JP2004123878A - 燃料ホース用フッ素ゴム組成物、加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物、燃料ホース用内層材、フッ素ゴム積層体及び燃料ホース - Google Patents
燃料ホース用フッ素ゴム組成物、加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物、燃料ホース用内層材、フッ素ゴム積層体及び燃料ホース Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)とを共重合してなるフッ素ゴムと、ゴム用補強材又充填剤と、を配合してなる燃料ホース用フッ素ゴム組成物であって、前記フッ素ゴム中の前記テトラフルオロエチレン(TFE)の共重合組成が20〜38重量%であり、かつ、前記フッ素ゴム中のフッ素含有量が70〜72重量%であることを特徴とする燃料ホース用フッ素ゴム組成物、及び、さらに、ゴム用加硫剤を配合してなる加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料ホース用フッ素ゴム組成物に関し、詳しくは、燃料ホース用フッ素ゴム組成物、加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物、燃料ホース用内層材、加硫フッ素ゴム積層体及び燃料ホースに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フッ素ゴムは、耐熱性、耐油性等において炭化水素系ゴムに無い優れた特性を示すとともに、耐ガソリン透過性についても良好な性能を示すことから、自動車をはじめとする燃料ホース用ゴム材料として使用されている。なかでも、例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合ゴム及びフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム等のフッ化ビニリデン系フッ素ゴムを内層とし、他の耐熱性ゴム又は耐侯性ゴムを外層又は中間層として、これらを組み合わせた積層体構造の燃料ホースが実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、地球環境の保護の観点から、アルコール燃料やアルコール混合ガソリンが見直され、なかでもエチルアルコールを混合したアルコール混合ガソリンを利用する動向が見られる。特に米国では自動車燃料としてのアルコール混合ガソリンの使用が進められており、我国でも、近く転換が予想されている。このような状況下において、燃料ホース用ゴム材料には、従来の耐ガソリン透過性とともに、アルコール混合ガソリンに対する有用性を兼ね備えた特性が求められている。
【0004】
しかし、前述したような既存のフッ化ビニリデン系フッ素ゴムは、従来のガソリンに対する特性は優れるものの、アルコール混合ガソリンについてはその性能を改善すべく対策が必要とされている。すなわち、耐アルコール性を良好にするためには、例えば、フッ素ゴム中のフッ素含量を増大させることが有効と考えられるが、この場合は、ポリマーとしては樹脂状の性能が現われ、ゴム材料として特性が失われることになる。また、例えば、他の耐熱性ゴム等を組み合わせた積層体構造の燃料ホースにおいて、フッ素ゴム層の厚さを大きくすることが考えられる。しかし、フッ素ゴムは、他の炭化水素系ゴム等と比較して高価であるため、コストアップは避けられないこととなる。
【0005】
本発明は、このような燃料ホースを開発する上で浮き彫りにされた課題を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、優れた耐ガソリン透過性を奏する燃料ホースを得ることができる燃料ホース用フッ素ゴム組成物、加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物、燃料ホース用内層材、加硫フッ素ゴム積層体及び燃料ホースを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明は、通常のフッ素ゴムとは異なり、比較的高い数値のフッ素含量を有するビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴムを採用している。すなわち、本発明が適用される燃料ホース用フッ素ゴム組成物は、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとを共重合してなるフッ素ゴムと、ゴム用補強材又充填剤と、を配合してなる燃料ホース用フッ素ゴム組成物であって、このフッ素ゴム中のフッ素含有量が70〜72重量%であり、かつ、フッ素ゴム中のテトラフルオロエチレンの共重合組成が20〜38重量%であることを特徴とする。ここで、燃料ホース用フッ素ゴム組成物におけるゴム用補強材又充填剤は、平均粒径が60nm以上のカーボンブラックであることが好ましい。
【0007】
さらに、本発明が適用される加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物は、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとを共重合してなるフッ素ゴムとゴム用補強材又充填剤及びゴム用加硫剤とを配合してなる加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物であって、このフッ素ゴムが、テトラフルオロエチレンの共重合組成が20〜38重量%であり、かつ、フッ素含有量が70〜72重量%、であることを特徴とするものである。そして、この加硫剤は、過酸化物加硫剤であることが好ましい。
【0008】
次に、本発明は、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとを共重合してなるフッ素ゴムとゴム用補強材又充填剤及びゴム用加硫剤とを配合してなる燃料ホース用内層材であって、このフッ素ゴムが、テトラフルオロエチレンの共重合組成が20〜38重量%であり、かつ、フッ素含有量が70〜72重量%であることを特徴とする燃料ホース用内層材として捉えることができる。
【0009】
一方、本発明が適用される加硫性フッ素ゴム積層体は、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとを共重合してなるフッ素ゴム組成物層と、耐熱性ゴム組成物層又は耐侯性ゴム組成物層と、を積層してなる加硫性フッ素ゴム積層体であって、このフッ素ゴム組成物層が、テトラフルオロエチレンの共重合組成が20〜38重量%であり、かつ、フッ素含有量が70〜72重量%であるフッ素ゴムからなることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、本発明が適用される燃料ホースは、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとを共重合してなるフッ素ゴムからなる内層と、耐熱性ゴム又は耐侯性ゴムからなる外層及び/または中間層と、から構成される燃料ホースであって、このフッ素ゴムが、テトラフルオロエチレンの共重合組成が20〜38重量%であり、かつ、フッ素含有量が70〜72重量%であることを特徴としている。
【0011】
ここで、この燃料ホースは、アルコール混合ガソリン用燃料ホースであることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施の形態が適用される燃料ホース用フッ素ゴム組成物において使用するフッ素ゴムは、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)とを共重合してなるゴム状共重合体であって、このフッ素ゴム中のフッ素含有量が70〜72重量%の範囲にあるものである。フッ素含有量が過度に大きいと、主として耐寒性が低下するおそれがあり、また、フッ素含有量が過度に小さいと、燃料ホースとして使用する場合、特にアルコール混合ガソリンのガソリン透過量が増大するおそれがある。
【0013】
さらに、このフッ素ゴムにおけるテトラフルオロエチレン(TFE)の共重合組成が20〜38重量%、好ましくは25〜38重量%、さらに好ましくは30〜38重量%(但し、ゴム状共重合体におけるビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)との合計は100重量%である。)である場合は、特にアルコール混合ガソリンを使用する燃料ホースのガソリン透過量を低減することができる。テトラフルオロエチレン(TFE)の共重合組成が過度に大きいとゴム弾性が消失しゴム状共重合体としての特性が低下するおそれがある。また、テトラフルオロエチレン(TFE)の共重合組成が過度に小さいと、燃料ホースとして使用する場合、特にアルコール混合ガソリンのガソリン透過量が増大するおそれがある。
【0014】
このようなビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)とを共重合してなるフッ素ゴムにおいて、フッ素含有量が70〜72重量%の範囲にあり、かつ、テトラフルオロエチレン(TFE)の共重合組成が20〜38重量%である場合に、このフッ素ゴムを用いることにより、特にアルコール混合ガソリンを使用する燃料ホースのガソリン透過量を低減できる理由は明確ではない。もっとも、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)の側鎖のトリフルオロメチル基が大きな空間を占有して分子間の凝集力を緩和してゴム弾性を得ていると考えられ、また、テトラフルオロエチレン(TFE)の共重合組成が共重合体中のフッ素含有量及び耐ガソリン透過性を支配する因子となり得ると考えられる。そこで、フッ素ゴムとしてのゴム弾性が得られる範囲内で、ビニリデンフルオライド(VDF)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合組成を調整し、さらに、フッ素含有量とのバランスを調整することにより、特にアルコール混合ガソリンを使用する燃料ホースのガソリン透過量を低減できるフッ素ゴム組成物が得られるものと考えられる。
【0015】
尚、このフッ素ゴムのムーニー粘度(ML1+10100℃)は、特に限定されないが、通常30〜100、好ましくは、40〜70である。ムーニー粘度が過度に大きいと、押出し加工を行う際に、ヘッド圧が増大する等、押出し性が低下するおそれがある。ムーニー粘度が過度に小さいと、押出した製品が変形しやすいおそれがある。また、数平均分子量は、4,000〜500,000である。なお、分子量分布は広いほうが好ましいが、例えばガソリンにより抽出される程度の低分子量部分の割合は少ないほうが好ましい。
【0016】
本実施の形態において使用するフッ素ゴムの製造方法は、特に限定されず、ビニリデンフルオライド(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)およびテトラフルオロエチレン(TFE)とを、乳化、懸濁、塊状、溶液重合等の公知の重合方法により製造することができる。例えば、乳化重合においてはフッ素化合物系乳化剤を用いて、油溶性または水溶性の過酸化物を重合開始剤として用いて乳化重合を行う。油溶性の過酸化物としてはジアシルパーオキサイド等が挙げられる。水溶性の過酸化物としては過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過リン酸塩、過硝酸塩、過炭酸塩等を挙げることができる。また、これらの無機過酸化物と、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸等の水溶性還元剤との組み合わせも用いることができる。
【0017】
溶液重合においては、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1,2,2−テトラクロロ−1,2−ジフルオロエタン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロジメチルシクロブタンなどの高度にフッ素置換された溶媒を用いて、油溶性開始剤を使用して重合を行う。尚、重合温度は、用いる重合開始剤の分解温度により異なるが通常0〜100℃である。重合圧力は共重合体の組成により決定されるが、0〜30kg/cm2Gが好ましい。
【0018】
本実施の形態が適用される燃料ホース用フッ素ゴム組成物において使用するゴム用補強材又充填剤は特に限定されず、通常、ゴム材料用途において頻繁に用いられるゴム用補強材又充填剤を使用することができる。ゴム用補強材又充填剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化アルミニウム等の金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化鉛等の金属水酸化物:炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム、珪酸アルミニウム等の珪酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩:二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅等の金属硫化物;珪藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫酸バリウム)、グラファイト、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、ワラスナイト、雲母粉末、ガラス粉末、炭素繊維等が挙げられる。これらのゴム用補強材又充填剤は2種以上用いてもよい。
【0019】
これらのゴム用補強材又充填剤の中でも、カーボンブラックは補強効果が大きく有用である。特に、平均粒径が60nm以上のカーボンブラックを配合することにより、例えば、燃料ホース用フッ素ゴム組成物を押出し機を用いて加工する場合の加工性が改善される。平均粒径が60nm以上のカーボンブラックとしては、例えば、GPF、SRF、FT、MT等が挙げられる。
【0020】
これらのゴム用補強材又充填剤の配合量は、特に限定されないが、通常、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)とを共重合してなるフッ素ゴム100重量部に対して、5〜100重量部、好ましくは、10〜30重量部を配合する。
【0021】
本実施の形態が適用される燃料ホース用フッ素ゴム組成物において使用するゴム用加硫剤は特に限定されず、通常、ゴム用途において頻繁に用いられるゴム用加硫剤を使用することができる。このようなゴム用加硫剤としては、例えば、過酸化物加硫剤、ポリオール加硫剤、ポリアミン加硫剤、ポリチオール加硫剤等が挙げられ、いずれの加硫剤も適用可能である。過酸化物加硫剤として使用する化合物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5ジヒドロキシパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等の有機過酸化物化合物が挙げられる。尚、これらの過酸化物加硫剤を用いるときは、加硫助剤もしくは共加硫剤として、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロバルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタールアミドおよびポリジメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルビニルシロキサン等の化合物を併用することにより著しい効果がみられる。
【0022】
ポリオール加硫剤として使用する化合物としては、例えば、ヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルエーテル等またはこれらのアルカリ金属塩もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
ポリアミン加硫剤として使用する化合物としては、例えば、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、4,4′−ジアミンシクロヘキシルメタンカーバメート、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。尚、ジフェニルグアニジン、ジ−O−トリグアニジン、ジフェニルチオウレア、2−メルカプトイミダゾリン等の塩基性化合物等を併用することができる。
【0024】
ポリチオール加硫剤として使用する化合物としては、例えば、ジメルカプトジメチルエーテル、ジメルカプトメチルサルファイド、1,6−ヘキサンジチオール、エチレンビスメルカプトアセテート、1,5−ナフタレンジチオール、4,4′−ジメルカブトジフェニル、2−置換(アニリノ、ジブチルアミノなど)−4,6−ジチオール−S−トリアジン、もしくはこれらの化合物のアルカリ金属塩などが挙げられる。さらに、その他加硫促進剤として、第三級アミン、トリ置換アミジン、ペンタ置換グアニジンまたはこれら化合物の有機酸もしくは無機酸塩、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩または含窒素環状ポリエーテルを必要に応じて使用することができる。
【0025】
このようなゴム用加硫剤の中でも、特に過酸化物加硫剤が好ましい。これらのゴム用加硫剤の配合量は、特に限定されないが、通常、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)とを共重合してなるフッ素ゴム100重量部に対して、0.5〜10重量部、好ましくは、1〜6重量部を配合する。尚、本実施の形態においては必用に応じて、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、スコーチ防止剤、架橋遅延剤、可塑剤、加工助剤、活剤、粘着剤、難燃剤、着色剤などの添加、他のゴムやエラストマー、あるいはフッ素樹脂やその他の樹脂成分を配合しても良い。
【0026】
本実施の形態が適用される燃料ホース用フッ素ゴム組成物の製造方法は、特に限定されず、通常、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)とを共重合してなるフッ素ゴムとゴム用補強材又は充填剤と、必要に応じて加えられる他の配合物とを、ロール、バンバリー、ニーダー、インターナルミキサー等の混練機を用いて混合、混練する方法が挙げられる。また、本実施の形態における加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物は、さらに、ゴム用加硫剤を配合して、同様に混合、混練することにより得られる。かかる加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物は、燃料ホース用内層材として使用することができる。
【0027】
本実施の形態において使用するビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)とを共重合してなるフッ素ゴムを配合してなるフッ素ゴム組成物層と、耐熱性ゴムを配合してなる耐熱性ゴム層又は耐候性ゴムを配合してなる耐候性ゴム層と、を積層してフッ素ゴム積層体を得ることができる。ここで使用する耐熱性ゴム又は耐候性ゴムとしては、例えば、ニトリル系ゴムまたはその水素化物、クロロプレン系ゴム、エチレン−プロピレン−ターモノマー共重合系ゴム、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレン、シリコーンゴム、ブチルゴム、ヒドリン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びニトリル系ゴムと塩化ビニル樹脂との混合物等が挙げられる。
【0028】
これらの耐熱性ゴム又は耐候性ゴムのなかでも、ニトリル系ゴムまたはその水素化物、ニトリル系ゴムと塩化ビニル樹脂との混合物、ヒドリン系ゴムが好ましい。ここで使用するニトリル系ゴムとしては、例えば、結合ニトリル量30〜50重量%、ムーニー粘度(ML1+4)30〜90の範囲のものである。ニトリル系ゴムの水素化物は、結合ニトリル量30〜50重量%、ムーニー粘度(ML1+4)30〜90、ヨウ素価3〜60の範囲のものである。ニトリル系ゴムと塩化ビニル樹脂との混合物は、ニトリル系ゴム95〜50重量%と塩化ビニル樹脂5〜50重量%との混合物である。ヒドリン系ゴムは、エピクロロヒドリン単独重合体またはエピクロロヒドリンと共重合可能な他のエポキシドとの共重合体である。エピクロロヒドリンと共重合可能な他のエポキシドとの共重合体としては、例えば、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド二元共重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロロヒドリン−プロピレンオキシド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等を挙げることができる。
【0029】
また、ニトリル系ゴムまたはその水素化物、ニトリル系ゴムと塩化ビニル樹脂との混合物を使用する場合の加硫剤としては、例えば、過酸化物加硫剤及び硫黄系加硫剤が挙げられる。ヒドリン系ゴムを使用する場合の加硫剤としては、例えば、2,3−ジメルカプトキノキサリン誘導体、チアジアゾール類、メルカプトトリアジン類などのポリチオール系(ポリチオール誘導体を含む)加硫剤やチオウレア類が挙げられる。これらの加硫剤の配合量は、耐熱性ゴム又は耐候性ゴム100重量部に対して、通常、0.5〜10重量部である。
【0030】
このようなフッ素ゴム積層体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)とを共重合してなるフッ素ゴム、ゴム用補強材又は充填剤及びゴム用加硫剤を配合してなるフッ素ゴム組成物と、耐熱性ゴム又は耐候性ゴム、ゴム用補強材又は充填剤及びゴム用加硫剤を配合してなる耐熱性ゴム組成物又は耐候性ゴム組成物とを、それぞれ公知の方法で混練して、適宜の厚みのフッ素ゴム組成物層と耐熱性ゴム組成物層又は耐候性ゴム組成物層とをそれぞれ成形する。次に、両組成物層を未加硫の状態で2層押出法により積層チューブに成形後、加硫缶を用いて加圧加硫する。加硫缶による場合は通常120〜180℃の温度、1〜9.2kg/cm2の圧力下で10〜60分間加圧加硫が実施される。さらに、得られたゴム積層体を熱処理(ポストキュア)することによって一次加硫時間の短縮、圧縮永久ひずみの改良を図ることも可能である。
【0031】
本実施の形態におけるビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)とを共重合してなるフッ素ゴムを配合してなるフッ素ゴム組成物層を内層とし、これに耐熱性ゴムを配合してなる耐熱性ゴム層又は耐候性ゴムを配合してなる耐候性ゴム層を外層および/又は中間層を構成して、耐候性、耐ガソリン性に優れた燃料ホースを製造することができる。尚、さらに補強糸層を構成してもよい。
【0032】
燃料ホースの製造方法はとくに限定されないが、例えば、以下の方法による。すなわち、内層であるフッ素ゴム組成物層と中間層である耐熱性ゴム層又は耐候性ゴム層とを、2層押出法により積層チューブに成形後、該積層チューブにポリエステル繊維などの補強糸層を適当な編み角度でブレード編みにより編み上げ、さらに、その外側に耐熱性ゴム層又は耐候性ゴム層を外層として押し出して被覆して未加硫ゴムホースとする。この未加硫ゴムホースに金属製マンドレルを圧縮空気を使って挿入し、次いで、これを直接スチーム加硫により加硫した後、金属製マンドレルを引き抜いて、洗浄および加熱処理して燃料ホースを製造する。
【0033】
本実施の形態の燃料ホースにおける内層であるフッ素ゴム組成物層の厚さは、例えば、通常、0.3〜2mmであり、中間層及び/又は外層である耐熱性ゴム層又は耐候性ゴム層の厚さは、通常、0.5〜5mmである。このように、本実施の形態におけるビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)とを共重合してなるフッ素ゴムを配合してなるフッ素ゴム組成物層を内層材として使用する燃料ホースは、優れた耐ガソリン透過性を示し、特に、アルコール混合ガソリン用燃料ホースとして有用である。
【0034】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本実施の形態をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(ガソリン透過性試験)
ガソリン透過性試験は、以下の2通りの試験方法により行った。
(1)カップ法
厚さ0.5mmのフッ素ゴムの加硫シートを調製し、2,2,4−トリメチルペンタン(イソオクタン)/トルエン/エタノール=45/45/10(容積%)に混合したアルコール混合燃料油(以下、単に「アルコール混合燃料油」と記す。)を用いて、下記の方法によりガソリン透過量を測定した。図1(a)は、カップ法を説明するための図である。すなわち、図1(a)に示すように、容量の80%程度のアルコール混合燃料油11を入れたアルミ製カップ12に、縁の径より大きめの円盤状にカットしたフッ素ゴムシート13を載せ固定金具14を用いて取り付ける。次に、アルミ製カップ12を逆さにしてアルコール混合燃料油11とフッ素ゴムシート13を直接接触させ、40±2℃の恒温槽に21日間入れた後取り出し、23±2℃に冷えた段階で重量を測定する。測定後再び、40±2℃の恒温槽に14日間入れ、同様に取り出し23±2℃に冷えた段階で重量を測定する。
ガソリン透過量(mg・mm/cm2・day)は、次式により求めた。
ガソリン透過量=(初期重量mg―処理後重量mg)×0.5mm/(接触面積cm2×14日)
【0035】
(2)ホース法
フッ素ゴム組成物を内層、エピクロルヒドリン系ゴムを外層とした燃料ホースを調製し、アルコール混合燃料油を用いて下記の方法により燃料ホースのガソリン透過量を測定した。図1(b)は、ホース法を説明するための図である。すなわち、図1(b)に示すように、予備タンク21のついたバルジと栓22のできるバルジを用い、燃料ホース23内をアルコール混合燃料油24で満たした状態で密封する。この時、バルジの挿入量は燃料ホース端から30mmとする。予備タンク21が上になるように立て、アルコール混合燃料油24が燃料ホース23内を満たしているようにした状態で、40±2℃の恒温槽に21日間入れた後取り出し、23±2℃に冷えた段階で重量を測定する。測定後再び、40±2℃の恒温槽に14日間入れ、同様に取り出し23±2℃に冷えた段階で重量を測定した。
ガソリン透過量(mg/cm2・day)は次式により求めた。
ガソリン透過量=(初期重量mg―処理後重量mg)/(π×内径cm×30cm×14日)
【0036】
(実施例1〜3、比較例1〜3)
表1に示す配合割合で、フッ素ゴム、ゴム用補強材又は充填剤、ゴム用加硫剤をオープンロールを用いて均一に混練し、フッ素ゴム組成物を得た。次に、得られたフッ素ゴム組成物を成形プレスにより、170℃×10分で加硫を行い、それぞれ厚さ0.5mmのフッ素ゴムシートを得て、これらのフッ素ゴムシートについてはカップ法によるガソリン透過性試験を行った。また、フッ素ゴム組成物を成形プレスにより、170℃×10分で加硫を行い、それぞれ厚さ2.0mmのシートを得て、これらのシートを用い、JIS K6251、JIS K6253に準じて、引張強さ、伸び、硬さを測定した。この時、試験片は、ダンベル状5号型試験片を用いた。尚、フッ素含有量、TFE共重合組成は、19F−NMRにより求めたものである。
【0037】
さらに、得られたフッ素ゴム組成物を内層とし、これにエピクロルヒドリン系ゴムを外層として、内径15mm、外径21mm、内層のフッ素ゴム組成物の肉厚が0.5mmの二層ホースを押し出し、長さ350mmにカットする。これを真っ直ぐな径15.0mmのマンドレルに挿し、加硫缶で飽和蒸気温度165℃で30分缶加硫を行い、燃料ホースを調製し、これらの燃料ホースについては、ホース法によりガソリン透過性試験を行った。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示した結果によれば、フッ素含有量が70重量%かつTFE組成が32重量%のフッ素ゴム(FKM−1)を使用した場合(実施例1)、フッ素含有量が71重量%かつTFE組成が35重量%のフッ素ゴム(FKM−2)を使用した場合(実施例2)、及び、フッ素含有量が71重量%かつTFE組成が35重量%のフッ素ゴム(FKM−3)を使用した場合(実施例3)は、いずれの場合においても、カップ法により測定したガソリン透過量が1.1以下の低い数値を示し、引張強さと伸びとのバランスも良好である。また、これらの配合の加硫性フッ素ゴム組成物と加硫性エピクロルヒドリン系ゴム組成物とから調製した燃料ホースについて行った、ホース法によるガソリン透過性試験の結果についても、カップ法と同様に、ガソリン透過量が低い数値を示し、耐アルコール混合ガソリン透過性が良好である結果が得られた。なお、加硫剤が過酸化物加硫剤である場合(実施例3)は、とくに引張強さが大きい数値を示した。
【0040】
これに対して、フッ素含有量が68.4重量%と低く、かつTFE組成が23重量%と低いフッ素ゴム(FKM−4)を使用した場合(比較例1)及びTFEを共重合しないフッ素ゴム(FKM−6)を使用した場合(比較例3)は、いずれの場合も、カップ法により測定したガソリン透過量及び燃料ホースについてホース法により測定したガソリン透過量が高い数値を示し、耐アルコール混合ガソリン透過性が改善されない結果が得られた。また、フッ素含有量が70.7重量%であるがTFE組成が44重量%と高い数値を示したフッ素ゴム(FKM−5)を使用した場合(比較例2)は、フッ素ゴムシートの硬さ(ShoreA)が95と大きい数値を示し、ゴム弾性を消失したため、ガソリン透過試験を行わなかった。
【0041】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、優れた耐ガソリン透過性、特に耐アルコール混合ガソリン透過性を奏する燃料ホースを得るためのフッ素ゴム組成物、加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物、燃料ホース用内層材、加硫フッ素ゴム積層体及び燃料ホースを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はカップ法を説明するための図である。
(b)はホース法を説明するための図である。
【符号の説明】
11,24…アルコール混合燃料油、12…アルミ製カップ、13…フッ素ゴムシート、14…固定金具、21…予備タンク、22…栓、23…燃料ホース
Claims (8)
- ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとを共重合してなるフッ素ゴムと、
ゴム用補強材又充填剤と、を配合してなる燃料ホース用フッ素ゴム組成物であって、
前記フッ素ゴム中の前記テトラフルオロエチレンの共重合組成が20〜38重量%であり、かつ、
前記フッ素ゴム中のフッ素含有量が70〜72重量%であることを特徴とする燃料ホース用フッ素ゴム組成物。 - 前記ゴム用補強材又充填剤は、平均粒径が60nm以上のカーボンブラックであることを特徴とする請求項1記載の燃料ホース用フッ素ゴム組成物。
- ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとを共重合してなるフッ素ゴムとゴム用補強材又充填剤及びゴム用加硫剤とを配合してなる加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物であって、前記フッ素ゴムが、前記テトラフルオロエチレンの共重合組成が20〜38重量%であり、かつ、
フッ素含有量が70〜72重量%であることを特徴とする加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物。 - 前記加硫剤は、過酸化物加硫剤であることを特徴とする請求項3記載の加硫性燃料ホース用フッ素ゴム組成物。
- ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとを共重合してなるフッ素ゴムとゴム用補強材又充填剤及びゴム用加硫剤とを配合してなる燃料ホース用内層材であって、
前記フッ素ゴムが、前記テトラフルオロエチレンの共重合組成が20〜38重量%であり、かつ、
フッ素含有量が70〜72重量%であることを特徴とする燃料ホース用内層材。 - ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとを共重合してなるフッ素ゴムを配合してなるフッ素ゴム組成物層と、
耐熱性ゴムを配合してなる耐熱性ゴム組成物層又は耐侯性ゴムを配合してなる耐侯性ゴム組成物層と、を積層してなるフッ素ゴム積層体であって、
前記フッ素ゴム組成物層が、前記テトラフルオロエチレンの共重合組成が20〜38重量%であり、かつ、フッ素含有量が70〜72重量%であるフッ素ゴムからなる、ことを特徴とするフッ素ゴム積層体。 - ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとを共重合してなるフッ素ゴムからなる内層と、
耐熱性ゴム又は耐侯性ゴムからなる外層及び/または中間層と、から構成される燃料ホースであって、
前記フッ素ゴムが、前記テトラフルオロエチレンの共重合組成が20〜38重量%であり、かつ、フッ素含有量が70〜72重量%であることを特徴とする燃料ホース。 - 前記燃料ホースは、アルコール混合ガソリン用燃料ホースであることを特徴とする請求項7記載の燃料ホース。
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