JP2004127243A - タッチパネルの実装構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】上部絶縁基板と下部絶縁基板の対向面のうち少なくとも一方に梨地面が形成されたタッチパネルを用い、該タッチパネルをディスプレイ上に装着したタッチパネルの実装構造であって、且つ表示画面のぎらつきを抑えることのできるタッチパネルの実装構造を提供する。
【解決手段】ディスプレイからの可視光を屈折及び反射させる拡散粘着剤層により、タッチパネルとディスプレイとを全面的に接着し、この拡散粘着剤層中のフィラーによってディスプレイからの可視光をタッチパネル内に入射する前にあらかじめ多方向に散乱させる。
【選択図】 図1
【解決手段】ディスプレイからの可視光を屈折及び反射させる拡散粘着剤層により、タッチパネルとディスプレイとを全面的に接着し、この拡散粘着剤層中のフィラーによってディスプレイからの可視光をタッチパネル内に入射する前にあらかじめ多方向に散乱させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、上部絶縁基板と下部絶縁基板の対向面のうち少なくとも一方に梨地面が形成されたタッチパネルを用い、該タッチパネルをディスプレイ上に装着したものであって、且つ表示画面のぎらつきを抑えることのできるタッチパネルの実装構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、コードレス電話機、携帯電話機、電卓、サブノートパソコン、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)、デジタルカメラ、ビデオカメラ、業務用通信機器などのディスプレイ3を備えた携帯型電子機器やパソコンのモニタなどの前面に装着され、透視した画面の指示に従いながら表面をペンや指などで押圧することによって各種の操作を行なうことのできる入力装置として、タッチパネル1が広く利用されている。
【0003】
タッチパネル1は、プラスチックフィルムで構成される上部絶縁基板4の下面に透明導電膜で構成される上部電極5が形成された上部電極板と、ガラス板やプラスチックフィルムで構成される下部絶縁基板6の上面に透明導電膜で構成される下部電極7が形成された下部電極板とを備え、上部電極板と下部電極板とが電極間に空気層を介して対向配置されており、このタッチパネル1のディスプレイ3への実装構造としては、特許文献1に示すように、裏面全面にアクリル系粘着剤層等の透明な粘着剤層13を設けてディスプレイ3の表面に装着したものなどがある(図8参照)。
【0004】
また、最近は、前記したパソコン等の製品の軽薄化が重要視され、これに伴ってタッチパネル1自体の軽薄化、実装方法の薄型化が要求されてきているため、下部絶縁基板6が薄膜製造の可能なプラスチックフィルムで構成されるタイプが採用されることが多い。
【0005】
ところが、下部絶縁基板6にプラスチックフィルムを用いると、タッチパネル1を通して画面を見たときに図9に示されるようにニュートン環が発生するという問題が生ずる。タッチパネル1におけるニュートン環の発生メカニズムは、タッチパネル1の製造時等にプラスチックフィルムからなる上部絶縁基板4が垂れ下がり、上部電極及び下部電極間の薄い空気層の上面と下面で反射する光線が干渉し、その干渉縞が明暗の同心円として見えるというものである(図9の90は干渉縞の明るい部分を示し、91は干渉縞の暗い部分を示し、92は表示される文字である。)。下部絶縁基板6が寸法安定性のあるガラス板であれば、タッチパネル1に対して加熱等の処理を行なってプラスチックフィルムからなる上部絶縁基板4をピンと張らせ、ニュートン環の発生を防止することも可能であるが、上記したように下部絶縁基板6にプラスチックフィルムを用いた場合、下部絶縁基板6も寸法安定性に劣るため加熱等の処理を行なっても上部絶縁基板4をピンと張らすことは難しい。
【0006】
そこで、下部絶縁基板6にプラスチックフィルムを用いたタッチパネル1におけるニュートン環の発生を防止するために、特許文献2に示すように、上部絶縁基板4と下部絶縁基板6の対向面のうち少なくとも一方に梨地処理を施し、この梨地面によって反射光を散乱させてニュートン環を見え難くする方法も考え出された(図10参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭61−131314号公報
【0008】
【特許文献2】
実公平8−2896号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近の高精細化されたディスプレイ(例えば200dpi以上のディスプレイ)においては、上記梨地面を有するタッチパネルを装着すると表示画面に「ぎらつき」(にじみ)といった視認性低下が発生するという新たな問題点が出てきている。なお、図11は、このにじみを模式的に示したものであり、図11の緑色の背景95に対して、赤点93や青点94が多数見える状態となり、多数の赤点93や青点94により文字92がぎらついたり、にじんだりしていることをわかりやすく示している。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記の問題点を解決し、上部絶縁基板と下部絶縁基板の対向面のうち少なくとも一方に梨地面が形成されたタッチパネルを用い、該タッチパネルをディスプレイ上に装着したタッチパネルの実装構造であって、且つ表示画面のぎらつきを抑えることのできるタッチパネルの実装構造を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のタッチパネルの実装構造は、プラスチックフィルムで構成される上部絶縁基板の下面に透明導電膜で構成される上部電極が形成された上部電極板と、プラスチックフィルムで構成される下部絶縁基板の上面に透明導電膜で構成される下部電極が形成された下部電極板とを備え、上記上部電極板と上記下部電極板とが上記上部電極及び下部電極間に空気層を介して対向配置され且つ上記上部絶縁基板と上記下部絶縁基板の対向面のうち少なくとも一方に梨地面が形成されたタッチパネルを用い、ディスプレイからの可視光を屈折及び反射させる拡散粘着剤層により上記タッチパネルと上記ディスプレイとを全面的に接着することにより装着するように構成した。
【0012】
また、上記構成において、シリコーンゴムシートの一面に拡散粘着剤層が積層された透明な実装用シートを、その拡散粘着剤層によってディスプレイ表面に全面的に接着させ、該ディスプレイ上の実装用シート表面にタッチパネルを装着するようにした。
【0013】
また、上記構成において、シリコーンゴムシートの一面に上記拡散粘着剤層が積層された透明な実装用シートを、その拡散粘着剤層によって上記ディスプレイの表面に全面的に接着させ、上記ディスプレイ上の上記実装用シートの表面に上記タッチパネルを装着するようにした。
【0014】
また、上記構成において、拡散粘着剤層のヘーズが10〜50%であり、タッチパネルの梨地面の表面ヘーズが1.5〜5%であるようにした。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照しながら本発明について詳細に説明する。図1及び図4〜7は本発明に係るタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図、図2は従来技術に係る梨地面を有するタッチパネルの実装構造における光学的作用を説明する模式図、図3は本発明に係る梨地面を有するタッチパネルの実装構造における光学的作用を説明する模式図である。図中、1はタッチパネル、2は拡散粘着剤層、3はタッチパネル1が拡散粘着剤層2により接着固定されるフルカラーのディスプレイ(例えば液晶や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ)、3a及び3bはディスプレイ3の画素、4は透明な上部絶縁基板、5は透明導電膜で構成される上部電極、6は透明な下部絶縁基板、7は透明導電膜で構成される下部電極、8は空気層、9は梨地面、10は実装用シート、11はシリコーンゴムシート、12は芯材、13は粘着剤層、14は両面テープ、15はマットコーティング層をそれぞれ示す。
【0016】
上記ディスプレイ3は、コードレス電話機、携帯電話機、電卓、サブノートパソコン、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)、デジタルカメラ、ビデオカメラ、業務用通信機器などのディスプレイであって、このディスプレイ3を備えた携帯型電子機器やパソコンのモニタなどの前面にタッチパネル1が装着され、透視した画面の指示に従いながら、タッチパネル1の表面をペンや指などで押圧することによって各種の操作を行なうことのできる入力装置としてタッチパネル1が使用される。
【0017】
図1に示すタッチパネルの実装構造は、プラスチックフィルムで構成される上部絶縁基板4の下面に透明導電膜で構成される上部電極5が形成された上部電極板と、プラスチックフィルムで構成される下部絶縁基板6の上面に透明導電膜で構成される下部電極7が形成された下部電極板とを備え、上部電極板と下部電極板とが矩形枠状の両面テープ14により互いに接着固定されることにより、上部電極板と下部電極板とが対向する電極間に空気層8を介して対向配置され且つ上部絶縁基板4と下部絶縁基板6の対向面のうち少なくとも一方に梨地面9が形成されたタッチパネル1を用い、該タッチパネル1とディスプレイ3とが拡散粘着剤層2により直接的且つ全面的に接着されている。
【0018】
タッチパネル1の上部絶縁基板4および下部絶縁基板6としては、それぞれPET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエステルサルフォン)、PAR(ポリアリレート)、又は、ARTON(アートン、JSR株式会社のノルボンネン系耐熱透明樹脂の登録商標)などのプラスチックフィルムが使用できる。また、上部絶縁基板4の上面には、一般にアクリル系UV樹脂等でハードコート処理が施こされていることが多い(図示せず)。
【0019】
梨地面9の形成手段としては、フィラーを光拡散剤として分散させたインキを作製し、ロールコーターあるいはグラビアコータ等で上部絶縁基板用又は下部絶縁基板用のプラスチックフィルム上にコーテイングするマットコーティング加工が用いられることが多く、上部絶縁基板用又は下部絶縁基板用のプラスチックフィルム上のマットコーティング層15中のフィラーの粒径や分散量により、梨地度合いを制御している。もちろん、エンボス加工その他の梨地処理を施すことによって上部絶縁基板4および/または下部絶縁基板6に梨地面9を形成することも可能であるが、従来より、上部絶縁基板4や下部絶縁基板6が透明導電膜形成の下地としてハードコートインキをコーティングすることが多く、このハードコートインキ中に上記フィラーを分散させてマットコーティング兼用インキとすればハードコート層の形成とマットコーティング層15の形成、すなわち梨地面9の形成とを同時に行なえるため、マットコーティング加工の方がその他の梨地処理と比べてコストや効率の面でより好ましい。上記マットコーティング加工で光拡散剤として用いるフィラーとしては、粒径サイズが3μm以下のSiO2粒子やAl2O3粒子等を使用する。粒径サイズが3μmを超えるフィラーを使用すると、タッチパネル1の上部及び下部電極間がフィラーによる突出部分で接近しすぎ、入力時に誤入力するおそれがあるため、好ましくない。
【0020】
また、上部絶縁基板4と下部絶縁基板6の対向面のうち少なくとも一方に施される梨地処理の程度は、表面ヘーズによって表すことができ、その表面ヘーズが1.5〜5%である梨地処理を施すことが好ましい。表面ヘーズが5%を超えると、タッチパネル自体が白く見え、ディスプレイの視認性が著しく低下する。模式的に説明すると、図12に示されるように、ディスプレイ3単体のときには、黒色の背景に対して白色の文字でコントラストが高いものであっても、図13に示されるように、ディスプレイ3とタッチパネル1を合わせてしまうと、灰色の背景に対して灰色の文字でコントラストが低くなってしまい、ディスプレイ3の視認性が著しく低下する。逆に、表面ヘーズが1.5%に満たないとニュートン環の発生防止効果が低下する。なお、本発明において表面ヘーズとは、上部絶縁基板4や下部絶縁基板1に適用するのと同じ梨地処理を高透明PETフィルムに施したときのJIS K 7105(1981)に準拠する試験にて求めたヘーズ(曇価)と定義する。上記高透明PETフィルムとしては、フィルム自体のヘーズが0.5%以下のものを用いる。
【0021】
なお、梨地面9は、上部絶縁基板4と下部絶縁基板6の対向面の両方に形成されてもよいが、コスト面で不利となるため、いずれか一方のみとするのが好ましい。その場合、下部絶縁基板6側に梨地面9を形成するのがより好ましい。何故なら、下部絶縁基板6はタッチパネルへの入力時に変形しないため、上部絶縁基板4と比べて梨地面9と透明導電膜との密着力が低下しにくいからである。
【0022】
上部電極5および下部電極7にそれぞれ用いる透明導電膜の材料としては、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化カドミウム、若しくはITO等の金属酸化物や、金、銀、銅、錫、ニッケル、アルミニウム、若しくはパラジウム等の金属の薄膜がある。これらの透明導電膜の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又は、CVD法等が用いられる。なお、上記の形成方法によって得られる透明導電膜は非常に薄いため、上部絶縁基板4および/または下部絶縁基板6の梨地面9の凹凸に沿って設けられることとなり、その電極表面も梨地となる。
【0023】
また、上部電極板及び下部電極板のそれぞれには、バスバーや引き回し線等の所定のパターンの回路が形成される(図示せず)。回路の材料としては、金、銀、銅、若しくはニッケルなどの金属あるいはカーボンなどの導電性を有するペーストを用いる。これらの形成方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、若しくはフレキソ印刷などの印刷法、フォトレジスト法、又は、刷毛塗法などがある。
【0024】
なお、上部電極板と下部電極板とは、通常、上部電極5または下部電極7の表面に形成されたスペーサーによって間を隔てられており、指やペンなどで上部電極板上から押圧することによりはじめて上部電極5と下部電極7とが接触し入力が行われる。スペーサーとしては、透明な光硬化型樹脂をフォトプロセスで微細なドット状に形成して得ることができる。また、印刷法により微細なドットを多数形成してスペーサーとすることもできる。また、上部電極板と下部電極板とは両面テープ8や透明粘着剤によって表示領域外のみ貼り合わせられており、タッチパネル1の寸法が小さくこの貼り合わせのみで上部及び下部電極間の絶縁を維持出来る場合には、スペーサーを省略してもよい。
【0025】
本発明の特徴は、上記したような上部絶縁基板4と下部絶縁基板6の対向面のうち少なくとも一方に梨地面9が形成されたタッチパネル1をディスプレイ3上に装着したタッチパネルの実装構造において、タッチパネル1とディスプレイ3とが拡散粘着剤層2により全面的に接着されていることにある。
【0026】
従来技術においては、タッチパネル1とディスプレイ3との全面接着に用いられる通常の粘着剤層は、ディスプレイ3からの可視光をそのまま透過してタッチパネル1内に垂直に入射させている。タッチパネル1内に入射した可視光は、その後、タッチパネル1の上部絶縁基板4または/および下部絶縁基板6の対向面に形成された梨地面9を透過する際に梨地面9を構成する凸面又は凹面に対して斜め方向から入射することにより屈折をする。このとき、屈折率は透過した光の波長によって異なり、具体的には波長の長い赤色の光は小さな角度で屈折し、波長の短い青色の光は大きな角度で屈折するため、RGB(赤、緑、青)の各波長の屈折率差によりディスプレイ3からのRGB各色の光は、梨地面9の透過後、僅かに異なる方向に進む。しかも、同じ波長の色で且つ同じ角度でタッチパネル1内に入射した光であっても、梨地面9のどの箇所で屈折するか、つまり梨地面9を構成する凸面又は凹面に対してどの角度で入射するかによってその進行方向は異なる(図2参照)。したがって、例えばディスプレイ3の画面上の、或る画素3aと、すぐ隣りの画素3bとで全く同じ加法混色がされるようにRGB発光が行われていたとしても、最終的に看者に認識される上記画素3aと上記画素3bの表示色が異なることがある。そして、ディスプレイ3が高精細である、つまり画素が細かくなると上記現象の起こる画素も増加するため、ぎらついた様に見える。
【0027】
これに対して、 本発明の拡散粘着剤層2は、アクリル酸エステル等のアクリル系透明粘着剤中にフィラー2aを光拡散剤として分散させたものであり、ディスプレイ3からの可視光をこのフィラー2aによって屈折および反射させる。つまり、ディスプレイ3からの可視光をタッチパネル1内に入射する前にあらかじめ多方向に散乱させている(図3参照)。従来のディスプレイ3からの可視光をそのまま透過してタッチパネル1内に垂直に入射させている場合であれば、同じ波長の色で梨地面9の同じ箇所を透過した光の進行方向はおよそ一方向に決まってしまうが、本発明のようにタッチパネル1内に入射する前にあらかじめ多方向に散乱している場合、同じ波長の色で梨地面9の同じ箇所を透過した光であっても進行方向は多方向となる。そうなると、梨地面9のどの箇所で屈折しようともあまり差は無くなり、例えばディスプレイ3の画面上の、或る画素3aと、すぐ隣りの画素3bとで全く同じ加法混色がされるようにRGB発光が行われていた場合、最終的に看者80に認識される上記画素3aと上記画素3bの表示色に差が生じなくなる。この結果、ディスプレイが高精細であっても、ぎらついた感じには見えない。本発明において高精細とは、一般的には100ppi(ピクセル・パー・インチでdpiと同等)以上とされており、100ppiでは本発明の適用はなくても構わないが、本発明を適用したほうがよく、200ppi以上では必ず本発明を適用する。
【0028】
なお、梨地面9をマットコーティング加工により形成する場合には、マットコーティング層15内のフィラーにより散乱も生じるが、フィラーの量を増やすとマットコーティング層15の入力に対する耐久性が劣化して透明導電膜とともに剥離してしまうため、充分な量のフィラーを分散させることができず、ぎらつきを抑えることは難しい。本発明は、下部絶縁基板6等で保護された拡散粘着剤層2中のフィラー2aにより散乱を行うので、フィラー2aの量を充分に分散させても入力に対する耐久性が劣化するという問題を生じない。
【0029】
上記拡散粘着剤層2は、アクリル酸エステル等のアクリル系粘着剤中にフィラー2aを光拡散剤として分散させたものである。このアクリル系粘着剤は、粘着テープ等に一般的に用いられる粘着剤を使用すればよい。また、光拡散剤として分散させるフィラー2aとしては、粒径サイズが1μm程度のSiO2粒子やAl2O3粒子等を使用する。
【0030】
また、拡散粘着剤層2中のフィラー2aの分散程度は、JIS K 7105(1981)によって求められる拡散粘着剤層2自体のヘーズ(曇価)によって表すことができ、拡散粘着剤層2のヘーズが10〜50%になるように調整する。拡散粘着剤層2のヘーズが10%未満であると、タッチパネルの梨地処理とディスプレイの画素との干渉を抑えることが難しくなる。また、拡散粘着剤層2のヘーズが50%を超えると、粘着剤自体が白くなり、ディスプレイ3の視認性を低下させる。より好ましい拡散粘着剤層2のヘーズは25〜35%である。また、上記拡散粘着剤層2の厚みは、接着力を得るために少なくとも10μmは必要である。
【0031】
上記拡散粘着剤層2内のフィラー2aの粒径は、一般的に可視光において、拡散させる必要がある為、可視光線の波長の長さ(400nm〜700nm、すなわち、0.4μm〜0.7μm)以上が必要になる。好ましは、2〜3μmである。また、フィラー2aは、図14に示すように1次凝集及び2次凝集させて全体の粒径を2〜3μm程度になるように分散しても良く、その場合には、大小異なる粒径のフィラーを使用して構わない。この場合には、予め均一な粒径サイズに揃える必要がない為、材料コスト的に有利である。しかしながら、分散性を考慮した場合は、2〜3μm程度の同一粒径えのフィラーを図15に示すように単分散させた方が、均一に効果を出せる為に好ましい。ただし、異種のフィラーを混合して用いないほうがよい。
【0032】
以上、図1に示す実装構造について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、タッチパネル1とディスプレイ3とが拡散粘着剤層2により直接的に接着されなくてもよい。具体的には、シリコーンゴムシート11の一面に拡散粘着剤層2が積層されて構成された透明な実装用シート10を準備し、実装用シート10の拡散粘着剤層2をディスプレイ3の表面に全面的に接着させて、該ディスプレイ3上に接着固定された実装用シート10のシリコンゴムシート11の表面にタッチパネル1を貼り付けて装着することができる(図4参照)。このようにすれば、シリコーンゴムシート11から簡単にタッチパネル1を取り外すことができて、シリコーンゴムシ−ト11トタッチパネル1との間での貼り直しを簡単に行なうことができる。
【0033】
また、シリコーンゴムシート11の一面に拡散粘着剤層2が積層されて構成された透明な実装用シート10を準備し、その拡散粘着剤層2をタッチパネルの裏面に全面的に接着させて、タッチパネル1に接着固定された実装用シート10のシリコーンゴムシート11の表面にディスプレイ3を貼り付けて装着することができる(図5参照)。このようにすれば、シリコーンゴムシート11から簡単にタッチパネル1を取り外すことができて、シリコーンゴムシ−ト11トタッチパネル1との間での貼り直しを簡単に行なうことができる。
【0034】
図4および図5の上記実装用シート10のシリコーンゴムシート11は、被着体との間で接触面に対して垂直方向に働く引き離しの力や接触面沿いの方向へのズレの力には強いが、シリコンゴムシート11の端部からシリコンゴムシート11をめくるように、被着体から引き離す力をシリコンゴムシート11に働かせると容易に被着体からシリコンゴムシート11が分離しやすいものであり、この実装用シート10を用いたタッチパネルの実装構造では、リペアが可能となる。シリコーンゴムシート11としては、例えばシリコ−ンゴムとシリコ−ンレジンの混合物を溶剤でインキ化し塗布し、乾燥時の熱で架橋させたもの等を用いることができる。上記シリコーンゴムシート11の厚みは、20〜100μmの範囲とするのが好ましい。20μm以上の厚みでは、シリコーンゴムシート11が弾力性に富んでショック吸収材ともなるため、様々な衝撃や変形からディスプレイ3を保護することができるからである。また、100μmを超える厚みでは、接着力が強くなりすぎるため、タッチパネル1を引き剥がすと実装用シート10のシリコーンゴムシート11側の面で剥離しにくくなったり、タッチパネル1のディスプレイ3への装着時に気泡をかみやすくなったりするからである。
【0035】
また、実装用シート10は、拡散粘着剤層2とシリコーンゴムシート11との間に、芯材12となるプラスチックフィルムを介在させたものでもよい(図6,図7参照)。図6では、ディスプレイ3上に配置されるシリコーンゴムシート11と、タッチパネル1側に配置される拡散粘着剤層2との間に芯材12を挟み込んでいる。一方、図7では、ディスプレイ3上に配置される拡散粘着剤層2と、タッチパネル1側に配置されるシリコーンゴムシート11との間に芯材12を挟み込んでいる。このようにすれば、タッチパネルを多数個取りした大判パネルの裏面に実装用シート10を設けた後に各タッチパネルとともに打抜く場合、実装用シート10が芯材12により腰を強化していると所定の形状に精度良く打ち抜くことができる。この芯材12となるプラスチックフィルムの材質としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PC(ポリカーボネート樹脂)、TAC(トリアセチルセルロース)、又は、PES(ポリエステルサルフォン樹脂)等の透明なフィルムを用いることができる。なお、上記芯材となるプラスチックフィルムの厚みは、12μm以上とするのが好ましい。12μm未満の厚みでは十分な腰の強化が得られないからである。また、シリコーンゴムシート11にインキを塗布する際、12μm未満の厚みでは芯材が波打って厚みを均一に制御することが難しく、タッチパネル1のディスプレイ3への装着時に気泡をかみやすくなったりするからである。
【0036】
なお、芯材12のシリコーンゴムシート11を積層する面にはプライマー処理を施すのが好ましい。このプライマー処理は、一般に基材とコーティング剤との接着性を上げるために、両者に相性のよい中間剤を塗布すること等を言う。広義には易接着処理のことで、基材の表面に凹凸を付けて表面積を大きくして接着性を上げたり、コロナ処理等で表面改質を行ない、接着性を上げることも含む。このプライマー処理によりシリコーンゴムシート11を上記芯材12に強固に接着させ、タッチパネル1の引き剥がし時に芯材12とシリコーンゴムシート11との間で剥離したり、前記打抜き時に芯材12とシリコーンゴムシート11との間でずれが生じてシリコーンゴムシート11がはみ出したりしないようにすることができる。
【0037】
また、拡散粘着剤層2は、実装用シート10に用いる場合には50μmを上限とするのが好ましい。50μmを超える厚みでは、接着力が強くなりすぎて、被着体との間に生ずる又は生じた気泡についての脱泡処理、例えば実装用シート10にR曲げを与えながら、ローラ等で端から徐々に気泡を追い出すように圧力をかけたり、あるいは減圧雰囲気中に置いたりしても、気泡が抜けにくくなる。
【0038】
また、上記実装用シート10の製造中の塗布、すなわちプライマー処理時のコーティング剤の塗布や拡散粘着剤層2の形成時の塗布、シリコーンゴムシート11の形成時の塗布等には、グラビアコート法、リバースコート法、コンマコート法、又は、ダイコート法等の一般的なコート法が用いられる。
【0039】
また、拡散粘着剤層2の配置に関して、図16と図17に示されるように、拡散粘着剤層2と梨地面9とは距離が近い方(図16よりも図17の方)が、より、細かく光拡散する為に、人間の目で見た時にぎらつき防止効果が大きい。
【0040】
また、拡散粘着剤層2の変形例としては、実装用シート10の芯材(光学等方性フィルム)12を溶融押し出し法、あるいは溶液キャスト法にて製膜する際に、SiO2あるいはAl2O3等の拡散用フィラー2aを樹脂ペレットと一緒に分散させ、ヘイズ値が10〜50%になるように調整するものがある。
【0041】
また、拡散粘着剤層2を設けることについて、タッチパネル特有の効果を向上させる機能として次のようなものがある。すなわち、タッチパネル1の使用において、ペンや指で、繰り返し入力を行なう為に、表面及び内面に多少汚れやキズが発生してくる。しかしながら、上記タッチパネル1においては、光拡散の影響で、汚れやキズが目立たなくなり、外観上有利である。
【0042】
【実施例】
(実施例1) 厚み188μmのPETフィルムを下部絶縁基板として用い、その上面に粒径2μmのSiO2を光拡散剤として分散させたアクリル系樹脂をロールコーターで厚み5μmになるようにマットコーテイングして梨地処理を施して表面ヘイズが3%の梨地面を形成し、その上に厚み20nmのITO膜からなる下部電極をスパッタリングにて形成して下部電極板とした。また、厚み188μmのPETフィルムを上部絶縁基板として用い、その下面にアクリル系樹脂をロールコーターで厚み5μmでコーテイングし、そのコーティング層上に厚み20nmのITO膜からなる上部電極をスパッタリングにて形成し、さらに上部絶縁基板の上部電極を形成した面とは反対の面にアクリル系樹脂をロールコータで5μmになるようにコーテイングしたものを上部電極板とした。次いで上部電極板と下部電極板に所定のパターンの回路をスクリーン印刷にて形成した後、上部電極板と下部電極板とを電極間に空気層を介して対向配置させ、両者を周縁部において両面テープにて接着し、両電極間のニュートン環の発生を防止したタッチパネルを得た。
【0043】
上記タッチパネルの裏面に、アクリル酸エステルからなる粘着剤層中に粒径1μmのSiO2粒子を光拡散剤として分散させたインキをスクリーン印刷にて塗布し、厚み20μm、ヘイズ25%の拡散粘着剤層を全面的に形成した。次いで、この拡散粘着剤層付きタッチパネルを高精細カラーLCDの表面全面にローラで加圧しながら貼り付けた。
【0044】
(実施例2) 厚み38μm、幅1050mm、長さ500mの透明なポリエステルフィルムを芯材とし、まず、その一面にコロナ放電により表面改質を行い、その上に厚み40μmのシリコーンゴムシートをコーターにて積層し、その表面にセパレータとして、離型処理を施したポリエステルフィルムをラミネートした。次いで、芯材の他面に、アクリル酸エステルからなる粘着剤層中に粒径1μmのAl2O3粒子を分散させたインキをロールコータにてコーテイングし、厚み25μm、ヘーズ20%の拡散粘着剤層を得た。その表面にセパレータとして、離型処理を施したポリエステルフィルムをラミネートし、両面にセパレータの設けられたロールシートを得た。その後、上記シートを、500mm幅、長さ500mmに断裁して、拡散粘着剤層側のセパレーターを剥離して実施例1で作製したのと同様のタッチパネルを多数個取りした大判のパネルの裏面全面に貼り付け、幅70mm、長さ90mmの各タッチパネルの寸法に刃型で打ち抜いた。最後に、残りのセパレータを剥離した後、タッチパネルを高精細カラーLCDの表面全面に貼り付けた。
【0045】
(実施例3) 幅70mm、長さ90mmの寸法のセパレータ付き実装用シートを用い、拡散粘着剤層側のセパレータを剥離して高精細カラーLCDの表面全面に貼り付けた後、残りのセパレータを剥離し、その上からタッチパネルを貼り付けたこと以外は、実施例2と同様にした。
【0046】
(比較例1) アクリル酸エステルからなる厚み20μmの粘着剤層の両面セパレータを有する市販の粘着剤シートを用い、一方のセパレータを剥離して、実施例1で作製したのと同様のタッチパネルの裏面に貼り合わせ、もう一方のセパレータを剥がして高精細カラーLCDの表面全面に貼り付けた。
【0047】
実施例1〜3と比較例1の実装状態でのLCD表示の視認性を観察したところ、実施例1〜3では、色のにじみやぎらつきもなく、LCD単体での表示と比較して遜色なかった。しかしながら、比較例1においては、にじみ(ぎらつき)が発生し、視認性を低下させた。
【0048】
【発明の効果】
本発明のタッチパネルの実装構造は、以上のような構成からなるので、次のような効果を奏する。
【0049】
すなわち、上部絶縁基板と下部絶縁基板の対向面のうち少なくとも一方に梨地面が形成されたタッチパネルを用い、該タッチパネルをディスプレイ上に装着したタッチパネルの実装構造において、タッチパネルとディスプレイとが拡散粘着剤層により全面的に接着されているので、この拡散粘着剤層中のフィラーによってディスプレイからの可視光をタッチパネル内に入射する前にあらかじめ多方向に散乱させている。その結果、梨地面のどの箇所で屈折しようともその光の進行方向にあまり差は無くなり、例えばディスプレイ画面上の或る画素とすぐ隣りの画素で全く同じ加法混色がされるようにRGB発光が行われていた場合、最終的に看者に認識される上記の両画素間の表示色に差が生じない。したがって、ディスプレィが高精細であっても、ぎらついた感じには見えない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図である。
【図2】従来技術に係る梨地面を有するタッチパネルの実装構造における光学的作用を説明する模式図である。
【図3】本発明に係る梨地面を有するタッチパネルの実装構造における光学的作用を説明する模式図である。
【図4】本発明に係るタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図である。
【図5】本発明に係るタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図である。
【図6】本発明に係るタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図である。
【図7】本発明に係るタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図である。
【図8】従来技術に係る一般のタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図である。
【図9】ニュートン環が発生している状態を模式的に説明する説明図である。
【図10】梨地面を有するタッチパネルの一実施例を示す断面図である。
【図11】にじみを模式的に説明する説明図である。
【図12】ディスプレイ単体でコントラストが高い状態を示す説明図である。
【図13】ディスプレイ単体でコントラストが高いものであってもディスプレイと表面ヘーズが5%を超えたタッチパネルとを組み合わせると、コントラストが低くなってしまう状態を示す説明図である。
【図14】1次凝集及び2次凝集させたフィラーを示す説明図である。
【図15】単分散させたフィラーを示す説明図である。
【図16】拡散粘着剤層と梨地面との距離が遠い場合の説明図である。
【図17】図16よりも拡散粘着剤層と梨地面との距離が近い場合の説明図である。
【符号の説明】
1 タッチパネル
2 拡散粘着剤層
2a フィラー
3 ディスプレイ
3a 画素
3b 画素
4 上部絶縁基板
5 上部電極
6 下部絶縁基板
7 下部電極
8 空気層
9 梨地面
10 実装用シート
11 シリコーンゴムシート
12 芯材
13 粘着剤層
14 両面テープ
15 マットコーティング層
80 看者
90 干渉縞の明るい部分
91 干渉縞の暗い部分
92 文字
93 赤点
94 青点
95 緑の背景
【発明の属する技術の分野】
本発明は、上部絶縁基板と下部絶縁基板の対向面のうち少なくとも一方に梨地面が形成されたタッチパネルを用い、該タッチパネルをディスプレイ上に装着したものであって、且つ表示画面のぎらつきを抑えることのできるタッチパネルの実装構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、コードレス電話機、携帯電話機、電卓、サブノートパソコン、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)、デジタルカメラ、ビデオカメラ、業務用通信機器などのディスプレイ3を備えた携帯型電子機器やパソコンのモニタなどの前面に装着され、透視した画面の指示に従いながら表面をペンや指などで押圧することによって各種の操作を行なうことのできる入力装置として、タッチパネル1が広く利用されている。
【0003】
タッチパネル1は、プラスチックフィルムで構成される上部絶縁基板4の下面に透明導電膜で構成される上部電極5が形成された上部電極板と、ガラス板やプラスチックフィルムで構成される下部絶縁基板6の上面に透明導電膜で構成される下部電極7が形成された下部電極板とを備え、上部電極板と下部電極板とが電極間に空気層を介して対向配置されており、このタッチパネル1のディスプレイ3への実装構造としては、特許文献1に示すように、裏面全面にアクリル系粘着剤層等の透明な粘着剤層13を設けてディスプレイ3の表面に装着したものなどがある(図8参照)。
【0004】
また、最近は、前記したパソコン等の製品の軽薄化が重要視され、これに伴ってタッチパネル1自体の軽薄化、実装方法の薄型化が要求されてきているため、下部絶縁基板6が薄膜製造の可能なプラスチックフィルムで構成されるタイプが採用されることが多い。
【0005】
ところが、下部絶縁基板6にプラスチックフィルムを用いると、タッチパネル1を通して画面を見たときに図9に示されるようにニュートン環が発生するという問題が生ずる。タッチパネル1におけるニュートン環の発生メカニズムは、タッチパネル1の製造時等にプラスチックフィルムからなる上部絶縁基板4が垂れ下がり、上部電極及び下部電極間の薄い空気層の上面と下面で反射する光線が干渉し、その干渉縞が明暗の同心円として見えるというものである(図9の90は干渉縞の明るい部分を示し、91は干渉縞の暗い部分を示し、92は表示される文字である。)。下部絶縁基板6が寸法安定性のあるガラス板であれば、タッチパネル1に対して加熱等の処理を行なってプラスチックフィルムからなる上部絶縁基板4をピンと張らせ、ニュートン環の発生を防止することも可能であるが、上記したように下部絶縁基板6にプラスチックフィルムを用いた場合、下部絶縁基板6も寸法安定性に劣るため加熱等の処理を行なっても上部絶縁基板4をピンと張らすことは難しい。
【0006】
そこで、下部絶縁基板6にプラスチックフィルムを用いたタッチパネル1におけるニュートン環の発生を防止するために、特許文献2に示すように、上部絶縁基板4と下部絶縁基板6の対向面のうち少なくとも一方に梨地処理を施し、この梨地面によって反射光を散乱させてニュートン環を見え難くする方法も考え出された(図10参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭61−131314号公報
【0008】
【特許文献2】
実公平8−2896号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近の高精細化されたディスプレイ(例えば200dpi以上のディスプレイ)においては、上記梨地面を有するタッチパネルを装着すると表示画面に「ぎらつき」(にじみ)といった視認性低下が発生するという新たな問題点が出てきている。なお、図11は、このにじみを模式的に示したものであり、図11の緑色の背景95に対して、赤点93や青点94が多数見える状態となり、多数の赤点93や青点94により文字92がぎらついたり、にじんだりしていることをわかりやすく示している。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記の問題点を解決し、上部絶縁基板と下部絶縁基板の対向面のうち少なくとも一方に梨地面が形成されたタッチパネルを用い、該タッチパネルをディスプレイ上に装着したタッチパネルの実装構造であって、且つ表示画面のぎらつきを抑えることのできるタッチパネルの実装構造を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のタッチパネルの実装構造は、プラスチックフィルムで構成される上部絶縁基板の下面に透明導電膜で構成される上部電極が形成された上部電極板と、プラスチックフィルムで構成される下部絶縁基板の上面に透明導電膜で構成される下部電極が形成された下部電極板とを備え、上記上部電極板と上記下部電極板とが上記上部電極及び下部電極間に空気層を介して対向配置され且つ上記上部絶縁基板と上記下部絶縁基板の対向面のうち少なくとも一方に梨地面が形成されたタッチパネルを用い、ディスプレイからの可視光を屈折及び反射させる拡散粘着剤層により上記タッチパネルと上記ディスプレイとを全面的に接着することにより装着するように構成した。
【0012】
また、上記構成において、シリコーンゴムシートの一面に拡散粘着剤層が積層された透明な実装用シートを、その拡散粘着剤層によってディスプレイ表面に全面的に接着させ、該ディスプレイ上の実装用シート表面にタッチパネルを装着するようにした。
【0013】
また、上記構成において、シリコーンゴムシートの一面に上記拡散粘着剤層が積層された透明な実装用シートを、その拡散粘着剤層によって上記ディスプレイの表面に全面的に接着させ、上記ディスプレイ上の上記実装用シートの表面に上記タッチパネルを装着するようにした。
【0014】
また、上記構成において、拡散粘着剤層のヘーズが10〜50%であり、タッチパネルの梨地面の表面ヘーズが1.5〜5%であるようにした。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照しながら本発明について詳細に説明する。図1及び図4〜7は本発明に係るタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図、図2は従来技術に係る梨地面を有するタッチパネルの実装構造における光学的作用を説明する模式図、図3は本発明に係る梨地面を有するタッチパネルの実装構造における光学的作用を説明する模式図である。図中、1はタッチパネル、2は拡散粘着剤層、3はタッチパネル1が拡散粘着剤層2により接着固定されるフルカラーのディスプレイ(例えば液晶や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ)、3a及び3bはディスプレイ3の画素、4は透明な上部絶縁基板、5は透明導電膜で構成される上部電極、6は透明な下部絶縁基板、7は透明導電膜で構成される下部電極、8は空気層、9は梨地面、10は実装用シート、11はシリコーンゴムシート、12は芯材、13は粘着剤層、14は両面テープ、15はマットコーティング層をそれぞれ示す。
【0016】
上記ディスプレイ3は、コードレス電話機、携帯電話機、電卓、サブノートパソコン、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)、デジタルカメラ、ビデオカメラ、業務用通信機器などのディスプレイであって、このディスプレイ3を備えた携帯型電子機器やパソコンのモニタなどの前面にタッチパネル1が装着され、透視した画面の指示に従いながら、タッチパネル1の表面をペンや指などで押圧することによって各種の操作を行なうことのできる入力装置としてタッチパネル1が使用される。
【0017】
図1に示すタッチパネルの実装構造は、プラスチックフィルムで構成される上部絶縁基板4の下面に透明導電膜で構成される上部電極5が形成された上部電極板と、プラスチックフィルムで構成される下部絶縁基板6の上面に透明導電膜で構成される下部電極7が形成された下部電極板とを備え、上部電極板と下部電極板とが矩形枠状の両面テープ14により互いに接着固定されることにより、上部電極板と下部電極板とが対向する電極間に空気層8を介して対向配置され且つ上部絶縁基板4と下部絶縁基板6の対向面のうち少なくとも一方に梨地面9が形成されたタッチパネル1を用い、該タッチパネル1とディスプレイ3とが拡散粘着剤層2により直接的且つ全面的に接着されている。
【0018】
タッチパネル1の上部絶縁基板4および下部絶縁基板6としては、それぞれPET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエステルサルフォン)、PAR(ポリアリレート)、又は、ARTON(アートン、JSR株式会社のノルボンネン系耐熱透明樹脂の登録商標)などのプラスチックフィルムが使用できる。また、上部絶縁基板4の上面には、一般にアクリル系UV樹脂等でハードコート処理が施こされていることが多い(図示せず)。
【0019】
梨地面9の形成手段としては、フィラーを光拡散剤として分散させたインキを作製し、ロールコーターあるいはグラビアコータ等で上部絶縁基板用又は下部絶縁基板用のプラスチックフィルム上にコーテイングするマットコーティング加工が用いられることが多く、上部絶縁基板用又は下部絶縁基板用のプラスチックフィルム上のマットコーティング層15中のフィラーの粒径や分散量により、梨地度合いを制御している。もちろん、エンボス加工その他の梨地処理を施すことによって上部絶縁基板4および/または下部絶縁基板6に梨地面9を形成することも可能であるが、従来より、上部絶縁基板4や下部絶縁基板6が透明導電膜形成の下地としてハードコートインキをコーティングすることが多く、このハードコートインキ中に上記フィラーを分散させてマットコーティング兼用インキとすればハードコート層の形成とマットコーティング層15の形成、すなわち梨地面9の形成とを同時に行なえるため、マットコーティング加工の方がその他の梨地処理と比べてコストや効率の面でより好ましい。上記マットコーティング加工で光拡散剤として用いるフィラーとしては、粒径サイズが3μm以下のSiO2粒子やAl2O3粒子等を使用する。粒径サイズが3μmを超えるフィラーを使用すると、タッチパネル1の上部及び下部電極間がフィラーによる突出部分で接近しすぎ、入力時に誤入力するおそれがあるため、好ましくない。
【0020】
また、上部絶縁基板4と下部絶縁基板6の対向面のうち少なくとも一方に施される梨地処理の程度は、表面ヘーズによって表すことができ、その表面ヘーズが1.5〜5%である梨地処理を施すことが好ましい。表面ヘーズが5%を超えると、タッチパネル自体が白く見え、ディスプレイの視認性が著しく低下する。模式的に説明すると、図12に示されるように、ディスプレイ3単体のときには、黒色の背景に対して白色の文字でコントラストが高いものであっても、図13に示されるように、ディスプレイ3とタッチパネル1を合わせてしまうと、灰色の背景に対して灰色の文字でコントラストが低くなってしまい、ディスプレイ3の視認性が著しく低下する。逆に、表面ヘーズが1.5%に満たないとニュートン環の発生防止効果が低下する。なお、本発明において表面ヘーズとは、上部絶縁基板4や下部絶縁基板1に適用するのと同じ梨地処理を高透明PETフィルムに施したときのJIS K 7105(1981)に準拠する試験にて求めたヘーズ(曇価)と定義する。上記高透明PETフィルムとしては、フィルム自体のヘーズが0.5%以下のものを用いる。
【0021】
なお、梨地面9は、上部絶縁基板4と下部絶縁基板6の対向面の両方に形成されてもよいが、コスト面で不利となるため、いずれか一方のみとするのが好ましい。その場合、下部絶縁基板6側に梨地面9を形成するのがより好ましい。何故なら、下部絶縁基板6はタッチパネルへの入力時に変形しないため、上部絶縁基板4と比べて梨地面9と透明導電膜との密着力が低下しにくいからである。
【0022】
上部電極5および下部電極7にそれぞれ用いる透明導電膜の材料としては、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化カドミウム、若しくはITO等の金属酸化物や、金、銀、銅、錫、ニッケル、アルミニウム、若しくはパラジウム等の金属の薄膜がある。これらの透明導電膜の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又は、CVD法等が用いられる。なお、上記の形成方法によって得られる透明導電膜は非常に薄いため、上部絶縁基板4および/または下部絶縁基板6の梨地面9の凹凸に沿って設けられることとなり、その電極表面も梨地となる。
【0023】
また、上部電極板及び下部電極板のそれぞれには、バスバーや引き回し線等の所定のパターンの回路が形成される(図示せず)。回路の材料としては、金、銀、銅、若しくはニッケルなどの金属あるいはカーボンなどの導電性を有するペーストを用いる。これらの形成方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、若しくはフレキソ印刷などの印刷法、フォトレジスト法、又は、刷毛塗法などがある。
【0024】
なお、上部電極板と下部電極板とは、通常、上部電極5または下部電極7の表面に形成されたスペーサーによって間を隔てられており、指やペンなどで上部電極板上から押圧することによりはじめて上部電極5と下部電極7とが接触し入力が行われる。スペーサーとしては、透明な光硬化型樹脂をフォトプロセスで微細なドット状に形成して得ることができる。また、印刷法により微細なドットを多数形成してスペーサーとすることもできる。また、上部電極板と下部電極板とは両面テープ8や透明粘着剤によって表示領域外のみ貼り合わせられており、タッチパネル1の寸法が小さくこの貼り合わせのみで上部及び下部電極間の絶縁を維持出来る場合には、スペーサーを省略してもよい。
【0025】
本発明の特徴は、上記したような上部絶縁基板4と下部絶縁基板6の対向面のうち少なくとも一方に梨地面9が形成されたタッチパネル1をディスプレイ3上に装着したタッチパネルの実装構造において、タッチパネル1とディスプレイ3とが拡散粘着剤層2により全面的に接着されていることにある。
【0026】
従来技術においては、タッチパネル1とディスプレイ3との全面接着に用いられる通常の粘着剤層は、ディスプレイ3からの可視光をそのまま透過してタッチパネル1内に垂直に入射させている。タッチパネル1内に入射した可視光は、その後、タッチパネル1の上部絶縁基板4または/および下部絶縁基板6の対向面に形成された梨地面9を透過する際に梨地面9を構成する凸面又は凹面に対して斜め方向から入射することにより屈折をする。このとき、屈折率は透過した光の波長によって異なり、具体的には波長の長い赤色の光は小さな角度で屈折し、波長の短い青色の光は大きな角度で屈折するため、RGB(赤、緑、青)の各波長の屈折率差によりディスプレイ3からのRGB各色の光は、梨地面9の透過後、僅かに異なる方向に進む。しかも、同じ波長の色で且つ同じ角度でタッチパネル1内に入射した光であっても、梨地面9のどの箇所で屈折するか、つまり梨地面9を構成する凸面又は凹面に対してどの角度で入射するかによってその進行方向は異なる(図2参照)。したがって、例えばディスプレイ3の画面上の、或る画素3aと、すぐ隣りの画素3bとで全く同じ加法混色がされるようにRGB発光が行われていたとしても、最終的に看者に認識される上記画素3aと上記画素3bの表示色が異なることがある。そして、ディスプレイ3が高精細である、つまり画素が細かくなると上記現象の起こる画素も増加するため、ぎらついた様に見える。
【0027】
これに対して、 本発明の拡散粘着剤層2は、アクリル酸エステル等のアクリル系透明粘着剤中にフィラー2aを光拡散剤として分散させたものであり、ディスプレイ3からの可視光をこのフィラー2aによって屈折および反射させる。つまり、ディスプレイ3からの可視光をタッチパネル1内に入射する前にあらかじめ多方向に散乱させている(図3参照)。従来のディスプレイ3からの可視光をそのまま透過してタッチパネル1内に垂直に入射させている場合であれば、同じ波長の色で梨地面9の同じ箇所を透過した光の進行方向はおよそ一方向に決まってしまうが、本発明のようにタッチパネル1内に入射する前にあらかじめ多方向に散乱している場合、同じ波長の色で梨地面9の同じ箇所を透過した光であっても進行方向は多方向となる。そうなると、梨地面9のどの箇所で屈折しようともあまり差は無くなり、例えばディスプレイ3の画面上の、或る画素3aと、すぐ隣りの画素3bとで全く同じ加法混色がされるようにRGB発光が行われていた場合、最終的に看者80に認識される上記画素3aと上記画素3bの表示色に差が生じなくなる。この結果、ディスプレイが高精細であっても、ぎらついた感じには見えない。本発明において高精細とは、一般的には100ppi(ピクセル・パー・インチでdpiと同等)以上とされており、100ppiでは本発明の適用はなくても構わないが、本発明を適用したほうがよく、200ppi以上では必ず本発明を適用する。
【0028】
なお、梨地面9をマットコーティング加工により形成する場合には、マットコーティング層15内のフィラーにより散乱も生じるが、フィラーの量を増やすとマットコーティング層15の入力に対する耐久性が劣化して透明導電膜とともに剥離してしまうため、充分な量のフィラーを分散させることができず、ぎらつきを抑えることは難しい。本発明は、下部絶縁基板6等で保護された拡散粘着剤層2中のフィラー2aにより散乱を行うので、フィラー2aの量を充分に分散させても入力に対する耐久性が劣化するという問題を生じない。
【0029】
上記拡散粘着剤層2は、アクリル酸エステル等のアクリル系粘着剤中にフィラー2aを光拡散剤として分散させたものである。このアクリル系粘着剤は、粘着テープ等に一般的に用いられる粘着剤を使用すればよい。また、光拡散剤として分散させるフィラー2aとしては、粒径サイズが1μm程度のSiO2粒子やAl2O3粒子等を使用する。
【0030】
また、拡散粘着剤層2中のフィラー2aの分散程度は、JIS K 7105(1981)によって求められる拡散粘着剤層2自体のヘーズ(曇価)によって表すことができ、拡散粘着剤層2のヘーズが10〜50%になるように調整する。拡散粘着剤層2のヘーズが10%未満であると、タッチパネルの梨地処理とディスプレイの画素との干渉を抑えることが難しくなる。また、拡散粘着剤層2のヘーズが50%を超えると、粘着剤自体が白くなり、ディスプレイ3の視認性を低下させる。より好ましい拡散粘着剤層2のヘーズは25〜35%である。また、上記拡散粘着剤層2の厚みは、接着力を得るために少なくとも10μmは必要である。
【0031】
上記拡散粘着剤層2内のフィラー2aの粒径は、一般的に可視光において、拡散させる必要がある為、可視光線の波長の長さ(400nm〜700nm、すなわち、0.4μm〜0.7μm)以上が必要になる。好ましは、2〜3μmである。また、フィラー2aは、図14に示すように1次凝集及び2次凝集させて全体の粒径を2〜3μm程度になるように分散しても良く、その場合には、大小異なる粒径のフィラーを使用して構わない。この場合には、予め均一な粒径サイズに揃える必要がない為、材料コスト的に有利である。しかしながら、分散性を考慮した場合は、2〜3μm程度の同一粒径えのフィラーを図15に示すように単分散させた方が、均一に効果を出せる為に好ましい。ただし、異種のフィラーを混合して用いないほうがよい。
【0032】
以上、図1に示す実装構造について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、タッチパネル1とディスプレイ3とが拡散粘着剤層2により直接的に接着されなくてもよい。具体的には、シリコーンゴムシート11の一面に拡散粘着剤層2が積層されて構成された透明な実装用シート10を準備し、実装用シート10の拡散粘着剤層2をディスプレイ3の表面に全面的に接着させて、該ディスプレイ3上に接着固定された実装用シート10のシリコンゴムシート11の表面にタッチパネル1を貼り付けて装着することができる(図4参照)。このようにすれば、シリコーンゴムシート11から簡単にタッチパネル1を取り外すことができて、シリコーンゴムシ−ト11トタッチパネル1との間での貼り直しを簡単に行なうことができる。
【0033】
また、シリコーンゴムシート11の一面に拡散粘着剤層2が積層されて構成された透明な実装用シート10を準備し、その拡散粘着剤層2をタッチパネルの裏面に全面的に接着させて、タッチパネル1に接着固定された実装用シート10のシリコーンゴムシート11の表面にディスプレイ3を貼り付けて装着することができる(図5参照)。このようにすれば、シリコーンゴムシート11から簡単にタッチパネル1を取り外すことができて、シリコーンゴムシ−ト11トタッチパネル1との間での貼り直しを簡単に行なうことができる。
【0034】
図4および図5の上記実装用シート10のシリコーンゴムシート11は、被着体との間で接触面に対して垂直方向に働く引き離しの力や接触面沿いの方向へのズレの力には強いが、シリコンゴムシート11の端部からシリコンゴムシート11をめくるように、被着体から引き離す力をシリコンゴムシート11に働かせると容易に被着体からシリコンゴムシート11が分離しやすいものであり、この実装用シート10を用いたタッチパネルの実装構造では、リペアが可能となる。シリコーンゴムシート11としては、例えばシリコ−ンゴムとシリコ−ンレジンの混合物を溶剤でインキ化し塗布し、乾燥時の熱で架橋させたもの等を用いることができる。上記シリコーンゴムシート11の厚みは、20〜100μmの範囲とするのが好ましい。20μm以上の厚みでは、シリコーンゴムシート11が弾力性に富んでショック吸収材ともなるため、様々な衝撃や変形からディスプレイ3を保護することができるからである。また、100μmを超える厚みでは、接着力が強くなりすぎるため、タッチパネル1を引き剥がすと実装用シート10のシリコーンゴムシート11側の面で剥離しにくくなったり、タッチパネル1のディスプレイ3への装着時に気泡をかみやすくなったりするからである。
【0035】
また、実装用シート10は、拡散粘着剤層2とシリコーンゴムシート11との間に、芯材12となるプラスチックフィルムを介在させたものでもよい(図6,図7参照)。図6では、ディスプレイ3上に配置されるシリコーンゴムシート11と、タッチパネル1側に配置される拡散粘着剤層2との間に芯材12を挟み込んでいる。一方、図7では、ディスプレイ3上に配置される拡散粘着剤層2と、タッチパネル1側に配置されるシリコーンゴムシート11との間に芯材12を挟み込んでいる。このようにすれば、タッチパネルを多数個取りした大判パネルの裏面に実装用シート10を設けた後に各タッチパネルとともに打抜く場合、実装用シート10が芯材12により腰を強化していると所定の形状に精度良く打ち抜くことができる。この芯材12となるプラスチックフィルムの材質としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PC(ポリカーボネート樹脂)、TAC(トリアセチルセルロース)、又は、PES(ポリエステルサルフォン樹脂)等の透明なフィルムを用いることができる。なお、上記芯材となるプラスチックフィルムの厚みは、12μm以上とするのが好ましい。12μm未満の厚みでは十分な腰の強化が得られないからである。また、シリコーンゴムシート11にインキを塗布する際、12μm未満の厚みでは芯材が波打って厚みを均一に制御することが難しく、タッチパネル1のディスプレイ3への装着時に気泡をかみやすくなったりするからである。
【0036】
なお、芯材12のシリコーンゴムシート11を積層する面にはプライマー処理を施すのが好ましい。このプライマー処理は、一般に基材とコーティング剤との接着性を上げるために、両者に相性のよい中間剤を塗布すること等を言う。広義には易接着処理のことで、基材の表面に凹凸を付けて表面積を大きくして接着性を上げたり、コロナ処理等で表面改質を行ない、接着性を上げることも含む。このプライマー処理によりシリコーンゴムシート11を上記芯材12に強固に接着させ、タッチパネル1の引き剥がし時に芯材12とシリコーンゴムシート11との間で剥離したり、前記打抜き時に芯材12とシリコーンゴムシート11との間でずれが生じてシリコーンゴムシート11がはみ出したりしないようにすることができる。
【0037】
また、拡散粘着剤層2は、実装用シート10に用いる場合には50μmを上限とするのが好ましい。50μmを超える厚みでは、接着力が強くなりすぎて、被着体との間に生ずる又は生じた気泡についての脱泡処理、例えば実装用シート10にR曲げを与えながら、ローラ等で端から徐々に気泡を追い出すように圧力をかけたり、あるいは減圧雰囲気中に置いたりしても、気泡が抜けにくくなる。
【0038】
また、上記実装用シート10の製造中の塗布、すなわちプライマー処理時のコーティング剤の塗布や拡散粘着剤層2の形成時の塗布、シリコーンゴムシート11の形成時の塗布等には、グラビアコート法、リバースコート法、コンマコート法、又は、ダイコート法等の一般的なコート法が用いられる。
【0039】
また、拡散粘着剤層2の配置に関して、図16と図17に示されるように、拡散粘着剤層2と梨地面9とは距離が近い方(図16よりも図17の方)が、より、細かく光拡散する為に、人間の目で見た時にぎらつき防止効果が大きい。
【0040】
また、拡散粘着剤層2の変形例としては、実装用シート10の芯材(光学等方性フィルム)12を溶融押し出し法、あるいは溶液キャスト法にて製膜する際に、SiO2あるいはAl2O3等の拡散用フィラー2aを樹脂ペレットと一緒に分散させ、ヘイズ値が10〜50%になるように調整するものがある。
【0041】
また、拡散粘着剤層2を設けることについて、タッチパネル特有の効果を向上させる機能として次のようなものがある。すなわち、タッチパネル1の使用において、ペンや指で、繰り返し入力を行なう為に、表面及び内面に多少汚れやキズが発生してくる。しかしながら、上記タッチパネル1においては、光拡散の影響で、汚れやキズが目立たなくなり、外観上有利である。
【0042】
【実施例】
(実施例1) 厚み188μmのPETフィルムを下部絶縁基板として用い、その上面に粒径2μmのSiO2を光拡散剤として分散させたアクリル系樹脂をロールコーターで厚み5μmになるようにマットコーテイングして梨地処理を施して表面ヘイズが3%の梨地面を形成し、その上に厚み20nmのITO膜からなる下部電極をスパッタリングにて形成して下部電極板とした。また、厚み188μmのPETフィルムを上部絶縁基板として用い、その下面にアクリル系樹脂をロールコーターで厚み5μmでコーテイングし、そのコーティング層上に厚み20nmのITO膜からなる上部電極をスパッタリングにて形成し、さらに上部絶縁基板の上部電極を形成した面とは反対の面にアクリル系樹脂をロールコータで5μmになるようにコーテイングしたものを上部電極板とした。次いで上部電極板と下部電極板に所定のパターンの回路をスクリーン印刷にて形成した後、上部電極板と下部電極板とを電極間に空気層を介して対向配置させ、両者を周縁部において両面テープにて接着し、両電極間のニュートン環の発生を防止したタッチパネルを得た。
【0043】
上記タッチパネルの裏面に、アクリル酸エステルからなる粘着剤層中に粒径1μmのSiO2粒子を光拡散剤として分散させたインキをスクリーン印刷にて塗布し、厚み20μm、ヘイズ25%の拡散粘着剤層を全面的に形成した。次いで、この拡散粘着剤層付きタッチパネルを高精細カラーLCDの表面全面にローラで加圧しながら貼り付けた。
【0044】
(実施例2) 厚み38μm、幅1050mm、長さ500mの透明なポリエステルフィルムを芯材とし、まず、その一面にコロナ放電により表面改質を行い、その上に厚み40μmのシリコーンゴムシートをコーターにて積層し、その表面にセパレータとして、離型処理を施したポリエステルフィルムをラミネートした。次いで、芯材の他面に、アクリル酸エステルからなる粘着剤層中に粒径1μmのAl2O3粒子を分散させたインキをロールコータにてコーテイングし、厚み25μm、ヘーズ20%の拡散粘着剤層を得た。その表面にセパレータとして、離型処理を施したポリエステルフィルムをラミネートし、両面にセパレータの設けられたロールシートを得た。その後、上記シートを、500mm幅、長さ500mmに断裁して、拡散粘着剤層側のセパレーターを剥離して実施例1で作製したのと同様のタッチパネルを多数個取りした大判のパネルの裏面全面に貼り付け、幅70mm、長さ90mmの各タッチパネルの寸法に刃型で打ち抜いた。最後に、残りのセパレータを剥離した後、タッチパネルを高精細カラーLCDの表面全面に貼り付けた。
【0045】
(実施例3) 幅70mm、長さ90mmの寸法のセパレータ付き実装用シートを用い、拡散粘着剤層側のセパレータを剥離して高精細カラーLCDの表面全面に貼り付けた後、残りのセパレータを剥離し、その上からタッチパネルを貼り付けたこと以外は、実施例2と同様にした。
【0046】
(比較例1) アクリル酸エステルからなる厚み20μmの粘着剤層の両面セパレータを有する市販の粘着剤シートを用い、一方のセパレータを剥離して、実施例1で作製したのと同様のタッチパネルの裏面に貼り合わせ、もう一方のセパレータを剥がして高精細カラーLCDの表面全面に貼り付けた。
【0047】
実施例1〜3と比較例1の実装状態でのLCD表示の視認性を観察したところ、実施例1〜3では、色のにじみやぎらつきもなく、LCD単体での表示と比較して遜色なかった。しかしながら、比較例1においては、にじみ(ぎらつき)が発生し、視認性を低下させた。
【0048】
【発明の効果】
本発明のタッチパネルの実装構造は、以上のような構成からなるので、次のような効果を奏する。
【0049】
すなわち、上部絶縁基板と下部絶縁基板の対向面のうち少なくとも一方に梨地面が形成されたタッチパネルを用い、該タッチパネルをディスプレイ上に装着したタッチパネルの実装構造において、タッチパネルとディスプレイとが拡散粘着剤層により全面的に接着されているので、この拡散粘着剤層中のフィラーによってディスプレイからの可視光をタッチパネル内に入射する前にあらかじめ多方向に散乱させている。その結果、梨地面のどの箇所で屈折しようともその光の進行方向にあまり差は無くなり、例えばディスプレイ画面上の或る画素とすぐ隣りの画素で全く同じ加法混色がされるようにRGB発光が行われていた場合、最終的に看者に認識される上記の両画素間の表示色に差が生じない。したがって、ディスプレィが高精細であっても、ぎらついた感じには見えない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図である。
【図2】従来技術に係る梨地面を有するタッチパネルの実装構造における光学的作用を説明する模式図である。
【図3】本発明に係る梨地面を有するタッチパネルの実装構造における光学的作用を説明する模式図である。
【図4】本発明に係るタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図である。
【図5】本発明に係るタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図である。
【図6】本発明に係るタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図である。
【図7】本発明に係るタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図である。
【図8】従来技術に係る一般のタッチパネルの実装構造の一実施例を示す断面図である。
【図9】ニュートン環が発生している状態を模式的に説明する説明図である。
【図10】梨地面を有するタッチパネルの一実施例を示す断面図である。
【図11】にじみを模式的に説明する説明図である。
【図12】ディスプレイ単体でコントラストが高い状態を示す説明図である。
【図13】ディスプレイ単体でコントラストが高いものであってもディスプレイと表面ヘーズが5%を超えたタッチパネルとを組み合わせると、コントラストが低くなってしまう状態を示す説明図である。
【図14】1次凝集及び2次凝集させたフィラーを示す説明図である。
【図15】単分散させたフィラーを示す説明図である。
【図16】拡散粘着剤層と梨地面との距離が遠い場合の説明図である。
【図17】図16よりも拡散粘着剤層と梨地面との距離が近い場合の説明図である。
【符号の説明】
1 タッチパネル
2 拡散粘着剤層
2a フィラー
3 ディスプレイ
3a 画素
3b 画素
4 上部絶縁基板
5 上部電極
6 下部絶縁基板
7 下部電極
8 空気層
9 梨地面
10 実装用シート
11 シリコーンゴムシート
12 芯材
13 粘着剤層
14 両面テープ
15 マットコーティング層
80 看者
90 干渉縞の明るい部分
91 干渉縞の暗い部分
92 文字
93 赤点
94 青点
95 緑の背景
Claims (4)
- プラスチックフィルムで構成される上部絶縁基板の下面に透明導電膜で構成される上部電極が形成された上部電極板と、プラスチックフィルムで構成される下部絶縁基板の上面に透明導電膜で構成される下部電極が形成された下部電極板とを備え、上記上部電極板と上記下部電極板とが上記上部電極及び下部電極間に空気層を介して対向配置され且つ上記上部絶縁基板と上記下部絶縁基板の対向面のうち少なくとも一方に梨地面が形成されたタッチパネルを用い、ディスプレイからの可視光を屈折及び反射させる拡散粘着剤層により上記タッチパネルと上記ディスプレイとを全面的に接着することにより装着したことを特徴とするタッチパネルの実装構造。
- シリコーンゴムシートの一面に上記拡散粘着剤層が積層された透明な実装用シートを、その拡散粘着剤層によって上記ディスプレイの表面に全面的に接着させ、上記ディスプレイ上の上記実装用シートの表面に上記タッチパネルを装着した請求項1記載のタッチパネルの実装構造。
- シリコーンゴムシートの一面に上記拡散粘着剤層が積層された透明な実装用シートを、その拡散粘着剤層によって上記タッチパネルの裏面に全面的に接着させ、該実装用シートが設けられた上記タッチパネルを上記ディスプレイの表面に装着した請求項1記載のタッチパネルの実装構造。
- 上記拡散粘着剤層のヘーズが10〜50%であり、タッチパネルの梨地面の表面ヘーズが1.5〜5%である請求項1〜3のいずれかに記載のタッチパネルの実装構造。
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