JP2004123688A - 有機ジルコニウム複合物及びその合成方法並びにこれを含む溶液原料、チタン酸ジルコン酸鉛薄膜の成膜方法 - Google Patents

有機ジルコニウム複合物及びその合成方法並びにこれを含む溶液原料、チタン酸ジルコン酸鉛薄膜の成膜方法 Download PDF

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Abstract

【課題】有機鉛化合物及び有機チタン化合物の各分解温度に近似した分解温度を有する。広い温度範囲でPZT薄膜の組成制御をより的確に行える。有機鉛化合物と混合しても反応し難い。気相分解を起こし難い溶液原料を提供する。
【解決手段】第1βジケトンと第1βジケトンとは構造の異なる第2βジケトンの双方をそれぞれ配位子とするジルコニウムキレート錯体を1種又は2種以上含み、ジルコニウムキレート錯体が2種以上含まれるとき、2種以上のジルコニウムキレート錯体に配位する第1βジケトンの配位数と、第2βジケトンの配位数が各ジルコニウムキレート錯体によってそれぞれ異なる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory;強誘電体メモリー)等の誘電体メモリー、誘電体フィルター等に用いられる複合酸化物系誘電体薄膜を有機金属化学蒸着法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、以下、MOCVD法という。)により形成するための原料として好適な有機ジルコニウム複合物及びその合成方法並びにこれを含む溶液原料、チタン酸ジルコン酸鉛薄膜の成膜方法に関する。更に詳しくは、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O;PZT)薄膜形成用として好適な有機ジルコニウム複合物及びその合成方法並びにこれを含む溶液原料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
書換え可能メモリの主流であるDRAMは、揮発性メモリであって、記憶保持のために周期的に電流を流す必要があり、消費電力が大きいことが環境面から問題になっている。そこで、不揮発性で記憶を長期間保持でき、消費電力が少なく、DRAMと互換性のあるFeRAM等の強誘電体メモリが注目を集めている。強誘電体メモリは、上記の特徴に加えて、書込み電圧が低い、高速書込みが可能、書換え回数が多い、ビット書換え可能、ランダムアクセスが可能といった様々な利点もあるため、多くの研究が現在進められている。
強誘電体メモリは、DRAMの蓄積コンデンサ材料として強誘電体薄膜を用い、その分極ヒステリシス現象を利用して、この薄膜に記憶機能を持たせたものである。強誘電体薄膜材料には、自発分極が大きいPZT等の複合酸化物系材料が用いられる。
【0003】
PZT誘電体薄膜を形成するために用いられる有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムに2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン残基(以下、thdという。)が配位したテトラキス2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートジルコニウム(以下、Zr(thd)という。)錯体が、有機鉛化合物としては、ビス2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート鉛(以下、Pb(thd)という。)錯体が、有機チタン化合物としては、ジイソプロポキシビス2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートチタン(以下、Ti(iPrO)(thd)という。)錯体がそれぞれ知られている。
【0004】
このうちZr(thd)錯体は、Pb(thd)錯体、Ti(iPrO)(thd)錯体よりもその分解温度が高いため、PZT誘電体薄膜を形成するときには、成膜温度が他の有機鉛化合物や有機チタン化合物の成膜温度からずれることが報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。
そのため、Zr(thd)錯体よりも低い分解温度を有するテトラターシャリーブトキシジルコニウム(以下、Zr(tBuO)という。)錯体をPZT薄膜原料として用いることも考えられる。しかし、この非特許文献1に示された化合物は空気に対して極めて反応性が大きいため、その取扱いが非常に困難である。
【0005】
そこで上記問題を解決する新規なMOCVD用有機ジルコニウム化合物として、ジイソプロポキシビス2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートジルコニウム(以下、Zr(iPrO)(thd)という。)錯体、ジターシャリーブトキシビス2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートジルコニウム(以下、Zr(tBuO)(thd)という。)錯体、Zr(iPrO)(thd)錯体等が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。これらの新規有機ジルコニウム化合物は広い温度範囲で成膜が可能であるため、上記従来の有機ジルコニウム化合物よりも優れている。
一方、別の新規なMOCVD用有機ジルコニウム化合物として、イソプロポキシトリス2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートジルコニウム(以下、Zr(iPrO)(thd)という。)錯体が提案されている(例えば、非特許文献2参照。)。提案された有機ジルコニウム化合物は、単量体で蒸気圧が高く、溶媒によく溶ける性質を有する。
【0006】
【特許文献1】
PCT国際公開番号WO98/51837
【非特許文献1】
Anthony C. Jonesら, Journal of the European Ceramic Society, 19 (1999)1413−1434
【非特許文献2】
奥原ら、第47回応用物理学関係連合講演会予稿集(2000.3.) p540
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に示された有機ジルコニウム化合物は、MOCVD法によりPZT誘電体薄膜を形成するために有機鉛化合物と混合したときに、この有機鉛化合物と反応を起こし易く、気化して成膜室に導入する際に、十分に気化せず、多くの化合物が残渣として残ってしまう欠点があった。
また上記非特許文献2で開示された有機ジルコニウム化合物は、この化合物自体が多くの気化残渣を発生し易く、更に、気化して成膜室に導入する際に、十分に気化せず、多くの化合物が残渣として残ってしまう問題があった。
【0008】
上記問題点を解決するジルコニウム材料として本発明者らはZr(tBuO)(thd)錯体及びZr(tAmO)(thd)錯体を試験的に用いてみた。しかしこれらのジルコニウム材料は、有機溶媒に溶解して溶液原料とした場合に不均化反応を生じ、経時的にZr(thd)が生成してしまうという問題を有していた。
一方で、低い分解温度を有する化合物についても研究が行われており、ジルコニウムに2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン残基(以下、dhdという。)が配位したテトラキス2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナートジルコニウム(以下、Zr(dhd)という。)がその研究対象となっている。しかしこのZr(dhd)はTi(iPrO)(thd)のような有機チタン化合物などに比べて分解温度が低く、膜組成の制御が困難になる問題を有していた。
【0009】
本発明の第1の目的は、有機鉛化合物及び有機チタン化合物の各分解温度に近似した分解温度を有する有機ジルコニウム複合物及びその合成方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、広い温度範囲でPZT薄膜の組成制御をより的確に行える有機ジルコニウム複合物を含む溶液原料を提供することにある。
本発明の第3の目的は、有機鉛化合物と混合しても反応し難い有機ジルコニウム複合物を含む溶液原料を提供することにある。
本発明の第4の目的は、気相分解を起こし難い有機ジルコニウム複合物を含む溶液原料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、第1βジケトンと第1βジケトンとは構造の異なる第2βジケトンの双方をそれぞれ配位子として含むジルコニウムキレート錯体を1種又は2種以上含み、ジルコニウムキレート錯体が2種以上含まれるとき、2種以上のジルコニウムキレート錯体に配位する第1βジケトンの配位数と、第2βジケトンの配位数が各ジルコニウムキレート錯体によってそれぞれ異なることを特徴とする有機ジルコニウム複合物である。
請求項1に係る発明では、第1βジケトンと第2βジケトンの双方をそれぞれ配位子として含むジルコニウムキレート錯体を1種類含む有機ジルコニウム複合物は、従来の有機ジルコニウム化合物に比べて、有機鉛化合物及び有機チタン化合物の各分解温度に近似した分解温度を有する。従って、この錯体が少なくとも含まれる有機ジルコニウム複合物を原料としてMOCVD法により成膜すると、広い温度範囲でPZT薄膜の組成制御をより的確に行うことができる。また第1βジケトンの配位数と、第2βジケトンの配位数が各ジルコニウムキレート錯体によってそれぞれ異なる2種以上のジルコニウムキレート錯体を含む有機ジルコニウム複合物は、有機鉛化合物及び有機チタン化合物の各分解温度により近似した分解温度を有するため、広い温度範囲でPZT薄膜の組成制御を更に的確に行うことができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、第1βジケトン配位子又は第2βジケトン配位子のどちらか一方又はその双方を更に含む有機ジルコニウム複合物である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、第1βジケトンのみを配位子とするジルコニウムキレート錯体又は第2βジケトンのみを配位子とするジルコニウムキレート錯体のどちらか一方又はその双方を更に含む有機ジルコニウム複合物である。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に係る発明であって、第1βジケトン及び第2βジケトンがそれぞれthd、dhd、アセチルアセトン残基(以下、acacという。)、ヘキサフルオロアセチルアセトン残基(以下、hfacという。)、トリフルオロアセチルアセトン残基(以下、tfacという。)、トリメチルオクタンジオン残基(以下、todという。)及びジフェニルプロパンジオン残基(以下、dppdという。)からなる群より選ばれた化合物である有機ジルコニウム複合物である。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明であって、ジルコニウムキレート錯体が2種類以上のβジケトン化合物とジルコニウム化合物とを反応させて得られる有機ジルコニウム複合物である。
2種類以上のβジケトン化合物とジルコニウム化合物とを反応させて得られるジルコニウムキレート錯体は、従来の有機ジルコニウム化合物に比べて分解温度が制御し易く、有機鉛化合物及び有機チタン化合物の各分解温度に近似した分解温度を得ることができる。従って、この有機ジルコニウム複合物を原料としてMOCVD法により成膜すると、広い温度範囲でPZT薄膜の組成制御をより的確に行うことができる。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明であって、ジルコニウムキレート錯体が2種類のβジケトン化合物とジルコニウム化合物とを反応させて得られる錯体の改良であり、その特徴ある構成は、一方のβジケトン化合物をAとし、他方のβジケトン化合物をBとするとき、2種類のβジケトン化合物の配合割合(A/B)がモル比で80/20〜20/80であるところにある。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項5又は6に係る発明であって、2種類又は2種類以上のβジケトン化合物がそれぞれ2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン(以下、Hdhdという。)、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(以下、Hthdという。)、アセチルアセトン(以下、Hacacという。)、ヘキサフルオロアセチルアセトン(以下、Hhfacという。)、トリフルオロアセチルアセトン(以下、Htfacという。)、トリメチルオクタンジオン(以下、Htodという。)及びジフェニルプロパンジオン(以下、Hdppdという。)からなる群より選ばれた化合物である有機ジルコニウム複合物である。
請求項8に係る発明は、請求項5ないし7いずれか1項に係る発明であって、一方のβジケトン化合物がHdhdであって、他方のβジケトン化合物がHthdである有機ジルコニウム複合物である。
【0015】
請求項9に係る発明は、第1βジケトン化合物と第1βジケトン化合物とは構造の異なる第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体とを混合することを特徴とする有機ジルコニウム複合物の合成方法である。
請求項9に係る発明では、第1βジケトン化合物と第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体とを混合することで第1βジケトンの配位数と、第2βジケトンの配位数が各錯体によってそれぞれ異なる2種以上のジルコニウムキレート錯体を含む有機ジルコニウム複合物が得られる。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項9に係る発明であって、第1βジケトン化合物の混合量が第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体に対して100mol%〜1600mol%である合成方法である。
請求項11に係る発明は、請求項9又は10に係る発明であって、第1βジケトン化合物がHthdであって、第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体がZr(dhd)である合成方法である。
請求項12に係る発明は、請求項9又は10に係る発明であって、第1βジケトン化合物がHdhdであって、第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体がZr(thd)である合成方法である。
【0017】
請求項13に係る発明は、ジルコニウムブトキシド、塩化ジルコニウム及び塩化酸化ジルコニウムからなる群より選ばれたジルコニウム化合物を溶媒に溶解した後、溶解液に対して2種類以上のβジケトン化合物をそれぞれ含む混合液を加えて、混合液に含まれる有機溶媒の沸点を越える温度で加熱還流することを特徴とする有機ジルコニウム複合物の合成方法である。
請求項14に係る発明は、請求項13に係る発明であって、2種類のβジケトン化合物とジルコニウム化合物とを反応させて得られる有機ジルコニウム複合物の合成方法の改良であり、その特徴ある構成は、一方のβジケトン化合物をAとし、他方のβジケトン化合物をBとするとき、2種類のβジケトン化合物の配合割合(A/B)がモル比で80/20〜20/80であるところにある。
請求項15に係る発明は、請求項13又は14に係る発明であって、2種類又は2種類以上のβジケトン化合物がそれぞれHdhd、Hthd、Hacac、Hhfac、Htfac、Htod及びHdppdからなる群より選ばれた化合物である合成方法である。
請求項16に係る発明は、請求項13ないし15いずれか1項に係る発明であって、一方のβジケトン化合物がHdhdであって、他方のβジケトン化合物がHthdである合成方法である。
【0018】
請求項17に係る発明は、請求項1ないし8いずれか1項に記載の有機ジルコニウム複合物又は請求項9ないし16いずれか1項に記載の合成方法により得られる有機ジルコニウム複合物を有機溶媒に溶解したことを特徴とする溶液原料である。
請求項17に係る発明では、本発明の有機ジルコニウム複合物を有機溶媒に溶解した溶液原料は、広い温度範囲でPZT薄膜の組成制御をより的確に行うことができる。
【0019】
請求項18に係る発明は、単一種類のβジケトン化合物がその中心金属に配位した第1ジルコニウムキレート錯体と、βジケトン化合物と異なる単一種類のβジケトン化合物がその中心金属に配位した第2ジルコニウムキレート錯体とを有機溶媒中に混合して調製された有機ジルコニウム複合物を含む溶液原料である。
本発明の溶液原料は、Pb(thd)に代表される有機鉛化合物と混合しても気化残渣の増加を抑制できるためMOCVD装置に原料を安定して供給できる。更に、このように調製された溶液原料は、溶液原料中の第1ジルコニウムキレート錯体と第2ジルコニウムキレート錯体の有する気化温度・分解温度の範囲内において任意の気化温度・分解温度に制御することができるため、この溶液原料を用いて膜を形成した場合、膜組成の制御性が向上する。
【0020】
請求項19に係る発明は、請求項18に係る発明であって、第1ジルコニウムキレート錯体をC、第2ジルコニウムキレート錯体をCとするとき、第1及び第2ジルコニウムキレート錯体の配合割合(C/C)がモル比で10/90〜90/10である溶液原料である。
上記範囲内にモル比を制御することで、溶液原料に含まれるジルコニウムキレート錯体の気化温度及び分解温度の制御を行うことができる。
【0021】
請求項20に係る発明は、請求項18又は19に係る発明であって、第1及び第2ジルコニウムキレート錯体がZr(dhd)、Zr(thd)、テトラキスアセチルアセトナートジルコニウム(以下、Zr(acac)という。)、テトラキスヘキサフルオロアセチルアセトナートジルコニウム(以下、Zr(hfac)という。)、テトラキストリフルオロアセチルアセトナートジルコニウム(以下、Zr(tfac)という。)、テトラキストリメチルオクタジオナートジルコニウム(以下、Zr(tod)という。)及びテトラキスジフェニルプロパンジオナートジルコニウム(以下、Zr(dppd)という。)からなる群より選ばれた錯体である溶液原料である。
請求項21に係る発明は、請求項18ないし20いずれか1項に係る発明であって、第1ジルコニウムキレート錯体がZr(thd)であって、第2ジルコニウムキレート錯体がZr(dhd)である溶液原料である。
第1ジルコニウムキレート錯体をZr(thd)とし、第2ジルコニウムキレート錯体をZr(dhd)とした溶液原料は、Zr(thd)錯体と比較して低い分解温度を有し、Pb(thd)と混合しても反応し難い溶液原料となる。
【0022】
請求項22に係る発明は、請求項17ないし21いずれか1項に係る発明であって、有機溶媒がテトラヒドロフラン(以下、THFという。)、メチルテトラヒドロフラン(以下、Me−THFという。)、n−オクタン、イソオクタン、ヘキサン、シクロヘキサン(以下、CyHexという。)、ピリジン、ルチジン、酢酸ブチル及び酢酸アミルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒である溶液原料である。
【0023】
請求項23に係る発明は、請求項17ないし22いずれか1項に係る発明であって、有機鉛化合物又は有機チタン化合物のどちらか一方又はその双方を更に含む溶液原料である。
有機鉛化合物又は有機チタン化合物のどちらか一方又はその双方を更に含むことで、溶液原料中では有機ジルコニウム複合物中の配位子と有機鉛化合物中の配位子や有機チタン化合物中の配位子とがそれぞれ配位子交換を起こして鉛やチタンについても2種類以上の配位子を含む錯体が複数種類形成され、その配位数が各錯体によってそれぞれ異なる複合物が生成するため、鉛やチタンにおける組成制御性が向上することが期待できる。
【0024】
請求項24に係る発明は、請求項1ないし8いずれか1項に記載の有機ジルコニウム複合物、請求項9ないし16いずれか1項に記載の合成方法により得られる有機ジルコニウム複合物、又は請求項17ないし23いずれか1項に記載の溶液原料を用いて成膜することを特徴とするPZT誘電体薄膜の成膜方法である。
本発明の有機ジルコニウム複合物及びこの有機ジルコニウム複合物を含む溶液原料は、PZT薄膜の他の原料である有機鉛化合物、有機チタン化合物の分解温度に極めて近い温度に制御されているため、有機ジルコニウム複合物の供給量が従来に比べて少量でPZT誘電体薄膜を成膜することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を説明する。
本発明の有機ジルコニウム複合物は、第1βジケトンとこの第1βジケトンとは構造の異なる第2βジケトンの双方をそれぞれ配位子として含むジルコニウムキレート錯体を1種又は2種以上含む。本発明の特徴ある構成は、ジルコニウムキレート錯体が2種類以上含まれるとき、複数種類のジルコニウムキレート錯体にそれぞれ配位する第1βジケトンの配位数と、第2βジケトンの配位数が各ジルコニウムキレート錯体によってそれぞれ異なるところにある。第1βジケトンと第2βジケトンの双方をそれぞれ配位子として含むジルコニウムキレート錯体を1種類含む有機ジルコニウム複合物は、従来の有機ジルコニウム化合物に比べて、有機鉛化合物及び有機チタン化合物の各分解温度に近似した分解温度を有する。従って、この錯体が少なくとも含まれる有機ジルコニウム複合物を原料としてMOCVD法により成膜すると、広い温度範囲でPZT薄膜の組成制御をより的確に行うことができる。また第1βジケトンの配位数と、第2βジケトンの配位数が各ジルコニウムキレート錯体によってそれぞれ異なる2種以上のジルコニウムキレート錯体を含む有機ジルコニウム複合物は、有機鉛化合物及び有機チタン化合物の各分解温度により近似した分解温度を有するため、広い温度範囲でPZT薄膜の組成制御を更に的確に行うことができる。
【0026】
本発明の有機ジルコニウム複合物に含まれるジルコニウムキレート錯体は、中心金属であるジルコニウム金属の有する8つの配位座全てを満たすようにβジケトンを配位させている。従って、配位子にアルコキシドを含む錯体に比べて安定な化合物であり、Pb(thd)のような有機鉛化合物と混合しても、気体化し難い複合物を形成し難い。
【0027】
本発明の有機ジルコニウム複合物には、第1βジケトン配位子又は第2βジケトン配位子のどちらか一方又はその双方を更に含む場合があり、更に第1βジケトンのみを配位子とするジルコニウムキレート錯体又は第2βジケトンのみを配位子とするジルコニウムキレート錯体のどちらか一方又はその双方を含む場合がある。
第1βジケトン及び第2βジケトンはそれぞれthd、dhd、acac、hfac、tfac、tod及びdppdからなる群より選ばれた化合物が好適であり、第1βジケトンがthd、第2βジケトンがdhdの組合わせや、第1βジケトンがthd、第2βジケトンがacacの組合わせ等がより好適である。
【0028】
本発明の有機ジルコニウム複合物に含まれるジルコニウムキレート錯体は、2種類以上のβジケトン化合物とジルコニウム化合物とを反応させて得られる。金属ジルコニウムに2種類以上のβジケトン化合物を配位させたことで、従来より一般的に使われている1種類のみのβジケトン化合物を配位させたジルコニウムキレート錯体、例えばZr(thd)錯体よりも分解温度を低下させることができる。そのため、他のPZT薄膜に用いられている有機鉛化合物や有機チタン化合物の分解温度と近似した分解温度とすることができ、PZT薄膜の組成制御を容易にすることができる。
また、本発明の有機ジルコニウム複合物は、有機鉛化合物と混合しても気体化し難い複合物、例えばジルコニウムと鉛の複合体等を形成し難い。従って、MOCVD法により成膜しても化合物が残渣として残ることがない。本発明のジルコニウムキレート錯体において配位される配位子はβジケトン化合物のみである。βジケトン化合物は2種類以上であり、その種類の上限は錯体金属の価数(配位子数)を越えない種類が選択される。2種類のβジケトン化合物が好ましい。
【0029】
2種類のβジケトン化合物とジルコニウム化合物とを反応させて得られるジルコニウムキレート錯体の場合、一方のβジケトン化合物をAとし、他方のβジケトン化合物をBとするとき、2種類のβジケトン化合物の配合割合(A/B)をモル比で80/20〜20/80の範囲内となるように配合する。2種類又は2種類以上のβジケトン化合物はそれぞれHdhd、Hthd、Hacac、Hhfac、Htfac、Htod及びHdppdからなる群より選ばれる。2種類のβジケトン化合物を配位させる場合は、一方のβジケトン化合物をHdhdとし、他方のβジケトン化合物をHthdとすることが好ましい。
【0030】
次に、本発明の第1の有機ジルコニウム複合物の合成方法を説明する。
本発明の有機ジルコニウム複合物は、第1βジケトン化合物とこの第1βジケトン化合物とは構造の異なる第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体とを混合することにより得られる。有機ジルコニウム複合物を合成するときには、第1βジケトン化合物の混合量が第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体に対して100mol%〜1600mol%となるように混合する。100mol%未満であると第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体の特性が強く出てしまうため、また1600mol%を越えると第1βジケトン化合物の特性が強く出てしまうため、それぞれTi(iPrO)(thd)のような有機チタン化合物に比べて分解温度が低くなり、膜組成の制御が困難になったり、有機チタン化合物等に比べて高い分解温度となるため、成膜温度からずれる不具合を生じる。第1βジケトン化合物がHthd、第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体がZr(dhd)や、第1βジケトン化合物がHdhd、第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体がZr(thd)の組合わせが好適である。
【0031】
以下、Hthd、Zr(dhd)の組合わせによる第1の合成方法を説明する。先ず、Zr(dhd)を溶媒に15重量%〜30重量%となるように溶解して溶解液を調製する。溶媒としてはn−ヘキサン、トルエン、THF、オクタン及びキシレンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の有機化合物が挙げられる。溶解条件としては常圧、室温であれば良い。次いで、Zr(dhd)に対して100mol%〜1600mol%の割合となるようにHthdを溶解液に添加して、室温で12時間程度攪拌して反応させる。ここでの反応はβジケトン化合物がキレート錯体中の配位子と配位子交換を起こしており、上記添加割合により配位子交換の割合を変動させることができる。次に、反応液を減圧下で乾燥させて溶媒を除去することにより、dhdの配位数とthdの配位数が各錯体によってそれぞれ異なる複数のジルコニウムキレート錯体を含む有機ジルコニウム複合物が得られる。溶媒としてn−ヘキサンを用いた場合、70℃、約1330Pa(10Torr)で除去することが好ましい。この複数のジルコニウムキレート錯体には主としてZr(dhd)(thd)、Zr(dhd)(thd)及びZr(dhd)(thd)が含まれ、その他には上記ジルコニウムキレート錯体の二量体等も含まれていると推察される。なお、得られた有機ジルコニウム複合物には、反応により生じたHdhdが含まれ、HthdとZr(dhd)との混合割合によっては、未反応のHthdやZr(dhd)、過反応物質であるZr(thd)等も含まれる。
【0032】
次に、HthdとZr(dhd)の組合わせによる第2の合成方法を説明する。第2の合成方法では、反応液を減圧下で加熱して溶媒が半分程度となるまで濃縮し、その濃縮液を室温となるまで放冷して再結晶を行う。続いて濃縮液の上澄み液を捨てることで、反応により生じたβジケトン化合物や、未反応物質等を取除く。未反応物質等を取除いた液を減圧下で乾燥することにより、dhdの配位数とthdの配位数が各ジルコニウムキレート錯体によってそれぞれ異なる複数のジルコニウムキレート錯体からなる有機ジルコニウム複合物が得られる。
【0033】
次に、本発明の第2の有機ジルコニウム複合物の合成方法を説明する。
先ずジルコニウムキレート錯体の出発原料を溶媒に溶解する。出発原料は溶媒に15〜30重量%となるように溶解する。出発原料としてはジルコニウムブトキシド、塩化ジルコニウム及び塩化酸化ジルコニウムからなる群より選ばれたジルコニウム化合物がそれぞれ選択される。溶媒としては、トルエン、THF、ヘキサン、オクタン及びキシレンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の有機化合物が挙げられる。
次いで、この溶解した溶液に2種類以上のβジケトン化合物を含む混合液を加える。混合液に含まれる2種類以上のβジケトン化合物は、合計が金属ジルコニウムの価数倍のモル量である4倍のモル量となるように添加する。2種類のβジケトン化合物とジルコニウム化合物とを反応させてジルコニウムキレート錯体を合成する場合は、一方のβジケトン化合物をAとし、他方のβジケトン化合物をBとするとき、2種類のβジケトン化合物の配合割合(A/B)をモル比で80/20〜20/80の範囲内となるように配合する。2種類以上又は2種類のβジケトン化合物は、それぞれHdhd、Hthd、Hacac、Hhfac、Htfac、Htod及びHdppdからなる群より選ばれる。2種類のβジケトン化合物を配位させる場合は、一方のβジケトン化合物をHdhdとし、他方のβジケトン化合物をHthdとすることが好ましい。
次に、2種類以上のβジケトン化合物を含む混合液を添加した混合溶液をこの溶液中に含まれる有機溶媒の沸点より高い温度で2〜5時間、好ましくは5時間加熱して還流する。この加熱還流により残留水分やOH基が共沸により除去されるとともに、濃縮されて合成物の結晶が得られる。この合成物の結晶は粗結晶であるため、有機溶媒を用いて再結晶した後、減圧下で溶媒を気化し、乾燥させる精製を繰返し行うことにより、精製したジルコニウムキレート錯体の結晶が得られる。
【0034】
βジケトン化合物にHdhd、Hthd、ジルコニウム化合物にジルコニウムブトキシドをそれぞれ用いて得られた有機ジルコニウム複合物の質量分析を行った。その質量分析スペクトル結果を図1に示す。
図1より明らかなように、m/zが585と613のピークに着目すると、明らかに異なる配位子が一つのジルコニウムに配位した化合物が生成していることが判る。また、開裂した化合物に着目すると、m/zが640のイオンからはZr(thd)(dhd)或いはZr(thd)が、m/zが613のイオンからはZr(thd)(dhd)或いはZr(thd)(dhd)が、m/zが585のイオンからはZr(thd)(dhd)或いはZr(thd)(dhd)が、m/zが557のイオンからはZr(dhd)或いはZr(thd)(dhd)がそれぞれ分析サンプル中に存在していることが示唆される。このことから配位子が異なる複数のジルコニウムキレート錯体が生成していることが判る。
【0035】
このようにして得られた本発明の有機ジルコニウム複合物を有機溶媒に溶解することで得られる本発明の第1の溶液原料は、広い温度範囲でPZT薄膜の組成制御をより的確に行うことができる。溶液原料に用いられる有機溶媒には、THF、Me−THF、n−オクタン、イソオクタン、ヘキサン、CyHex、ピリジン、ルチジン、酢酸ブチル及び酢酸アミルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒が用いられる。
【0036】
本発明の第2の溶液原料は、単一種類のβジケトン化合物がその中心金属に配位した第1ジルコニウムキレート錯体とβジケトン化合物と異なる単一種類のβジケトン化合物がその中心金属に配位した第2ジルコニウムキレート錯体とを有機溶媒中に混合して調製される。
このように調製された溶液原料は、溶液原料中の第1ジルコニウムキレート錯体と第2ジルコニウムキレート錯体に配位する配位子の一部がそれぞれ配位子交換を起こす。その結果、第1ジルコニウムキレート錯体と第2ジルコニウムキレート錯体がそれぞれ有する気化温度の範囲内に位置する気化温度とすることができる。溶液原料中の第1ジルコニウムキレート錯体と第2ジルコニウムキレート錯体を任意の割合に制御することで、第1ジルコニウムキレート錯体の気化温度と第2ジルコニウムキレート錯体の気化温度の範囲内で任意に気化温度を調整することができる。例えば第1ジルコニウムキレート錯体をZr(thd)とし、第2ジルコニウムキレート錯体をZr(dhd)とすると、本発明の溶液原料に含まれるジルコニウムキレート錯体の気化温度はZr(thd)とZr(dhd)のそれぞれの気化温度の範囲内に位置することになる。
また分解温度についても同様に第1ジルコニウムキレート錯体と第2ジルコニウムキレート錯体がそれぞれ有する分解温度の範囲内に位置する分解温度とすることができる。第1ジルコニウムキレート錯体と第2ジルコニウムキレート錯体の割合を制御することで、分解温度を制御することができる。溶液原料中の第1ジルコニウムキレート錯体と第2ジルコニウムキレート錯体を任意の割合とすることで、第1ジルコニウムキレート錯体の分解温度と第2ジルコニウムキレート錯体の分解温度の範囲内で任意に分解温度を調整できる。
【0037】
本発明の溶液原料に用いる第1及び第2ジルコニウムキレート錯体は、単一種類のβジケトン化合物を中心金属に配位させているため、ジルコニウムが有する8つの配位座全てを満たすことができる。配位子交換によって生成したジルコニウムキレート錯体もジルコニウムが有する8つの配位座の全てを満たす。従って、前述した有機ジルコニウム複合物と同様に、溶液原料中にPb(thd)を混合してもPb(thd)と気体化し難い複合物を形成し難い。
【0038】
本発明の溶液原料にPb(thd)のような有機鉛化合物又はTi(iPrO)(thd)のような有機チタン化合物のどちらか一方又はその双方を更に含むことで、有機ジルコニウム複合物中の配位子と有機鉛化合物中の配位子や有機チタン化合物中の配位子とがそれぞれ配位子交換を起こして鉛やチタンについても2種類以上の配位子を含む錯体が複数種類形成され、その配位数が各錯体によってそれぞれ異なる複合物が生成するため、鉛やチタンにおける組成制御性が向上することが期待できる。
【0039】
第1ジルコニウムキレート錯体をC、第2ジルコニウムキレート錯体をCとするとき、第1及び第2ジルコニウムキレート錯体の配合割合(C/C)がモル比で10/90〜90/10となるように配合する。好ましいモル比は50/50〜80/20である。モル比が10/90未満、即ちCの配合割合が少ない場合、その特性が第2ジルコニウムキレート錯体Cの有する特性と同程度となってしまう不具合を生じる。またモル比が90/10を越える、即ちCの配合割合が多い場合、その特性が第1ジルコニウムキレート錯体Cの有する特性と同程度となってしまう不具合を生じる。第1及び第2ジルコニウムキレート錯体はZr(dhd)、Zr(thd)、Zr(acac)、Zr(hfac)、Zr(tfac)、Zr(tod)及びZr(dppd)からなる群より選ばれる。第1ジルコニウムキレート錯体をZr(thd)とし、第2ジルコニウムキレート錯体をZr(dhd)とすることが好ましい。
有機溶媒には上述した第1の溶液原料と同様の溶媒が用いられる。有機溶媒と第1及び第2ジルコニウムキレート錯体の混合割合は特に規定されず、MOCVDに用いる際に十分な溶解がされればよい。
【0040】
本発明の有機ジルコニウム複合物を含む溶液原料は、反応容器や密閉容器に第1ジルコニウムキレート錯体と第2ジルコニウムキレート錯体を有機溶媒中に混合して調製してもよいし、第1ジルコニウムキレート錯体を有機溶媒に溶解して第1溶液原料としたものを第1密閉容器に封入し、同様に、第2ジルコニウムキレート錯体を有機溶媒に溶解して第2溶液原料としたものを第2密閉容器に封入し、MOCVD装置に第1及び第2溶液原料をそれぞれ送り込んで気化室の前の混合室でそれぞれの溶液原料を混合して本発明の有機ジルコニウム複合物を含む溶液原料を調製してもよい。
なお、本実施の形態では第1ジルコニウムキレート錯体と第2ジルコニウムキレート錯体を有機溶媒中に混合して調製したが、本発明では2種類のジルコニウムキレート錯体に限らず、3種類以上のジルコニウムキレート錯体を有機溶媒中に混合して溶液原料を調製してもよい。
【0041】
本発明の有機ジルコニウム複合物や溶液原料を基板上に成膜するには、図9に示すMOCVD装置が用いられる。
図9に示すように、MOCVD装置は、成膜室10と蒸気発生装置11を備える。成膜室10の内部にはヒータ12が設けられ、ヒータ12上には基板13が保持される。この成膜室10の内部は圧力計14及びニードルバルブ16を備える配管17により真空引きされる。成膜室10には酸素導入管32が接続される。蒸気発生装置11には、本発明の有機ジルコニウム複合物を含む溶液原料を貯留する原料容器18が備えられる。原料容器18にはガス流量調節装置19を介して加圧用不活性ガス導入管21が接続され、また原料容器18には供給管22が接続される。供給管22にはニードルバルブ23及びマスフローコントローラ24が設けられ、供給管22は気化室26に接続される。
【0042】
また有機鉛化合物を含む溶液原料及び有機チタン化合物を含む溶液原料を貯留する原料容器38,58が備えられ、配管など同様の配置で接続され、それぞれ気化室26に接続される。気化室26にはニードルバルブ31、ガス流量調節装置28を介してキャリアガス導入管29が接続される。気化室26は更に配管27により成膜室10に接続される。
この装置では、加圧用不活性ガスが導入管21から原料容器18内に導入され、原料容器18に貯蔵されている原料液を供給管22により気化室26に搬送する。気化室26で気化されて蒸気となった有機鉛化合物、有機ジルコニウム複合物及び有機チタン化合物は、更にキャリアガス導入管29から気化室26へ導入されたキャリアガスにより配管27を経て成膜室10内に供給される。成膜室10内において、有機鉛化合物、有機ジルコニウム複合物及び有機チタン化合物の蒸気を酸素導入管32より導入された酸素とともに熱分解させ、加熱された基板13上に堆積させてPZT誘電体薄膜を形成する。加圧用不活性ガス、キャリアガスには、アルゴン、ヘリウム、窒素等が挙げられる。
【0043】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず、ジルコニウムキレート錯体としてZr(dhd)、βジケトン化合物としてHthdをそれぞれ用意した。次いで、Zr(dhd)を溶媒に15重量%〜30重量%となるように常圧、室温で溶解して溶解液を調製した。溶媒にはn−ヘキサンを用いた。次に、Zr(dhd)に対して100mol%の割合となるようにHthdを溶解液に添加して、室温で12時間程度攪拌して反応させた。この反応液を減圧下で乾燥させて溶媒を除去することにより、dhdの配位数とthdの配位数が各ジルコニウムキレート錯体によってそれぞれ異なる複数のジルコニウムキレート錯体と、未反応のZr(dhd)とHthdと、Zr(dhd)とHdhdを含む有機ジルコニウム複合物を得た。
【0044】
<実施例2>
Hthdの混合量をZr(dhd)に対して400mol%となるように混合して合成した以外は実施例1と同様にして有機ジルコニウム複合物を得た。
<実施例3>
Hthdの混合量をZr(dhd)に対して1600mol%となるように混合して合成した以外は実施例1と同様にして有機ジルコニウム複合物を得た。
【0045】
<実施例4>
先ず、ジルコニウムキレート錯体としてZr(dhd)、βジケトン化合物としてHthdをそれぞれ用意した。次いで、Zr(dhd)を溶媒に15重量%〜30重量%となるように常圧、室温で溶解して溶解液を調製した。溶媒にはn−ヘキサンを用いた。次に、Zr(dhd)に対して100mol%の割合となるようにHthdを溶解液に添加して、室温で12時間程度攪拌して反応させた。この反応液を減圧下で加熱して溶媒が半分程度となるまで濃縮し、その濃縮液を室温となるまで放冷して再結晶を行った。続いて濃縮液の上澄み液を捨てることで、未反応物質を取除き、濃縮液を減圧下で乾燥することにより、dhdの配位数とthdの配位数が各ジルコニウムキレート錯体によってそれぞれ異なる複数のジルコニウムキレート錯体からなる有機ジルコニウム複合物を得た。
【0046】
<実施例5>
Hthdの混合量をZr(dhd)に対して400mol%となるように混合して合成した以外は実施例4と同様にして有機ジルコニウム複合物を得た。
<実施例6>
Hthdの混合量をZr(dhd)に対して1600mol%となるように混合して合成した以外は実施例4と同様にして有機ジルコニウム複合物を得た。
【0047】
<実施例7>
ジルコニウムキレート錯体をZr(thd)、βジケトン化合物をHdhdにそれぞれ代えて、Hdhdの混合量をZr(thd)に対して100mol%となるように混合して合成した以外は実施例1と同様にして有機ジルコニウム複合物を得た。
<実施例8>
Hdhdの混合量をZr(thd)に対して400mol%となるように混合して合成した以外は実施例7と同様にして有機ジルコニウム複合物を得た。
<実施例9>
Hdhdの混合量をZr(thd)に対して1600mol%となるように混合して合成した以外は実施例7と同様にして有機ジルコニウム複合物を得た。
【0048】
<実施例10>
ジルコニウムキレート錯体をZr(thd)、βジケトン化合物をHdhdにそれぞれ代えて、Hdhdの混合量をZr(thd)に対して100mol%となるように混合して合成した以外は実施例4と同様にして有機ジルコニウム複合物を得た。
<実施例11>
Hdhdの混合量をZr(thd)に対して400mol%となるように混合して合成した以外は実施例10と同様にして有機ジルコニウム複合物を得た。
<実施例12>
Hdhdの混合量をZr(thd)に対して1600mol%となるように混合して合成した以外は実施例10と同様にして有機ジルコニウム複合物を得た。
【0049】
<比較例1>
先ず、ジルコニウム原料としてZr(nBuO)錯体を出発原料として用い、これを有機溶媒としてトルエンに20〜27重量%となるように溶解した。次いで、この溶解液にZr(nBuO)錯体に対して4倍モル量のHdhdを加え、110℃で2時間加熱還流して反応させた。反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、精製したZr(dhd)錯体の結晶を得た。
<比較例2>
先ず、ジルコニウム原料としてZr(nBuO)錯体を出発原料として用い、これを有機溶媒としてトルエンに20〜27重量%となるように溶解した。次いで、この溶解液にZr(nBuO)錯体に対して4倍モル量のHthdを加え、110℃で2時間加熱還流して反応させた。反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、精製したZr(thd)錯体の結晶を得た。
<比較例3>
先ず、ジルコニウム原料としてZr(tBuO)錯体を出発原料として用い、これを有機溶媒としてトルエンに20〜27重量%となるように溶解した。次いで、この溶解液にZr(tBuO)錯体に対して2倍モル量のHthdを加え、110℃で4時間加熱還流して反応させた。反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、精製したZr(tBuO)(thd)錯体の結晶を得た。
【0050】
<比較例4>
Zr(tBuO)錯体をZr(tAmylO)錯体とした以外は比較例8と同様にして合成を行い、Zr(tAmylO)(thd)錯体を得た。
<比較例5>
先ず、ジルコニウム原料としてZr(iPrO)錯体を出発原料として用い、これを有機溶媒としてトルエンに20〜27重量%となるように溶解した。次いで、この溶解液にZr(iPrO)錯体に対して等モル量のHthdを加え、110℃で4時間加熱還流して反応させた。反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、精製したZr(iPrO)(thd)錯体の結晶を得た。
<比較例6>
先ず、ジルコニウム原料としてZr(iPrO)錯体を出発原料として用い、これを有機溶媒としてトルエンに20〜27重量%となるように溶解した。次いで、この溶解液にZr(iPrO)錯体に対して3倍モル量のHthdを加え、110℃で4時間加熱還流して反応させた。反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、精製したZr(iPrO)(thd)錯体の結晶を得た。
【0051】
<比較評価1>
実施例1〜12でそれぞれ得られた有機ジルコニウム複合物及び比較例1,2のジルコニウムキレート錯体を任意の温度に加熱して分解率を測定した。実施例1〜3の結果を図2に、実施例4〜6の結果を図3に、実施例7〜9の結果を図4に、実施例10〜12の結果を図5にそれぞれ示す。また比較例1及び2の結果は図2〜図5の全てに示した。
【0052】
図2〜図5より明らかなように、実施例1〜12の有機ジルコニウム複合物の分解温度は比較例1及び2のジルコニウムキレート錯体の分解温度の中間位置を示しており、合成方法の異なる実施例1〜6、実施例7〜12のどちらも同じような分解特性を示していることが判る。合成する際のβジケトン化合物添加量を変動させることで、分解温度の制御が可能であることが判る。これらの結果から本発明の有機ジルコニウム複合物は、分解温度が325℃のPb(thd)や、分解温度が320℃のTi(tBuO)(thd)と極めて近い分解温度に制御することができることが判った。
【0053】
<比較評価2>
実施例2、5、9及び12の有機ジルコニウム複合物、比較例3〜6のジルコニウムキレート錯体をそれぞれ2つに分け、一方はPb(thd)と不活性雰囲気下で混合し、更にTHFに溶解して溶液原料を調製し、他方はPb(thd)と不活性雰囲気下で混合し、更にシクロヘキサンに溶解して溶液原料を調製した。
この溶液原料を不活性雰囲気、遮光下で1ヶ月保存した。保存期間終了後、減圧下で各溶媒を除去し、実施例2、5、9及び12の有機ジルコニウム複合物、比較例3〜6のジルコニウムキレート錯体の熱重量分析(TG)を行った。Pb(thd)と混合する前後における気化残渣率の変化を表1に示す。
【0054】
【表1】
Figure 2004123688
【0055】
表1より明らかなように、比較例3、比較例5をそれぞれPb(thd)と混合した場合は、1ヶ月の保存で大幅に気化残渣が増加したが、実施例2,5,9及び12では、大きな気化残渣の増加は見られなかった。これは、実施例2,5,9及び12の有機ジルコニウム複合物は、ジルコニウムが有する8つの配位座の全てを満たすため、高い安定性を保つのに対して、比較例5や6のZr(iPrO)(thd)やZr(iPrO)(thd)等のアルコキシドを含むジルコニウムキレート錯体の場合、ジルコニウムの有する配位座のうち、6つ或いは7つの配位座を満たすのみで全ての配位座を満たすことができず、全ての配位座を満たした化合物に比べて安定性が低下するため、周囲にあるPb(thd)と反応してしまい、大幅に気化残渣が生じたと考えられる。また、Pbアルコキシドが生成していると考えられる。なお、有機溶媒の違いによる気化残渣量の変化は僅かであった。
【0056】
<実施例13>
先ず、ジルコニウム原料としてZr(nBuO)錯体を出発原料として用い、この出発原料を溶媒であるTHFに15〜25重量%となるように溶解した。次いで、βジケトン化合物を含む混合液として、HdhdとHthdの配合割合がモル比で75/25の割合で含む混合液、即ちZr(nBuO)錯体に対して3倍モル量のHdhdと1倍モル量のHthdを含む混合液を用意した。次に、溶解液にβジケトン化合物を含む混合液をゆっくり滴下し、70℃で2時間加熱還流して反応させた。反応液中のTHFを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、精製した結晶を得た。
得られた結晶の同定は元素分析により行った。元素分析の結果では、Zr12.3%(理論値12.3%)、C61.6%(理論値61.7%)、H8.72%(理論値8.71%)であった。上記分析結果より得られた結晶は金属ジルコニウムにdhdとthdが配位し、その配位割合がモル比(dhd/thd)で75/25である錯体、即ちZr(dhd)(thd)の構造を有する錯体であると推察される。
【0057】
<実施例14>
βジケトン化合物を含む混合液として、HdhdとHthdの配合割合がモル比で50/50の割合で含む混合液、即ちZr(nBuO)錯体に対して2倍モル量のHdhdと2倍モル量のHthdを含む混合液を用いた以外は実施例13と同様にして合成を行い、精製した結晶を得た。
得られた結晶の同定は元素分析により行った。元素分析の結果では、Zr11.8%(理論値11.9%)、C62.6%(理論値62.5%)、H8.92%(理論値8.92%)であった。上記分析結果より得られた結晶は金属ジルコニウムにdhdとthdが配位し、その割合がモル比(dhd/thd)で50/50である錯体、即ちZr(dhd)(thd)の構造を有する錯体であると推察される。
【0058】
<実施例15>
βジケトン化合物を含む混合液として、HdhdとHthdの配合割合がモル比で25/75の割合で含む混合液、即ちZr(nBuO)錯体に対して1倍モル量のHdhdと3倍モル量のHthdを含む混合液を用いた以外は実施例13と同様にして合成を行い、精製した結晶を得た。
得られた結晶の同定は元素分析により行った。元素分析の結果では、Zr11.6%(理論値11.5%)、C63.6%(理論値63.4%)、H9.12%(理論値9.11%)であった。上記分析結果より得られた結晶は金属ジルコニウムにdhdとthdが配位し、その割合がモル比(dhd/thd)で25/75である錯体、即ちZr(dhd)(thd)の構造を有する錯体であると推察される。
【0059】
<比較例7>
先ず、ジルコニウム原料としてZr(nBuO)錯体を出発原料として用い、これを有機溶媒としてトルエンに20〜27重量%となるように溶解した。次いで、この溶解液にZr(nBuO)錯体に対して4倍モル量のHthdを加え、110℃で2時間加熱還流して反応させた。反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、精製したZr(thd)錯体の結晶を得た。
<比較例8>
先ず、ジルコニウム原料としてZr(tBuO)錯体を出発原料として用い、これを有機溶媒としてトルエンに20〜27重量%となるように溶解した。次いで、この溶解液にZr(tBuO)錯体に対して2倍モル量のHthdを加え、110℃で4時間加熱還流して反応させた。反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、精製したZr(tBuO)(thd)錯体の結晶を得た。
【0060】
<比較例9>
Zr(tBuO)錯体をZr(tAmylO)錯体とした以外は比較例8と同様にして合成を行い、Zr(tAmylO)(thd)錯体を得た。
<比較例10>
先ず、ジルコニウム原料としてZr(iPrO)錯体を出発原料として用い、これを有機溶媒としてトルエンに20〜27重量%となるように溶解した。次いで、この溶解液にZr(iPrO)錯体に対して等モル量のHthdを加え、110℃で4時間加熱還流して反応させた。反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、精製したZr(iPrO)(thd)錯体の結晶を得た。
【0061】
<比較例11>
先ず、ジルコニウム原料としてZr(iPrO)錯体を出発原料として用い、これを有機溶媒としてトルエンに20〜27重量%となるように溶解した。次いで、この溶解液にZr(iPrO)錯体に対して3倍モル量のHthdを加え、110℃で4時間加熱還流して反応させた。反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、精製したZr(iPrO)(thd)錯体の結晶を得た。
<比較例12>
Zr(iPrO)錯体をZr(nBuO)錯体とした以外は比較例10と同様にして合成を行い、Zr(nBuO)(thd)錯体を得た。
【0062】
<比較評価3>
実施例13〜15及び比較例7で得られたジルコニウムキレート錯体をそれぞれ用い、約3.99kPa(30Torr)の圧力条件下で熱重量分析を行った。熱重量分析の結果を図6に示す。
図6の熱重量分析結果より明らかなように、比較例7の錯体に比べて実施例13〜15の錯体はいずれも気化温度が低くなっていることが判る。
【0063】
<比較評価4>
実施例13〜15及び比較例7でそれぞれ得られたジルコニウムキレート錯体の熱分解温度を調べた。その結果を次の表2に示す。なお、表2中にPZT薄膜の有機鉛化合物材料であるPb(thd)、有機チタン化合物材料であるTi(iPrO)(thd)の熱分解温度も併せて記す。
【0064】
【表2】
Figure 2004123688
【0065】
表2より明らかなように、比較例7の錯体に比べて実施例13〜15の錯体の熱分解温度は低く、PZT誘電体薄膜の作製原料に用いられる有機鉛化合物及び有機チタン化合物の熱分解温度に近似していることが判る。
【0066】
<比較評価5>
先ず、実施例13〜15及び比較例8〜11のジルコニウムキレート錯体をアルゴン雰囲気下で500℃まで加熱してその気化残渣量をそれぞれ熱重量分析により測定した。次いで、実施例13〜15及び比較例8〜11のジルコニウムキレート錯体をPb(thd)錯体とそれぞれアルゴン雰囲気下で混合した後、THFでそれぞれ溶解した。これらの溶液を2等分し、一方はアルゴン雰囲気の遮光下で1ヶ月間保存し、他方を同じ雰囲気下で3ヶ月間保存した。それぞれの保存期間終了後、減圧下でTHFを除去した。ジルコニウムキレート錯体とPb(thd)錯体を混合した混合物をアルゴン雰囲気下で500℃まで加熱してその気化残渣量を熱重量分析により測定した。有機溶媒にTHFを用いたときの気化残渣量を表3に示す。
【0067】
【表3】
Figure 2004123688
【0068】
表3より明らかなように、Pb(thd)と混合する前のジルコニウムキレート錯体単独での熱重量分析の結果は、比較例8〜11のジルコニウム錯体が6.8〜9.5重量%の気化残渣を生じたのに対して、実施例13〜15のジルコニウムキレート錯体は0.7〜0.9重量%の僅かな気化残渣を生じただけであった。またジルコニウムキレート錯体とPb(thd)を混合して1ヶ月間保存した場合、比較例8〜11のジルコニウム錯体が9.8〜13.4重量%の気化残渣を生じたのに対して、実施例13〜15のジルコニウムキレート錯体は1.0〜1.1重量%の僅かな気化残渣を生じただけであり、3ヶ月間保存した場合は、比較例8〜11のジルコニウム錯体が11.5〜16.2重量%の気化残渣を生じたのに対して、実施例13〜15のジルコニウム錯体は0.8〜1.0重量%の僅かな気化残渣を生じただけであった。
【0069】
<比較評価6>
先ず、実施例13〜15及び比較例8〜11のジルコニウムキレート錯体をアルゴン雰囲気下で500℃まで加熱してその気化残渣量をそれぞれ熱重量分析により測定した。次に、実施例13〜15及び比較例8〜11のジルコニウムキレート錯体をPb(thd)錯体とそれぞれアルゴン雰囲気下で混合した後、CyHexでそれぞれ溶解した。これらの溶液を2等分し、一方はアルゴン雰囲気の遮光下で1ヶ月間保存し、他方を同じ雰囲気下で3ヶ月間保存した。それぞれの保存期間終了後、減圧下でCyHexを除去した。ジルコニウムキレート錯体とPb(thd)錯体を混合した混合物をアルゴン雰囲気下で500℃まで加熱してその気化残渣量を熱重量分析により測定した。有機溶媒にCyHexを用いたときの気化残渣量を表4に示す。
【0070】
【表4】
Figure 2004123688
【0071】
表4より明らかなように、Pb(thd)と混合する前のジルコニウムキレート錯体単独での熱重量分析の結果は、比較例8〜11のジルコニウム錯体が7.2〜9.3重量%の気化残渣を生じたのに対して、実施例13〜15のジルコニウムキレート錯体は0.7〜0.9重量%の僅かな気化残渣を生じただけであった。またジルコニウムキレート錯体とPb(thd)を混合して1ヶ月間保存した場合、比較例8〜11のジルコニウム錯体が10.8〜15.2重量%の気化残渣を生じたのに対して、実施例13〜15のジルコニウムキレート錯体は0.8〜1.0重量%の僅かな気化残渣を生じただけであり、3ヶ月間保存した場合は、比較例8〜11のジルコニウム錯体が12.9〜18.3重量%の気化残渣を生じたのに対して、実施例13〜15のジルコニウム錯体は0.9〜1.0重量%の僅かな気化残渣を生じただけであった。
【0072】
<比較評価7>
実施例13〜15及び比較例11,12のジルコニウムキレート錯体を用い、表6に示すような組合わせで他の金属キレート錯体と混合した後、有機溶媒に溶解して溶液原料を作製した。
作製した溶液原料をMOCVD装置の気化器として市販されている気化器を用い、次の表5に示す条件で気化した。気化した結果を表6に示す。なお、表6中の残渣率は気化残渣を回収した後、次の式に基づいて計算により求めた。
【0073】
残渣率=(気化残渣重量/溶解前の化合物重量)×100(%)
【0074】
【表5】
Figure 2004123688
【0075】
【表6】
Figure 2004123688
【0076】
表6より明らかなように、比較例11及び12のジルコニウムキレート錯体を用いた溶液原料の残渣率は2.0〜7.1%と残渣率が大きく、安定して成膜を行うことができるとはいえない。これに対して、実施例13〜15のジルコニウムキレート錯体を用いた溶液原料の残渣率は0.1〜0.2%であった。この結果から本発明のジルコニウムキレート錯体を含む溶液原料を用いることにより、その残渣率を最小限に抑えることができ、安定して成膜を行うことができるため、広い温度範囲でPZT薄膜の組成制御をより的確に行うことができる。
【0077】
<実施例16>
第1ジルコニウムキレート錯体CとしてZr(thd)を、第2ジルコニウムキレート錯体CとしてZr(dhd)をそれぞれ用意した。第1及び第2ジルコニウムキレート錯体をその配合割合(C/C)がモル比で50/50となるようにTHF中に混合して溶液原料を調製した。
<実施例17>
配合割合(C/C)がモル比で80/20となるように調製した以外は実施例16と同様にして溶液原料を得た。
【0078】
<比較例13>
ジルコニウムキレート錯体としてZr(thd)をTHF中に混合して溶液原料を調製した。
<比較例14>
ジルコニウムキレート錯体としてZr(dhd)をTHF中に混合して溶液原料を調製した。
【0079】
<比較評価8>
実施例16,17及び比較例13,14の溶液原料を調製して24時間経過した後に、溶液原料を減圧下に置いてTHFを気化させ、ジルコニウムキレート錯体を得た。実施例16,17及び比較例13,14のジルコニウムキレート錯体を任意の温度に加熱してその分解率を測定した。その結果を図7に示す。なお、図7において、1時間任意の温度で加熱し、その分解率が20%を越えるときの温度を分解温度と規定した。また実施例16,17及び比較例13,14のジルコニウムキレート錯体を10℃/分の昇温速度で加熱しながら熱重量分析を行った。その結果を図8に示す。
【0080】
図7より明らかなように、実施例16及び17のジルコニウムキレート錯体の分解温度は比較例13及び14のZr(dhd)とZr(thd)の範囲内に位置する温度を示していることが判る。そしてZr(dhd)とZr(thd)の配合割合を変化させることで、この分解温度も制御することが可能であることが判る。これにより、PZT薄膜材料であるPb(dhd)やTi(iPrO)(thd)、Ti(tBuO)(thd)と近い分解温度に制御することができる。また、図8より明らかなように、実施例16及び17のジルコニウムキレート錯体の気化温度は比較例13及び14のZr(dhd)とZr(thd)の範囲内に位置する気化温度であり、この気化温度はZr(dhd)とZr(thd)の混合比を変化させることで制御することが可能であることが判る。
【0081】
<実施例18>
ジルコニウムキレート錯体としてZr(dhd)とZr(thd)を等モル混合し、この混合物を4分割した。先の2つにはPb(thd)を不活性雰囲気下で更に混合し、THFとCyHexにそれぞれ溶解して溶液原料を調製した。残りの2つはPb(thd)を混合せずに、THFとCyHexにそれぞれ溶解して溶液原料を調製した。
【0082】
<比較例15>
ジルコニウムキレート錯体としてZr(tBuO)(thd)を用いた以外は実施例18と同様にして溶液原料を調製した。
<比較例16>
ジルコニウムキレート錯体としてZr(tAmylO)(thd)を用いた以外は実施例18と同様にして溶液原料を調製した。
<比較例17>
ジルコニウムキレート錯体としてZr(iPrO)(thd)を用いた以外は実施例18と同様にして溶液原料を調製した。
<比較例18>
ジルコニウムキレート錯体としてZr(iPrO)(thd)を用いた以外は実施例18と同様にして溶液原料を調製した。
【0083】
<比較評価9>
実施例18及び比較例15〜18の溶液原料を不活性雰囲気、遮光下で1ヶ月保存した。保存期間終了後、減圧下で各溶媒を除去し、ジルコニウムキレート錯体の熱重量分析を行った。Pb(thd)と混合する前後における気化残渣率の変化を表7に示す。
【0084】
【表7】
Figure 2004123688
【0085】
表7より明らかなように、Pb(thd)と混合する前のジルコニウムキレート錯体単独での熱重量分析の結果は、比較例15〜18のジルコニウム錯体が6.8〜9.5重量%の気化残渣を生じたのに対して、実施例18のジルコニウムキレート錯体は1.5重量%の僅かな気化残渣を生じただけであった。またジルコニウムキレート錯体とPb(thd)を混合して1ヶ月間保存した場合、比較例15〜18のジルコニウムキレート錯体では15.5〜32.3重量%と大幅に気化残渣が増加していたのに対して、実施例18のジルコニウムキレート錯体は2.1〜2.4重量%の僅かな気化残渣を生じただけであった。これは、実施例18の金属ジルコニウムにβジケトン化合物を4つ配位させたジルコニウムキレート錯体は、ジルコニウムが有する8つの配位座の全てを満たすため、高い安定性を保つのに対して、比較例17や18のZr(iPrO)(thd)やZr(iPrO)(thd)等のアルコキシドを含むジルコニウムキレート錯体の場合、ジルコニウムの有する配位座のうち、6つ或いは7つの配位座を満たすのみで全ての配位座を満たすことができず、全ての配位座を満たした化合物に比べて安定性が低下するため、周囲にあるPb(thd)と反応してしまい、大幅に気化残渣が生じたと考えられる。なお、有機溶媒の違いによる気化残渣量の変化は僅かであった。
【0086】
<比較評価10>
実施例16及び比較例13,14のTHF溶液原料をそれぞれ0.3モル濃度に調製し、図9に示すような成膜装置を用い、成膜温度を変動させて基板上にPZT誘電体薄膜を成膜した。次の表8に成膜条件を示す。得られた薄膜の成膜結果を図10に示す。
【0087】
【表8】
Figure 2004123688
【0088】
図10より明らかなように、比較例13及び14の溶液原料を用いて成膜されたPZT誘電体薄膜では、薄膜に含まれる全金属に対するジルコニウムの含有割合がどの成膜温度においても低く、ジルコニウム原料の供給流量が十分とは言えない結果となった。これに対して実施例16の溶液原料を用いたPZT誘電体薄膜はどの成膜温度においても全金属に対するジルコニウムの含有割合が30%前後の数値となっており、本発明の有機ジルコニウム複合物を用いることで広い温度範囲でPZT誘電体薄膜の組成制御をより的確に行えることが判った。
【0089】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の有機ジルコニウム複合物は、第1βジケトンと第1βジケトンとは構造の異なる第2βジケトンの双方をそれぞれ配位子として含むジルコニウムキレート錯体を1種又は2種以上含み、ジルコニウムキレート錯体が2種以上含まれるとき、2種以上のジルコニウムキレート錯体に配位する第1βジケトンの配位数と、第2βジケトンの配位数が各ジルコニウムキレート錯体によってそれぞれ異なることを特徴とする。このような有機ジルコニウム複合物は有機鉛化合物及び有機チタン化合物の各分解温度に近似した分解温度を有する。従って、この錯体を原料としてMOCVD法により成膜すると、広い温度範囲でPZT薄膜の組成制御をより的確に行うことができる。また、本発明の溶液原料は、有機鉛化合物と混合しても反応し難い。そのため、有機鉛化合物や有機チタン化合物を更に含む溶液原料としても有効である。また気相分解を起こし難い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機ジルコニウム複合物の質量分析スペクトルを示す図。
【図2】実施例1〜3及び比較例1,2における加熱温度と分解率の関係を示す図。
【図3】実施例4〜6及び比較例1,2における加熱温度と分解率の関係を示す図。
【図4】実施例7〜9及び比較例1,2における加熱温度と分解率の関係を示す図。
【図5】実施例10〜12及び比較例1,2における加熱温度と分解率の関係を示す図。
【図6】実施例13〜15及び比較例7の熱重量分析によるTG曲線の結果を示す図。
【図7】実施例16,17及び比較例13,14における加熱温度と分解率の関係を示す図。
【図8】実施例16,17及び比較例13,14における熱重量分析を示す図。
【図9】一般的なMOCVD装置の構成図。
【図10】実施例18及び比較例13、14の溶液原料における成膜温度の違いによるPZT誘電体薄膜中のZr含有割合の関係を示す図。
【符号の説明】
10 成膜室
11 蒸気発生装置
12 ヒータ
13 基板
14 圧力計
16 ニードルバルブ
17 配管
18 原料容器
19 ガス流量調節装置
21 加圧用不活性ガス導入管
22 供給管
23 ニードルバルブ
24 マスフローコントローラ
26 気化室
27 配管
28 ガス流量調節装置
29 キャリアガス導入管
31 ニードルバルブ
32 酸素導入管

Claims (24)

  1. 第1βジケトンと前記第1βジケトンとは構造の異なる第2βジケトンの双方をそれぞれ配位子として含むジルコニウムキレート錯体を1種又は2種以上含み、
    前記ジルコニウムキレート錯体が2種以上含まれるとき、前記2種以上のジルコニウムキレート錯体に配位する第1βジケトンの配位数と、第2βジケトンの配位数が各ジルコニウムキレート錯体によってそれぞれ異なることを特徴とする有機ジルコニウム複合物。
  2. 第1βジケトン配位子又は第2βジケトン配位子のどちらか一方又はその双方を更に含む請求項1記載の有機ジルコニウム複合物。
  3. 第1βジケトンのみを配位子とするジルコニウムキレート錯体又は第2βジケトンのみを配位子とするジルコニウムキレート錯体のどちらか一方又はその双方を更に含む請求項1又は2記載の有機ジルコニウム複合物。
  4. 第1βジケトン及び第2βジケトンがそれぞれ2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン残基、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタジオン残基、アセチルアセトン残基、ヘキサフルオロアセチルアセトン残基、トリフルオロアセチルアセトン残基、トリメチルオクタンジオン残基及びジフェニルプロパンジオン残基からなる群より選ばれた化合物である請求項1ないし3いずれか1項に記載の有機ジルコニウム複合物。
  5. ジルコニウムキレート錯体が2種類以上のβジケトン化合物とジルコニウム化合物とを反応させて得られる請求項1記載の有機ジルコニウム複合物。
  6. ジルコニウムキレート錯体が2種類のβジケトン化合物とジルコニウム化合物とを反応させて得られる錯体であって、
    一方のβジケトン化合物をAとし、他方のβジケトン化合物をBとするとき、前記2種類のβジケトン化合物の配合割合(A/B)がモル比で80/20〜20/80である請求項5記載の有機ジルコニウム複合物。
  7. 2種類又は2種類以上のβジケトン化合物がそれぞれ2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、アセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、トリメチルオクタンジオン及びジフェニルプロパンジオンからなる群より選ばれた化合物である請求項5又は6記載の有機ジルコニウム複合物。
  8. 一方のβジケトン化合物が2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオンであって、他方のβジケトン化合物が2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンである請求項5ないし7いずれか1項に記載の有機ジルコニウム複合物。
  9. 第1βジケトン化合物と前記第1βジケトン化合物とは構造の異なる第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体とを混合することを特徴とする有機ジルコニウム複合物の合成方法。
  10. 第1βジケトン化合物の混合量が第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体に対して100mol%〜1600mol%である請求項9記載の合成方法。
  11. 第1βジケトン化合物が2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンであって、第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体がテトラキス2,6−ジメチル−3,5−ヘプタジオナートジルコニウムである請求項9又は10記載の合成方法。
  12. 第1βジケトン化合物が2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオンであって、第2βジケトンを配位子とするジルコニウムキレート錯体がテトラキス2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートジルコニウムである請求項9又は10記載の合成方法。
  13. ジルコニウムブトキシド、塩化ジルコニウム及び塩化酸化ジルコニウムからなる群より選ばれたジルコニウム化合物を溶媒に溶解した後、前記溶解液に対して2種類以上のβジケトン化合物をそれぞれ含む混合液を加えて、前記混合液に含まれる有機溶媒の沸点を越える温度で加熱還流することを特徴とする有機ジルコニウム複合物の合成方法。
  14. 2種類のβジケトン化合物とジルコニウム化合物とを反応させて得られる有機ジルコニウム複合物の合成方法であって、
    一方のβジケトン化合物をAとし、他方のβジケトン化合物をBとするとき、前記2種類のβジケトン化合物の配合割合(A/B)がモル比で80/20〜20/80である請求項13記載の合成方法。
  15. 2種類又は2種類以上のβジケトン化合物がそれぞれ2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、アセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、トリメチルオクタンジオン及びジフェニルプロパンジオンからなる群より選ばれた化合物である請求項13又は14記載の合成方法。
  16. 一方のβジケトン化合物が2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオンであって、他方のβジケトン化合物が2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンである請求項13ないし15いずれか1項に記載の合成方法。
  17. 請求項1ないし8いずれか1項に記載の有機ジルコニウム複合物又は請求項9ないし16いずれか1項に記載の合成方法により得られる有機ジルコニウム複合物を有機溶媒に溶解したことを特徴とする溶液原料。
  18. 単一種類のβジケトン化合物がその中心金属に配位した第1ジルコニウムキレート錯体と、
    前記βジケトン化合物と異なる単一種類のβジケトン化合物がその中心金属に配位した第2ジルコニウムキレート錯体と
    を有機溶媒中に混合して調製された有機ジルコニウム複合物を含む溶液原料。
  19. 第1ジルコニウムキレート錯体をC、第2ジルコニウムキレート錯体をCとするとき、
    前記第1及び第2ジルコニウムキレート錯体の配合割合(C/C)がモル比で10/90〜90/10である請求項18記載の溶液原料。
  20. 第1及び第2ジルコニウムキレート錯体がテトラキス2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナートジルコニウム、テトラキス2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートジルコニウム、テトラキスアセチルアセトナートジルコニウム、テトラキスヘキサフルオロアセチルアセトナートジルコニウム、テトラキストリフルオロアセチルアセトナートジルコニウム、テトラキストリメチルオクタジオナートジルコニウム及びテトラキスジフェニルプロパンジオナートジルコニウムからなる群より選ばれた錯体である請求項18又は19記載の溶液原料。
  21. 第1ジルコニウムキレート錯体がテトラキス2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートジルコニウムであって、第2ジルコニウムキレート錯体がテトラキス2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナートジルコニウムである請求項18ないし20いずれか1項に記載の溶液原料。
  22. 有機溶媒がテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、n−オクタン、イソオクタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ピリジン、ルチジン、酢酸ブチル及び酢酸アミルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒である請求項17ないし21いずれか1項に記載の溶液原料。
  23. 有機鉛化合物又は有機チタン化合物のどちらか一方又はその双方を更に含む請求項17ないし22いずれか1項に記載の溶液原料。
  24. 請求項1ないし8いずれか1項に記載の有機ジルコニウム複合物、請求項9ないし16いずれか1項に記載の合成方法により得られる有機ジルコニウム複合物又は請求項17ないし23いずれか1項に記載の溶液原料を用いて成膜することを特徴とするチタン酸ジルコン酸鉛薄膜の成膜方法。
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