を含む位相部と、
前記N−1個の移相器のそれぞれにおいてシフトされるべきN−1個の値を含む位相値の組み合わせを複数組記憶するメモリと、
通信の品質を検出する品質検出器と、
前記アンテナアレイに対して設定すべき位相値の組み合わせを順次設定し、前回と異なる位相値の組み合わせが適用される度に通信品質をチェックし、前記通信品質が最大となる位相値の組み合わせを用いて前記アンテナアレイの指向性パターンを設定するコントローラと
を具備することを特徴とする通信装置。 - 少なくとも2つのアンテナ素子を含むアンテナアレイの指向性パターンを設定する方法であって、
前記アンテナアレイの指向性パターンを設定するための前記アンテナアレイに適用可能な複数のパターン設定条件を記憶し、
前記記憶されたパターン設定条件の一つを採用した場合の通信品質を検出し、前記記憶されたパターン設定条件のうち他の条件が採用された場合の通信品を検出し、
前記検出された2つの通信品質を比較し、
前記比較により、通信品質がよい方のパターン設定条件を選択して前記アンテナアレの指向性パターンを設定することを特徴とする方法。 - 前記アンテナアレイの面が垂直方向および水平方向のいずれか一方により近いかをさらに検出するものであって、
前記パターン設定条件は、前記品質比較結果と前記アンテナアレイ面の位置検出結果に基づき選択されることを特徴とする請求項11記載の方法。 - 前記パターン設定条件はビーム形成条件およびヌルステアリング条件のいずれか一方を前記アンテナアレイにおいて設定するための条件を含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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2002
- 2002-10-02 JP JP2002289741A patent/JP2004128847A/ja active Pending
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