JP2004125398A - 放射線像変換パネル及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、高い発光輝度が維持され、保存時の輝度安定性に優れ、かつ消去特性、残像特性に優れた放射線像変換パネル及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】支持体上に、少なくとも輝尽性蛍光体と結合剤とを含有する輝尽性蛍光体層を有する蛍光体シートと、それを非接着で被覆している防湿性保護シートからなる放射線像変換パネルにおいて、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする放射線像変換パネル。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に、少なくとも輝尽性蛍光体と結合剤とを含有する輝尽性蛍光体層を有する蛍光体シートと、それを非接着で被覆している防湿性保護シートからなる放射線像変換パネルにおいて、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする放射線像変換パネル。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線像変換パネル及びその製造方法に関し、詳しくは保存時の輝度安定性に優れ、かつ消去特性、残像特性に優れた放射線像変換パネル及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線画像のような放射線画像は、病気診断用などの分野で多く用いられている。このX線画像を得る方法としては、被写体を通過したX線を蛍光体層(蛍光スクリーン)に照射し、これにより可視光を生じさせた後、この可視光を通常の写真を撮るときと同様にして、ハロゲン化銀写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)に照射し、次いで現像処理を施して可視銀画像を得る、いわゆる放射線写真方式が広く利用されている。
【0003】
しかしながら、近年では、この様な従来の放射線写真法に代わる有効な診断手段として、特開昭55−12145号等に記載の輝尽性蛍光体を用いる放射線画像記録再生方法が知られている。この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シートとも呼ばれる)を利用するもので、被写体を透過した、又は被検体から発せられた放射線を輝尽性蛍光体に吸収させ、可視光線、紫外線などの電磁波(励起光と言う)で時系列的に輝尽性蛍光体を励起して、蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光という)として放射させ、この蛍光を光電的に読みとって電気信号を得、得られた電気信号に基づいて被写体又は被検体の放射線画像を可視画像として再生するものである。読取り後の変換パネルは、残存画像の消去が行われ、次の撮影に供される。
【0004】
この方法によれば、放射線写真フィルムと増感紙とを組み合わせて用いる放射線写真法に比して、遙かに少ない被爆線量で情報量の豊富な放射線画像が得られる利点がある。又、放射線写真法では撮影毎にフィルムを消費するのに対して、放射線像変換パネルは繰り返し使用されるので、資源保護や経済効率の面からも有利である。
【0005】
放射線像変換パネルは、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層、又は自己支持性の輝尽性蛍光体層のみから成り、輝尽性蛍光体層は、通常、輝尽性蛍光体と、これを分散支持する結合剤から成るものと、蒸着法や焼結法によって形成される輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものがある。又、該凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものも知られている。更に、輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には、通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜から成る保護膜が設けられる。
【0006】
上記の輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用的には、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に利用される。
【0007】
これらの輝尽性蛍光体を使用した放射線像変換パネルは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことができ、繰返し使用が可能であるが、この様な使われ方をする放射線像変換パネルにおいては、得られる放射線画像の画質を劣化させることなく長期間の使用に耐える性能を付与することが望ましい。しかし、放射線像変換パネルの製造に用いられる輝尽性蛍光体、特に沃素を含有する輝尽性蛍光体を用いる場合には、蛍光体から沃素が遊離して沃素分子(I2)を形成するために、蛍光体層が徐々に黄色に変色しやすい特性にある。この様にして、蛍光体層が劣化した放射線像変換パネルは、感度が著しく低下したり、あるいは消去特性や残像特性が低下するという問題がある。
【0008】
この劣化特性は、長期保存や繰り返しの使用に際して徐々に起こり、この要因として、主に蛍光体の吸湿や加熱によって促進されると考えられていたが、本発明者が更にその原因の詳細について検討を進めた結果、紫外線によっても大きく影響を受けていることが判明した。特に、紫外線の影響により、輝尽性蛍光体粒子の特性に依存している輝度の低下や消去特性、残像特性の低下を招く結果となり、輝尽性蛍光体粒子の劣化を防止するための改良技術の開発が必要とされていた。
【0009】
上記課題に対し、従来、輝尽性蛍光体層と接着された保護層とからなる放射線像変換パネルにおける紫外線カブリ防止技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、輝尽性蛍光体層に白色無機顔料を添加することによる紫外線カブリ防止技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、吸湿性の強い輝尽性蛍光体を用いた放射線像変換パネルにおける防湿封止方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、上記いずれの方法も、長期間にわたり紫外線照射を受けたときに、感度や消去特性が劣化することが判明し、早急な改良が要望されている。
【0010】
【特許文献1】
特公平7−82188号公報(特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献2】
特開平10−123296号公報(特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献3】
特開平11−344598号公報(特許請求の範囲)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い発光輝度が維持され、保存時の輝度安定性に優れ、かつ消去特性、残像特性に優れた放射線像変換パネル及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0015】
1.支持体上に、少なくとも輝尽性蛍光体と結合剤とを含有する輝尽性蛍光体層を有する蛍光体シートと、それを非接着で被覆している防湿性保護シートからなる放射線像変換パネルにおいて、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする放射線像変換パネル。
【0016】
2.前記紫外線吸収剤が、前記防湿性保護シートに積層されていることを特徴とする前記1項に記載の放射線像変換パネル。
【0017】
3.前記紫外線吸収剤が、前記輝尽性蛍光体層に含有されていることを特徴とする前記1項に記載の放射線像変換パネル。
【0018】
4.前記輝尽性蛍光体が、Eu付加BaFBrXI(1−X)(0≦X<1)であることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の放射線像変換パネル。
【0019】
5.防湿性保護シートに紫外線吸収剤含有層を積層し、該防湿性保護シートで蛍光体シートを真空下で密封することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【0020】
6.輝尽性蛍光体、結合剤、溶剤及び紫外線吸収剤とを混合、分散して調製した蛍光体分散液を、支持体上に塗布、乾燥させて蛍光体シートを作製した後、防湿性保護シートで該蛍光体シートを真空下で密封することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【0021】
本発明者は、特に、ヨウ素を含有する輝尽性蛍光体(以下、単に蛍光体ともいう)を放射線像変換パネルに用いた場合に輝尽性蛍光体層(以下、単に蛍光体層ともいう)が劣化しやすく、その結果、蛍光体から発せられた輝尽発光光が、蛍光体層中で吸収されてしまうために輝度が著しく低下し、更に消去特性や残像特性が劣化するというこの蛍光体層の劣化は、放射線像変換パネルを長期間保存した際に発生し、蛍光体層中でI2分子を形成することに起因していると考えられている。
【0022】
本発明者らは、上記課題に関し鋭意解析を進めた結果、劣化を加速している要因の1つとして、放射線像変換パネルが長期間の使用中に受ける紫外線に大きく影響を受けていることを突き止めた。本発明では、放射線像変換パネルを構成する蛍光体シートや防湿性保護シートに紫外線吸収剤を含有せしめることにより、長期使用時の輝度低下や消去特性、残像特性を向上できることを見いだし、本発明に至った次第である。
【0023】
以下、本発明の詳細について説明する。
請求項1に係る発明では、支持体上に、少なくとも輝尽性蛍光体と結合剤とを含有する輝尽性蛍光体層を有する蛍光体シートと、それを非接着で被覆している防湿性保護シートからなる放射線像変換パネルにおいて、紫外線吸収剤を含有することが特徴である。
【0024】
本発明で用いることのできる紫外線吸収剤としては、従来公知の紫外線吸収剤を挙げることができ、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。
【0025】
本発明で用いる紫外線吸収剤で好ましく用いられる上記の紫外線吸収剤は、透明性が高く、放射線像変換パネルの劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、より好ましくは、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。また、特開平10−182621号、特開平8−337574号記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、波長390nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。また、紫外線吸収能は350nmで透過率50%以下であることが望まれ、より好ましくは透過率10%未満、更に好ましくは透過率0〜4%未満であることが望ましい。
【0026】
本発明に有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は下記一般式〔1〕で示される化合物の一群である。
【0027】
【化1】
【0028】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、各々、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5または6員の異項環を表し、R4とR5は閉環して5または6員の炭素環を形成してもよい。また、R1、R2及びR3の何れかが2価の連結基でもう一つの2−(2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール基と結合してもよい。
【0029】
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール《商品名:チヌビン(TINUVIN)326》
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチル−フェノール《商品名:チヌビン(TINUVIN)171》
UV−9:2−オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物《商品名:チヌビン(TINUVIN)109》
UV−10:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール《商品名:チヌビン(TINUVIN)234》
等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、上記のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234及びチヌビン326は何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の市販品で、好ましく使用できる。
【0030】
また、本発明に係る紫外線吸収剤の一つであるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、下記一般式〔2〕で表すことができる。
【0031】
【化2】
【0032】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n−1−D−基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
【0033】
上記において、アルキル基としては例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては例えば、炭素数18までのアルコキシ基で、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基で例えばアリル基、2−ブテニル基などを表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換分としてはハロゲン原子、例えばクロール、ブロム、フッ素原子など、ヒドロキシ基、フェニル基、(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子などを置換していてもよい)などを挙げることができる。また、AまたはYが2価の連結基でもう一つの2−ヒドロキシベンゾフェノン基と二つ以上のベンゾフェノン基を有する化合物となってもよい。更にベンゾフェノンでなく、ベンゾトリアゾール基を有する化合物となってもよい。
【0034】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、
UV−11:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−12:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−13:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−14:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0035】
更に、ベンゾトリアゾール系の窒素原子含有異項環を有する紫外線吸収剤で、且つ、ベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環から選ばれる環を分子内に少なくとも3個有しているものを好ましく用いることができる。本発明において、ナフタレン環及びベンゾトリアゾールは縮合環であるが、ナフタレンは2個またベンゾトリアゾールは1個と数える。このように窒素原子含有異項環、ベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環が、それぞれ縮合環を形成してもよい。
【0036】
分子内にベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環から選ばれる環を少なくとも3個有する有機化合物添加剤としては、例えば、
UV−15:2,2’−メチレンビス[6(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]
UV−16:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール
UV−17:1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン
UV−18:1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン
UV−19:2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール
UV−20:RUVA−100/110(大塚化学(株)製)
UV−21:RUVA−206(大塚化学(株)製)
UV−22:アデカスタブLA−31(旭電化工業(株)製)
UV−23:アデカスタブLA−51(旭電化工業(株)製)
等を挙げることができる。ここで、UV−20、22及び23について下記に構造式を示す。また、特開平6−148430号記載公報の一般式(1)〜(5)で示される紫外線吸収性基を複数有する高分子紫外線吸収剤でもよく、具体的には特開平6−148430号公報記載のPUV−1−22で示されている紫外線吸収性基を複数有している高分子紫外線吸収剤が1つの分子内にベンゼン環を3つ以上有している紫外線吸収剤として用いられる。
【0037】
高分子紫外線吸収剤として、
UV−24:RUVA−93(大塚化学社製)
の反応型紫外線吸収剤を重合した化合物も好ましく用いることができる。あるいは、特願2001−122573記載の紫外線吸収剤も好ましく用いられ、特に一般式(1)〜(8)で示される紫外線吸収剤、例えばこの実施例で示されている化10、化11、化13、化15等の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。あるいは特開2000−273437号公報記載の一般式(1)で示されている紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
【0038】
更に、ベンゾトリアゾール系及びベンゾフェノン系の紫外線吸収剤を下記に例示する。
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】
【化5】
【0042】
上記紫外線吸収剤の添加方法は、該紫外線吸収剤を溶剤に溶解した紫外線吸収剤溶液として輝尽性蛍光体塗布液に添加しても、あるいは該紫外線吸収剤を直接添加して溶解させてもよい。また、紫外線吸収剤溶液をインライン添加液に添加してもよい。一方、防湿性保護シートに紫外線吸収剤を含有させるには、防湿性保護シート上に、紫外線吸収剤を含む樹脂溶液を積層してもよく、また、最表層に紫外線吸収剤溶液をオーバーコートしてもよい。あるいは、紫外線吸収剤を練り込んだフィルムを保護シートとして用いてもよい。紫外線吸収剤を溶解する溶剤は、溶解するものであれば制限なく使用でき、後述の輝尽性蛍光体層で用いるのと同様のものを挙げることができる。
【0043】
次いで、本発明の放射線像変換パネルの各構成要素について説明する。
本発明の放射線像変換パネルは、主に、支持体と蛍光体層とからなり、必要に応じて支持体と蛍光体層との間に下引き層が設けられる。蛍光体層は、一般に、蛍光体とこれを分散保持する高分子樹脂とから構成される。また、蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜からなる保護層膜が設けられる。
【0044】
本発明で用いることのできる支持体または仮支持体としては、例えば、ガラス、ウール、コットン、紙、金属などの種々の素材から作られたものが使用することができるが、情報記録材料としての取り扱い上、可撓性のあるシート或いはロールに加工できるものが好ましい。この点から、例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスティックフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔などの金属シート、一般紙及び例えば写真用原紙、コート紙、若しくはアート紙のような印刷用原紙、バライタ紙、レジンコート紙、ベルギー特許第784,615号明細書に記載されているようなポリサッカライド等でサイジングされた紙、二酸化チタンなどの顔料を含むピグメント紙、ポリビニールアルコールでサイジングした紙等の加工紙が特に好ましい。これら支持体の膜厚は、用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80〜1000μmであり、取り扱い上の点から、さらに好ましくは80〜500μmである。これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、後述の下引き層との接着力を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0045】
次いで、下引き層について説明する。下引き層は、主に、架橋剤により架橋できる高分子樹脂と架橋剤とを含有している。
【0046】
下引き層で用いることのできる高分子樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニールブチラール、ニトロセルロース等を挙げることができ、下引き層で用いる高分子樹脂の平均ガラス転移点温度(Tg)が25℃以上であることが好ましく、更に好ましくは25〜200℃のTgを有する高分子樹脂を用いることである。
【0047】
下引き層で用いることのできる架橋剤としては、特に制限はなく、例えば、多官能イソシアネート及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミノ樹脂及びその誘導体等を挙げることができるが、本発明では、架橋剤として多官能イソシアネート化合物を用いることが好ましく、例えば、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、コロネート3041等が挙げられる。
【0048】
下引き層は、例えば、以下に示す方法により支持体上に形成することができる。
【0049】
まず、上記記載の高分子樹脂と架橋剤を適当な溶剤、例えば後述の輝尽性蛍光層塗布液の調製で用いる溶剤に添加し、これを充分に混合して下引き層塗布液を調製する。
【0050】
架橋剤の使用量は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂の種類等により異なるが、輝尽性蛍光体層の支持体に対する接着強度の維持を考慮すれば、高分子樹脂に対して、50質量%以下の比率で添加することが好ましく、特に好ましくは15〜50質量%である。
【0051】
下引き層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂及び架橋剤の種類等により異なるが、一般には3〜50μmであることが好ましく、特に好ましくは5〜40μmであることが特徴である。また、上記下引き層は、必要に応じて着色されていても良い。
【0052】
本発明においては、支持体上に上記下引き層を塗設した後、輝尽性蛍光体層を塗布する前に、下引き層に含有した高分子樹脂と架橋剤との反応をより完遂させるため、40〜150℃で2〜100時間の熱処理を行うことが好ましい。
【0053】
熱処理方法としては、特に制限はなく、作製したシート状、ロール状等の下引き層塗設済み試料が完全に収納でき、かつ温度、湿度が制御できる恒温室であればいずれの方法を用いても良い。熱処理条件としては、40〜150℃で2〜100時間であることが好ましく、より好ましくは55〜100℃、5〜50時間である。
【0054】
次いで、輝尽性蛍光体層について説明する。
本発明に係る輝尽性蛍光体層は、少なくとも輝尽性蛍光体と高分子樹脂とを含有している。
【0055】
本発明で用いることのできる輝尽性蛍光体としては、波長400〜900nmの範囲に発光波長のあるものが一般的に使用される。
【0056】
以下に、本発明の放射線像変換パネルで用いることのできる蛍光体の例を挙げる。
【0057】
(1)特開昭55−12145号に記載されている(Ba1−X,M(II)X)FX:yA、(式中、M(II)はMg、Ca、Sr、ZnおよびCdのうちの少なくとも一つ、XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つ、AはEu、Tb、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、およびErのうちの少なくとも一つ、そしては、0≦x≦0.6、yは、0≦y≦0.2である)の組成式で表される希土類元素賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物蛍光体;また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい。
【0058】
a)特開昭56−74175号に記載されている、X′、BeX″、M(III)X′′′3、式中、X′、X″、およびX′′′はそれぞれCl、BrおよびIの少なくとも一種であり、M(III)は三価金属である
b)特開昭55−160078号に記載されているBeO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Al2O3、Y2O3、La2O3、In2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、GeO2、SnO2、Nb2O5、Ta2O5およびThO2などの金属酸化物
c)特開昭56−116777号に記載されているZr、Sc
d)特開昭57−23673号に記載されているB
e)特開昭57−23675号に記載されているAs、Si
f)特開昭58−206678号に記載されているM・L、式中、MはLi、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、LはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、およびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属である
g)特開昭59−27980号に記載されているテトラフルオロホウ酸化合物の焼成物;特開昭59−27289号に記載されているヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸およびヘキサフルオロジルコニウム酸の一価もしくは二価金属の塩の焼成物;特開昭59−56479号に記載されているNaX′、式中、X′はCl、BrおよびIのうちの少なくとも一種である
h)特開昭59−56480号に記載されているV、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiなどの遷移金属;特開昭59−75200号に記載されているM(I)X′、M′(II)X″2、M(III)X′′′3、A、式中、M(I)はLi、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M′(II)はBeおよびMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属を表し、M(III)はAl、Ga、In、およびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、Aは金属酸化物であり、X′、X″、およびX′′′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
i)特開昭60−101173号に記載されているM(I)X′、式中、M(I)はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、X′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
j)特開昭61−23679号に記載されているM(II)′X′2・M(II)′X″2、式中、M(II)′はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;X′およびX″はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX′≠X″である;更に、特開昭61−264084号明細書に記載されているLnX″3、式中、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。
【0059】
(2)特開昭60−84381号に記載されているM(II)X2・aM(II)X′2:xEu2+(式中、M(II)はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XおよびX′はCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1≦a≦10.0、xは0<x≦0.2である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物蛍光体;また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい。
【0060】
a)特開昭60−166379号に記載されているM(I)X′、式中、M(I)はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
b)特開昭60−221483号に記載されているKX″、MgX′′′2、M(III)X″″3、式中、M(III)はSc、Y、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;X″、X′′′およびX″″はいずれもF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
c)特開昭60−228592号に記載されているB、特開昭60−228593号に記載されているSiO2、P2O5等の酸化物、特開昭61−120882号に記載されているLiX″、NaX″、式中、X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
d)特開昭61−120883号に記載されているSiO;特開昭61−120885号に記載されているSnX″2、式中、X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
e)特開昭61−235486号に記載されているCsX″、SnX′′′2、式中、X″およびX′′′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである;更に、特開昭61−235487号に記載されているCsX″、Ln3+、式中、X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;LnはSc、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素である
(3)特開昭55−12144号に記載されているLnOX:xA(式中、LnはLa、Y、Gd、およびLuのうち少なくとも一つ;XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つ;AはCeおよびTbのうち少なくとも一つ;xは、0<x<0.1である)の組成式で表される希土類元素賦活希土類オキシハライド蛍光体。
【0061】
(4)特開昭58−69281号に記載されているM(II)OX:xCe(式中、M(II)はPr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化金属であり;XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つであり;xは0<x<0.1である)の組成式で表されるセリウム賦活三価金属オキシハライド蛍光体。
【0062】
(5)特開昭62−25189号明細書に記載されているM(I)X:xBi(式中、M(I)はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてxは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体。
【0063】
(6)特開昭60−141783号に記載されているM(II)5(PO4)3X:xEu2+(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体。
【0064】
(7)特開昭60−157099号に記載されているM(II)2BO3X:xEu2+(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロホウ酸塩蛍光体。
【0065】
(8)特開昭60−157100号に記載されているM(II)2(PO4)3X:xEu2+(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体。
【0066】
(9)特開昭60−217354号に記載されているM(II)HX:xEu2+(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体。
【0067】
(10)特開昭61−21173号に記載されているLnX3・aLn′X′3:xCe3+、(式中、LnおよびLn′はそれぞれY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XおよびX′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物蛍光体。
【0068】
(11)特開昭61−21182号に記載されているLnX3・aM(I)X′3:xCe3+、(式中、LnはY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;M(I)はLi、Na、K、CsおよびRbからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物系蛍光体。
【0069】
(12)特開昭61−40390号に記載されているLnPO4・aLnX3:xCe3+、(式中、LnはY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XはF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類ハロ燐酸塩蛍光体。
【0070】
(13)特開昭61−236888号明細書に記載されているCsX:aRbX′:xEu2+、(式中、XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活ハロゲン化セシウム・ルビジウム蛍光体。
【0071】
(14)特開昭61−236890号に記載されているM(II)X2・aM(I)X′:xEu2+、(式中、M(II)はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;M(I)はLi、RbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦20.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体。
【0072】
上記の輝尽性蛍光体のうちで、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する希土類元素賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、およびヨウ素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は、高輝度の輝尽発光を示すため好ましく、請求項5に係る発明においては、輝尽性蛍光体がEu付加BaFBrXI(1−X)(0≦X<1)であることが好ましい。
【0073】
本発明に係る輝尽性蛍光体は、高分子樹脂に分散された形態で輝尽性蛍光体層中に含有していることが好ましい。本発明で用いることのできる高分子樹脂としては、公知の高分子樹脂を用いることができ、例えば、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニールブチラール、ニトロセルロース等を挙げることができる。
【0074】
本発明で用いる輝尽性蛍光体層塗布液は、適当な有機溶媒中に高分子樹脂と輝尽性蛍光体粒子とを添加し、例えば、ディスパーザーやボールミル等を使用して、攪拌、混合して、高分子樹脂中に輝尽性蛍光体が均一に分散するようにして調製する。輝尽性蛍光体層塗布液の調製に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0075】
なお、輝尽性蛍光体塗布液には、必要に応じて、塗布液中における輝尽性蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、あるいはパネル形成後の輝尽性蛍光体層中における高分子樹脂と輝尽性蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤など種々の添加剤が混合されてもよい。
【0076】
分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。また、可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸エステル、グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタルブチルなどのグリコール酸エステル、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールと琥珀酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。
【0077】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製は、通常、ボールミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、および超音波分散機などの分散装置を用いて行なわれる。調製された塗布液は、例えば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター、押し出しコーター等の公知の塗布コーターを用いて、支持体上に塗設した後、乾燥することにより、輝尽性蛍光体層の形成が完了する。
【0078】
本発明の放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、高分子樹脂と輝尽性蛍光体との混合比等によって異なるが、10〜1000μmの範囲から選ばれるのが好ましく、10〜500μmの範囲から選ばれるのがより好ましい。
【0079】
支持体上に輝尽性蛍光体層が塗設された蛍光体シートは、所定の大きさに断裁される。断裁にあたっては、一般のどのような方法でも可能であるが、作業性、精度の面から化粧断裁機、打ち抜き機等が望ましい。
【0080】
本発明の放射線像変換パネルには、輝尽性蛍光体層の表面を物理的、化学的に保護するための保護膜(保護フィルムともいう)を設けることが好ましく、それらの構成は目的、用途などに応じて適宜選択することができる。
【0081】
本発明の放射線像変換パネルに設ける保護層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム等の延伸加工されたフィルムが、透明性、強さの面で保護層として好ましく、更には、これらのポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム上に金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着した蒸着フィルムが防湿性の面からより好ましい。
【0082】
本発明において、保護層で用いるフィルムは、必要とされる防湿性にあわせて、樹脂フィルムや樹脂フィルムに金属酸化物などを蒸着した蒸着フィルムを複数枚積層することで最適な防湿性とすることができ、輝尽性蛍光体の吸湿劣化防止を考慮して、透湿度は少なくとも50g/m2・day以下であることが好ましい。樹脂フィルムの積層方法としては、特に制限はなく、公知のいずれの方法を用いても良い。
【0083】
本発明においては、積層された樹脂フィルムに紫外線吸収層を設けることが好ましい形態の一つである。紫外線吸収層は、樹脂フィルム表面に設けてもよいし、あるいは積層された樹脂フィルム間のドライラミネート接着層に紫外線吸収剤を含有させ、それを紫外線吸収層としてもよい。また、紫外線吸収剤が練り混まれた樹脂フィルムを使用してもよい。本発明においては、上記の紫外線吸収層は、必要に応じて複数箇所設けてもよい。
【0084】
また、積層された樹脂フィルム間に、必要に応じて励起光吸収層を設けてもよい。また、励起光吸収層は複数箇所設けてもよいし、積層する為の接着剤層に色剤を含有して、励起光吸収層としても良い。
【0085】
保護フィルムは、蛍光体面を被覆するように設けられた構造(以下、封止または封止構造ともいう)であることがより好ましい。蛍光体プレートを封止するにあたっては、公知のいずれの方法でもよいが、防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることは、防湿性保護フィルムが融着可能となり蛍光体シートの封止作業が効率化される点で、好ましい形態の1つである。さらには、蛍光体シートの上下に防湿性保護フィルムを配置し、その周縁が前記蛍光体シートの周縁より外側にある領域で、上下の防湿性保護フィルムをインパルスシーラー等で加熱、融着して封止構造とすることで、蛍光体シートの外周部からの水分進入も阻止でき好ましい。また、さらには、支持体面側の防湿性保護フィルムが1層以上のアルミフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムとすることで、より確実に水分の進入を低減でき、またこの封止方法は作業的にも容易であり好ましい。本発明においては、上記インパルスシーラーで加熱融着する方法において、真空下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。本発明でいう真空下とは、1×10−3Pa以下の圧力をいう。
【0086】
防湿性保護フィルムの蛍光体面が接する側の熱融着性を有する最外層の樹脂層と蛍光体面は、接着していないことが本発明の要件の一つである。ここでいう接着していない状態とは、微視的には蛍光体面と防湿性保護フィルムとが点接触していても、光学的、力学的には殆ど蛍光体面と防湿性保護フィルムは不連続体として扱える状態のことである。また、上記の熱融着性を有する樹脂フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0087】
【実施例】
以下、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0088】
《放射線像変換パネル1の作製》
〔蛍光体シート1の作製〕
(輝尽性蛍光体の調製)
ユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(3.6mol/L)2780mlとEuI3水溶液(0.15mol/L)27mlを反応器に入れた。この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。次いで、弗化アンモニウム水溶液(8mol/L)322mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈澱物を生成させた。注入終了後も保温と撹拌を2時間続けて沈澱物の熟成を行なった。次に、沈澱物をろ別後、エタノールにより洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウムの結晶を得た。焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するために、アルミナの超微粒子粉体を0.2質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。これを石英ボートに充填して、チューブ炉を用いて水素ガス雰囲気下で、850℃で2時間焼成してユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウム蛍光体粒子を得た。次に上記蛍光体粒子を分級して平均粒径4μmの蛍光体を調製した。
【0089】
(蛍光体層塗布液1の調製)
上記調製したユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウム蛍光体480gと、Tgが30℃のポリエステル樹脂20.0gとをメチルエチルケトン:トルエンの1:1混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散して、粘度25〜30mPa・sの蛍光体層塗布液1を調製した。
【0090】
(下引き層塗布液の調製)
Tgが30℃のポリエステル樹脂を100質量部と架橋剤として多官能イソシアネート化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン社製)10質量部とを混合し、この混合物にメチルエチルケトン:トルエンの1:1混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散して、粘度500mPa・sの下引き層塗布液を調製した。
【0091】
(蛍光体シートの作製)
〈下引き層の塗布〉
厚さ250μmのカーボン錬り込みをした黒色ポリエチレンテレフタレート支持体上に、上記調製した下引き層塗布液を、乾燥膜厚が15μmとなるようナイフコーターを用いて塗布、乾燥した後、60℃で、3時間の熱処理を行って下引き層塗設済試料を作製した。
【0092】
〈蛍光体層の塗布〉
上記下引き層上に、前記調製した蛍光体層塗布液1を乾燥膜厚が180μmになるように塗布を行い、蛍光体シート1を作製した。
【0093】
〔防湿性保護シート1の作製〕
上記作製した蛍光体シート1の蛍光体層塗設面側の防湿性保護シートとして下記構成(A)の防湿性保護シート1を使用した。
【0094】
構成(A)
VMPET12//VMPET12//PET12//シーラントフィルム
PET:ポリエチレンテレフタレート
シーラントフィルム:熱融着性フィルムでCPP(キャステングポリプロピレン)を使用
VMPET:アルミナ蒸着PET(市販品:東洋メタライジング社製)
各樹脂フィルムの後ろに記載の数字は、フィルムの膜厚(μm)を示す。
【0095】
上記「//」はドライラミネーション接着層で、接着剤層の厚みが2.5μmであることを意味する。使用したドライラミネーション用の接着剤は、2液反応型のウレタン系接着剤を用いた。
【0096】
蛍光体シートの支持体裏面側の保護フィルムは、シーラントフィルム/アルミ箔フィルム9μm/ポリエチレンテレフタレート(PET)188μmの構成のドライラミネートフィルムとした。また、この場合の接着剤層の厚みは1.5μmで2液反応型のウレタン系接着剤を使用した。
【0097】
〔放射線像変換パネルの作製〕
前記作製した蛍光体シート1を、各々一辺が45cmの正方形に断裁した後、上記作製した防湿性保護シート1を用いて、8×10−4Paの真空下で周縁部をインパルスシーラを用いて融着、封止して、放射線像変換パネル1を作製した。尚、融着部から蛍光体シート周縁部までの距離は1mmとなるように融着した。融着に使用したインパルスシーラのヒーターは8mm幅のものを使用した。
【0098】
《放射線像変換パネル2の作製》
上記放射線像変換パネル1の作製において、防湿性保護シート1に代えて、下記の構成からなる防湿性保護シート2を用いた以外は同様にして、放射線像変換パネル2を作製した。
【0099】
〔防湿性保護シート2の作製〕
前記防湿性保護シート1の作製において、構成(A)に代えて下記の構成(B)とした以外は同様にして防湿性保護シート2を作製した。
【0100】
構成(B)
VMPET12//VMPET12//PET12//シーラントフィルム
上記構成(B)において、VMPET12とPET12との間のドライラミネーション接着層(//)に、紫外線吸収剤として例示化合物UV−7(商品名:チヌビン(TINUVIN)326、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を、ドライラミネーション接着層の樹脂固形分に対し、10質量%添加した。
【0101】
シーラントフィルム:熱融着性フィルムでCPP(キャステングポリプロピレン)を使用
VMPET:アルミナ蒸着PET(市販品:東洋メタライジング社製)
各樹脂フィルムの後ろに記載の数字は、フィルムの膜厚(μm)を示す。
【0102】
《放射線像変換パネル3の作製》
上記放射線像変換パネル1の作製において、蛍光体層塗布液1に代えて、下記の蛍光体層塗布液2を用いた以外は同様にして、放射線像変換パネル3を作製した。
【0103】
〔蛍光体層塗布液2の調製〕
前記蛍光体層塗布液1の調製において、紫外線吸収剤として、例示化合物UV−7を、蛍光体に対し0.1質量%添加した以外は同様にして、蛍光体層塗布液2を調製した。
【0104】
《放射線像変換パネル4の作製》
上記放射線像変換パネル1の作製において、蛍光体層塗布液1に代えて、上記蛍光体層塗布液2を、また、防湿性保護シート1に代えて、前記防湿性保護シート2を用いた以外は同様にして、放射線像変換パネル4を作製した。
【0105】
《放射線像変換パネルの評価》
以上のようにして作製した放射線像変換パネル1〜4を用いて、以下に示す方法に従って、各評価を行った。
【0106】
(初期輝度の測定)
各放射線像変換パネルについて、以下に示す方法で初期輝度の測定を行った。初期輝度の測定は、各放射線像変換パネルについて、管電圧80kVpのX線を10mR照射した後、放射線像変換パネルをコニカ社製のレジウス150で画像読みとりを行い、平均信号強度を測定し、これを輝度1(初期輝度)と定義し、放射線像変換パネル1の輝度1を100とした相対値で表示した。
【0107】
(輝度劣化率の測定)
上記の輝度1の測定を行った後、各放射線像変換パネルを6000ルクスの蛍光灯下で100時間放置した後の輝度2を測定し、下式により輝度劣化率を算出した。
【0108】
輝度劣化率(%)=(1−輝度2/輝度1)×100
(消去性劣化率の測定)
各放射線像変換パネルに管電圧80kVpのX線を100mR照射した後、コニカ社製のレジウス150で画像読みとり後、消去操作を行い、更に1時間後に同様の画像読みとりを行った。これらの操作により、消去前と消去1時間後の輝尽発光量を測定し、下式により消去率A(%)を求めた。
【0109】
消去率A(%)=(消去1時間後の輝尽発光量/消去前の輝尽発光量)×100
次いで、輝度劣化率の評価と同様に6000ルクスの蛍光灯下で100時間の強制劣化処理を行った放射線像変換パネルについて、上記と同様の方法で強制劣化後の消去率B(%)を測定し、下式により消去性劣化率(%)を求めた。
【0110】
消去性劣化率(%)=(1−消去率B/消去率A)×100
以上により得られた結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1より明らかなように、蛍光体シート又は防湿性保護シートに紫外線吸収剤を含有させた本発明の放射線像変換パネルは、比較例に対して初期輝度の劣化を伴わずに、高輝度光源下で長時間保存した後でも輝度安定性及び消去安定性に優れていることが分かる。更に、本発明の効果は、蛍光体シート及び防湿性保護シートのいずれにも紫外線吸収剤を含有させることにより、一層発揮されていることが分かる。
【0113】
【発明の効果】
本発明により、高い発光輝度が維持され、保存時の輝度安定性に優れ、かつ消去特性、残像特性に優れた放射線像変換パネル及びその製造方法を提供することかできた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線像変換パネル及びその製造方法に関し、詳しくは保存時の輝度安定性に優れ、かつ消去特性、残像特性に優れた放射線像変換パネル及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線画像のような放射線画像は、病気診断用などの分野で多く用いられている。このX線画像を得る方法としては、被写体を通過したX線を蛍光体層(蛍光スクリーン)に照射し、これにより可視光を生じさせた後、この可視光を通常の写真を撮るときと同様にして、ハロゲン化銀写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)に照射し、次いで現像処理を施して可視銀画像を得る、いわゆる放射線写真方式が広く利用されている。
【0003】
しかしながら、近年では、この様な従来の放射線写真法に代わる有効な診断手段として、特開昭55−12145号等に記載の輝尽性蛍光体を用いる放射線画像記録再生方法が知られている。この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シートとも呼ばれる)を利用するもので、被写体を透過した、又は被検体から発せられた放射線を輝尽性蛍光体に吸収させ、可視光線、紫外線などの電磁波(励起光と言う)で時系列的に輝尽性蛍光体を励起して、蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光という)として放射させ、この蛍光を光電的に読みとって電気信号を得、得られた電気信号に基づいて被写体又は被検体の放射線画像を可視画像として再生するものである。読取り後の変換パネルは、残存画像の消去が行われ、次の撮影に供される。
【0004】
この方法によれば、放射線写真フィルムと増感紙とを組み合わせて用いる放射線写真法に比して、遙かに少ない被爆線量で情報量の豊富な放射線画像が得られる利点がある。又、放射線写真法では撮影毎にフィルムを消費するのに対して、放射線像変換パネルは繰り返し使用されるので、資源保護や経済効率の面からも有利である。
【0005】
放射線像変換パネルは、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層、又は自己支持性の輝尽性蛍光体層のみから成り、輝尽性蛍光体層は、通常、輝尽性蛍光体と、これを分散支持する結合剤から成るものと、蒸着法や焼結法によって形成される輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものがある。又、該凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものも知られている。更に、輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には、通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜から成る保護膜が設けられる。
【0006】
上記の輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用的には、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に利用される。
【0007】
これらの輝尽性蛍光体を使用した放射線像変換パネルは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことができ、繰返し使用が可能であるが、この様な使われ方をする放射線像変換パネルにおいては、得られる放射線画像の画質を劣化させることなく長期間の使用に耐える性能を付与することが望ましい。しかし、放射線像変換パネルの製造に用いられる輝尽性蛍光体、特に沃素を含有する輝尽性蛍光体を用いる場合には、蛍光体から沃素が遊離して沃素分子(I2)を形成するために、蛍光体層が徐々に黄色に変色しやすい特性にある。この様にして、蛍光体層が劣化した放射線像変換パネルは、感度が著しく低下したり、あるいは消去特性や残像特性が低下するという問題がある。
【0008】
この劣化特性は、長期保存や繰り返しの使用に際して徐々に起こり、この要因として、主に蛍光体の吸湿や加熱によって促進されると考えられていたが、本発明者が更にその原因の詳細について検討を進めた結果、紫外線によっても大きく影響を受けていることが判明した。特に、紫外線の影響により、輝尽性蛍光体粒子の特性に依存している輝度の低下や消去特性、残像特性の低下を招く結果となり、輝尽性蛍光体粒子の劣化を防止するための改良技術の開発が必要とされていた。
【0009】
上記課題に対し、従来、輝尽性蛍光体層と接着された保護層とからなる放射線像変換パネルにおける紫外線カブリ防止技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、輝尽性蛍光体層に白色無機顔料を添加することによる紫外線カブリ防止技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、吸湿性の強い輝尽性蛍光体を用いた放射線像変換パネルにおける防湿封止方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、上記いずれの方法も、長期間にわたり紫外線照射を受けたときに、感度や消去特性が劣化することが判明し、早急な改良が要望されている。
【0010】
【特許文献1】
特公平7−82188号公報(特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献2】
特開平10−123296号公報(特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献3】
特開平11−344598号公報(特許請求の範囲)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い発光輝度が維持され、保存時の輝度安定性に優れ、かつ消去特性、残像特性に優れた放射線像変換パネル及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0015】
1.支持体上に、少なくとも輝尽性蛍光体と結合剤とを含有する輝尽性蛍光体層を有する蛍光体シートと、それを非接着で被覆している防湿性保護シートからなる放射線像変換パネルにおいて、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする放射線像変換パネル。
【0016】
2.前記紫外線吸収剤が、前記防湿性保護シートに積層されていることを特徴とする前記1項に記載の放射線像変換パネル。
【0017】
3.前記紫外線吸収剤が、前記輝尽性蛍光体層に含有されていることを特徴とする前記1項に記載の放射線像変換パネル。
【0018】
4.前記輝尽性蛍光体が、Eu付加BaFBrXI(1−X)(0≦X<1)であることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の放射線像変換パネル。
【0019】
5.防湿性保護シートに紫外線吸収剤含有層を積層し、該防湿性保護シートで蛍光体シートを真空下で密封することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【0020】
6.輝尽性蛍光体、結合剤、溶剤及び紫外線吸収剤とを混合、分散して調製した蛍光体分散液を、支持体上に塗布、乾燥させて蛍光体シートを作製した後、防湿性保護シートで該蛍光体シートを真空下で密封することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【0021】
本発明者は、特に、ヨウ素を含有する輝尽性蛍光体(以下、単に蛍光体ともいう)を放射線像変換パネルに用いた場合に輝尽性蛍光体層(以下、単に蛍光体層ともいう)が劣化しやすく、その結果、蛍光体から発せられた輝尽発光光が、蛍光体層中で吸収されてしまうために輝度が著しく低下し、更に消去特性や残像特性が劣化するというこの蛍光体層の劣化は、放射線像変換パネルを長期間保存した際に発生し、蛍光体層中でI2分子を形成することに起因していると考えられている。
【0022】
本発明者らは、上記課題に関し鋭意解析を進めた結果、劣化を加速している要因の1つとして、放射線像変換パネルが長期間の使用中に受ける紫外線に大きく影響を受けていることを突き止めた。本発明では、放射線像変換パネルを構成する蛍光体シートや防湿性保護シートに紫外線吸収剤を含有せしめることにより、長期使用時の輝度低下や消去特性、残像特性を向上できることを見いだし、本発明に至った次第である。
【0023】
以下、本発明の詳細について説明する。
請求項1に係る発明では、支持体上に、少なくとも輝尽性蛍光体と結合剤とを含有する輝尽性蛍光体層を有する蛍光体シートと、それを非接着で被覆している防湿性保護シートからなる放射線像変換パネルにおいて、紫外線吸収剤を含有することが特徴である。
【0024】
本発明で用いることのできる紫外線吸収剤としては、従来公知の紫外線吸収剤を挙げることができ、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。
【0025】
本発明で用いる紫外線吸収剤で好ましく用いられる上記の紫外線吸収剤は、透明性が高く、放射線像変換パネルの劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、より好ましくは、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。また、特開平10−182621号、特開平8−337574号記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、波長390nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。また、紫外線吸収能は350nmで透過率50%以下であることが望まれ、より好ましくは透過率10%未満、更に好ましくは透過率0〜4%未満であることが望ましい。
【0026】
本発明に有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は下記一般式〔1〕で示される化合物の一群である。
【0027】
【化1】
【0028】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、各々、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5または6員の異項環を表し、R4とR5は閉環して5または6員の炭素環を形成してもよい。また、R1、R2及びR3の何れかが2価の連結基でもう一つの2−(2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール基と結合してもよい。
【0029】
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール《商品名:チヌビン(TINUVIN)326》
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチル−フェノール《商品名:チヌビン(TINUVIN)171》
UV−9:2−オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物《商品名:チヌビン(TINUVIN)109》
UV−10:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール《商品名:チヌビン(TINUVIN)234》
等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、上記のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234及びチヌビン326は何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の市販品で、好ましく使用できる。
【0030】
また、本発明に係る紫外線吸収剤の一つであるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、下記一般式〔2〕で表すことができる。
【0031】
【化2】
【0032】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n−1−D−基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
【0033】
上記において、アルキル基としては例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては例えば、炭素数18までのアルコキシ基で、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基で例えばアリル基、2−ブテニル基などを表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換分としてはハロゲン原子、例えばクロール、ブロム、フッ素原子など、ヒドロキシ基、フェニル基、(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子などを置換していてもよい)などを挙げることができる。また、AまたはYが2価の連結基でもう一つの2−ヒドロキシベンゾフェノン基と二つ以上のベンゾフェノン基を有する化合物となってもよい。更にベンゾフェノンでなく、ベンゾトリアゾール基を有する化合物となってもよい。
【0034】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、
UV−11:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−12:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−13:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−14:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0035】
更に、ベンゾトリアゾール系の窒素原子含有異項環を有する紫外線吸収剤で、且つ、ベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環から選ばれる環を分子内に少なくとも3個有しているものを好ましく用いることができる。本発明において、ナフタレン環及びベンゾトリアゾールは縮合環であるが、ナフタレンは2個またベンゾトリアゾールは1個と数える。このように窒素原子含有異項環、ベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環が、それぞれ縮合環を形成してもよい。
【0036】
分子内にベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環から選ばれる環を少なくとも3個有する有機化合物添加剤としては、例えば、
UV−15:2,2’−メチレンビス[6(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]
UV−16:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール
UV−17:1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン
UV−18:1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン
UV−19:2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール
UV−20:RUVA−100/110(大塚化学(株)製)
UV−21:RUVA−206(大塚化学(株)製)
UV−22:アデカスタブLA−31(旭電化工業(株)製)
UV−23:アデカスタブLA−51(旭電化工業(株)製)
等を挙げることができる。ここで、UV−20、22及び23について下記に構造式を示す。また、特開平6−148430号記載公報の一般式(1)〜(5)で示される紫外線吸収性基を複数有する高分子紫外線吸収剤でもよく、具体的には特開平6−148430号公報記載のPUV−1−22で示されている紫外線吸収性基を複数有している高分子紫外線吸収剤が1つの分子内にベンゼン環を3つ以上有している紫外線吸収剤として用いられる。
【0037】
高分子紫外線吸収剤として、
UV−24:RUVA−93(大塚化学社製)
の反応型紫外線吸収剤を重合した化合物も好ましく用いることができる。あるいは、特願2001−122573記載の紫外線吸収剤も好ましく用いられ、特に一般式(1)〜(8)で示される紫外線吸収剤、例えばこの実施例で示されている化10、化11、化13、化15等の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。あるいは特開2000−273437号公報記載の一般式(1)で示されている紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
【0038】
更に、ベンゾトリアゾール系及びベンゾフェノン系の紫外線吸収剤を下記に例示する。
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】
【化5】
【0042】
上記紫外線吸収剤の添加方法は、該紫外線吸収剤を溶剤に溶解した紫外線吸収剤溶液として輝尽性蛍光体塗布液に添加しても、あるいは該紫外線吸収剤を直接添加して溶解させてもよい。また、紫外線吸収剤溶液をインライン添加液に添加してもよい。一方、防湿性保護シートに紫外線吸収剤を含有させるには、防湿性保護シート上に、紫外線吸収剤を含む樹脂溶液を積層してもよく、また、最表層に紫外線吸収剤溶液をオーバーコートしてもよい。あるいは、紫外線吸収剤を練り込んだフィルムを保護シートとして用いてもよい。紫外線吸収剤を溶解する溶剤は、溶解するものであれば制限なく使用でき、後述の輝尽性蛍光体層で用いるのと同様のものを挙げることができる。
【0043】
次いで、本発明の放射線像変換パネルの各構成要素について説明する。
本発明の放射線像変換パネルは、主に、支持体と蛍光体層とからなり、必要に応じて支持体と蛍光体層との間に下引き層が設けられる。蛍光体層は、一般に、蛍光体とこれを分散保持する高分子樹脂とから構成される。また、蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜からなる保護層膜が設けられる。
【0044】
本発明で用いることのできる支持体または仮支持体としては、例えば、ガラス、ウール、コットン、紙、金属などの種々の素材から作られたものが使用することができるが、情報記録材料としての取り扱い上、可撓性のあるシート或いはロールに加工できるものが好ましい。この点から、例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスティックフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔などの金属シート、一般紙及び例えば写真用原紙、コート紙、若しくはアート紙のような印刷用原紙、バライタ紙、レジンコート紙、ベルギー特許第784,615号明細書に記載されているようなポリサッカライド等でサイジングされた紙、二酸化チタンなどの顔料を含むピグメント紙、ポリビニールアルコールでサイジングした紙等の加工紙が特に好ましい。これら支持体の膜厚は、用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80〜1000μmであり、取り扱い上の点から、さらに好ましくは80〜500μmである。これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、後述の下引き層との接着力を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0045】
次いで、下引き層について説明する。下引き層は、主に、架橋剤により架橋できる高分子樹脂と架橋剤とを含有している。
【0046】
下引き層で用いることのできる高分子樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニールブチラール、ニトロセルロース等を挙げることができ、下引き層で用いる高分子樹脂の平均ガラス転移点温度(Tg)が25℃以上であることが好ましく、更に好ましくは25〜200℃のTgを有する高分子樹脂を用いることである。
【0047】
下引き層で用いることのできる架橋剤としては、特に制限はなく、例えば、多官能イソシアネート及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミノ樹脂及びその誘導体等を挙げることができるが、本発明では、架橋剤として多官能イソシアネート化合物を用いることが好ましく、例えば、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、コロネート3041等が挙げられる。
【0048】
下引き層は、例えば、以下に示す方法により支持体上に形成することができる。
【0049】
まず、上記記載の高分子樹脂と架橋剤を適当な溶剤、例えば後述の輝尽性蛍光層塗布液の調製で用いる溶剤に添加し、これを充分に混合して下引き層塗布液を調製する。
【0050】
架橋剤の使用量は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂の種類等により異なるが、輝尽性蛍光体層の支持体に対する接着強度の維持を考慮すれば、高分子樹脂に対して、50質量%以下の比率で添加することが好ましく、特に好ましくは15〜50質量%である。
【0051】
下引き層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂及び架橋剤の種類等により異なるが、一般には3〜50μmであることが好ましく、特に好ましくは5〜40μmであることが特徴である。また、上記下引き層は、必要に応じて着色されていても良い。
【0052】
本発明においては、支持体上に上記下引き層を塗設した後、輝尽性蛍光体層を塗布する前に、下引き層に含有した高分子樹脂と架橋剤との反応をより完遂させるため、40〜150℃で2〜100時間の熱処理を行うことが好ましい。
【0053】
熱処理方法としては、特に制限はなく、作製したシート状、ロール状等の下引き層塗設済み試料が完全に収納でき、かつ温度、湿度が制御できる恒温室であればいずれの方法を用いても良い。熱処理条件としては、40〜150℃で2〜100時間であることが好ましく、より好ましくは55〜100℃、5〜50時間である。
【0054】
次いで、輝尽性蛍光体層について説明する。
本発明に係る輝尽性蛍光体層は、少なくとも輝尽性蛍光体と高分子樹脂とを含有している。
【0055】
本発明で用いることのできる輝尽性蛍光体としては、波長400〜900nmの範囲に発光波長のあるものが一般的に使用される。
【0056】
以下に、本発明の放射線像変換パネルで用いることのできる蛍光体の例を挙げる。
【0057】
(1)特開昭55−12145号に記載されている(Ba1−X,M(II)X)FX:yA、(式中、M(II)はMg、Ca、Sr、ZnおよびCdのうちの少なくとも一つ、XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つ、AはEu、Tb、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、およびErのうちの少なくとも一つ、そしては、0≦x≦0.6、yは、0≦y≦0.2である)の組成式で表される希土類元素賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物蛍光体;また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい。
【0058】
a)特開昭56−74175号に記載されている、X′、BeX″、M(III)X′′′3、式中、X′、X″、およびX′′′はそれぞれCl、BrおよびIの少なくとも一種であり、M(III)は三価金属である
b)特開昭55−160078号に記載されているBeO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Al2O3、Y2O3、La2O3、In2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、GeO2、SnO2、Nb2O5、Ta2O5およびThO2などの金属酸化物
c)特開昭56−116777号に記載されているZr、Sc
d)特開昭57−23673号に記載されているB
e)特開昭57−23675号に記載されているAs、Si
f)特開昭58−206678号に記載されているM・L、式中、MはLi、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、LはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、およびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属である
g)特開昭59−27980号に記載されているテトラフルオロホウ酸化合物の焼成物;特開昭59−27289号に記載されているヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸およびヘキサフルオロジルコニウム酸の一価もしくは二価金属の塩の焼成物;特開昭59−56479号に記載されているNaX′、式中、X′はCl、BrおよびIのうちの少なくとも一種である
h)特開昭59−56480号に記載されているV、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiなどの遷移金属;特開昭59−75200号に記載されているM(I)X′、M′(II)X″2、M(III)X′′′3、A、式中、M(I)はLi、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M′(II)はBeおよびMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属を表し、M(III)はAl、Ga、In、およびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、Aは金属酸化物であり、X′、X″、およびX′′′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
i)特開昭60−101173号に記載されているM(I)X′、式中、M(I)はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、X′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
j)特開昭61−23679号に記載されているM(II)′X′2・M(II)′X″2、式中、M(II)′はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;X′およびX″はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX′≠X″である;更に、特開昭61−264084号明細書に記載されているLnX″3、式中、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。
【0059】
(2)特開昭60−84381号に記載されているM(II)X2・aM(II)X′2:xEu2+(式中、M(II)はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XおよびX′はCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1≦a≦10.0、xは0<x≦0.2である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物蛍光体;また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい。
【0060】
a)特開昭60−166379号に記載されているM(I)X′、式中、M(I)はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
b)特開昭60−221483号に記載されているKX″、MgX′′′2、M(III)X″″3、式中、M(III)はSc、Y、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;X″、X′′′およびX″″はいずれもF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
c)特開昭60−228592号に記載されているB、特開昭60−228593号に記載されているSiO2、P2O5等の酸化物、特開昭61−120882号に記載されているLiX″、NaX″、式中、X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
d)特開昭61−120883号に記載されているSiO;特開昭61−120885号に記載されているSnX″2、式中、X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
e)特開昭61−235486号に記載されているCsX″、SnX′′′2、式中、X″およびX′′′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである;更に、特開昭61−235487号に記載されているCsX″、Ln3+、式中、X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;LnはSc、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素である
(3)特開昭55−12144号に記載されているLnOX:xA(式中、LnはLa、Y、Gd、およびLuのうち少なくとも一つ;XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つ;AはCeおよびTbのうち少なくとも一つ;xは、0<x<0.1である)の組成式で表される希土類元素賦活希土類オキシハライド蛍光体。
【0061】
(4)特開昭58−69281号に記載されているM(II)OX:xCe(式中、M(II)はPr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化金属であり;XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つであり;xは0<x<0.1である)の組成式で表されるセリウム賦活三価金属オキシハライド蛍光体。
【0062】
(5)特開昭62−25189号明細書に記載されているM(I)X:xBi(式中、M(I)はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてxは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体。
【0063】
(6)特開昭60−141783号に記載されているM(II)5(PO4)3X:xEu2+(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体。
【0064】
(7)特開昭60−157099号に記載されているM(II)2BO3X:xEu2+(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロホウ酸塩蛍光体。
【0065】
(8)特開昭60−157100号に記載されているM(II)2(PO4)3X:xEu2+(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体。
【0066】
(9)特開昭60−217354号に記載されているM(II)HX:xEu2+(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体。
【0067】
(10)特開昭61−21173号に記載されているLnX3・aLn′X′3:xCe3+、(式中、LnおよびLn′はそれぞれY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XおよびX′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物蛍光体。
【0068】
(11)特開昭61−21182号に記載されているLnX3・aM(I)X′3:xCe3+、(式中、LnはY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;M(I)はLi、Na、K、CsおよびRbからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物系蛍光体。
【0069】
(12)特開昭61−40390号に記載されているLnPO4・aLnX3:xCe3+、(式中、LnはY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XはF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類ハロ燐酸塩蛍光体。
【0070】
(13)特開昭61−236888号明細書に記載されているCsX:aRbX′:xEu2+、(式中、XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活ハロゲン化セシウム・ルビジウム蛍光体。
【0071】
(14)特開昭61−236890号に記載されているM(II)X2・aM(I)X′:xEu2+、(式中、M(II)はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;M(I)はLi、RbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦20.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体。
【0072】
上記の輝尽性蛍光体のうちで、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する希土類元素賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、およびヨウ素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は、高輝度の輝尽発光を示すため好ましく、請求項5に係る発明においては、輝尽性蛍光体がEu付加BaFBrXI(1−X)(0≦X<1)であることが好ましい。
【0073】
本発明に係る輝尽性蛍光体は、高分子樹脂に分散された形態で輝尽性蛍光体層中に含有していることが好ましい。本発明で用いることのできる高分子樹脂としては、公知の高分子樹脂を用いることができ、例えば、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニールブチラール、ニトロセルロース等を挙げることができる。
【0074】
本発明で用いる輝尽性蛍光体層塗布液は、適当な有機溶媒中に高分子樹脂と輝尽性蛍光体粒子とを添加し、例えば、ディスパーザーやボールミル等を使用して、攪拌、混合して、高分子樹脂中に輝尽性蛍光体が均一に分散するようにして調製する。輝尽性蛍光体層塗布液の調製に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0075】
なお、輝尽性蛍光体塗布液には、必要に応じて、塗布液中における輝尽性蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、あるいはパネル形成後の輝尽性蛍光体層中における高分子樹脂と輝尽性蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤など種々の添加剤が混合されてもよい。
【0076】
分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。また、可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸エステル、グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタルブチルなどのグリコール酸エステル、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールと琥珀酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。
【0077】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製は、通常、ボールミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、および超音波分散機などの分散装置を用いて行なわれる。調製された塗布液は、例えば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター、押し出しコーター等の公知の塗布コーターを用いて、支持体上に塗設した後、乾燥することにより、輝尽性蛍光体層の形成が完了する。
【0078】
本発明の放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、高分子樹脂と輝尽性蛍光体との混合比等によって異なるが、10〜1000μmの範囲から選ばれるのが好ましく、10〜500μmの範囲から選ばれるのがより好ましい。
【0079】
支持体上に輝尽性蛍光体層が塗設された蛍光体シートは、所定の大きさに断裁される。断裁にあたっては、一般のどのような方法でも可能であるが、作業性、精度の面から化粧断裁機、打ち抜き機等が望ましい。
【0080】
本発明の放射線像変換パネルには、輝尽性蛍光体層の表面を物理的、化学的に保護するための保護膜(保護フィルムともいう)を設けることが好ましく、それらの構成は目的、用途などに応じて適宜選択することができる。
【0081】
本発明の放射線像変換パネルに設ける保護層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム等の延伸加工されたフィルムが、透明性、強さの面で保護層として好ましく、更には、これらのポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム上に金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着した蒸着フィルムが防湿性の面からより好ましい。
【0082】
本発明において、保護層で用いるフィルムは、必要とされる防湿性にあわせて、樹脂フィルムや樹脂フィルムに金属酸化物などを蒸着した蒸着フィルムを複数枚積層することで最適な防湿性とすることができ、輝尽性蛍光体の吸湿劣化防止を考慮して、透湿度は少なくとも50g/m2・day以下であることが好ましい。樹脂フィルムの積層方法としては、特に制限はなく、公知のいずれの方法を用いても良い。
【0083】
本発明においては、積層された樹脂フィルムに紫外線吸収層を設けることが好ましい形態の一つである。紫外線吸収層は、樹脂フィルム表面に設けてもよいし、あるいは積層された樹脂フィルム間のドライラミネート接着層に紫外線吸収剤を含有させ、それを紫外線吸収層としてもよい。また、紫外線吸収剤が練り混まれた樹脂フィルムを使用してもよい。本発明においては、上記の紫外線吸収層は、必要に応じて複数箇所設けてもよい。
【0084】
また、積層された樹脂フィルム間に、必要に応じて励起光吸収層を設けてもよい。また、励起光吸収層は複数箇所設けてもよいし、積層する為の接着剤層に色剤を含有して、励起光吸収層としても良い。
【0085】
保護フィルムは、蛍光体面を被覆するように設けられた構造(以下、封止または封止構造ともいう)であることがより好ましい。蛍光体プレートを封止するにあたっては、公知のいずれの方法でもよいが、防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることは、防湿性保護フィルムが融着可能となり蛍光体シートの封止作業が効率化される点で、好ましい形態の1つである。さらには、蛍光体シートの上下に防湿性保護フィルムを配置し、その周縁が前記蛍光体シートの周縁より外側にある領域で、上下の防湿性保護フィルムをインパルスシーラー等で加熱、融着して封止構造とすることで、蛍光体シートの外周部からの水分進入も阻止でき好ましい。また、さらには、支持体面側の防湿性保護フィルムが1層以上のアルミフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムとすることで、より確実に水分の進入を低減でき、またこの封止方法は作業的にも容易であり好ましい。本発明においては、上記インパルスシーラーで加熱融着する方法において、真空下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。本発明でいう真空下とは、1×10−3Pa以下の圧力をいう。
【0086】
防湿性保護フィルムの蛍光体面が接する側の熱融着性を有する最外層の樹脂層と蛍光体面は、接着していないことが本発明の要件の一つである。ここでいう接着していない状態とは、微視的には蛍光体面と防湿性保護フィルムとが点接触していても、光学的、力学的には殆ど蛍光体面と防湿性保護フィルムは不連続体として扱える状態のことである。また、上記の熱融着性を有する樹脂フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0087】
【実施例】
以下、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0088】
《放射線像変換パネル1の作製》
〔蛍光体シート1の作製〕
(輝尽性蛍光体の調製)
ユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(3.6mol/L)2780mlとEuI3水溶液(0.15mol/L)27mlを反応器に入れた。この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。次いで、弗化アンモニウム水溶液(8mol/L)322mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈澱物を生成させた。注入終了後も保温と撹拌を2時間続けて沈澱物の熟成を行なった。次に、沈澱物をろ別後、エタノールにより洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウムの結晶を得た。焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するために、アルミナの超微粒子粉体を0.2質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。これを石英ボートに充填して、チューブ炉を用いて水素ガス雰囲気下で、850℃で2時間焼成してユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウム蛍光体粒子を得た。次に上記蛍光体粒子を分級して平均粒径4μmの蛍光体を調製した。
【0089】
(蛍光体層塗布液1の調製)
上記調製したユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウム蛍光体480gと、Tgが30℃のポリエステル樹脂20.0gとをメチルエチルケトン:トルエンの1:1混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散して、粘度25〜30mPa・sの蛍光体層塗布液1を調製した。
【0090】
(下引き層塗布液の調製)
Tgが30℃のポリエステル樹脂を100質量部と架橋剤として多官能イソシアネート化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン社製)10質量部とを混合し、この混合物にメチルエチルケトン:トルエンの1:1混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散して、粘度500mPa・sの下引き層塗布液を調製した。
【0091】
(蛍光体シートの作製)
〈下引き層の塗布〉
厚さ250μmのカーボン錬り込みをした黒色ポリエチレンテレフタレート支持体上に、上記調製した下引き層塗布液を、乾燥膜厚が15μmとなるようナイフコーターを用いて塗布、乾燥した後、60℃で、3時間の熱処理を行って下引き層塗設済試料を作製した。
【0092】
〈蛍光体層の塗布〉
上記下引き層上に、前記調製した蛍光体層塗布液1を乾燥膜厚が180μmになるように塗布を行い、蛍光体シート1を作製した。
【0093】
〔防湿性保護シート1の作製〕
上記作製した蛍光体シート1の蛍光体層塗設面側の防湿性保護シートとして下記構成(A)の防湿性保護シート1を使用した。
【0094】
構成(A)
VMPET12//VMPET12//PET12//シーラントフィルム
PET:ポリエチレンテレフタレート
シーラントフィルム:熱融着性フィルムでCPP(キャステングポリプロピレン)を使用
VMPET:アルミナ蒸着PET(市販品:東洋メタライジング社製)
各樹脂フィルムの後ろに記載の数字は、フィルムの膜厚(μm)を示す。
【0095】
上記「//」はドライラミネーション接着層で、接着剤層の厚みが2.5μmであることを意味する。使用したドライラミネーション用の接着剤は、2液反応型のウレタン系接着剤を用いた。
【0096】
蛍光体シートの支持体裏面側の保護フィルムは、シーラントフィルム/アルミ箔フィルム9μm/ポリエチレンテレフタレート(PET)188μmの構成のドライラミネートフィルムとした。また、この場合の接着剤層の厚みは1.5μmで2液反応型のウレタン系接着剤を使用した。
【0097】
〔放射線像変換パネルの作製〕
前記作製した蛍光体シート1を、各々一辺が45cmの正方形に断裁した後、上記作製した防湿性保護シート1を用いて、8×10−4Paの真空下で周縁部をインパルスシーラを用いて融着、封止して、放射線像変換パネル1を作製した。尚、融着部から蛍光体シート周縁部までの距離は1mmとなるように融着した。融着に使用したインパルスシーラのヒーターは8mm幅のものを使用した。
【0098】
《放射線像変換パネル2の作製》
上記放射線像変換パネル1の作製において、防湿性保護シート1に代えて、下記の構成からなる防湿性保護シート2を用いた以外は同様にして、放射線像変換パネル2を作製した。
【0099】
〔防湿性保護シート2の作製〕
前記防湿性保護シート1の作製において、構成(A)に代えて下記の構成(B)とした以外は同様にして防湿性保護シート2を作製した。
【0100】
構成(B)
VMPET12//VMPET12//PET12//シーラントフィルム
上記構成(B)において、VMPET12とPET12との間のドライラミネーション接着層(//)に、紫外線吸収剤として例示化合物UV−7(商品名:チヌビン(TINUVIN)326、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を、ドライラミネーション接着層の樹脂固形分に対し、10質量%添加した。
【0101】
シーラントフィルム:熱融着性フィルムでCPP(キャステングポリプロピレン)を使用
VMPET:アルミナ蒸着PET(市販品:東洋メタライジング社製)
各樹脂フィルムの後ろに記載の数字は、フィルムの膜厚(μm)を示す。
【0102】
《放射線像変換パネル3の作製》
上記放射線像変換パネル1の作製において、蛍光体層塗布液1に代えて、下記の蛍光体層塗布液2を用いた以外は同様にして、放射線像変換パネル3を作製した。
【0103】
〔蛍光体層塗布液2の調製〕
前記蛍光体層塗布液1の調製において、紫外線吸収剤として、例示化合物UV−7を、蛍光体に対し0.1質量%添加した以外は同様にして、蛍光体層塗布液2を調製した。
【0104】
《放射線像変換パネル4の作製》
上記放射線像変換パネル1の作製において、蛍光体層塗布液1に代えて、上記蛍光体層塗布液2を、また、防湿性保護シート1に代えて、前記防湿性保護シート2を用いた以外は同様にして、放射線像変換パネル4を作製した。
【0105】
《放射線像変換パネルの評価》
以上のようにして作製した放射線像変換パネル1〜4を用いて、以下に示す方法に従って、各評価を行った。
【0106】
(初期輝度の測定)
各放射線像変換パネルについて、以下に示す方法で初期輝度の測定を行った。初期輝度の測定は、各放射線像変換パネルについて、管電圧80kVpのX線を10mR照射した後、放射線像変換パネルをコニカ社製のレジウス150で画像読みとりを行い、平均信号強度を測定し、これを輝度1(初期輝度)と定義し、放射線像変換パネル1の輝度1を100とした相対値で表示した。
【0107】
(輝度劣化率の測定)
上記の輝度1の測定を行った後、各放射線像変換パネルを6000ルクスの蛍光灯下で100時間放置した後の輝度2を測定し、下式により輝度劣化率を算出した。
【0108】
輝度劣化率(%)=(1−輝度2/輝度1)×100
(消去性劣化率の測定)
各放射線像変換パネルに管電圧80kVpのX線を100mR照射した後、コニカ社製のレジウス150で画像読みとり後、消去操作を行い、更に1時間後に同様の画像読みとりを行った。これらの操作により、消去前と消去1時間後の輝尽発光量を測定し、下式により消去率A(%)を求めた。
【0109】
消去率A(%)=(消去1時間後の輝尽発光量/消去前の輝尽発光量)×100
次いで、輝度劣化率の評価と同様に6000ルクスの蛍光灯下で100時間の強制劣化処理を行った放射線像変換パネルについて、上記と同様の方法で強制劣化後の消去率B(%)を測定し、下式により消去性劣化率(%)を求めた。
【0110】
消去性劣化率(%)=(1−消去率B/消去率A)×100
以上により得られた結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1より明らかなように、蛍光体シート又は防湿性保護シートに紫外線吸収剤を含有させた本発明の放射線像変換パネルは、比較例に対して初期輝度の劣化を伴わずに、高輝度光源下で長時間保存した後でも輝度安定性及び消去安定性に優れていることが分かる。更に、本発明の効果は、蛍光体シート及び防湿性保護シートのいずれにも紫外線吸収剤を含有させることにより、一層発揮されていることが分かる。
【0113】
【発明の効果】
本発明により、高い発光輝度が維持され、保存時の輝度安定性に優れ、かつ消去特性、残像特性に優れた放射線像変換パネル及びその製造方法を提供することかできた。
Claims (6)
- 支持体上に、少なくとも輝尽性蛍光体と結合剤とを含有する輝尽性蛍光体層を有する蛍光体シートと、それを非接着で被覆している防湿性保護シートからなる放射線像変換パネルにおいて、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする放射線像変換パネル。
- 前記紫外線吸収剤が、前記防湿性保護シートに積層されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線像変換パネル。
- 前記紫外線吸収剤が、前記輝尽性蛍光体層に含有されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線像変換パネル。
- 前記輝尽性蛍光体が、Eu付加BaFBrXI(1−X)(0≦X<1)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線像変換パネル。
- 防湿性保護シートに紫外線吸収剤含有層を積層し、該防湿性保護シートで蛍光体シートを真空下で密封することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
- 輝尽性蛍光体、結合剤、溶剤及び紫外線吸収剤とを混合、分散して調製した蛍光体分散液を、支持体上に塗布、乾燥させて蛍光体シートを作製した後、防湿性保護シートで該蛍光体シートを真空下で密封することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
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