JP2004123987A - 熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、金属箔張り積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、金属箔張り積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板 Download PDF

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Tetsushi Konta
紺田 哲史
Naoko Doi
土井 尚子
Takeshi Yoshimura
吉村 毅
Eiichiro Saito
斉藤 英一郎
Takao Hayashi
林 隆夫
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Abstract

【課題】成形性のほかプリント配線板や多層プリント配線板に要求される特性を低下させることなく熱膨張率を低減することができる熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂と粘土層状鉱物とを含有する熱硬化性樹脂組成物に関する。粘土層状鉱物の層間を有機修飾剤でイオン交換する。これにより、粘土層状鉱物の層間の相互作用が弱まって各層の剥離が促進され、組成物中において各層をナノメートルオーダーで均一に分散させることができる。従って、粘土層状鉱物の配合量がたとえ少量であっても、成形性のほかプリント配線板や多層プリント配線板に要求される特性を低下させることなく、熱膨張率を十分に低減することができる。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板や多層プリント配線板の材料として使用される電気絶縁用の熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び金属箔張り積層板と、これらのものを使用して製造されるプリント配線板及び多層プリント配線板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子機器等に使用されるプリント配線板は、熱硬化性樹脂ワニスをガラスクロス等の基材に含浸してプリプレグを作製し、このプリプレグを所定枚数重ねて絶縁基板を形成すると共にこの絶縁基板の片側又は両側に銅箔等の金属箔を配置し、これを加熱加圧して積層成形することによって金属箔張り積層板を作製し、表面の金属箔をプリント配線加工して導体パターンを形成することによって、製造されている。そしてこのプリント配線板を内層回路板とし、このプリント配線板に所定枚数のプリプレグを重ねると共にその外側に金属箔を配置し、これを加熱加圧して積層成形した後に、外層の金属箔をプリント配線加工して導体パターンを形成したりスルーホール加工したりすることによって、多層プリント配線板を製造することができる。
【0003】
このようにして得られる多層プリント配線板は、電子機器の高機能化、高信頼化、小型化等のために開発されたものであるが、近年、これらのニーズの高度化に伴ってプリント配線板の高密度配線化(導体パターンの細線化、スルーホールの微小化、多層化等)が急速に進展している。具体的には、高密度配線化された多層プリント配線板としては、層数が20層以上、パターン幅50〜75μmであるものが実用化されるに至っている。
【0004】
ところが、このように高密度配線化された多層プリント配線板においては、部品実装時のはんだ付けによる高熱や実使用時の実装機器からの発熱により、絶縁基板と金属箔との熱膨張率(熱膨張係数)の違いから導体パターンやスルーホールに断線が発生し、歩留まりや信頼性を低下させる原因の一つとなっている。
【0005】
そこで、絶縁基板と金属箔との熱膨張率の差を小さくして導体パターンやスルーホールの断線を防止するために、今日ではカップリング処理等を施したシリカやクレイ等の無機充填材を熱硬化性樹脂ワニスに配合することによって、絶縁基板の低熱膨張率化が図られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−183539号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平8−216335号公報(段落番号[0008])
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、絶縁基板の熱膨張率を十分低減するには上記のような無機充填材は、熱硬化性樹脂ワニスに大量に配合する必要がある。そのため、熱硬化性樹脂ワニスの粘度が上昇して成形性が低下したり、また層間密着強度や金属箔接着強度が低下したり、また誘電率等の電気特性が悪化したり、さらにスルーホール形成時においてドリルが摩耗したりする等の問題が発生している。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、成形性のほかプリント配線板や多層プリント配線板に要求される特性を低下させることなく熱膨張率を低減することができる熱硬化性樹脂組成物、積層しても層間密着強度の低下がみられない上に熱膨張率が小さいプリプレグ、層間密着強度や金属箔接着強度の低下がみられない上に熱膨張率が小さい金属箔張り積層板、層間密着強度や金属箔接着強度の低下がみられず、電気特性が良好であり、スルーホール形成時においてドリルが摩耗しない上に、導体パターンやスルーホールの断線がみられないプリント配線板及び多層プリント配線板を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と粘土層状鉱物とを含有する熱硬化性樹脂組成物において、粘土層状鉱物の層間を有機修飾剤でイオン交換して成ることを特徴とするものである。
【0010】
また請求項2の発明は、請求項1において、有機修飾剤として、下記式(1)で表される有機修飾剤を用いて成ることを特徴とするものである。
【0011】
【化3】
Figure 2004123987
【0012】
また請求項3の発明は、請求項1において、有機修飾剤として、下記式(2)で表されるトリアミン系修飾剤を用いて成ることを特徴とするものである。
【0013】
【化4】
Figure 2004123987
【0014】
また請求項4の発明は、請求項1において、有機修飾剤として、上記式(2)で表されるトリアミン系修飾剤をアセチル化したものを用いて成ることを特徴とするものである。
【0015】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、熱硬化性樹脂とイオン交換された粘土層状鉱物とを溶融混練して成ることを特徴とするものである。
【0016】
また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、粘土層状鉱物の各層が厚み10nm以下の鱗片状に剥離して成ることを特徴とするものである。
【0017】
また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、熱硬化性樹脂として、少なくともシアネート樹脂を用いて成ることを特徴とするものである。
【0018】
また請求項8の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、熱硬化性樹脂として、少なくともポリイミド樹脂を用いて成ることを特徴とするものである。
【0019】
また請求項9の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、熱硬化性樹脂として、少なくともエポキシ樹脂を用いて成ることを特徴とするものである。
【0020】
また請求項10の発明は、請求項9において、エポキシ樹脂として、少なくともナフトール型エポキシ樹脂を用いて成ることを特徴とするものである。
【0021】
また請求項11の発明は、請求項9において、エポキシ樹脂として、少なくとも液状エポキシ樹脂を用いて成ることを特徴とするものである。
【0022】
また請求項12の発明は、請求項9乃至11のいずれかにおいて、数平均分子量が1000〜4000であり、かつフェノール変性したポリフェニレンオキサイドを硬化剤として含有して成ることを特徴とするものである。
【0023】
また請求項13の発明は、請求項9乃至11のいずれかにおいて、ビスフェノールA型ノボラックを硬化剤として含有すると共に、エポキシ樹脂のエポキシ基数と硬化剤の水酸基数の比が0.7〜1.5であることを特徴とするものである。
【0024】
また請求項14に係るプリプレグは、請求項1乃至13のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸し、加熱乾燥して半硬化させて成ることを特徴とするものである。
【0025】
また請求項15に係る金属箔張り積層板は、請求項14に記載のプリプレグを所定枚数積層すると共にこの片側又は両側に金属箔を重ね合わせて加熱加圧成形して成ることを特徴とするものである。
【0026】
また請求項16に係るプリント配線板は、請求項15に記載の金属箔張り積層板に導体パターンを形成して成ることを特徴とするものである。
【0027】
また請求項17に係る多層プリント配線板は、請求項16に記載のプリント配線板の片側又は両側に請求項14に記載のプリプレグを所定枚数積層すると共にさらにその外側に金属箔を重ね合わせて加熱加圧成形して成ることを特徴とするものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と粘土層状鉱物(クレイ)とを含有するものである。
【0030】
本発明において熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、熱膨張率(熱膨張係数)が低く、耐熱性が高く、電気特性に優れているという理由から、2官能以上のシアネート樹脂、ポリイミド樹脂及びエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。熱硬化性樹脂は1種のものを単独で用いることができるほか、2種以上のものを混合して用いることもできる。2種以上の熱硬化性樹脂を用いる場合には、少なくともシアネート樹脂、ポリイミド樹脂及びエポキシ樹脂のうち1種のものを用いるのが好ましい。シアネート樹脂、ポリイミド樹脂及びエポキシ樹脂の詳細については後述する。なお、熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂組成物全量に対して10〜99.5質量%配合することができる。
【0031】
シアネート樹脂は、硬化時にトリアジン環を形成するために剛直な構造となる。そのため、耐熱性が高くなると共に熱膨張率が低くなって熱特性に優れ、また上記硬化時の構造によって低誘電率特性等の電気特性にも優れることから、プリント配線板や多層プリント配線板の材料として適しているのである。本発明においてシアネート樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビス(4−シアネートフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアネートフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−シアネートフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアネートフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ジ(4−シアネートフェニル)エーテル、ジ(4−シアネートフェニル)チオエーテル、4,4−ジシアネート−ジフェニル等を用いることができる。このようにシアネート樹脂にも多くの種類があるが、これらのうち1種のものを単独で用いることができるほか、2種以上のものを混合して用いることができる。
【0032】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂を用いる場合には、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛等の硬化促進剤を添加することができる。この場合、硬化促進剤の添加量は固形分に対して5質量%以下であることが望ましい。
【0033】
本発明においてポリイミド樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、マレイン酸N,N−エチレン−ビス−イミド、マレイン酸N,N−ヘキサメチレン−ビス−イミド、マレイン酸N,N−メタフェニレン−ビス−イミド、マレイン酸N,N−パラフェニレン−ビス−イミド、マレイン酸N,N−4,4−ジフェニルメタン−ビス−イミド、マレイン酸N,N−4,4−ジフェニルエーテル−ビス−イミド、マレイン酸N,N−4,4−ジフェニルスルホン−ビス−イミド、マレイン酸N,N−4,4−ジシクロヘキシルメタン−ビス−イミド、マレイン酸N,N−α,α−4,4−ジメチレンシクロヘキサン−ビス−イミド、マレイン酸N,N−4,4−メタキシリレン−ビス−イミド及びマレイン酸N,N−4,4−ジフェニルシクロヘキサン−ビス−イミド等を用いることができる。このようにポリイミド樹脂にも多くの種類があるが、これらのうち1種のものを単独で用いることができるほか、2種以上のものを混合して用いることができる。
【0034】
熱硬化性樹脂としてポリイミド樹脂を用いる場合には、ポリアミン等の架橋剤(硬化剤)を併用することができる。ポリアミンの具体例としては、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、2,6−ジアミノピリジン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4−ジアミノ−ジフェニルメタン、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、ベンジジン、4,4−ジアミノフェニルオキサイド、4,4−ジアミノジフェニルサルファイド、4,4−ジアミノジフェニルスルフォン、ビス−(4−アミノフェニル)メチルフォスフィンオキサイド、ビス−(3−アミノフェニル)メチルフォスフィンオキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)フェニラミン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1−ビス−(パラアミノフェニル)フタラン、ヘキサメチレンジアミン等を挙げることができる。ポリイミド樹脂とポリアミンを反応させる場合には、ポリイミド樹脂のイミド基当量(r)とポリアミンのアミノ基当量(r)の比(r/r)が1.2〜10であることが望ましい。
【0035】
さらに、熱硬化性樹脂としてポリイミド樹脂を用いる場合には、硬化反応を促進させる目的で触媒(硬化促進剤)を添加することができる。この触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、第3級アミン類及びこれらのアンモニウム塩、リン化合物、有機金属塩、第二塩化スズ並びに塩化亜鉛等の塩化物等を用いることができる。この場合、上記触媒の添加量は固形分に対して5質量%以下であることが望ましい。
【0036】
エポキシ樹脂は、プリント配線板や多層プリント配線板の材料として最も多く使用されている材料の一つである。本発明においてエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、2,6−キシレノールダイマーのグリシジルエーテル化樹脂、ビスフェノールF型ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂や4官能型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジアミノフェニルエーテルのグリシジル化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、上記の各エポキシ樹脂を臭素化した難燃性エポキシ樹脂等を用いることができる。このようにエポキシ樹脂にも多くの種類があるが、これらのうち1種のものを単独で用いることができるほか、2種以上のものを混合して用いることができる。
【0037】
ここで、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、少なくともナフトール型エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。その理由は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)を上昇させて耐熱性を高めることができると共に、熱膨張率をさらに低下させることができるからである。
【0038】
また、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、少なくとも液状エポキシ樹脂を用いるのも好ましい。その理由は、粘土層状鉱物と混練するのが容易となるからである。
【0039】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、硬化剤を添加することができる。この硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化用として一般に使用されているものを用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、ジシアンジアミド(Dicy)、アミノ化合物、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、変性ポリフェニレンオキサイド(PPO)等を用いることができる。
【0040】
中でも、数平均分子量が1000〜4000であり、かつフェノール変性したポリフェニレンオキサイドを硬化剤として用いるのが好ましい。その理由は、フェノール変性によって水酸基が導入されたPPOが硬化剤として働いて、熱硬化性樹脂組成物の硬化物のTgを上昇させて耐熱性を高めることができると共に、熱膨張率をさらに低下させることができるからである。フェノール変性したPPOは、例えば、トルエン等の溶媒中にPPOを溶解させ、2,6−キシレノールを加熱溶融させた後、開始剤としてt−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート及びナフテン酸コバルトを添加して加熱反応させることによって調製することができる。ただし、このようにして得られたフェノール変性PPOの数平均分子量が1000未満であると、硬化剤として用いた場合に硬化物のTgが低下するおそれがあり、逆に数平均分子量が4000を超えていると、熱硬化性樹脂組成物の粘度が過度に高くなり成形性が悪化するおそれがあるため好ましくない。
【0041】
また、ビスフェノールA型ノボラックを硬化剤として用いるのも好ましい。その理由は、フェノール官能基(水酸基)を多く含むことにより、硬化物の三次元架橋構造が密となり、これによってTgが上昇し、熱膨張率をさらに低下させることができるからである。なお、硬化剤の添加量は、エポキシ樹脂のエポキシ基数と硬化剤の水酸基数の比が0.7〜1.5であることが好ましい。この比が0.7未満又は1.5を超えると、耐熱性が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0042】
さらに、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、硬化促進剤を添加することができる。硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、イミダゾール類、第3級アミン類、リン化合物、3フッ化ホウ素錯塩類等を用いることができる。この場合、硬化促進剤の添加量は固形分に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0043】
本発明において粘土層状鉱物(クレイ)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、モンモリロナイト、合成マイカ、天然マイカ等を用いることができる。粘土層状鉱物2を構成する個々の粒子は、図4及び図5に示すように、大きさ(長径)1〜10μm、厚み1〜10nm(0.001〜0.010μm)のクレイ層3がナトリウムイオン(Na)等の層間物質を介して積み重なり、層状に形成されている。このような粘土層状鉱物2は無機充填材の1種であるため、熱硬化性樹脂1と混合することによって、熱膨張率を低減できる熱硬化性樹脂組成物を得ることが可能であるが、図1のように粘土層状鉱物2の各クレイ層3を厚み10nm以下(実質上の下限は1nm)の鱗片状に剥離した状態で熱硬化性樹脂1と混合することによって、熱膨張率をさらに低減できる熱硬化性樹脂組成物を得ることが可能となるものである。このように粘土層状鉱物2において層間剥離を生じさせることによって熱膨張率の低減効果を高く得るためには、粘土層状鉱物2として合成マイカを用いるのが好ましい。
【0044】
粘土層状鉱物2の各クレイ層3を厚み10nm以下の鱗片状に剥離するにあたっては、図5のように粘土層状鉱物2の層間に存在しているNa等のイオンを、アミン種等の塩基性有機化合物である有機修飾剤でイオン交換(有機修飾ともいう)することによって行うものである。このイオン交換は、例えば、一般的に行われているゼオライト等の金属イオン交換反応と同様の方法で行うことができる。図2はイオン交換された粘土層状鉱物2の層間を示すものであり、このように層間に有機修飾剤(図2においてR−NH )を介在させることによって、層間にNa等のイオンが存在していたときよりも、層間の相互作用(結合力)を弱くすることができるものである。次いで、このように層間の相互作用が弱くなった粘土層状鉱物2を熱硬化性樹脂1と混練することによって、図1のように熱硬化性樹脂組成物において粘土層状鉱物2の各クレイ層3を鱗片状に剥離した状態にすることができるものである。逆にいえば、層間にNa等のイオンが存在していると層間の相互作用が強いので、有機修飾されていない粘土層状鉱物2を熱硬化性樹脂1と混練しても、粘土層状鉱物2の各クレイ層3を鱗片状に剥離することはできないものである。
【0045】
有機修飾剤としては、特に限定されるものではないが、上記式(1)で表される有機修飾剤や上記式(2)で表されるトリアミン系修飾剤を用いるのが好ましい。
【0046】
式(1)で表される有機修飾剤の具体例としては、ヘキシルアミンヒドロクロライド(n=6)、ドデシルアミンヒドロクロライド(n=12)、ステアリルアミンヒドロクロライド(n=18)等を挙げることができる。式(1)で表される有機修飾剤を用いるのが好ましい理由は、側鎖長(炭素鎖:C2n+1)が直線状に存在すると共に末端にアミノ基が存在する構造において比較的上記の側鎖長が長いことによって、クレイ層3同士を剥離するために乗り越えなければならないエネルギー障壁が十分低くなり、層間距離を広げることができ、層間剥離の状態を比較的容易に作り出すことができるからである。つまり、粘土層状鉱物を有機修飾したときに側鎖長の長さが層間距離に反映されるので、側鎖長の長い有機修飾剤を用いるのが好ましいのである。そして、式(1)で表される有機修飾剤を用いると、Na+C2n+1NH・HCl→C2n+1NH +NaClのようにイオン交換が行われるものである(なお、図2においてR=C2n+1)。
【0047】
一方、式(2)で表されるトリアミン系修飾剤の具体例としては、イミノビスプロピルアミン(n=3)、ビスヘキサメチレントリアミン(n=6)等を挙げることができる。式(2)で表されるトリアミン系修飾剤を用いるのが好ましい理由は、このトリアミン系修飾剤のアミノ基とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の官能基との反応で架橋密度が増大することによって、硬化物の耐熱性をさらに向上させることができるからである。そして、式(2)で表されるトリアミン系修飾剤を用いると、この有機修飾剤の化学構造の中心に位置する二級アミン(−NH−)がイオン交換サイトとなってイオン交換が行われるものである。
【0048】
式(1)で表される有機修飾剤としては、n=6〜18のものを用いる。n=5以下のものは、側鎖長(C2n+1)が短過ぎて、クレイ層3同士を剥離するために乗り越えなければならないエネルギー障壁を下げることができないおそれがあり、逆にn=19以上のものは、可塑的に作用することによって、硬化物の耐熱性を低下させるおそれがある。
【0049】
また、式(2)で表されるトリアミン系修飾剤としては、n=3〜6のものを用いる。n=2以下のものは、側鎖長(−(CH−)が短過ぎて、クレイ層3同士を剥離するために乗り越えなければならないエネルギー障壁を下げることができないおそれがあり、逆にn=7以上のものは、可塑的に作用することによって、硬化物の耐熱性を低下させるおそれがある。
【0050】
さらに、式(2)で表されるトリアミン系修飾剤の片末端又は両末端のアミノ基がアセチル化されたものを有機修飾剤として用いることができる。このようにアセチル化処理を行うことによって、ピラーリング現象(有機修飾剤がクレイ層同士を固定する現象)を防止することができ、層間剥離がさらに容易になるものである。
【0051】
そして、熱硬化性樹脂とイオン交換された粘土層状鉱物とを混練することによって、熱硬化性樹脂組成物を調製することができる。このとき難燃剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。混練方法は一般的な方法でよいが、2本ロールを用いた方法が好適である。粘土層状鉱物の配合量は、熱硬化性樹脂組成物全量に対して3〜95質量%の範囲で任意に設定することができる。しかし、粘土層状鉱物の配合量が3質量%より少ないと、粘土層状鉱物に作用する機械的な剪断力が小さくなって層間剥離の効果が得られないおそれがあり、その結果、熱膨張率の低減効果が得られなくなるおそれがある。逆に粘土層状鉱物の配合量が95質量%より多いと、粉体である粘土層状鉱物が熱硬化性樹脂と混ざり合わなかったり、また熱硬化性樹脂組成物の粘度が上昇して成形性が低下したり、さらには飽和状態(サチル状態)となってイオン交換されていない粘土層状鉱物を配合したのと変わらなくなるおそれがある。
【0052】
また、熱硬化性樹脂組成物を調製するにあたっては、一度に熱硬化性樹脂全量と粘土層状鉱物全量とを混練して行うことができるほか、まず熱硬化性樹脂の一部と粘土層状鉱物全量とを混練し、その後、この混練物に残りの熱硬化性樹脂を加えて再度混練することによって行うこともできる。特に、後者のような混練方法は次のような場合に好適である。すなわち、粘度の低い熱硬化性樹脂と粘度の高い熱硬化性樹脂の両方を用いる場合であり、このような場合にはまず粘度の高い熱硬化性樹脂と粘土層状鉱物全量を混練するものであり、次いでこの混練物に粘度の低い熱硬化性樹脂を加えて混練するものである。このように粘度の高い熱硬化性樹脂をはじめに用いると、粘度の低い熱硬化性樹脂と粘度の高い熱硬化性樹脂を混ぜ合わせたものを一度に用いるよりも、粘土層状鉱物に大きな剪断力を作用させることができ、層間剥離の効果を一層高く得ることができるものである。
【0053】
また、熱硬化性樹脂1とイオン交換された粘土層状鉱物2とを混練するにあたっては、特に30〜120℃の温度下で溶融混練するのが好ましい。このようにすると、図3に示すように粘土層状鉱物2においてクレイ層3間に熱硬化性樹脂1(図3ではエポキシ樹脂)を強制的に挿入させることができ、層間を押し広げて層間剥離を促進させることができるものである。
【0054】
上記のようにして得られた熱硬化性樹脂組成物においては、粘土層状鉱物の各クレイ層がナノメートルオーダーで均一に分散された状態になるハイブリッド化が実現されている。このように熱硬化性樹脂と粘土層状鉱物との間にハイブリッド化が実現されるのは、粘土層状鉱物の層間を予め有機修飾しているからであり、有機修飾していなければ既述のように層間の相互作用が強くて、熱硬化性樹脂と混練しても層間剥離を発生させることはもとより、各クレイ層をナノメートルオーダーで分散させることも非常に困難となるものである。そして本発明においては、熱硬化性樹脂組成物中に粘土層状鉱物の各層が厚み10nm以下の鱗片状に剥離した状態で均一に分散しているので、従来の無機充填材を配合した熱硬化性樹脂組成物よりも、熱膨張率を低減することができるものである。これは逆にいえば、従来と同程度若しくはそれ以上の低熱膨張率化を図るのであれば、無機充填材として用いる粘土層状鉱物の配合量を、より少なくすることができることを意味するものである。そうすると、熱硬化性樹脂組成物の粘度上昇を抑えることができ、成形性の低下を防止することができるものである。
【0055】
なお、熱硬化性樹脂組成物において層間剥離の状況は透過型電子顕微鏡(TEM)やX線回折装置(XRD)により確認することができる。すなわち、熱硬化性樹脂組成物中において、イオン交換していない粘土層状鉱物は、既述の通り、クレイ層が積み重なって層状に形成されているのに対して、イオン交換した粘土層状鉱物は、その層状構造が一部又は全部破壊されており、各クレイ層が分散している。そのため例えば、イオン交換していない粘土層状鉱物を配合した熱硬化性樹脂組成物とイオン交換した粘土層状鉱物を配合した熱硬化性樹脂組成物のそれぞれにX線を当てて、両者の回折強度を比較すると、前者の方は、X線の回折格子面となるクレイ層が積み重なった層状構造を保持した粘土層状鉱物が配合されているので、前者の方が後者よりも回折強度が強くなるのである。よって、前者から得られた回折強度を基準として、後者の強度比を求めれば、層間剥離の状況について知ることができるものである。
【0056】
上記のようにして得た熱硬化性樹脂組成物を溶剤で希釈することによって、熱硬化性樹脂ワニスとして調製することができる。このとき、溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、トルエン、キシレン、ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドン等を用いることができる。溶剤は1種のみを単独で用いるほか、2種以上を混合して用いることもできる。熱硬化性樹脂ワニスにおいて固形分濃度は40〜70質量%であることが好ましい。
【0057】
このようにして調製した熱硬化性樹脂ワニスを基材に含浸し、乾燥機中で50〜180℃の温度範囲で3〜10分間程度乾燥させることによって、半硬化状態(B−ステージ)のプリプレグを作製することができるものである。ここで、基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスクロス、ガラスペーパー、ガラスマット等のガラス繊維布のほか、クラフト紙、リンター紙、天然繊維布、有機繊維布等を用いることができる。また、プリプレグは樹脂分の含有量が25〜80質量%になるように作製するのが好ましい。
【0058】
上記のようにして作製したプリプレグを所定枚数重ねて絶縁基板を形成すると共に、さらにこの絶縁基板の片側又は両側に金属箔を重ね合わせ、これを140〜210℃、0.98〜4.9MPa(10〜50kg/cm)、30〜200分間の条件で加熱加圧して積層成形することによって、プリント配線板に加工するための金属箔張り積層板を製造することができる。金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔等を用いることができる。
【0059】
上記のようにして製造した金属箔張り積層板にサブトラクティブ法等を行って導体パターンを形成することによって、プリント配線板を製造することができる。
【0060】
そして、上記のようにして製造したプリント配線板を内層回路板とし、この内層回路板の片側又は両側にプリプレグを所定枚数積層すると共に、さらにその外側に金属箔を重ね合わせ、これを140〜210℃、0.98〜4.9MPa(10〜50kg/cm)、30〜200分間の条件で加熱加圧成形することによって、多層プリント配線板に加工するための多層積層板を製造することができる。ここで、内層回路板とプリプレグとの間の接着力を高めるため、内層回路板の内層回路を構成する金属箔に対して黒化処理を施しておいてもよい。その後、こうして得られた多層積層板の外層の金属箔をプリント配線加工して導体パターンを形成したりスルーホール加工したりすることによって、多層プリント配線板を製造することができるものである。
【0061】
上記のようにして製造されるプリント配線板や多層プリント配線板にあっては、絶縁基板となるプリプレグを作製する際、基材に含浸させる熱硬化性樹脂組成物に無機充填材である粘土層状鉱物を大量に配合しなくても、熱膨張率を十分に低減することができるものである。そして、低熱膨張率化が図られる範囲内で粘土層状鉱物の配合量を可能な限り少なくしておくことによって、プリント配線板等において絶縁基板同士の層間密着強度や、絶縁基板と金属箔との間の金属箔接着強度を高く維持することができるものであり、また誘電率等の電気特性も良好になるものであり、さらにスルーホール形成時にドリルが摩耗するのを防止することができるものである。
【0062】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
シアネート樹脂(旭チバ株式会社製:商品名「B−10」)100gにオクタン酸亜鉛(ナカライテスク株式会社製)0.1gを添加し、難燃剤としてデカブロモジエフェニルエタン(アルベマール浅野株式会社製:商品名「SAYTEX」)50gを加え、これにヘキシルアミンヒドロクロライド(式(1)で表される有機修飾剤でn=6)を用いて調製した有機修飾マイカとシアネート樹脂(「B−10」)を二軸ロール混練機にて溶融混練した混練物(混練条件:マイカとシアネート樹脂との混練比率をマイカ70質量%とし、ロール温度80℃とした)を添加し、最終固形物でマイカ10質量%になるようにシアネート樹脂組成物を調製した。なお、層間剥離状態はX線回折装置(理学電機工業株式会社製「RAD−rX」)を用いて測定したXRDピーク強度により確認した。その結果を表1に示す。
【0064】
次に、上記組成物をトルエンで希釈し、固形分濃度が50質量%となるようにシアネート樹脂ワニスを調製し、このワニスをEガラスクロス(日東紡績株式会社製:商品名「116E」)に含浸させた後、温度160℃、5分間の条件で加熱乾燥し、溶媒を除去して樹脂含有量44.3質量%のプリプレグを得た。また、プリプレグの端面より樹脂が最大幅で5〜50mm染み出したものを「良」と判定してプリプレグの樹脂流れ性を評価した。その結果を表1に示す。
【0065】
上記のようにして得たプリプレグの1枚の両面に厚さ35μmの銅箔を配して、温度210℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、180分間の成形条件で加熱加圧し、両面銅張積層板を得た。この両面銅張積層板に導体パターンを形成し、銅箔表面に黒化処理を施してコア(内層回路板)とし、このコアを2枚使用して、コアの両面にそれぞれプリプレグを1枚ずつ重ね、最も外側の両側に厚さ18μmの銅箔を重ねて、温度210℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、120分間の成形条件で加熱加圧し、多層プリント配線板用の6層銅張積層板を得た。得られた6層銅張積層板の外層銅箔をエッチングにて除去し、成形性評価用のサンプルとし、さらに100mm×10mmにカットして、内層銅箔の接着力評価用のサンプルとした。また、プリプレグの端面より樹脂が最大幅で5〜50mm染み出したものを「良」と判定して積層板の二次成形性を評価した。また内層銅箔接着力はJIS C 6481に基づいて測定した。これらの結果を表1に示す。
【0066】
また、5枚のプリプレグを重ね、その両側に厚さ18μmの銅箔(ST箔)を重ねて、温度200℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、120分間の成形条件で加熱加圧し、プリント配線板用の両面銅張積層板を得た。得られた両面銅張積層板を用いて100mm×10mmにカットして銅箔接着力用のサンプルを作製し、また、86mm×86mmにカットして誘電率、誘電正接測定用の導体パターンを形成した。また、表面の銅箔をエッチングして除去し、Tg、熱膨張率、絶縁抵抗評価用のサンプルとした。TgはJIS C 6481に基づいて、熱膨張率はJIS C 6481に基づいて、銅箔密着力はJIS C6481に基づいて、絶縁抵抗はJIS C 6481に基づいて測定した。これらの結果を表1に示す。
【0067】
(実施例2)
有機修飾剤をドデシルアミンクロライド(式(1)で表される有機修飾剤でn=12)に変更した以外は、実施例1と同様の条件である。
【0068】
(実施例3)
有機修飾剤をステアリルアミンクロライド(式(1)で表される有機修飾剤でn=18)に変更した以外は、実施例1と同様の条件である。
【0069】
(実施例4)
有機修飾剤をイミノビスプロピルアミン(式(2)で表されるトリアミン系修飾剤でn=3)に変更した以外は、実施例1と同様の条件である。
【0070】
(実施例5)
有機修飾剤をビスヘキサメチレントリアミン(式(2)で表されるトリアミン系修飾剤でn=6)に変更した以外は、実施例1と同様の条件である。
【0071】
(実施例6)
有機修飾剤をアセチル化したイミノビスプロピルアミンに変更した以外は、実施例1と同様の条件である。
【0072】
(実施例7)
有機修飾剤をアセチル化したビスヘキサメチレントリアミンに変更した以外は、実施例1と同様の条件である。
【0073】
(実施例8)
マレイン酸N,N−4,4−ジフェニルメタン−ビス−イミド(三井化学株式会社製:商品名「BMI−S」)100g、4,4−ジアミノジフェニルメタン(東京化成株式会社製)27.7gにジメチルホルムアミドを加え、さらに硬化促進剤としてイミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業株式会社製:商品名「1B2MZ」)0.13gを添加した。上記混練物を90℃で加熱、攪拌し均一な溶液を得た後、これにヘキシルアミンクロライドを用いて調製した有機修飾マイカを加えて溶融混練処理(混練条件:マイカとマレイン酸N,N−4,4−ジフェニルメタン−ビス−イミドとの混練比率をマイカ70質量%)を施し、上記溶液中において最終固形分に対してマイカ10質量%になるように、最終固形分濃度が50質量%になるようにポリイミド樹脂ワニスを調製した。なお、層間剥離状態はX線回折装置(理学電機工業株式会社製「RAD−rX」)を用いて測定したXRDピーク強度により確認した。また攪拌により生じた気泡は減圧することにより脱泡した。
【0074】
上記のポリイミド樹脂ワニスをEガラスクロス(日東紡績株式会社製:商品名「116E」)に含浸させた後、温度50℃、7分間の条件で加熱乾燥し、溶媒を除去して樹脂含有量44.3質量%のプリプレグを得た。また、プリプレグの端面より樹脂が最大幅で5〜50mm染み出したものを「良」と判定してプリプレグの樹脂流れ性を評価した。その結果を表2に示す。
【0075】
上記のようにして得たプリプレグの1枚の両面に厚さ35μmの銅箔を配して、温度210℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、180分間の成形条件で加熱加圧し、両面銅張積層板を得た。この両面銅張積層板に導体パターンを形成し、銅箔表面に黒化処理を施してコア(内層回路板)とし、このコアを2枚使用して、コアの両面にそれぞれプリプレグを1枚ずつ重ね、最も外側の両側に厚さ18μmの銅箔を重ねて、温度210℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、180分間の成形条件で加熱加圧し、多層プリント配線板用の6層銅張積層板を得た。評価は実施例1と同様の方法で行った。結果を表2に示す。
【0076】
また、5枚のプリプレグを重ね、その両側に厚さ18μmの銅箔を重ねて、温度210℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、120分間の成形条件で加熱加圧し、プリント配線板用の両面銅張積層板を得た。その後のプリント配線板、多層プリント配線板の作製と評価は実施例1と同様の方法で行った。結果を表2に示す。
【0077】
(実施例9)
有機修飾剤をドデシルアミンクロライドに変更した以外は、実施例8と同様の条件である。
【0078】
(実施例10)
有機修飾剤をステアリルアミンクロライドに変更した以外は、実施例8と同様の条件である。
【0079】
(実施例11)
有機修飾剤をイミノビスプロピルアミンに変更した以外は、実施例8と同様の条件である。
【0080】
(実施例12)
有機修飾剤をビスヘキサメチレントリアミンに変更した以外は、実施例8と同様の条件である。
【0081】
(実施例13)
有機修飾剤をアセチル化したイミノビスプロピルアミンに変更した以外は、実施例8と同様の条件である。
【0082】
(実施例14)
有機修飾剤をアセチル化したビスヘキサメチレントリアミンに変更した以外は、実施例8と同様の条件である。
【0083】
(実施例15)
エポキシ樹脂の1種であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製:商品名「HP7200H」)50g、難燃性エポキシ樹脂として臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製:商品名「エポトートYDB400」)25g、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製:商品名「BREN S」)25gを用い、硬化剤としてビスフェノールA型ノボラック(ジャパンエポキシレジン株式会社製:商品名「YLH129」)40g及びイミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業株式会社製:商品名「2E4MZ−CN」)0.1gを添加し、ヘキシルアミンクロライドを用いて調製した有機修飾マイカを上記エポキシ樹脂全成分と二軸ロール混練機を用いて溶融混練(混練条件:混練比率をマイカ70質量%とした)を施した混練物を、最終固形物でマイカ20質量%になるように攪拌しながら50℃の熱をかけ、エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、層間剥離状態はX線回折装置(理学電機工業株式会社製「RAD−rX」)を用いて測定したXRDピーク強度により確認した。その結果を表3に示す。
【0084】
次に、上記組成物をトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒で希釈し、固形物濃度50質量%となるようにエポキシ樹脂ワニスを調製し、このワニスをEガラスクロス(日東紡績株式会社製:商品名「116E」)に含浸させた後、温度160℃、5分間の条件で加熱乾燥し、溶媒を除去して樹脂含有量43.6質量%のプリプレグを得た。また、プリプレグの端面より樹脂が最大幅で5〜50mm染み出したものを「良」と判定してプリプレグの樹脂流れ性を評価した。その結果を表3に示す。
【0085】
上記のようにして得たプリプレグの1枚の両面に厚さ35μmの銅箔を配して、温度180℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、120分間の成形条件で加熱加圧し、両面銅張積層板を得た。この両面銅張積層板に導体パターンを形成し、銅箔表面に黒化処理を施してコア(内層回路板)とし、このコアを2枚使用して、コアの両面にそれぞれプリプレグを1枚ずつ重ね、最も外側の両側に厚さ18μmの銅箔を重ねて、温度180℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、120分間の成形条件で加熱加圧し、多層プリント配線板用の6層銅張積層板を得た。評価は実施例1と同様の方法で行った。結果を表3に示す。
【0086】
また、5枚のプリプレグを重ね、その両側に厚さ18μmの銅箔を重ねて、温度180℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、120分間の成形条件で加熱加圧し、プリント配線板用の両面銅張積層板を得た。その後のプリント配線板、多層プリント配線板の作製と評価は実施例1と同様の方法で行った。結果を表3に示す。
【0087】
(実施例16)
有機修飾剤をドデシルアミンクロライドに変更した以外は、実施例15と同様の条件である。
【0088】
(実施例17)
有機修飾剤をステアリルアミンクロライドに変更した以外は、実施例15と同様の条件である。
【0089】
(実施例18)
有機修飾剤をイミノビスプロピルアミンに変更した以外は、実施例15と同様の条件である。
【0090】
(実施例19)
有機修飾剤をビスヘキサメチレントリアミンに変更した以外は、実施例15と同様の条件である。
【0091】
(実施例20)
有機修飾剤をアセチル化したイミノビスプロピルアミンに変更した以外は、実施例15と同様の条件である。
【0092】
(実施例21)
有機修飾剤をアセチル化したビスヘキサメチレントリアミンに変更した以外は、実施例15と同様の条件である。
【0093】
(実施例22)
実施例18に記載の溶融混練処理を行わずに、イミノビスプロピルアミン修飾マイカを最終固形分濃度20質量%にして、実施例18の樹脂系に最終固形分に対して20質量%になるように添加した。その他の条件は実施例18と同様である。
【0094】
(実施例23)
実施例19に記載の溶融混練処理を行わずに、ビスヘキサメチレントリアミン修飾マイカを最終固形分濃度20質量%にして、実施例19の樹脂系に最終固形分に対して20質量%になるように添加した。その他の条件は実施例19と同様である。
【0095】
(実施例24)
実施例20に記載の溶融混練処理を行わずに、アセチル化したイミノビスプロピルアミン修飾マイカを最終固形分濃度20質量%にして、実施例20の樹脂系に最終固形分に対して20質量%になるように添加した。その他の条件は実施例20と同様である。
【0096】
(実施例25)
実施例21に記載の溶融混練処理を行わずに、アセチル化したビスヘキサメチレントリアミン修飾マイカを最終固形分濃度20質量%にして、実施例21の樹脂系に最終固形分に対して20質量%になるように添加した。その他の条件は実施例21と同様である。
【0097】
(実施例26)
実施例15においてエポキシ基数/水酸基数=0.9となるようにビスフェノールA型ノボラックの添加量を変更した以外は、実施例15と同様の条件である。
【0098】
(実施例27)
実施例16においてエポキシ基数/水酸基数=0.9となるようにビスフェノールA型ノボラックの添加量を変更した以外は、実施例16と同様の条件である。
【0099】
(実施例28)
実施例17においてエポキシ基数/水酸基数=0.9となるようにビスフェノールA型ノボラックの添加量を変更した以外は、実施例17と同様の条件である。
【0100】
(実施例29)
実施例18においてエポキシ基数/水酸基数=0.9となるようにビスフェノールA型ノボラックの添加量を変更した以外は、実施例18と同様の条件である。
【0101】
(実施例30)
実施例19においてエポキシ基数/水酸基数=0.9となるようにビスフェノールA型ノボラックの添加量を変更した以外は、実施例19と同様の条件である。
【0102】
(実施例31)
実施例20においてエポキシ基数/水酸基数=0.9となるようにビスフェノールA型ノボラックの添加量を変更した以外は、実施例20と同様の条件である。
【0103】
(実施例32)
実施例21においてエポキシ基数/水酸基数=0.9となるようにビスフェノールA型ノボラックの添加量を変更した以外は、実施例21と同様の条件である。
【0104】
(実施例33)
PPO(日本ジーイープラスチックス株式会社製:商品名「ノリルPX9701」、数平均分子量:14000)100gに2,6−キシレノール(ナカライテスク株式会社製)4gを加熱溶融させた後、開始剤としてt−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(日本油脂株式会社製:商品名「パーブチルI」)3g及びナフテン酸コバルト(ナカライテスク株式会社製)を0.007g添加し加熱反応させることによって、フェノール変性したPPO(数平均分子量:2200)を得た。このようにして得たフェノール変性PPOを硬化剤として用い、ナフトール型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製:商品名「ESN−170」)12.5g、難燃性付与の目的で臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製:商品名「エポトートYDB400」)8.4gにイミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業株式会社製:商品名「2E4MZ−CN」)0.1gを添加し、さらに、ヘキシルアミンクロライドを用いて調製した有機修飾マイカと硬化促進剤以外の「YDB400」とを溶融混練(混練条件:マイカと「YDB400」との混練比率をマイカ50質量%とした)して得た混練物を加え、最終固形物でマイカ20質量%になるようにエポキシ樹脂組成物を調製した。なお、層間剥離状態はX線回折装置(理学電機工業株式会社製「RAD−rX」)を用いて測定したXRDピーク強度により確認した。
【0105】
次に、上記組成物をトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒で希釈し、固形物濃度50質量%となるようにエポキシ樹脂ワニスを調製し、このワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製:商品名「116E」)に含浸させた後、温度160℃、5分間の条件で加熱乾燥し、溶媒を除去して樹脂含有量44.0質量%のプリプレグを得た。また、プリプレグの端面より樹脂が最大幅で5〜50mm染み出したものを「良」と判定してプリプレグの樹脂流れ性を評価した。その結果を表6に示す。
【0106】
上記のようにして得たプリプレグの1枚の両面に厚さ35μmの銅箔を配して、温度200℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、120分間の成形条件で加熱加圧し、両面銅張積層板を得た。この両面銅張積層板に導体パターンを形成し、銅箔表面に黒化処理を施してコア(内層回路板)とし、このコアを2枚使用して、コアの両面にそれぞれプリプレグを1枚ずつ重ね、最も外側の両側に厚さ18μmの銅箔を重ねて、温度200℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、120分間の成形条件で加熱加圧し、多層プリント配線板用の6層銅張積層板を得た。評価は実施例1と同様の方法で行った。結果を表6に示す。
【0107】
また、5枚のプリプレグを重ね、その両側に厚さ18μmの銅箔を重ねて、温度200℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、120分間の成形条件で加熱加圧し、プリント配線板用の両面銅張積層板を得た。その後のプリント配線板、多層プリント配線板の作製と評価は実施例1と同様の方法で行った。結果を表6に示す。
【0108】
(実施例34)
有機修飾剤をドデシルアミンクロライドに変更した以外は、実施例33と同様の条件である。
【0109】
(実施例35)
有機修飾剤をステアリルアミンクロライドに変更した以外は、実施例33と同様の条件である。
【0110】
(実施例36)
有機修飾剤をイミノビスプロピルアミンに変更した以外は、実施例33と同様の条件である。
【0111】
(実施例37)
有機修飾剤をビスヘキサメチレントリアミンに変更した以外は、実施例33と同様の条件である。
【0112】
(実施例38)
有機修飾剤をアセチル化したイミノビスプロピルアミンに変更した以外は、実施例33と同様の条件である。
【0113】
(実施例39)
有機修飾剤をアセチル化したビスヘキサメチレントリアミンに変更した以外は、実施例33と同様の条件である。
【0114】
(実施例40)
実施例36に記載の溶融混練処理を行わずに、イミノビスプロピルアミン修飾マイカを最終固形分濃度20質量%にして、実施例36の樹脂系に最終固形分に対して20質量%になるように添加した。その他の条件は実施例36と同様である。
【0115】
(実施例41)
実施例37に記載の溶融混練処理を行わずに、ビスヘキサメチレントリアミン修飾マイカを最終固形分濃度20質量%にして、実施例37の樹脂系に最終固形分に対して20質量%になるように添加した。その他の条件は実施例37と同様である。
【0116】
(実施例42)
実施例38に記載の溶融混練処理を行わずに、アセチル化したイミノビスプロピルアミン修飾マイカを最終固形分濃度20質量%にして、実施例38の樹脂系に最終固形分に対して20質量%になるように添加した。その他の条件は実施例38と同様である。
【0117】
(実施例43)
実施例39に記載の溶融混練処理を行わずに、アセチル化したビスヘキサメチレントリアミン修飾マイカを最終固形分濃度20質量%にして、実施例39の樹脂系に最終固形分に対して20質量%になるように添加した。その他の条件は実施例39と同様である。
【0118】
(実施例44)
トルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒中に、固形物濃度50質量%になるように、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製:商品名「エポトートYD128」)18g、難燃性付与目的で臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製:商品名「エポトートYDB400」)40g、臭素化ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製:商品名「BRENS」)40g、ビスフェノールA型ノボラック硬化剤(ジャパンエポキシレジン株式会社製:商品名「YLH129」)40g及びイミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業株式会社製:商品名「2E4MZ−CN」)0.1gを添加し、さらにヘキシルアミンクロライドを用いて調製した有機修飾マイカと硬化促進剤以外の全成分とを予め溶融混練(混練条件:マイカと全成分との混練比率をマイカ50質量%とした)して得た混練物を加え、最終固形物でマイカ20質量%になるようにエポキシ樹脂ワニスを調製した。なお、層間剥離状態はX線回折装置(理学電機工業株式会社製「RAD−rX」)を用いて測定したXRDピーク強度により確認した。
【0119】
上記のエポキシ樹脂ワニスをEガラスクロス(日東紡績株式会社製:商品名「116E」)に含浸させた後、温度160℃、5分間の条件で加熱乾燥し、溶媒を除去して樹脂含有量43.0質量%のプリプレグを得た。また、プリプレグの端面より樹脂が最大幅で5〜50mm染み出したものを「良」と判定してプリプレグの樹脂流れ性を評価した。その結果を表8に示す。
【0120】
上記のようにして得たプリプレグの1枚の両面に厚さ35μmの銅箔(ST箔)を配して、温度180℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、180分間の成形条件で加熱加圧し、両面銅張積層板を得た。この両面銅張積層板に導体パターンを形成し、銅箔表面に黒化処理を施してコア(内層回路板)とし、このコアを2枚使用して、コアの両面にそれぞれプリプレグを1枚ずつ重ね、最も外側の両側に厚さ18μmの銅箔(ST箔)を重ねて、温度180℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、180分間の成形条件で加熱加圧し、多層プリント配線板用の6層銅張積層板を得た。評価は実施例1と同様の方法で行った。結果を表8に示す。
【0121】
また、5枚のプリプレグを重ね、その両側に厚さ18μmの銅箔を重ねて、温度180℃、圧力2.94MPa(30kg/cm)、120分間の成形条件で加熱加圧し、プリント配線板用の両面銅張積層板を得た。その後のプリント配線板、多層プリント配線板の作製と評価は実施例1と同様の方法で行った。結果を表8に示す。
【0122】
(実施例45)
有機修飾剤をドデシルアミンクロライドに変更した以外は、実施例44と同様の条件である。
【0123】
(実施例46)
有機修飾剤をステアリルアミンクロライドに変更した以外は、実施例44と同様の条件である。
【0124】
(実施例47)
有機修飾剤をイミノビスプロピルアミンに変更した以外は、実施例44と同様の条件である。
【0125】
(実施例48)
有機修飾剤をビスヘキサメチレントリアミンに変更した以外は、実施例44と同様の条件である。
【0126】
(実施例49)
有機修飾剤をアセチル化したイミノビスプロピルアミンに変更した以外は、実施例44と同様の条件である。
【0127】
(実施例50)
有機修飾剤をアセチル化したビスヘキサメチレントリアミンに変更した以外は、実施例44と同様の条件である。
【0128】
(実施例51)
実施例47に記載の溶融混練処理を行わずに、イミノビスプロピルアミン修飾マイカを最終固形分濃度20質量%にして、実施例47の樹脂系に最終固形分に対して20質量%になるように添加した。その他の条件は実施例47と同様である。
【0129】
(実施例52)
実施例48に記載の溶融混練処理を行わずに、ビスヘキサメチレントリアミン修飾マイカを最終固形分濃度20質量%にして、実施例48の樹脂系に最終固形分に対して20質量%になるように添加した。その他の条件は実施例48と同様である。
【0130】
(実施例53)
実施例49に記載の溶融混練処理を行わずに、アセチル化したイミノビスプロピルアミン修飾マイカを最終固形分濃度20質量%にして、実施例49の樹脂系に最終固形分に対して20質量%になるように添加した。その他の条件は実施例49と同様である。
【0131】
(実施例54)
実施例50に記載の溶融混練処理を行わずに、アセチル化したビスヘキサメチレントリアミン修飾マイカを最終固形分濃度20質量%にして、実施例50の樹脂系に最終固形分に対して20質量%になるように添加した。その他の条件は実施例50と同様である。
【0132】
(比較例1〜5)
比較例1については、実施例1において有機修飾マイカを除き、溶媒(トルエン)の量を変更した以外は、実施例1と同様の条件である。
【0133】
比較例2については、実施例8において有機修飾マイカを除き、溶媒(ジメチルホルムアミド)の量を変更した以外は、実施例8と同様の条件である。
【0134】
比較例3については、実施例29において有機修飾マイカを除き、ビスフェノールA型ノボラックと混合溶媒(トルエンとメチルエチルケトン)の量を変更した以外は、実施例29と同様の条件である。
【0135】
比較例4については、実施例40において有機修飾マイカを除き、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂と混合溶媒(トルエンとメチルエチルケトン)の量を変更した以外は、実施例40と同様の条件である。
【0136】
比較例5については、実施例51において有機修飾マイカを除き、混合溶媒(トルエンとメチルエチルケトン)の量を変更した以外は、実施例51と同様の条件である。
【0137】
なお、各実施例及び比較例のTg、熱膨張率は、TMA測定装置を用いて測定した。
【0138】
【表1】
Figure 2004123987
【0139】
【表2】
Figure 2004123987
【0140】
【表3】
Figure 2004123987
【0141】
【表4】
Figure 2004123987
【0142】
【表5】
Figure 2004123987
【0143】
【表6】
Figure 2004123987
【0144】
【表7】
Figure 2004123987
【0145】
【表8】
Figure 2004123987
【0146】
【表9】
Figure 2004123987
【0147】
表1〜表9にみられるように、各実施例では多層プリント配線板等に要求される各特性を低下させること無しに、低熱膨張率化が可能であることが確認される。
【0148】
また、プリプレグの樹脂流れ性及び積層板の二次成形性については、実施例1〜54及び比較例1〜5ともに「良」であるが、これは、粘土層状鉱物を配合していない比較例1〜5については予想されることであり、実施例1〜54のように粘土層状鉱物を配合しても、比較例1〜5と同様にプリプレグの樹脂流れ性及び積層板の二次成形性について何ら問題が生じないことが確認されたところに意味があるのである。
【0149】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係る熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と粘土層状鉱物とを含有する熱硬化性樹脂組成物において、粘土層状鉱物の層間を有機修飾剤でイオン交換するので、粘土層状鉱物の層間の相互作用が弱まって各層の剥離が促進され、組成物中において各層をナノメートルオーダーで均一に分散させることができ、粘土層状鉱物の配合量がたとえ少量であっても、成形性のほかプリント配線板や多層プリント配線板に要求される特性を低下させることなく、熱膨張率を十分に低減することができるものである。
【0150】
また請求項2の発明は、有機修飾剤として、上記式(1)で表される有機修飾剤を用いるので、比較的長い側鎖長によって粘土層状鉱物における層間距離を広げることができ、組成物中において各層をナノメートルオーダーで均一に分散させることができ、熱膨張率をさらに低減することができるものである。
【0151】
また請求項3の発明は、有機修飾剤として、上記式(2)で表されるトリアミン系修飾剤を用いるので、このトリアミン系修飾剤のアミノ基とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の官能基との反応で架橋密度が増大することによって、硬化物の耐熱性をさらに向上させることができるものである。
【0152】
また請求項4の発明は、有機修飾剤として、上記式(2)で表されるトリアミン系修飾剤をアセチル化したものを用いるので、ピラーリング現象を防止することができ、層間剥離がさらに容易になるものである。
【0153】
また請求項5の発明は、熱硬化性樹脂とイオン交換された粘土層状鉱物とを溶融混練するので、粘土層状鉱物において層間に熱硬化性樹脂を強制的に挿入させることができ、層間剥離を促進させることができるものである。
【0154】
また請求項6の発明は、粘土層状鉱物の各層が厚み10nm以下の鱗片状に剥離するので、無機充填材として用いる粘土層状鉱物の配合量を従来より少なくしても、低熱膨張率化を図ることができるものである。
【0155】
また請求項7の発明は、熱硬化性樹脂として、少なくともシアネート樹脂を用いるので、熱膨張率を低く、耐熱性を高くすることができると共に良好な電気特性を得ることができるものである。
【0156】
また請求項8の発明は、熱硬化性樹脂として、少なくともポリイミド樹脂を用いるので、熱膨張率を低く、耐熱性を高くすることができると共に良好な電気特性を得ることができるものである。
【0157】
また請求項9の発明は、熱硬化性樹脂として、少なくともエポキシ樹脂を用いるので、熱膨張率を低く、耐熱性を高くすることができると共に良好な電気特性を得ることができるものである。
【0158】
また請求項10の発明は、エポキシ樹脂として、少なくともナフトール型エポキシ樹脂を用いるので、硬化物のTgを上昇させて耐熱性を高めることができると共に熱膨張率をさらに低下させることができるものである。
【0159】
また請求項11の発明は、エポキシ樹脂として、少なくとも液状エポキシ樹脂を用いるので、粘土層状鉱物と混練するのが容易となるものである。
【0160】
また請求項12の発明は、数平均分子量が1000〜4000であり、かつフェノール変性したポリフェニレンオキサイドを硬化剤として含有するので、硬化物のTgを上昇させて耐熱性を高めることができると共に熱膨張率をさらに低下させることができるものである。
【0161】
また請求項13の発明は、ビスフェノールA型ノボラックを硬化剤として含有すると共に、エポキシ樹脂のエポキシ基数と硬化剤の水酸基数の比が0.7〜1.5であるので、Tgを上昇させることができると共に熱膨張率をさらに低下させることができるものである。
【0162】
また請求項14に係るプリプレグは、請求項1乃至13のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸し、加熱乾燥して半硬化させるので、低熱膨張率化が図られる範囲内で粘土層状鉱物の配合量を少なくすることによって、積層しても各プリプレグ同士の層間密着強度を高く維持することができるものである。
【0163】
また請求項15に係る金属箔張り積層板は、請求項14に記載のプリプレグを所定枚数積層すると共にこの片側又は両側に金属箔を重ね合わせて加熱加圧成形するので、低熱膨張率化が図られる範囲内で粘土層状鉱物の配合量を少なくすることによって、絶縁基板(プリプレグ)同士の層間密着強度や、絶縁基板と金属箔との間の金属箔接着強度を高く維持することができるものである。
【0164】
また請求項16に係るプリント配線板は、請求項15に記載の金属箔張り積層板に導体パターンを形成するので、低熱膨張率化が図られる範囲内で粘土層状鉱物の配合量を少なくすることによって、絶縁基板(プリプレグ)同士の層間密着強度や、絶縁基板と金属箔との間の金属箔接着強度を高く維持することができるものである。また誘電率等の電気特性も良好になるものであり、さらにスルーホール形成時にドリルが摩耗するのを防止することができるものである。
【0165】
また請求項17に係る多層プリント配線板は、請求項16に記載のプリント配線板の片側又は両側に請求項14に記載のプリプレグを所定枚数積層すると共にさらにその外側に金属箔を重ね合わせて加熱加圧成形するので、低熱膨張率化が図られる範囲内で粘土層状鉱物の配合量を少なくすることによって、絶縁基板(プリプレグ)同士の層間密着強度や、絶縁基板と金属箔との間の金属箔接着強度を高く維持することができるものである。また誘電率等の電気特性も良好になるものであり、さらにスルーホール形成時にドリルが摩耗するのを防止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】粘土層状鉱物の各層が熱硬化性樹脂中に均一に分散した様子を示す説明図である。
【図2】イオン交換された粘土層状鉱物の層間の状態を示す説明図である。
【図3】イオン交換された粘土層状鉱物と熱硬化性樹脂とを溶融混練したときの、粘土層状鉱物の層間の状態を示す説明図である。
【図4】粘土層状鉱物を構成する粒子を示す模式図である。
【図5】粘土層状鉱物を構成する粒子の結晶構造を示す一部拡大した模式図である。

Claims (17)

  1. 熱硬化性樹脂と粘土層状鉱物とを含有する熱硬化性樹脂組成物において、粘土層状鉱物の層間を有機修飾剤でイオン交換して成ることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  2. 有機修飾剤として、下記式(1)で表される有機修飾剤を用いて成ることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 2004123987
  3. 有機修飾剤として、下記式(2)で表されるトリアミン系修飾剤を用いて成ることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 2004123987
  4. 有機修飾剤として、上記式(2)で表されるトリアミン系修飾剤をアセチル化したものを用いて成ることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 熱硬化性樹脂とイオン交換された粘土層状鉱物とを溶融混練して成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 粘土層状鉱物の各層が厚み10nm以下の鱗片状に剥離して成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 熱硬化性樹脂として、少なくともシアネート樹脂を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 熱硬化性樹脂として、少なくともポリイミド樹脂を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  9. 熱硬化性樹脂として、少なくともエポキシ樹脂を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  10. エポキシ樹脂として、少なくともナフトール型エポキシ樹脂を用いて成ることを特徴とする請求項9に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  11. エポキシ樹脂として、少なくとも液状エポキシ樹脂を用いて成ることを特徴とする請求項9に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  12. 数平均分子量が1000〜4000であり、かつフェノール変性したポリフェニレンオキサイドを硬化剤として含有して成ることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  13. ビスフェノールA型ノボラックを硬化剤として含有すると共に、エポキシ樹脂のエポキシ基数と硬化剤の水酸基数の比が0.7〜1.5であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  14. 請求項1乃至13のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸し、加熱乾燥して半硬化させて成ることを特徴とするプリプレグ。
  15. 請求項14に記載のプリプレグを所定枚数積層すると共にこの片側又は両側に金属箔を重ね合わせて加熱加圧成形して成ることを特徴とする金属箔張り積層板。
  16. 請求項15に記載の金属箔張り積層板に導体パターンを形成して成ることを特徴とするプリント配線板。
  17. 請求項16に記載のプリント配線板の片側又は両側に請求項14に記載のプリプレグを所定枚数積層すると共にさらにその外側に金属箔を重ね合わせて加熱加圧成形して成ることを特徴とする多層プリント配線板。
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