JP2004123962A - 塩化ビニル樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塩化ビニル樹脂100重量部に対して、平均粒径が0.05〜0.5μmの水和化合物を1〜20重量部混合して溶融成形した塩化ビニル樹脂成形体とする。平均粒径が0.05〜0.5μmの水和化合物は、その粒径が可視光線の波長と近似し、光が大幅に屈折することがないので、透光性を有する成形体を得ることができ、しかも、火災時に昇温すると含水する水を放出するので、成形体の難燃性が高められる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性を有する塩化ビニル樹脂成形体、特に透光性塩化ビニル樹脂体に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル樹脂成形体は、機械的強度及び耐食性を有し、安価で、成形性に富んだ樹脂として、各種の用途に使用されている。そして、塩素を有しているので他の樹脂に比べて難燃性を有し、自己消火性樹脂としても知られている。しかし、この樹脂を使用した成形体を半導体製造装置や液晶製造装置の一部として使用し、火災が生じると、熱により該成形体が発煙しながら熱分解し、塩素ガスや塩化水素ガスなどの腐食性ガスを発生し、該腐食性ガスが上記製造装置に悪影響を及ぼす。又600℃以上の高温下では燃焼を継続し、他装置への着火源として作用することから、最近さらに難燃性(発煙性及び不燃焼性)を向上させることが求められている。本出願人も、塩化ビニル成形体の難燃性を更に向上させた発明をなした(例えば、特許文献1参照。)。この発明は、塩化ビニル樹脂に腐食性ガスの発生を低減させるタルク、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムなどの無機物を添加してなるものである。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−182909号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記無機物はその粒径が大きく、例えば水酸化マグネシウムにあってはその粒径が約1.0μmと大きいので、不透明の樹脂成形体しか得ることができなかった。また、無機物の添加量を多くしないと難燃性を有する成形体にすることができなかった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、透光性を有し且つ難燃性を向上させた塩化ビニル樹脂成形体を提供することを主な目的とする。また、少ない添加剤量で難燃性を有する塩化ビニル樹脂成形体を提供することも目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そのため、本発明に係る塩化ビニル樹脂成形体は、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、平均粒径が0.05〜0.5μmの水和化合物を1〜20重量部混合して溶融成形して透光性成形体としてなることを特徴とするものである。
【0007】
そして、塩化ビニル樹脂の屈折率と水和化合物の屈折率との相違を5%以内にすることが好ましく、また、水和化合物が水酸化マグネシウムであることが好ましく、その屈折率は1.53〜1.58であることが好ましい。さらに、塩化ビニル樹脂成形体の厚さ5mmにおける全光線透過率が60%以上で、ヘイズ値が50%以下であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の他の塩化ビニル樹脂成形体は、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、平均粒径が0.05〜0.5μmの水和化合物を1〜10重量部、酸化チタンを1〜10重量部混合して溶融成形してなることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、水和化合物の平均粒径が0.05〜0.5μmと非常に小さな粒径であるので、粒径が可視光線の波長に近似し、光が樹脂と水和化合物との界面で大幅に屈折されることがなく、透光性を有する成形体を得ることができる。そして、当該水和化合物を1〜20重量部混合しているので、火災時に昇温すると含水する水を放出して燃焼速度や昇温速度を遅くし、その結果、発熱量を低下させ、難燃性を高める。
【0010】
そして、塩化ビニル樹脂と水和化合物との屈折率の差が5%以内であると、界面での屈折が少なくなり透光性が一層向上し良好な全光線透過率とヘイズ値を保持することができる。
【0011】
さらに、水和化合物が水酸化マグネシウムであると、屈折率を塩化ビニル樹脂の屈折率である1.540〜1.554に合わせることが比較的容易で、屈折率を1.53〜1.58にすることで透光性を良好に保つことができる。
【0012】
本発明の他の塩化ビニル樹脂成形体は、水和化合物に加えて酸化チタンによる難燃効果が相乗的に作用し、これらの添加量を少なくしても十分な難燃性を有するので、成形体の機械的強度の低下を抑えることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する塩化ビニル樹脂は、塩素化度が約56.8%の通常の塩化ビニル樹脂の他に、塩素化度がこれより高い57〜74%の塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂にエチレンや酢酸ビニル等を共重合させた共重合樹脂などが、単独で、或いはこれらを適宜組み合わせて使用される。通常の塩化ビニル樹脂は、これらのなかでも耐薬品性が良好で、透明性も良く、加工性も良好で、安価であるので、特に優れた透明性を有する成形体を得るのに好ましく用いられる。
【0014】
また、塩素化塩化ビニル樹脂は、耐熱性が良好で、難燃性にも優れていて、少量の水和化合物の添加で難燃性を得ることができるので、特に優れた難燃性を有する成形体を得るのに好ましく用いられる。さらに、上記の共重合樹脂は加工性に優れた成形体を得るのに好ましく用いられる。更に、これらの樹脂を組み合わせて混合した混合樹脂、特に通常の塩化ビニル樹脂と塩素化塩化ビニル樹脂とを混合して平均塩素化度を57〜62とした混合樹脂は、難燃性と透明性とに優れた成形体を得るのに好ましく用いられる。従って、成形体に要求される品質、機能に応じて、適宜樹脂を選択して使用することが好ましい。
【0015】
これらの塩化ビニル樹脂には、成形に必要な錫系や鉛系の熱安定剤、滑剤、加工助剤、補強剤、抗酸化剤、顔料などの添加剤が必要に応じて添加されることは勿論のことであるが、その他に平均粒径が0.05〜0.5μmの水和化合物を、塩化ビニル樹脂100重量部に対して1〜20重量部添加し均一に混合している。この水和化合物としては、金属系水和化合物が用いられるが、特に水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、石膏などの結晶水を含有する水酸化アルカリ土類金属が好ましく用いられる。
【0016】
この水和化合物は、塩化ビニル樹脂成形体が火災などに遭遇し熱せられると、分解して水を放出し、その際の吸熱反応により燃焼速度ないし昇温速度が低くなり、塩化ビニル樹脂の発熱を低下させるので、その結果、難燃性を有することとなる。さらに、分解後は酸化物として残るので、塩化ビニル樹脂の量を少なくでき難燃性を高めるのに役立つ。
【0017】
そのなかでも、水酸化アルカリ土類金属は水を結晶水として含み、粉粒体とてして得ることができるので、塩化ビニル樹脂に均一に混合でき透明性の成形体を得るのに適している。特に、水酸化マグネシウムは平均粒径が0.05〜1.0μmと小さく、屈折率も塩化ビニル樹脂の1.540〜1.554に近接した1.55〜1.58を有するので、調整することが比較的容易であり、透光性樹脂成形体を製造するのに有用である。特に、平均粒径が0.05〜0.5μmで屈折率を1.53〜1.58に調整した水酸化マグルシウムは好ましく用いられる。また、水酸化アルミニウムは難燃性の付与を良好に行えるので、良好な難燃性成形体を製造するのに有効である。水酸化カルシウムは難燃性付与の他に、有害ガスを捕捉する優れた性質があり、成形体から発生する塩化水素ガス等を捕捉できるので、両機能を満足する成形体を得るうえで好ましく用いられる。これらの水酸化アルカリ土類金属の好ましい添加量は5〜15重量部である。
【0018】
屈折率に関し、塩化ビニル樹脂はその塩素化度により屈折率が異なり、約1.540〜1.554の範囲にある。例えば、塩素化度が56.8%の塩化ビニル樹脂の屈折率は約1.540であり、塩素化度が64.7%の塩化ビニル樹脂の屈折率は約1.547であり、塩素化度が70.0%の塩化ビニル樹脂の屈折率は1.554である。従って、成形体に使用する樹脂に合わせて水和化合物の屈折率を調整する必要がある。
【0019】
全光線透過率が60%以上で、ヘイズ値が50%以下である透光性を有する塩化ビニル樹脂成形体を得るためには、熱安定剤としては錫系安定剤を使用する。そして、水和化合物としては平均粒径が0.05〜0.5μmで、塩化ビニル樹脂の屈折率との相違が5%以内である化合物を使用することが好ましい。塩化ビニル樹脂の屈折率は、前記のように約1.540〜1.554であるため、この水和化合物の屈折率をその5%以内である1.463〜1.632にすると、塩化ビニル樹脂と水和化合物との界面での屈折が少なく、透明性が向上する。好ましい屈折率の範囲は、塩化ビニル樹脂との相違が2%以内である1.509〜1.585である。より好ましくは、屈折率1.53〜1.58を持つ水酸化マグネシウムである。
【0020】
また、水酸化マグネシウムに酸化亜鉛やホウ素化合物やシリコン化合物等を被覆していると、それらの被覆剤を調整することにより屈折率の調整を容易に行なうことができ、その屈折率を塩化ビニル樹脂の5%以内である1.463〜1.632、特に2%以内である1.509〜1.585、更に1.53〜1.58にすることができるうえ、酸化亜鉛やホウ素化合物やシリコン化合物が難燃性に寄与するため、成形体の難燃効果も向上し、望ましく用いられる。
【0021】
さらに、これらの被覆材の表面を表面処理して樹脂への分散を良好にすることもできる。表面処理剤としては、シランカップリング剤や脂肪族が用いられる。
【0022】
従って、水和化合物として、屈折率が1.53〜1.58で、粒径が0.05〜0.5μmである水酸化マグネシウムを塩化ビニル樹脂に1〜20重量部添加すると、難燃性を有する透光性塩化ビニル樹脂成形体を得ることができる。
【0023】
また、これらの塩化ビニル樹脂配合物に酸化チタンを1〜10重量部添加することより、酸化チタンの隠蔽作用により成形体を不透明にすることが出来る。この酸化チタンには難燃作用が兼ね備わっているので、水和化合物の難燃作用との相乗作用により一層難燃性を発揮する。そのため、水和化合物の添加量を1〜10重量部に減少させることができ、成形体の衝撃強度や引張り強度などの機械的強度の低下を大幅に抑えることができる。
【0024】
上記のような各塩化ビニル樹脂成形体は、樹脂と水酸化マグネシウムと熱安定剤などの添加物を均一に混合した配合物でカレンダーシートを作成し、これを複数枚重ね合わせて熱圧プレスして積層一体化することにより容易に製造できる。また、上記配合物を押出し成形することによっても容易に製造することができる。なお、本発明の塩化ビニル樹脂成形体の表面に、水和化合物等の無機物を含有しない薄い塩化ビニル樹脂層を設けた積層体にすることもできる。
【0025】
【実施例】
以下実施例に基づいて具体的に説明する。
【0026】
(実施例1〜5)
塩素化度が56.8%の塩化ビニル樹脂100重量部に対して、錫系熱安定剤を3重量部、滑剤を1重量部、加工助剤を1重量部、補強剤を3重量部それぞれ添加した配合物に、粒径が0.1μmの水酸化マグネシウムを2重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部それぞれ添加し均一に混合し、厚さ0.5mmのカレンダーシートを作成した。これを10枚重ねて熱圧して、厚さ5mmのプレートを作成した。これらを実施例1、2、3、4、5とする。
【0027】
これらの実施例1〜5のプレートの全光線透過率、ヘイズ値をJIS K7361に基づき、また機械的強度をJIS K−7111に基づき、更に難燃性をISO5660に準拠したコーンカロリーメーターにより最大発熱速度を測定した。その結果を表1に記載する。なお、最大発熱速度は数値が小さいほど、より難燃性であることを示す。
【0028】
(実施例6〜10)
塩素化度が約58.0%の塩素化塩化ビニル樹脂100重量部に対して、錫系熱安定剤を3重量部、滑剤を1.5重量部、加工助剤を2重量部、補強剤を5重量部それぞれ添加した配合物に、実施例1で使用した水酸化マグネシウムを2重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部それぞれ添加し均一に混合し、厚さ0.5mmのカレンダーシートを作成した。これを10枚重ねて熱圧して、厚さ5mmのプレートを作成した。これらを実施例6、7、8、9、10とする。
【0029】
これらの実施例6〜10のプレートについて、実施例1と同様にして全光線透過率、ヘイズ値、機械的強度、難燃性を求めた。その結果を表1に併記した。
【0030】
(実施例11)
実施例6で使用した塩素化塩化ビニル樹脂に代えて塩素化度が60.5%の塩素化塩化ビニル樹脂を使用した以外は同じ添加剤を同量配合した配合物を作成し、これに実施例1で使用した水酸化マグネシウムを10重量部添加した以外は、実施例1と同様にしてプレートを作成し、これを実施例11とした。
【0031】
この実施例11のプレートについても、実施例1と同様にして全光線透過率、ヘイズ値、機械的強度、難燃性を求めた。その結果を表1に併記した。
【0032】
(比較例1〜3)
実施例1、実施例6、実施例11で使用した配合物(水酸化マグネシウムを含まない配合物)を用いて厚さ0.5mmのカレンダーシートを作成し、これを10枚重ねて熱圧して、厚さ5mmのプレートを作成した。これらを比較例1、2、3とする。
【0033】
これらの比較例1〜3のプレートについて、実施例1と同様にして全光線透過率、ヘイズ値、機械的強度、難燃性を求めた。その結果を表1に併記した。
【0034】
【表1】
【0035】
この表1より、実施例1〜11は比較例1〜3に比べて、光学特性及び機械的強度では劣るものの、最大発熱速度は小さな値を示し、十分難燃性を有することがわかる。特に、水酸化マグネシウムを10重量部以上添加した実施例3、4、5、及び実施例8、9、10は、比較例1及び比較例2の最大発熱速度が約半分以下となっており、十分な難燃性を有している。一方、光学特性は、水酸化マグネシウムの添加量が増加すると低下しているが、10重量部以下では全光線透過率が50%以上で、ヘイズ値が50%以下であるので、十分透光性樹脂板として実用に耐えるプレートであることがわかる。これらのことより、水酸化マグネシウムを用いて、透光性を有する難燃性樹脂成形体を得るためには、その添加量を5〜15重量部にすれば好ましいことがわかる。
【0036】
また、塩化ビニル樹脂は、その塩素化度が高くなると光学特性も難燃性も良くなっている。しかし、塩素化塩化ビニル樹脂は、塩素化度が高くなると耐薬品性が悪くなり、またコストもアップするので、低コストの塩化ビニル樹脂成形体を得ることができない。実施例3と比較例3とを対比すると、実施例3は光学特性では劣っているが、難燃性で優れており、塩素化度が低い樹脂を使用しても水酸化マグネシウムを添加することで、高塩素化度の樹脂と同等の機能を有することがわかる。従って、塩素化度が56.8%の通常の塩化ビニル樹脂を使用し、水酸化マグネシウムを5〜15重量部添加すれば、低価格の難燃性塩化ビニル樹脂成形体を得ることができる。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、塩化ビニル樹脂に平均粒径が0.05〜0.5μmの水和化合物を1〜20重量部混合して溶融成形しているので、難燃性と透光性を具備した成形体を得ることができる。該水和化合物の屈折率を塩化ビニル樹脂の5%以内にすると、塩化ビニル樹脂と水和化合物との界面での屈折が少なく、透明性がさらに向上する。
【0038】
水和化合物として水酸化マグネシウムを用いると、その屈折率を調整し易く、1.53〜1.58にすることができるので、より透明性が良好になる。更に、塩化ビニル樹脂に水酸化マグネシウムを1〜10重量部、酸化チタンを1〜10重量部配合することにより、この水酸化マグネシウムの添加量を少なくしても難燃性を有する不透明成形体を得ることができ、機械的強度を保持した成形体を得ることができる。
Claims (6)
- 塩化ビニル樹脂100重量部に対して、平均粒径が0.05〜0.5μmの水和化合物を1〜20重量部混合して溶融成形してなることを特徴とする透光性塩化ビニル樹脂成形体。
- 塩化ビニル樹脂の屈折率と水和化合物の屈折率との相違が5%以内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透光性塩化ビニル樹脂成形体。
- 水和化合物が水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透光性塩化ビニル樹脂成形体。
- 水和化合物が水酸化マグネシウムであり、その屈折率が1.53〜1.58であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透光性塩化ビニル樹脂成形体。
- 樹脂成形体の厚み5mmでの全光線透過率が60%以上、ヘイズ値が50%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透光性塩化ビニル樹脂成形体。
- 塩化ビニル樹脂100重量部に対して、平均粒径が0.01〜0.5μmの水和化合物を1〜10重量部、酸化チタンを1〜10重量部混合して溶融成形してなることを特徴とする塩化ビニル樹脂成形体。
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Cited By (2)
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CN101775183A (zh) * | 2010-02-11 | 2010-07-14 | 天津宏茂塑胶有限公司 | 低毒白光贴合水晶板及其制作方法 |
JP2014534909A (ja) * | 2011-09-30 | 2014-12-25 | スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー | 低い総燃焼熱を有する化粧フィルム |
-
2002
- 2002-10-04 JP JP2002291951A patent/JP2004123962A/ja active Pending
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