JP2004127723A - リチウムイオン二次電池用負極材料及びその製造方法、並びに、該負極材料を使用した負極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極材料及びその製造方法、並びに、該負極材料を使用した負極及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】初期効率、サイクル特性、安全性、急速充放電性、導電性などの特性を改善することのできるリチウムイオン二次電池用負極材料およびその製造方法、並びに、該負極材料を使用する負極およびリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池用負極材料は、粒状黒鉛2を核材とし、該核材の表面の全部または一部に鱗片状黒鉛1が付着していることを特徴とする。製造方法は、粒状黒鉛2、鱗片状黒鉛1、および、バインダーを混合し、焼成し、粉砕することを特徴とする。負極およびリチウムイオン二次電池は、上記負極材料または上記製造方法により作成された負極材料を使用することを特徴とする。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極材料とその製造方法、並びに、前記負極材料を使用したリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話、携帯情報端末、ビデオカメラ、ノートパソコンなどの普及に伴って、これらの電子機器に使用される電池の高性能化が求められている。これらの電子機器に使用される電池としては、例えば、リチウム二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などが知られているが、小型化、高電圧を供給できるという点からリチウム二次電池が注目されている。リチウム二次電池は、起電反応にリチウムが関与する二次電池の総称であり、より詳細には、負極に炭素電極を使用し、リチウム・コバルト複合酸化物などを正極に使用したリチウムイオン二次電池や、負極にリチウム合金を使用する金属リチウム二次電池などに分類される。現在、負極に炭素電極を使用したリチウムイオン二次電池が実用化されており、一層の高性能化が求められている。リチウムイオン二次電池の高性能化は、電池を構成する電極、セパレータ、電解質などを対象とする様々の観点から進められている(例えば、負極を構成する炭素電極を高性能化するものとして、特許文献1、特許文献2などがある。)
【0003】
【特許文献1】
特開2001−236950号公報
【特許文献2】
特許第3285520号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
負極に炭素電極を使用するリチウムイオン二次電池の要求特性としては、例えば、初期効率やサイクル特性を挙げることができる。リチウムイオン二次電池の最初に充電する電荷の一部は、負極(炭素電極)の表面に不動態膜を形成するのに消費されるので、最初に充電した電荷のすべてが放電されることはなく、最初の放電容量は、最初の充電容量に比べて低下する。この最初の充電容量に対する放電容量の比は、初期効率として表わされる。また、リチウムイオン二次電池の充放電を繰り返すと、1サイクル目の放電容量に対して、放電容量は徐々に低下していく。この1サイクル目の放電容量に対する放電容量の低下は、サイクル特性と言われる。これらの初期効率とサイクル特性は、リチウムイオン二次電池の重要な要求特性であり、これらの特性を高めることが望まれている。さらに、リチウムイオン二次電池では、電解液が炭素電極(黒鉛)の表面で分解され、ガスが発生したり、発熱することが指摘されている。そのため、かかる分解を抑制し、リチウムイオン二次電池の安全性を確保する必要がある。
【0005】
ところで、リチウムイオン二次電池の負極として使用される炭素電極は、鱗片状あるいは粒状の黒鉛を含むペーストを銅箔などの集電体に塗布乾燥し、プレスすることにより得られる。例えば、図1(a)は、鱗片状の黒鉛を使用し作製した炭素電極を例示する模式的断面図であり、鱗片状黒鉛1は、プレス圧によって集電体3に沿って配向してしまうため、電解液の通液性が低下する。電解液の電極内部への通液性が低下すると、電池の急速充放電性が低下する。また、図1(b)は、粒状黒鉛2を使用した炭素電極の模式的断面図であり、粒状黒鉛のみを使用した場合には、粒状黒鉛2、2間の接点が不足気味となるので、炭素電極の導電性が低下する傾向がある。さらに、炭素電極自体は、リチウムイオン二次電池の充放電の際に膨張・収縮するので、充放電に伴う膨張・収縮の繰返しによって炭素電極内部にクラックが生じ、導電性が一層低下する場合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、初期効率、サイクル特性、安全性、急速充放電性、導電性などの要求特性に優れるリチウムイオン二次電池用負極材料とその製造方法、並びに、該負極材料を使用した負極およびリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明とは、粒状黒鉛を核材とし、該核材の表面の全部または一部に鱗片状黒鉛が付着しているところに要旨がある。すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料は、粒状黒鉛を核材とし、該核材の全部または一部に鱗片状黒鉛が付着している黒鉛粒子よりなる。図1(c)は、本発明の負極材料を使用した負極(炭素電極)を例示する模式的断面図であり、粒状黒鉛2の表面に付着した鱗片状黒鉛1が隣接する粒状黒鉛2と接触することによって、粒状黒鉛2、2間の接点が増大し、導電性を大幅に高めることができる。また、粒状黒鉛2を核材としているので、プレス時に鱗片状黒鉛のように配向することがなく、電解液の通液性の良好な炭素電極が得られる。また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料は、粒状黒鉛を核材とし、該核材の表面の全部または一部に鱗片状黒鉛が付着している黒鉛と、鱗片状黒鉛の集合物および/または粒状黒鉛とが混合されていてもよい。かかる形状の黒鉛を一部に含有するリチウムイオン二次電池用負極材料であれば、同様の効果が得られるからである。
【0008】
また、本発明の製法は、粒状黒鉛、鱗片状黒鉛、および、バインダーとを混合し、焼成してから、粉砕することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法である。この方法を実施するに当たっては、粒状黒鉛および/または鱗片状黒鉛の一部または全部に代えて、焼成により粒状および/または鱗片状の黒鉛となる原料(以下、単に「黒鉛化原料」という場合がある)を使用することもできる。
【0009】
本発明はさらに、上記負極材料、或いは、上記製造方法により作製された負極材料を使用するリチウムイオン二次電池用負極、及び、該負極を使用するリチウムイオン二次電池を提供するものであり、本発明の負極材料を使用することによって、初期効率、サイクル特性などが改善される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照しながら説明するが、本発明は、図面に記載した事項に限定されるものではない。
(1)リチウムイオン二次電池用負極材料
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料は、粒状黒鉛を核材とし、該核材の表面の全部または一部に鱗片状黒鉛が付着していることを特徴とする。図2は、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料を例示する模式的断面図であり、リチウムイオン二次電池用負極材料は、粒状黒鉛2を核材とし、該核材の表面に鱗片状黒鉛1が付着している。本発明において、粒状黒鉛2を核材としているのは、プレス時に鱗片状黒鉛1が配向するのを防止し、電解液の通液性を維持するためである。また、粒状黒鉛2の表面に付着した鱗片状黒鉛1は、炭素電極中の隣接した黒鉛粒子と接触し、黒鉛粒子間の接点数を増加することにより、炭素電極の導電性を高める。
【0011】
本発明では、粒状黒鉛の表面の全部または一部に、鱗片状黒鉛が付着していればよく、例えば、粒状黒鉛の表面全体が鱗片状黒鉛で被覆されている態様、粒状黒鉛の表面の一箇所にのみ鱗片状黒鉛が付着している態様、粒状黒鉛の表面の複数箇所に鱗片状黒鉛が付着している態様であってもよい。いずれの場合も、黒鉛粒子間の接点数を低下させない程度に鱗片状黒鉛が付着していればよい。また、粒状黒鉛の表面は、複数の鱗片状黒鉛で被覆されていることが好ましく、例えば、図2に示したように、複数の鱗片状黒鉛が粒状黒鉛の表面にランダムに付着して被覆されていると、黒鉛粒子間の接点が増加しやすくなる。
【0012】
また、粒状黒鉛を核材とし、該核材の表面の全部または一部に鱗片状黒鉛が付着している黒鉛を一部に含有する負極材料、例えば、粒状黒鉛を核材とし、該核材の表面の全部または一部に鱗片状黒鉛が付着している黒鉛と、鱗片状黒鉛の集合物および/または粒状黒鉛が混合されている負極材料も本発明の好ましい態様である。図2に示したような形状の黒鉛を一部に含む負極材料も、本発明で意図する効果を発揮し得るからである。また、前記鱗片状黒鉛の集合物とは、複数の鱗片状黒鉛が塊状に集合したものであれば特に限定されず、例えば、鱗片状黒鉛同士がバインダーによって固着・集合した物、鱗片状黒鉛同士が静電的な作用によって集合した物などを挙げることができる。
【0013】
本発明の負極材料の比表面積は、0.5m/g以上、より好ましくは1m/g以上〜10m/g以下、より好ましくは7m/g以下であることが望ましい。比表面積が10m/g超になると、負極材料(黒鉛)の表面に生じる不動態膜の量が増加し、初期効率が低下するからである。一方、比表面積が0.5m/g未満になると、電解液との接触面積が小さくなって、急速充放電性が低下するからである。また、本発明の負極材料は、鱗片状黒鉛粒子に比べると比表面積が小さく、初期効率の高い負極(炭素電極)や安全性の高いリチウムイオン二次電池が得られる。尚、比表面積は、マイクロメトリックス社製「ASAP−2405」装置を用い、N吸着によるBET法にて測定することができる。
【0014】
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料は、平均粒子径が5〜100μmであることが好ましい。平均粒子径が、5μm未満では、比表面積が大きくなるとともに、粒子間の通液性が低下し、100μm超では、電極が不均一となるとともに急速充放電性も低下するからである。尚、平均粒子径は、株式会社島津製作所製の「SALD−2000」レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて、D50を平均粒子径として求めることができる。
【0015】
次に、本発明で使用する粒状黒鉛および鱗片状黒鉛について説明する。前記粒状黒鉛としては、例えば、天然黒鉛あるいは人造黒鉛をジェットミルなどの装置で粒状にしたもの、MCMB(メソカーボンマイクロビーズ)、コークス、樹脂炭化物などの黒鉛化原料を焼成して黒鉛化したものの粒状物などが挙げられる。前記粒状黒鉛の形状は、特に限定されず、例えば、球状、ラグビーボール形状(楕円形状)のものでもよい。また、粒状黒鉛の粒子径も、特に限定されず、例えば、平均粒子径が5〜100μmのものを使用することができる。
【0016】
前記鱗片状黒鉛は、鱗片状の黒鉛であれば、天然黒鉛であるか人造黒鉛であるかを問わず、また、コークス、樹脂炭化物などの黒鉛化原料を焼成により黒鉛化したものの鱗片状物などが挙げられる。また本発明において、鱗片状とは、いわゆる魚の鱗のような薄い小片であればよく、厳密に魚の鱗の形状に限定されるものではない。例えば、薄い小片であれば、円形、楕円形、多角形に類する形状の黒鉛も使用し得る。
【0017】
前記鱗片状黒鉛としては、粒状黒鉛と比較して、平均粒子径の小さいものを使用することが好ましく、例えば、平均粒子径が1〜20μm程度のものを使用することが好ましい。平均粒子径が1μmより小さすぎると比表面積が大きくなりすぎ、20μm超であると導電性改善効果が小さくなる傾向があるからである。
【0018】
図3〜図8は、本発明で使用する鱗片状黒鉛、粒状黒鉛、及び、本発明の負極材料の粒子構造を示す図面代用写真である。図3および図4は、平均粒子径が4μmの鱗片状黒鉛の電子顕微鏡写真である。図5および図6は、平均粒子径が28μmの粒状黒鉛の電子顕微鏡写真である。図7および図8は、本発明の負極材料の電子顕微鏡写真であり、粒状黒鉛の表面には、鱗片状黒鉛が付着していることが分かる。尚、図3、5及び7は、倍率が600倍の写真であり、図4、6及び8は、倍率が2000倍の写真である。
【0019】
(2)リチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法
本発明の製造方法は、粒状黒鉛、鱗片状黒鉛、および、バインダーとを混合し、焼成してから、粉砕することを特徴とする。かかる製造方法によって、粒状黒鉛を核材とし、該核材の表面の全部または一部に鱗片状黒鉛が付着したリチウムイオン二次電池用負極材料が得られる。粒状黒鉛、鱗片状黒鉛については、上述したのと同様のものを使用することができる。本発明で使用するバインダーとしては、例えば、コールタールピッチ、アスファルトピッチ、タール、熱硬化性樹脂などの有機材料が挙げられる。
【0020】
粒状黒鉛、鱗片状黒鉛、及び、バインダーは、例えば、ニーダなどの混合機を使用して混合すればよい。バインダーとしてピッチ、タールなどを使用する場合は、混合時の温度をバインダーの軟化点以上にすることがより好ましい。バインダーを均一に分散・混合することができるからである。また、バインダーを、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルホルムアミドなどの有機溶剤に溶解して使用することもできる。
【0021】
粒状黒鉛、鱗片状黒鉛、バインダーの各成分の配合比は、特に限定されないが、例えば、次のようにすることが好ましい。粒状黒鉛の含有率は、10〜95質量%であり、好ましくは30〜95質量%、さらに好ましくは40〜95質量%とする。粒状黒鉛が10質量%未満であると、電極プレス時に粒子が配向しやすくなり通液性が低下し、95質量%超であると粒子間の導電性が低下するからである。鱗片状黒鉛の含有率は、1〜80質量%であり、好ましくは1〜70質量%、さらに好ましくは1〜60質量%であることが望ましい。鱗片状黒鉛が、1質量%未満であると粒子間の導電性が低下し、80質量%超であると、電極プレス時に鱗片状黒鉛が配向しやすくなるからである。バインダーの含有率は、1〜80質量%であり、好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%であることが望ましい。バインダーが1質量%未満であると、粒状黒鉛と鱗片状黒鉛の結着が不十分であり、80質量%超であると粒状黒鉛表面に鱗片状黒鉛を付着させた粒子形状の特徴が失われてしまうからである。当然のことながら、粒状黒鉛、鱗片状黒鉛および、バインダーなどの各成分の含有率の合計が100質量%となるように、各成分の配合比を設定するものとする。
【0022】
尚、粒状黒鉛と鱗片状黒鉛の配合比によっては、得られる負極材料中に、粒状黒鉛の表面に鱗片状黒鉛が付着した黒鉛の他に、鱗片状黒鉛のみの集合物や鱗片状黒鉛が付着していない粒状黒鉛が存在する場合があるが、上述したように、粒状黒鉛の表面に鱗片状黒鉛が付着した黒鉛を一部に含む負極材料も本発明の好ましい態様である。また、粒状黒鉛および/または鱗片状黒鉛の全部または一部の代わりに、MCMB、コークス、樹脂炭化物などの黒鉛化原料を使用し、焼成により前記黒鉛化原料を黒鉛化したものの粒状物とするのも好ましい態様である。MCMB、コークス、樹脂炭化物などの黒鉛化原料を黒鉛化すれば、粒状黒鉛や鱗片状黒鉛を使用するのと同様の効果が得られるからである。
【0023】
本発明の製造方法において、焼成温度は、使用する原料の種類や目的に応じて適宜設定することが好ましく、例えば、800℃以上2000℃未満、好ましくは1200℃以上1800℃以下の温度領域と、2000℃以上3500℃以下、好ましくは2400℃以上3200℃以下の温度領域を選択することができる。焼成温度として、2000℃以上3500℃以下の温度領域を選択する場合とは、積極的に黒鉛化を図る場合であり、例えば、MCMB、コークス、或いは、樹脂炭化物などの黒鉛化原料を使用して焼成時に黒鉛化する場合や、コールタールピッチ、アスファルトピッチなどのバインダー成分の黒鉛化を図る場合である。黒鉛化を促進すれば、電池を一段と高容量化できるからである。一方、焼成温度として、800℃以上2000℃未満の温度領域を選択すると、バインダー成分や黒鉛化原料などの黒鉛化はそれほど進まないが、硬質な粒子が得られる。硬質な粒子は、電極作製のプレス時につぶれにくく、通液性の高い炭素電極が得られるという利点がある。
【0024】
本発明の製造方法では、焼成後、粉砕することにより、リチウムイオン二次電池用負極材料を得ることができる。粉砕は、ジェットミル、振動ミル、ピンミル、ハンマーミルなどの公知の方法で行うことができる。粉砕の際には、得られる負極材料の平均粒子径を5〜100μmにすることが好ましい。また、必要に応じて、分級機などを使用して、上記範囲の平均粒子径を有する負極材料が得られるようにすることもできる。
【0025】
(3)リチウムイオン二次電池用負極
本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、上述した本発明の負極材料、または、上述した本発明の製造方法により作製した負極材料を使用することを特徴とする。本発明の負極は、例えば、上記負極材料と電極作製用バインダーとを水或いは有機溶剤に分散させたスラリーを銅箔などの集電体に塗布した後、乾燥しプレスすることにより得られる。前記電極作製用バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体などのフッ素系高分子化合物や、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴムやアクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0026】
本発明の負極の密度は、特に限定されないが、1.2〜1.8g/cc(10g/l)であることが好ましい。負極密度が1.2g/cc(10g/l)未満であると、電池容量が低下し、1.8g/cc(10g/l)超であると、通液性が低下するからである。
【0027】
(4)リチウムイオン二次電池
本発明のリチウムイオン二次電池は、上記負極を使用することを特徴とする。本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の負極を用いたものであれば、特に限定されず、例えば、円筒(乾電池)型、角型、ボタン型、コイン型などの形状を有することができる。図9は、円筒(乾電池)型のリチウムイオン二次電池を例示する断面図であり、シート状の正極体4と負極体5との間にセパレータ6を挟んで渦巻状に巻いたスパイラル構造になっている。図10は、ボタン型のリチウムイオン二次電池を例示する断面図であり、正極体4と負極体5と電解液とを備え、正極体4と負極体5とはセパレータ6によって分離されており、リチウムイオンが、電解液を介して正極体と負極体とを行き来することにより、起電反応が行われる。
【0028】
リチウムイオン二次電池における正極材料としては、例えば、LiCoO,LiNiO,LiNi1−yCo,LiMnO,LiMn,LiFeOなどのリチウムコバルト複合酸化物等が挙げられる。これらの中でも好ましいのは、リチウムコバルト複合酸化物である。正極用のバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデンやポリ四フッ化エチレンなどを挙げることができる。電解液としては、エチレンカーボネートなどの有機溶媒や、該有機溶媒とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシメタン、エトキシメトキシエタンなどの低沸点溶媒との混合溶媒に、LiPF,LiBF,LiClO,LiCFSO、LiAsFなどの電解液溶質(電解質塩)を溶解した溶液が用いられる。また、電解液の代わりに固体電解質を使用してもよい。正極体と負極体とを分離するセパレータとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムなどが用いられる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0030】
(1)負極材料の調製
負極材料としては、以下の4種類のものを使用した。
負極材料A
平均粒子径15μmの粒状黒鉛70質量%、平均粒子径6μmの鱗片状黒鉛20質量%、および、コールタールピッチ10質量%を150℃で30分間混合した後、2800℃で6時間焼成した。焼成後の混合物をジェットミルで粉砕し、平均粒子径が25μmの負極材料Aを得た。
負極材料B
焼成温度を1200℃としたこと以外は、負極材料Aと同様にして、平均粒子径25μmの負極材料Bを得た。
負極材料C
負極材料Cとしては、天然黒鉛の球形化品(平均粒子径25μm)を使用した。
負極材料D
鱗片状黒鉛70質量%とコールタールピッチ30質量%とを混合し、2800℃で6時間焼成し、黒鉛化を行った後、ジェットミルで粉砕し、平均粒子径25μmの鱗片状黒鉛が凝集した負極材料Dを得た。
【0031】
(2)リチウムイオン二次電池用負極の作製
負極材料A〜Dを用いて、リチウムイオン二次電池(コイン型)用の負極を次のようにして作製した。まず、負極材料100質量部に対して、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース1質量部およびスチレンブタジエンゴム粉末1質量部を混合し、これに純水100質量部を加えてスラリー状にした。得られたスラリーを厚さ18μmの銅箔上に塗布し、乾燥機(100℃)で15分間乾燥した。乾燥後の膜を直径1.6cmの円形に打ち抜いたのち、銅箔を除く塗布量を測定すると20mgであった。この膜をローラープレス機で、銅箔上に塗布した塗布物の密度が1.6g/cc(10g/l)となるようにプレスし、リチウムイオン二次電池用の負極A〜Dを作製した。
【0032】
(3)リチウンイオン二次電池の作製
リチウムイオン二次電池(コイン型)用の正極としては、初期効率、負荷特性を算出するためのリチウムイオン二次電池用としてリチウム箔を、サイクル特性を算出するためのリチウムイオン二次電池用としては、LiCoOを活物質とする電極を用いた。LiCoOを活物質とする電極は、次のようにして作製した。LiCoO90質量部に対して、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量部、導電材としてカーボンブラック5質量部を夫々混合し、これにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)200質量部を加えてスラリーを作製した。得られたスラリーを厚さ30μmのアルミ箔上に塗布し、乾燥機(100℃)で1時間乾燥した。乾燥後の膜を直径1.6cmの円形に打ち抜いたのち、アルミ箔を除く塗布量を測定すると45mgであった。この膜をローラープレス機で、アルミ箔上に塗布した塗布物の密度が2.8g/cc(10g/l)となるようにプレスしてリチウムイオン二次電池用の正極を作製した。
【0033】
上記正極と前記負極A〜Dからなる負極とを、セパレータを介して対向させて、ステンレス製セルに組み込み、リチウムイオン二次電池(コイン型)A〜Dを作製した。電池の組み立てはアルゴンガス雰囲気下で行ない、電解液としては、1MのLiPF/(EC+DMC)0.4mLを、セパレータとしてはCelgard社製の「セルガード#3501(商品名)」を用いた。電解液は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を容積比1:1で混合した溶媒に、LiPFを1Mの濃度になるように溶解したものである(三菱化学社製、商品名「ソルライト」)。
【0034】
(4)特性評価
得られたリチウムイオン二次電池の初期効率、負荷特性、および、サイクル特性を下記の方法で評価した。
▲1▼初期効率
電池の充電は、電流密度0.4mA/cm(0.1C)の定電流値で0Vまで充電した後、0Vの定電位で電流値が0.01mA/cmとなるまで行った。放電は、電流値0.4mA/cmで1Vになるまで行った。
電池の初期効率は、一回目の充電容量と放電容量から下記(1)式により計算した。
【0035】
【数1】
Figure 2004127723
【0036】
▲2▼負荷特性
電池の負荷特性は、急速放電性の指標であり、0.4mA/cm(0.1C)で放電した放電容量と、8.0mA/cm(2.0C)で放電した放電容量から下記(2)式で算出した。
【0037】
【数2】
Figure 2004127723
【0038】
▲3▼サイクル特性
電池の充電は、電流値6.4mAで4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で電流値が0.2mAとなるまで行なった。放電は、電流値6.4mAで3.0Vとなるまで行なった。電池のサイクル特性は、1サイクル目の放電容量と充放電を200サイクル繰り返したときの放電容量から下記(3)式によって算出した。
【0039】
【数3】
Figure 2004127723
【0040】
結果を表1に示した。
【0041】
【表1】
Figure 2004127723
【0042】
表1から、実施例1及び2では、電極の初期効率がそれぞれ94.1%、93.5%であり、初期効率が高いことが分かる。また、電池の容量はそれぞれ360、355mAh/gであった。さらに、充放電を200サイクル繰り返した後のサイクル特性(容量維持率)は、80〜81%であり、比較例のサイクル特性(容量維持率)36〜75%に比べて著しく改善されていることが分かる。これらの結果より、本発明の負極およびリチウムイオン二次電池の性能は著しく改善されていることが明らかとなった。また、実施例1および2の負極材料の比表面積が比較例に比べて小さくなっていることから、界面での電解液分解によるガス発生などを抑制でき、安全なリチウムイオン二次電池が得られるものと考えられる。
【0043】
一方、比較例1の充放電を200サイクル繰り返した後のサイクル特性(容量維持率)が36%と極めて低くなっているのは、負極の材料として天然黒鉛の球形化品(粒状黒鉛)のみを使用したためと考えられる。すなわち、粒状黒鉛粒子を使用した負極は、粒子間での接点が少なく導電性が低くなる傾向がある上に、充放電による負極の膨張・収縮の繰返しによって、粒子間にクラックが生じ、導電性が一層低下したものと考えられる。比較例2の初期効率が84.0%と低いのは、負極の材料として鱗片状の黒鉛を使用しているため、比表面積が大きくなり、不動態膜の形成に消費される電荷量が増加したためと考えられる。また、比較例2の負荷特性が88%と低くなったのは、鱗片状黒鉛が配向し、電解液の通液性が低下したために、急速放電性が低下したものと考えられる。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、例えば、次のような効果を奏する。
▲1▼粒状黒鉛の表面に鱗片状黒鉛が付着している負極材料を使用しているので、黒鉛粒子間の接点が増えて、導電性に優れた負極、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。
▲2▼核材として粒状黒鉛を使用しているので、プレス時に黒鉛粒子が潰れにくく、電解液の通液性に優れた炭素電極、急速充放電性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。
▲3▼比表面積の小さな負極材料を使用しているので、初期効率の高い炭素電極、安全性の高いリチウムイオン二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】黒鉛粒子を使用した炭素電極の構造を模式的に表わした断面図である。
【図2】本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料の一例を模式的に表わした断面図である。
【図3】鱗片状黒鉛の電子顕微鏡写真(倍率:600倍)である。
【図4】鱗片状黒鉛の電子顕微鏡写真(倍率:2000倍)である。
【図5】粒状黒鉛の電子顕微鏡写真(倍率:600倍)である。
【図6】粒状黒鉛の電子顕微鏡写真(倍率:2000倍)である。
【図7】本発明の負極材料の電子顕微鏡写真(倍率:600倍)である。
【図8】本発明の負極材料の電子顕微鏡写真(倍率:2000倍)である。
【図9】本発明の円筒型リチウムイオン二次電池の一例の断面図である。
【図10】本発明のコイン型リチウムイオン二次電池の一例の断面図である。
【符号の説明】
1:鱗片状黒鉛、2:粒状黒鉛、3:集電体、3a:負極集電体、3b:正極集電体、4:正極体、5:負極体、6:セパレータ、7:電池ケース、8:絶縁ガスケット

Claims (8)

  1. 粒状黒鉛を核材とし、該核材の表面の全部または一部に鱗片状黒鉛が付着していることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料。
  2. 粒状黒鉛を核材とし、該核材の表面の全部または一部に鱗片状黒鉛が付着している黒鉛と、鱗片状黒鉛の集合物および/または粒状黒鉛とが混合されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料。
  3. 粒状黒鉛、鱗片状黒鉛、および、バインダーを混合し、焼成してから、粉砕することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法。
  4. 粒状黒鉛の一部または全部に代えて、焼成により粒状黒鉛となる原料を使用する請求項3に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法。
  5. 鱗片状黒鉛の一部または全部に代えて、焼成により鱗片状黒鉛となる原料を使用する請求項3または4に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法。
  6. 請求項1または2に記載の負極材料を使用していることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
  7. 請求項3〜5のいずれかの製造方法により作製された負極材料を使用していることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
  8. 請求項6または7の負極を使用していることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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