[0001]本開示は一般にワイヤレス通信に関する。より詳細には、本開示は、ミリメートル波フェーズドアレイ通信システム(millimeter wave phased array communication systems)に関する。
[0002]ミリメートル波(MMW:Millimeter wave)送信は見通し線(line-of-sight)に沿って進み、建築物の壁によって遮断され(blocked)、または群葉によって減衰され得る。高い自由空間損失および大気吸収(atmospheric absorption)は、伝搬を数キロメートルに制限することがある。したがって、MMWは、周波数再利用によってスペクトル利用を改善する、パーソナルエリアネットワークなどの極めて稠密な通信ネットワークのために有用である。
[0003]MMW送信の比較的高い減衰により、受信された送信の精度および利得を増加させるために、複数アンテナアレイが使用され得る。アンテナアレイのうちのいくつかは、多入力、多出力(MIMO)アンテナアレイ、またはフェーズドアレイシステムであり得る。
[0004]本開示の一態様は、第1のアンテナ要素と第2のアンテナ要素とを備える、フェーズドアレイシステムを提供する。第1のトランシーバが、第1の電力増幅器を有し、第1のアンテナ要素に動作可能に結合され得る。第2のトランシーバが、第2の電力増幅器を有し、第2のアンテナ要素に動作可能に結合され得る。第1の電力検出器が、第1のアンテナ要素に結合され、第1の検出器出力を与えることができる。第2の電力検出器が、第2のアンテナ要素に結合され、第2の検出器出力を与えることができる。利得コントローラが、第1のトランシーバと、第1の電力検出器と、第2のトランシーバと、第2の電力検出器とに動作可能に結合され得る。利得コントローラは、第1の検出器出力と第2の検出器出力とに基づいて、第1のトランシーバおよび第2のトランシーバのうちの1つまたは複数を無効にすることができる。
[0005]本開示の別の態様は、フェーズドアレイシステムにおけるワイヤレス通信のための方法を提供する。フェーズドアレイシステムは、少なくとも、第1の電力増幅器を有する第1のトランシーバに動作可能に結合された第1のアンテナ要素と、第2の電力増幅器を有する第2のトランシーバに動作可能に結合された第2のアンテナ要素とを有することができる。本方法は、第1のトランシーバと第2のトランシーバとを有効にすることを備え得る。本方法は、第1の電力検出器および第2の電力検出器のうちの少なくとも1つからの検出器出力を検出することをさらに備え得る。本方法は、最大効率の所定の範囲においてアンテナアレイの動作を維持しながら、検出器出力に基づいて、第1のトランシーバおよび第2のトランシーバのうちの1つまたは複数を無効にすることをさらに備え得る。
[0006]本開示の別の態様は、フェーズドアレイシステムにおけるワイヤレス通信のための装置を提供する。フェーズドアレイシステムは、複数のトランシーバのうちのそれぞれの第1のトランシーバおよび第2のトランシーバに動作可能に結合された第1のアンテナ要素および第2のアンテナ要素を有することができる。本装置は、第1のトランシーバおよび第2のトランシーバの各々を有効にするための利得制御手段を備え得る。利得制御手段は、さらに、有効にされたトランシーバの最大効率を維持しながら、検出器出力に基づいて、第1のトランシーバおよび第2のトランシーバのうちの1つまたは複数を無効にすることができる。本装置は、利得制御手段に第1の検出器出力を与えるための第1の検出手段をさらに備え得る。第1の検出手段は、第1のアンテナに動作可能に結合され得る。本装置は、利得制御手段に第2の検出器出力を与えるための第2の検出手段をさらに備え得る。第2の検出手段は、第2のアンテナに動作可能に結合され得る。
[0007]本開示の別の態様は、複数のアンテナ要素を備えるフェーズドアレイシステムを提供する。複数のアンテナ要素の各アンテナ要素は、複数のトランシーバのうちのそれぞれのトランシーバに結合され得る。各トランシーバは、調整可能利得をもつ少なくとも1つの電力増幅器を有することができる。電力検出器が、複数のアンテナ要素の各アンテナに結合され、検出器出力を与えるように構成され得る。検出器出力は、複数のアンテナ要素のうちのそれぞれのアンテナ要素における少なくとも出力電力レベルと反射エネルギーレベルとを示すように構成され得る。利得コントローラは、複数のトランシーバのうちのトランシーバの各々に、および各電力検出器に動作可能に結合され得る。利得コントローラは検出器出力を受信することができる。利得コントローラは、さらに、検出器出力に基づいて、フェーズドアレイシステムのための選択された送信電力レベルを達成するように1つまたは複数の選択された電力増幅器の調整可能利得を調整することができる。利得コントローラは、さらに、検出器出力に基づいて、複数のトランシーバのうちのトランシーバのうちの1つまたは複数を有効または無効にすることができる。
[0008]本発明の他の特徴および利点は、例として、本発明の態様を示す以下の説明から明らかであろう。
[0009]本開示の詳細は、それの構造と動作の両方について、添付の図面の検討によって部分的に収集され得、同様の参照番号は同様の部分を指す。
[0010]例示的なフェーズドアレイシステムの総伝送効率対実効等方放射電力(EIRP:effective isotropically radiated power)の一例を示すプロット図。
[0011]本開示による、フェーズドアレイシステムの例示的な実施形態の機能ブロック図。
[0012]図2の例示的なフェーズドアレイシステムの総伝送効率(total transmission efficiency)の一例を示すプロット図。
[0013]本開示による、フェーズドアレイシステムにおける最適な効率を維持するためにトランシーバを選択的に無効にするための例示的な方法を示すフローチャート。
[0014]フェーズドアレイシステムにおける最適な効率を維持するためにトランシーバを選択的に無効にするための別の実施形態を示すフローチャート。
詳細な説明
[0015]添付の図面に関して以下に記載される詳細な説明は、様々な構成を説明するものであり、本明細書で説明される概念が実施され得る構成のみを表すものではない。詳細な説明は、様々な概念の完全な理解を与えるための具体的な詳細を含む。ただし、これらの概念はこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることが当業者には明らかであろう。いくつかの事例では、よく知られている構造および構成要素は、説明を簡潔にするために簡略化された形態で示されている。
[0016]ミリメートル波(mmWまたはMMW)送信は、一般に、電磁スペクトルの30〜300ギガヘルツ周波数内に入ると考えられる。この範囲は、極高周波数(EHF:Extremely High Frequency)範囲と呼ばれることもある。EHFは、無線周波数の帯域のための国際電気通信連合(ITU)名称であり、それを上回る電磁放射は、テラヘルツ放射とも呼ばれる、遠赤外光であると見なされる。MMW帯域内の電波は、約1から10ミリメートルまでの波長を有し、これにより、ミリメートル帯域またはミリメートル波という名前が与えられている。
[0017]MMW放射の送信周波数および波長により、MMWシステムは、大気吸収および減衰を受けやすいことがある。MMW送信は、構造物(たとえば、壁および建築物)、あるいは群葉または降水などの他の自然現象によって妨げられるかまたは減衰され得る。したがって、いくつかのMMWシステムは、ワイヤレスシステムの利得を増加させ、余分の伝搬経路損失を補償するために、フェーズドアレイなどのアンテナアレイを使用し得る。したがって、MMWシステムは、さもなければ減衰される信号の強度を高めるように、受信機と送信機の両方の利得(G)を調整するように構成され得る。
[0018]フェーズドアレイアンテナは、送信された放射を「ステアリング」し、複数のビームまたは送信「ローブ」を作成するために、送信されたエネルギーの位相および大きさを使用する複数のアンテナ要素を備え得る。送信されたエネルギーは、送信フェーズドアレイ要素の平面にわたる電磁エネルギーにおける位相および大きさの変動から生じる、強め合うまたは弱め合う干渉(constructive or destructive interference)を活用することによって、ステアリングまたはダイレクトされ(directed)得る。
[0019]MMWシステムは、低雑音増幅器(LNA)、電力増幅器(PA)、ミキサ、および中間周波数(IF)/ベースバンド(BB)増幅器など、複数の内部構成要素により実装されるプログラマブル利得で構成され得る。フェーズドアレイアンテナからの総放射エネルギーは、次いで、様々なPA、LNA、または同様の構成要素の利得を調整することによって制御され得る。しかしながら、増幅構成要素の利得を調整することによる送信機電力の低減は、あるレベルで、構成要素の効率を低減し、準最適性能および電力損失を生じることがある。たとえば、1つまたは複数のアンテナ要素のPAの利得が、総送信電力を減少させるために低減されるとき、PAバイアスはA級増幅器動作へシフトする。これはまた、負荷インピーダンスを、最適な、整合したインピーダンスから離れてシフトし得る。
[0020]図1は、本開示による、例示的なフェーズドアレイシステムの総伝送効率対実効等方放射電力(EIRP)(total transmission efficiency versus effective isotropically radiated power)の一例を示すプロット図である。垂直(y)軸は総伝送効率であり、水平(x)軸はEIRPである。EIRPは、デシベル、特にdBm、または1ミリワット(mW)を基準とする測定電力のデシベルでの電力比換算で(in terms of)参照され得る。EIRPは、代替的に、1ワット(W)を基準とする、dBW換算で(in terms of dBW)参照され得る。
[0021]本明細書で説明されるように、EIRPは、概して、(すべての方向において電力を一様に分散する)理論等方性アンテナ(theoretical isotropic antenna)が、最大アンテナ利得の方向において観測されるピーク電力密度を生成するために放出する電力量を指すことがある。いくつかの実施形態では、EIRPは、いくつかの送信構成要素(たとえば、LNA、PAなど)およびコネクタ内で生じる損失を考慮に入れ得、アンテナ要素またはアンテナアレイ全体の利得を含む。EIRPは、しばしば、等価信号強度をもつ等方性送信機(isotropic transmitter)によって放出された基準電力を上回るデシベル(dBm、dBW)換算で(in terms of decibels)示される。EIRPは、異なるタイプのエミッタあるいは異なるサイズまたは形態を有するエミッタ間の比較のために有用であり得る。
[0022]プロット100によって記述される例示的なフェーズドアレイシステムは、固定数の有効にされたフェーズドアレイアンテナ要素を仮定する。たとえば、図1のプロット100を生成し得るフェーズドアレイは、所与の送信中に常に有効にされる8つのアンテナ要素を有し得る。
[0023]図示のように、プロット100は、結果として生じるシステムEIRPの線形性が減少するにつれて、システムの伝送効率が増加することを示す。最大線形EIRP110は、システムが線形性要件を満たす、最大EIRPと呼ばれることがある。所与のシステムが、最大線形EIRP100を下回る電力レベルで送信することを必要とされる場合、フェーズドアレイ要素のPAのうちの1つまたは複数の利得は低減され、フェーズドアレイ全体の全体的電力レベルを低減し得る。いくつかの実施形態では、これは、システムが所与の出力電力について必要な電力よりも多くの電力を消費し得るので、全体的システム効率の低減を生じることがある。
[0024]図2は、フェーズドアレイシステムの一実施形態の機能ブロック図である。図示のように、フェーズドアレイシステム200は、複数のアンテナ要素(要素)202a〜202n(まとめて、要素202)を含み得る。アンテナ要素202の各々は、概して、それぞれ、個々のアンテナと見なされ得る。
[0025]アンテナ要素202は202a、202nと標示され、たとえば、図示のように、アンテナ要素1:Nなど、任意の数のアンテナ要素202が存在し得ることを示す。図示のように、省略記号と同様の一連の3つのドットが、図2の要素の反復部分を示す。これは、図2中のいくつかの場所に示されている。いくつかの実施形態では、アンテナ要素202の各々は、以下で説明される様々な構成要素を介して、送信機入力と受信機出力とに動作可能に接続され得る。この実施形態では、アンテナ要素202の各々は、本明細書で開示されるように、MMW送信を送信および受信するように構成される。
[0026]フェーズドアレイシステム200は、送信機入力(Tx in)204を含み得る。いくつかの実施形態では、Tx in204は、モバイル電子デバイス中の(フェーズドアレイシステム以外の)無線機の他の要素など、いくつかの電子機器からの信号源からの送信機入力を表し得る。送信機入力は、無線周波数(RF)送信、または受信機への送信のための他の同様の入力であり得る。
[0027]Tx in204は、送信機(Tx)アップコンバータ206に動作可能に結合される。Txアップコンバータ206は、MMWフェーズアレイシステム200が動作している周波数帯域に入力を変換するように構成された、いくつかの副構成要素を含み得る。
[0028]Txアップコンバータ206は、必要に応じて、アップコンバートされた信号を増幅するように構成された少なくとも1つの送信機可変利得増幅器(TxVGA)208に動作可能に接続され得る。TxVGA208は、電力スプリッタ210に動作可能に結合され得る。電力スプリッタ210は、TxVGA208からの入来信号を、アンテナ要素202a〜202nの各々への送信のために、n個の部分にスプリットするように構成され得る。いくつかの実施形態では、電力スプリッタ210は、アンテナ要素202の各々による送信のために、信号を等量部分にスプリットし得る。スプリットされた信号の各部分は、次いで、図示のように、Tx位相シフタ212a〜212nに与えられ得る。Tx位相シフタ212a〜212n(まとめて、Tx位相シフタ212)は、それらが、フェーズドアレイシステム200の(たとえば、フェーズドアレイビームフォーミングのための)所望の送信方向を生成するために必要に応じて受信する、信号の位相をシフトするように構成され得る。Tx位相シフタ212は、多段電力増幅器(PA)220a〜220n(まとめて、PA220)など、電力増幅器に動作可能に結合され得る。PA220は、矢印によって示された、プログラマブル利得を有する電力増幅器の1つまたは複数の段を含み得る。利得は、以下で説明されるように、コントローラによってプログラムされ得る。PA220の各々は、対応するアンテナ要素202a〜202nに動作可能に接続され得る。したがって、PA220は、アンテナ要素202から送信される信号の電力レベルに直接影響を及ぼし得る。
[0029]いくつかの実施形態では、PA220と要素202との間の接続は、(図示のように)切替え接続(switched connection)であり、それは、アンテナ要素202の各々が信号を送信することと信号を受信することとの間で切り替わることを可能にする。
[0030]一実施形態では、アンテナ要素202の各々は、同じ切替え接続を介して、多段低雑音増幅器(LNA)230a〜230n(まとめて、LNA230)に動作可能に接続され得る。MMW送信の比較的高い減衰により、LNA230の各々は、低雑音増幅の1つまたは複数の段を含み得、アレイシステム200の残りに使用可能信号を与える。LNA230は、アンテナ要素202の各々において受信される入来信号に、Rx位相シフタ232a〜232n(まとめて、Rx位相シフタ232)に動作可能に接続され得る。Rx位相シフタ232の各々は、さらに、RxVGA236にさらに動作可能に接続され得る電力コンバイナ234に、位相シフトされた信号を与え得る。RxVGA236は、Rxダウンコンバータ238へのさらなる送信のために、組み合わせられた受信信号の利得を調整し得る。Rxダウンコンバータ238は、さらに、受信機出力(Rx out)205に動作可能に結合され得る。Rx out205は、所与のモバイルデバイスまたは他の適用可能なシステムによって必要とされるさらなる分析または変換を受け得るRF出力に類似し得る。
[0031]一実施形態では、フェーズドアレイシステム200は、利得コントローラ240をさらに含む。利得コントローラ240は、PA220の各々に動作可能に結合され、PA220の可変利得を制御するように構成され得る。そのような調整は、アンテナ要素202との最適なまたは整合したインピーダンスを維持する際に有益であり得る。利得コントローラ240はまた、電力検出器242a〜242n(まとめて電力検出器242)からいくつかの入力を受信するように構成され得る。電力検出器242の各々は、アンテナ要素202のアレイにわたる送信電力レベルまたは受信電力レベルの推定値を与えるために、それぞれのアンテナ要素202に動作可能に結合され得る。電力検出器242は、アンテナ要素202における入射RFエネルギーと反射RFエネルギーの両方を測定するように構成され得る。たとえば、反射RFエネルギーは、アンテナ要素202aにおいて送信され、アンテナ要素202aに、反射されて戻されたエネルギーであり得る。反射エネルギーは、モバイルワイヤレスデバイス(たとえば、UE)の場合のような手による遮断など、アンテナ妨害または遮断(antenna obstruction or blockage)を示し得る。
[0032]利得コントローラ240はまた、受信信号強度指示(RSSI)244を受信するように構成され得る。RSSI244は、アレイシステム200において受信された全体的または平均信号強度指示であり得る。利得コントローラ240に入力されるRSSI244は、さらに、各アンテナ要素202における電力レベル測定値の各々のための基準値を与え得る。そのような基準値は、さらに、受信信号または送信信号の方向の決定のためにアレイシステム200にとって有用であり得る。一実施形態では、RSSI244は、電力検出器242によって与えられ得る。
[0033]いくつかの実施形態では、電力検出器242は、各アンテナ要素202に容量結合され、(たとえば、各アンテナ要素202中の)チャネルごとの送信電力を測定するように構成され得る。電力検出器242はまた、手または他の物体によるアンテナの遮断を検出するために、所与のアンテナ要素202のための入射波(エネルギー)と反射波(エネルギー)の両方をさらに測定するために、結合された伝送線路に基づき得る。
[0034]そのような実施形態は、個々のアンテナ要素202送信電力の測定値に基づいて、および/またはRSSI244を監視することによって、個々のアンテナ要素202の利得を制御し得る。利得コントローラ240は、さらに、アンテナ要素202を個々に無効にすることなしに、要素単位で(たとえば、アンテナ要素202ごとに)個々に電力増幅器220利得を調整することによって、アンテナ送信電力を変化させ得る。そのような実施形態は、さらに、受信信号の電力レベルを適宜に調整するために、LNA230の利得を変化させ得る。
[0035]しかしながら、図1中において上述のように、PA220利得を調整または低減することによって、送信機電力(たとえば、アンテナ要素202の送信電力レベル)を低減することは、PA220の出力電力がそれの電力消費よりも速く減少するので、アレイシステム200の全体的効率を低減する。いくつかの実施形態では、PA220の出力電力はバイアス電流の2乗に比例し、電力消費はバイアス電流に比例する。この状況は、たとえば、フェーズドアレイシステム200が電話(phone)またはタブレットなどのユーザ機器(UE)において実装されたとき、起こり得る。そのような実施形態では、ユーザの手が、アレイシステム200の一部分を遮断し得る。したがって、MMWフェーズドアレイシステム200システムは、アレイシステム200中のアンテナ要素202の一部または全部の送信遮断について調整し得る。しかしながら、そのような遮断されたアンテナを介した信号の送信または試みられた受信は、電力の著しい浪費を生じ得る。
[0036]利得コントローラ240は、さらに、複数のトランシーバブロック(トランシーバ)250a〜250n(まとめて、トランシーバ250)に動作可能に結合され得る。トランシーバ250は、本明細書で説明されるように、少なくとも、Tx位相シフタ212およびPA220の各ペア、ならびにRx位相シフタ232およびLNA230の各ペアの集合的な機能を指すことがある。トランシーバ250は破線で示されており、少なくとも、説明される4つの要素の機能を指すことがある。たとえば、トランシーバ250aは、Tx位相シフタ212a、PA220a、LNA230a、およびRx位相シフタ232aの機能を指す。一実施形態では、本明細書で開示されるトランシーバ250はまた、波形生成/送信および受信構成要素、たとえば、PA220およびLNA230を指すことがある。別の実施形態では、トランシーバ250は、アンテナ要素202からエネルギーを送信および受信するように構成された送信機/受信機ペアを指すことがある。別の実施形態では、トランシーバ250は、特定のアンテナ要素202(たとえば、アンテナ要素202a)からの送信または受信動作中に、アレイシステム200から電力を引き出す構成要素を指すことがあり、たとえば、トランシーバ250aが無効にされたとき、電力はアンテナ要素202aから送信されず、トランシーバへの電力は最小限に抑えられる。
[0037]動作中、利得コントローラ240は、必要に応じて、1つまたは複数のそれぞれのトランシーバ250を除去する(remove)か、またはさもなければ非アクティブにするようにさらに構成され得る。そのような動作は、オンオフ電力スイッチと同様であり得る。これは、選択されたトランシーバ250から電力を選択的に除去することによって、アレイシステム200全体の効率および送信電力レベルを最適化するように働き得る。
[0038]一実施形態では、および以下で図3に関して説明されるように、遮断されたアンテナ要素202aの存在下で、利得コントローラ240は、電力検出器242から電力レベルに関する電力情報を受信し得る。その情報は、アンテナ要素202のうちの1つまたは複数が遮断されているか、またはさもなければ妨害されていることを、利得コントローラ240に示し得る。応答して、利得コントローラは、たとえば、いくつかの遮断されたアンテナ(たとえば、アンテナ要素202)に対応する、いくつかのアンテナ要素202を無効にし得る。したがって、利得コントローラ240は、関連付けられたトランシーバブロック250aから電力を除去する。その結果、電力はアンテナ要素202aに送出されないことがある。これは、後述のように、システム全体(たとえば、アレイシステム200)の電力消費を低減するように働き得る。いくつかの実施形態では、利得コントローラ240は、システム200の最大効率を維持するために、遮断された(1つまたは複数の)アンテナ要素202に応答して、他のPA220のうちの1つまたは複数の利得をコンカレントに調整し(たとえば、上げまたは下げ)得る。
[0039]図3は、図2の例示的なフェーズドアレイシステムの総伝送効率の一例を示すプロット図である。図示のように、プロット図300は、y軸に沿った総伝送(Tx)効率とともに、x軸に沿ったEIRPを示す。プロット図100(図1)と同様に、EIRPの単位は、dBm/dBW換算で参照され得る。
[0040]図300は、図100と同様である点線302を含み、PA220における調整可能利得を組み込んだフェーズドアレイシステム(たとえば、アレイシステム200)の効率を示す。点線302は、ポイント304における最小効率を有する最小EIRPから、図300の右側における(破線で示された)最大線形EIRP306まで増加する。
[0041]図300はまた、本開示の一実施形態に従って動作させられるアレイシステム200(図2)の伝送効率を示すライン320を示す。ライン320は、曲線の左側のポイント322において開始し、ポイント324において最大総効率までEIRPを増加させる。ポイント324は、ポイント304と同じまたは同様の効率を有し得るが、より低い最大EIRPにおいてである。
[0042]そのような実施形態によれば、いくつかのアンテナ要素202を無効にすることによって、信号はそれらのアンテナ要素202から受信および/または送信されない。選択された受信機/送信機ペア(たとえば、要素202a)を無効にすることによって、ある空間的方向におけるアレイシステム200の総利得は、20*log(Nenabled)として変化させられ、ここで、Nenabledは、アレイシステム200中の有効にされたアンテナの数である。利得は、有効にされたチャネル(たとえば、アンテナ要素202)の電力増幅器220が、最大効率で、最大利得設定で動作し続け得るように変化させられる。
[0043]たとえば、アレイシステム200が8つのアンテナ要素202を有する場合、個々のアンテナ要素202を有効または無効にすることは、利得コントローラ240が、1つ〜8つの有効にされた要素202の各々についてアレイシステム200の全体的利得を増分的にG+0dB、G+6dB、G+9.5dB、G+12dB、G+14dB、G+15.6dB、G+16.9dB、およびG+18dBに設定することを可能にし得、ここで、Gはオフセット利得である。これは、有効にされた電力増幅器220のバイアスまたは出力電力に影響を及ぼすことなしに可能であり得る。Nenabledが1に近づくとき、アンテナ要素202を有効または無効にするときの利得の変動は、ポイント330において示されるドロップなど、大きくなる。したがって、利得コントローラ240は、有効にされたPA220の利得を、中間電力(EIRP)レベルおよび関連付けられた効率に調整し得る。
[0044]右から左へ見ると、図3は、単一のトランシーバ250を無効にすることの効果におけるそのような対数的増加を示す。ポイント304において、システム200は、最大効率および最大EIRPにおいて動作している。一実施形態では、これは、トランシーバ250a〜n(および対応するPA220)の全部がすべて最大利得において機能していることを示し得る。アンテナ要素202のうちの1つまたは複数が遮断される場合、電力検出器242のうちの1つまたは複数は、アンテナ要素202のうちの1つまたは複数の部分的な妨害があることを、利得コントローラに示し得る。利得コントローラ240は、次いで、EIRPがポイント314に低減されるまで、システム効率に影響を及ぼすことなしに1つまたは複数のトランシーバの非アクティブ化を指令し得、ポイント314未満では、追加のトランシーバを非アクティブにする(たとえば、オフにする)ことは、所望よりも大きいEIRPステップを生じる。ポイント314において、別のトランシーバを完全に非アクティブにすることから起こり得るよりも小さい増分(increments)でのEIRPにおける漸次的低減が必要とされる場合、利得コントローラ240は、有効にされたPA220a〜nのうちの1つまたは複数の利得の減少を指令し得る。利得の減少は、ポイント315に向かって、EIRPおよび効率の減少を生じ得る。
[0045]ポイント315において、効率は、利得コントローラ240がトランシーバ250a〜nのうちの1つを無効にし得るレベルに、減少されたEIRPとともに減少する。利得コントローラ250は、さらに、有効のままであるトランシーバ250の利得をそれらの個々の最大線形値に同時にリセットし得る。一実施形態では、トランシーバ250a〜nのうちの1つのみが無効にされ、n−1個のトランシーバ250が有効のままであるとき、EIRPは、最大許容EIRPステップよりも小さいことがある、値、20*log(n/(n−1))dBによって定義されるEIRPステップによって低減され得る。EIRPステップは、たとえば、ポイント314からポイント315へのEIRPの低減を表し得る。ポイント314からポイント315へのステップが小さいので、有効にされたトランシーバ250のPA220の利得を調整する必要はないことがある。
[0046]EIRPは、上述のように、EIRPステップ値、20*log(Nenabled/(Nenabled+1))が(たとえば、ポイント314における)最大許容EIRPステップよりも大きくなるまで、トランシーバ250を非アクティブにすることによってさらに低減され得る。言い換えれば、有効にされたトランシーバ250と利用可能な総トランシーバ250との比がより小さくなるので、連続するEIRP減分(decrements)の大きさは増加し得る。したがって、EIRPの追加の低減は、EIRPがポイント315に向かうまで、有効にされたトランシーバ250の1つまたは複数のPA220の利得を低減することによって達成され得、ポイント315において、有効にされたトランシーバの利得低減は20*log(Nenabled/(Nenabled+1))に等しい。EIRPをポイント315未満に調整することは、一つまたは複数のトランシーバ250を非アクティブしながら、同時に、他の有効にされたトランシーバ250に関連付けられたPA220の利得をそれらの最大線形値に復元すること(restoring)によって達成され得、以下同様である。これは、妨害されていないアンテナ要素202に関連付けられた有効にされたPA220の最適性能を生じ得る。
[0047]一実施形態では、各トランシーバ250、および拡張によって、フェーズドアレイの各アンテナ要素202(アンテナ)は、利得コントローラ240によって決定されたように有効または無効にされるように構成される。個々のアンテナ要素202に(内部接続を介して)接続されたTx in204およびRx out205は、図2に示されているように、効果的にオンおよびオフにされ得る(たとえば、オン/オフスイッチ)。利得コントローラ240は、個々のアンテナ要素202に接続されたトランシーバ250に指令するための信号を生成し得る。
[0048]したがって、アレイシステム200のより低い利得のモードにおいて、または、1つまたは複数のアンテナ要素202の部分的な手の遮断中に、図1に関して説明されたシステムにわたる送信および受信効率の有意な改善は、利得コントローラ240がトランシーバブロック250を選択的に有効/無効にするように構成されたときに実現され得る。図3で説明されたようなアレイシステム200の効率は、利得設定Gmax−20log(N)において効率を増加させることができ、ここで、Nはアンテナの数である。
[0049]図4Aは、本開示による、フェーズドアレイシステムにおける最適な効率を維持するためにトランシーバを選択的に無効にするための方法を示すフローチャートである。図示のように、方法400はブロック410において開始し、フェーズドアレイシステム200がアレイ中の複数のアンテナ要素202を有効にする。一実施形態では、有効にすることは、複数の選択的に有効にされたアンテナ要素202に関連付けられたトランシーバ250に電力を加えること(applying)を指すことがある。別の実施形態では、選択的に有効にされたアンテナ要素202は、アレイ200中のアンテナ要素202の全部を備え得る。また別の実施形態では、利得コントローラ240は、本明細書で開示されるように、アンテナ要素202を有効にするように機能し得る。
[0050]ブロック420において、利得コントローラ240は、電力検出器242のうちの1つまたは複数からの入力とRSSI244とを受信し得る。その入力およびRSSI244はまた、検出器出力と総称されることがある。そのような出力は、1つまたは複数のアンテナ要素202における反射電力(reflected power)を示し得る。したがって、検出器出力は、アンテナ要素202のうちの1つまたは複数が妨害されるか、またはさもなければ遮断され得ることを示し得る。一実施形態では、妨害の存在下での(たとえば、関連付けられたトランシーバ250による)継続的送信は、浪費された電力およびより低い効率を生じ得る。
[0051]ブロック430において、利得コントローラ240は、検出器出力に応答して、影響を受けた(1つまたは複数の)アンテナ要素202に関連付けられたトランシーバ250から電力を除去し得る。一実施形態では、トランシーバ250から電力を除去することは、影響を受けた(1つまたは複数の)アンテナ要素202に関連付けられた送信機/受信機ペアをオフにすることを指すことがある。その結果、アクティブのままであるアンテナ要素202(たとえば、遮断されない(unblocked)アンテナ要素202)は、本明細書で開示されるように、それらの最大効率において動作し続ける。
[0052]いくつかの実施形態では、方法400は、検出器出力に基づいて、選択されたトランシーバ250を有効および無効にすることによって、アレイシステム200の最大効率を維持するかまたはさもなければ達成するために採用され得る。
[0053]図4Bは、本開示による、フェーズドアレイシステムにおける最適な効率を維持するためにトランシーバを選択的に無効にするための別の実施形態を示すフローチャートである。図示のように、方法450はブロック460から始まり、フェーズドアレイシステム200の複数のアンテナ要素202が有効にされる。一実施形態では、そのような複数は、システム200中のアンテナ要素202の全部であり得る。
[0054]ブロック470において、利得コントローラ240は、(たとえば、電力検出器242から)電力検出器出力を受信し得る。検出器出力は、システム200の最大線形EIRPに近づく状態での動作を示し得る。一実施形態では、そのような出力は、出力電力レベルと、電力増幅器220の利得と、RSSI244との間の比較の結果であり得る。検出器出力は、さらに、1つまたは複数のアンテナ要素202の部分的遮断または全遮断を示し得る。ブロック480において、利得コントローラ240は、影響を受けたトランシーバ250に関連付けられた電力増幅器220のうちの1つまたは複数の利得を調整し得る。一実施形態では、「調整すること」は、影響を受けた電力増幅器220の利得の増加または減少を含み得る。
[0055]ブロック485において、電力増幅器220の調整された(1つまたは複数の)利得に応答して、利得コントローラ240は、調整された電力増幅器220またはそれらの関連付けられたトランシーバ250、アンテナ要素202、および/あるいはアレイシステム200全体の効率の減少を示す(たとえば、電力検出器242からの)検出器出力を受信し得る。
[0056]ブロック490において、利得コントローラ240は、さらに、電力増幅器220の減少された効率に応答して、影響を受けた(1つまたは複数の)トランシーバ250から電力を除去し得る。一実施形態では、最適性能未満で動作しているトランシーバ250から電力を除去することは、システム200全体の全体的伝送効率を増加させ、残りの有効にされたトランシーバ250(たとえば、遮断による影響を及ぼされていないトランシーバ250)および関連付けられた電力増幅器220がそれらの最大効率において動作し続けることを可能にし得る。
[0057]したがって、いくつかの実施形態では、利得コントローラ240は、フェーズドアレイシステム200の最大EIRPを達成するかまたはさもなければ維持するために、ブロック470またはブロック485において検出器出力を受信し、トランシーバ250(および拡張によって、電力増幅器220)を有効または無効にし得る。
[0058]本開示の実施形態は、特定の実施形態について上記で説明されたが、本発明の多くの変形形態が可能である。たとえば、様々な構成要素の数は増加または減少され得、電源電圧を決定するモジュールおよびステップは、周波数、別のシステムパラメータ、またはパラメータの組合せを決定するために変更され得る。さらに、様々な実施形態の特徴は、上記で説明された組合せとは異なる組合せで組み合わせられ得る。
[0059]当業者は、本明細書で開示される実施形態に関して説明された様々な例示的なブロックが様々な形態で実装され得ることを諒解されよう。いくつかのブロックは、概してそれらの機能に関して上記で説明された。そのような機能がどのように実装されるかは、全体的なシステムに課される設計制約に依存する。当業者は、説明された機能を特定の適用例ごとに様々な方法で実装し得るが、そのような実装の決定は、本発明の範囲からの逸脱を生じるものと解釈されるべきではない。さらに、ブロックまたはステップ内の機能のグループ化は、説明を簡単にするためのものである。本開示から逸脱することなく、特定の機能またはステップが、あるブロックから移動され得るか、またはブロックにわたって分散され得る。
[0060]本明細書で開示された実施形態に関して説明された様々な例示的な論理ブロック、たとえば、利得コントローラ240は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のプログラマブル論理デバイス、個別ゲートまたはトランジスタ論理、個別ハードウェア構成要素、あるいは本明細書で説明された機能を実行するように設計されたそれらの任意の組合せを用いて実装または実行され得る。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであり得るが、代替として、プロセッサは、任意のプロセッサ、コントローラ(たとえば、本明細書で開示される利得コントローラ240)、マイクロコントローラ、または状態機械であり得る。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組合せ、たとえば、DSPとマイクロプロセッサとの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1つまたは複数のマイクロプロセッサ、あるいは任意の他のそのような構成として実装され得る。
[0061]本明細書で開示された実施形態に関して説明された方法またはアルゴリズムのステップは、直接ハードウェアで実施されるか、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで実施されるか、またはその2つの組合せで実施され得る。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROM(登録商標)メモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD−ROM、または任意の他の形態の記憶媒体中に常駐し得る。例示的な記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読み取り、記憶媒体に情報を書き込むことができるようにプロセッサに結合され得る。代替として、記憶媒体はプロセッサに一体化され得る。プロセッサおよび記憶媒体はASIC中に存在し得る。
[0062]開示された実施形態の上記の説明は、当業者が本開示を製作または使用できるように与えられた。これらの実施形態への様々な修正は当業者には容易に明らかであり、本明細書で説明された一般原理は、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用され得る。したがって、本明細書で提示された説明および図面は、本開示の現在好ましい実施形態を表し、したがって、本開示によって広く企図される主題を表すことを理解されたい。本開示の範囲は、当業者に明らかになり得る他の実施形態を完全に包含することと、したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲以外のものによって限定されないこととをさらに理解されたい。