JP2004125961A - ベルト装置および画像形成装置 - Google Patents

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Michio Kimura
木村 美知夫
Toshiyuki Kahata
加幡 利幸
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Abstract

【課題】ベルトからの蛇行防止部材の接着性を向上させて蛇行防止部材の剥がれの防止、これによる画像抜けや色ずれさらには摩耗粉や異物による画像面への悪影響を解消することができる構成を備えたベルト装置を得る。
【解決手段】複数のローラー100に掛け回された無端ベルト90を備えたベルト装置において、上記無端ベルト90が弾性体層91と該弾性体層91の幅方向両端に形成されて該無端ベルト90の上記ローラーからの脱落を防止する少なくとも2層以上の弾性体で形成された寄り止め部材95とを備えて構成され、上記寄り止め部材95は上記無端ベルト90に対しての伸び率が該無端ベルト90の伸び率以上に設定されていることを特徴とする。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベルト装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、ベルトの寄り防止に用いられる部材の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数のローラーに掛け回されたベルトを用いる装置の一つに、複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置や印刷機などのように静電記録方式や電子写真方式を用いた画像形成装置がある。
【0003】
画像形成装置には、単一色の画像形成を対象とする場合の他に複数色の画像形成を対象とする場合もあり、後者の場合に用いられる構成の一つに、各色毎の画像を感光体から一旦中間転写体に1次転写し、重畳転写された画像を記録シートなどの記録媒体に対して一括して2次転写する構成がある(例えば、非特許文献1)。
【0004】
1次および2次転写を行う構成では、1次転写のみの場合に比べて転写効率が悪くなる。そこで、中間転写ベルトの構成として、表面層をフッ素系化合物の粉体およびフッ素系グラフトポリマーを含有させた構成としてトナーの離型性の向上およびフィルミング低減により転写効率の向上とクリーニング性を良化させて画像の中抜けを防止する構成(例えば、特許文献1)、中間転写ベルトでの静電的な転写効率を向上させるために導電性カーボンブラックを半導電性としたフッ素系樹脂ベルト中に含有させる構成(例えば、特許文献2)、ベルト端部に位置検知用の開口を形成した場合にその開口部に所定の機械的特性および電気的抵抗特性を有するリーク防止テープを貼付して補強することにより転写体端部の破損によりベース層が露呈した場合に発生する抵抗特性の悪化を防止する構成(例えば、特許文献3)が提案されている。
【0005】
一方、転写効率の悪化に加えて、転写不良を招く原因としてベルトの蛇行がある。ベルトが蛇行した場合には、色毎の画像同士の転写位置が異なることで画像ずれや色ずれを起こし、さらにはベルト端部での応力変化によりクラックなどが発生してしまうことになる。そこで、このような不具合を解消するために、シームレスベルトの基材内側の両端にエラストマー製ガイドが接着されている補強テープを接着剤により貼付した構成(例えば、特許文献4)、ベルト表面に貼付されているガイドの剥がれを防止するために所定の引張り弾性率を有する補強基材およびこれの両面に接着層を設け、一方の接着層に硬度が設定されたガイド基材を貼付した構成(例えば、特許文献5)、ベルトを構成する可撓性フィルムの内周面側縁に沿って滑性材料を用いた被覆が施されたガイド要理部を設けた構成(例えば、特許文献6)が提案されている。さらに、ベルトの蛇行を矯正する構成として、ベルトを一方向に強制的に偏倚させ、その偏倚量を検知することにより偏倚させた方向と逆方向に移動させるようにした構成(例えば、特許文献7)が提案されている。
【0006】
【非特許文献1】
電子写真学会,「続 電子写真技術の基礎と応用」1996年,
11月15日,初版第1刷,p33,図1.21
【特許文献1】
特開平8−160701号公報(「0029」欄)
【特許文献2】
特開2000−25097号公報(「0006」欄、図1)
【特許文献3】
特開2000−112257号公報(「0039」欄〜「0040」欄、図7)
【特許文献4】
特開2000−1237号公報(「0014」欄〜「0016」欄、図1)
【特許文献5】
特開2000−289823号公報(「0014」欄、図2)
【特許文献6】
特開平11−338174号公報(「0020」欄〜「0022」欄、図2)
【特許文献7】
実開平5−12819号公報(請求項1、図1)
【特許文献8】
特開平3−219259公報
【特許文献9】
特開昭63−127250号公報
【特許文献10】
特開昭63−127249号公報
【特許文献11】
特公昭52−36016号公報
【特許文献12】
特公昭52−8774号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に示された構成は、フッ素系グラフトポリマーを含有させることによるトナーの離型性の改善ならびにこれによるトナーフィルミングの低減化により転写効率を向上させることが可能であるものの、ベルトの蛇行対策に関しては何もなく、蛇行時での不具合には着目されていない。ベルト蛇行に関しては、特許文献2に示された構成においても同様である。
【0008】
特許文献3に示された構成は、位置決め用の検知開口周辺部の強度を補強用テープの添付によって高めることができるものの、ベルトそのものの強度向上のみであって、そのようなベルトの蛇行に関する処理が含まれていない。しかも、補強用テープとベルト基材との間の電気的特性が異なるためにベルト表面での表面抵抗がばらついた状態となり例えば、600DPI以上の解像度ヲ有する中間調画像では画像ムラが発生しやすくなる。
【0009】
特許文献4に示された構成は、エラストマー製ガイドが接着された補強テープをベルト表面に接着することでベルトとの間での接着性が向上するものの、補強テープへのガイド接着がガイド素材(ゴム)そのものに有する接着性を利用するだけであるので補強テープとガイドとの間の接着力の向上が望めない構成となっている。また、テープとベルトとの間の接着面には隙間や重ね合わせ部分があるとこの部分がベルト搬送時に微小振動を誘発してしまい、いわゆる、バンディング画像が得られてしまう。
【0010】
特許文献5に示された構成は、蛇行防止のためのガイド部材を備えているものの、そのガイド部材の強度を特定しただけで、接着特性に関しては何ら特定されていない。
【0011】
特許文献6に示された構成は、表面に金属蒸着膜を有するベルトに対してシリコンゴムからなるガイド部材に滑性材料の被覆が施されていることにより、ガイドの摩耗および摩耗粉による画像抜けを防止できるものの、金属蒸着膜に対するガイド部材の接着は、特許文献4と同様に、シリコンゴム自体の接着性を利用するだけであるので接着性を向上させることが難しい。また、シリコンゴムの塗布、硬化による収縮変形によりエンドレスベルトが変形する虞もある。
【0012】
特許文献7に示された構成は、ベルトの蛇行を強制的に負荷を掛けて矯正するようになっているものの、ベルトの掛かり止めを行う構成、つまり、該ガイド部材に相当するものがないことから矯正のための構成が大がかりなものとなるばかりでなく、構成の複雑化を招く。
【0013】
以上のように、ベルトを用いた場合のベルトの蛇行あるいはその蛇行を防止するために設けられているガイド部材およびベルトの損傷に着目してベルト自体あるいはガイド部材の剛性を向上させる点については上記各特許文献に開示されているものの、ベルトとガイド部材との間の接着特性に影響される画像抜けや色ずれさらには摩耗粉や異物の発生等の不具合についての開示は見受けられない。
【0014】
本発明の目的は、従来のベルト装置における問題、特に、ベルトの蛇行防止部材を装備した場合の不具合に鑑み、ベルトからの蛇行防止部材の接着性を向上させて蛇行防止部材の剥がれの防止、これによる画像抜けや色ずれさらには摩耗粉や異物による画像面への悪影響を解消することができる構成を備えたベルト装置および画像形成装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、複数のローラーに掛け回された無端ベルトを備えたベルト装置において、上記無端ベルトが弾性体層と該弾性体層の幅方向両端に形成されて該無端ベルトの上記ローラーからの脱落を防止する少なくとも2層以上の弾性体で形成された寄り止め部材とを備えて構成され、上記寄り止め部材は上記無端ベルトに対しての伸び率が該無端ベルトの伸び率以上に設定されていることを特徴としている。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明に加えて、上記寄り止め部材に有する弾性体の一つは上記無端ベルトの弾性体側に位置するゴムで構成され、該ゴムの硬度が他の弾性体に用いられるゴム硬度よりも小さく設定されていることを特徴としている。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明に加えて、上記ベルトは、上記ローラー間での移動方向と直交する幅方向における周長差が幅方向両端間で0.05〜0.31mmに設定され、該ベルトが掛け回されているローラーの少なくとも一つが植毛ローラーであることを特徴としている。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のうちの一つに記載の発明に加えて、上記無端ベルトに設けられている寄り止め部材の厚さを0.6〜3mmとし、移動方向と直交する方向での幅が3〜10mmに設定されていることを特徴としている。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のうちの一つに記載の発明に加えて、上記無端ベルトと寄り止め部材とは接着により一体化され、接着層の厚さが0.2mm以上とされていることを特徴としている。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のうちの一つに記載の発明に加えて、上記無端ベルトと一体化されている寄り止め部材は、フィラーを含有し、無端ベルトとの間の接着層のゴム硬度(JISA)が40〜70に設定されていることを特徴としている。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のうちの一つに記載の発明に加えて、上記寄り止め部材の接着層と該寄り止め部材に有する弾性体の一つで構成される寄り止め層とのゴム硬度(JISA)の差が20以内に設定されていることを特徴としている。
【0022】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のうちの一つに記載のベルト装置を画像形成装置に用いることを特徴としている。
【0023】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明に加えて、上記ベルト装置は、複数の色画像を重畳転写可能な中間転写装置に用いられることを特徴としている。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項8記載の発明に加えて、上記ベルト装置に有する無端ベルトは、潜像形成可能な感光体として用いられることを特徴としている。
【0025】
請求項11記載の発明は、請求項8乃至10のうちの一つに記載の発明に加えて、上記ベルト装置および該ベルト装置の無端ベルトを対象として画像形成処理を行う装置が形成画像の色毎に纏められて着脱可能とされたプロセスカートリッジ構造を備えたことを特徴としている。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるベルト装置に適用される無端ベルトを示す図である。
図1において無端ベルト90は弾性層91、表面層92からなる。
また無端ベルト90の裏面端部には接着層93、寄り止め層94からなる2層構成の寄り止め部材95が設けられている。
無端ベルト90は中間転写体としてあるいは感光体として用いることが可能であり、中間転写ベルトの場合、弾性層91がベース層に、そして表面層92が離型層に相当し、また感光体ベルトの場合、表面層92は感光層に相当している。
【0027】
図2は無端ベルト90が上述した弾性層91、表面層92に加えてこれら各層間に位置するベース層97を設けた構成とした場合が示されており、図2における構成では、裏面で無端ベルト90の移動方向と直交する幅方向端部に接着層93および寄り止め層94からなる2層構成の寄り止め部材95が設られている。寄り止め部材95は無端ベルト90の幅方向端部から所定距離lの位置に貼り付けられており、貼り付け位置は接着剤、粘着剤のはみ出しを考慮して無端ベルト101の両端部からl=0.1〜1mm程度幅方向中心寄りの位置が好ましい。
【0028】
図3は寄り止め部材95の構成として、接着層93、中間層98、寄り止め層94の3層構成からなる場合を示す断面図である。
【0029】
無端ベルト90が中間転写ベルトとして用いられる場合には、弾性層91としてブチルゴム,フッ素系ゴム,アクリルゴム,EPDM,NBR,アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、リコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア,ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上の材料を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではないことは当然である。
【0030】
図1および図2におけるベース層は、ポリカーボネート樹脂,ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂(ETFE,PVDF)、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコン変性アクリル樹脂,塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリアミド樹脂等を用いることができる。
【0031】
ベース層、弾性層には、抵抗値調節の為、必要に応じてカーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫,酸化チタン,酸化アンチモン,酸化インジウム,チタン酸カリウム,酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO),酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム,ケイ酸マグネシウム,炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したもの等を添加しても良い。
【0032】
弾性層91の膜厚は0.02〜.5mmが好ましい。0.02mm以下ではトナー層転写時ベルトの変形量が少なく、転写抜け等に対する効果が少ない。0.5mm以上ではベルトの変形量が大きすぎてトナー像の重ね時に色ズレが発生しやすい。
【0033】
弾性層91の膜さは0.2mm以上が好ましい。0.2mm未満では直線曲がり、ガイド乗り上げ防止トナー層転写時ベルトの変形量が少なく、転写抜け等に対する効果が少ない。0.5mm以上ではベルトの変形量が大きすぎてトナー像の重ね時に色ズレが発生しやすい。
【0034】
表面層92には、中間転写ベルトの場合、表面へのトナーの付着力を小さくして2次転写性を高めることができる材質として例えば、ポリウレタン,ポリエステル,エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上を使用し表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料,たとえばフッ素樹脂,フッ素化合物,フッ化炭素,2酸化チタン,シリコンカーバイト等の粉体,粒子を1種類あるいは2種類以上または粒径を異ならしたものを分散させた膜厚2〜30μmの表層を設けることができる。また表層材料としてフッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素リッチな層を形成させ表面エネルギーを小さくさせたものも使用することができる。
【0035】
中間転写ベルトの膜厚は0.1〜3mm、抵抗値は1×10〜1×1015Ωcmが好ましい。中間転写ベルトの抵抗値は1×10Ωcm未満では転写時トナー像の乱れが大きく、また1×1015Ωcmを越えるとトナー層転写不良が発生する。
【0036】
中間転写ベルトの製造方法としては回転する円筒形の型に材料を流し込みベルトを形成する遠心成型法、表層の薄い膜を形成させるスプレー塗工法、円筒形の型を材料の溶液の中に浸けて引き上げる浸漬塗布法、内型,外型の中に注入する注型法、円筒形の型にコンパウンドを巻き付け,加硫研磨を行う方法があるがこれに限定されるものではなく複数の製法を組み合わせてベルトを製造することができる。これらの製造法では型からの離型性を良くするため通常上下で0.05〜0.31mm程度の周長差を設けた金型が用いられる。
0.31mmを越える周長差では感光体からのトナー像転写時ムラが発生してしまう。又0.05mm未満の周長差では金型からの離型が困難になり、これを逓減するため離型剤を多用すると中間転写ベルト表面状態が悪化してしまう。
【0037】
無端ベルト90を感光体ベルトとして用いる場合、感光体ベルトは厚さ25〜40μmのニッケル等の導電性シームレスベルト上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層又は保護層を浸漬塗工法、スプレー塗工法などにより設けたものが用いられる。
【0038】
ニッケルシームレスベルト支持体は、例えば、外表面がクロム又はステンレス鋼等の金属から成る円筒状マンドレルを電気メッキ槽中で回転させながら該円筒状マンドレルを囲む様に設けられた陽極バスケットとの間で電気メッキを行い、該円筒状マンドレルの外表面にニッケルシームレスベルト支持体を形成することにより得られる(例えば、先に挙げた特許文献8乃至12)。
【0039】
ニッケルシームレスベルトは、離型性のため上下で0.05〜0.31mm程度の周長差を設けた金型を用いて形成される。0.31mmを越える周長差ではこのシームレスニッケルベルトを用いた感光体ユニットにおいてシームレスニッケルベルトのユニット片側に寄り力が大きく寄り止め部材がローラーに乗り上げの感光体ベルトの搬送性に支障が生じてしまう。0.05mm未満では電鋳法によるシームレスニッケルベルト形成時マンドレルからシームレスニッケルベルトを剥がすのが難しくベルトにキンクと呼ばれるニッケルの折れが発生しやすい不具合がある。
【0040】
感光体ベルトでの下引き層は、接着性の向上、モアレなどの防止、上層の塗工性の改良、さらには残留電位の低減などを目的として設けられる。下引き層層は、一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上の感光層が溶剤を用いて塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン(登録商標)、メトキシメチル化ナイロン(登録商標)、等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。膜厚は、0.2〜12μm程度が適当である。
【0041】
感光体ベルトの電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダ−樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル等の無機系材料とフタロシアニン系顔料、アゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、トリフェニルメタン系顔料等の有機系材料を用いることができる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0042】
感光体ベルトの電荷輸送層は帯電電荷を保持させ、かつ露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。
電荷輸送物質としては、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、イミダゾ−ル誘導体、トリフェニルアミン誘導体、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾ−ル誘導体、トリアゾ−ル誘導体、などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。電荷輸送層の膜厚は、5〜100μm程度が適当である。
【0043】
また、電荷輸送層に併用できるバインダ−樹脂としては、ポリカ−ボネ−ト(ビスフェノ−ルAタイプ、ビスフェノ−ルZタイプ)、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、シリコン樹脂、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらのバインダ−は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0044】
感光体ベルトとしては感光層のクラック等からビスフェノ−ルAタイプのポリカ−ボネ−トが好ましい。必要により電荷輸送物質及びバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
【0045】
また結着樹脂中に金属、又は金属酸化物の微粒子を分散した保護層を設けても良い。この場合の保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。
【0046】
寄り止め部材95の材質としては、適度なゴム弾性があり、画像形成装置内での環境による変質のないものであれば特に限定されるものではないが、ポリウレタンゴム、ネオプレンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、シリコンゴム等の合成ゴムあるいは天然ゴムの一種あるいは二種以上の混合物等のゴムを用いることができ、そのなかでも温湿度に対する安定性、耐磨耗性が小さく、耐オゾン特性の優れるウレタンゴムが最も好ましい。また、弾性体の機械的強度の向上を目的に炭素体、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、ガラス繊維等のフィラーの混合することもできる。
【0047】
フィラーの中でもカーボンブラック等の炭素体の混入は弾性体の機械的特性の向上のみならず、炭素体の潤滑効果により駆動ローラーと寄り止め部材との摩擦力を低減させることができるため、駆動ローラーから加わる摩擦力等の力が小さくなり、寄り止め部材の蛇行は起り難く大変好ましい。フィラーの含有量としては、特に制限はないが、弾性体全重量の1〜50%、好ましくは3〜40%、特に好ましくは5〜30%とである。
【0048】
寄り止め部材95の無端ベルト張力に対する伸び率が無端ベルト90の伸び率以上であることにより無端ベルト90の繰返使用時、無端ベルト90の弾性層91の延び縮みによる繰返応力が弾性層91と寄り止め部材95との間の接着性の低下を防止し、結果として寄り止め部材95の剥がれの発生が防止できる。中間層98は接着層93と寄り止め層94の層間剥離を防止する。
【0049】
寄り止め部材95の接着層93のゴム硬度が接着層93、寄り止め層94のゴム硬度よりも小さい事により画像形成時の色ズレ、ガイド剥がれを防止する事ができる。
接着層93のゴム硬度(JISA)は40〜70が好ましく、また寄り止め層94のゴム硬度は70〜90が好ましい。接着層93のゴム硬度が40未満では軟らかすぎて外力に対する変形が大きくなり蛇行の原因につながりやすく好ましくない。また接着層93のゴム硬度が70を越えると繰返使用時、弾性層91と接着層93と間の接着性低下を防止しできない。寄り止め層94のゴム硬度が90を越えるとローラーへの乗り上げが発生しやすくなり、乗り上げた際の画像直進性や色ずれが発生しやすくなる。
【0050】
接着層93と寄り止め層94、または中間層98のゴム硬度(JISA)の差は20以内が好ましい。硬度差が20を越えると層間剥離が生じやすい。
【0051】
寄り止め部材95の厚さ0.6〜3mmが好ましい。0.5mm未満では無端ベルト90のローラーへの乗り上げ、3mmを越えると無端ベルト90に寄り止め部材95を接着時、寄り止め部材95の内部応力が大きくなり弾性層91と接着層93との接着性が低下してしまう。
【0052】
接着層93の厚さが0.2mm以上であることにより画像形成時の直線曲がり、寄り止め部材のローラー端部への乗り上げを防止することができる。
0.2mm未満では繰返使用時、弾性層91と接着層93と間の接着性低下を防止しできない。
このようなゴム硬度の異なる積層タイプの寄り止め部材はゴムシートの押し出し成形等により製造可能である。
【0053】
図4は、無端ベルト90が複数のローラー100に掛け回されている状態を示しており、同図において無端ベルト90の移動方向と直交する幅方向端部の裏面には寄り止め部材95が設けられ、複数のローラー100で周回するよう構成されている。
ローラー100のうち少なくとも1本が植毛ローラーで構成されており、幅方向両端同士に相当する左右で0.05〜0.31mmの周長差を有する無端ベルトを用いた場合でも植毛ローラーが0.05〜0.31mmの周長差を吸収して無端ベルト90の寄り防止を図ると共に、寄り止め部材95の繰返使用による摩耗粉、異物を植毛に埋もれさせ無端ベルト裏面傷を低減することができる。
【0054】
ローラー100の外径はφ15(mm)以上が好ましい。より好ましくはφ30(mm)である。φ15(mm)未満では無端ベルト90の張架時にローラーへの巻き付き癖が生じてしまう。
【0055】
図5は、図1乃至3に示した無端ベルトを用いるベルト装置が適用される画像形成装置の一つであるカラー画像形成装置Pを示している。
【0056】
図5において、符号1は感光体ベルトであり、該感光体ベルト1は、回動ローラー2、3間に架設され、回動ローラー2の回転駆動により図中矢印A方向(時計方向)に搬送される。
図5において符号4は、前記感光体ベルト1表面を均一に帯電する帯電手段たる帯電チャージャ、符号5は、静電像露光手段たるレーザー書き込み系ユニットである。レーザー書き込みユニット5に装備されている露光手段(半導体レーザー)は解像度600DPI以上のレーザー光像露光を実行できる特性が設定されている。図5中、符号6は、後述するイエロー、マゼンタ、シアン、黒の現像剤(トナー)を有する4つの現像器を一体的に形成したカラー現像装置である。
【0057】
さらに、図5中、符号7は、中間転写体たる中間転写ベルトであり、該中間転写ベルト7は回動ローラー8,9の間に架設され、回動ローラー9の回転駆動により図中矢印B方向(反時計方向)に搬送される。
感光体ベルト1と中間転写ベルト7とは、感光体ベルト1の回動ローラー3が配置されている位置で接触している。該接触部の中間転写ベルト7側には、導電性を有するバイアスローラー10が中間転写ベルト7裏面に所定の条件で接触している。
中間転写ベルト7に加えられる張力は0.2N/cm〜1.5N/cmが好ましい。0.2N/cm未満ではスリップが発生しやすく、また1.5N/cmを越えると中間転写ベルト7の繰返使用時、ベルト表面の微小クラック、端部破断が発生する場合がある。
帯電チャージャ4はコロナチャージャなどを用いた非接触方式とされ、接触方式の帯電ローラーのように感光体ベルト表面に接触して傷を付けることが無く特にカラー画像形成装置において有利である。
【0058】
図5に示すカラー画像形成装置における画像形成動作は次の通りである。
図5において、ベルト状の感光体(潜像担持体)1は帯電チャージャ4により一様に帯電された後、レーザー書き込みユニット5により、画像情報に基づき走査露光されて表面に静電潜像が形成される。ここで、露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ、の色情報に分解した単色の画像情報であり、この情報により半導体レーザー(図示せず)で発生されたレーザービームLは、図示を省略した光学装置により走査、及び光路調整されたものである。
【0059】
感光体ベルト1上に形成された静電潜像は、後述する回転型反転現像方式の現像装置6によりレーザー露光部が各々所定のイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの一成分非磁性トナーで各々単色現像され、感光体ベルト1上に各々の色画像が順次形成される。
図5に示す構成においては、一成分非磁性トナーが用いられることによりハイライト画像の階調性、ベタ部の濃度均一性に優れたカラー画像が得られるようになっている。
【0060】
図中矢印A方向に回転する感光体ベルト1上に形成された各単色画像像は、感光体ベルト1と同期して図中矢印B方向に回転する中間転写ベルト7上に、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの単色毎に、バイアスローラー10に印加された所定の転写バイアスにより順次重ね転写される。
感光体ベルト1、中間転写ベルト7には棒状のステアリン酸亜鉛(図示せず)を塗布するよう構成されている。
【0061】
中間転写ベルト7の長さは感光体ベルト1の大きさの倍になっており、中間転写ベルト7の特定の位置で感光体ベルト1上に形成されたイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナー像を中間転写ベルト7上の同位置で重ね合わせるように厳密に制御されている。中間転写ベルト7上に重ね合わされたイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像は、給紙台(給紙カセット)11から給紙ローラー12、搬送ローラー対13,レジストローラー対14を経て転写部へ搬送された転写紙S上に転写ローラー15により一括転写される。
【0062】
転写終了後、転写紙Sは定着装置16により定着されて、フルカラー画像が完成し、排紙ローラー対17を経て排紙スタック部18にプリント画像を排出する。
なお、図5中、符号19は、感光体ベルト1に常時当接し、感光体ベルト1上のトナーをクリーニングするクリーニングブレード19aを含むクリーニング装置、及び廃棄トナー回収容器を示し、符号20は、中間転写ベルト7のクリーニング装置を示している。
クリーニング装置20のクリーニングブレード20aは、画像形成動作中には中間転写ベルト7表面から離間した位置に保持され、形成像が上述の転写紙S上に転写された後に中間転写ベルト7表面に当接される。
【0063】
感光体ベルト1、帯電チャージャ4、中間転写ベルト7、クリーニング装置19,20は、プロセスカートリッジ21として一体的に構成され、廃棄トナー回収容器22は、プロセスカートリッジ21に対して交換可能に組み込まれる。プロセスカートリッジ21のレジストローラー対14のうちで中間転写ベルト7側に位置するローラーのケース外装部分は、用紙搬送ガイドとしての機能も備えている。
プロセスカートリッジ21の形態を取ることにより電子写真装置の小型化、電子写真ユニットとしての取り付け、取り外しなどが簡便となる。
【0064】
また、中間転写ベルト7上よりクリーニングブレード20aによって掻き取られた廃棄トナーは、クリーニング装置20内に設けられたオーガ20bにより、図面手前方向に搬送され、さらにプロセスカートリッジ21の手前側面に設けられた、図示を省略した搬送部により廃棄トナー回収用器22に搬送される。所定量以上の廃棄トナーが廃棄トナー回収用器22内に収容された時点でプロセスカートリッジ21に対し交換することにより、プロセスカートリッジ20の長寿命化が図られる。
【0065】
図5に示したカラー画像形成装置に用いる中間転写ベルト7は、線速100mm/s以上のプロセススピードの高速で用いられる。
図5に示すカラー画像形成装置6では、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像を感光体ベルト1上に形成後中間転写ベルト7上でイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナー像を順次重ねてカラー画像とするため単色の画像形成装置に比べプロセススピードの高速に設定しないと転写紙に印字する速度が低下してしまう。また中間転写ベルト7の周長はA3縦画像の長さ420mm以上、印字速度から450mm以上が好ましい。
【0066】
以下に実施例を示す。「部」は重量部、「周長」は内周長を意味する。
【0067】
「実施例1」(中間転写ベルトの製造例)
ポリウレタンエラストマー 20部、導電性酸化チタン(ET−500W :石原産業製)15部、DMF(関東科学製)120部の混合物をボールミルポットに取りφ10mmYTZボールを使用し48時間ボールミリングして塗布液を調整した。この塗布液を外径168.85mmのステンレス製マンドレルの外周面にスプレー塗布し、130℃で40分間乾燥し、厚さ600μmの弾性層を形成した。続いてポリウレタンエラストマー20部、導電性酸化チタン(ET−500W :石原産業製)5部、四フッ化エチレン樹脂粉体(L−2 ダイキン製)10部、DMF(関東科学製)155部からなる分散液を前記ベルト上にスプレー塗布し、130℃で20分間乾燥し、厚さ10μmの離型層を形成後幅383mmに切断して周長587mm、周長差0.05mmの中間転写ベルトを作成した。
【0068】
続いて幅4mm、厚さ0.9mmの寄り止め部材(接着層厚さ0.4mm、ゴム硬度55のウレタンゴムからなる接着層とゴム硬度70のカーボン分散ウレタンゴムからなる寄り止め層を押し出し成形し、反応硬化性ウレタンプライマーを20μmの膜厚にスプレー塗布し、さらにアクリル系粘着剤を30μm塗布して粘着層を設けたもの)を中間転写ベルト裏面端部から1mmの隙間を空けて貼り付けた。ノギスで測定した貼付精度は0.3mmであった。尚、寄り止め部材の貼り付け開始部と終了部は約45度の斜めカットを設け、隙間は約2mmであった。
「実施例2」
実施例1において中間転写ベルトの周長差を0.16mmのものに変えた以外は実施例1と全く同様にして中間転写ベルトを形成した。続いて幅4mm、厚さ0.7mmの寄り止め部材(接着層厚さ0.3mm、ゴム硬度55のウレタンゴムからなる接着層とゴム硬度75のカーボン分散ウレタンゴムからなる寄り止め層を押し出し成形し、実施例1と全く同様にして粘着層を設けたもの)を中間転写ベルト裏面端部から1mmの隙間を空けて貼り付けた。
「実施例3」
実施例2において中間転写ベルトの周長差を0.31mmのものに変えた以外は実施例1と全く同様にして中間転写ベルトの形成、寄り止め部材の貼付を行った。
「実施例4」
実施例3において寄り止め部材を厚さ0.8mm(ゴム硬度55のウレタンゴムからなる厚さ0.2mmの接着層とゴム硬度75のカーボン分散ウレタンゴムからなる寄り止め層を押し出し成形し、実施例1と全く同様にして粘着層を設けたもの)に変えて中間転写ベルト裏面端部から1mmの隙間を空けて貼り付けた。
【0069】
「比較例1」
実施例1において中間転写ベルトの弾性層の厚さを300μmに変えた以外は実施例1と全く同様にして中間転写ベルトを形成、寄り止め部材の貼付を行った。
「比較例2」
実施例2において寄り止め部材の接着層をゴム硬度75のカーボン分散ウレタンゴムに変えた以外は実施例2と全く同様にして寄り止め部材の貼付を行った。
「比較例3」
実施例2において寄り止め部材の接着層をゴム硬度35のカウレタンゴムに変えた以外は実施例2と全く同様にして寄り止め部材の貼付を行った。
「比較例4」
実施例2において中間転写ベルトの周長差を0.33mmのものに変えた以外は実施例1と全く同様にして中間転写ベルトの形成、寄り止め部材の貼付を行った。
「比較例5」
実施例2において寄り止め部材の接着層を厚さ0.1mmのものに変えた以外は実施例2と全く同様にして寄り止め部材の貼付を行った。
「比較例6」
実施例2において寄り止め部材の厚さ3.5mmのものに変えた以外は実施例1と全く同様にして寄り止め部材の貼付を行った。
「比較例7」
実施例2において寄り止め部材の厚さ0.5mmのものに変えた以外は実施例1と全く同様にして寄り止め部材の貼付を行った。
【0070】
一方、無端ベルトを感光体ベルトに用いる場合のベルトの製造例は以下の通りである。
ポリウレタンエラストマー 2部、導電性酸化チタン(ET−500W :石原産業製)2部、DMF(関東科学製)100部の混合物をボールミルポットに取りφ10mmYTZボールを使用し48時間ボールミリングして塗布液を調整した。この塗布液を内径92.39mm、厚さ30μm、長さ367mmのニッケルシームレスベルト内面にスプレー塗布し、130℃で20分間乾燥し、厚さ20μmの弾性層を形成した。
【0071】
続いて、酸化チタン(CRー60:石原産業製)50部、アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50大日本インキ化学工業製)15部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60大日本インキ化学工業製)8.3部、メチルエチルケトン(関東化学製)31.7部からなる混合物をボールミルポットに取りφ10mmアルミナボールを使用し72時間ボールミリングした。このミリング液にシクロヘキサノン(関東化学製)105部を加え、さらに2時間ボールミリングして下引き層用塗布液を作製した。この塗布液をニッケルシームレスベルト上にスプレー塗布し、135°Cで25分間乾燥して、膜厚6μmの下引き層を形成した。
【0072】
続いて化学式1で示す電荷発生物質(リコー製)2部、化学式2で示す電荷発生物質(リコー製)1部、ポリビニルブチーラール樹脂1部(エスレックBLS;積水化学製)、シクロヘキサノン(関東化学製)80部からなる混合物をボールミルポットに取りφ10mmのYTZボールを使用し2時間ボールミリングした後、さらにシクロヘキサノン78.4部とメチルエチルケトン237.6部を加え電荷発生層塗布液を調整した。この塗布液を下引層上にスプレー塗布、130℃で20分間乾燥して厚さ0.1μmの電荷発生層を形成した。
【0073】
【化1】
Figure 2004125961
【0074】
【化2】
Figure 2004125961
【0075】
次に、化学式3で示す電荷輸送物質(リコー製)7部、ポリカーボネート樹脂(C−140、帝人化成製)10部、シリコンオイル(KF−50、信越化学製)0.002部、テトラヒドフラン(関東化学製)76.5部、シクロヘキサノン(関東化学製)76.5部、2,5ジ‐ターシャルブチルハイドロキノン(東京化成製)0.002部からなる電荷輸送層塗工液調整し、この塗布液を電荷発生層上にスプレー塗布、130℃で20分間乾燥して厚さ25μmの電荷輸送層を有する無端ベルト状感光体を形成した。
【0076】
【化3】
Figure 2004125961
【0077】
また感光体両端裏面には実施例1と同じ寄り止め部材を設けた。
【0078】
このようにして作成した実施例1〜4、比較例1〜7の中間転写ベルト及び無端ベルト感光体をEPDMゴムからなる駆動ローラー、アルミパイプにナイロン(登録商標)繊維を静電植毛し、従動ローラー、テンションローラーにより張架して第5図に示す画像形成装置に取り付け、中間転写ベルトに加えられる張力を0.47N/mm、波長655nmのレーザー光で書き込み密度1200DPI、線速120mm/secとして27℃、80%の環境下で灰色ハーフトーンカラー画像、格子状パターンの印字を行った。続いて画像形成装置をフリーランモード(転写紙非通紙での画像形成プロセスの繰返し)で動作させフルカラー1000枚に灰色ハーフトーンカラー画像の印字を行いながら15万枚迄評価を実施した。また、張力0.47N/cmでの中間転写ベルト、寄り止め部材の伸び率は万能引張圧縮試験機(TCM200CR型:ミネビア製)を用いて測定したところ、図6に示す結果が得られた。図6に示す結果から明らかなように、本実施形態の実施例では、比較例に挙げた場合に比較して画像上の不具合がなく、無端ベルトの耐久性も高められていることが判る。
【0079】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、寄り止め部材の伸び率が無端ベルトの伸び率以上であるので、無端ベルトの繰り返し使用時に弾性体層に対して寄り止め部材が伸び縮みしやすい状態となり、弾性体壮図より止め部材との接着層での剪断負荷増加を防止して寄り止め部材が剥がれやすくなるのを防止することが可能となる。これによりベルトの蛇行を防止するための寄り止め部材の剥離が確実に防止されて蛇行を発生させないようにすることが可能となる。
【0080】
請求項2記載の発明によれば、寄り止め部材における無端ベルトの弾性体側に位置するゴムの硬度が他の弾性体に用いられるゴム硬度よりも小さくされているので、無端ベルトの弾性体と寄り止め部材との間の追随性を確保できることにより擦れをなくして色ずれや剥離をなくすことが可能となる。
【0081】
請求項3記載の発明によれば、ベルトの幅方向端部での周長差が0.05〜0.31mmとされ、このベルトが掛け回されるローラーの少なくとも一つが植毛ローラーであることにより、ベルトの張力発生時での張力の片寄りを防止してローラーへの乗り上げやベルト成形時での離型性の悪化を防止できると共に、ベルト成形時での離型性を確保してベルトでの形状変化による転写不良の発生を防止することが可能となる。しかも、ローラーの少なくとも一つが植毛ローラーであるので、ベルト裏面の摩耗粉や異物を移動過程において除去することができると共に、上記周長差の影響を植毛部分で吸収することができるので、ベルトの片寄りをなくしてローラーへの乗り上げを防止することが可能となる。
【0082】
請求項4記載の発明によれば、寄り止め部材の厚さおよび幅を規定することにより、撓み変形およびベルトの張力変化によるローラーへの乗り上げを防止して画像領域を外れるような事態の発生を回避することができ、画像の直線曲がりや可能となる。
【0083】
請求項5記載の発明によれば、寄り止め部材の接着層が0.2mm以上に設定されているので、ローラーへのベルトの乗り上げが抑止されると共に剪断に対する剥離強度を確保することが可能となる。
【0084】
請求項6記載の発明によれば、フィラーを含有させることにより無端ベルトにおける弾性体層の強度を向上させることができると共に、接着層のゴム硬度(JISA)を40〜70に設定することにより、外力に対する変形を抑え、さらにはローラーへの乗り上げやすさを解消してベルトの位置ずれを防止することが可能となる。
【0085】
請求項7記載の発明によれば、寄り止め部材の接着層と該寄り止め部材に有する弾性体の一つで構成される寄り止め層とのゴム硬度(JISA)の差が20以内に設定されていることにより、各層間での剪断強度の違いによる剥離を防止することが可能となる。
【0086】
請求項8記載の発明によれば、無端ベルトの弾性体および接着層間の剥離、さらには寄り止め部材のローラーへの乗り上げや変形を防止することにより無端ベルトの蛇行を効率よく防止することが可能となる。
【0087】
請求項9および10記載の発明によれば、無端ベルトを中間転写体あるいは感光体として用いる場合、特に請求項9記載の発明においては中間転写体とした場合にベルトの蛇行によるハーフトーン画像形成時での濃度ムラを防止でき、また、請求項10記載の発明においては繰り返し使用時でのベルト裏面への筋状傷の発生を防止して耐久劣化を防ぐことが可能となる。
【0088】
請求項11記載の発明によれば、無端ベルトを有するベルト装置および無端ベルトを対象とした画像形成処理を行う装置が形成画像の色毎に纏められたプロセスカートリッジとされているので、複数色の画像形成が可能なカラー画像形成装置において保守点検時での操作性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に掛かるベルト装置に用いられる無端ベルトの構成を説明するための部分的な断面図である。
【図2】図1に示した無端ベルトにおける寄り止め部材の構成を説明するための要部断面図である。
【図3】図2に示した寄り止め部材の他の例を示す要部断面図である。
【図4】図1に示した無端ベルトを用いたベルト装置の構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示したベルト装置が適用される画像形成装置の構成を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る実施例の作用を説明するための表図である。
【符号の説明】
1 感光体
4 帯電チャージャ
5 レーザー書き込みユニット
6 カラー現像装置
15 2次転写用バイアスローラー
19,20 クリーニング装置
21 プロセスカートリッジ
90 無端ベルト
91 弾性層
92 表面層
93 接着層
94 寄り止め層
95 寄り止め部材
100 ローラー
P カラー画像形成装置
S 転写紙

Claims (11)

  1. 複数のローラーに掛け回された無端ベルトを備えたベルト装置において、
    上記無端ベルトが弾性体層と該弾性体層の幅方向両端に形成されて該無端ベルトの上記ローラーからの脱落を防止する少なくとも2層以上の弾性体で形成された寄り止め部材とを備えて構成され、
    上記寄り止め部材は上記無端ベルトに対しての伸び率が該無端ベルトの伸び率以上に設定されていることを特徴とするベルト装置。
  2. 請求項1記載のベルト装置において、
    上記寄り止め部材に有する弾性体の一つは無端ベルトの弾性体層側に位置するゴムで構成され、該ゴムの硬度が他の弾性体に用いられるゴム硬度よりも小さく設定されていることをベルト装置。
  3. 請求項1または2記載のベルト装置において、
    上記ベルトは、上記ローラー間での移動方向と直交する幅方向における周長差が幅方向両端間で0.05〜0.31mmに設定され、該ベルトが掛け回されているローラーの少なくとも一つが植毛ローラーであることを特徴とするベルト装置。
  4. 請求項1乃至3のうちの一つに記載のベルト装置において、
    上記無端ベルトに設けられている寄り止め部材の厚さを0.6〜3mmとし、移動方向と直交する方向での幅が3〜10mmに設定されていることを特徴とするベルト装置。
  5. 請求項1乃至4のうちの一つに記載のベルト装置において、
    上記無端ベルトと寄り止め部材とは接着により一体化され、接着層の厚さが0.2mm以上とされていることを特徴とするベルト装置。
  6. 請求項1乃至5のうちの一つに記載のベルト装置において、
    上記無端ベルトと一体化されている寄り止め部材は、フィラーを含有し、無端ベルトとの間の接着層のゴム硬度(JISA)が40〜70に設定されていることを特徴とするベルト装置。
  7. 請求項1乃至6のうちの一つに記載のベルト装置において、
    上記寄り止め部材の接着層と該寄り止め部材に有する弾性体の一つで構成される寄り止め層とのゴム硬度(JISA)の差が20以内に設定されていることを特徴とするベルト装置。
  8. 請求項1乃至7のうちの一つに記載のベルト装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
  9. 請求項8記載の画像形成装置において、
    上記ベルト装置は、複数の色画像を重畳転写可能な中間転写装置に用いられることを特徴とする画像形成装置。
  10. 請求項8記載の画像形成装置において、
    上記ベルト装置に有する無端ベルトは、潜像形成可能な感光体として用いられることを特徴とする画像形成装置。
  11. 請求項8乃至10のうちの一つに記載の画像形成装置において、
    上記ベルト装置および該ベルト装置の無端ベルトを対象として画像形成処理を行う装置が形成画像の色毎に纏められて着脱可能とされたプロセスカートリッジ構造を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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