JP2004123922A - 光伝送路形成用材料、光伝送路および光伝送路の製造方法 - Google Patents
光伝送路形成用材料、光伝送路および光伝送路の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光伝送路形成用材料、光伝送路および光伝送路の製造方法に係り、特にフォトクロミック材料を用いた、容易に光伝送路を形成することのできる光伝送路形成用材料、それを用いて作製される光伝送路およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光硬化性樹脂溶液を利用して光ファイバ先端に光伝送路を形成する技術が注目されている。このようなものとしては、例えば次のようなものが挙げられる。
【0003】
まず、光ファイバの端を例えばフッ素系モノマーからなる光硬化性樹脂溶液に漬ける。そして、その溶液を硬化させる波長の光をその光ファイバ先端から出射させる。例えば、紫外線領域に近い波長あるいは短波長レーザ光を照射させ、その先端部分にある光硬化性樹脂溶液を光重合反応によって硬化させる。そして、出射端にはそのパワ分布に従って所謂コア部が形成される。コア部が形成されると、上記光はさらに先方に伝搬され、次々とコア部を形成し、結果として光伝送路が形成される。
【0004】
そして、上記光硬化性樹脂溶液から取り出し、洗浄等により残存した光硬化性樹脂溶液を取り除く。次に、再び透光性樹脂をコーティングする。これは、コア面を被覆し、塵や傷から保護する目的である。そして最終の第5工程として、形成されたコア部の先端面を研磨することにより光伝送路の出射面を形成する(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、光伝送路の他の形成方法としては、例えば光硬化性樹脂溶液に所定波長の光を導入し光軸方向に硬化させることによって入射口から連続した光伝送路を作製するにあたり、光硬化性樹脂溶液を第1の光硬化性樹脂溶液とその第1の光硬化性樹脂溶液より硬化開始波長が短い第2の光硬化性樹脂溶液との混合溶液とし、まず第1の光硬化性樹脂溶液のみを硬化させる波長帯の光ビームを入射させて軸状のコア部を作製し、次いで混合溶液の周囲より第1および第2の両光硬化性樹脂溶液を硬化させる波長帯の光を照射させ、コア部周囲にクラッド部を作製し、コア部の屈折率がクラッド部の屈折率より大である光伝送路を形成する方法が挙げられる(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−165311号公報
【特許文献2】
特開2000−347043公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したような光伝送路の形成方法においては工程数が多く、また複雑であるためより簡単に光伝送路を形成する方法が求められている。また、光伝送路の光伝送損失を低減することも求められている。
【0008】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであって、容易に光伝送路を形成でき、かつ光伝送路の光伝送損失の低減が可能な光伝送路形成用材料、それを用いて作製される光伝送路、およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の光伝送路形成用材料は、主として下記化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマー
【化5】
(但し、mは1以上の整数を示し、R1およびR2は水素原子、1価の炭化水素基、または、炭素原子もしくは水素原子の一部が酸素、窒素および硫黄の中から選択された原子で置換された1価の置換炭化水素基を示す)
からなることを特徴とする。
【0010】
本発明の光伝送路は、主として下記化学式(2)で示されるフォトクロミックポリマー
【化6】
(但し、mは1以上の整数を示し、R1およびR2は水素原子、1価の炭化水素基、または、炭素原子もしくは水素原子の一部が酸素、窒素および硫黄の中から選択された原子で置換された1価の置換炭化水素基を示す)
からなることを特徴とする。
【0011】
前記光伝送路は、例えば少なくとも1組の対向して配置された光ファイバ間、光導波路間または光ファイバと光導波路間に配置されて用いられるものである。
【0012】
本発明の光伝送路の製造方法は、基板上に主として下記化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーからなる溶液を塗布する工程と、
【化7】
(但し、mは1以上の整数を示し、R1およびR2は水素原子、1価の炭化水素基、または、炭素原子もしくは水素原子の一部が酸素、窒素および硫黄の中から選択された原子で置換された1価の置換炭化水素基を示す)
前記基板を熱処理し、前記化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーを下記化学式(2)で示されるフォトクロミックポリマーとする工程と
【化8】
(但し、mは1以上の整数を示し、R1およびR2は水素原子、1価の炭化水素基、または、炭素原子もしくは水素原子の一部が酸素、窒素および硫黄の中から選択された原子で置換された1価の置換炭化水素基を示す)
を具備することを特徴とする。
【0013】
前記塗布工程において、前記主として化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーからなる溶液は、例えば少なくとも1組の対向して配置された光ファイバ間、光導波路間または光ファイバと光導波路間に塗布されて用いられる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。
【0015】
本発明の光伝送路は主として下記化学式(2)で示されるフォトクロミックポリマーからなるものである。
【化9】
(但し、mは1以上の整数を示し、R1およびR2は水素原子、1価の炭化水素基、または、炭素原子もしくは水素原子の一部が酸素、窒素および硫黄の中から選択された原子で置換された1価の置換炭化水素基を示す)
【0016】
上記化学式(2)で示されるフォトクロミックポリマーは、光が照射されていない状態ではトランス体となっており、光が照射されると下記化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックポリマーとなる。
【0017】
【化10】
(但し、mは1以上の整数を示し、R1およびR2は水素原子、1価の炭化水素基、または、炭素原子もしくは水素原子の一部が酸素、窒素および硫黄の中から選択された原子で置換された1価の置換炭化水素基を示す)
【0018】
すなわち、上記化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマーと化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックポリマーとの関係を示すと、以下のようになる。
【化11】
【0019】
式中、左側に示された化合物は化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマーであり、右側に示された化合物は化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックポリマーである。
【0020】
光が照射されていない場合には左側の化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマーの状態となっており、これに光が照射されると右側の化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックポリマーへと変化する。また、光の照射を止めると、右側の化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックポリマーから再び左側の化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマーへと戻る。
【0021】
本発明の光伝送路では、主として上記化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマーを用いることにより、容易に光伝送路を形成することができるとともに、光伝送損失も低減させることができる。本発明の光伝送路においては、例えば照射させる光の波長を750〜900nmの範囲とすることが好ましい。
【0022】
上記したようなフォトクロミックポリマーを利用した本発明の光伝送路は例えば光ファイバ間、光導波路間または光ファイバと光導波路間の接続部材として用いることができる。本発明の光伝送路を光ファイバ間の接続部材として用いた一例を図1〜図3に示す。図1は接続構造の外観を示したものである。図2および図3は接続構造の断面を示したものであり、図2は光ファイバに光を入射させていないときの状態を示したものであり、図3は光ファイバに光を入射させたときの状態を示したものである。
【0023】
図1に示されるように、本発明の光伝送路1は、例えば対向する光ファイバ2、3間に配置して用いられるものである。このようなものにおいて、図2に示されるように、光ファイバ2に光を入射させていないときには、光伝送路1は全体が化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマーの状態となっている。
【0024】
そして、図3に示されるように光ファイバ2に光を入射させたときには、光ファイバ2に入射された光が光伝送路1に到達し、光伝送路1の光が入射した部分が化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマーの状態から化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックポリマーの状態へと変化する。
【0025】
光伝送路1のうち光が入射した部分、すなわち化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックポリマーの屈折率は、光が入射していない部分である化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマーの屈折率よりも高いため、化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックポリマーの部分がいわゆるコア部となり、光が照射されていない部分はいわゆるクラッド部となる。このため、一方の光ファイバ2に入射された光は、光伝送路1のコア部を通過し、他方の光ファイバ3へと伝送されることとなる。
【0026】
また、光ファイバ2への光の入射を止めると、光伝送路1のうちコア部となっている化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックポリマーは、再び化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマーへと戻り、光伝送路1は全体が化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマーからなるものとなる。
【0027】
上記したように、本発明の光伝送路においては、光を照射するだけで容易に光を伝送することができる。また、光を照射したときにだけいわゆるコア部が形成されるため、さまざまな接続構造に応用することができる。次に、本発明の光伝送路の他の実施形態について説明する。
【0028】
図4は、本発明の光伝送路1に2組の対向する光ファイバを光軸が交差するようにして接続したものである。すなわち、本発明の光伝送路1を正方形の平板状とした場合、周囲の4辺に、光ファイバ2と光ファイバ3、光ファイバ4と光ファイバ5とが対向するように配置し、かつそれぞれの光軸が交差するようにして配置した接続構造としたものである。
【0029】
このような接続構造において、図5に示されるように、光ファイバ2、3、4、5のいずれにも光を入射させないときには、光伝送路1にいわゆるコア部が形成されることはなく、光伝送路1は全てが上記化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマーの状態となっている。
【0030】
そして、図6に示されるように、2組の光ファイバのうち、一方の組、例えば光ファイバ2に光を入射させると、伝送路1中の光ファイバ2の光軸に沿った部分が化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックポリマーとなり、この部分がいわゆるコア部となる。このため、一方の光ファイバ2に入射された光は、光伝送路1のコア部を通過し、他方の光ファイバ3へと伝送されることとなる。
【0031】
また、図7に示されるように、この光ファイバ2に光を入射させるのを止め、他方の組である光ファイバ4に光を入射させると、今度は光伝送路1において光ファイバ4の光軸に沿っていわゆるコア部が形成される。このため、一方の光ファイバ4に入射された光は、光伝送路1のコア部を通過し、他方の光ファイバ5へと伝送されることとなる。
【0032】
このように本発明の光伝送路は、光が入射した部分に、光が入射したときにだけコア部が形成されるものである。このため、例えば上記したように複数の組の光ファイバが接続されていて、これらに同時に光を入射させたときにはそれらの光軸が交差するような場合であっても、一時期に1組の光ファイバ対にだけ光を入射させるようにすることで、1つの伝送路を複数の組の光ファイバで共有することができ、複数の組の光ファイバの接続を1つの伝送路で行うこともできる。
【0033】
また、複数の組の光ファイバを接続する場合であっても、それらの光軸が交差しない場合には、それぞれの組の光ファイバに自由に光を入射させて使用することができるのはいうまでもない。
【0034】
次に、本発明の光伝送路形成用材料について説明する。
【0035】
本発明の光伝送路形成用材料は主として以下の化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーからなるものである。
【化12】
(但し、mは1以上の整数を示し、R1およびR2は水素原子、1価の炭化水素基、または、炭素原子もしくは水素原子の一部が酸素、窒素および硫黄の中から選択された原子で置換された1価の置換炭化水素基を示す)
【0036】
上記化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーにおいては、mは1以上の整数であれば特に制限されるものではないが、好ましくは1〜6、更に好ましくは1、2である。
【0037】
また、R1およびR2は水素原子、1価の炭化水素基、または、炭素原子もしくは水素原子の一部が酸素、窒素および硫黄の中から選択された原子で置換された1価の置換炭化水素基であればよいが、水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基であればより好ましく、水素原子またはメチル基であればなお好ましい。なお、化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーから製造される化学式(2)や化学式(3)で示されるフォトクロミックポリマーについても同様である。
【0038】
上記化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーの合成方法について、R1:CH3、R2:CH3、m=2とした場合の合成方法を例に挙げて説明する。
【0039】
【化13】
【0040】
まず、上記化学式(4)で示される化合物を用意する。この化合物自体は公知の製造法にて製造することができる。例えば、chemist.and Industory,1978.NO3.193頁、BEILSTEIN 24, 417頁等を参照して製造することができる。
【0041】
この化学式(4)で示される化合物を含むジクロロメタン溶液に炭酸カリウムを懸濁させ、次いでヨウ化メチルを滴下し、3時間還流後、反応溶液をセライト濾過後、濾液を減圧下留去し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、化学式(5)で示される化合物を得る。
【0042】
この化学式(5)で示される化合物のジクロロメタン溶液に炭酸カリウムを懸濁させ、次いでブロモ酢酸エチルを滴下し、還流後、反応溶液をセライト濾過後、濾液を減圧下留去し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、化学式(6)で示される化合物を得る。
【0043】
この化学式(6)で示される化合物のテトラヒドロフラン溶液に、0℃下、水素化リチウムアルミニウムを加え、室温で3時間攪拌後、水を加えた後、酢酸エチルで抽出する。抽出物を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥する。酢酸エチルを減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、化学式(7)で示される化合物を得る。
【0044】
この化学式(7)で示される化合物、メタクリル酸および4−ジメチルアミノピリジンのジクロロメタン溶液に、0℃下、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドのジクロロメタン溶液を滴下し、室温で3時間攪拌後、反応溶液をセライト濾過後、濾液を減圧下留去し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、上記化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーを得ることができる。
【0045】
本発明の光伝送路形成用材料では、上記化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーに加えて、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤や、粘度を調整するためのアセトン等の溶媒を必要に応じて添加することができる。重合開始剤はフォトクロミックモノマーに対して0.005〜0.2当量とすることが好ましい。また、本発明の目的に反しない範囲において、粘度調整剤等を添加しても構わない。
【0046】
次に、本発明の光伝送路の製造方法について、図8〜11を参照して説明する。
【0047】
まず、図8に示すように、光伝送路を形成するための基板6を用意し、この基板6上に所定の間隔を設けて光ファイバ2、3を対向配置する。光ファイバ2、3は、光軸が合うように配置する。この際、対向配置させるものの組合せは特に限定されるものではなく、例えば光導波路どうし、あるいは光ファイバと光導波路とを対向配置させてもよい。
【0048】
基板としては、例えばSi基板、金属基板、ガラス基板、セラミックス基板、プラスチック基板等を用いることができる。基板には光ファイバや光導波路を配置し位置あわせをするための溝が形成されていれば好ましく、光ファイバや光導波路はこの溝にはめ込まれるようにして配置されることが好ましい。基板に設けられる溝の断面形状はV字状、U字状等の断面形状が挙げられるが、光ファイバまたは光導波路を確実に位置決めできるものであれば溝の形状は特に制限されるものではない。
【0049】
光ファイバは、例えば石英を主材料とする石英系光ファイバ、多成分系ガラスファイバ、プラスチック光ファイバ等からなるものである。多成分系ガラスファイバとしては、例えば酸化物ガラスからなる酸化物多成分ガラスファイバ、フッ化ガラスからなるフッ化物(多成分)ガラスファイバを用いることができる。また、光ファイバは、単一モード光ファイバおよび多モード光ファイバのいずれを用いてもよい。
【0050】
光ファイバは、例えば直径が125μm〜1000μmのものを使用することができる。また、光導波路を用いる場合には、例えばライン幅5μm〜1000μm、厚み5μm〜1000μmのものを用いることができる。
【0051】
次に、図9に示すように、主として上記化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーからなる光伝送路形成用材料7を光ファイバ2、3間に塗布する。光伝送路形成用材料は、接続しようとする光ファイバの断面が全て覆われるように塗布することが好ましい。また、光ファイバの側面が覆われるように塗布してもよい。
【0052】
その後、この基板を熱処理する。図10に示すように、この熱処理により光ファイバ2、3間に光伝送路1が形成され、光ファイバ2と光ファイバ3とが接続される。また、この熱処理により、化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーは重合し、上記化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマーとなる。この熱処理は、例えば70℃〜90℃、5〜20分程度とすることが好ましい。
【0053】
このようにして得られた光伝送路1は、例えば図11に示されるように、光ファイバ2より光を入射させることにより、光ファイバ2の光軸の延長線上の部分が上記化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックモノマーから、上記化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックモノマーへと変化する。このため、光ファイバ2に入射させた光は光伝送路1を通過し光ファイバ3へ伝送されることとなる。
【0054】
上述したように、本発明の光伝送路においては、いわゆるコア部、クラッド部を別々の材料で形成する必要がないため、光伝送路の形成が容易になる。また、光伝送路の形成に際し特別なパターンニング等を行う必要がなく、光伝送路形成用材料を塗布あるいは充填し、これを熱処理するといった工程で済むため、例えば光ファイバ間の接続が容易になる。
【0055】
【実施例】
(実施例1)
本発明の光伝送路形成材料に用いられる化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマー(R1:CH3、R2:CH3、m=2)の合成を行った。以下に、具体的な合成方法について説明する。なお、以下の説明における化学式の番号は、上述したフォトクロミックモノマーの合成方法で用いた化学式の番号と同様のものとする。
【0056】
まず、化学式(4)で示される化合物(0.3g、0.59mmol)のジクロロメタン(5ml)溶液に炭酸カリウム(0.18g、1.3mmol)を懸濁させ、次いでヨウ化メチル(0.037ml、0.59mmol)を滴下し、3時間還流後、反応溶液をセライト濾過後、濾液を減圧下留去し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、化学式(5)で示される化合物(0.27g、88%)を得た。
【0057】
この化学式(5)で示される化合物(0.25g、0.48mmol)のCH2Cl2 (5ml)溶液に炭酸カリウム(0.079g、0.57mmol)を懸濁させ次いでブロモ酢酸エチル(0.096g、0.57mmol)を滴下し、3時間還流後、反応溶液をセライト濾過後、濾液を減圧下留去し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、化学式(6)で示される化合物(0.29g、98%)を得た。
【0058】
化学式(6)で示される化合物(0.27g、0.44mmol)のテトラヒドロフラン(5ml)溶液に、0℃下、水素化リチウムアルミニウム0.017g(0.45mmol)を加え、室温で3時間攪拌後、水(5ml)を加えた後、酢酸エチルで抽出(5ml×3)した。抽出物を飽和食塩水(10ml)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。酢酸エチルを減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、化学式(7)で示される化合物(0.22g、86%)を得た。
【0059】
化学式(7)で示される化合物(0.21g、0.37mmol)、メタクリル酸(0.035g、0.41mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(0.041g、0.34mmol)のジクロロメタン(3ml)溶液に、0℃下1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.092g、0.45mmol)のジクロロメタン(0.5ml)溶液を滴下し、室温で3時間攪拌後、反応溶液をセライト濾過後、濾液を減圧下留去し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマー(R1:CH3、R2:CH3、m=2)(0.24g、100%)を得ることができた。
【0060】
(実施例2)
次に、実施例1で作製したフォトクロミックモノマーを用いて光伝送路を形成し、評価を行った。
【0061】
まず、φ125μm(コア径φ50μm)の多モード光ファイバと50μm□光導波路の結合において、Siウエハーを異方性エッチングによりV溝加工を施したSi−V溝基板を用意し、光ファイバと光導波路の光軸が合うようにそれぞれを設置した。光ファイバと光導波路の間隔は0.5mmとした。
【0062】
一方、実施例1で作製した化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマー(R1:CH3、R2:CH3、m=2)を2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(フォトクロミックモノマーに対して0.01当量)と共にアセトン溶媒に溶解し、光伝送路形成用材料を作製した。
【0063】
この光伝送路形成用材料を上記基板の光ファイバと光導波路との間に塗布し、その後90℃で10分間熱処理を行い、アセトン溶媒を留去するとともに、上記フォトクロミックモノマーを重合させてフォトクロミックポリマー(上記化学式(2)、R1:CH3、R2:CH3、m=2)からなる光伝送路を形成し、光ファイバーと光導波路との接続を行った。
【0064】
上記化学式(2)で示されるフォトクロミックポリマー(R1:CH3、R2:CH3、m=2)からなる光伝送路に光を入射をさせない状態での構造はトランス体であり、波長780nmの光(露光量10000mJ/cm2)を入射させると上記化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックポリマー(R1:CH3、R2:CH3、m=2)に異性化し、光導波路から光ファイバーへ光が伝送され、光導波路と光ファイバーとが接続されることが確認された。また、光の入射を止めると再びトランス体へと戻り、光導波路と光ファイバーとの接続が遮断されることが確認された。
【0065】
また、光を入射させていないときの状態である上記化学式(2)で示されるトランス体のフォトクロミックポリマー(R1:CH3、R2:CH3、m=2)の屈折率は1.55であり、光を入射させたときの状態である上記化学式(3)で示されるシス体のフォトクロミックポリマー(R1:CH3、R2:CH3、m=2)の屈折率は1.57であった。さらに、波長850nmの光を用いて接続部を含めた光伝送損失を測定したところ、0.18dB/cmと良好な結果が得られることが認められた。
【発明の効果】
本発明の光伝送路においては、主として上記化学式(2)で示されるフォトクロミックポリマーからなるものとすることで、容易に光伝送路の形成ができるとともに、光伝送損失も低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光伝送路の一例を示した外観図。
【図2】本発明の光伝送路の一例を示した断面図。
【図3】本発明の光伝送路の一例を示した断面図。
【図4】本発明の光伝送路の他の例を示した外観図。
【図5】本発明の光伝送路の他の例を示した断面図。
【図6】本発明の光伝送路の他の例を示した断面図。
【図7】本発明の光伝送路の他の例を示した断面図。
【図8】光伝送路の作製工程の一例を示した断面図
【図9】光伝送路の作製工程の一例を示した断面図
【図10】光伝送路の作製工程の一例を示した断面図
【図11】光伝送路の作製工程の一例を示した断面図
【符号の説明】
1…光伝送路、2〜5…光ファイバ、6…基板、7…光伝送路形成材料
Claims (5)
- 前記光伝送路は、少なくとも1組の対向して配置された光ファイバ間、光導波路間または光ファイバと光導波路間に配置されていることを特徴とする請求項2記載の光伝送路。
- 基板上に主として下記化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーからなる溶液を塗布する工程と、
前記基板を熱処理し、前記化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーを下記化学式(2)で示されるフォトクロミックポリマーとする工程と
を具備することを特徴とする光伝送路の製造方法。 - 前記塗布工程において、前記主として化学式(1)で示されるフォトクロミックモノマーからなる溶液は、少なくとも1組の対向して配置された光ファイバ間、光導波路間または光ファイバと光導波路間に塗布されることを特徴とする請求項4記載の光伝送路の製造方法。
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