JP2004128047A - 固体電解コンデンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】耐電圧の向上を図ることができる固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成する固体電解コンデンサにおいて、セパレータとして、ビニル基を有する化合物をバインダーとして20wt%以上、40wt%以下含むセパレータを用いる。重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
【解決手段】陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成する固体電解コンデンサにおいて、セパレータとして、ビニル基を有する化合物をバインダーとして20wt%以上、40wt%以下含むセパレータを用いる。重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解コンデンサに係り、特に、30WV以上の耐電圧を得ることができる固体電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用を有する金属を利用した電解コンデンサは、陽極側対向電極としての弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にして誘電体を拡面化することにより、小型で大きな容量を得ることができることから、広く一般に用いられている。特に、電解質に固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、小型、大容量、低等価直列抵抗であることに加えて、チップ化しやすく、表面実装に適している等の特質を備えていることから、電子機器の小型化、高機能化、低コスト化に欠かせないものとなっている。
【0003】
この種の固体電解コンデンサにおいて、小型、大容量用途としては、一般に、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸し、アルミニウム等の金属製ケースや合成樹脂製のケースにコンデンサ素子を収納し、密閉した構造を有している。なお、陽極材料としては、アルミニウムを初めとしてタンタル、ニオブ、チタン等が使用され、陰極材料には、陽極材料と同種の金属が用いられる。
【0004】
また、固体電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、二酸化マンガンや7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られているが、近年、反応速度が緩やかで、かつ陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れたポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDTと記す)等の導電性ポリマーに着目した技術(特許文献1参照)が存在している。
【0005】
このような巻回型のコンデンサ素子にPEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成するタイプの固体電解コンデンサは、以下のようにして作製される。まず、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔の表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して、多数のエッチングピットを形成した後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成する(化成)。陽極箔と同様に、陰極箔もアルミニウム等の弁作用金属からなるが、その表面にはエッチング処理を施すのみである。
【0006】
このようにして表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔とエッチングピットのみが形成された陰極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成する。続いて、修復化成を施したコンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、EDTと記す)等の重合性モノマーと酸化剤溶液をそれぞれ吐出し、あるいは両者の混合液に浸漬して、コンデンサ素子内で重合反応を促進し、PEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を生成する。その後、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納して固体電解コンデンサを作成する。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−15611号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、上述したような固体電解コンデンサが車載用として用いられるようになってきている。このような車載用として要求される耐電圧は、ますます高くなってきており、30WVの高耐電圧が要求されている。しかしながら、上述したような従来の製造方法によりこのような高耐電圧品を製造した場合、エージング工程でショートが発生する割合が高く、歩留まりが低いという欠点があった。
【0009】
また、近年、環境問題から高融点の鉛フリー半田が用いられるようになり、半田リフロー温度が200〜220℃から230〜270℃へとさらに高温化している。このような高温下におかれる半田リフローを行うと、電解質層の熱劣化又は結晶化によるものと思われるが、耐電圧が低下するという問題点があった。
なお、このような問題点は、重合性モノマーとしてEDTを用いた場合に限らず、他のチオフェン誘導体、ピロール、アニリン等を用いた場合にも同様に生じていた。
【0010】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、耐電圧の向上を図ることができる固体電解コンデンサを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく、車載用として要求される30WVの高耐電圧を実現することができる固体電解コンデンサを提供すべく、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
一般に、耐電圧を向上させるには、陽極箔の化成電圧をあげていけば良いが、図1に示すように、ある電圧(50V前後)以上は上昇しないという問題点を有している。また、30WVの耐電圧を保証するには、鉛フリー半田リフロー後のショート電圧は54V以上であることが望ましい。
このような観点から、本発明者は、セパレータに含有されるバインダーに着目し、ビニル基を有する化合物をバインダーとしたセパレータにおいて、セパレータが含有するバインダーの量が20wt%を越え、40wt%以下、好ましくは25〜30wt%とすると良好な結果が得られることが判明したものである。
【0013】
(セパレータ)
通常、合成繊維を主体とする固体電解コンデンサ用セパレータは、合成繊維とこれらを接合するバインダーから構成されている。このバインダーとしては、合成樹脂そのものを用いたり、合成樹脂を繊維状にして、セパレータの作成工程で溶融させて主体繊維を接合させている。本発明においては、バインダーとしてビニル基を有する化合物を用いたセパレータを用いる。また、セパレータに対するビニル基を有する化合物からなるバインダーの含有量は、20wt%を越え、40wt%以下、好ましくは25〜30wt%とすることが望ましい。
【0014】
そして、上記のセパレータを用いた場合に、60〜95℃の温水中で電圧印加する通常の修復化成工程で、ビニル基を有する化合物が溶解して、誘電体酸化皮膜上に吸着層が形成されることにより、良好な結果が得られたと考えられる。
なお、含有量がこの範囲を越えると、修復化成中に溶解したビニル基を有する化合物が誘電体酸化皮膜上に吸着して形成される吸着層が厚すぎるために、静電容量が低下し、ESRが上昇すると考えられる。また、含有量がこの範囲未満では、形成される吸着層が十分ではないために、耐電圧が低下すると考えられる。
【0015】
ここで、ビニル基を有する化合物としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等を用いることができるが、なかでもPVAがより好ましい。なお、セパレータの主体繊維としては、耐熱性に優れたポリエステル繊維又はナイロン繊維等の合成繊維を用いると、耐熱性が向上するので好適である。
【0016】
(修復化成の化成液)
修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、化成液の温度は60〜95℃、浸漬時間は5〜120分が望ましい。
【0017】
(EDT及び酸化剤)
重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
【0018】
また、酸化剤としては、エタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることができ、酸化剤の溶媒に対する濃度は40〜65wt%が好ましく、45〜57wt%がより好ましい。酸化剤の溶媒に対する濃度が高い程、ESRは低減する。なお、酸化剤の溶媒としては、上記モノマー溶液に用いた揮発性溶媒を用いることができ、なかでもエタノールが好適である。酸化剤の溶媒としてエタノールが好適であるのは、蒸気圧が低いため蒸発しやすく、残存する量が少ないためであると考えられる。
【0019】
(他の重合性モノマー)
本発明に用いられる重合性モノマーとしては、上記EDTの他に、EDT以外のチオフェン誘導体、アニリン、ピロール、フラン、アセチレンまたはそれらの誘導体であって、所定の酸化剤により酸化重合され、導電性ポリマーを形成するものであれば適用することができる。なお、チオフェン誘導体としては、下記の構造式のものを用いることができる。
【化1】
【0020】
(作用・効果)
本発明の構成で耐電圧が向上するのは、以下の理由によるものと思われる。すなわち、陽極箔の化成電圧を上げても固体電解コンデンサの耐電圧が上昇しないのは、重合性モノマーと酸化剤との重合反応によって得られる導電性ポリマー層に重合反応後の酸化剤が残余しており、この酸化剤が誘電体酸化皮膜に損傷を与えることによって、誘電体酸化皮膜の耐電圧が低下することが原因の一つと考えられる。
【0021】
本発明においては、セパレータにバインダーとして含有されたビニル基を有する化合物が修復化成中に溶解し、そのビニル基を有する化合物が誘電体酸化皮膜上に吸着して層を形成し、酸化剤のアタックを防御する結果、耐電圧が上昇すると考えられる。
【0022】
【実施例】
続いて、以下のようにして製造した実施例及び従来例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】
(実施例1)
PET繊維を主体繊維とし、PVAをバインダーとして20wt%含有するセパレータを用い、以下のようにして固体電解コンデンサを作成した。表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し、両電極箔を上記のセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子を80℃の化成液に浸漬して修復化成を行った。
一方、所定の容器に、EDTと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のエタノール溶液を混合し、コンデンサ素子を上記混合液に10秒間浸漬し、120℃、60分加熱して、コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成した。そして、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した。その後に、150℃、120分、5.2Vの電圧印加によってエージングを行い、固体電解コンデンサを形成した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は25WV、定格容量は120μFである。
【0024】
(実施例2)
PVAをバインダーとして25wt%含有するセパレータを用いた。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(実施例3)
PVAをバインダーとして28wt%含有するセパレータを用いた。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(比較例)
PVAをバインダーとして16wt%含有するセパレータを用いた。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
【0025】
[比較結果]
上記の方法により得られた実施例1〜実施例3及び比較例について、ピーク温度250℃、230℃以上30秒保持のリフロー加熱を行った後、ショート電圧を測定したところ、表1に示したような結果が得られた。
【表1】
【0026】
上述したように、30WVの耐電圧を保証するには、鉛フリー半田リフロー後のショート電圧は54V以上であることが望ましいが、表1から明らかなように、実施例1〜3のショート電圧はいずれも54V以上となっており、30WVの耐電圧を有する固体電解コンデンサを実現している。
これに対して、比較例のショート電圧は54V以下であり、30WVの耐電圧を有する固体電解コンデンサを実現することはできなかった。
【0027】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ビニル基を有する化合物をバインダーとしたセパレータにおいて、セパレータが含有するバインダーの量を20wt%を越え、40wt%以下とすることにより、耐電圧の向上を図ることができる固体電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】箔Vfsと製品耐圧の関係を示す図
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解コンデンサに係り、特に、30WV以上の耐電圧を得ることができる固体電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用を有する金属を利用した電解コンデンサは、陽極側対向電極としての弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にして誘電体を拡面化することにより、小型で大きな容量を得ることができることから、広く一般に用いられている。特に、電解質に固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、小型、大容量、低等価直列抵抗であることに加えて、チップ化しやすく、表面実装に適している等の特質を備えていることから、電子機器の小型化、高機能化、低コスト化に欠かせないものとなっている。
【0003】
この種の固体電解コンデンサにおいて、小型、大容量用途としては、一般に、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸し、アルミニウム等の金属製ケースや合成樹脂製のケースにコンデンサ素子を収納し、密閉した構造を有している。なお、陽極材料としては、アルミニウムを初めとしてタンタル、ニオブ、チタン等が使用され、陰極材料には、陽極材料と同種の金属が用いられる。
【0004】
また、固体電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、二酸化マンガンや7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られているが、近年、反応速度が緩やかで、かつ陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れたポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDTと記す)等の導電性ポリマーに着目した技術(特許文献1参照)が存在している。
【0005】
このような巻回型のコンデンサ素子にPEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成するタイプの固体電解コンデンサは、以下のようにして作製される。まず、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔の表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して、多数のエッチングピットを形成した後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成する(化成)。陽極箔と同様に、陰極箔もアルミニウム等の弁作用金属からなるが、その表面にはエッチング処理を施すのみである。
【0006】
このようにして表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔とエッチングピットのみが形成された陰極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成する。続いて、修復化成を施したコンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、EDTと記す)等の重合性モノマーと酸化剤溶液をそれぞれ吐出し、あるいは両者の混合液に浸漬して、コンデンサ素子内で重合反応を促進し、PEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を生成する。その後、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納して固体電解コンデンサを作成する。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−15611号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、上述したような固体電解コンデンサが車載用として用いられるようになってきている。このような車載用として要求される耐電圧は、ますます高くなってきており、30WVの高耐電圧が要求されている。しかしながら、上述したような従来の製造方法によりこのような高耐電圧品を製造した場合、エージング工程でショートが発生する割合が高く、歩留まりが低いという欠点があった。
【0009】
また、近年、環境問題から高融点の鉛フリー半田が用いられるようになり、半田リフロー温度が200〜220℃から230〜270℃へとさらに高温化している。このような高温下におかれる半田リフローを行うと、電解質層の熱劣化又は結晶化によるものと思われるが、耐電圧が低下するという問題点があった。
なお、このような問題点は、重合性モノマーとしてEDTを用いた場合に限らず、他のチオフェン誘導体、ピロール、アニリン等を用いた場合にも同様に生じていた。
【0010】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、耐電圧の向上を図ることができる固体電解コンデンサを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく、車載用として要求される30WVの高耐電圧を実現することができる固体電解コンデンサを提供すべく、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
一般に、耐電圧を向上させるには、陽極箔の化成電圧をあげていけば良いが、図1に示すように、ある電圧(50V前後)以上は上昇しないという問題点を有している。また、30WVの耐電圧を保証するには、鉛フリー半田リフロー後のショート電圧は54V以上であることが望ましい。
このような観点から、本発明者は、セパレータに含有されるバインダーに着目し、ビニル基を有する化合物をバインダーとしたセパレータにおいて、セパレータが含有するバインダーの量が20wt%を越え、40wt%以下、好ましくは25〜30wt%とすると良好な結果が得られることが判明したものである。
【0013】
(セパレータ)
通常、合成繊維を主体とする固体電解コンデンサ用セパレータは、合成繊維とこれらを接合するバインダーから構成されている。このバインダーとしては、合成樹脂そのものを用いたり、合成樹脂を繊維状にして、セパレータの作成工程で溶融させて主体繊維を接合させている。本発明においては、バインダーとしてビニル基を有する化合物を用いたセパレータを用いる。また、セパレータに対するビニル基を有する化合物からなるバインダーの含有量は、20wt%を越え、40wt%以下、好ましくは25〜30wt%とすることが望ましい。
【0014】
そして、上記のセパレータを用いた場合に、60〜95℃の温水中で電圧印加する通常の修復化成工程で、ビニル基を有する化合物が溶解して、誘電体酸化皮膜上に吸着層が形成されることにより、良好な結果が得られたと考えられる。
なお、含有量がこの範囲を越えると、修復化成中に溶解したビニル基を有する化合物が誘電体酸化皮膜上に吸着して形成される吸着層が厚すぎるために、静電容量が低下し、ESRが上昇すると考えられる。また、含有量がこの範囲未満では、形成される吸着層が十分ではないために、耐電圧が低下すると考えられる。
【0015】
ここで、ビニル基を有する化合物としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等を用いることができるが、なかでもPVAがより好ましい。なお、セパレータの主体繊維としては、耐熱性に優れたポリエステル繊維又はナイロン繊維等の合成繊維を用いると、耐熱性が向上するので好適である。
【0016】
(修復化成の化成液)
修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、化成液の温度は60〜95℃、浸漬時間は5〜120分が望ましい。
【0017】
(EDT及び酸化剤)
重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
【0018】
また、酸化剤としては、エタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることができ、酸化剤の溶媒に対する濃度は40〜65wt%が好ましく、45〜57wt%がより好ましい。酸化剤の溶媒に対する濃度が高い程、ESRは低減する。なお、酸化剤の溶媒としては、上記モノマー溶液に用いた揮発性溶媒を用いることができ、なかでもエタノールが好適である。酸化剤の溶媒としてエタノールが好適であるのは、蒸気圧が低いため蒸発しやすく、残存する量が少ないためであると考えられる。
【0019】
(他の重合性モノマー)
本発明に用いられる重合性モノマーとしては、上記EDTの他に、EDT以外のチオフェン誘導体、アニリン、ピロール、フラン、アセチレンまたはそれらの誘導体であって、所定の酸化剤により酸化重合され、導電性ポリマーを形成するものであれば適用することができる。なお、チオフェン誘導体としては、下記の構造式のものを用いることができる。
【化1】
【0020】
(作用・効果)
本発明の構成で耐電圧が向上するのは、以下の理由によるものと思われる。すなわち、陽極箔の化成電圧を上げても固体電解コンデンサの耐電圧が上昇しないのは、重合性モノマーと酸化剤との重合反応によって得られる導電性ポリマー層に重合反応後の酸化剤が残余しており、この酸化剤が誘電体酸化皮膜に損傷を与えることによって、誘電体酸化皮膜の耐電圧が低下することが原因の一つと考えられる。
【0021】
本発明においては、セパレータにバインダーとして含有されたビニル基を有する化合物が修復化成中に溶解し、そのビニル基を有する化合物が誘電体酸化皮膜上に吸着して層を形成し、酸化剤のアタックを防御する結果、耐電圧が上昇すると考えられる。
【0022】
【実施例】
続いて、以下のようにして製造した実施例及び従来例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】
(実施例1)
PET繊維を主体繊維とし、PVAをバインダーとして20wt%含有するセパレータを用い、以下のようにして固体電解コンデンサを作成した。表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し、両電極箔を上記のセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子を80℃の化成液に浸漬して修復化成を行った。
一方、所定の容器に、EDTと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のエタノール溶液を混合し、コンデンサ素子を上記混合液に10秒間浸漬し、120℃、60分加熱して、コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成した。そして、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した。その後に、150℃、120分、5.2Vの電圧印加によってエージングを行い、固体電解コンデンサを形成した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は25WV、定格容量は120μFである。
【0024】
(実施例2)
PVAをバインダーとして25wt%含有するセパレータを用いた。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(実施例3)
PVAをバインダーとして28wt%含有するセパレータを用いた。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
(比較例)
PVAをバインダーとして16wt%含有するセパレータを用いた。その他の条件及び工程は、実施例1と同様である。
【0025】
[比較結果]
上記の方法により得られた実施例1〜実施例3及び比較例について、ピーク温度250℃、230℃以上30秒保持のリフロー加熱を行った後、ショート電圧を測定したところ、表1に示したような結果が得られた。
【表1】
【0026】
上述したように、30WVの耐電圧を保証するには、鉛フリー半田リフロー後のショート電圧は54V以上であることが望ましいが、表1から明らかなように、実施例1〜3のショート電圧はいずれも54V以上となっており、30WVの耐電圧を有する固体電解コンデンサを実現している。
これに対して、比較例のショート電圧は54V以下であり、30WVの耐電圧を有する固体電解コンデンサを実現することはできなかった。
【0027】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ビニル基を有する化合物をバインダーとしたセパレータにおいて、セパレータが含有するバインダーの量を20wt%を越え、40wt%以下とすることにより、耐電圧の向上を図ることができる固体電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】箔Vfsと製品耐圧の関係を示す図
Claims (4)
- 陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成する固体電解コンデンサにおいて、
前記セパレータとして、ビニル基を有する化合物をバインダーとして20wt%以上、40wt%以下含むセパレータを用いたことを特徴とする固体電解コンデンサ。 - 前記ビニル基を有する化合物が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記重合性モノマーが、チオフェン誘導体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記チオフェン誘導体が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002287148A JP2004128047A (ja) | 2002-09-30 | 2002-09-30 | 固体電解コンデンサ |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008283085A (ja) * | 2007-05-11 | 2008-11-20 | Japan Vilene Co Ltd | 電解コンデンサ用セパレータ、この製造方法及びこれを用いた電解コンデンサ |
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2002
- 2002-09-30 JP JP2002287148A patent/JP2004128047A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008283085A (ja) * | 2007-05-11 | 2008-11-20 | Japan Vilene Co Ltd | 電解コンデンサ用セパレータ、この製造方法及びこれを用いた電解コンデンサ |
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